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ねこみみ

 ( 書き捨て!小説 )
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しおり @azalia0607 ★iPhone=PhNv1neWcD

『堅実』。いい言葉だ。

『勤勉』。非常にいいことだ。

『平穏』。理想的じゃないか。

さて。そんなものが一体どうすれば当然のように確保できるのだろう。


ーーーーー
オリジナル設定書き散らします。

初心者の所であげるか迷ったのですが、結構飛び飛びになりかねないと思ったのでこちらにしました。

多分俺TUEEEE系になると思いますので、不快に感じたらバックお願いします。

関連リンク: あれこれ 
ページ: 1


 
 

しおり @azalia0607 ★iPhone=PhNv1neWcD

別に、目下不満があるということもない。

自分が出来ることをして、誰かを助けるということが嫌な訳でもない。まあ、もし感謝されたのなら、正直悪くない気分だ。

最低限の良識はあるつもりだし、そこを超えたことを許容するつもりもない。だから今この仕事をしているし、今の仕事にそこそこに、誇りを持っている。


「とんだブラック企業だけどなぁ」


ぽつりと呟いた俺の言葉に、一人が振り向いた。それ解るー、と手振りだけで示してくるそいつは、ウチのトップの、カンペを見ながらの演説をスルーしまくってにこにこと笑っている。
そして両手の人差し指をこちらに向けて、なんのポーズなのか知らないがくねくねと動いている。そのせいか、周りの奴らが非常に邪魔そうにしている。やめろ、こっちを見るな。同類と勘違いされる。
元々不用意に漏れた独り言のせいだということを棚に置き、その不審者を視界から外してまた、壇上を見上げた。

そこでは朗々とカンペを読み上げる、俺の、直属の上司がいる。全くこちらを見ない所が逆に清々しい。その内容はしっかりと練られているが、せめてちらりとでもこっち側を見りゃあいいものを。明らかに半分は話聞いてねぇぞこれ。

百人そこそこ収容するこの大部屋にいる人間は、しかし十数人はあからさまに寝ている。そしてさらに十数人そこそこがぼんやりとした目で虚空を見ている。意識は夢と現を行ったり来たりしているだろうことは少し見れば解る。が、彼らはまだ聞く気があるようで、頑張っている様子も解る。
残り三分の二は、その半数は真面目に演説内容を聞いている。五、六人は目を瞑りながらではあるが、起きてはいるようだ。十人ほどは全く関係の無い書類を見ている。あと十数人は小声でなにやら会話をしている。若干一名は不審な動きをしている。びっくりする程マナーがなっていない。

それでもなにも言われないのは何故か。…一名を除き、全部仕事のせいでこうなっているからだ。
書類を見ている奴らのその書類は今日の仕事分だ。小声の話し合いは今日の仕事についてだ。寝てるのと寝そうな奴らは、最低でも昨日から寝ていない。残りはまだ余裕があるから起きて聞いているだけに過ぎない。

演説をしているウチの上司も目の下のクマが結構酷い。段々と声が単調になってきている所を見るに、もうじき限界を超えるだろう。壇上で倒れなければいいのだが。

何故こんな満身創痍な状態で演説なんてしたり聞いたりしてるのか。まあ創立記念日だからだ。なんか形だけでもしておこう、という体だ。最初の一回をこんな形にして以降、ずるずると続いてしまった悪しき慣習だ。休日にすれば良かったと俺を含めた創立メンバーの半数は思っている。残り半数は変える必要性がないと思っているから変わらないのだが。

労働基準法なんてものがうちにもあればいいと思うのだが、残念ながら無い。適用しない、ではなく無い。残業規程もなければ週休二日制もない。休みたければ多くはない有給申請を出せという、びっくりする程素晴らしくブラック企業だ。

さて、そんなうちの仕事内容は何か。これがちょっとやそっとの企業では太刀打ちできないだろうものだったりする。多分人の役に立ちたいならうちは、どこよりも人の役にたてると胸を張れる。そこらの大企業なんかじゃ勝負にならないだろう。
なにか?…世界の平和を守ることだ。休日なんてなくなるのも納得じゃないか?





ーーーーー
特殊設定。
世界の秩序を守る系異世界ブラック企業。
主人公はその創業メンバー。

7ヶ月前 No.1

しおり @azalia0607 ★iPhone=PhNv1neWcD

「つーつーじーくーん」

後ろから聞こえる間延びした声に振り返る。と、同時に肩を叩かれた。見ると、例の謎ダンスを踊っていた若干一名が随分と楽しそうに笑っていた。

「んだよ、ラルス」
「あーやっとこっち向いてくれた。さっきからずっと無視するんだもの。酷いよー」

言葉と裏腹ににこやかな表情で、謎ダンス改めラルスは脇を小突いてきた。こういうテンションが微妙に鬱陶しい。
何より今目を引くのは、緩く高い位置でまとめられている明るい茶髪だ。どうにも小綺麗で、パッと見ただけでシャワーを浴びてきたのだろうことが伺える。そのせいでか、周りの視線がとても痛い。

「…で、何か用?例の謎ダンスについての評価が欲しいのか?」
「ん?ちょっと何言ってんのかよくわかんないけど、別に用事なんてないよー。友達がいたから話しかけただけ」

特に徹夜組の視線がどうしようもなく痛々しくて、こいつの事なんて知らねぇと周囲にアピールしようとしたら、真っ先にそれを潰された。因みに言うと友達になんてなった覚えはない。ギリ腐れ縁だ。

「同期=友達じゃねーぞ。頭洗ってる暇があんなら寝ろ」
「ひどーい。僕ら社内泊(お泊まり)までした親友じゃない」
「全社員が親友だな。やったなラルス。友達増えるぞ」

仕方なく無関係アピールが無理ならば、と適当に話を切って早足で逃げようとする。が、これまた奴は執拗に追い掛けてくる。自然と視線もついてくる訳だが、当の視線を集めているラルスアホ野郎はこれでもかというほど笑顔だ。腹が立ってくる。なんなのだろう。
睨み付けてこっち来んなと威嚇するが、くすりと笑ってスルーしやがるし。

「ほんとなんなんだよお前」
「だからさ、友達と一緒に競歩してるだけだよー。決して仕事柄清潔感必須ってだけなのに睨んでくるの鬱陶しいし、誰か巻き込んでやろうかななんて思ってないよ」

ついに取り繕うことをやめやがった。僕だけが不幸になる世界なんて認めなーい、とけらけらと笑う奴の目は確実に俺をターゲットとして見ている。逃がす気は無いと訴えてきている。勘弁して欲しい。
そんなコイツの役職は、人の不幸で飯が美味いタイプのメンタルケア、カウンセラーだったりする。別にカウンセラーがメシウマタイプだと言っている訳ではない。
普段の態度を見ていると、どうやってメンタルをケアしているのか甚だ疑問なのだが、本部にも時々呼ばれる程度には人気らしい。謎だ。

7ヶ月前 No.2

しおり @azalia0607 ★iPhone=PhNv1neWcD

流石に逃げきれなさそうなことは察し、仕方なく早足を緩める。奴は身内に対する嫌がらせでは苦を惜しまない。これ以上こんな所で無駄に体力を使うのも逆に負けた気がする。

「そーもそもさー。ストレスの方向性が違うだけじゃん?総量は変わりはしないのにねー。僕らだってしんどいんだよ?精神的に曇り時々フルボッコだからね?」
「…不機嫌だな。なんかあった訳?」

あまり聞きたくはなかったが、どうせ隣を歩かれると言うのにずっとスルー、と言うのも気まずいなと、適当に問いかける。どうせ部署も違うし、仕事なら踏み込んだ話もされないだろうと。

「まだアナウンスされてないけど、近々全社員のカウンセリングしろってお達しが来たんだよ」

思っていた時期が俺にもあった。公開されてないなら他部署の人間に勝手に公開するな。

「上は何考えてるんだろうねー。万年人手不足とは言え五百人は軽くいるじゃん。んでうち多く見積もって二十人そこそこだよ?どうせ大した時間も用意出来ないんだろうし、血迷うってレベルじゃないよね」
「まあ毎度の事ながら頭おかしいな。内部情報他部署に漏らすお前含め」

この情報が本当であれば、今でさえ時間的にかつかつの人間が圧倒的に多いうちの社員は、下手をすると恐慌を起こしかねない。こちらの仕事の空きをちゃんと見計らってくれるのか。どれだけの時間的拘束を受けるのか。カウンセリングを受けるためだと言うのに、それにかかるためのストレスの方がマッハだろう。
実際に動く側も尋常でなく手間だろうが、それに合わせるために時間を作る受け手側もダメージを受ける。共倒れ必須な、正に悪魔的な企画だ。誰だろうそんなことを考えたのは。そして本当に何故に俺に言った。

「信用してるって受け取ってほしいなー。愚痴漏らす所の確保は早い方がいいしねー」

どこに耳があるか解ったもんじゃないというのに、どうやら後々愚痴るためにカミングアウトしたらしい。こっちも暇じゃねーんだぞと睨むが、笑いながらうちで暇な人探す方が難しいよと認めたくない正論を返された。…ん?いや、というか、なら遠慮しろよ。

7ヶ月前 No.3

しおり @azalia0607 ★iPhone=PhNv1neWcD

「あ、じゃあ僕こっちだから。またねー」
「おう。もう来んな」

わざとなのか大きく手をふるラルスにヒラヒラと追い払う様に振り返す。様にというかまさにそのつもりなのだが、それに対抗しているつもりなのか振る手が更にあからさまに大袈裟になった。やめろ、周りの目が痛い。くるくる回るな、いい大人が。スキップ踏むな。可愛くねぇんだよ。
やべぇのに目を付けられた。疲労感に苛まれながらもため息混じりに自分の部署への道をとぼとぼ歩く。
無駄に、ではないのだろうが、広い敷地内の割と奥まった位置の集会所と、出入り口近辺にあるうちの部署は、結構遠い。その上自然を大事にする方針だかなんだかで、道は舗道なんてされていない。大変不便だ。
幸いなことに体力の限界から行き倒れている奴はそう見掛けないが、こういう所も雑なんだよなぁ、と内心でだけ溜息をこぼした。

云千年前に俺と、俺の妹と、後何人か、その場にいた奴らが意気投合して出来てしまったこの会社…と言うよりは組織は、かなり色んなところが雑だ。辛うじて『部署』だとか『有給制度』だとか、それっぽい感じのものを幾らか作って体裁は整えたが、最近は十年ぐらい毎に穴が浮かんで来ている気がする。その度に応急処置のようにてんやわんや動くのだが、ゆるゆると首を絞めあげられている様な停滞感が否めない。
どこかで手を入れるべきなんだろうが、今もうどこもいっぱいいっぱいで、元気のあるやつがいても、その言葉を聞き入れるだけの心の余裕のない奴も多い。そしてまだ元気のある上層部と余裕のない奴との間には温度差が、結構、無視出来ないくらいにはある。詰んでないだろうかコレ。

どーしようもねぇな、なんて思いながら漸く辿り着いた我が部署の門扉を爪先で蹴り開ける。手で開けるべきなんだろうが、ここにそれをするやつはあまりいない。大抵ここを通る奴は急いでいるか書類を抱えているか、はたまた心が荒んでいる。

「ただいま。」
「あ、隊長。おかえりなさい、式典終わったんですね。総隊長は?」
「多分舞台裏で気絶してんじゃねーかな、アレ」

えぇー確認して来といてくださいよー、と言われた文句を無視して自分のデスクに戻る。そこは今朝、片付けて綺麗にしてきたはずなのだが、辞書かと思うくらいの分厚さの書類が既に乗っていた。
別に珍しい事じゃない。想定内だ。まだ大した事件も起きてなさそうで安心できるくらいだ。

「他の奴らは?」
「ヒースが外回りで、二、三件片付けて来るそうです。セリアは総務部の方に殴り込み中ですね。適当な仕事されたとか怒ってました。コビーは新人の育成、案内がてらぐるっと回ってくるそうです。他のは仮眠してるかまだ帰ってきてないですね。」

名前が出た三人元気だな。思いつつ成程とひとつ頷く。
毎度の如くだが、この時期は大体どこも死屍累々だ。長い道の往復時間に式典の時間も食われる以上、手を付けられる仕事を残したがる奴はいない。どこでも自主的に徹夜する奴が増える。
そうして体力を使い切り、戻ってきた途端に糸が切れた様に眠りに就く奴が後を絶たない。

「隊長も仮眠とります?」
「まさか。余ってる仕事片付けるよ」

それでもやはり仕事は湧いてくる。世界の安寧を守るのは大変なのだ。俺らが寝ていても世界は止まってくれないのだから。

6ヶ月前 No.4

しおり @azalia0607 ★iPhone=PhNv1neWcD

もうずっとずっと昔のことだ。俺達は小さな世界に住んでいた。

朝も昼もぼんやりと空に浮かぶ光を眺めながら。そこらに生えた木の実だけを採って食べるで生き延びられる、そんな安穏とした世界だ。外敵はいない。自分達しかいなかった。

それを誰かは箱庭のようだと言った。誰かは、楽園だと言った。アダムとイブがかつて住んでいたエデンの園と、そう例えた無駄に詩的な奴がいた。

俺達は、誰一人としてそこで産まれた奴はいなかった。

その前にどこかで暮らしてたという奴。追放されたという奴。逃げ延びて気が付いたらいたという奴。とにかく、純粋に誰か、ここに親を持って産まれた人間はいなかった。

だから、例の詩的な奴風に言うなら、知恵の実なんざ遥か昔の祖先がそれぞれ食べてしまっていた。だから、罪に当たるものなんてないと。無意識に思っていたのかもしれない。


「お兄ちゃん?」
「椿。」

後ろから声をかけられて振り返る。考え事をしていたからか全く気付かなかった。

「どうしたの?こんな所で」

ぐる、と視線を周囲に巡らせ尋ねてくる妹、椿は、やはりと言うか当然と言うか、書類を抱えていた。少し重そうだが、機密文書の類もしっかり扱う位置にいる優秀な妹だ。代わりに持ってやるという訳にもいかない。
なら早めに話を切り上げてやった方がいい。そう思って視線を上げ、口を開く。

「仕事で近くまで来たから見に来ただけ。この辺の世界に近々様子見に行く用事あるしな」
「ああ…そっか、次ここなんだ」

また周囲に視線を流す椿につられるように、この場を見回す。
足場は整った園庭と言えなくもない。緑鮮やかな草原に白い花のよく映える、そんな中庭のような場所だ。そして奇異なことに、得体の知れない幾つもの浮かぶ球体がある。その周りに窓、の様なモニターが、これまた幾つも設置されている。
そのモニターは後付けだが、球体は元からここにあったものだ。ここで出来て行ったという方がより正しいかもしれない。

「次は…長いの?」
「いや、そんなでもない。行って数日、何事もなければ一日で終わる」

次の仕事の『目的地』である球体のひとつを見て、その内容を思い出しながら言う。
そこでは今、下手をすると終末戦争になりかねない事態が起きている。どうも一々悪い方へころころと転がっているようで、外部からの横槍がなければ、それの勃発は確定的だろう。それを止めに行くだけの、簡単なお仕事だ。

「一人、だったよね、確か」
「ああ。この時期は仕事がよく滞るから何人も派遣してらんねぇし」

ぐるりとまたその場を見渡して、大小様々な無数にあるその球体に目をやりながらぼやく。それらのどれがどこかなんて詳しく覚えてはいないが、仕事で関わってきたものは少なくない数存在する。

「気を付けてね」
「ん、心配すんなよ。問題ない」

決して良くあることではないが、珍しい話でもない。俺にとっては半ば慣れた作業だ。
緊張感やら責任感やらが無くなるわけではないが、無駄にビビることもない。疎遠な所でもなく、もしかすると顔を出すだけで終わる可能性だってある。最早気負う要素がない。

6ヶ月前 No.5

しおり @azalia0607 ★iPhone=PhNv1neWcD

小高い丘で、ゆっくりと落ちては消える星を見るのが好きだった。
それがなにかなんて知らなかったから。


「ただいま戻りました」
「お疲れぇー。営業部どだった?」
「お疲れ様ですミザリーさん。死にそうな顔の人がとても沢山いました」

大量に持っていた書類をデスクに置いて、ファイルを取り出す。ついこの間整理したばかりだと思っていたのだけど、もう厚みが出来つつある。この時期は本当にいつもこうだ。

「つーくんどうなの?お兄さん。元気?営業部のホープ」
「…はぁ。そうですね。敷地を回れる程度の余裕はあるようでした。」
「ふへぇ。流石ホープ。」

兄本人が聞いたなら苦い顔をしそうだな、と思いながら、さっき中庭であった時の様子を思い出す。疲れはあるようだったけれど、流石というか、休むつもりは全くなさそうだった。
自覚があるのか解らないけど、影で社畜体質と呼ばれるだけあるなとか、言ったら怒られるだろうか。怒られるかもしれない。

「なになに、ツツジくんの話?私も混ぜてぇ」
「ドロンさん…仕事いいんですか?」
「仕事したくないから混ぜてって言ってるのよぉ」

ね?ね?いいでしょ?と腰をくねらせながら近付いてくるドロンさんは、サボり常習犯だ。仕事自体はしっかり期日までに終わらせはするのだけど、ちょっと周りの士気は下がる。
これで彼が美女であればむしろ傅く、とか一部で言われていたが、残念ながら美少年だ。比較的地味な人間が多い総務部では珍しくキャラが濃い。
ミザリーさんの方を見ると秒速で仕事に戻っていた。喋り方はゆっくりなのにこういう時は素早い。助けて欲しいのだけど。
数秒視線を送っても反応がないし、仕方なく諦めてドロンさんに向き直る。

「そんなんだから苦情が来るんですよ。真面目にやれって、よりによって今日来た方がいたんでしょう?」
「あーセリアね。あの子にはちょっと悪いことしたわぁ。そこはもう反省済み」
「…態度がそうは見えないんですが…」

兄と同じ部署のあの勝気な少女を思い出す。なにか問題があると直ぐに動けるフットワークの軽い子だが、そんな彼女でもこの時期は疲れが溜まっているだろうに、一体ドロンさんは何をしたんだろう。
私がジト目で見ていると、しかし彼は不意に真面目な顔になった。

「でもね、わかってほしいの。いくら私が有能だとは言っても、ここの労働時間ちょっと可笑しいわ。蝶よ花よとチヤホヤされ続けて育った私が真面目に働いたら、この美しさが萎れちゃう」
「…一体何百年前の話ですか」

辛うじてそう言い返すものの、労働時間に関しては誰も何も言えない。そんなの皆解っているもの。
ちょっと可笑しい、なんてオブラートに包んだ表現だ。徹夜が定期的に強いられ、休憩時間が時々無くて、大体削って仕事して、週の休みは自ら返上しないと業務が滞る。これをなんと呼ぶかくらい解る。ブラック企業だ。

「…とにかく、仕事をしましょう。ドロンさんも、セリアちゃんに悪いと思うのなら、どうぞご自分のデスクにお戻りください」
「えぇー…残念ねぇ。」

溜息混じりに戻っていくドロンさんに、誤魔化してしまった罪悪感を覚えながら席につき直す。

「…だって、仕方ないじゃない…」
「つばきぃは真面目ねー」

しれっと戻ってきたミザリーさんを思わず睨んで、そのまま溜息が零れる。別に彼女が悪い訳でも、ドロンさんの言葉が間違ってる訳でもない。
窓から見える、空に浮かぶぼんやりと光る星を眺める。それは、もう、落ちたりはしない。

仕方ない。そう、仕方ないのだ。あの星を落とさないためには。

3ヶ月前 No.6

しおり @azalia0607 ★iPhone=PhNv1neWcD

「いや、ほんと助かったっス!今回ばかしはマジもう無理かなって思ってて!」
「ちゃんとこっちまで報告が届いたからだよ。オプション最大級に使いまくって威圧したし、10年20年先くらいまでは好き勝手出来ねぇだろ。後は現地組で頑張ってくれ」
「はい!あ、この後宴会しようぜって話になってるんですけど、一緒にどうスか?美味い飯と酒大放出するんスよ!」
「んー…参加してぇのは山々なんだけど今ゴタゴタすげぇから帰るわ」
「っスか…あ、じゃあお土産だけでも持ってってください!ワインいけます?めっちゃいい瓶あるんスよ!」
「ああ、あんがとな」

ちょっと待っててくださいねー!とか叫びながらここの天使役が飛んでいくのを眺めつつ、思う。アイツ素はあんな感じだったんだな…。
信じられるか?さっきまで威圧感むんむんに『神の御前である、控えおろう』的なこと言いながら、オプションの後光を光らせて拝まれてたんだぜ、アイツ。なにあのテンション。あの落差。役者すぎんだろ。
まあ俺もこの世界では調停の神とかやってるし、ある程度は意識してそれっぽい空気も出したさ。だがあそこまで別物となると、いっそ見てる側としては面白い。手際も良かったし、報告書にはピックアップして書いておこう。

(さて、と。)

現実逃避はここまでにしておくか。
今回の件。振り返ってみると、概ね間の悪さとタイミングの悪さと、そして間の悪さ。その辺が嫌ってほどに重なって、神がかった運の悪さがトドメを刺した、みたいな事件だった。ここが悪いとか言う相手もなく、まあだからこそ神託フルで授けまくって、どうこうどうにか転がした訳だが。
ありがちな黒幕、なんて言うものもなく。強いて言うなら、信仰が弱まっていた所の不慮の事故だった。

(…折角大分進んでたんだがなぁ、ここ。)

うちの派遣…ここの世界でいう神の使者は、ひとつの宗教として信仰対象になっている。それも、大きな勢力のそれだ。そうでなければそこの神様なんて名乗るのが出てきて、すぐ受け入れられやしないだろう。
だが、そこで大きな力を持つことが俺達の目的ではない。俺達を信仰してる人間が権力を持つのも、あんまり嬉しくはない。どうしても実存する神を崇める集団、って事で発言権は増してしまうが、それは俺達の本意ではない。
むしろ、求めている所は、彼らが俺達の手から離れ自立することだ。一先ずの目標は産業革命だ。物質主義が確定すればどこの世界もいったんは安定する。勿論それに伴う自然破壊やらなんやらを推奨するつもりもないが、産業革命のそのラインを超えれば、後は大体安定していくだけなのだ。基本的にはうちが見ている所は一律、そこを目指す。
だから、信仰が弱まることは、むしろこちらとしては歓迎する事でもあったのだが。

(10年20年はまた権力増すなぁ…仕方ないとはいえ、そろそろまた規模も拡大するってのに…こりゃまた文句言われるだろうな…)

運営部の方の観測科に愚痴られるだろう未来が見える。もうちょっとどうにか出来なかったの?とか言われる。出来なかったんだよ。許してくれ。
珍しい事態でもないからどう責められるかがもう見なくても解る。正直しんどい。

(…ワイン、手土産にして機嫌とるか…)

憂鬱な気分で、大きく手とワイン瓶を振りながら帰ってきた、さっきの派遣に手を振り返しながら、思った。

3日前 No.7
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