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 色彩の小宇宙

 ( 書き捨て!小説 )
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一、 @xx0104y ★78Gp0ZKeUd_Y9V




 雨はもう、やんだのに。




 ―― / ――



 ◇拙い文章ばかり
 ◇なんでもあります、閲覧は自己責任でお願いします
 ◇荒らしや盗作は回れ右、書き込みはご遠慮ください
 ◇文才はありません



 ―― / ――




 光はなく、黎明はまだ遠く


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一、 @xx0104y ★e99XDGccEw_Y9V


 空は、鈍色の雲で染まっていた。家に帰ろうと靴を履き替え、昇降口の扉を開ける。少し肌寒い、冷たい風が吹き込んだ。ふと、雨の匂いがしたような気がして、首を傾げる。
 何も持ってきていなかったことに気が付いても、もう遅い。ぽつり、と空から雫が零れ落ちてきたことに気付いた。一歩外へ踏み出そうとして、雫で服が濡れたことに気が付いて、立ち止まって空を見上げた。ぽつりぽつり、頬を濡らしていく雫で、雨が降っているのだと確信した。持っていた鞄の中身をもう一度確認しても、やはり何もなかった。

「 ……あぁ、降ってきちゃったなぁ 」

 これじゃあ、帰りたくても帰ることができない。いつ止むかもわからない雨が止んでくれるのを待つしかない、と空を見上げながら思った。屋根のある昇降口の前、扉から少し離れた位置に座り込んで、降り始めた雨をぼんやりと見つめた。――止まなかったら、家に帰らなくていいのかな。そんなことを考えて、自嘲気味に笑った。

2ヶ月前 No.1

一、 @xx0104y ★e99XDGccEw_zRM




 灰兎は、その名前が嫌いだった。灰、なんて、自分の子どもにつけるような名前だろうか、と。そう思っていた。――両親から愛された記憶なんてないし、そもそも灰兎は両親の顔も、名前さえも知らない。少なくとも、自分は愛されてなんていなかったのだろうと、灰兎は嗤う。それはそうだ、と彼は自分の髪に触れる。その名の通り、灰色をしている。両親が何を思ったのかは分からないが、そりゃあ、灰色の髪なんて普通と違うもの、気味悪がって当然だろう。自分を捨てたことにだって合点がいく。

「 ……あぁ、灰兎 」

 自分を呼ぶ声に振り向く。手を振りながら優しく微笑むその相手に、灰兎は顔をしかめた。相手を嫌っているわけではなかった。ただ、今話しかけられる、ということが嫌だっただけなのだ。両親がいて、何不自由なく暮らしている、普通の人間。自分が普通ではないことを思い知らされるような相手で、今の気分ではまともに返事をすることも出来そうになかった。

「 ……何の用だ、茅景。お前、俺に話しかけていいのかよ 」
「 だって、灰兎がそこを歩いていたから。……それに、気になるんだ。僕と灰兎は友だちだろう? 」

 ――馬鹿らしい。灰兎は、茅景の言葉に小さく舌打ちをした。誰と誰が、友だちだって?笑わせるんじゃねぇよ。
 口には出さなかったが、灰兎の歪んだ表情で何かを察したのだろう、茅景は伸ばそうとしていた手をゆっくりとではあるが引っ込め、肩をすくめた。決して気が弱いわけではない茅景も、灰兎のこの表情は苦手だった。何不自由なく暮らして、幸せに生きていることを責められているような、そんな気がして。灰兎の真意を聞けるほどの図太さも持ち合わせていない茅景は、それ以降黙ってしまった。

「 ……話は終わったか? 」
「 ……あ、えっと 」

 茅景の返事を聞くことなく、灰兎は歩き始めていた。その背中を、茅景はただ黙って見送った。


2ヶ月前 No.2

一、 @xx0104y ★e99XDGccEw_zRM



 空が青いね、と茅景は呟いた。その数歩後ろを歩いていた灰兎は、窓の向こうに見える空を見つめた。――確かに、吐き気がするほどに真っ青な空が、そこには広がっていた。こんなにも青い空の、何が綺麗で、何が好きなのか。いつも穏やかに笑う茅景の微笑みは、さらに穏やかに見えた。灰兎は窓から視線を逸らし、床を見つめた。

「灰兎?」
「……んだよ」
「その、……急に止まったから、何かあったのかと思って」
「何もねぇよ。黙って先歩け」

 灰兎の顔を見た茅景は、眉を下げながらも再び歩き始める。ちらちらとこちらを振り返る茅景に顔をしかめれば、それ以降彼が振り返ることはなかった。やめるくらいなら、最初からしなければいいのに。茅景の様子に、灰兎はそう思いながら、茅景の背中を見つめ続ける。

「……こんな天気の、何がいいんだ」

 灰兎の吐きだした言葉に返ってくる答えはない。茅景の背中が遠く離れ、見えなくなった頃、灰兎は何をしていたのか思い出したように、また歩き始めた。


2ヶ月前 No.3

一、 @xx0104y ★e99XDGccEw_zRM




 鈍色の空が、広がっている。昇降口に座り込んで待ってみても、雨はやみそうにない。禾織はジッと、空を見上げている。このまま帰ってしまってもいいはずなのに、そうすることができなくて、ただ座っていた。肌寒い風に、身を固くする。雨がやむのを待っていようと雨の中濡れて帰ろうと、結局風邪を引いてしまうかもしれない。

「……あぁ、帰らないと」

 でも、体が動かない。顔を埋めて、きゅっと縮こまって、誰にも見つからないように、気配を消そうと必死になった。そうして時間が経って、動けるようになったら家に帰ろうと、そう思って。

「……禾織?」
「……灰兎、くん」
「何してんだ、こんな場所で」
「あ、えっと……雨、やむの、待って……」

 そこまで言って、ようやく禾織は顔を上げた。灰兎は、禾織をジッと見つめている。肩を揺らして、視線を彷徨わせ、また俯いた。禾織は、灰兎に見つめられるのはどこか苦手だった。――まるで考えも何もかも見透かされているかのようなその目が、ただ怖かったのかもしれない。そんな彼女に何も言わず、灰兎は少し離れた場所に腰を下ろして、空を見上げた。

「……雨がやんだら、一緒に帰ってやるよ。で、一緒に怒られてやる」
「……」
「だから、俺もいていいか?」
「……うん」

 ――彼が優しいことは、禾織だって知っている。だから、ほんの少し微笑んで、頷いた。


2ヶ月前 No.4

一、 @xx0104y ★e99XDGccEw_xmq



 きゅ、と唇を噛み締めて、禾織は縮こまって、両親の喧嘩が終わるのを待ち続けていた。毎日のように繰り返される喧嘩と、父親の母親を怒鳴り散らす声、母親の悲鳴に似た声。そのどれもが、禾織は嫌いだった。どれだけ待っていても終わらないのに、待っていなければ両親から怒鳴られる。そんな理不尽さに、もう耐えられなくなっていた。

「……禾織」
「……あ、灰兎、くん」
「喧嘩か? ……ここ最近毎日だな、禾織の家」
「……うん」

 いつの間に来ていたのか、灰兎の姿が開いたままの玄関先にあった。ちらり、と後ろを見てから、うんざりとした様子で声をかけてきた彼に、禾織は肩を揺らして小さく頷いた。何をそんなに怯えることがあるのか、それは灰兎には分からない。だが、禾織は昔からそういう人間だったのだ、今さら気にしても仕方のないことだ。灰兎はそう思いながら、慣れた様子で靴を脱ぎ、禾織の家へと足を踏み入れる。

「かっ、灰兎くん……!?」
「いいからそこにいろって、そのうち茅景も来る」
「え……」

 ぽかん、とした様子で禾織は灰兎を見た。彼は振り返らずに追い払うように手を振った後、未だ喧嘩を続けている禾織の両親へと近付いていく。申し訳ないと思いながらも、ホッとした様子でその場に立って灰兎の背中を見つめていた。

5日前 No.5
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