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めも

 ( 書き捨て!小説 )
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ぽち ★eneRcsjoQX_keJ

小説家になりたかった

(黙ってメモ帳にでも保存しておけばいいのに自己顕示欲が抑えきれませんでした。どうぞお手柔らかに)

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ぽち ★eneRcsjoQX_keJ

 歩き始めたのはいつだったか、始まりの地はどこだったのか。もう思い出せないくらい遠くまで来てしまった。
 旅の目的はただ一つ、地平線を目指すこと。
 吐き出した息はすぐに乾いた風にさらわれた。夜明けだ、と呟く彼の声が、やけに耳元ではっきりと聞こえる。
 旅の目的はただ一つ。地平線は、まだ遠い。

:君と地平線まで

26日前 No.1

ぽち ★eneRcsjoQX_keJ

 君に見てほしいものがあるんだ、と言われた。
 あまりにその口ぶりが真剣だったから、呆気にとられてしまった。何を見てほしいのかは教えてくれなかった。気になったから、週末に会う約束をした。

 週末。見せてくれたのははたして、彼の手のひらから溢れんとするばかりの大きさの青い宝石だった。ガラス製? まさか。ただの大きなガラスの塊を、こんなに仰々しく、もしくは物々しく、あるいは丁重に扱ったりはしないだろう。こんなものを目にする日がくるなんて、と思うにしたって、あまりに現実味がなさすぎて本当によくわからない。多分、とんでもないものを見せられている。
 いったいこの男は何の意図があってこれをわたしに見せようと思ったのか。
 崖の下では波が繰り返し寄せては白いしぶきとなって散っていく。ここは崖の上。これがサスペンスドラマならわたしは今すぐ突き落とされるのだろうが、心当たりがバカみたいに大きな宝石を現在進行形で見せられていること以外ないので勘弁してほしい。
 彼はというと、15分ほど前にこれを見てほしくて、と宝石の入った重厚なケースを手のひらに乗せてからずっと下唇を噛んで押し黙っている。わあ、すごいね、としか言えなかったことに対して腹を立てているのだとしたらどうしよう。いよいよ突き落とされるかもしれない。
 そんなことを考えていると、彼はおもむろにその頑丈そうなケースから巨大な石を取り出し、大きく振りかぶって、投げた。
 勢いよく彼の右手から飛び出した青い宝石は、太陽の光を浴びてそれはもう燦然と輝きながら放物線を描いて波間に消えていった。 え、とか、は、とか叫んだ気がする。彼の左手には空っぽの箱だけが残されていた。彼はまだ黙りこくったままで、自分のつま先と水平線との間を何回も見比べていたけれど、やがてわたしのほうを向いて、わたしの目を見ながらありがとう、とちょっと笑った。今日初めて目が合ったなと思った。

 帰りも、往路と同じように彼の運転で家の近くまで送ってもらった。道中、わたしと彼はやっぱり行きと同じように他愛のない話をしていた。あの大きな宝石は一体何だったのか、わたしは何を見せられたのか、どうしてわたしだったのか、訪ねたいことはたくさんあったけれど、まるで質問を拒むみたいに次々と話題が振られてくるもんだから、わたしは何も訊けなかった。

 次の日彼は職場に現れなかった。連絡もつかないらしい。

:告白

26日前 No.2

ぽち ★eneRcsjoQX_keJ

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23日前 No.3

ぽち @ebpi9 ★eneRcsjoQX_keJ

 バターロールの、あ、中になんも入ってないヤツね、1番プレーンなすべっとしたヤツ。それの真ん中に縦に切り込みを入れて……あー、大体でいいよ、大体で。包丁? いらんいらん。指でいい。そうそう、割れた? 千切らないようにね。
 そしたら、ベビーチーズ、そう、4個入って100円ぐらいのアレ。別に6個入って200円のでもいいよ。お好みで。あー、おれ的にはねえ、カマンベールが入ったヤツがイチオシかな。まあ何でもいいよ。それをね、2つか3つくらいに千切って、挟むの。さっきのバターロールに。うん、そうそう。
 そしたらあとはそれを好きな数だけ作って、レンジでチンする。500Wで1分。手洗って待ってるとすぐだよ。……ほら、ね。
 あ、お皿は熱くないけどパンもチーズも熱々だから気を付けて。こういうあったかい食べ物はあったかいうちに食べるのが定石だけど、ちょっとぐらい冷めても割とおいしいよ。
 以上、おれの世界一好きなパンの食べ方でした。ご賞味あれ。……おいしい? よかった。

22日前 No.4

ぽち @ebpi9 ★eneRcsjoQX_keJ

「なあ、もう俺にしとけば?」
「あはは、何それ……」
「割と真剣だよ俺」
「割とって何、そこは全力できてよ」
「はは、……全力でいって勝ち目があるならいくけど」
「……うん」
「ないでしょ、勝ち目」
「……わかんない……」
「……俺がんばるからさ、無理なら無理って言ってくれていいから、とりあえず俺にしときなよ、どういう結果になったって、あんたのこと嫌いになったりしないからさ」
「ほんと? 好きになっても嫌いにならない?」
「どういうことだよそれ」
「尻軽だって思わない? 代わりにされてるとか不安にならないでいてくれる?」
「何心配してんの、大丈夫だよ」
「石上くんにしとく……」
「マジで? ……はは、やった」

22日前 No.5

ぽち @ebpi9 ★eneRcsjoQX_keJ

 突然だが僕は今、1人の女の子と一緒に暮らしている。
 名前は魔女ちゃん。名前ではないか。名前を教えてくれないから、魔女ちゃんと呼んでいる、が正確なところ。

「魔女です」
「もう21世紀だよ」
「そろそろ狩られる心配もないかなって思って」
「なるほど」

 数か月前こんな会話を交わした僕と魔女ちゃんは、ひと悶着ふた悶着、いや、よん悶着ぐらいののちに一緒に暮らし始めた。
 ちなみに魔女ちゃんが信心深いオカルトマニア的な人の下ではなく僕のところにやってきた理由は、なんとなく面白そう、かつ顔が好みだったかららしい。光栄な話だ。

 魔女ちゃんが来てから僕の生活スタイルが大きく変わったかといわれるとそうでもない。いや、確かにお風呂上りに全裸でうろついたり、帰ってきてすぐズボンと靴下を脱いで脱皮したそのままの形で放置したり、そういうことはしなくなったんだけど。別にそれで不便してるわけではないし、むしろ湯冷めしなくなったり、靴下が片方ない! って大騒ぎしたりしなくなったりと、良いことのほうが多い。ありがたい。
 ご飯を作ってくれるときもあるし、最近は洗濯機を回してくれたりもする。本当にありがたい。絶対に魔女ちゃんが来てくれる以前より健康で文化的な生活を送っている。
 そうそう、僕も最初のうちは魔女というからにはカエルやヘビを食べたりするんじゃないかと怯えていたんだけど、魔女ちゃんは僕と同じものをおいしそうに食べる。ていうかカエルとかヘビとかは怖がってた気がせんでもない。ちなみにゴキブリは嫌いらしい。

 魔女ちゃんは僕のことを優一、と名前で呼ぶ。最初のうちは名字で呼ばれたり、名前を呼び捨てにされたりと試行錯誤しているのが見て取れたんだけど(それはそれでたいそうかわいかった)、最終的に名前で呼ぶのがしっくりきたらしい。
 恋人みたいだよね、って言ってみたこともある。コイビトって何? と言われた。

 魔女ちゃんは魔女なので、魔法を使ったり怪しげな薬品を作り上げたりするらしいんだけど、実は実際に何かをしているところを見たことがない。
 別に魔女ちゃんが魔女であることを疑ったことはないんだけどね。粉々に割れたマグカップを次の日にまるで新品みたいに直してくれたり、なくした靴下の片割れを持ってきてくれたりするし、薬品に関して言えば、完成したものを見せてくれたこともある。時には使う? と差し出してくれることも。でも実際魔法を使っているところや薬品を作ってるところは見せてくれない。
 とはいえ、見ても仕組みなんてわからないだろうから(そもそも魔法に仕組みとかないか)、めちゃくちゃ見たい! というわけでもない。僕はオカルトマニアじゃないし。

「何か考えごと?」
「ううん。魔女ちゃんのこと考えてた」
「何それ。あ、これあげるね」
「何これ?」
「惚れ薬。効果抜群」
「魔女ちゃん僕のこと好きなんじゃないの」
「好きだよ」
「じゃあ惚れ薬はいらないよ」
「ふうん」

 魔女ちゃんは不思議そうに首を傾げたけど、すぐに前歯を見せて笑った。かわいい。

「そうだ、ご飯できたよ、優一」
「え、作ってくれたの? ありがとう、うれしいよ」
「今日はシチューだよ」
「レパートリーを着実に増やしている……すごいね魔女ちゃん」

 そうそう、多分なんだけど、僕は魔女ちゃんの魔法の実験台にされている。今のところ命に別状はなさそうだから構わないかなと思っているけど、もし僕が急に消息を絶ったり、謎の変死を遂げたり、そもそも存在ごとなかったことになっていたりしたら、それはもしかすると魔女ちゃんのせいかもしれない。
 これは僕の憶測だけど、きっと魔女ちゃんは魔女じゃない人間相手にどれくらい魔法が通用するのかを調べていて、頃合いをみていつか魔女にこの世が乗っ取る算段をしているんじゃないかなって。将来的に魔女ちゃんの仲間たちに世界が乗っ取られたら、うーん、僕のせいでもあるのかな。ごめんね。

:魔女ちゃんと僕

22日前 No.6

ぽち @ebpi9 ★eneRcsjoQX_keJ

「まだ、私のこと、好きですか?」
 声の聞こえた方向を向くと、折山さんがドアにもたれて窓の外を眺めていた。車窓のあちら側では、緑色の木とか灰色のビルとかが、ひゅんひゅん通り過ぎていく。
「え、珍しいですね、そういうこと言うの」
 好きとか嫌いとかの前に、感想がぼろっと口から出た。
 車内放送が入って、電車が減速する。開くのは反対側のドアらしい。
 折山さんは視線だけこちらに向けて、力なく笑った。
「……そうかも」

16日前 No.7

ぽち @ebpi9 ★eneRcsjoQX_keJ

 深夜。珍しくのしかかられている。本当に珍しいからちょっとびっくりしたけど、別に嫌ではなかったからそのままにしておいた。ぎゅうっと眉間にしわを寄せて、ときどき苦しそうに息を吐いて、額には汗をにじませたりなんかして、一生懸命でなんだかかわいいなと思った。
 しばらくしたら喉の奥から絞り出すみたいな声を出して、動きがゆっくりになったと思ったら、ばたりとそのままわたしの上に落っこちてきた。体温が高くて、体中が脈打ってるみたいだった。
 大丈夫? と尋ねると、すごい勢いで飛びのいて(トムとジェリーのトムみたいに飛び上がっていた)、ごめん、ごめんなさい、って何回も謝られた。声も体もがたがた震えていてかわいそうだったから、近づいて抱きしめたら泣き出してしまった。

16日前 No.8

ぽち @ebpi9 ★eneRcsjoQX_keJ

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2日前 No.9
ページ: 1

 
 
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