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都合の良い部屋

 ( 書き捨て!小説 )
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陽香 @brahman☆r92H8KW1RF2 ★Android=lmNuvruUyx

 俺がこの部屋の神だ! 俺が言った指示を完遂するまでこの部屋からは出してやんねぇからな!!!!

 とりあえずお前からだ! 俺の出したミッション達成するまで部屋のドアは開けないからな! おおっと壁を破壊しようとしても無駄だぜ、なぜなら神であるこの俺がそういう風に造ったからだ!!

メモ2019/04/03 18:24 : 陽香☆r92H8KW1RF2 @brahman★Android-lmNuvruUyx

>>5-10 【2018→2019 Happy new year by ──??】

>>11 【歪んだ血縁と Lauro Fontana】

>>12 【見逃せない 山内裕】

>>13 【眠る君へ、独白 真木泉】

>>14 【バイオレンスな姫君へ、独白 巫大和】

>>16 【愛の価値 東亜亜澄】

ページ: 1

 
 

陽香 @brahman☆r92H8KW1RF2 ★Android=lmNuvruUyx

「落ち着けるり、とりあえず、ひっひっふーだ」

 目の前で困惑している少女を宥めようと、肩に手を置き深呼吸を促す。殺風景な40畳ほどの部屋、天井の4隅には監視カメラと思われるもの。

 ────事態は、5分ほど前だろうか。

 目が覚めたらこの部屋にいた。真っ白な壁、そこに立てかけられた無数の武器。最後の記憶はるりと2人でいつもの路地裏の看板の無い酒場で飲んでいたこと。しかし泥酔するほど飲んでないし、いつ気を失ったんだ……いいやそういうことはどうでもよかった。
 部屋に突如流れた無機質な女の声の放送、「その辺にある武器使って割と激しめに戦ってください、私がOKと見なしたらそこのドアを開けます。1時間以内にOKが出なかったら無条件で死にます」。……るりがこんな風になってしまったのは、この放送が流れてからだった。

「別にやりあって大怪我してもお前がいるから平気だろ、サクッと終わらせてさっさと出ていこう」
「でも痛いですよ? 私はフランと戦いたくないです」
「それはそれ、これはこれ。いいから、1時間なんてあっという間に経つぞ」

10ヶ月前 No.1

陽香 @brahman☆r92H8KW1RF2 ★Android=lmNuvruUyx

大戦の遺物である意志を持つ人型の兵器と、大戦の遺物として村ごと隔離された人々の話

【100年前の大戦】
島を南北に分割していた国間での大戦争。あまりもの惨状に正確な犠牲者は100年経った今でも不明だが、当時の人口の5分の1ほどを失ったと言われている。
文明レベルとしてはWW1くらい。交流深く協力的だった両国間に技術的な差はほとんど無かったが、そう広くない国土で持久戦はあまりにも苦しい。戦局は外交に比較的積極的だった南側の一方に傾いた。北側はその劣勢の中、生体兵器を開発していた研究所が偶然の偶然に生み出したのが、人の骸をベースにした人型兵器『終焉魔道士』。数十体の試作を繰り返したが、実用まで漕ぎ着けたのは3体のみ。しかし、戦況を変えるにはそれで充分だった。そのあまりもの脅威を、南側は『マナ・デウス』と呼んだ。

Tの制圧は、骨は折れたが不可能ではなかった。いくら一騎当千兵器といえど、ただ単に強化されたのみの人間であった彼/彼女は一騎当千でしかなく、千人でかかれば勝てる。
Uの制圧には最も犠牲と時間を要した。ありとあらゆる魔術をかつてないほどの高出力で使うUを、存在そのものが嵐と呼んでも過言ではない。戦車も戦艦も魔術師精鋭の一個師団でさえも手は届かないと思われていたが、Uはたった一滴の血を失った途端に無力化した。
Vは全てにおいて不明。研究資料も全失、目撃情報や証言一切無し、現在活動を続けているのかさえも不明。

圧倒的劣勢を跳ね除けた北側勝利にて、大戦は終結した。2つの国は統合され、閉鎖的な島国として100年が経過し、今に至る。

【隔離された村】
大戦の全ての元凶とされた『予言』を行った者がいるとされた村。大戦終結後、全くの法螺を吹いた明らかな戦犯である予言者と、その予言者に協力したとされた村人達は名前と国籍と首都へ通じる道を奪われ、刑罰として空間を切り取ったような深い深い谷間の村へ隔離された。なぜ処刑じゃなかったのか、その理由は未だわかっていない。当時の資料も全失している。根も葉もない噂によれば「予言は本物だったから、今後も利用するために殺さなかった」「裏で国を操った本物の王だから処刑できない」。しかし、全失した資料、誰一人として存在しない目撃者証言者。存在のみは知られている隔離された村を、どこにあるのか知る術も無かった。

【霧の村】
大戦の影響で、島各地には消えない炎や消して晴れない霧などのスポットがいくつかあり、もちろん魔術の痕跡やらがめっちゃ残ってるから近付くのも危険。

その中に、見た目は他と同じなんだけど、大戦の影響ではなく、誰かが故意に施した『封印』としての霧が存在して、そこの中に村がある。だから飛行船で飛び回っても見つからないし、他の危険な霧と同じと思われてるから徒歩で近付こうとする人もいない。

9ヶ月前 No.2

陽香 @brahman☆r92H8KW1RF2 ★Android=lmNuvruUyx

【魔術とは・マナとは】

ととノクの魔術は、基本的にはスポーツと同じ。才能あるやつは小さい頃から使えるし、だめなやつでも努力次第でどうにかなる。但し、現在は大戦の影響で待機中のマナがほぼゼロ。この状態で魔術を使うのは「飯食わないで運動だけしていろ」って状態に近い。

マナを例えるなら、空気中のプランクトン。そこに存在したマナや、微力だが人の行動と同時にも生まれる。
大戦前は程々に使い、使った分だけマナも再び増殖していた。マナの増殖の仕方は、主に太陽光を受けての、マナそのものの分裂・拡大によるもの。
しかし、大戦により1度すっからかんになってしまったマナ。自然増殖するためのマナがそもそも消えてしまったのだ。人の行動に付随して発生するマナもあるが、それはあまりにも微量で、分裂するためのエネルギーも持たず、すぐさま消失してしまう。
今現在魔術を使えるのは、その人の行動に付随して発生した極極極々微量なマナを捕まえて変換できるめちゃくちゃ器用な人。

その中でUは『自身の胎内でマナを作れる』ので、大気中のマナなんて無くとも魔術が使える。才能なんてわからなかったが、生体兵器の開発中に偶然生まれた薬の影響で『1億年分の努力』を成し遂げたことになった。

9ヶ月前 No.3

陽香 @brahman☆r92H8KW1RF2 ★Android=lmNuvruUyx

【アルギーシャ】

霧の村、そしてそこに住む住人達の総称。大戦の戦犯とされたアルギスの名前から、アルギスと同じむらに住んでた者がこう呼ばれた。刑罰として、元あった村を完全に焼き壊し、とある谷の底に隔離した。その上からは魔術での封印の霧が施されている。

罰として彼らは南側の国としての国籍を失い、統合後は北側から戦犯の罪を背負わされ、村そのものが国家であるような、孤立無援の村である。

9ヶ月前 No.4

陽香 @brahman☆r92H8KW1RF2 ★Android=lmNuvruUyx

「私、今年こそは年越しの瞬間まで起きてますから!!」



「────なんて言ってたの、どこの誰だったんだ」
 年末特番のバラエティが流れるテレビと、空になったそばの器と麦茶のポット。こたつに入っているだけで十分暖かいから、エアコンはさっき切った。いつの間にか俺の肩にもたれかかってくる軽い身体、顔に近づいていつも以上に意識してしまうシャンプーの匂い。……まさか、こいつと年を越すことになるなんて。……いや、まだ越していないんだけど。
 ただいまの時刻、12月31日23時55分。
 るりが寝落ちした時間、1時間くらい前。
 ……夜まで耐えられずに寝落ち、やっぱりガキじゃねぇか。今どき小学生でももう少し起きてられるぞ。左肩にもたれかかった頭をかかえるようにして、左手でわしゃわしゃと撫でる。
「ほら、もう少しで新年だぞ。今年こそは起きてんじゃねぇのか」
「んん……」
「ったく……いつもと逆じゃねぇか」
 目を覚ます気配は無し、いいや、もう諦めよう。頭をわしゃわしゃしたり掴んでいた左手を落とし、こたつの中の定位置へ戻す。明日の朝『なんで起こしてくれなかったんですか!?』って言われそうな気がするが……それは眠気に勝てないお前が悪い。

「……5、4、」


 テレビの画面にカウントダウンの表示が映る。

「3、2、」

 今年も色んなことがあった。……でも、その色んなことを全部かき消してしまうくらいに、

「1、」

 特別だった。何より、何よりも大きい存在で、

「0──」

「──あけましておめでとう、るり。今年もよろしくな」

8ヶ月前 No.5

陽香 @brahman☆r92H8KW1RF2 ★Android=lmNuvruUyx

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8ヶ月前 No.6

陽香 @brahman☆r92H8KW1RF2 ★Android=lmNuvruUyx

「聞いてくださいよまゆさん! この前お母さんが『いい加減メイドなんてチャラチャラした職業やめてOLさんになれ』とかうんたらかんたら抜かしてきましてねぇ!!」
「はいはいわかったわかった。れいかちゃん飲みすぎじゃない? 帰れる?」
「帰"り"ま"せ"ん"!! まゆさん今夜も明日の朝も寝かしませんからね!!」
「はいはい。気が済むまでお付き合いします、お嬢様?」
「お"嬢"様"し"ゃ"な"い"て"す"!!!」

 はいはいわかったわかった、と言いながら、個室の座敷の壁にかけたピンクベージュのコートを着る。もう片方、グレーのダッフルコートもハンガーから外すと「ほらお会計してハシゴしましょ」と言いながら、対面に座っていた後輩メイド──設定上は同い年、実年齢で言うと2個下──のれいかちゃんに手渡す。既に空になったグラスと料理、そしてこの酔い方。れいかちゃんはまだ飲む気だし、少しでも外歩かせた方がいいだろう。
「コート着た? 忘れ物ない?」
 荷物をまとめ、伝表の挟まれたボードを持ち、個室の障子を開ける。一応私も忘れ物ないか、既に立ち上がったれいかちゃんの足元を覗き込む。
「大丈夫? 靴はける?」
「それくらい平気ですぅ!!」
「はいはいわかったわかった」

 丈の長いブーツを履くのに苦戦している後輩を尻目に、伝票を持ちレジへ。
「クレジットでお願いします」
「かりこまりましたー! ……はい、こちらレシートと明細っす、ありがとうございました!」
「ごちそうさまです」
 ──あ、このレシート、23時59分じゃん。
 れいかちゃんが私に追いついたのを確認して、ガラガラっ、と音を立ててすりガラスの引き戸を開けのれんをくぐる。
「まゆさんLINEとかいいですから!
次行きましょう次! あたしモツ鍋食べたいです!!」
「はいはい。いいよ今夜はれいかちゃんが潰れるまで付き合ってあげちゃう」
 送信ボタンを押したらすぐ、スマホをハンドバッグの中に仕舞う。たぶん、もう年だって明けただろう。
 ……1番にあけましておめでとう、を言ったのは誰か? ……ヒミツです。

8ヶ月前 No.7

陽香 @brahman☆r92H8KW1RF2 ★Android=lmNuvruUyx

「初詣? ……お前、うち来たことあるのにそれを言うか?」
 携帯電話を耳に当てながら、呆れたように椅子の背もたれに体重をかける。電話の相手はもちろん八尾。こんな時間に電話なんて珍しいな、と思ったらこれか。
「……そう、寺。正月は忙しいんだよ。もうすぐ手伝いも行くし……ああ、色々準備がある。だから無理なんだ、すまない」

「……そうごねるな」

「……昼休み、11時頃から貰えそうなんだ。寺の裏口への行き方わかるか? 人混み抜けなきゃならないから早めに来た方がいい。参道に屋台も出る。1時間くらいでいいなら、そのとき会おう。……よかった、遅れるなよ。楽しみにしてる」

8ヶ月前 No.8

陽香 @brahman☆r92H8KW1RF2 ★Android=lmNuvruUyx

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8ヶ月前 No.9

陽香 @brahman☆r92H8KW1RF2 ★Android=lmNuvruUyx

「あけましておめでとうございます……何しに来た」
「青砥サンが住職してるとこ見たくて」
「俺は住職じゃないぞ」
「じゃー僧侶? 巫女さん?」
「僧侶でもないし、巫女は神社だろう」
「そうなの?」
「そうだ」
「へー」
「……用がないなら、どいたらどうだ?」
「えっ用あるよ青砥サンに会いに来た」
「はぁ…………」

 お守りやお姿などの授与所。今は列が引いたが、ついさっきまでは3人しかいないお手伝いのところに20人近くが列を作って並んでいた。列が途切れた隙に、いつの間にそんなところにいたのか、影からひょっこり出てきた。無駄話は好ましくない。

「約束の時間にはまだだろう」
 内側から見えるところにある壁掛け時計が示すのは10時半、待ち合わせ予定の時間にはまだ30分もある。
「いやー年越しだしオールしてたんだけど寝れなくて」
「……身体に悪いぞ」
 呆れたような溜息と共に吐き出す。お前はいつもそうだから仕方ないな、とも思うんだが。
「こっちで昼食にするから待っててくれないか、お前の分の弁当は流石に用意が無いが、茶くらいはいいだろう。そこの裏の入口から入ってくれ」

8ヶ月前 No.10

陽香 @brahman☆r92H8KW1RF2 ★Android=qkiWwZL3Tn

「……すいません、席を空けていただきますか。できれば、外から聞くのもやめていただいて、録画と録音も切ってください。規律違反でしょうが、何かあったら責任は私が。よろしくお願いします」

 立会人、護衛が全てこの狭い部屋を出ていき、部屋の隅にあった監視カメラのLEDが消える。素直に聞き入れくれたようだ。……ああ、もう、埒のあかない尋問に痺れが切れた。もとからそう簡単に真実を聞き出せるとは思っていなかったが、こうも難航するとは。本来、罪人の尋問など精鋭たるロアの軍人の仕事ではないのに、私のところへこの仕事が回されてきたのも、理解しくないが理解してしまう。
「……監視の目があると話し難いでしょう」
「いらん気遣いを」
 簡素な机を挟んで対峙する。向こうは手錠と足枷で自由に歩くことはできない。下手に逃げ出そうと企むほど、彼も低脳ではないだろう。

「さて、いい加減質問に答えたらどうですか。別に死刑になるわけではありません」
「……は、嘘だな。私の処刑は決定している。ここで言質が取れなくても、私は『不慮の事故』で死ぬ──そうだろう?」
「……いえ。無罪の人を裁くほど、ロアは腐ってはいません。あなたの無罪が証明できれば──」
「まだまだ甘いな。その程度で私の目を欺けると思うなよ、青二才」
 ああ、やはりか。フォンターナの娘……商売道具のアクセサリーだとしても、私に商人としての立ち振る舞いを叩き込んだのは他でもないこの父だ。他人の欺き方、他人の嘘を見抜く力。軍の中でこの力が腐れることは無い……寧ろ磨きをかけたかと思ったが、やはりこの性悪爺には敵わない。

 はぁ、と大きなため息と共に右手で頬杖をつく。
「今この会話はだれも聞いていません。この部屋は防音、カメラも止まっているので外から監視されることもありません。久しぶりに2人で話をしましょうか……お父様」
「……こんな子供はいなかったと思うが」
「さぁ? どうでしょうか」

「……父を憎んでは、いないのか」
「…………」

 それを聞かれるとは思っていなかった。憎んでいる、そんなこと考えたこともない。逃げたい、自由になりたいばかりで、誰かを憎む暇さえも無かった。女と男両方であることを決めた日は、無理矢理性を偽り抜いて17年間育ててきた父に感謝さえしたものだ。
「今更罪悪感ですか?」
「いいや、後悔だ。お前を下手に軍に寄越しなどしなければ、私が今ここで尋問されることも無かっただろう」
 結局自分が第一か。この手の奴は、どうせ処刑されるとわかっているのなら、本当に何も情報を吐かない。だがしかし、万が一にも吐かないとわかっていても、その万が一を狙って、藁にも縋る思いで情報を聞き出さなければならない。

「他国との癒着……あなたの罪です。癒着ついでに、あちら側の機密の1つや2つご存知でしょう」
「知らないね。私は軍需品を卸したのみだ」
「……あなたが私の嘘を見抜いたように、私も同じことができます」
「戯け、確証も無い癖に。そう言っておけば観念するかと思ったか?」
「見抜かれたことが恥ずかしいから強がりですか?」
「生意気な」
 議論の膠着。これでは先程と何も変わらない。ああもう苛々してきた。眼前の恰幅のある男──アドルノ・フォンターナ──は、利害でのみ動く男だ。利益のためなら法や倫理さえも抑止力とはなりえない……歪んだ男。

「もういいです、この話しは一旦置いておいて、他の話をしましょう……そうですね、あなたの愛娘の話など」
「…………何が言いたい?」
「そのままの意味ですよ。確かお名前は、ラウラといいましたか」
「…………」

 狼狽。

「たいそう美しい容姿だったようですね。女性にしてはやや長身、でしたっけ」

 焦り。

「……一度、お会いしてみたいですね?」

「────っ! 何が言いたいんだっ!!」
「さぁ」

 激昴。机を殴るその手は手錠で繋がれている。……机ではなく、私に手を上げることも、この距離ならできたのに。
「どうせ処刑されるとわかっているなら、今更私に手を上げても変わらないのでは? それでも、物への八つ当たりに留めたのは、まだどこかで自分は助かると思っているからでしょうか」
 嗚呼、面倒くさい。元からこんな下衆の尋問など私の仕事ではない、やらなければならないことは何一つ片付いていないのだ。

「私達が欲しいのは、『お前がやった』という確証、つまり言質のみです──ああ、そうだ、丁度良い。今この場を見ている人は誰もいないですね?」
 部屋の四隅をもう一度確認する、ランプはついていない。そしてこんなことを口走ったのを誰かが外で聞いていたなら、直ぐに止めに来るだろう、「何をする気だ」と。それが来ない、ということは、私の自由にできるのだ。簡素なパイプ椅子から立ち上がり、軍服の内ポケットに入れたピストルを取り出し、セーフティを外す。

「──自国を売った罪人は、持ち込んだ1本の針金で器用にも手錠の鍵を外した」
 1発。手錠の鍵が壊れ、彼の手が自由になる。

「──罪人は私を脅すのです、情報が欲しければ、解放と引き変えだ、と」
 逃げ惑う男の右手首を捕まえ、ピストルを持たせる。

「──解放しなければ、自殺するぞ」
 捕まえた手を、彼の頭のすぐ側に持っていき、もう片方の手で銃口を頭に向ける。抵抗は無かった。諦めたか、それとも思考ができるほど正気ではなくなってしまったか。

「──私は、やめておけ、と勧告したんですけどね」
 こめかみにぐっと押し付けた銃口、重ねた手で引き金を引いた。












8ヶ月前 No.11

陽香 @brahman☆r92H8KW1RF2 ★Android=qkiWwZL3Tn

久しぶりの、オフ日。

 社畜ならぬ軍畜を極めてる俺にとって、完全なオフ日は月に3日あるかないか。いや、これは完全に善意で仕事を引き受けて持ち帰りまくり、やれそうな仕事全部請け負って、その結果「手が足りなくなったら山内に助けを求めろ」という空気を作り出してしまった俺自身の責任なのだが。まぁ、実際働くことは苦じゃないし、蟲から市民を守るための誇り高い職だと自負している。今まで葬ってきた汚点──何人かの能力者達──は、いずれも大なり小なり、国家に仇なすテロリストであった。所属は明らかになっていないが、その所属など後からいくらでも調べられる。早急に、誰にも見られず、そうやって人間をやめた月喰蟲の寝床を葬る。

(家を出たはいいけど、どこに行こうか)

 そういえば、オフだと張り切って、風呂と寝るためだけにしか帰らなかった自宅を出たはいいが、肝心のどこへ行くかは決めていなかった。無意識に自宅のアパートから歩いて20分くらいの大型ショッピングモールまで来たが……。雨も降っているし、これ以上の移動をすることもなんだか面倒くさあ。

 ……あ、そうだ、映画でも見ようかな。そのあとどこかでお昼ご飯を食べよう。そしたら、あり余らせている対月喰蟲特選軍のやたら高い給金で服でも買おうか──買ったところで外出するかは置いておいてね。

 そうと決まれば、方向の定まった足はペースを少し上げる。エスカレーターを乗り継ぎ、最上階近くの映画館へ。このショッピングモールは、大きな中庭を円形に囲むように建てられている。中庭に面したところに入口を向けるこの映画館、ウッドデッキ風の通路の1番近いところは屋根では防ぎきれなかった雨で濡れている。さて、何を見ようか、と壁に貼られたポスターを横目に眺めながら、自動ドアのボタンを押そうとした──そのとき。

「だから走ったら危ないって言ったじゃない!!」

 女性の甲高い声。えっ俺走ったっけ、とついついその声の方向に目を向ける。……いや、完全に俺に向けた言葉じゃないのにな。
 目の先には女性、そして女性の目線の先にいるのは、幼稚園児ほどの小さな女の子。……ああ、痛そうに、濡れた床を走って転んでしまったのか。涙に滲むその顔を、母と思しきさっきの女性が涙を拭き、転んだ時にできたのであろう、膝の大きな傷口から溢れる血をハンカチで拭く。怪我にも負けず、強く生きるんだぞ少女……。

「ママ、もうだいじょうぶ、いたくないよ?」
「え?」
「え……?」

 1回目の「え?」は女性の声、2回目の「え?」は俺の声。チラ見でしかなかったが、なかなかの量の血が出ていたはずである。それなのに、強がりでもなんでもなく、あっさりした口調での「いたくない」。……考えたくはない、のだけど。

「お母さん、すいません、その子を見せてください」

 つい焦ってしまった。困惑する女性に、「あ、そうだ、すいません」とポケットに入れたパスケースから自衛官のIDカードを見せる。俺の名前と顔写真付きの、警察の持ってる警察手帳のようなものだ。
「じ、自衛官!? なんなんですか急に!?」
「すいません。その子の傷口見せてください」

 振り払う母親の静止を振り払い、さきほどの女の子のところにしゃがみこむ。「怪我したところ見せてね」、と言いながら、さきほどまで母親がハンカチを当てていた膝を触る。

 ──血がついているが、その血を出した傷口はどこにもない。間違いない、この子は月喰蟲に寄生されている。

「……お母さん、最近この子の周囲で、何か不思議な現象が起こったりしませんでしたか?」
「な、なによ急に!?」
「いいから教えてください!!」

 女の子へ向けていた目を離し身体の向きを変え、女性へ目を向ける。急な質問に混乱させてしまったか……ああ、俺のせいだ。

「……不思議な現象、ですか?」
「ええ。物が浮いたり、とか、そういうありえない現象が」
「……そういえば、この子に持ち上げられるはずもない植木鉢を持ち上げたりとか、していましたね」
「…………」

 やっぱり。

「すいませんお母さん、この子は自衛隊の方で身柄を確保させてください」
 普段は保護なんてしない。人気の無いところに誘い込んで悪即断、その後毒島さんに報告して後処理。

「自衛隊で身柄って──この子に何をする気です!?」
「すいません、言えないです、国家機密なので」

 声を荒らげる異常な様子の女性に、野次馬が集まり始める。ああ、まずい、かかいわ会話を聞かれるのもまずい、どうすればいい……。
 ────いや、身柄を確保、なんて言ったが、やることは変わらない。俺がやるのか、他の人がやるのか、実験材料にされるのか。いくらここで表現を湾曲にしたって、この子が辿り着く結果はただひとつ。

 ……こんな子が、国家に仇なす能力者?

 違う違う違う違う、そんなわけない、月喰蟲がたまたまこの子を選んだだけだ、この子は自分の能力も運命も何も知らない、たまたま月喰蟲がこの子を選んだだけだ、なんで殺されなきゃいけないんだ、なんで、なんで──

「……取り乱してすいません。今のこと、忘れてください」

 ぐるぐる回って目眩がしていた思考に急ブレーキをかける。

「俺の言うこと覚えておいて……力は使っちゃいけない、怪我もしてはダメだ。今はまだわからないかもしれないけど、約束だ」

 女の子に耳打つように。……これでいい、これでいいんだ。

8ヶ月前 No.12

陽香 @brahman☆r92H8KW1RF2 ★Android=qkiWwZL3Tn

「……困るなぁ」

 おそらく彼自身にも聞こえないほど、それくらい小さな声で、真木泉は呟いた。深くソファに腰掛けた彼の膝には、すぅすぅと寝息をたてる少女、安倍川みやび。彼の膝の上に寝転がり、彼女の顔は天井を向いていた。彼が少しだけでも目線を下にやれば、その彼女の顔を独り占めできる。2人がけには余裕のある大きなソファに両足を投げ出した彼女に、「風邪ひくよ」と呟き、ソファの背もたれに置きっぱなしのブランケットを半身を捩り手に取ると、誰にも見せたくないものを隠すように、ふわりと彼女の身体へかけた。
 彼は、その彼女の髪を、形の無い雲を触るようにそっと撫でる。子供扱いを嫌がる彼女でも、寝ている間は自由だから、と。僅かに手を動かすだけで、ドライヤーで乾かしたばっかりの彼女の髪が、彼と同じシャンプーの匂いを巻き上げる。
 金曜日の夜、ゆったりとした性格の彼と、普段の活発さを置いて眠る彼女。静かな時間が、そこに訪れる。

 つい先日中学校教諭をクビになった彼、現在はフリーターとして仕事もしているが、やはりそれは不定期で不規則だ。それに対し、自衛隊所属、公務員である彼女のスケジュールはこれ以上無いくらい規則的。夜勤や土日の出勤が多い彼と暮らしていても、こうして2人とも夕方に帰ってきて、更に2人とも翌日が休みな日なんてほとんど無い。……だから、許されるか。

────いやいやいや。

 許されるかどうか、なんておれの一存で決めていいことじゃない。こういうことは、ちゃんと同意を取らないといけない。そういうものだ。友人には「お前は慎重になりすぎ」と、高校時代からずっとずっとよく言われたものだけど、慎重になりすぎもクソもあるか。おれはこの子が好きだ。だから絶対に傷付けたくない、少しでもおれのせいで悲しい思いをさせたくない。

「…………」

 ……それでも、ああ、かわいい。おれなんかでは見ることも出来ないくらい大きなものを、こんな細い身体で背負ってるこの子の、少しでも張り詰めっぱなしの気を緩められる、拠り所になりたい。頼りにされたい。「君が世界を守るなら、僕はその孤独な君を守る」なんて、どこかで聞いたことあるセリフだけど、それはあまりにも崇高で尊大でただの理想だ。おれがこの子にできることなんて、ほとんど無い。そんなこと、この子の卒業式以来疎遠になってたこの子に再び会ったとき、その目を見て全部わかった。拠り所になりたい、なんてのも烏滸がましかったのかもしれない。でも。

 身をぐっと屈め、近付く。仰向けに寝ていたんだから、奪われてもしょうがないよ、と自分で自分に言い訳をしながら。
 ──柔い熱が、触れる。

「……ごめん、起こしちゃった?」

6ヶ月前 No.13

陽香 @brahman☆r92H8KW1RF2 ★Android=qkiWwZL3Tn

「……う"、あ"っぁ、く、う"ぁ……はぁ、ははっ……くっ、ふふふ、ああ……っ!!」

 薄暗い部屋に響く声は、1人ぶん。物音は2人ぶん──いや、1つは既にこの場から去った。つまりこの部屋の中で音を立てるような存在は、この僕だけだ。規則的でいるような、全くそうでないような間隔で、液体の滴下音が僕の真下で絶えず絶えず響く。
 決してどこも痛くはない。あの日から全く、僕の身体は『痛まない』のだ。僕が昔のままだったら、今すごく痛いのだろう。文字通り、身が裂けるくらい。……それなのに、痛くはない。肉に直接空気が触れる感覚、身体の血が全て流れ出てしまうんじゃないかという錯覚。ああ、堪らない、堪らない。こんな恥辱、普通の感性をした普通の人間ならまず堪えられない。だから、堪らない。
 身体の痛みを無くした僕にとって、僕という人間への恥辱屈辱、精神的な痛みが、唯一の痛みだから。

 ──たまには過去でも振り返ろうじゃないか。僕はいつからか、痛みを感じなければ、もしかしたら自分は既に死んでいるんじゃないか、そういう感覚に日夜陥っていた。今でも腕に残る自傷跡は、全てそれ──生きている、という実感を得るためのものだった。
 しかし、ある日、事態は変わった。2020年1月、僕はあの日を忘れはしない。身体中の全ての痛点が消えたような、皮膚の感覚はあるのに、『痛み』だけがバグのようにごっそり抜け落ちた。『傷つけただけの傷』なんかじゃ到底足りない。
 それからの日々は、地獄だった。
 生きている実感が無いのだ。そこら辺の人間なんて、生きている実感なんてロクに考えたことがないだろう。しかし、僕は違う、痛みがないと、生きてなんかいられない。痛くないのが、苦しい。苦しくてしょうがない。
 ──そのとき、出会ったのだ。姫と王子は、運命的に。

 ──なんて言うと、少しクサすぎるか。しかし、運命だったのだ。
 肉体への痛みを感じない僕に、姫が与えたのは、金銀財宝でもガラスの靴でも目覚めの口付けでもなく、『恥辱』。人間として下劣極まりない、まるで人ではないものを扱うような、そういった恥辱。肉体ではなく、精神への痛み。まさに快楽だった。生き地獄だった僕の生活を、また現世へと引きずり上げたあの快楽。

 そしてそれを与えてくれるのが彼女──さっきまでここにいた、彼女だ。

 姫宮キラ。

 その名前は、僕の全てに死んでも骨になっても骨さえも燃え尽きても、それでも残り続けると確信できるほど鮮明に刻みつけられた。

 僕の姫。僕の欲しいものは全て与えてくれる、僕の姫。僕は姫を奪おうと躍起になる者達、その中の1人だ。しかし僕は彼女にとって特別だ。なぜなら、さっきまで彼女とこの部屋に2人きり。彼女は僕に気がある? はは、笑わせる、僕の相手があんな子供だなんて。

 彼女は、僕に快楽を与える、ただそれだけの存在だ。そこに彼女の嗜虐心と、僕の被嗜虐心以外は存在しない。それでいい。

6ヶ月前 No.14

陽香 @brahman☆r92H8KW1RF2 ★Android=lmNuvruUyx

「今日は何の日って、3月14日……え、特になんの日で、mお"っ"あ"っい"っっっってぇ"!!!!」

 大地が揺れた。真下に1メートルは沈んだんじゃないかってくらい揺れた。

「なにすんですかジーンさん! 机座ったっていいでしょう!?!?」
「違う俺が怒ってるのはそっちじゃねェ」

 そう言ってジーンさんが指さしたのは、卓上カレンダー。今日の日付、3月14日の数字の下には、小さい文字で書かれた『ホワイトデー』。ホワイトデー……ホワイトデーってなんの日──

「ああ!! お返しか!?!?」
「正解だ。お前のことだから準備してねぇんじゃないかと思ってな」
「……よくわかってんじゃないすか」

 見抜かれた。完全に見抜かれた。そうだよ、ホワイトデーなんて今の今まで忘れていて、今さっきジーンさんに言われてやっと気付いた。お返し、なんて何すりゃいいんだ。デパートにでも買いに行けばいいのか。

「あ、じゃあジーンは何か用意したんですか──あれいつの間にいなくなってたんだ」

 俺が机の残骸から脱出している間にどこ行ったんだ……。ジーンさんもあのユーリスの眼鏡ちゃんからなにかもらっていたらしいし、俺にこんな風に言ってきたんだから、お返しだってするだろう。何買ったか聞こうと思ったのに……。

「……買い行くか」

 時刻は午後4時、今から百貨店に行けばどうにかなるだろう。
 俺の椅子、兼、机の残骸を尻目に廊下へ出る。歩いてすぐくらいの場所にそこそこ大きな百貨店があった。そこに行けばなんとかなるだろう。

 アイアンメイデン本部から中央区へ向かう。少し先に高いビルが見える……そうだそうだあそこだ。あそこの地下は年中甘ったるい匂いがする、そこでテキトーなのを見繕えばいいか。

「あれ、フラン! お仕事終わりですか?」
「…………おう」

 はい、計画破綻。
 お返しを買いに行くのに、本人がいちゃまずいだろう。いやぁ、どうしたもんか……。

「私も今から帰るところなんです。一緒に帰りましょう?」
「そうだな」

 生活リズムが全く合わない俺達が、こうやって街で偶然会って、一緒に帰るだなんて、本当に滅多にないことだ。……あ、ホワイトデー。どうしよう……明日でいっか。

6ヶ月前 No.15

陽香 @brahman☆r92H8KW1RF2 ★Android=lmNuvruUyx

「……で、だから? 言い訳はいりませんよ」

 ──躰、愛。
 それがなんだってんだ。それのどこが金になる、価値にはなるがそれは決して金ではない。価値はその場から動かない、金は回る。俺が欲しいのは『俺を満たす価値』ではなく『俺が生きるための金』だ。

「お願い、お願いします……!」
「あのさぁ……俺はずっと言ってるじゃないですか、身体じゃない、保険金と引き換えだって。そういう事故死の現場を作るのは得意って言ったでしょう? アンタ1人が死ねば、もう大事な──家族でしたっけ? そいつらだって苦しまない」

 衝撃音。何かを硬い壁に打ち付けた音。

 軽い、あまりにも軽い。これが『生きている人間』の重さだ。生きている人間はこんな簡単に持ち上がる。もちろん壁にいくらか体重をやってる分もある、それでも、俺の大して屈強ではない両の手で持ち上がるくらいに、軽い。

「アンタ自身の命の重さを知っているか? 50キロだ。お前が金塊だってなら話は別だが、人間の重さは価値じゃない。その重さは金に換算できない、そんなことも知んねぇのか。女の躰? 俺がいつお前を買うって言った? そうやって抵抗して俺の手をどうする? そうやれば離してやるとでも──あっ」

 やっちまった。

 手の力を緩める。どさ、と何かが床に落ちる音がした。足元から、温い……いや、気持ち悪い温度の感覚が迫ってくる。

「ゲボ、お願、いします……っ、何でもします、命だけは──っ」
「うるさい」

 精一杯に気道を広げ酸素を吸おうとする姿。今更なんの感慨も湧かない……ああ、今更じゃなくても、俺は別に他人のこういう姿に興味なんか無かったっけ。
 醜くても、生に縋るその姿は美しい。しかし美談では生きていけない、美しさは金にはならない。

「いい加減やめてくんない? そろそろ気持ち悪ぃぞ、アンタ」

5ヶ月前 No.16

陽香 @brahman☆r92H8KW1RF2 ★Android=lmNuvruUyx

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※警告に同意して書きこまれました (性的な表現)
3ヶ月前 No.17
ページ: 1

 
 
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