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随に、

 ( 書き捨て!小説 )
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Nero @nerokichi ★Android=QL7cZQAikG

電球マークに身を任せてつらつらと。





※オチなしヤマなし
※ジャンルは纏まり無し。時にグロい。
※更新は亀。しかし稀に兎も出てくる。

メモ2017/07/23 11:45 : Nero @nerokichi★Android-QL7cZQAikG

書かなければ劣化はあれど上達は無い、との事で始めました。

いいねありがとうございます。

ページ: 1

 
 

Nero @nerokichi ★Android=QL7cZQAikG




コーキュートスの水底



1.


こんな性分だから時々思うのだ。生まれる場所が違ったら、俺はもっと楽に生きれてたんじゃあないかと。普通に、朝起きたら母親に挨拶をして、朝飯を食って、欠伸を堪えながら家を出る。そんな微睡むような日常を。

標的の頭を寸分の狂いなく撃ち抜く度に、その周りで悲鳴を上げる通行人の姿を見て、性懲りも無くそんな下らない妄想が浮かぶ。
下らないなんて思いつつその朧気な光景を捨てられずにいる自分もいる事も自覚していた。



「アヒルの子は最後の最後で、白鳥としての"勝ち組人生"を掴み取る。対して君はドブネズミとして生まれてドブネズミとして生きているが、その感想は?」

「───あの話はアヒルの子が実際は白鳥の子だったから成立したんであって、下賎の逆転物語ってわけじゃあねぇ。だからドブネズミはどこまでいってもドブネズミなんだよ。無茶言うな」

背後から聞こえた低くざらついた男の、今の空想を見透かすような声。その挑発めいた言葉に対し吐き捨てるような形で返しながら、口の中に溜まった煙を吐き出した。灰色のそれは、気分に反して快晴の青空に溶けて一瞬で姿を消した。

屋上での一服は最早ルーティンと思えるくらいには欠かせないが、ここ最近"得体の知れない存在"に茶茶を入れられてばかりである。そろそろ眉間に銃弾をぶち込んでやろうかと思う程鬱陶しく思っているが、仮にも上司な上そんな事すれば速攻で返り討ちにされるのがオチだ。俺が敵うような、というか人間が敵う相手じゃない。

そんな謎めいたクソ上司であり地を這うような低音の声の主は、そんな肩書きに反し儚い少女の姿で、御伽噺で出てくるチェシャ猫の如き怪しい笑みを浮かべてこちらを見る。

「おや失礼、気分を害してしまったようだな」

「特に悪いとも思ってないのに詫びをいれるんじゃねぇや」

「なに、君ら種族の様式美というやつだ。ニンゲンの行動原理は些か面倒でな、推し量る気にもならんのよ。その点に関して君はとても素直で分かりやすいがね」

「そりゃ光栄な事で」

嫌味合戦はいつもの事。やれやれとでも言いたげな仕草を見せた少女は、その白雪の髪を靡かせながら屋上のフェンスの上へと飛び乗った。一歩間違えれば自殺行為であるが、今までの発言、特徴から予想立つ通り人間では無いので心配するだけ損である。

何でこんなのに雇われてしまったのかは俺の中でも最大の謎な為もう振り返ることも諦めてしまったが、そもそも職もアテも無いゴミクズを拾って使ってもらっているだけでも有難く思うのが普通なのかもしれない。かと言って感謝の意を伝えるつもりもないが。

「生まれた価値を違えず生きるは理よ。それを優劣構わず違える者と、価値に固執する愚者により均衡は揺らぐ。鳶が鷹を産むなら未だしも龍を生んでしまってはしようが無い。逆も然りだが」

「んな出来レースずっと続ける方が狂ってるだろ。凡人から生まれた天才が王様を引き摺り下ろして何が悪い」

「そう噛み付くな、あくまで私の持論だよ。然し至言であり理だ。変化無ければ天秤は揺らがない」

「……お前と違って人間は変化がねぇと錆びれんだよ」

「それは残念。しかし君らの脆さを見るに当然と言える」

奇怪な笑みを浮かべて、どこぞの魔王のように屋上から世界を一瞥する少女の思考など一人間の男が理解できるはずも無く。自身の言葉にも詰まることなく羅列する言葉に軽い舌打ちを飛ばして指に掛けられた煙草を口に含んだ。




4ヶ月前 No.1

Nero @nerokichi ★Android=QL7cZQAikG





(生まれた価値を違えず、ね)


先程の空想に刃を突き立てられた気分だった。お前がそれを望むのは身分違いだと、暗に告げれれているのだ。
意図せず細められた男の目を見て少女はその不気味な笑みを更に深くする。
そしてフェンスの細い足場で器用に体を回転させて、男の方へと向き直した。不安定な足元、風を受けて尚優雅に振る舞う存在はシュレディンガー宛らに不安定だった。


「───さて、君にはそろそろ真実を視てもらおう"アリス"。目覚めの時が来たのだよ」

「……は? 何訳の分からない事を、」

「言ったろう、目覚めの時だと。寝惚ける時間は無い。あの兎の言葉を拝借するとすれば、"時間は有限"だと言うことだ」

「ちょ、待て待て待て。まずアリスって誰の事を指しているんだ。もし二十後半の男にそれを言ってんだとすれば痛いにも程があるぞ」

「不思議な事を言う。君以外に誰が居るというんだ。寝坊助は鼠だけで結構だが」

まるで話にならない。突然何を言い出すのかと目の前の少女に疑心の目を向ける。揶揄っているのかとも考えたが、この上司は訳の分からない事は言えどこの手の悪戯をするタイプではない。
"アリス"とは何かの喩えなのだろうか。そんな駆け巡る様々な説を一蹴するかのように、少女は再び口を開く。




「よもや君はまだ、今までの標的が普通のニンゲンだったと思っているのか?」

「お前……ほんと今日はなんなんだよ。4月1日なんざとっくに過ぎてんぞ」

「まったく、何度も言わせないでくれ。時間が無いんだアリス。あちら側が予定よりも早くこちらの存在に気づいてしまっている」

あちら側。そう聞いて、何となくピンと来た。恐らくこいつはよく分からない喩え話をしているだけで俺の仕事がバレて何かしら危険な状況になってるって言いたかっただけだろう。
しかしそんな重要な事に遊び心を加えられても困る。時間は有限などと言いたいのはこちらの方だ。

「それってアレか? 標的(ターゲット)の身内か何かが俺が殺ったって知って怒り狂ってるみたいなやつか?」

「……まあ、あながち間違えでは無いな」

「ほらな、何だよ初めからそう言え」

若干の苛立ちを隠さぬままに、燻らせていた煙草の先をフェンスに押し付けて息を吐く。
さてどこでヘマかましてしまったか。よもやこの上司のせいなのかと思ったが、これが人間相手にヘタをこく姿が想像出来ないために即座にその線を消した。鬱陶しく思いつつもこれが自分には及びもしない程有能だというのは嫌というほど理解している。

そんな事よりも、と過去の仕事についての回想を巡りながら、屋上を後にする為に踵を返す。ブツブツと言葉を独りごちながら早足に足を動かすその男は、ついに気付かなかった。

自身より先方の空中から、筆舌に尽くし難い"異形の何か"が降ってきていることに。






ドッッッという地鳴りと、衝撃より発生した旋風。





背後から、上司の呑気な声が一つ。

「ああ、思っていたより随分早いな。本当に時間が無くなったぞアリス」



4ヶ月前 No.2

Nero @nerokichi ★Android=ibuMTFvydU



アリスに かかれば イチコロさ !





#



僕らはアリスと共に居た。彼の夢の中に居た。
時には手を貸して、時には邪魔をして、ヒントをあげて、追い回して、追いかけさせて。

そうして彼は冒険を繰り返す。そう思ってた。願っていたと言った方が正しいのかな。

ある日アリスは捨てた。記憶(ぼくら)は毒だと捨て去った。

もう見たくないと、聞きたくないと、触れたくないと、語りたくないと。
僕らを残して扉に鍵をかけた。

僕らは待った。アリスを待った。でも彼は帰ってこなかった。いつまで経っても帰ってこなかった。

だから僕らは、僕ら自身から彼を迎えにいくことにした。またこの世界に来れるよう、ワンダーランドへの招待状を、再び彼に手に。

もう少しなんだ。もう少しで彼は、



「憐れな連中だ。滑稽の極みとはまさに君達の事を指すのだろう」


……煩いな、この、うすぎたない、裏切り者。


「何を今更。私が君らの仲間だった事などあったかな? 全く、記憶を捨てたのはどちらなのやら。アリスを兎や角言う前に自らを省みる努力をしたまえよ」


煩い! 煩い!! 煩い!!!
お前が居なければ! お前が居なければ、アリスをすぐに迎えにいけたのに!


「記憶がその持ち主に手を出そう等、烏滸がましいとは思わなかったか? たかが記憶が? アリスという媒体物が無ければ権限することさえ適わないお前達が?」


お前だって! 僕らと同じだ!


「そうだ。私も所詮はお前達程度の存在だ。だからどうした。その愚かで身の程知らずな思想を理解して欲しいと、そう言いたいのか。現実を弁えた方がいい。私もおまえ達も、所詮は廃棄物。アリスが要らないと捨てた物。扉に鍵をかけた? 違うな、扉もその先に続く世界も、全て忘却されただけ」

「そもそもお前達が大人しくしていれば私もこんな面倒事に巻き込まれなかった。文句を言いたいのはこちらの方なのだが」


ちが、う。違う、ちがう。


「まあいい、今更マトモな言葉など端から期待していなかった。────喜べ、アリスは自分からおまえ達に会いにくるさ。そう時も掛からぬ内にな」





「今度こそ、破滅の時だ。いつまで経ってもこびり付く邪魔な塵屑はさっさと焼却されるべきだろう。安心しろ、その時が来れば私も共に焚べられてやるさ」







ほら殺せ、アリス。




2ヶ月前 No.3

Nero @nerokichi ★Android=ibuMTFvydU


真実など見たくなった

されど自ら晒しに来るのだ

其れは常に影から迫り、薄ら笑いを携えて

震える私の喉を切り裂いてゆく



「なあ××××。私は間違っていたのか」

静寂、沈黙。

棺(きみ)は応えてくれやしない。

2ヶ月前 No.4

Nero @nerokichi ★Android=ibuMTFvydU


"湖と、"







 前に、何処かの紀行番組だっただろうか、在りし日の妻と何気ない会話をしながら水平線が延々と広がる湖の映像を見た事がある。今自分の目の前に広がるのは、まさしくその景色だった。
 断っておくが私は旅行に来ている訳では無い。つい先程まで職場の自室でデスクを覆い隠す程の書類と格闘していたのだから。日付を跨いだところまでは時間を覚えているのだが、あれからどれくらいの時間が経ったのかは分からない。恐らくだが丑三つ時は過ぎたのではないだろうか。
 そうして何の脈絡も無く気付けばこの場に立っていた状態ではあるが、存外冷えた己の思考によって理解は追い付いていた。

(……夢か)

 人によっては夢を夢だと理解する事が出来るという話を聞いた事はある。だが少なくとも自分はそのような勘の良い人間ではなかった筈だ。いつも睡魔にやられた脳は、目の前で巻き起こる非現実的な事柄に対して童のように疑うことを知らない素直な反応をしていた。確かに、記憶の限り。
 だからか、このような辻褄の合わない世界をちゃんと夢だと理解している事に強い違和感が拭えない。どうせそういう日もあると割り切るしか無いだろうが。

 ふらりと周囲を見渡した。薄い水色で塗られた快晴の空と澄んだ湖しか無い。まるで自分が水の上に立っているかのようだと思えば、それは勘違いでなかったらしく、視線を寄越した足元で靴底よりも下に波紋が発生しているのを確認して小さく息を吐いた。何でもありとはまさにこういう事を指すのだろう。では此処で自身は何をすればいいのか。双眸を閉じて、頭の中で醒めろと唱えても何の変化も見られない。普段は知らない間に始まって知らない間に終わり、覚醒してから夢だと自覚するものだから対処の仕方など見当も付くはずがなかった。

 ふと、緩やかだった風が向かい風となる形で一瞬だけ強く流れた。ザァと空気が鈍い音を鳴らし、平静を保っていた湖に小さく波が生まれる。思わず細めた目を守るように手の甲を近づけた。幻想感のある夢だというのに、随分とリアルな演出をしてくれるものだ。

 直後、突然無人だったこの場に自身以外の気配を感じて、頬を掠めて過ぎていった風を追うように背後を振り返った。

 視界に入った光景に己の目が見開いていくのが分かる。何故ならそれは、現実では有り得ないというのに、自身がずっと望んでいた姿だったから。生前と変わらない黒髪に、小さく口が震える。恐怖でも凍えでも無い。彼女を前にした歓喜と、いざ現れてもいつ消えてしまうか分からないという不安だ。況してやこれは夢の中なのだ。いつ現実に意識を取り戻されるか定かでは無い。頭の中で醒めるなという嘆願を延々と繰り返しながら、その華奢な背中に一歩だけ歩み寄った。

「■■■、」

 今自分は何と言った? 彼女の名前を呼んだはずなのに、その瞬間だけ完全に耳を塞がれてしまったかのように己の声が聞こえない。

「■■■」

 やはり自分が何と言っているのか分からない。彼女も同様なのか、声掛けに一切応えることなく背中を向けている。同じ空間にいるのにまるで隔絶されたような孤独を感じた。どうしても、一言だけでもその声が聞きたかった。

「……一言、応えてはくれないか」

 沈黙。
 今自分はどんな表情をしているのか。恐らくだが、随分と見るに耐えない、苦痛に満ちた顔をしているのだろう。罪悪感か、悲しみか。知る由もないが、唇を噛み切りそうな程に強く食い縛っているのは分かっているから。
 そんな自分などお構い無しに背中を向けたままの彼女は小さい笑い声を零した。確か面白おかしい事があると、こうして淑やかに笑うのが癖だった。やっと応えてくれたのかと、少しだけ緩んだ表情が再び凍りつくまでにそう時間もかからなかったろう。
 自分と同じように水面へ立っている彼女の足元に、ポツポツと何かが落ちて滲んでいるのが見えたのだ。それは暗い赤色の尾を引いて、澄んだ水を塗り替え始めている。
見た事があるどころか、見慣れた色だった。だってそれは、それはどう考えても、

 裏腹に己の顔はその色が薄れて、代わりに青く染まっているのではないか。彼女の身体が動く。振り返る挙動をしている。やめろ、と無意識に呟いた気がする声は、掠れてろくな音にならない。瞳孔が開いている、冷や汗が止まらない、そうこうしている内に彼女は完全にこちらを向いた。

 打撲で皮膚を紫に染めて、痛々しいほどはっきり裂けた傷を無数に走らせ、硝子の破片が突き刺さった全身から血を滴らせた、まるで、"大きな爆発"に巻き込まれたかのような姿で。ひゅ、と詰まる呼吸を吐き出すしか出来ない己とは反対に、彼女、? は凄惨な、顔を笑みへと、歪ませて、


『死んでいるのに???』


 息が、止まった。







1ヶ月前 No.5
ページ: 1

 
 
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