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ブルーガーネットは今日も知らん顔

 ( 書き捨て!小説 )
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露草 ★UaQR8gvkCS_2Sh


おんなじクラスの、東雲葵くん。
彼のきらきらした一面を知っているのは、たぶん、世界でたったひとり、私だけでいい。









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露草 ★UaQR8gvkCS_2Sh

@

おんなじクラスの東雲葵くんは、きれいな子だと思う。
サラサラした亜麻色の髪。開かれることのない控えめな口。目にかかる前髪からのぞく瞳は、色素の薄い三白眼。
痩せてて、サイズが合わないであろう制服からのびた手首はこちらがハッとするほど白くて細い。
背は、多分あんまり高くなくて、160センチの私とそんなに変わらない気がしてる。
声は、まだ聞いたことが無いけれど、きっと澄んだ水面みたいに落ち着いた声で話すのだろう。
もしや以外と男らしい低くて太い声だったりして。はたまた、声変わりの前のような、高くて細い声だったりして。

そんな妄想を巡らせているけど、東雲くんは、学校に来ない。
私は、東雲くんと、じつは面識がない。

私が初めて東雲くんを見たのは、この高校に進学した入学式のとき。
高校生になれる感慨深さとか、これから始まる学園生活への期待とか、そんな気持ちに目を輝かせてる同級生が私はどうも苦手で。
早く終わらないかな、ニュウガクシキ。
どこか上の空で新入生の点呼を聞いていたとき、彼の名前を聞いた。

「東雲葵。」

そう呼ばれて、返事をしたのかしていないのかわからない間があいて(多分していないだろう)、そうして立ち上がったその男の子は、
なんだか他の同級生とまとっている雰囲気が違う気がした。
それに、その名前。シノノメ、アオイ。あおいって、私とおんなじ名前だから、だから余計に惹かれてしまって。
多分彼に興味を示したのは私だけじゃ無かったと思う。
周りの女の子たちも、ちょっとざわついていた気がする。あの子、かっこよくない?って。
私が彼を見たのは、それが最初で最後。
1年生はクラスが違ったから、彼がどうしてるのかなんて知らなかったし、そもそもそこを知りたいと思うほどそのときの私は彼に興味がなかった。
だから入学式で自分と同じ名前のきれいな男の子がいたなんてこと、もうすっかり忘れてしまっていた。

東雲くんのことを思い出したのは、ちょうど一ヶ月前、2年生に進級して、同じクラスになることがわかったから。
私の名簿の一つ前、須磨蒼伊のひとつまえに、東雲葵の名前を見つけた。
しののめ、あおい...。シノノメ、アオイ......あっ!
そうだ、あの、1年前の入学式で見つけた私と同じ名前のきれいな男の子。
こんなところで再会するだなんて。いや、再会って言うより私が勝手に認識していただけなんだけれど。
それでも、同じクラスになって、しかも席が前後だなんて、これからたくさん関わっていって、東雲くんのことをいろいろ知っていけるのだなと思うと、
久しぶりに高まる胸がちょっとだけ熱くなった。


けれどその日、進級した1日目のホームルーム。東雲くんが、私の前の席に座ることは無かった。
それ以降も、ずっと。



29日前 No.1

露草 ★UaQR8gvkCS_2Sh

A



初めのうちは、ホームルーム担任も、各授業の教科担任も、開始の点呼のときにちゃんと東雲くんの名前を呼んでいた。
けれどそれに答える声は一度たりともとは無くて、その度に教室がちょっとざわついたり、
チラチラ振り返って私のひとつ前の席を見たり、なんだか落ち着かない雰囲気が4月にはきっとあった。

「東雲くんって、1年のころから、あんまり学校に来てなかったらしいよ。」
「あー私、部活の友達が1年のころ東雲くんと同じクラスでさ、その子から聞いたんだけど、
 東雲くんってなんか最初の方は1ヶ月に2、3回休むくらいだったんだけど、
 夏休みが明けてから急にぱったり来なくなっちゃったらしくて。」
「噂で聞いたんだけど、なんか夏休み中にやばいくらい派手な交通事故に遭ったらしくて、怪我が治らなくて入院してたんだって。」
「えーーじゃあ今も?さすがに長引きすぎじゃねえ??」
「それはわかんないけどさ。」
「私、実は東雲くんと同じクラスだったんだけど。東雲くんが学校に来なくなったとき、先生何にも言わなかったんだよね。
 急に来なくなった東雲くんにも、その理由を言わない先生にも、なんで?って不思議に思う気持ちはあのとき確かにあったはずなんだけど、
 でもクラスの誰もそのことを訪ねなかったんだよねー。たしかに東雲くんってかっこいいけどさ、なんか近寄り難かったっていうか、
 容易に人を見せつけない雰囲気があって。あんまり関わらない方が良いなっていう感じ?」
「目立つ容姿はしてたけど、全然喋んないし、部活も入ってなかったし、話しかけても無視するし、あんまり印象は良くないって
 友達も言ってた。」
「じゃあ別にもう学校来なくてもいいんじゃね?俺その東雲ってやつのこと知らないから今の話だけで判断するけどさ、そんな 無愛想で
 印象の良くないやつ、同じクラスにいたら生活しづれえじゃんか。」
「それは確かにそうなんだけどさー、」

そんな話が教室のそこここで繰り広げられるくらいには、2年A組の中で、東雲くんは有名人だった。少なくとも4月のうちは。
けれど、彼が教室に姿を現さないまま4月が終わり、5月が始まって、6月初夏の風がカーテンをふわりと揺らす頃になると、
もう誰も東雲くんのことを気にしなくなった。
先生たちも点呼で東雲くんの名前を呼ぶことも無くなったし、そのことでざわつく生徒も、東雲くんの話をする生徒も、もう誰もいなかった。
私の一つ前の席は、当たり前のようにいつも空席で、プリントを回すときなんかは、前の前の席の子と互いにぐっと腕を伸ばさなきゃいけないから、ちょっと面倒だった。
私も根本は他のクラスメイトとそんなに変わんなくて、最初のうちは東雲くんに会えることをワクワクしながら登校してたんだけど、
彼の不在がずっと続くにつれてだんだん落胆と彼に対する身勝手で一方的な怒りが募っていって、
でもやっぱり6月になる頃にはもう何も思わなくなった。
席替えをして、出席番号の入り乱れた新しい席になると、私のひとつ前は水野さんという女の子になった。
東雲くんの席は、一応確保されていたけれど、教室の一番後ろの、一番隅の、廊下側後ろ出入り口のすぐそばに、ペアのない一人席としてひっそり置かれていた。










東雲くんの存在を気に懸けぬまま、私は学校生活をたんたんとこなしていった。
あの、夏の日までは。

28日前 No.2

露草 ★UaQR8gvkCS_2Sh

ちょっと読点が多すぎるな。反省、反省。

27日前 No.3

露草 ★UaQR8gvkCS_2Sh

B


7月。
開け放たれた窓から聞こえる蝉の声がうるさくて、汗でじんわり湿ったうなじを撫でる風は熱風で、そう、うだるような夏の日だった。
かき氷食べたいなあ、あまーい青色のシロップがたっぷりかかったやつ。
そんなことを考えながらぼんやりしていたから、誰かが私の名前を呼ぶ声に全然気がつけなかった。

「...さん、須磨さんっ!」

ねえ。何度目かの呼びかけと、私の手首に遠慮がちにそっ触れた手の感触で、
ようやく前の席の水野さんが私の顔を見つめていたことに気がついた。
思わず驚いてとっさに手を引っ込めると、水野さんは肩に落ちてきた黒髪をそっと手で払いながら申し訳なさそうにちょっと微笑んだ。

「ごめん、須磨さん全然気づいてくれないから。思わず触っちゃった。びっくりした?」
「...いや、ごめん、こちらこそ...。」

こんなに暑いと、ぼーっとしちゃうよね。そう言いながら水野さんは、眼鏡の奥で細い目をさらに細めて笑った。

26日前 No.4

削除済み ★UaQR8gvkCS_2Sh

【記事主より削除】 ( 2020/05/04 16:08 )

25日前 No.5

露草 ★UaQR8gvkCS_2Sh

B-2


「実は、須磨さんにお願いがあって。」
お願いって何だろう。水野さんは、なんていうか控えめな人だから、意外な言葉にちょっとびっくりした。
席は前後だけど今まで話したことは無くて、ただ最初に一言「よろしくね。」と一言交わしただけで私とはあまり関わりの無い人だったから、余計に。水野さんは1枚のカラフルなチラシのような物を引き出しから取り出すと、私に差し出した。

「これを、東雲くんの家に届けて欲しいんだ。」

手に取ったチラシの一番上には、ポップな字体で「文化祭のお知らせ」と書かれていた。
この学校では9月に文化祭を開催する。とはいっても、ほんのちょっと都会の公立高校の文化祭だからそんなに派手じゃない。
でも近所のひとたちとか、生徒の家族とか、近くにある別の私立高校の学生とか、結構たくさんのひとが訪れるので、規模は小さいとはいえ毎年それなりに盛りあがるのだ。
6月にはチラシを作って、7月に各クラスの企画を決めて、夏休みを使ってちまちま準備を進めて、9月の準備期間で一気に仕上げて本番を迎える。こんなスケジュールだ。チラシの制作は美術部が担当しているらしい。3年生が引退して初めての大仕事がこの文化祭のチラシ作成らしく、2年生が主体となって動かねばならず、結構大変なのだというのをクラスの誰かがぼやいていたのをふと思い出した。そういえば水野さんは美術部の部長だったなあとぼんやり頭を巡らせた。あのときぼやいていたのは水野さんだったのかな。


水野さんのお願いって言うのは、こんな感じのことだ。
完成させたチラシは各クラスごとで配布されて生徒一人一人に行き渡ることになるが、当然欠席した生徒は受け取ることができない。
そういう場合は机の中に入れて後日登校したときに受け取れるようにするのだけど、今年は例年に比べてチラシの作成に時間がかかってしまい、
明日から夏休みに入るから欠席した生徒の手元に渡ることが無い。せっかく時間と手間をかけて一生懸命作ったチラシが余るのもいやだし、捨てるのももったいないから、それぞれ欠席した生徒には友人か近くに住んでいる生徒が届けることになっているけど、東雲くんには友達がいない。
住んでいる場所もどうやら少し外れたところにあるらしくて、近くに住んでいる人はあまりいないみたいだから、



「クラスの代表者として今週週番であった水野さんが届けることになった......と。え、で、なんでそれを私に頼むの?」


眉をひそめながら訪ねると、水野さんは少し困った風な顔で小首をかしげた。


「私は放課後部活があるから。それに私だけじゃ無くて、須磨さんも週番だったから、お願いできないかなあと思ったの。」


え、私も週番だったの?ギクリとして動作を止め、すいっと指さされた方を恐る恐る見ると、黒板の右端、曜日の下に、水野とともに須磨の名前が書かれていた。

「.........あーーー、ごめん、すっかり、忘れてて。」
「ううん、いいの気にしないで。その代わりにこれ届けるの、お願いできる?」


週の終わりかつ1日の終わりに自分が週番であったことを気づかされたと言うことは、おそらくそれまでの黒板を消したり日誌を書いたり課題を集めたりと言うことはすべて水野さんがやってくれていたのだろう。一言私に声をかけてくれれば良かったのに、そうしなかった理由は多分水野さんの人の良さと、なんとなく私を取り巻くイメージの悪さとハーフアンドハーフだと思う。けれど私もれっきとした人の子なので、水野さんに対してはすっかり申し訳ない気持ちになって、郵便屋さんの役を快く引き受けた。
水野さんはありがとう、と笑顔になると、少し声を潜めて付け加えた。


「実はね、加藤先生が毎月東雲くんの家に家庭訪問行ってるらしいんだけど、まだ1回も応対してもらったこと無いんだって。絶対に誰かは住んでいるはずなのに、人の気配がしないくらい静かなおうちなんだって。加藤先生も一生懸命な先生だからね...毎月律儀に通ってるんだけど、そろそろ心折れてきてるんじゃないかなあ、だから私に頼んだんだよね。それにほら、さっき、峰君が、外で喧嘩してたでしょ?あの騒ぎ知ってる?結構派手にやらかしちゃったらしいから、多分その対応で忙しいのもあるんじゃないかなあ。うちのクラスってさ、結構いろいろ問題抱えてるよね。加藤先生、胃潰瘍にならないと良いけど...。」


思ったよりもたくさん喋るに水野さんに戸惑いながら、私は峰くんとやらの顔を思い出そうとしていた。
たしか背が高くて、体は結構ごつくて、どこかの運動部に所属していた気がする。素行と態度があんまりよくないらしくて、それが気にくわない上級生から目をつけられてしょっちゅう呼び出されては返り討ちにしていた...のが、なんとなく思い浮かんだ。でも、もともとあんまり人に対して興味が無いのと、クラスの人とはそんなに関わらないでおこうとする自分のスタンスのせいで、結局峰くんのことはそれ以上わからなかった。
うちのクラスが抱えている問題っていうの中には、きっと私も含まれているんだろうなあとか、うんざりするほどの暑さの中をこれから歩かなきゃいけないこの後のこととか、を思って、ばれないように小さくため息をついた。








わたしがこれから訪ねる家で応対してもらえる可能性、東雲くんに会える可能性は、万に一つもないんだろうな

25日前 No.6

露草 ★UaQR8gvkCS_1do

C


東雲くんの家は、どうやら本当にはずれたところにあるらしい。
もう30分くらい同じような坂道をずっとずっと歩き続けているけれど、一向にそれらしい家は見えてこない。
クネクネとよく曲がる舗装されていない歩きにくい砂利道と、両側に鬱蒼と連なる背の高い木のおかげで人の気配は全くない。
ジーワジーワと絶えず鳴くセミの声と、自分が歩く度に足下で生まれるジャリッという音以外全く何も聞こえない。
本当にこんなところに家があるのかなあ?ともう何度目かわからない疑問に首をかしげながら、
水野さんが渡してくれた手描きの地図に視線を落とした。
美術部らしいご丁寧に描かれた地図には、学校から東雲くんの家までのおよその距離と、かかる時間と、簡単な道筋が描かれてた。
デフォルメ化されたウサギが、『この先砂利道だよ!』『あと10分だよ!』と教えてくれるイラスト付きだ。
水野さんのまめさと意外な愛嬌にクスリと笑いをこぼすと、『もうすぐ見えてくるよ!』のウサギのあたりにさしかかったところで、
ふと違和感を感じた。

そういえば水野さんは、どうしてこんなに東雲くんの家までの道に詳しいんだろう?

21日前 No.7
ページ: 1

 
 
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