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 だれかさんの記念日

 ( 書き捨て!小説 )
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皮相 @ism10☆AdGNhPahu8vW ★iPhone=3b8fo2ymlo





 それはとても静かにやってきて、過ぎ去るときはまるで何も無かったかのように。

 それは今日も冷淡に、きみの時間を漫然と貪るだろう。





※同性愛表現あります たぶん
※ろくなことはないです きっと

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皮相 @ism10☆AdGNhPahu8vW ★iPhone=3b8fo2ymlo

 水晶玉とやらに映った私の顔はとんでもなく不細工だった。皺の寄った眉間は自分自身の印象の悪さを自覚させるには十分過ぎたし、への字な結ばれた唇はがさがさと乾燥しているし、よく見ると肌荒れもいつにも増して――否、普段通りの酷さであった。表情もこんなに歪んでしまって、いやいやこれは私のせいではないのだが。こんな醜女の私めに運命の人を告げてくれるというのだから、インチキ老婆も大変である。気苦労のことを思うと胸が痛む、嗚呼お婆さんごめんなさい。無理に良い出会いを伝えてくれなくても大丈夫です――何せ、これはただの茶番。本気で悩んでなんかいないから、もう早く終わらせて、だなんて口が裂けても言えないけれど。

「お前の運命の人は、ねえ――」

 嗄れた声は行き場を見失ったかのように空中をふらふらと彷徨った。なぜかこちらが申し訳なくなるが、まあきっと、『これから新たな出逢いがあり、良縁に恵まれることでしょう。努力をすれば運命はあちらから迎えにきてくれるはずです』といった感じに落ち着けてくれるだろう。

「案外、長い間ずっとすぐ傍にいるよ。気付いていないみたいだけどね」

 まさかの着地点に、思わず笑ってしまった。

「それはないですよ。絶対」

 自分で言っていて虚しくなるが、私に男っ気は一切ない。この不細工な面が原因なのか、或いは卑屈な性格が原因なのか、はたまた恋愛の神様あたりに相当嫌われているとかなのかはよくわからないが、異性と好い仲になったことなんて人生で一度もない。お節介焼きな幼馴染みがコンパなんかに連れて行ってくれるから、お化粧とか服装とかにも気を遣っているはずなのに、なぜか。
 こんな怪しい占い師なんかに恋愛相談をしているのも、幼馴染みが無理やりやらせてきたことだ。今日もついてきていて、外で待機中だ。私の後に自分の恋愛運も訊きたいとか言っていたが、あの綺麗な子にそんなもの必要なのだろうか。確かにワンナイトばかりで決まった彼氏はいないらしいが、それに対して不満そうな様子もなかったし、きっと私の冷やかし目的だろう。

――『アタシがこんなに色々面倒見てあげてんのに男できないとか信じらんない。次のコンパで誰も釣れなかったら、どっかお祓いか占いかにいって見てもらったら? きっとあんた呪われてるわ』。

 幼馴染み――さつき。あんたのオススメする占い師さんは、呪われてるなんか言わなかったよ、なんて。


「…………信られないのかい?」

「そりゃあ勿論。ずっと一緒にいる男なんていたら今頃くっ付いてるか振られてるかですよ」

 私はそう言って自嘲気味に笑ったあとに、またやってしまったなと後から思った。自虐はブスな顔を更にブスにするからね、ってさつきが言ってたのに。
 占い師の顔色をちら、と伺うと、どういうわけかにたりと微笑んでいて、気味悪く感じた。何だっていうんだ。

「…………じゃあ、信じて貰えるように、運命の人の特徴を教えてあげるよ」

 すると占い師は徐にタロットカードらしきものを出してきた。水晶玉もタロットもなんて豪華なやり方をしてくれるが、カードはボロボロで、儲かってないんだろうなあという嫌な想像をさせるものだった。やっぱりインチキなのだろう。

「お前の運命の人はね、お前の一番の友人だ。生まれ年はお前と同じ、生まれた月は五月くらいだろうね」

 どうやって計算してんだ、そもそも私まだ自分の生年月日言ってない、それに男友達すらいないんだから思い当たる人物が本当にいない。言いたい文句はいくらでもあったが、面倒なので言葉にはしなかった。きっと表情には出してしまっているが。

「イニシャルは、」

 そう言いかけたとき、例の彼女が突然部屋に入ってきた。

「ちょっとまだ終わんないの? おっそいんだけど!」
「さつき!? ……失礼でしょ馬鹿。ええと、すみません」

 いくら常連客とはいえ、どう見ても迷惑な客であろうさつきを見ているとため息が漏れたが、占い師はまだにたにた笑っていた。怒っていないようで良かったが、注意の一つもないのは不思議だ。


「べつにいいよ。さつきちゃんには良くしてもらってるからね…………色々と。でも、由紀さんと言ったかな、運命の人の話はもういいのかい?」

「ええ、まあ…………。もう沢山教えていただきましたし……ありがとうございました」

 私が曖昧に礼を言うと、占い師は「そう」とまたにやついた。やっぱり気味の悪い人だなあ、胡散臭い。そう思いながら、愛想笑いで会釈をして、私は 部屋を出た。

 ネットで調べると、やはりインチキ占い師だったらしく、評判は良くなかった。が、さつきは気に入っているようだから言わないでおこうと思う。やはり運命なんて嘘っぱちである。さっさと口コミページを閉じて、さつきの誕生日プレゼント探しのために人気のブランドの通販を漁った。もうすぐ5月だし、間に合うよう早めに買っておかないと。

――――運命なんて、信じていない。











昔のお題のやつ SS?

6ヶ月前 No.1

皮相 @ism10☆AdGNhPahu8vW ★iPhone=3b8fo2ymlo

 滲んだ光が泳いでいる。硬い雨の降る今日は、もうクリスマス一色に染まっていて、重なり合う数多のクリスマスソングはそれぞれ好き勝手に踊る。道ゆく人は皆同じように白い息を吐いて、斜め下を向いて、――歩く。それか或いは、隣にいる愛しい人に火照った笑顔を向けている。そんな中で、一人ベンチに腰掛ける僕は、この世界に溶け込めないでいた。ただ一人、悲しい異質。
 頬に生温い何かが伝った気がする。ぼんやりと、じんわりと滲み始めた記憶の中で、「待たせてごめんね」と笑う彼女は雪に埋れて、その笑顔はずっしりとした重い何かの下で動かなくなった。ひび割れた携帯の画面に愛しい彼女の名前が写ることは、もう、永遠に無い。まっしろくてしっとりとした、あの白い手を包む筈だった僕の指は冷たく、彼女の指に似合う指輪もどこかへ行った。隣で見ていたかった雪はただの硬い雨としか思えなくて、記憶に焼き付けたかったイルミネーションはただ滲んでいるだけの光。戻れない過去の冷酷さと、消えかかっている優しい記憶。
 何年も前から何度も脳内で繰り返して、温め続けた言葉は冷え切ってしまった。

「あいしてる」

 滑り落ちるそれはクリスマスソングに掻き消された。

5ヶ月前 No.2
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