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◆◇おひめさまのおまじない

 ( 書き捨て!小説 )
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@itxmm ★iPhone=uSyqKf7JNY



 お姫様は目覚めのキスなんてなくたって一人で起きられるの。

 魔女からの呪いなんてかかってない。
 お姫様なんて最初から居なかったの。


 −−−−お姫様の仮面を被った魔女は、貴方を縛る呪いを掛けたの。



*  *  *




 〒.自己満足な創作倉庫
 〒.同性愛+両性愛
 〒.血も出る


ページ: 1

 
 

@itxmm ★iPhone=uSyqKf7JNY















 A. 珈琲( 1 )




 やぁ、いらっしゃい。
 男性の暖かくて優しい柔らかな声が私の耳に心地よく響いた。男性の暖かくも優しくも柔らかい声は、私をどこか遠くへと誘っているようにも思えた。

 修学旅行。自由行動の時に本来班活動を義務付けられていたが、生憎厄介払いをされて単独行動を取っていた私は見事に修学旅行先での迷子になった。
 連絡を取れるような電子機器は夜中弄っていたせいで宿から出る時には既に充電がなくなっていたから宿に預けてしまったし、鬱蒼とした森に来てしまった私に行くも戻るもないんだということは直感した。
 しかし、いくら先も戻るもないと言えどもここでずっと立ってじっとしているわけにもいかない。
 怖くない、といえば嘘になる。恐怖心の方がずっと強い。けれど、この場にずっと居てはいけないと直感した。
 森の中、それも地図も携帯端末もない。北も南も東も西も分からない。この先をどう進めばいいのか分からない。どう戻れば良いのか分からない。
 キョロキョロとしてしまったせいでどこから来たのかすらあやふやになってしまった。
 私は取り敢えず、今向いている足と反対方向に足を向けて歩き出した。
 紅葉の季節、ガサガサと落ち葉を踏む音は森特有の音色を奏でているようだった。

 どれくらい歩いた頃だろうか。迷った時にはまだ高かった陽射しがもう沈もうとしているではないか。
 当然ながら、私は焦った。
 戻らなくちゃ。
 頭では分かっているのに、段々と足が重くなってきてしまった。足を動かす事に、苦痛を感じてきてしまった。
 森に生えた小さな草や木の枝が私のすねやふくらはぎに赤色の数をたくさん付けるから、足場の悪い道は何度も私の足を挫いたから。
 私もとうとう、その場に座り込んでしまった。
 座り込んでから時が進むのがとても早く感じた。日が沈んでいたのに、もう空には星が見え隠れし始めている。
 修学旅行場所という事もあり、どちらかと言えば都会地域だが、森の中では星を邪魔する光もいないので、星は無遠慮にキラキラと輝きを見せている。
 そんな無数の星を見たからか、中学の時、「人は過去の星を見ている」と先生が言っていたことを思い出した。
 過去の星。オリオン座の一部は本当は既に消えてるんじゃないかって最近聞いた。オリオン座は都会でも見れることが多いから私でもわかる。
 自然が美しい、と思った。

 星の美しさに目を惹かれていると、耳元に警報のようにパトカーの音が響いた。
 きっと誰かが呼んでくれたんだ!
 私はそう思うと、すぐにパトカーの音のする方へと走っていった。
 ヘトヘトだったはずなのに、足は痛くて動けないくらいだったのに、たくさんの怪我や傷を負ったのに、私の足はなぜかとても軽かった。
 ああ、それにしても、おなかがすいた。
 私が先を急ぐと、いつのまにかオレンジ色の灯る暖かそうなログハウスを見つける。
 きっと警察はすぐに来てくれるだろう。そうすればきっとこの家まで気付いてくれるかもしれない。それまで、あの人のお家で食事をさせてもらおう。
 私は、そう思って家に向かって足を踏み出した。


 ノックをしてみたが、なかなか人が出てこない。何度ノックをしたところで、中からの音も聞こえない。
 流石に外に放り出されたままも嫌だったので、木で出来た暖かなドアをそっと開けると、扉からはカランコロン、と綺麗な音が響いた。
 「やぁ、いらっしゃい」

 壁から天井までギッシリと一面に並ぶ本。暖かな橙色のシャンデリア。
 柔らかな男性の黒髪、そしてエプロン。
 木の匂いの中に、仄かにコーヒーの匂いがその場には漂っていた。













5ヶ月前 No.1

@itxmm ★iPhone=uSyqKf7JNY











 ( ※グロ。血が出る。 )

 1. 煙に巻く




 「なんやぁ、嘘つく悪い子には針千本、飲ませなあかんなぁ……? 」
 彼の黒い目が、妖艶に曲線を描いた。


 清華家は元々銃術として江戸の有名な道場であり、銃術を教える煙という最近元服を迎えたばかりの男は家の事を差し引いても特に有名だった。
 その名を清華煙。赤髪がかった結ばれた黒髪に、黒色の黒曜石のような瞳。常に上がった口角と薄い唇。家柄故の行儀作法、銃術から始まり体術、剣術、蹴鞠から茶道に華道までと多彩な才能。
 どれもが例え町衆の噂であっても、気にならない訳がないだろう。
 例えば、容姿端麗、とか。

 「な〜んもおもろい事あらへんのかいな」
 「煙さまぁ。お外行きましょうよぅ」
 「じゃ、お外出たらイトちゃんがおもろいもん見せてくれはる? 」
 「うっ」
 清華家、一室。
 一人、いや、二人であっても広すぎるくらいのその部屋に、煙は優雅に煙管をふかしながらつまらなさそうに口元を歪めていた。
 その側にいた背丈の小さい黄金の瞳が特徴的な茶色の髪を持つ「イトちゃん」と呼ばれた少年、清華糸もつまらなさそうに膨れっ面になりながら煙の側で足をパタパタと動かしていた。
 元服して間もないというのにも関わらず、随分となれた手つきで煙管をふかす煙の姿はもはや大人の男だった。
 「あー。つまらん」
 ふぅ、と煙管から口を離してそう言った煙。いつもの楽しそうに曲線を描く黒色の瞳は明らかにつまらなさそうにどこか宙を見ていた。
 煙の口から出てくる独特な話し方は共通性のない様々な国の方言が混ざっためちゃくちゃな言葉だった。
 この男、生まれも育ちも江戸である。

 「煙様、煙様にお会いしたいと申し出る女性がいらっしゃっていますが……通しますか? 」
 糸と煙の間に沈黙が流れていると、襖越しの男の声に煙は一度目を丸くした後に「ちょっと待ってなぁ」と返して暫し考える。
 本来はいきなり来るような無礼な女に会うような性格ではないが、煙はひどく暇を持て余していた。この際無礼も取り払って考えてしまおうと決めて一つ小さく頷いた。
 「おん。ええで、入れてやり」
 「えっ……!? 」
 「なんや、帰してしもたん? 」
 「い、いいえ! 呼んできます! 」
 襖越しの男の声は明らかに焦っていた。普段の煙であれば話を聞いた瞬間に突っ返す事もあり、何があったんだと襖越しの男は焦りながらも屋敷の外で待つ女性の元まで駆けた。
 隣にいた糸も煙の対応には驚いたのか、目を数度ぱちぱちとさせた後に首を柔く傾げた。
 「煙さま、ええと……私は蜘蛛になった方がよろしいですか? 」
 「余計な気ぃ遣わんでええの。ちぃとお話するだけやし、ヤラシー事は何もせぇへんで。あ、イトちゃん……見たいん? 」
 「ちっ、ちちちちち、違います! 人の情事など千年以上の妖である私は見慣れておりますが故!! 」
 今にも火が吹き出そうなほど真っ赤になった糸の顔に煙は面白がるようにくすくすと悪戯な笑みを浮かべて見せた。
 「え? 俺情事なんて言ってへんけど? 」
 「け、煙さま〜! 」
 ぷんぷんと怒った様子の糸の姿に、煙は声をあげて笑った。
 「イトちゃんはかわええなぁ」
 と、糸の頭を撫でてやりながら。

 トントン、と軽く二度襖を叩く音に「はぁい」と伸びた返事をする。
 煙は相も変わらずふてぶてしく肘置きに肘を置きながら頬杖をついて胡座をかいた様子だった。
 隣にいる糸はちょこんと礼儀正しく正座をして待っていた。
 襖がゆっくりと開けられたかと思えば、従者である男が女性を通すように手を差し出す。
 煙はその様子を目を細めながら見ていると、部屋に入ってきたのは美しく長い黒髪を持った……
 「はァ? 」
 醜女、だった。
 明らかに不機嫌そうなオーラを出しつつも、煙は普段のにこやかな表情を崩さない。隣で糸は絶句した後にこっそりと煙に「煙さま! 附子です! 」と何故か楽しそうに耳打ちした。
 「上げてくださり誠に感謝申し上げます、清華煙様。ずぅっと、お会いしたく思っておりました」
 頭を畳につけるほど下げながらそんな事を言った女の姿に、煙はすぐにパッと顔を明るくしてから「あは」と呟いて口を開く。
 「帰ってくれへん? 」
 「え……」
 ニコニコと笑ったままの煙の姿に女は絶句したようだった。
 煙はもう一度聞いてきそうな女の言葉を遮るように「だからぁ」と言ってもう一度口を開いた。

 「醜女に興味ないねん。帰れ、ドアホ」

 にこやかな表情のまま言い放った煙の言葉にクスクスと糸が隣で笑った。
 女は激昂したのか顔を真っ赤にさせて立ち上がると糸の方にズンズンと近付いて糸の首に触れた。
 瞬間に、女の手首が糸のようなものに絡みつく。
 「煙さま以外がイトちゃんに触んなよ。ブス」
 ブッ、と唾を女の顔に吐き出して糸は言い放つ。女は小さな悲鳴をあげて糸の絡みついていない方の手で顔を着物の袖で拭った。
 「な、何をするのです!! 煙様がこのような無礼な人だったなんて……会いたくなんてなかった……! 」
 「……悪いのはそんな汚いツラ見せて俺んとこ来たあんたやろ。そんな汚い手でイトちゃんに触るなんて失礼なんよ。イトちゃんに謝りや。……あ、ていうか、あんた今、嘘ついたやろ? 」
 泣きそうになる女の姿を見てクスクスと煙は言葉を返す。
 女はとうとう「う、うう……」と泣き出してしまい、煙はクスクスと笑ったあとに、目を細めた。

 「嘘をつくような悪い子には、針千本、飲ませてやらんとなぁ? イトちゃん、抵抗されたらめんどいしこの女の手首切ってええで」
 「はーい! 」
 煙の言葉が合図だったかのように、満面の笑みを見せた糸は女の手首に巻き付いた糸に力を込めると、女の両手首を切り落とした。
 ぼとり、と女の手首の先と血が落ちる。
 女は悲鳴すらあげられないのか、ガタガタと震えて煙と糸を見た。

 「イトちゃん、針持ってくるからここ、綺麗にしといてくれへん? 」
 「分かりました! やっておきますね! 」
 煙が立ち上がって女の横を通り過ぎると、糸はその場を片付け始め、女の手首より先を拾って処理に困ったので窓際に立てかけておいた。
 煙が戻ってくると、大きな箱を手にしていた。煙が大きな箱に手をかけると、その中には長さも太さも鋭さも違う千本以上の針が入っていた。

 「じゃ、針千本、飲んでもらおか」
 にっこりと笑って煙が言うと、糸が楽しそうにどれにしようかと歌いながら針を適当にとっていくと、恐怖で開いたままになっている女の口の中に突っ込んでいく。
 「あはは! うまいうまい、上手やで、イトちゃん」
 女は手首が切れた時既に意識が飛んでしまったのか、針を入れる度に小さな汚い悲鳴をあげるだけだった。

 「楽しませてもろたで、お嬢さん」
 千本目の太く鋭く長い針を無理矢理口に押し込んで煙は笑った。
 女の口に詰まった無数の針と、女の顔を貫通して畳に刺さる針。
 いつのまに夜が更けていたのか、糸は煙管から口を離して息を吐き出し、煙を巻いた。














5ヶ月前 No.2

@itxmm ★iPhone=uSyqKf7JNY











 ( ※そこまで血は出ないけど一応グロ。若干人食ネタ )

 1. イトを張る




 二十六夜の月が銀に輝く中、寺の本堂の前に座って空に向かって煙管の煙をふかす黄金の瞳が目を細めて輝いた。
 「……綺麗な月だねェ、坊ちゃん」
 ふっ、と柔らかな微笑みを落としながら黄金の瞳の持ち主はハスキーなテノールで今その場にいない主人に声を投げた。
 それに呼応するかのように、彼の煙管から出る煙は空へと伸びて、風に吹かれてはいずれ闇の中へと馴染んでいった。
 「御坊様、いらっしゃいますか!! 」
 慌てたような男の声に訝しげに目を細めると、煙管を咥えたまま声のした方に向かった。
 慌てた様子の男は寺から出てきた男の姿に一瞬目をぱちくりとさせた後、巨体に慌てた様子の男は怯んだ。
 「どうしたんだィ、兄ちゃん」
 二十六夜の月が、彼の黄金の瞳を確かに捉えた。


 「疫病……かァ」
 「はい、町衆はもうほぼ……妖の仕業ではないか、と噂されておりまして……」
 黄金の瞳を持つ男は顎に手を当てながら考えるように目を伏せながら茶を静かに啜る。
 「つまり……町を私に見て欲しい、ということでいいのかァ? 」
 「……はい、当然、報酬はお支払いします」
 「報酬はいらねェさ。連れてってくれ」
 「あ、ありがとうございます……! 」
 黄金の瞳を持つ男は、目の前の困った様子の男に気付かれないように柔く目を細めて曲線を描いた。
 もう一度二十六夜の月を見た後に、くく、と小さく声を漏らした。

 裸足のまま黄金の瞳を持つ男が町にやってくると、夜なのだから当然にしても、胸騒ぎのするような嫌な静けさがあった。
 黄金の瞳の男が煙管を一度ふかしてから状況を確認するように目を細める。
 「……妖の仕業だなァ、これは」
 眉を寄せながら顔を顰めて呟くと、黄金の男を連れてきた男は目を見開いた。
 「や、やはり、そうなんですね……。ど、どうすれば……!! つ、妻も疫病にかかってしまって……! 」
 縋るようにこちらを見つめてくる男の姿を一瞥した後に、黄金の瞳を一度光らせる。
 何か獲物の姿を黄金の瞳の中に捕らえると、不意に歩き出す。
 その後ろに黄金の瞳の男に助けを求めた男がついていくように歩いた。
 恐る恐る黄金の瞳を持つ男に「どこへ向かわれるのですか? 」と不安げに後ろを歩く男が尋ねると、黄金の瞳の男は喉をくく、と鳴らして笑った。
 「決まってるだろ、妖退治さ。

 ……なァ、僧侶殺しの妖さんよ」

 後ろを歩く男は、黄金の瞳の男の笑みに目を見開いた後に、ジリジリと後ずさった。
 黄金の瞳の男を見て、妖と呼ばれた男は耐えきれなくなったかのように脱兎のごとく逃げ出した。
 何の妖かは全く検討はつかなかったが、足の速さを見る限り風に関する妖なのだろう。緑色の瞳を見る限り鎌鼬が有力候補だろうか。
 黄金の瞳の男は、逃げ出す妖の姿を見て親指を噛むと、親指の先から白く細い糸を出して糸を投げる。
 指に投げた糸を巻き付けると、グッ、と力を込めて糸を引っ張った。
 どこか遠くで、男の叫び声のような悲鳴が聞こえたのを確認すると、黄金の瞳の男は指に巻きつけた糸を解いて糸の先まで歩く。
 糸の切れた先には、蜘蛛の巣に肉片が引っ付いていたのを目を細めて見た。

 「悪いねェ。慈善活動の趣味は無いが……ここは煙の坊ちゃんの敷地なのさ」
 妖の肉片を拾い上げて、鋭い歯を見せて黄金の瞳の男は肉片を噛みちぎり、何度か咀嚼した後に喉に流し込む。
 味の悪さに顔を顰めた後、ブッ、と赤色の混ざった唾を地面に吐き出すと、口の端についた血を着物の袖で拭った。
 その場に残ったただの赤色を確認すると、時が経てば自然と消えるだろうと黄金の瞳の男は裸足のまま肉片があった場所をグリグリと踏み潰した後にまた歩き出した。
 二十六夜の月が沈み、朝陽が昇るにつれ黄金の瞳の男は煙を出しながら巨体を窄め、朝陽が完全に昇った頃にはその辺にいる少年と瞳以外は何も変わらぬ姿だった。


 「煙さま、体調はいかがですか? 」
 「なんやぁ、ちょっと楽な気ぃするわ。まさか俺まで流行り病になるとはなぁ。遊んでやれなくてすまんな、イトちゃん」
 「いいえ、イトは煙さまには元気でいてほしいですから」
 「ははは! ほんま、ええこやなぁ。おおきに」
 とある屋敷の一室で、黄金の瞳の少年の目が柔らかな曲線を描いた。
 「完全に治ったわけとちゃうねん。うつると良くないし、部屋から出た方がええで」
 「いいえ、私はここに居ます。妖は病にかかりませんから」
 「……ま、イトちゃんの好きにしぃ」
 「はい! 」
 黄金の瞳の少年は、また静かに糸を紡ぐ。

 この主人のためにと、静かに、静かに、地の底へと巣を張っていく。
 細く白い、イトを。















5ヶ月前 No.3

@itxmm ★iPhone=uSyqKf7JNY















 I. Mammon ( one )




 赤色の雫が断頭台から落ちた時、エメラルドの瞳を持ったその男は咄嗟にその場から離れて雪の降るロンドンへと向かった。
 確実な契約をする予定だった。今から契約する男の“全財産”を持って契約をする予定だったが、自分を呼ぶ声に居ても立ってもいられず走り出してしまった。
 −−−−上質の、魂!!
 直感的に感じた久しい心地に舌舐めずりをする。目をギラギラに輝かせながら向かうその姿は猫のようで、悪魔というに相応しい“気”を持っている。
 雪の中啜り泣く未だ10にも満たない子供の姿に一瞬眉を潜めたが、10にも満たない子供の金に対する復讐の念となると、契約する男の欲望よりもずっと強そうだと思い、初めて幼児に取り憑くという感動から背筋がゾクゾクと震えた。
 それにしたって、無罪の父親の魂をあるべき場所に還す、なんて、本来は悪魔の仕事ではないが、そこに復讐が含まれている以上天使や神なんかには救済できない。
 自分にしか、できない。

 この男、子供の魂には興味はないが、そんなちっぽけな代償は必要はないが、この子供が来世はどうなるのかが何故か気になった。
 この純粋で残酷な欲望を持つこの子供が、来世はどんなに汚くなるのかが楽しみでしょうがなかった。
 墜ちた瞬間に、殺してやろう。そう決めた。

 『憐れな親子の復讐、貴様の名にかけて手助けをしてやろうじゃないか。貴様の来世までを代償にして、いつか貴様の父親の魂が貴様の金で在るべき場所に還されるまで』

 −−−−決まった!
 カッコつけたがりのこの男は小さくガッツポーズを浮かべてニッと歯を見せて笑った。無論、このカッコつけは後にしてすぐバレる。


 「ぼく……おれは、エドウィン・ウィスラー。きみは? 」
 「名前なんていい。お前の名前もいらない。お前にはエメラルドで十分だ」
 「……あんた、嫌なやつだな」
 「悪魔がいい奴な訳あるか」
 なんだこのガキ。思ってたより可愛くねぇ。本当にこんな可愛くないガキが親父のために金なんて集めるなんて願い持つのか? どっちかっつーと横領とかしたがりそうな感じするけど。
 ま、契約して目ん玉俺のもんにしちまった事に変わりはねえ。つまんねぇガキと契約しちまったかもなぁ。この際このガキの兄貴とやらのつまんねぇ願い叶えてた方が楽しかったかも。
 どっちかっつーと……このガキの親父の念で俺はここに飛ばされてきたようなもんなんだけど、その当の親父が死んでるから俺は親父の代わりにこのガキの側に居るってだけ。

 −−−−エドウィンを……あの子を、一人にしないでくれ。頼む、“Mammon”

 今思えば……あの親父、なんで俺の名前を呼んだ? 他にも悪魔はいる。正直、俺の知名度があんまりないのは知ってる。
 よりによって何故俺なんだ? 強欲の俺を呼んだところで全部取られるのがオチだ。なんたってもらえるもんは全部もらうからな。親父の魂はこのガキのせいでもらえねぇけど。
 「ねぇ、あんた、ぼく……おれの手伝いしてくれるんでしょ」
 「なぁ、さっきから気になってたんだが無理に「おれ」なんて言わなくてもよくねぇ? くくっ、まだまだガキだな。背伸びしたいお年頃か」
 「ううう、るさい! ばか!! 」
 やっぱただのガキじゃねぇか。まあでも、つまんねぇは前言撤回。願い事はつまんねぇがこのガキ自体はなかなか使えるぞ。せいぜいいいとこまで堕ちるんだな。

 「ぱぱのお金が集まるまで……悪い奴、殺す手伝いしてくれるんでしょ」

 『悪い奴』。こいつの兄貴のことだと思う。
 しかしまあ、とんでもない復讐の念を待ってるとは思っていたが、まさか殺意まであったとは。これなら暫くは退屈しなくて済みそうだ。こいつの兄貴が死ぬまで、が、楽しい時期かな。
 「俺も悪い奴、だけどなぁ? 」
 カマをかけてみようと思って、くく、と笑って俺がそう言うと、ガキは不思議そうに首を傾げた。
 「ぼく……おれの手伝いしてくれるんでしょ。それなら悪くないよ。あんたは。優しいよ」
 「……は? 」
 我ながら素っ頓狂な声が出たと思う。優しい? 何言ってんだこのガキ。親父が死んで、兄貴に逃げられて、とうとう頭までおかしくなりやがったか。

 「なんで不思議そうな顔すんのさ。ぼく……おれ、人を殺すって言ってんのに、あんたはそれに付き合ってくれるんでしょ? 悪魔だから、って言っても、それが仕事でも、それは普通のことじゃないから。あんたは優しいよ」

 優しい。初めて言われた。
 このガキはただ、純粋なだけなんだ。
 名前の通り、悪魔と呼ばれ続けた。居なくなれと言われ続けた。消えろとまで言われ続けた。言われ慣れていた。だってそれが普通だから。俺の中での普通だったから。

 「悪魔とかどうとか関係ないよ。ぼくは、きみにこれからいっぱい助けてもらうんだから。それが当たり前になる前に、先に言ってやる。……あ、ありがとう」

 ありがとう?
 感謝なんて当然だが今まで一度もされたことがない。ああ、なんでだ。
 なんで、今までの言葉が全部、痛いんだ。

 「……マモン」
 「は? 」
 「名前だよバーカ!! 二回も言わねえから! 」
 「え、ちょ、待ってよ、なに? いきなり困るよ。なんて言ったの? 」
 「マ、モ、ン! 」
 「もっかい」
 「だからマモンだって言ってるだろマモン!! 」
 「ごめん、もう一回」
 「お前言葉わかんねぇのか!? いいか、マモン、スペルはM、a、m、m……」
 「あはは! ごめんごめん、本当はずっと聞こえてたんだ。マモン、5回も言ってくれたよ。やっぱりきみは優しいね、マモン」
 「……クソガキ……」
 「名前で呼ばなくていいからエメラルドって呼んでよ。クソガキは嫌」
 「うるせぇ。エメラルド」

 ふふ、と嬉しそうにこのガキは笑った。
 このガキは無性に腹が立つが、不意に、このどうしようもない腹立つガキを守ってやりたいと思った。心を痛める羽目になったが、何故かこのガキの言葉が俺の中ですっと溶けて、この溶けた温もりを手放したくないと思った。
 なぁ、エメラルド。俺は今まで以上に強欲になっちまったみたいだ。
 エメラルドの純粋さや素直さ全部、俺にだけ与えてくれればいいのに、なんて。


















4ヶ月前 No.4

@itxmm ★iPhone=uSyqKf7JNY
















 I. Mammon ( two )




 お前が俺を優しいと言ってくれるなら、お前以外の誰に何を言われても、痛くもなんともない。
 もし、お前が俺を拒絶する時は、俺は痛くて死んじまいそうだぜ。


 「マモンは本当に優しいよ」
 「だからぁ、悪魔相手に何言ってんだお前」
 「ふふふ、秘密」
 「きもっちわり」
 「あ、ひどい!」
 むくれたように頬を膨らませるお前。そんな嫌そうな顔したところで、もうお前と何年一緒にいると思ってんだ。すぐに顔色変えて笑うって知ってんだからな。
 大人に近付くお前の姿に少し寂しさを感じつつも、もう少しでお前が14になるんだと思い出す。身長も初めて会った時より全然大きくなっているし、昔はあどけなかった瞳も大人になろうとしている。
 掠れ始めた声だってそうだ。変声期に入るお前の今までの小鳥みたいに柔らかな声は変声期が終わればもう二度と聞けない。それを寂しいと思うのは、些か強欲だろうか。否、俺は強欲の塊だ。何を言ってるんだ、俺は。
 その小鳥みたいな声を奪えたらいいのに。

 ……そうか。変声期前の声を奪ってしまえば、可愛い頃のお前の声は永遠に俺の手元に残る。少ない代償で俺は今働いているが、心のどこかで代償なんていらないとさえ思い始めているのも事実。
 悪魔としては俺は失格だ。ただ、それでも構わないと思った。お前のその小さな喉笛を俺のものにできたら、俺は永遠にお前を手元に残せる。命が尽きても、お前は……。
 「マモン? 」
 名前を呼ばれてハッとすると、俺はお前の首に手を掛けようとしていたことにすぐ気がつき、急いで手を掛けようとしていた右手首を左手で押さえた。
 お前は不思議そうに首を傾げる。
 ああ、そうだよな、意味がわからないよな。それでいい。それでいいよ、可愛いお前。お前は何も知らなくていい。
 欲に目が眩んで、まだお前の喉が欲しいと思ってしまう。手を押さえていようとも、右手はお前の喉が欲しくて震え始めている。

 欲しい、お前だけの喉が欲しい。欲しい、声が欲しい。お前の喉笛が、声が、言葉と文字を優しく奏でるソレが欲しい。欲しい、欲しい。俺のものにしたい。欲しい、欲しい、欲しい。俺のもんだ、そうだ、最初から、契約したあの時点でお前は俺のもんだ、そうだよ。じゃあ、奪っても問題ないだろ。ああ、欲しい。綺麗なお前のその声、柔らかな声、欲しい、欲しい、欲しい、欲しい、たまらなく欲しい。今とかこれからなんて後から考えればいい。こいつの声があれば、俺は、俺は、

 「何が怖いの、マモン」
 「……は」
 「マモン、さっきからすごく震えてるよ。しょうがないからおれが側にいてあげる。だから、怖くないよ。大丈夫。おれが側にいるから」
 不意に視界が遮られたかと思えば、大きくなった体で俺を包み込むのはお前だった。勿論、立ってれば俺の方が背は高いが、俺が座っていれば既に俺を包めるほどお前は大きくなっている。
 掠れた声で大丈夫というお前。怖くないと俺に言うお前。側にいると言ったその声は、大人に近付く為に掠れていた。その掠れた声の中に、お前の小鳥のような柔らかな声が微かに残っている。
 俺は、お前のその声を取ろうとしたのに。

 「……落ち着いた? まもっ……」
 ああ、くそ。こんなガキの前で。
 滲む視界でお前の顔を見ると、かろうじて見えるお前はひどく慌ててるように見えた。笑い飛ばしてやりたいのに。騙されやがってって言えたらいいのに。
 くそ、くそ、くそ、こんなガキの前で。お前なんかの前で、こんなかっこ悪い姿見せてやれるもんか。くそ、くそ、止まれ、止まれ、止まれ。熱い。やめろ。見んな。やめろ、頼む。見ないでくれ。
 「マモンはやっぱり優しいんだね」
 何言ってやがる。そんな事どうでもいいから、そんな事どうでもいいから、今すぐここから離れろよ。見るなよ。なぁ。

 「あのね、マモンはおれのためにそうやっていっぱい涙を流せるくらい優しい悪魔なんだよ。……おれの喉が欲しいならいつだってあげる。ずっとブツブツ言ってるんだもん。直接言ってくれればおれだって素直にあげるよ? 」
 「何簡単に言ってやがる! 悪魔にそう簡単にいうんじゃねぇ!! 本当にとられたらどうすんだよ! お前は、お前っ……エドウィンは既に、俺に来世まで全部売ってんだ、残ってるもんくらい、もっと自分を大事にしろ……! 」
 お前の肩を掴んで揺さぶるようにしながらそういうと、お前は余計なまでに大人びた口角をふっと緩めた後に嬉しそうに笑った。


 「ほら! やっぱり、マモンは優しい悪魔だ! 」


 お前は、いつだってそうだ。自分勝手で身勝手で、俺の心中を乱すだけ乱しておいて、本当にわがままでどうしようもない奴。
 けど、お前が俺を優しいと言うなら、俺はお前の言う優しさは貫いてみようと思う。お前以外の誰に何を言われても気にはしないが、お前には「優しい」と言われたい俺がいる。お前には、拒絶されたくない俺がいる。
 ほんと、笑えるぜ。

 「そういえばさっきエドウィンって呼んでくれたでしょ」
 「呼んでねぇ。聞き間違いだ、聞き間違い」
 「え〜、そうかなぁ? ……ま、いいや! マモン、紅茶淹れてあげる! 砂糖とミルクは? 」
 「……いる」
 「お客さん、意外と甘党だねぇ」
 「ざっけんな!! べ、別になくても……! 」
 「え? 本当に淹れないけど」
 「くっ……い、いいよ、馬鹿野郎」
 前言撤回。こんな可愛くないガキなんかどーでもいいわ。喉も声もいらねぇ。不要物じゃねえか。血迷いって怖いぜ。ほんと。
 お前が俺の前に暖かな紅茶を出してくれたのを見て、正直本当に砂糖もミルクもないのは辛かったが、お前の淹れたものを残すなんてことはしなくて思い切って喉に紅茶を流し込む。

 「ん? 」
 「どうしたの? なんか変なのはいってた?」
 「……甘い」
 「ふふふ。ありがとね、優しいマモン。はい、ミルクもあげる」
 「いらねーよ、バカ。……けど、貰ってやる」




















4ヶ月前 No.5

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3ヶ月前 No.6
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