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20世紀少年

 ( 書き捨て!小説 )
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山人 @ookumo13 ★bDJoqEzcCB_ayU

 飲み屋で飲むというのはあまり好きじゃなかった。町から少し離れた農協の広場に車を止め、降り始めた雪のためにワイパーを起こして備える。
庶民的な食堂「富弥」は少し早い時間なのか、あるいは出前専門なのか、店内には誰もいない。
厨房の中から店主の妻と思しき女があらわれ、冷水をテーブルに載せた。なにか適当につまみとコップ酒を頼んだ。相変わらず店内の照明は暗く、くつろげるという気にはなれない。ただ、酒を飲める店はある程度限られている。
 まったくひどい一日だったと俺は思った。一〇年以上も全くしなかったパチンコ屋に寄り、虎の子の五万円を小一時間ですってしまっていた。
寒さに震えながら稼いだ日当の何日か分が消えてしまったのである。残った金を持ってここに来たのだった。
 もう四か月以上も酒を飲んでいなかった。自覚症状は特になかったが、肝臓の数値が良くなく、盆明けのころからやめていたのだった。アルコールは胃に吸収され、いたるところの血流が一気に駆け始め、脳に達していた。パチンコですった金の事はすっかり腑に落ち、すべての事柄の棘という棘がすっかり欠落し、丸い球のようになっている。高々、一合弱の酒でこれだけ落ちてゆける液体、それが酒だと思った。
 つまみと酒をおかわりし、それを飲み干すのに一時間と掛からなかった。
 近所の胡散臭い男どもが数人、すでに出来上がった顔で荒々しく入店してきたのだった。夕飯として何か注文したい気分だったが、勘定をして外に出た。
 外はあれから雪が降り積もり、車のフロントガラスには雪がべったりついている。どのみち酒を飲んだ体で車の運転ができるはずはない。わかっていながらここに立ち寄ったのだった。行き当たりばったりの一日に最後まで付き合うのだ、そんな気分で店に入った、それだけのことだ。
 歩いて帰ることにした。家人に迎えを頼めば済むことだったが、無茶をしたかった。発想が貧困で幼稚だ、そう思った。しかし、それを完遂することで一日の過ちが相殺されるような、許されるような気がしていた。それにしてもスケールの小さい罪だなと自嘲はした。


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