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イミテーション

 ( 書き捨て!小説 )
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@callisto52 ★Android=XYNPzoTDaB

imitation イミテーション いみていしょん

偽物というこの言葉は、しかしとても心地よい。
私も、イミテーションでありたかった。
あの、最高の輝きを残し続ける存在でありたかった。

「貴方の一生は唯一無二のオリジナルなんだから。大切にしなくてはいけないわ。」
素晴らしい言葉。
そのわりには、オリジナルの宝石は持ち主の趣味で削られていく。
最初の大きな結晶の姿は、模造された人工宝石だけがとどめている。
模造宝石、イミテーションだけが。

己の身を削り、どんなに輝かせたところで、最後に残るのは、元の己よりずっと小さくて流行遅れな自分の姿。
そしてきっと、大きくて綺麗な昔の己を懐かしみ、羨むのだ。

“イミテーションでありたかった。”

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@callisto52 ★Android=XYNPzoTDaB

 「…何を、した…」

 王座に立つ彼に相応しい豪奢なキングベッド。そこから起き上がることもなく、夫は私に問いかけた。
 起き上がることすら出来ないほど弱っているのに、私に向けられる視線は鋭い。まるで玉座にいた頃のよう。私の愛した、あの頃の貴方。

 「お食事のこと?」

 とぼけたような私の答えに、褐色の瞳は鋭さを増し、その顔には驚愕の色が浮かぶ。珍しいわね、貴方がそんな顔をなさるなんて。

 「私ね、貴方のお食事に東洋のハーブを入れましたの。毎晩のお夕食にね。美味しかったでしょう?食べた後にちょっと頭がくらくらして。」

 微笑みながら言葉を紡ぐ私に、夫の顔は驚きを隠せないようだった。そして同時に、無知で純粋な私を哀れむような視線が向けられる。
 ああ、貴方の中ではまだ、私は箱入りのお姫様のままなのね。嬉しいわ。長年の私の努力が無駄にならなくて。

 「だって貴方、私に黙って勝手なことなさろうとしたでしょう。可愛い私たちの息子を差しおいて、あんな世間知らずの子を王位に立てようとして。貴方は本当に人を見る目がないわ。」

 夫の顔が引き攣った。人を見る目はないけれど、勘は鋭い貴方のこと。そろそろ気がついたかしら。
 貴方が他の女に産ませた子は事故死したわね。私の子が王位に立つには邪魔だったんだもの。それにあんな子に国を継がせたら、あっという間にこの国は滅んじゃうわ。それは私も私の母国も望まないのよ。

 「それとほら、この間結ぼうとした同盟。この国の発展には必要かもしれないけれど、私の母国はそれを望まないわ。」

 貴方の食事に毒を盛り、王座から下ろしたのはその為。私の子は同盟をやめたがっているから、これでこの国はこれ以上急激な発展はしなくなる。本当は貴方を説得できればよかったのだけれど、貴方は無知な私の話なんて聞いてくれないから、仕方ないわ。

 そろそろ分かってくださったかしら。
 私が貴方の思っているよりずっと狡猾で頭が回ること。母国のためにこの国を利用している、スパイの一人に過ぎないこと。ずっと貴方の政治を裏でいじっていたことにも。
 けれどもう手段がなくなってきたし、私の子も十分育ったわ。だからもう、貴方を王位に立てている必要なんてなくなったの。勝手なことをする貴方なんて。
 本当はこのままもう少し一緒にいたかったわ。貴方と本当の平和な時間を過ごしてみたかった。
 けれどもう駄目ね。貴方に知られてしまったもの。

 「ごめんなさいね、貴方。
 最後まで騙されてくださって、私を大切にしてくださって、本当にありがとう。」

 夫の顔を見ることなく部屋を出て、私は厨房に向かった。今日できっと、これも最後。食べようと食べまいと、貴方は明日の朝には眠ってしまうわ。



 翌日。大騒ぎの朝になって気がついた。

 「私、愛してるって言わなかったわ。」

1ヶ月前 No.1
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