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死体は森に、いつかの空に。

 ( 書き捨て!小説 )
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相馬 雷太 @asahi0614 ★HXQMcGnbS0_M0e

 先生は覚えていますか?
あのきれいな夕暮れを。

 私と過ごした、輝く日々を。


 ずっとずっと好きでした。


 ___________


 かき捨てです。長く続けるつもりはありませんが、
それなりに書いていきたいと思います。

 題名は物騒ですが、そんな物騒な話にするつもりはありません笑

ページ: 1

 
 

相馬 雷太 @asahi0614 ★HXQMcGnbS0_M0e

 コツコツと足音が響く。
何かが起こる予感が、私の鼻をかすめる。
なんて、ね。

 暗いくらい牢の中。私は希望を待つ。
誰か誰か、早く来て。

 この死の香りがはびこる庭から、連れ出して。


 「さあさあみなさん! 今日もイキのいいのが揃ってる!
  それに今日の目玉はいつもと違う!
  なんてったってこいつは……!」

 ああ、やかましい。
喧騒が耳障り。どうでもいいよ、いらないいらない。
早く私を連れ出して。

 「1000からのスタートだ! さあ賭けた賭けた!
  誰がこいつを手にするんだ!」

 周りの喧騒が激しくなる。やがて静まり、光が弱まる。
鳥かごのようなこの檻。さあ、このカーテンを開けるのはだれ?
私を導くのはだれ?

 あなたはどこにいるの?

 「出ておいで、独りの子」

 外から声が聞こえたかと思うと、檻にかかっていたカーテンが開き、
扉があいた。久しく聞いたその音の先には優しい目元の彼がいた。

 「初めまして、独りの子。今日から君は僕のもの」

 優しく抱き上げられて頬にキスをされる。
ああ、なんて優しいしぐさ。生まれて初めての感覚。

 「僕の事は『先生』って呼んで。これでも研究者なんだ。
  君に名前はあるのかな?」

 私は静かに首を振る。
名前なんて呼ばれたことない。私にはヒトとしての経験が皆無だった。

 「そう、独りの子。かわいそうに。それでは君の姉さん方に決めてもらおう。
  おいで、独りの子」

 先生は私を下すと私の手を取り、歩み始めた。
私はもたつく足をふんばり、先生と歩いた。

 これが始まり、これが出会い。
初めての幸せだった。

4ヶ月前 No.1

相馬 雷太 @asahi0614 ★HXQMcGnbS0_M0e

 連れてこられたのはずいぶん深い森の奥にひっそりと佇む廃墟のような建物。
元は病院のようなその建物は自然の日差しを一身に浴び、私を迎えているようだ。
 風が私の背中を押したのが先か、先生の引く手が動き出したのが先か。
 私はその建物にゆっくりを近づいた。

 玄関に通ずる大きい扉を開けると大きな玄関ホールが眼前に広がる。
部屋は薄暗く、照明はあるようだが自然の明かりが大半を占めているその部屋に
真っ白な髪をした子供が二人、並んで待っていた。
 出迎えるように、今にも溶けそうなくらいうれしそうな表情で。
 その子たちは先生が見えた瞬間、はじけたように口をそろえて
 「お帰りなさい!」
と、声を上げた。
 そのあと先生のつないでる手の先に私がいることを認識した。
 二人はどちらとも女の子で、白い髪に、赤い目、赤い爪に、どちらも白いワンピースを着ていた。
彼女たちが違うのは髪の長さと顔立ち、身長くらいだった。
 私はとても驚いた。まさか自分と同じような外見の人間がいるなんて。
 「やあ、ただいま二人とも。驚いたかい?」
 先生が言った言葉は私に言ったのか、彼女たちに言ったのか。
 髪をおかっぱのように短くした方の少女が私に近づき、先生とつないでいた手を
強引に離した。
 なぜそんなことをされたのか全く分からない。
私は目を丸くして彼女を見ていた。先生は苦い顔をして少女の頭を軽く小突き、優しくなでた。
 「これから一緒に暮らす子だ。名前を付けてあげておくれ、私は少し寝る」
 先生は私たちを置いて玄関ホールの奥にある、ひときわ大きな扉に消えた。

 それから私は大変だった。少女たちにじいっと見つめられる時間を頂いた後、
少女たちは私の手を引き家の中を案内しだしたからだ。
 家の中は広いが、大半が使われていない部屋で構成されているため、あまり広い印象が
ないのだという。
 私より少し年上に見えるのが夏菜(なつな)、私とあまり変わらない年に見えるのが冬香(とうか)
という。季節感のある名前である。
 年齢は三人とも不明であり、顔立ちや身長から二人は判断しているらしい。ここの家は前はこの
二人だけでなくたくさんの孤児が先生により集められ、皆巣立っていった場所らしい。
 先生は最近は研究に没頭しているのか、孤児を拾ってくることはなかったとのことで、久しぶりに
仲間が出来て二人はとてもうれしいようだった。

 そして私に二人が名前を考えてくれた。春夜。森に咲く自然が一番美しい時が刻まれたその名を、
私は愛しく感じた。

4ヶ月前 No.2

相馬 雷太 @asahi0614 ★HXQMcGnbS0_M0e

 私はその日から夏菜と冬香とともに日々を過ごした。
初めて触れるぬくもりに、最初は戸惑いとともに拒否があった。
しかし二人はそんな私を受け入れ、私が二人を受け入れるのを待ってくれた。
後から聞いたが、ここに来る子供たちはみんな最初はそうであり、その反応はおかしなことでは
ないからだという。
 私は初めて自分が受け入れられる環境に適応し始めていた。
そして、私が受けてきた様々な事柄についても二人は教えてくれた。

 私や二人のような髪色が白く、赤目、赤い爪をもつ人種そういないらしい。
だからこそ私は多くの人も前で笑顔でいさせられたり、きれいなべべを着せられたりしたのか。
と、納得が出来た。
 私にとっての経験はそれくらいだったが、二人は、特に冬香は二人が言う『結構な体験』をしたのだという。
なんだかさっぱりわからないが、私はそこにはあえて触れないようにした。

 そうして私たちの微妙な距離感は二年に渡り続いたのだった。

 この狭い世界の中で先生は唯一、黒髪黒目を持つ生体であり、その正体は謎に包まれていた。
いつも研究室にこもり、ごはん時には夏菜がご飯を運びに行く日常。
 冬香はいつもその光景を羨ましそうに見ていた。
……もちろん私も。
 私はこの二人と過ごす日常も好きだが、先生の姿や声を感じることが何よりも好きだった。
出会ったあの日からずっと、つないだ手からずっと。冷めない熱が私を包んでいた。

 やがて夏菜が推定ではあるが17、私と冬香が16の時にそれは起きた。
その時の衝撃はきっとその後の人生でも残りゆくものだと、すでにその時実感していたのだ。
 醜い私を、どうか許してください。

 その年、名前につく季節と同じ暑い初夏の日に。
独りの少女が死んだのだ。

3ヶ月前 No.3
ページ: 1

 
 
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