Google
    
<< TOPページ 掲示板TOP 記事データ お知らせメール ▼レス(11) >>

独壇場

 ( 書き捨て!小説 )
- アクセス(52) - いいね!(0)

水葬 @lita ★jjZ8s1GBr0_yFt

xxx

 ここには わたし しかいない。

xxx


  お前を獣だと言うが、
  その獣の双眸が誰よりも清く澄んでいると言う事を、
  知っているのはわたしだけだろう。


 ---


  君は言う。
  月は誰もが寝静まった、その静寂の中で
  独り静かに涙を流し、その涙は雫となって、
  何時か雫は水となり、空気を潤し、土を潤し、一葉の糧となり、
  何時か、朽ちた世界を包むだろう、と。

6日前 No.0
ページ: 1


 
 

水葬 @lita ★jjZ8s1GBr0_yFt


 「お次の方どうぞ〜。次はあなたが英雄です」

 そう叫ぶ男の傍らに、俺は列に並ぶでもなくただただ、その列に並ぶ者達を、
 そうしてその者達の末路を、見守っている。

 「あら〜あなたもダメでしたかー。お次の方どうぞ〜」

 そういわれては、感極まる顔で中へと入っていく者達。
 それでも数分とせずに、次の方〜と案内が響く。

 嗚呼、これは何の行列なのだろうか。
 この先に、何が在るというのだろうか。

 そんなことを漠然と考えながら、その行列の行く末を見ている。
 すると、見知った顔が目の前に来たではないか。

 「―――、あなたは並ばないんですか?」

 どうやらこの男、自分の名前を言っているようだが、
 如何せん何故だかその部分だけ聞き取ることができない。

 「―――、あなたも行きますか?ほら、一緒に」

 そう言って伸ばされた手を迷うことなくとったのは、他でもない自分のはずなのだが、
 自分はそいつの手を何故握ったのか、この先へ行こうと何故思ったのか、さっぱり分からない。

 「おーっと、お次はお二人様ですね?さあどうぞ〜、お次はあなたが英雄です〜」

 そういわれると同時に、開いたカーテンの先には―――――

---


./愚者の行列

6日前 No.1

水葬 @lita ★jjZ8s1GBr0_yFt

「ねえ、香乃ちゃん?今日もほら、いい天気だ」

お生憎様、雨がしとしと降っていて、通り過ぎる誰もが傘を差している、そんな今日。
隣を歩くこの男、快は、僅か二ヶ月で「法螺吹き快」というあだ名がつく程の、嘘吐き男である。
私とは幼馴染という間柄で、小さいころからよく面倒を見させられてきた。
小さい頃の私はというと、とても素直な子供で、「そんなことを言うと、何時か狼に襲われるんだよ」なんて、可愛らしく諭していたが、
今となってはどうでもいい。寧ろ噛み殺されろと思っている。

「ほら見て?空は真っ青だ!」

彼がこうも嘘吐きになってしまったのには、どうやら訳があるとか無いとか、母が言っていた気がしたが、もう覚えていない。

「快、今日は凄まじいほどの雨天よ。傘を差しなさい」

幾ら馬鹿な貴方でも風邪をひくと、諭してやろうと思ったその時、びしょ濡れになった彼が、

「嗚呼!これはね?あそこの川に飛び込んだのさ。だってほら、魚が泳いでいたから」

高校生になったというのに、何故こんなにも幼稚なのか。溜息を吐かずにはいられない毎日である。

彼は容姿も端麗で、性格だって悪くないと、私は思う。
だからこそ、彼が法螺吹きだと言いふらされる前までは、女共が寄って集っていたのだろう。
だが、今となってはどうだろう?「嗚呼、ほら今日もまた法螺吹きが来たぞ」と後ろ指をさされ、挙句隣を歩いている私までが、後ろ指を指される毎日である。

彼はよく、手の甲を掻く癖がある。小さい頃は、虫が出てきたとよく言っていたが、嗚呼また法螺が始まったと、私は何時もだんまりを決め込んでいた。
事ある事に掻き毟るものだから、その場所は引っ掻き傷だらけで、血が流れていることだってある。
だから幼馴染として律儀な私は、毎日クリームを持ち歩いているのだ。

今日は、彼が私の家で食事をとると言い出した。彼の家は片親で、その唯一の親である母が、近ごろ姿を現さないのだという。
昔から何かしら訳ありの家庭だったようだが、嗚呼いよいよか、と嘘かも本当かも分からない話を、私の両親は信じ、親切に飯を食わせてやるのだ。

「また掻いている」

私はそう言って、クリームを彼に渡してやる。彼は素直にそのクリームを手に取り、手の甲へと塗り付ける。

「綺麗になったよ。有難う」

彼は律儀に頭まで下げてきたが、何が綺麗になったのか。ただ痒みが少し消えただけじゃないのだろうか。私は不思議でならない。

私の家は、今日は父が出張で泊りに出ていて、母も夜勤だと言い、家を出ていく。
全く迷惑な話だと思いながら、「貴方も早く帰ったら」と快に言ってやれば、
「香乃ちゃんは素直じゃないんだね」と、言われたくない一言が返ってきた。
私は、「もう良い」と言い、部屋へと籠ろうと二階への階段を上る。すると彼もまたついてくるのだ。
全くどういう風の吹き回しなんだと思い、何度目かのため息を吐く。すると、部屋に入り、扉を閉めて彼は言うのだ。

「僕ね、お父さんを殺したんだ」

「何を言っているの。いい加減にして」
「貴方のおかげでいい迷惑なの。私まで法螺吹きだと後ろ指を指される」

そう言ってやると、

「本当なんだよ、香乃ちゃん」

彼は私の目をまっすぐに見てそういうのだ。
だから私は嗚呼、面倒くさいな。と思いながら、黙って話に耳を傾けることにした。すると、

「僕の手の甲には、ずっと血がついてる。幾ら流しても、落ちないんだ。掻いても掻いてもなくならないし。だけど香乃ちゃんが渡してくれる薬を塗ると、少しだけ綺麗になるんだ。だからね、何時も有難う」

彼は目を細めてそういう。そして、

「僕はね、嘘吐きになったんだ。お父さんを殺した事を、無かった事にする為に。なんで殺したんだろう、もう忘れてしまったのか、思い出せないんだ。嘘を吐いている時だけは、少しだけ心臓の所が痛くなくなるんだ」

「でもね、香乃ちゃんと居る時は、もう少しだけ痛くなくなる」

彼はそう言って、私の前へとしゃがみ込む。

「ねえ、知ってる?嘘吐きの舌って、冷たいんだよ」

彼はそう言って、べろっと舌を出して見せる。

「どうせそれも嘘でしょう」

私はそう言って、彼の舌へと自分の舌を絡ませた。

---

./嘘吐きの舌は冷たい

6日前 No.2

水葬 @lita ★jjZ8s1GBr0_yFt

一品料理を求めた美食家で知られるジェリーヌが、どうやら「喉が渇いて渇いて仕方がない」病にかかってしまったらしい。
あんなに毎日国々を飛び回っていて、空家かと疑われていた彼女の家に、彼女は今も引きこもったままの様だというから驚きだ。
ただ一つ気がかりなことと言えば、彼女の家へと毎日黒服を着た怪しい連中が数人、出入りしていると言う事だろうか。
その都度大きな麻袋を運び入れるものだから、好奇心旺盛な私は遂に彼女の家の裏の茂みで、息を潜めて様子を伺う事にした。

するとどうだろう。あの美しい声のジェリーヌとは思えない程の、絶叫が聞こえてくるではないか。
喉が渇いてしまっているのだろうか?水を飲めばいい物を、すぐそばには井戸もあるのだし、困らないだろうと首を傾げる。
今度は、半分程隙間が空いているカーテンの合間に、ジェリーヌの姿が見えた。
決して見目麗しいと言う訳ではないが、どういう事か、細身だった彼女が今は肥え太り、肌も見て取れる程の荒れようだ。
もうあれは皮膚の病かなにかではないだろうか?と見紛う程のである。

そうこうしているうちに、怪しい連中が彼女の家へと足蹴もなくまた麻袋を背負ってやってきた。
袋が動いている様に見えるのだが、何か動物でも入っているのだろうか?美食家の彼女の事だから、見た事も無い様な美味な食材が、運ばれてきているのかもしれない。
そんな事を想像していると、その想像を打ち破るかのような悲鳴とも絶叫ともつかない声がまた聞こえてくる。今度は彼女のものでは無い様だ。
子供の泣き声のようなもので、私はその声に背筋を凍らせる。何故、彼女の家に、子供が運ばれてきているのだろうか。
「今回は貴族の家のガキを連れて参りました。お口に合うとよろしいのですが」なんて声がはっきりと聞こえてくる。
この時私は余りの事態に気を取られ、声がはっきり聞こえてくるという異常事態に気づく事が出来なかった。
カーテンの合間からは、彼女が札の束を渡しているのだ見て取れる。毎日家に籠っているというのに、何処から金が出てくるのか。私は首を傾げる。

「さて、今日はどうやって食べようかしら……」

か細い彼女の声は、部屋中に響き渡る少年の声にかき消され、手に握られる包丁が怪しげに光を帯びている。
私は早く逃げなければ、とその場でじたばたと身動きをとる。そして気づいたのだ。自分が、ジェリーヌの家の中に居るという事に。

「あら気づいたの?というか、久しぶりねリリアンナ。酷いわ……聞き耳を立てるなんて………」
「でも安心して。今、この子を食べ終わったら、次は貴女を美味しく食べてあげるから。本当は子供のほうが美味しいから、今はもう子供しか食べていないのだけど。貴女だけは特別よ、だって大切な友人ですもの。ね?」

私は余りの恐怖に震え、涙を流す。その目の前では、子供の解体作業が行われ始めていた。
私は自分の命惜しさに、必死に言葉を紡ぐ。

「ねえジェリーヌ。美食家として名前を馳せていたあなたが、何故今人間を食べているの?」
「それはねリリアンナ。私が美食家だからよ。もう沢山のものを食べて、飽きてしまったの。まだ食べていないのは人間だけだと気づいてしまったわ。だから一口食べてみたのだけれど……するとこれがまたすごく美味しいのよ!でもほら、喉が渇いてしまってね……」
「ジェリーヌ。まだ食べていないものがあるじゃない。あなた程の人が、その美味しそうな食材に気づかないなんて、わたしは吃驚だわ」
「どう言う事?リリアンナ」

彼女は口の周りを、先程まで泣き喚いていた子供の血で濡らしながら、こちらを振り向いてそう問う。
余りの恐ろしいその形相に、嗚呼もうこの人は人間ではなくなってしまったんだわ、と嘆かざる負えない。

「落ち着いて、ジェリーヌ。今話すわ。その前にこの縄、解いて貰えない?」
「それは無理。私は今、この子を食べるので精一杯なの」

そう言って、ジェリーヌは自分の懐にしまっていたのであろう、果物ナイフを投げてよこした。

「早く話して、リリアンナ」
「世界各地の美食を食べつくし、そして更にそれ以上の美食を発見した。そうでしょう?ジェリーヌ」
「ええ、そうよ」
「そんなものを食べつくした貴女は、どれ程美味しいのかしらね?」

ジェリーヌは目を見開き、固まる。失敗だったか?そう思い自分の命の終わりを悟った束の間、

「そうね!その手があったわ、リリアンナ。有難う!本当に有難う!これでまた私は、美味しい物を食べられるわ!!!何故気づかなかったのかしら………」

ジェリーヌはその後もぶつくさと何かを呟いていたが、次の時には、

「本当に有難うね、リリアンナ。こういう言い方はよくないけれど、もう帰ったほうが良いわ。ほら、外も暗いし」
「ええ、そうするわ。此方こそ有難う、ジェリーヌ。そして、」

さようなら。小さい声でそう呟いて、彼女の家を後にしようと、表の扉に手をかける。
その最中にも彼女は、
「どこがいいかしら……、まずは手?そうね、手にしましょう。きっと美味しいわ。うふふ………」
そんなことを呟いて、自分の左手に包丁を当てている。
わたしは余りの出来事に笑みを浮かべた。死ななくて済む。どれ程嬉しい事だろうか!そしてあんな危険な化け物になってしまった、ジェリーヌを滅ぼすことができるのだ。

わたしは家路につきながら、今日の夕飯について頭を回す。
あんなに美食を食べ回っていたジェリーヌが言う事なのだから、あれはとても美味しい物なんだろう。わたしは胸を躍らせる。
そういえば、今我が家には、死にかけの母が居たっけ。もう死ぬだけだし、死体の処理にもお金がかかってしまう……。子供が美味しいらしいけど、取り敢えず最初にあの母から処理させてもらおうか。綺麗になって一石二鳥だわ。

嗚呼、やっと一品料理が食べられる!

---

./a la carte

6日前 No.3

水葬 @lita ★jjZ8s1GBr0_yFt


この国には、雨も降らない。

*

「神とは全知全能の存在。その大いなる愛は、全ての人々に等しく降り注ぐのです。それは天上からの恵みそのものであり、等しく我々の喉を潤し、大地に生を与え、死を癒すのです」

立ち寄ったこの街は、寝言を唱える人間が多い。そんな物を信じる暇があったら、金儲けの事を考えたほうが余程有意義だと、私は椅子に腰かけ欠伸をする。
はっきり言おう。私は卑しい人間である。金のためならなんだってするし、今もまたその途中だ。腹が減れば、飯を奪うし、こうして話を聞くだけで一宿一飯にありつけるなら喜んで神様とやらに祈りを捧げよう。

「貴方もまた神の子。これはそのお恵みです」

そう言って神父は私へと飯を運ぶ。見て取れる程水分が足りていないパンと、草屑が浮く味の薄そうなスープ。

「ありがとよ、神父様」

私は神父の目を見つめ礼を言い、その飯を頂く。早速腹でも満たそうかと、パンを頬張ったその時、

「貴方は神を信じてはいないように見える」

神父が言う。

「嗚呼、全くその通り。神様なんていないさ」

私は天罰など物怖じもせず、神父を目の前にそう言ってやると、

「旅のお方よ。貴方は我々よりも多くを目にし、多くを経験してきたのでしょう。貴方の意見はとても大いな価値がある。有難う」
「神父様よ、私みたいな愚か者の意見なんて糞の役にも立たないさ。そんな事よりスープの味付けを変えることをお勧めするよ」

そう言った私に、神父は微笑みを向けてまた別の人間の方へと向かっていく。何だあれは。神の代行者のつもりなのか?きっと等しく愛でも注いでいるつもりで、その気分に浸り自分にうっとりしていることだろう。
嗚呼、飯が不味いな。私はそれを不満に思いながら、また欠伸をする。

神なんていない。そう気づいたのはまだ7つの時だった。
犯罪しかないなんじゃないかと思えるほどの、治安の悪い私の生まれ故郷では、親もいない、弱ければ暴力を振るわれ、等しく奪われる。それが常識だった。
弱い私は、神様に祈りをささげ、嗚呼貴方だけは私を愛してくれるんだ。なんて毎日寝言を言っていたな、と思いだし笑いを噛み殺す。

旅に出ようと思ったきっかけが何だったかは忘れてしまったが、沢山の街を見てきて分かった事は、等しく愛を与える存在なんて居る筈もないし、迷える者に親切にするのは卑しい人間だけだと言う事だ。
持てる者はまだ足りないと喚くし、何も持たぬ者はただ死ぬだけ。天を仰げば雨が降ると思い込む莫迦共はその有難さを知らないし、迷える者には役に立たない地図を渡す。
不幸も悲劇も何時だって突然だし、それを見て誰もが指を差し笑うのだ。
神に祈りをささげる者なんて、誰もが最低以上の財を持っている者達だけであり、それは神の為と自分をも誤魔化しながら、その自分の卑しい腹を満たす事に頭を回す。
救いなどという言葉は、それを知る者しか使わないし、雨が罪を落とす等という言葉は、罪を犯した事もない人間が叫ぶ驕りに他ならない。
汚れた手は二度と綺麗にならないし、持たぬ者は幸せだと騙る莫迦は、物差しの短さを知らない阿呆と後ろ指を指されて終わる。

そんなことを考えて、嗚呼また時間を無駄にしたと、反省という名ばかりの行為をしていると、あの時の神父が今度は私の隣に腰を下ろした。

「何の様だい、神父様。さっさと神とやらに祈りをささげたらいいじゃないか。その方が貴方には余程有意義に思えるが?」

そう毒づいてやると、

「貴方は雨をご存知か?」
「嗚呼勿論さ。あれはとっても有難い、神様のものだねぇ」

鼻で笑うのを何とか我慢しながらそういうと、

「貴方は神がお嫌いか?」
「嗚呼」

瞑っていた両目のうち、左の瞼を上にあげてそう言ってやる。すると、

「旅のお方は両極端だ。どちらかしか言わない」
「さあな、何でだろうね」
「それは神のお恵みを、等しく受けているからだ」
「成程。あんたは早く寝たほうが良い」

「何故そこまで嫌うのか、理由をお聞きしたい所存だ」
「理由なんてないさ。そうだな、ただ少し話を聞かせてやろうか……」

何の気まぐれを起こしているんだろうかと、自分でも思いながら、私は語る。

「いいか、
ある時旅人は言いました。
「嗚呼、雨が降らないか」と。
すると神はその旅人に涙を流し、情けの雨を降らせてやりました。
するとまた旅人は言うのです。
「こんなに雨ばかりじゃ不自由だ、腹を満たすこともできないじゃないか」と。
神は、嗚呼この旅人は腹を空かせているのかと、不便に思いパンを降らせてやりました。
するとまた旅人は言うのです。
「もうパンなんか沢山だ、これじゃあ欲しいものも手に入らない」と。
煩わしく思った神は、空から石を落しました。
するとどうでしょう。
地上は等しく静かになり、その後天からは何も降らなくなったのです」

「どこで聞いた話だったかは忘れてしまったが、この荒れ果てた荒野の街を見ると思い出すんだ。この地は神に嫌われた場所なんだとね」
「だから私達がどうしても阿呆らしく見えると?」
「嗚呼全くその通りさ。なあ知っているかい?ここから少し西に進んだある場所では、こうした迷える者達に橋渡しをする素敵な人間がいるんだよ」
「さあ、聞いた事も無い話だ」
「そりゃあそうだろうさ。何せすごく遠くの街だからな。そこでは天まで届く巨大な塔を作っているんだ。何て言って作らせると思う?「お前らは欲と罪に汚れた愚かな家畜共だ。その罪を洗い、また愛する者に逢いたいのならば、この塔から天へと上り、神に洗い流されろ」ってな。だが、どうだ?その塔を作る人間は大抵愛を知らない残念な奴等だ。それに気づかない、神の代行者を名乗る阿呆は、余程神から人を見る目を与えられていないのだと痛感するね」

両手を広げて語って見せる、すると神父はこういうのだ。

「成程、貴方はそこから来たのだね?」

と。

「神はそんな者達を決して許しはしないだろう。神のもとへ無理に行こうなど、愚者の極みがする事だ。何時か必ず天罰が下る」

そう言って、私の手を握る。意味がわからない。この神父は何故、涙を流しているんだ?
私は訳が分からないから、先ほどの話の続きとばかりに、こう一言添えてやる。

「神は等しく人に愛を注ぐ……のだっけ?神父様」
「嗚呼、勿論だ。貴方も神に愛された人間の一人……」

私は神父の言葉を遮るように言ってやる。

「だがね、神父様。神は人間を愛した瞬間に、その名を地へと堕とすのだよ」

*

この地にも、ようやく雨が降ったようだ。

---

./その名を堕とした私へ。

5日前 No.4

削除済み @lita ★jjZ8s1GBr0_yFt

【記事主より削除】 ( 2017/03/23 22:20 )

3日前 No.5

水葬 @lita ★jjZ8s1GBr0_yFt

「あれが、トゥラーンのガキだ!逃がすんじゃねぇぞ」

馬車で追いかけてくる人攫いと、全速力で走る、俺。どう考えても俺が捕まるであろうことは明白なわけだが、ここで捕まったら今までこの酷い迫害から命からがら逃れてきた、ご先祖様に合わせる顔がない。
今まで神様仏様ご先祖様と呪いをしてきて、一度たりともその願いが叶う事は無かったが、それは自分の祈り方が足りなかったのだと、今一度しっかりと反省をし、自分を助けてくださいと誠心誠意祈りを捧げる。そんな時、

「おい、猛獣用の麻酔弾見つけたぞ!」
「よくやった。しっかり狙いを定めろ!あいつ等は脳筋だ」

暗転。

*

脳筋だという事実については、認めざる負えない。だが、脳筋だから一族が滅びかけているのだとか、脳筋だからすぐ人攫いに捕まるのだとか、そう言う事に関しては頑として首を横に振りたい所存だ。寧ろそうであってほしい。

目が覚めたそこはかなりの劣悪な場所で、例えるなら監獄。この一言に尽きる場所だった。何処を見渡しても自分と同い年くらいの子供ばかりで、女も男も入り乱れた酷い場所である。ただ誰もお互いに関与はせず、ある者は耳を塞ぎ、顔を膝の間に埋めながら震えていたり、ぶつくさと独り言を言っていたり、必死に神に祈りを捧げていたり。そんな者達ばかりであった。
冷静に座っている者も数人いたが、やはりというか当然と言うか、同志が居なかった事にほっと息を吐くとともに、嗚呼俺だけかと、ため息も出た。
そんな場所で一際目立つ少女が居た。オーラとかそういうものでは無い。寧ろ少女は、第三者が居たからこそよく目立っていた。

「さっさと金を吐け!この化け物が!!!」

そう罵られながら、集中的に腹を狙われている少女は、見た事も無い様な綺麗な黒髪をしていた。金を吐けというのは、聴いている自分にはさっぱり分からなかったが、少女は必死に歯を食いしばり目には涙を溜めながら、それでもその理不尽な暴力から耐え抜いていた。

それから数日。少女は金を吐く少女だと言う事を知った。言葉通りゲロゲロと金を吐くのである。だから奴等は少女の腹を蹴り、その金貨をわが物にしようと必死だったのだ。少女は滅多な事では目を開かなかったが、偶に開かれた少女の目は、紫色の美しい色をしていた。
ここは牢獄の様に見えるが、人攫いのアジトの様な所だった。一日に一度は良いなりをした貴族が足を運んでくる。でもなぜか、俺と少女は商品になることがなかった。

自分はもうほぼ滅んだといっても過言ではない、かつては王国の王直属部隊で、戦果を挙げていたトゥラーン族だ。今は迫害に迫害を受けて、前述した様に滅びの一途を着々と辿っている。
珍しい俺等は、酷く高い値段で買われるし(飼いならされる事は無いが)、買われる以外にはどうなるかと言うと、王へと売られ、逆賊の見せしめとして処刑される。そう、トゥラーンは何故か、王国から逆賊と言うあらぬ罪を着せられ、今もなお処刑され続けているのだ。其の為人攫いはトゥラーンを躍起になって探し、王国軍へと売る。
それによって大金を手にするという、素晴らしい仕組みが成り立っている。

少女はとても見目麗しい少女だった。子供で見目も良かったら、物好きがこぞって買いたがる商品である。その挙句金貨をゲロゲロと吐くのだから、それはもう良い食い扶持だろう。
あんなにガキがごろごろと転がっていたこの檻の中は、自分と少女しかいなくなってしまっていた。さて俺が王国側に引き渡されるのが先か、それともこの少女が良いところの気持ち悪いおっさんに買われるのが先か、どちらにしても自分なら舌を噛むなと想像し、思わず鼻で笑う。
少女は今もその大きな瞳を閉じたままだ。長い睫は時折ふるふると震え、ついた埃すら少女を彩る装飾のように思える。
するとまた、怒号とともに檻が開かれる。嗚呼またあの連中が、少女を蹴りにやってきたのだ。毎日ご苦労な事だ、と笑いがこみあげてくる。毎日噛み殺すのに生を注いでいる俺だが、どうも今日はそれが上手にできなかった。嗚呼やらかしてしまったな、と思う。

「おいお前、今笑ったのか」
「否、気のせい……ですよ、はは」

渇いた笑いを浮かべ、どうぞその少女を蹴りに戻ってくださいなと、言うかのように目をそらす。なんとも薄情な人間だなと思うわけだが、これはこれで少女の運命でありそして俺は王国に引き渡され首を落とされるまで、ひたすら拷問とは名ばかりの暴力を与えられる日々を待つのが運命だ。

「てめぇ、トゥラーンのガキだからって調子乗ってやがるな?」

鬱憤を晴らす相手が確実に俺に変わったな、と俺は感じ取りながら、嗚呼面倒くさいな、と天を仰ぐ。そんな時、一緒に来ていたもう一人の男が突然喚きだした。
今度は何事か、とそちらへと視線を向けると、

「この糞ガキ!舌を噛み切りやがった」

大した根性あるじゃないかと感心する。そんな事ができるなら、もっと早くしていればよかったのに。同情を少し寄せながら、その少女の行く末を見ていると、

「ちっ!最悪だぜ、この金吐き女。これじゃボスに殺されちまう」

一人が頭を抱えていると、俺へと鬱憤を向けていた男が、突然気が狂ったかのように(実際狂っていたのだろうが)拳銃を少女へ向けて撃ちだした。何事かと目を見開くが、少女は体中に散弾を浴び、穴を一つ、また一つと着実にあけていく。
死体に発砲などしても何の意味もないのではと思うが、嗚呼そういえば自分の両親も……と思いだす。両親は俺を庇って王国群にとらわれ、街のど真ん中で処刑された。その後、首を一週間程吊るされていたのだが、その首に向かって石やら何やらを人間どもは投げつけるのである。
嗚呼、これが未来の自分だ、と。きっとこれは明日の俺だ、と。その場で恐怖したものだが、死人に口無しと言うように、死体に何をしても結局意味がない事だと、そんな意味のない事に労力を捧げる人間の気持ちは、やはりわからないものだなと。目の前で起きている惨劇をまるで、遠くから見ているかのような心情で見つめていた。

二人はそそくさと檻を後にしていった。きっとこの後、ボスとやらに殺されるのだろう。ざまあみろと思っていた。するとどうした事だろうか。少女の体にあいた無数の穴から、黄金の芽が出てきて、その後、にょきにょきとそれは成長しだしたのである。

「お、おお………」

俺は思わずそんな声をあげてしまった。
その芽は苗となり、その苗は木となり、金の花咲かせた。金の花は枯れ落ち、黄金の欠片となり床に散らばり落ちる。まるでこの世にある物とは思えなかった。檻の中だからこそ、これほど美しいものに思えるのだろう。
黄金の欠片は一つ、また一つと、地に落ち黄金の音色を奏でている。

「トゥラーンの生き残りくーんは、君かな?」

数人の連中と、一人身なりが明らかに違う人間が現れた。王国軍の軍服に身を包んだ人間だった。嗚呼、これで自分も最後かと、最後に美しい物を見れてよかったななんて、思い出に浸る。

頭に銃を突き付けられた。

連中の内の一人は、黄金の欠片を拾い集めている。

首を飛ばすんじゃないんですかい?と、連中のうちの一人が声をかける。

金吐きを銃で撃ち殺したのはどいつだった?と男が静かに声を上げた。

もう処刑は終わりだよ、次の時代に向かっているんだ。と、王国軍の奴が言った。

それなら××ですよ。と声を上げた男は、あの少女が死んだ時、一緒に居た一人だ。


人間は酷く醜いし、世界は誰にでも等しく牙を剥く。それが今は偶々自分と少女だっただけだ、と思えば少しは気も楽になる。走馬灯は、何も見えなかった。
ただ、煌めく黄金の欠片が、正しく自分と少女を黄金郷へと導くのだろう。

---

./金になる少年と、金がなる少女。

3日前 No.6

水葬 @lita ★jjZ8s1GBr0_yFt

沈んだ時、初めて怖いと思った。

ずっと死にたいと思っていた。
人間なんて死ぬ為に生まれて来るものであり、生きていたって最後は死ぬ運命。
死ぬのが遅かろうが速かろうがどうという事ではないし、結果死んだ理由が寿命だろうが事故だろうが自殺だろうが、何ら大した事ではないのである。
自殺は良くないだとか、天寿を全うすべきであるという大義名分は、実際“死”と言う物を目の前にした時、何ら意味は無いと思っていた。

否、実際今も思っている。
ただ、死と言う物に直面した時、恐怖した。水底に沈み、初めて生きたいと思った。もう、浮かび上がる事もできない。
底無しに沈んで行く中、目を開くと天上には美しい景色が広がっていた。この水底不深くを泳ぐ魚は、毎日この景色を見ているのか。

わたしはこのままどうなるのだろう。

きっと、柔らかな土の上に落ちて、誰にも見つけて貰えない。貝や魚に肉を食われ、その骨は長い年月をかけて土へと返るだろう。
わたしの生は孤独そのものであった。
死して尚、独りで居なければならないのか。嗚呼、もう目を閉じよう。

とさりと体が落ちた時、ぐるりと世界が反転した。

---

./巡る

3日前 No.7

水葬 @lita ★jjZ8s1GBr0_yFt

雪の上に咲くという伝説の華があるらしい。

その華は例え医者が匙を投げだす不治の病だろうと、その華を煎じて病人に飲ませれば、どんな病でもたちまち治すことができるようだ。
更に病も何も無い、至って健康な人間がその華を口にすると、不老不死になれるというのだから驚きである。

誰もが幻ともいわれる雪の華を探しているこの時代、雪の華は古書にしか残されていない。
とても紅い、不気味なほどに紅いそれは、呪いの華と書かれているようだ。
それ程までに不気味な色をしているらしい。

雪に零した血の様に、深く紅い雪の華は、“神が零した血”だとも言われている。
神が零したその血が万物の物なのか、それとも呪われた代物なのか、知る者は誰もいないし、これから先知る者もいないのだろう。

        ××××の手記より

---

./雪紅の花

3日前 No.8

水葬 @lita ★jjZ8s1GBr0_yFt

「忌み子が産まれたぞ!!」

私の家で産まれた子は、かつてのこの村の罪の具現であり、今は“忌み子”として忌み嫌われている子だった。忌み子が産まれた時は、乳飲み子の内に沸騰し続ける湯に1日入れ続けその後火にくべ、残った骨はすべて粉々にし、札のついた壺の中へと灰や骨の粉を入れ、村を流れる川へと流せと、伝えられている。

乳飲み子の内に、とは言われているが、産まれてすぐにそうしなければならないのだそうだ。
“忌み子”とは人の生き血を吸って生きる者のことを言う。
人間同士で交わり子を産もうがどうしようが、忌み子は極稀に産まれてきてしまう。
何故産まれてきてしまうのかは、今は誰にもわからない。忌み子を殺すにはタイムリミットがあり、それは人の血を吸う前までと、決まっている。
そして忌み子は乳飲み子の内に人の生き血を吸わないでいれば、渇きに耐えられずにもがき、苦しみ、やがて死んでしまうのだそうだ。

私は少し前まで、そう、この子が生まれる前までは、そんなひどい殺しかたせずとも、血を吸わせないでいれば良いのだと思っていた。

だが、今の私にそれはできない。
勿論殺すこともできない。

この子は“忌み子”だが、私の“愛する我が子”なのだ。

嗚呼、愛しき君よ。
君がどうか幸せである様に。

---

./血のみ子

1日前 No.9

水葬 @lita ★jjZ8s1GBr0_yFt

こうして僕は、

+++

ある日、可哀想な君を見つけた。
土砂降りの雨の日。
雷が鳴り響くそんな日に、公園にて君を見つけた。
雨で濡れているから一見分かり辛いが、君の瞳からは雨にも負けない大粒の涙が流れているのが見て取れる。
だから僕は、君の隣に居てあげることにしたんだ。

君は、僕を君のお家に連れて行ってくれた。温かいお風呂で丁寧に体を洗ってもらい、僕は本来の姿になった。
君が泣いていた理由は何なの?きっと僕が聞いたところで君は答えてくれないだろう。

君が悲しそうな時、君が落ち込んでいる時、僕は必ず君の隣に寄り添って君の名前を呼ぶ。君はそんな僕の頭を優しく撫でるのだ。ぽかぽかふわふわになってくるとお眠の時間。
夜は君より先にベッドの中に入ってお布団を温めておく。
お昼寝は君の膝の上で。君の腕を枕にしてすやすや眠るんだ。

君の名前が葵だと知ったのは、君と一緒に住んでいるこの男の人がそう呼んでいたから。必ずあの人は「あお」と数回呼んだ後に返事が無いと、「葵」と呼ぶ。
だから僕は最初君の名前をあおだと思っていたのだけど、葵だと知ったんだ。
ちなみにこの男の人は涼哉さんと言うらしい。
涼哉さんは余り俺を構ってくれない。最初は嫌われているのかと思っていたけどそうでもない様で、すごく優しい人だ。
涼哉さんとあおは、偶に喧嘩をする。
喧嘩をした後、あおは一人部屋に籠ってしまう。そんな時、決まって僕を構ってくれるのが涼哉さんだ。あおに撫でられるのも好きだけど、涼哉さんに撫でられるのも好きだ。涼哉さんは、君とは違った安心感がある。ただこういう時、涼哉さんはすごく悲しそうな顔をしているから、僕もなんだか悲しい気分になってくる。
多分、涼哉さんはあおと喧嘩をしたくないのだと思う。
あおも、本当は涼哉さんと喧嘩したくないのだろう。
だから、今こうして喧嘩をするのは、あおや涼哉さんにとってきっと必要な事なのだと思う。

この頃のお気に入り場所はもっぱらリビングの大きな窓の前。日が当たってぽかぽかなのだ。
君が僕の名前を呼ぶ。僕は仕方なく体を起こし君が座っているソファーの元へと歩みよる。
「新しい首輪買ってきたんだ!」
と言って見せてきたそれは、ピンク色でリボンが付いている。女の子が付けるような首輪。僕男の子なんだけど。抗議の声を上げてみるも、君はお構いなしに僕の首にその首輪を付けた。
満足そうに微笑んでいるからまあ仕様がない、良しとしよう。
僕も涼哉さんも、この笑顔に弱いのである。

君が不思議なおもちゃを買ってきた。もじゃもじゃしていて、ぐにゃぐにゃ動くのだ。僕はそれを追いかけて遊ぶのだけれど、君はすごい速さでそれを動かすから僕はひたすらにそれを追いかける。
この時気づいたことだが、どうやら僕は疲れやすいらしい。そして、嗚呼だから、あの頃は毎日お腹が空いていたのかと気づく。
君は疲れて床に寝転がる僕を見てけらけらと笑う。
何で笑ってんだよと不貞腐れていると、君は僕の気持ちなんてお構いなしに抱っこして撫で回してくるものだから堪ったもんじゃない。

君が今まで見た事の無い服を着ている。見た事が無い服は何度となくあるが、これは何時もの可愛い服じゃない。家を出て行く時に来て、帰ってきた時に脱ぐ服。ひらひらとしたスカートを短く捲って、君は暫く何処かへいなくなってしまう。
僕は毎日涼哉さんと君をお見送りする。
その暫く後に涼哉さんも家を出ていってしまうから、僕は一人ぼっちになってしまう。
そんな時はあの大きな窓の前で、君の姿が見えるまで待つのだ。

君があの窓の前でしくしくと泣いている。君が泣くなんて珍しいから、僕はとても心配になる。今日は、そういえば君を見つけたあの日と、同じくらいの土砂降りだ。
早く涼哉さんは帰ってこないだろうか。涼哉さんが来れば、君はきっと泣き止む。
僕じゃ何もできない。
無力な自分が悔しい。
僕は涼哉さんにはなれないし、君の涙を止める事も、君を笑顔にする事もできない。
君が僕の名前を呼ぶ。震えた弱々しい声だ。心配で膝の上に乗って、君の顔に僕の顔を近づける。君は僕の頭を優しく撫でる。とても温かい手だ。

ある夏の日。
僕がこの家に来てからどれくらい経っただろう。
君と出会ってから、どれ程の時が経っただろう。
暑い暑い日、大きな窓の前は日が当たって更に暑い。君は窓を開けて、窓の外に足を出して景色を見ている。
僕は君の隣に寄り添う。
君が僕をうちわで仰ぐ。そんなの全然涼しくない。僕は君なんかより沢山厚着をしているんだから。
君のお腹に頭をすりすりすると、君は、あの頃と変わらない声で、僕の名前を呼ぶのだ。

+++
 あなたの隣に居るだろう。


---

./ずっと、ずっと。

1日前 No.10

水葬 @lita ★jjZ8s1GBr0_yFt

この投稿はフィルタされています。表示するにはアカウントにログインして下さい。

40分前 No.11
ページ: 1

 
 
<< TOPページ 掲示板TOP 記事データ お知らせメール ▲ページ上 >>
★必ず ローカルルールメビウスリングのルール をご覧ください。
 ▼スタンプ▲スタンプ
※スタンプはいちどに 3個 まで使えます  ×閉じる