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海に堕ちた小望月

 ( 書き捨て!小説 )
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@akira0908 ★Tablet=8inFfrnWZ2




「 あ、もうすぐで満月だよ 」

シャープな君の横顔は月明かりで照らされていて、儚くも美しかった。

「 ?もう満月じゃないのか? 」

「 ううん、今のは小望月。明日になれば満月になるよ 」

「 小望月?うーん、分かんねぇな 」

「 君はなぁんにも知らないね 」

楽しそうに微笑を浮かべる君。

「 悪いか、知らなくて 」

「 ねえ、小望月、落ちてるみたいに見えない? 」

皮肉気に言った俺の言葉は流され、海に映った“小望月”を君はうっとりとした瞳で見つめる。

「 確かに、堕ちてるな 」

「 うん、落ちてる 」

俺が君の中に広がる海に堕ちたのは、黄金色に輝く小望月の日の事だった。





※attention※
…書きたいことを好き勝手に書いてます
…キャラクター設定
…小説の下書き
…安定しない世界観
…本スレへの書き込み御遠慮願います。サブ記事、もしくは伝言板にて願います。




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削除済み @akira0908 ★Tablet=UIgVrM4Ag0

【記事主より削除】 ( 2017/08/05 02:06 )

3ヶ月前 No.276

削除済み @akira0908 ★Tablet=UIgVrM4Ag0

【記事主より削除】 ( 2017/08/05 02:06 )

3ヶ月前 No.277

@akira0908☆G2g5KGLD3yBo ★Tablet=UIgVrM4Ag0

今更だけど亜留斗と光

中立国医療班班長六合亜留斗
……中立国の統率者。東と西で分かれる前までは国内で大きな病院の院長やってた。この設定で一番年増。医療や科学に長けた天才でありながらも天才的な技術を持つ術師で多分200年くらい生きてる。見た目年齢は28歳。相当なサイコパス変人だけど見た目がすごく若くてかっこいいから元から武器を持ちたくないって人が多かったこともあって中立国は女の人が多い。術師としての才能といえば中立国に被害が一切来ないように中立国全域にかなりの結界を張って凌いでる。東と西で分かれてとある事で如一がブチギレして中立国に被弾させた時に亜留斗がブチギレて科学技術と魔法的術で1人で無理矢理東軍と西軍を叩きのめすっていう偉業を成し遂げてからは東軍も西軍も「中立国には戦火を回さない」が暗黙のルールに。ちなみに被弾させた西軍は復興までに2年もかかってる。東軍は半年だったけども1年6ヶ月も穴が開いて軍略ウハウハで東軍からすれば「ちょっとあの馬鹿もっかいやってくんねぇかな」ってみんな思ってた。だけど何もしてない東軍も叩き潰されたこともあって光と陽双子がキレて復興途中の西軍に喧嘩ふっかけた。復興長引いた原因コイツら。中立国で一番強いし下手したら国で一番強い。得意な術は召喚と火術。200年生きてる人(?)は違うなぁ。ちなみに西軍と東軍叩き潰した時召喚術で西軍街全壊されたよ。しかも三日三晩常に業火。東軍は鍛冶屋の敵、膨大な水被害に。治療は術でも出来るけど亜留斗科学ものだけは術信用してないから自分でやってる。

東軍特別捜査官天城光
……陽の双子の姉。足がめちゃめちゃ早い。水の上も天井も壁も走れる。そろそろ浮くんじゃねえのって噂。術師でもあって幻術がめちゃくちゃ強い。というか幻術極めすぎて攻撃系何も出来ない。隠れたり幻見せたりはお手の物。いつも西軍に情報を取りに行ってて、出陣や作戦盗み聞いてはお持ち帰りしてくる。西と東で分かれる前は如一の幼馴染みで、昔はそこまでじゃなかったにしても光が人を煽るのが大好きで如一キレさせて如一が親父に怒られるっていうのを体験しててあと陽がめちゃくちゃ如一にいじめられててその鬱憤もあって如一がとっても大っ嫌い。如一も光が大っ嫌い。この設定では陽と双子なので当然22歳。基本的に手裏剣やクナイを使っているのだが、陽と双子刀の大太刀を持っている。双子刀ということもあり制作主は同じで、大太刀「魂刀・神隠」。神殺よりも威力や殺傷能力は低いが、命中率と軽さが頭おかしい。神殺は殺傷能力重視故に攻撃も重く武器も重くが特徴的なのにも関わらず神隠は殺傷能力よりもいかに地味な攻撃を与えるかを重要視していて、攻撃が軽く武器も軽いのだが命中率と切れ味が普通じゃない。刺すのには向いていないが人の皮だけを剥ぎ取ったりとかするのに向いてる。痛そう。包丁みたいにいうけど薄切りが結構得意。昔の人は神隠で相手の反撃を減らし、じわじわと痛みを与え、最終的に神殺でとどめを刺すってやり方が流行っていたらしい。1回やってみたいけど光が基本逃げの一手なので出来ない。ただ陽と約束してるのは「冬木さんにやろう」に尽きる。

3ヶ月前 No.278

@akira0908☆G2g5KGLD3yBo ★Tablet=UIgVrM4Ag0

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3ヶ月前 No.279

@akira0908☆G2g5KGLD3yBo ★Tablet=UIgVrM4Ag0

 もし、伊織が橘の家にならなかったら、と時折考えることがある。
 俺と楔は所謂幼馴染みっていうやつで、生まれたのは同じ年だった。俺らはずっと昔から東に住んでいたのだが、西の冬木という家の次に裕福だと言われる永瀬という家に子供が生まれたという話が盛り上がった。西は貴族家が多かったこともあって、俺らはそんな噂が流れる度に西に遊びに行っては貴族さんからお菓子を貰いに行っていた。そん時はまだ2歳だったから、母ちゃんと一緒に遊びに行った。
 西は貴族家が多い。そんなこともあってか、子供でさえも後継ぎを図っているかのように男が多い。冬木の家にも俺が生まれる少し前に女が生まれていたと聞くが、厳格な親父さんの基だということもあり、見に行くことは叶わなかったらしいが。永瀬にも女の子が生まれたという話で特に盛り上がっていた。
 これは東西が分かれた後に聞いた話だ。年寄りが勝手な事を言っているだけかもしれないが、西に生まれた女は、災厄だと言われていたらしい。西でも盛り上がっていたのは、災厄の火種が落とされたからだという。東では、貴族家の女の子、ということで盛り上がっていたのだが。
 と、まあ。災厄の火種は……言わずとも分かるだろう。西の街では虐げられていた。俺と楔が5歳になって、母ちゃんに家を離れられないから西にお使いに行ってきてくれ、と言われた時に楔と2人で西までお使いに行った時の話だ。母ちゃんからはお金が余れば好きなものを買ってきていいと言われていたこともあって、俺と楔は駆け足で西まで遊びに行った。

 「永瀬って西の女だから東だと高く売れるんだろ?」
 「母さんが頼くんとは関わってもいいけど永瀬とは関わるなって言ってた」
 「だから永瀬ってあんな化け物みたいな顔してんだな。せめて冬木さんみたいなイケメンだったら少しは扱いも違ったかもしれねぇのにな」
 「冬木さんと永瀬を一緒にすんなよ。それに、冬木さんは心根が漢じゃねえか!こいつみたいになよなよしてねぇもん。……あ、そう言えばこいつ、名前も貰ってないらしいぜ?」
 「かっわいそ〜」
 「永瀬って母ちゃんにも父ちゃんにも兄貴にも嫌われてるんだろ?だったら俺らが何しても誰も助けてくれないんだな!あははは!」
 「いいじゃんいいじゃん、女なんだもん」

 西までお使いに言った時、そんな声が聞こえたかと思えば髪がボサボサの傷だらけの女の子……後の伊織が周りの男達に蹴られてて、俺と楔は咄嗟に助けないとって思って、お互いに顔を見合わせてお使いのメモとかお金をポケットにしまって俺と楔は男達に殴りかかった。
 もちろん、俺らよりも年上が居たせいで俺と楔はぼこぼこにされたけど、それでも、なんだか負けたらいけないような気がして、ぼこぼこにされた仕返しに俺も楔も男達をぼこぼこにした。それでも、いくら俺と楔がぼこぼこにされても、あいつらがぼこぼこになっても、伊織の方が俺らよりもずっと酷い傷だった。

 「なあなあ、おまえ、なんでしかえししねぇの?」

 俺が幼心でそう尋ねると、伊織は意味が分からなさそうに首を傾げた。楔はぼこぼこにされててもちっちぇのにかっこよかったのは今でも覚えてる。俺もあんなにかっこよかったらなぁ、なんて思わなくもなかった。
 申し訳なさそうに眉を寄せて、瞳に涙だけを溜めて何も言わない伊織に楔は俺の肩をちょんちょん、と二度叩いたかと思えば、そっと俺に「ことばがわからないんじゃないかな」と言ってきた。そんな訳あるか、とも思っていたが楔は地面に「もじはよめる?」と拙い字で書いた。伊織は、こくこく、と分かるということを肯定した。
 どうやら、言葉が分からないから仕返しもできないらしい。そしてあいつらもその事をわかってやっていたんだと思うと、無性に腹立たしかった。地雷の家と冬木の家の女は特別扱いされているようだったが、冬木や地雷に劣る女はこんな扱いをされるのだという事実に、子供ながらに西の街に酷く憤りを感じた。西の母親は、殆どが元々は違う国から来たヤツらばかりで、西に生まれた女はそこそこの年になれば東か他の国で売られてしまうらしい。それから逃げ出して飢え死にする奴も少なくはない。
 買い手がまともな奴であれば良いのだが、何を考えているかわからない西の奴らだ。まともな買い手の元へなんて絶対売らないだろう。
 伊織は、指で地面にとても綺麗とは言い難い文字で「ありがとう」と書くと、申し訳なさそうにふにゃりと笑った。ちなみに、これは俺の初恋の話でもある。
 楔が「どういたしまして」と言いながら伊織の頭を撫でているのを見て、何故か悔しくなったから「あしたもあそびにくる」とだけ書いた。伊織はその文字を時間をかけて読むと、嬉しそうにこくこくと首を縦に振った。
 ちなみに、帰ったあと母ちゃんにすごく心配されたし、怒られた。西にはもう行くなとは言われたけど、いってやる。約束したもんね。

 「英介!どこ遊び行くの!」
 「ああもうっ、にしにはいかねぇよ!くさびとやまいってくる!!」

 それが俺の母ちゃんの目を盗んで伊織に会いに行く理由だった。楔と2人で西に行って、2人で文字とか言葉教えてやって、伊織は馬鹿だったけどすごく努力していたから、半年くらいで挨拶くらいはできるようになった。時々伊織をいじめてた奴らが来る時もあったけど、俺と楔は強くなりたくて近所の橘さんに色々教えて貰ってたこともあって、俺と楔が7歳になった頃には誰も俺らに喧嘩を売ってこなくなった。
 毎日西に遊びに行った。けど、伊織の5歳の誕生日の時、俺と楔で何かしてやろうって思ってたのに、伊織が来なかった。何かあったのかもしれないって思って、2人で永瀬の家まで行くと、伊織の姿はなくて、ふと家から聞こえてきた声は「顔はいいから高く売れたね」なんて声だった。
 7歳にもなれば、それが何を意味していたかはもう分かった。もう、伊織に会えない。そう思うと、涙が止まらなくて、楔は楔自身も泣きそうになっていたのに俺を慰めてくれた。なんとなく家に帰りづらくて、橘さんの家に楔と一緒に行った。

 「縁くん、どうしたんだい?」
 「ともだち、うられちゃった」

 橘さんがジュースやお菓子を出してくれた時にそう尋ねてくれた時、楔は悔しそうで、それでも淡々とした声で伊織の事を話す。橘さんは一瞬目を見開いたかと思えば、神妙な顔つきになって考え込んでしまった。

 「……永瀬……あいつ、何やってるんだ……?」

 3歳の男の子……識が俺らに出された茶菓子を随分と恨めしそうに見てくるもんだから、楔と俺が苦笑しながら渡すと、識は3歳にして「ありがと!おじちゃん!」なんて言ってきた。こいつは昔からふてぶてしい。ちなみに識はその後に橘さんに叩かれてた。そんな一連の流れの後、ふと橘さんのお嫁さんが立ち上がった。橘さんもお嫁さんがいきなり立ったことに驚いたのか目をぱちくりとさせた後に橘さんのお嫁さんは俺と楔の頭を撫でて一言。

 「私の馬鹿弟に売られる前に、助けてきてあげる」

 その時は言葉の意味が分からなかったけど、今はわかる。橘さんのお嫁さんは冬木の親父さんのお姉さんだった。昔は今ほど西の女は虐げられていなかったにしても、やはりあまり良い扱いを受け無かったこともあり橘さんのお嫁さんは若いうちから家を飛び出して東の方に向かったという。その時に既にもういくつなのかはよく分からないが、刀の呪いで若いままの橘さんと出会って今に至るらしい。
 今でも噂なので本当かどうかは分からないところなのだが、西で生まれた女は東か他の国で売られるか以外の選択肢に、秀でた見た目の場合は貴族の家で高く買われてそりゃもう酷くこき使われるのだそうだ。……まあ、どういう意味なのかは考えたくもないが。

 それから、橘さんのお嫁さんが帰ってきた後、そこには意味が分からなさそうにきょろきょろとした伊織の姿に思わず俺はまた涙腺が緩む。流石に楔もこればかりは嬉しかったみたいで、ぼろぼろ泣いた。伊織も、俺と楔が泣いてたからかはわからないけど、ぼろぼろ泣いた。

 「ありがとう」

 伊織は、まだ拙い言葉でそんな事を言って。

 それから暫くして、伊織は「伊織」という名前をもらって、識という弟を手に入れて、家族を手に入れて、俺と楔っていう虫と可哀想なことに友達になった。橘さんが結構手厳しい人というかなんというか、昔伊織がぼこぼこにされていたのはお嫁さんから聞いていたみたいで「今度からああいう事があっても相手を泣かせられるように」との事で武道を始めさせていた。伊織はめちゃくちゃ強くて、半年もしないうちに俺と楔はぼこぼこにされた。俺は痛すぎて泣いた。
 それから、伊織が10歳になって、俺らが12になった頃には伊織の酷かった傷も無くなっていき、天城って家の人が定期的に稽古に来ていたこともあって、橘さんの道場は可愛い子がいるだのかっこいい子がいるだので繁盛した。

 「伊織ちゃん、あそこに綺麗な湖があったんだけどね」
 「伊織ちゃん、この前綺麗な丘があって」
 「伊織ちゃん」

 12で、俺は失恋を経験した。長い片想いだったと思う。もしかしたら2歳の時からどこかで好きだったんじゃねえのかな、なんて事まで思ってしまう。楔なんて居なければよかったのにって思うこともあったが、楔が伊織を好きなのなんて当然だし、伊織が楔が好きなことなんて一目瞭然だった。だから俺は、初恋は言わずに終わらせた。
 言えば良かったなって後悔も無いわけじゃねえけど。


 「伊織」
 「ん?」
 「俺がさ」
 「うん」
 「お前が好きだっつったら……どうする?」
 「英介も冗談言うんだねぇ。それにさ、仮にそうだとしても英介は優しいしすっごいいい人だから僕なんかよりもずっと素敵な人が居るよって言うよ。……あっ、楔もいい人だよ!?でもなんだろうなぁ、英介はねぇ、楔よりもいい人だから僕には勿体ないかな。……楔に言わないでよ?ディスってるみたいだから」
 「ぶははは!!言ってやろっかな!」
 「ちょ、やめてよ!」

 俺は、伊織が好きな余り、いい人になりすぎてしまったらしい。
 今は俺はそういうのには興味は無い。




 伊織の事引きずってんのかって聞かれたら、まあ、それもあるけど……目の前のしょうがねえイチャイチャバカップルに手を焼いてるしかねぇし!






× 東西ネタだとある意味全部リセットだから縛られないで好き勝手出来るからすごく楽しい

× 英介ってほんとかっこいいよね

3ヶ月前 No.280

@akira0908☆G2g5KGLD3yBo ★Tablet=UIgVrM4Ag0

 「生きていらしたのですね」

 後ろから聞こえた物音と銃を構える音に伊織はそっと瞼を閉じて読んでいた書物に栞を挟んで本をぱたん、と柔らかな音を立てて閉じる。いつもは三つ編みに束ねている黒髪を降ろしていることもあり、伊織は人差し指に髪を巻き付けたりして呆れたように溜め息を吐くと、後方からの引き金を引く音に腰に携えられた脇差を引き抜き振り向くと同時に銃弾を真っ二つに斬った。

 「兄様」

 赤色の血を彷彿とさせる瞳は、緑色の瞳を持った茶髪混じりの黒髪の青年を睨みつける。青年は眉を寄せた後に肩を竦めて己の人差し指を目に近付けたかと思うと、緑色の瞳を作っていたカラーコンタクトを外し、赤色の目を赤赤と輝かせながら目を細めて小さく微笑んだ。

 「お前も、生きていたんだね」

 そんな事を柔らかな微笑を浮かべながら笑う青年の目つきは優しいものだった。そして伊織は、その優しい目つきを幼少期に何度も目にしていた。赤色の血を彷彿とさせるその瞳を、伊織は何度も見ていた。彼と同じ赤色の瞳を恨み、何度も何度も目を引っかいたりえぐろうとしては英介や楔を困らせる事があった。
 それでも、伊織は何度も何度も目を引っ掻いてやろうとも思っていたが、刀を交換してからはそうもいかない。己の傷は番の傷。何度も引っ掻いて何度もえぐろうとした事もあり視力は落ちていたが、成長と共に研ぎ澄まされた精神は視力がなくとも銃弾を切り裂くくらいは容易いことだった。とはいえ、それはもう5年も前の話だ。
 10年以上戦いは続いている。英介の力もあって生かされている命だ。伊織も早いもので、もう30になってしまった。楔だってそうだ。本来は25で死ぬ予定だったのだ。研ぎ澄まされた精神がうまく働かなくなってきたのは26に入って割とすぐのことだった。30を迎えてからは昔ほどの元気は無い。楔の方が年上ということもあり、死ぬのは楔が35を迎えてから、というのはもう決まっている。あと3年しか残されていない。出来ることならこんな醜い争いの結末を見届けたかったものだ。それでも、伊織は楔と共に居ることを選んだ。死ぬことは、怖くもなんともない。

 「あと3年で死ぬと聞いていたから、少しでも綺麗なうちに殺してあげようかと思っていたんだけど」
 「余計なお世話です」
 「伊織、どうしてそんなに俺に冷たいんだい?西に生まれた女だからと俺がいじめてしまったから?……あはは、まあ、本当に災厄だったのは冬木の家だったけれどね。それは皆目検討もつかなかったみたいだけれど」
 「いじめた?貴方が私にした仕打ちはそのような甘いものでもないでしょう。それと……冬木さんの話はしないで頂きたい」

 つまらなさそうに笑いながら銃を投げ捨てた青年を見て、伊織も構えていた脇差を鞘の中にしまった。とはいえ、相手は伊織にとっては忘れたくもない憎き復讐の相手でもある。懐に隠した短刀がすぐに取れるように軽く手を伸ばす。
 それを見据えた青年は目を細めてそれを見つめながら「ごめんね」なんて言葉をへらへらとした顔つきでありながらも後悔や罪悪感を抱えたような瞳で言った。その目を見て伊織は目を見開く。何か罠があるのか?今までに見たことのない実兄の表情に困惑する。これさえももしかしたら何かの罠かもしれない、と思いながら短刀ではなく背中に背負った薙刀の方へゆっくりと手を伸ばす。

 「大丈夫、罠じゃない。冬木も地雷も、俺がここに居ること知らないから。謝りたくて……抜け出してきた」
 「貴方がそのような事を言うとは……信じ難いですね」
 「……うん、まあ、そう言われると思ってた。……俺の言い訳、ちょっとでいいから聞いてよ」
 「……いいでしょう。3分です」

 悲しそうに目を伏せる兄の姿に伊織も流石に小さく頷く。兄の方の瞳は、自らが投げ捨てた銃をじっと見つめていたが、伊織はそれに気がつく様子はない。伊織は呆れたように眉を寄せながらも兄の言い訳とやらを聞いてやろうと兄を見据える。
 兄の方はまともに実の妹と目を合わせたのが気まずくなったのか、すぐに妹の瞳に比べると些か濁った赤色の瞳を逸らして、何から話そうかと考えた後に頬をかいた後に小さく頷いてゆっくりと口を開いた。

 「俺ね、父さんと母さんが怖かった。伊織が生まれた時、すっげぇ嬉しかったんだ。しかも妹だぜ?周りの奴らはむさっ苦しい男兄弟ばっかでさ、ほんとに、嬉しかった。……けどな、西に生まれた女は災厄の火種って言われてただろ?最初は信じてなかったけど……父さんも母さんも俺に言うんだ。「あの子は悪魔の子」ってさ。……反抗すれば、母さんが父さんに殴られるし。伯母さんの所は女の子いるのにってずっと思ってた。母さんと父さんが怖くて、喋れないのに、話勝ってたのに……何も言わない伊織が気持ち悪いって思うようになって……俺、それで、伊織、俺………………」

 最初こそは淡々と話していたものの、最後の方はもはやパニックを起こしているかのように額に汗を浮かべながら瞳孔を開いて動かす口は大きく震え始め、瞳には確実に涙が溜まっていっているのが分かる。
 伊織は目の前の今まで恐れていた人の恐れている姿に目を見開く。彼だって人間だったのだ。いくら伊織がひどい仕打ちをされていようと、いくら伊織が彼を憎んでいようと、それでも彼は人間だった。冷徹で怖くて感情なんて無いみたいで笑いながら殴ってくる兄は、今の伊織の目の前には居ない。
 兄の伊織の肩を掴む力も弱々しく、ガタガタと手が震えていることは嫌でもわかった。こんなにも情けない姿を初めて見た。……いや、もしかしたら本人が一番驚いているだろう。自分がこんなにも情けない姿を誰かに見せることを。自分がこんなにも何かに怯えて生きていたという事実に、一番驚いているのは彼自身だろう。

 「兄様」
 「伊織、ごめ……俺、だけど、俺…………でも、それで……伊織、おれ、おれ……ごめ」
 「兄様!!」
 「……あ、え……」
 「3分、もう過ぎてます」

 伊織が無理矢理言葉を遮って、平然とまだ2分と少ししか経っていない事実に我ながらお人好しになってしまったものだと思う。夢にまで見ていたのだ。目の前のこの男が泣きじゃくる姿と、自分を畏怖する姿を。それなのに、伊織は何もしていないのにこの男は目の前で泣きじゃくっている。ずっと前から、伊織が東に来た時からずっと、この男が伊織に対して計り知れない畏怖を抱いていたのは、伊織にはきついほど分かっていた。
 自分が兄を恨み、殺してしまいたくなるほど畏怖しているよりもずっと、自分が兄を畏怖しているよりもずっとずっと、大きく長い年月、自分のことを兄は、殺されてしまうと錯覚してしまうほど畏怖していた。敵対した血の繋がった家族に銃を向ける恐怖を、この男は、永瀬頼は、ずっと抱えていた。

 「……兄様の事を許すつもりはありません。しかし、それ以上に私は……今更そうやって泣きじゃくる貴方のことが醜くて仕方がない」
 「…………うん、分かってる」
 「私がもう時期亡くなる事を知っての事だったんですか?知っていたのならタチが悪い。今更家族に戻りたいなんて思わせるようなことを言われるくらいならば、私は貴方を恨み続けて貴方を殺すことが叶わなかったという後悔を残したまま死んでしまった方が、ずっと良かった!!少しでも貴方との時間を取り戻したいと思いたくはなかった!!」
 「……は?ちょ、ちょっと待て、亡くなる……?何言ってるんだ……」
 「橘の刀の呪いです。次の持ち主は識になるでしょう。……詳しい話は彼から聞いてください。私が死んでから、このくだらない争いが終わってから。中立国で彼はその日を待っていますから」

 そうとだけ言うと、伊織は深く頭を下げて立ち去るという意思表示を示す。伊織がふと踵を返そうとした時、頼は伊織の腕を引き、そのまま強く抱き締めると伊織の頭を撫でた。

 「…………すぐに会いに行く。次に会った時は……ちゃんと、家族になろう」

 “すぐに会いに行く”。それが何を意味しているのか、伊織にはすぐに分かった。ここまで来て兄ぶられることがどれだけ腹立たしいことか。ここまで来て、彼と兄と妹の家族だったという事実を突きつけられたことがどれだけ悔しい事だったか。もっと早くに知っていることが出来ていれば、自分を救ってくれた幼なじみを2人残していただろう事実が、どれほど皮肉だっただろうか。

 「それじゃあ、また」
 「……はい」
 「おかえり、伊織」
 「……ただいま、兄様」
 「いってらっしゃい」
 「っ……いってきますっ…………」

 おかえりとただいまが何が解放された事を意味しているのか。それは彼らにしかわからない。そしていってらっしゃいといってきますがどれほど残酷な意味を持つのか、それも彼らにしかわからない。
 次に会った時は、楔の事を紹介しよう。伊織は泣きそうになるのをこらえてそんな事を考える。伊織の頭をぐしゃぐしゃと撫でた後にすれ違うのを表すかのように足を踏み出した頼を見ようと振り向く事はせず、伊織は彼と同じ赤い瞳を慈しむように瞼をそっと撫でた。
 次に会った時は、貴方とのこの繋がりを愛していけるように。そして、次に会った時に貴方を許した一言を言えるように。


 “おかえり”











× 実兄妹組で絶対やりたかったネタ

× 途中で楔が弓引いて兄貴殺すルートも考えたけどたまには頼くんを報わせたい。あとそれだと楔がただただ可哀想になる気がした……。

× 頼くん結構抱えてるの重そう。

× 不仲兄弟も書きたい。鎖と楔でもいいし如一と一樹でもいいし。逆に光と陽でもいいかもなぁ。検討。

× ちなみにこの時頼と伊織の両親は既に亡くなってる。西軍と東軍に分かれた時に何だかんだで伊織が大好きだったけど両親の強要のせいで伊織を妹として扱ってやることが1度も出来なかったのとこうして敵対してる原因を作らせた恨み辛みが募って銃撃隊に入ってさっさと両親殺したサイコ。西軍の中で頼が両親射殺したのはタブー。東軍の妹の話もタブー。東軍では中立国に逃げ遅れた一般市民が西軍の銃撃隊の隊長が居ない状況下での訓練により誤爆っていう風に伝わってるらしい。

3ヶ月前 No.281

@akira0908☆G2g5KGLD3yBo ★Tablet=UIgVrM4Ag0




あらすじ
 冬木家の元総長が早くに亡くなり高校卒業後即後継をする事になった娘、如一とその夫。しかしその数年後、外国への出張での抗争で如一は命を落とし、夫の方はその後に自殺。大きな冬木家に一人息子を残したまま、如一達はこの世を去った。冬木家に残された一人息子が後継のできる年になるまで弟の一樹の後継を考えられていたのだが、他家との交流の為に婿養子になった一樹は今更冬木の名を語ることも出来ず、実従兄弟である橘識にも相続権が回る予定だったのだが識は橘道場の後継、そして六合という提案があったものの、それは本人に「後継をするのならばこの組を抜ける」とまで言われてしまった事もあり、とうとう冬木の交友関係に手を出すしか存続が出来ない状況下になり、まず地雷を頼るものの兄である日向は縁鎖の経営している会社で、その妹は警視総監としての仕事を見事に引き継いでしまっている。幼なじみである天城の家を頼りにしてみたものの、天城の方は双子揃って国連職員という事で下手に手出しもできない、そんな時に残された最後の切り札が地雷の実の従姉妹である元、橘伊織に相続権が渡されてしまう。やむを得ず極道入りになってしまった縁伊織、そしてその夫である縁楔だった。


っていうネタを考えた。気が向いたら書きたい。

3ヶ月前 No.282

@akira0908☆G2g5KGLD3yBo ★Tablet=UIgVrM4Ag0

西軍東軍、中立国、その他世界のつくり。
 東軍は島国。元々が一つの国だったので西軍とは長い橋で繋がってる。唯一の歩いて相手に奇襲をかけられる道なので取り壊そうにも取り壊せない。東軍は取り壊したいと思ってる。というか既に若干壊し始めている。
 中立国は西軍側の内陸国に位置しており、補給なども西軍の方が早く東軍にすぐに補給が出来ないというデメリットがある。故に東軍の鍛冶屋の集まる極東地域のとある村は中立国の者達が住んでいる。
 鍛冶屋が集まっているのは東軍なので武器の性能の良さや武器の補充の速さは東軍の方が有利なのだが、食料や治療といったものが明らかに東軍の方が不利。西軍の火種曰く「俺ら立ち位置逆じゃね?」
 本来は西軍、東軍、中立国で出来ていた一つの国だったので240万km程の面積だったが、東軍は55万km、西軍が150万km、中立国に位置する所が東軍の特定の地域を含めて35万kmの国土。内陸国のせいで圧倒的に西軍が有利。
 余談になるが東軍、西軍、中立国となっていた頃は国名は「祝詞」だったが、東軍は「東国」、西軍は「アルバ」、中立国は「ローデ」という国名に改名された。ちなみに西軍はイタリア語でアルバは暁、夜明けを意味し、ローデはゲルマン民族の名前に繋がる。もう言っちゃうなら東軍は日本みたいなもんで西軍はイタリア、中立国はスイスとかドイツとかのドイツ語圏だと思ってくれてもいい。ただ国の形が全然違うだけ。

 そしてそこから離れた870万km程の巨大な面積を持つ島国(命名ビスターチェ)が存在する(所謂ロシア的な)。870万kmで一つの国なので強さは既に分かる。東軍の島国とは同じ島国同士で友好国であり同盟国で、元々その国の歴史が長年内陸国に相当な仕打ちをされているのでその影響もあって西軍は何れにしてもあまりよく思っていない。アルバの人間差別はビスターチェの中でも噂になっており、ビスターチェの人間は殆どアルバの人間が嫌い。ちなみにこの世界で島国はビスターチェと東国だけ。東軍の人数不足と食料不足を補ってくれてる。

 逆に西軍にもバックが存在し、内陸国の一部である国土22万kmとかなり小さな国だが最も長い歴史を持つ国で、今までの争いでずっと自国を守り続けたとんでもない防衛国(ルグノール)。軍隊と武器と兵器を多く所持しており、その強さは世界最高レベル。ビスターチェといい戦いをする。武器の性能の良さや補充の速さを補っている。ルグノールは防衛戦中心で基本戦いには参戦しないのだが、東国の後ろにビスターチェが居るのでアルバに力を貸している。

 後々植民地開放されたビスターチェは、恨み辛みが募った上で内陸国全土に宣戦布告。当時は祝詞だっただめ、アルバとローデ、そして東国は参戦しなかったが、東国の方が島国のよしみで武器の補充、病人の受け入れ、怪我人の受け入れ、食料の補充、女性や子供の受け入れ、などなどの必要最低限の援助をしていた。その時にルグノールが国土面積の狭さから舐められた挙句ビスターチェにボッコボコにされたのでルグノールとビスターチェは仲が悪い。基本的に参加しないルグノールも東国のバックにビスターチェが居るというのを聞いて参戦。




3ヶ月前 No.283

@akira0908☆G2g5KGLD3yBo ★Tablet=UIgVrM4Ag0


 「君がこんな物に縛られるなら、僕は“それ”を壊す」

 ハールィチ・ヴェルギオは、伊織の腰に携えられた生刀を指さす。伊織はいつになく真剣な瞳でそんな事を言われてしまい、少しだけ赤色の瞳を揺らがせた。
 伊織がそっと鮮血を彷彿とさせる赤色の瞳を逸らすと、ハールィチはアメジストを彷彿とさせる紫色の輝いた瞳を細めながら伊織が嫌な事はやらない、というふうにそっと瞼を閉じた。
 伊織もそっと腰に携えられた生刀に手を伸ばす。袴から鞘ごと取ると、暫しじっと見つめた後に自分の中で渦巻く感情に問い直す。

 ────壊す?でもこれは楔との唯一の繋がり。でも楔は……。まだ間に合う?信じたい。信じられない。裏切られた?裏切られてない。きっと被害妄想。楔がそんな事するはずない。でも何かを隠してる。僕には言えないこと。何をしたの?何か後ろめたい事があるの?僕にも言えないの?今からでも言えない?言えないよね。楔は僕のことまだ好き?僕は楔が今も好き?…………もう、分からない。

 「……て」
 「……?」
 「……壊して、ヴェル」

 泣きながら伊織が生刀を全く押し殺せていないものの、涙を押し殺しながら渡すと、ハールィチはそっと微笑んで生刀を受け取ると、ふぅーっと息を吐いた後に「ッらァ!!」とでかい声を漏らした後に刀は刃が欠けてボロボロになった。
 神秘の力を纏っていた刀も、何かを覆っていたような光も無くなり、完全に無力化してしまっている。また作ってもらって識に渡さないと、今はそんな事をぼんやりと考えていた。

 「ありがとう……」

 伊織が弱々しく笑うと、ハールィチはそっと跪いて伊織の左手を手に取ると、手の甲に軽く口付けをする。

 「君の為なら、なんでもするよ。Her Majesty」
 「ご、ごめんね、怪我とか無い?破片とか……手とか大丈夫?本当にありがとう……」
 「ありがとう、橘の子。大丈夫。……ふふ、今の橘が君みたいな素敵な子で良かった」
 「素敵じゃないよ……。好きだった人のこと信じられないんだもん」
 「僕にとってはとても素敵だよ。それに、信じられない、なんて信じさせない方が悪いんだから」

 伊織の赤色の瞳は、ただただ目の前の紫色のビスターチェの彼を見つめた。赤色の瞳は、じっと紫色の瞳を見つめているうちに、紫を帯びてしまったようだ。

 嗚呼、すれ違いのこの世界に皮肉を。





× ハールィチに刀を折ってもらう簡単なお話。そのうちじっくり書きたい

× まあこれは楔が悪い(ゲス顔)


3ヶ月前 No.284

@akira0908☆G2g5KGLD3yBo ★Tablet=UIgVrM4Ag0


 「私はシューゲント・ジオレスト。ルグノール国の者だ」
 「おう、初めまして。俺はアルバ国代表者の冬木如一だ。あんたが代表者さんか。代表者同士仲良くやろうじゃねえか」
 「私は馴れ合いなどせぬ。汝らとは島国を潰すという名目でただただ協力し合うだけだ。特に、私は東国の背後にビスターチェが居るのが気に食わぬ、故に協力をする訳である。それ以上の関係は私は求めて等いない。その握手を求める手を取る義理もない」
 「おう、そうかい。じゃあ死ね」
 「血気盛んな者が居るな。ならば貴様が死んではどうだ」

 「冬木様!東国からの奇襲です!!」
 「何っ……クソッ、天城の野郎、俺が今日ルグノールと手を組むのを知って……!結局同盟は結べねえしとんだ時間の無駄だったぜ!!てめえはさっさとお国へ帰りやがれ!!」
 「ああ、そうさせてもらうとしよう。……そうだ。先に言っておいてやろう…………ビスターチェは強いぞ」
 「それはテメェが弱いからだ!!」
 「なんだと!?アルバの野蛮人が何を言う!!」
 「俺からすれば自国を守るしか脳がねぇ負け犬が何を言ってんだって話だ!!」

 「あれ?ジオレスト居たの?」
 「お前は……!!」
 「誰だテメェ邪魔だ殺すぞカス」
 「へぇ?そんな事言ってもいいの?」
 「アルバの野蛮人!しゃがめ!!」
 「ああ!?」
 「あーあ。ジオレスト、君のせいで外しちゃったじゃないか。……君が居なければこれで僕が橘の子を救えたのになぁ……」
 「何を言っているヴェルギオ如きが」
 「あは、ジオレスト、ヴェルギオ“様”が抜けてるよ?」
 「その言葉、そっくりそのまま返そう」
 「ごちゃごちゃうっせぇなァ!俺は今気分が悪ぃんだ!!ビスターチェだかなんだか知らねぇけど、ぶっ殺すぞ!!」
 「……加勢しよう、冬木」
 「最初からそうしてくれってんだ」
 「そう?そっちがそのつもりなら……」

 「我が同盟国ビスターチェの者への暴言は聞き逃せませんね。ルグノールだかなんだか知りませんが……背中がガラ空きですよ。アルバの野蛮人と、ルグノールの残酷人」

 「────橘!!」











× こんな感じかな〜?って予想。まだちゃんと決まったわけじゃないからなんともだけど……



3ヶ月前 No.285

@akira0908☆G2g5KGLD3yBo ★Tablet=UIgVrM4Ag0

それぞれの国の人の呼ばれ方

アルバ→野蛮人。アルバの野蛮人。全体的に攻撃的な人が多く集まっているので自由と先進を求める余り行動が過激化してることからアルバの野蛮人という呼ばれ方をしている。アルバという言葉そのものがイタリア語で「暁、夜明け」を意味する事からイタリア語に。祝詞時代はローデや東国との合衆国だった為日本語とドイツ語を話せる人も多い。

ルグノール→残酷人。ルグノールの残酷人。自己防衛一線かと思えば攻撃を仕掛けてきた国にはそれ相応の対応をするし島国に対する野望が他国を郡抜いてる事からルグノールの残酷人と言われている。言語は英語。ちなみにアメリカ英語ではなくアイルランド語の方。つまりイギリス英語。ローデと隣接しているのでドイツ語が話せる人も多い。

ローデ→守銭奴。ローデの守銭奴。中立を誓っている以上どちらにも干渉はしないものの、利益が無いと判断すれば支援をしない国柄から守銭奴という言われ方をしている。ローデの守銭奴。言語はドイツ語。ローデという名前がドイツ語圏ローデリヒという名前から取られているため。祝詞時代を経験した者は日本語とイタリア語も話せる。

ビスターチェ→復讐人。ビスターチェの復讐人。昔の事を引き摺った結果内陸国の殆どを植民地支配から開放された直後に各国を捻り潰している事からビスターチェの復讐人と呼ばれている。言語は植民地支配されていたので多言語だが、ビスターチェ独自の言語はロシア語。授業の必修科目に東国語という事で日本語を学ぶ。

東国→神秘者。東国の神秘者。他国に黒髪が居ない事もあり侮蔑を表して「神秘」という言葉を使われている。また、防衛能力の高さからも東国の神秘者という言われ方をしている。言語は日本語。祝詞時代はアルバやローデと繋がっていたので、最近の子はともかく大人達はドイツ語とイタリア語も話すことが出来る。

3ヶ月前 No.286

削除済み @akira0908 ★Tablet=UIgVrM4Ag0

【記事主より削除】 ( 2017/08/10 19:49 )

3ヶ月前 No.287

@akira0908☆G2g5KGLD3yBo ★Tablet=UIgVrM4Ag0

 「はぁ!?楔が逃げた!?いいのかよ伊織!!」
 「……いいわけ、無いじゃん…………」
 「じゃあ、なんで……!!」
 「僕はっ……!!楔が信じられなかった!!僕が悪いのに!今更帰ってきて、なんて言えないじゃん!!僕が悪いのに、全部、全部、僕が悪いのに…………!!今更、会いたいなんて言えないじゃん!!ごめんねって……今更言っても伝わるわけないじゃん!!」

 東国の末端の病院に、伊織は居た。どうも最近目眩が酷いとかで伊織は戦場に立つことが出来ず、情緒不安定気味にもなってしまっているせいで陽からは戦場に立つなとこっぴどく叱られた。次に立った時は首を切るとまで。確かに、薙刀を持てば前の凛々しく強く気高い橘伊織に戻るのだが、薙刀さえも伊織は持てなくなってしまっている。それほどまでに、弱っている。
 楔が逃げた。攻撃部隊弓矢兵の隊長だった彼は、腕は確かに本物で、彼の放つ矢が狙いを外すことは無いとまで言われていた。ビスターチェはどうやらビスターチェの国そのものについにルグノールが進軍してしまった事によりどうしても東国の後方援助が出来ないとのことだった。出来るとしても、せいぜい食料と武器の補充、そして資金援助しか出来ないと。ハールィチの涙声になりながら「ごめんね」の言葉ほど伊織に突き刺さったものは無かった。

 「僕が、弱いからだ……」
 「何、言ってんだよ……」

 自分の手のひらをマジマジと見ながら伊織の放った言葉に英介は目を見開く。
 ────伊織が弱い?自分で何言ってんだこいつ。お前は弱くない。お前は強い、頑張らなくてもいいくらいお前は頑張ってる、何も悪くない、お前は悪くない、楔が悪い。お前は悪くない、大丈夫、大丈夫だから、だから、お前はそんなに思い詰めるな。お前は、お前は……誰よりも強い。弱いのは俺だ。楔が逃げ出したなんて知らなかった。楔の事を引き止めることすら出来なかった。俺は初恋の相手を傷付けられる事さえ止められなかった。俺が弱い。だから、やめろ。
 色んな考えが英介の中をぐるぐると回る。今の自分じゃ、伊織を励ましてやる言葉の一つもかけてあげられない。楔は、どこに行ったかも分からない。今、アイツを殴り飛ばす事すら俺には許されてない。アイツを、今、こんなにも殺してやりたいあの男を、俺は、見つけ出して殺してやることも許されてない。
 こんなんだったら、最初から殺しておけばよかった。
 不吉な考えが英介の頭の中に過ぎる。最初から。どこから?12歳の頃からだ。あの時楔を殺しておけばよかったと英介は強く思った。こんなことになるなら、もっと早くに殺しておけばよかった。

 「……英介さん!陽さん重症負ってます!!代わりに出撃できますか!?」
 「っち、こんな時に……!!分かった、行く!!伊織、お前は…………俺の前から居なくなるなよ」
 「……僕なんていいよ。早く行きなよ。東国が、壊れちゃう」

 東国が?お前が既に壊れちまってるのに?
 行ってらっしゃいと笑う伊織の顔は、今にも消えてしまいそうで、もう二度と見れなくなってしまいそうで、その場を離れるのは嫌だったが、伊織の「行って」と睨みつける目が、英介をこの場に残すことを許してなどいなかった。
 実際、英介にとって伊織の顔を見るのはそれが最後になる。英介が病室をでた後、伊織は楔が逃げ出した日に見つけた打刀、死刀に己の生気を全部込めて、ゆっくりと力を失い朽ちていった。そして英介も、戦場で命を落とした。
 長い長い、戦いだった。伊織は恐らく、ハールィチが戦場に立てなくなり、そして伊織自身が戦場に立てなくなった時には既に死を選んでいたのだろう。楔を失った後の伊織は殆どヤケで戦っていたという。しかも、死刀で。目眩の原因も恐らくそれだ。死刀に思い切り生命力を削られていた。だから伊織も、限界が早かった。そして伊織も、それをわざと分かっている上で行っていた事だろう。
 ハールィチの自国防衛戦への出撃、陽の重症、伊織の自殺、英介の戦死。東国は、この日負けを認めた。誰が伊織の自殺を予想していただろうか。誰が英介の死を予想していただろうか。誰も予想していない。東国軍はいつか必ず戻ってくると信じていた。国民は今も尚、2人は戻ってくると信じていた。

 「伊織……姉ちゃん、が……」

 伊織の自殺は、ローデに居る弟の元へすぐに伝達された。母がアルバに殺され、挙げ句の果てには姉には自殺された。識だってどうしようもなく死にたくなっていたが、友人を残して死ぬことが嫌だった。友人を、自分と同じような虚無感に合わせたくなかった。だから識は東国に帰り、橘家の後継をし、東国の復興に尽力した。
 ローデにも助けを求めて、不服ではあったが大将の弟の力もあってアルバにも復興の手伝いをしてもらった。ビスターチェも自国防衛戦が終わったあとはすぐに駆けつけて復興支援をしてくれた。東国の復興は早かった。今までの事が昨日の事のように思い出せる程に、復興が早すぎた。
 伊織の自殺と、英介の戦死。
 2人は幼なじみという意味でも村でも有名だった。しかし、本当はもう1人居たのだ。2人の幼なじみが。そして彼もまた、有名だった。秀でた美貌と秀でた弓矢の才。伊織と英介は死後東国に命を懸けた英雄と讃えられ、有名となった。彼もまた、東国の裏切り者として有名になった。伊織の自殺に関しては「あそこまでよく頑張ってくれていた」と讃えられている。重症を患っていた陽は、光と共にビスターチェの方へ引越したらしい。負けたのが悔しいか?それもあるかもしれない。だが、一番責任感に苛まれていたのは全統率官である陽の方だった。
 故に、陽の精神状態を心配に思った光の判断で陽と光はビスターチェの方へ向かったのだそうだ。陽の方も「彼は東国で一番の正義だった」と言われるようになった。
 伊織の居た病室は、死刀と共に未だに残されているらしい。ただ、病室はとても入れる状態じゃないという。入れるのは精神病患者くらい、だろうか。死刀の有り余った吸いすぎた生きる力が生刀が壊れた故に行き場を失い、病室に充満しているという。死んだ者の生きる力がそこに充満している。皮肉な話だ。


 ────風が、吹いている。
 世界のずっと奥、東国の裏切り者と呼ばれた縁楔は、家で待つ妻のための資金稼ぎをしに街に出ていた。アルバと東国の戦争が終わったという話に、やっと終わったのか、とどこか他人事になりながらも街へ稼ぎに出る。ふと同僚から「アルバと東国どっちが勝ったか知ってるか?」なんて話を振られたものだから、楔は暫し考えた後に「東国じゃないかな」なんて言ってみた。
 確かにアルバも強かったが、千里が居なくなったことでのダメージは大きいだろう。それに、東国の統率者は陽だ。伊織だっていたし、英介も強かった。東国の勝利の方が可能性としては有り得る。が、その予想は最悪の形で知る事になる。

 「いや〜それが違うんだよなぁ。……まあ、噂だから分かんねえけど……東国の隊長が重症負った時に騎士隊の前衛軍の奴が戦死したらしくてな。それと、まあこれ本当だとしたらかなりえぐいけど……副隊長の人が精神病になっちゃったみたいでさ、自殺したんだと」
 「……は?」
 「いや、真に受けんなよ?噂だからな、噂。なんかな、東国の中でも3人組の幼なじみが特に軍抜いて強かったらしいんだけど、その内の1人がアルバの奴と駆け落ちしたとかで精神病になっちまったみたいでよ……戦死した奴もそれに当てられちまったんじゃねえのかって言われてる」

 自殺?誰が?副隊長?伊織ちゃんだ。自殺?なんで?なんで……?

 「まあでも、アルバと駆け落ちしたその幼なじみの1人とか言う奴、精神病になった子と婚約してたとかいう噂聞いてよ。……マジで東国可哀想だよなぁ……。流石に同情するわ……。その逃げ出した奴って誰なんだろうな。俺が東国軍だったら絶対殺してるわ」

 ケラケラと笑いながらそんなことを言う同僚の姿に、冷や汗が額に流れる。ハッとして楔は我に返ってビスターチェの事を思い出し、東国にはビスターチェが居たじゃん、なんてさり気なくそこのあたりも探ってみることにした。

 「それがよ、ルグノールに進軍されたみたいで防衛戦に行っちまったらしい。確かにビスターチェはでけぇし、欲しがってる国も多いからな……。あ、しかもよ、ビスターチェで思い出したんだけど隊長だった人も全責任負って精神病になってビスターチェに無理矢理連れていかれたらしいぜ。なんつーか、アルバも卑怯だよな」

 楔は何かが口から吐き出そうになる感覚に急いで口元を抑えた。流石の同僚も、「こんな話吐きたくもなるよな」なんて言いながら楔の腕を引きながら公衆トイレまで楔を案内した。
 楔は一気に吐くと、その反動か、それとも理性的な感情的な何かかよく分からないが、ボロボロと涙が零れた。声を押し殺して泣きながら胃液を吐き出す。東国の負けが悔しかった?違う。ビスターチェが居なくなったのが悔しかった?違う。陽の重症が哀れになった?違う。英介の戦死?それもあるだろう。だが違う。伊織の自殺?……そう、それだ。
 自分が居なくならなければ?もしその場に居たら?助けられたかもしれない。東国が勝てたかもしれない。伊織が救えたかもしれない。英介が救えたかもしれない。英介と伊織が死ぬ必要なかった。本当に死ぬべきなのは誰だった?伊織を死なせたのは誰だ?英介を死なせたのは?あの優しくて気弱な陽をそこまで追い込んだのは?

 紛れもない、自分だ。

 「……すまん、ちょっと気分悪くなっちまったから帰ってもいいか……?」
 「いや、俺もあんな話して悪かったよ……。お前顔悪いし……車だしてやろうか?」
 「……なら、東国に寄らせて貰えるか?アルバが勝利したって事は橋は壊されてないと思うんだ」
 「げぇ!?東国なんて遠いじゃねえかよ!!早くても3日はかかるぞ!?空港まで車出してやるから飛行機で行けよ!」
 「……す、すまん……そうしてもらえる?」
 「ったく……話しちまった俺に責任があるんだし……しょうがねぇ。千里さんには俺から言っとくよ」
 「……いや、大丈夫。俺が連絡しとくから」
 「お前ほんと愛妻家だよなぁ」
 「はは、だろ?」

 今さっきまで、はな。
 噂の真相を確かめに行こう。噂だ、もしかしたら生きてるかもしれない。伊織に親の仇のように睨まれて英介に殺されるかもしれない。……もう、それでもいい。2人が生きていてくれれば、それ以上のことは何も望まない。同僚の車の中でぼんやりと考え、空港まで連れていってもらった時、千里に連絡を入れる。

 「どうした?」
 「いや、あのさ、俺もしかしたらこの仕事長引きそうで……暫く帰れないかも」
 「はぁ!?マジかよ……あ〜……分かった。頑張れよ」
 「うん、ありがとう。ごめんね」
 「…………別に」

 一生帰れない。東国に降り立った時、楔は思った。
 無理もない。目に映ったのは栄えた東国。しかし、人々は皆もぬけの殻のようになってしまっていて、見ているのがどこか虚ろで、植民地支配ももうじきなのは人の動きでわかった。
 一生、帰れない。

 伊織と英介の名前が、戦争で亡くなった者の名前が彫られた石に大きく書かれていた。

 楔の中で、生きるための心の中の刀が、粉々に折れた。











× 東国負けルートも書きたいなと

× 楔は東国に欠かせない存在だったんだよってお話

× 伊織意外と引き摺ってるし楔も結構引き摺ってたルート

3ヶ月前 No.288

@akira0908☆G2g5KGLD3yBo ★Tablet=UIgVrM4Ag0

 「如一、千里ちゃんが……!!」
 「……ああ、知ってらぁ」

 ふぅー、と口から煙を吐き出す。如一はそっと鷲が刻印された義眼となった左目に触れる。その落ち着いた姿に、沖海奏は予想外だったのか目を丸くさせる。
 如一は少しだけ目を伏せたかと思えば、ふと口を開く。

 「いくら優秀な大きく気高い羽があれど、獲物を捉える目と賢い頭があれど、体が無けりゃ鷲は翔べねぇ。駆ける事すら出来ねぇ。……俺らの負けは確定した。だが、俺はそれでも抗う。俺が死ぬ時まで、俺は自由を諦めない。……付き合わせて悪かったな、沖海。追いかけるなりなんなりするといいさ」

 煙草の吸殻が絨毯の上に落ち、焦げた匂いを立てながら穴を作る。
 簡単な事だ。千里はアルバから逃げ出した。ローデでもルグノールでも東国でもビスターチェでもない、ずっと遠くへ千里は東国の楔と逃げ出した。楔を信じる事をやめた伊織にはビスターチェの斧使いのボディーガードが居る。伊織の勢力は落ちることを知らず、天城陽も幾度とも重なる戦の中で確実にレベルを上げてきている。
 特別攻撃部隊の前衛軍騎士隊の隊長を失うという代償は、計り知れないほど大きかった。元々防衛部隊の隊長であった陽と、その副隊長の伊織は攻撃部隊にシフトチェンジしたというし、尚更厄介だ。元々攻撃部隊後衛隊長の英介は防衛の前衛軍指揮官となったらしい。英介はどうやら怒り狂っているようで、この争いをさっさと終わらせて楔を取っ捕まえてぶち殺すと息巻いているらしい。
 まあ、英介からすれば初恋相手を奪われた挙句素直に引いて伊織を親として見守ることを選んだ結果比較的寛容な伊織に捨てさせるようなことをした相手な訳だ。そりゃ怒り狂うだろう。故に、英介も怒りの反動で強さを増している。

 「僕は……」

 奏は困ったように少し言葉を濁す。奏自身もどうするべきか考えているのだ。どうすることが最善かを奏も考えていた。負けが確定した今、ここに残るだけ無駄なのだ。ルグノールも自国で他国からの進軍があったとかで負け戦はしない、帰って防衛戦の準備に取り掛かるとの事だった。つまり、今のアルバは負けが殆ど確定している。
 ローデもアルバの資金不足を援助するほど人が良い訳では無い。その後の見返りがなければ動かない中立国だ。未だに治療の手伝いはしてくれるものの、それ以外は何もしない。ローデもアルバを見捨てている。治療しているという事実が一番の救いだった。

 「僕は、残るよ」
 「……は?何言ってんだお前……」

 如一は信じられないとでも言いたげに短くなったタバコを握り潰しながら目を見開いた。奏だって、我ながらおかしな事を言ったものだと自虐的な笑いが零れた。が、奏は敢えていつものように笑って言葉を如一に渡す。

 「……体が無くても、翔ぶことが出来なくても、如一の獲物を捉えるその目と賢い頭があれば、まだ動けるよ。如一の側で、羽を散らす事なら僕にもできる。……如一には佐原さんが居るから良いと思うけど……けど、僕は如一とアルバについて行く約束をしたから。……千里ちゃんが破った約束を、代わりに僕が守らなくちゃ。……それに、如一は左足を失った僕を見捨てないでくれたじゃない。伊織ちゃんを恋しく思った僕に、「行きたいなら東国に行け」って言ってくれたから。だから僕は、如一について、如一の最期を見届けてから東国へ行く事にしたよ」
 「……悠長な馬鹿も居るもんだな」

 タバコにまた火をつける如一。その姿に強がってるなぁ、なんて事を奏は思う。如一の行動が、千里が居なくなった事による疲労を酷く表していた。元からヘビースモーカーではあったが、如一は疲労するとタバコの消費量がそれよりもずっと早い。1日で20箱は吸うほどに。ヘビースモーカーと言えど1日でも10までに抑えると言っていたくらいだ。それほど、アルバの戦に腹を括っていた。

 「まあ、実のところ僕もちょっと千里ちゃんに怒ってるけどね。せめて何か言ってくれればよかったのに」
 「俺の最期なんか見届けちまったら、橘はビスターチェの復讐人の方に行っちまうんじゃねえの。ボディーガード様に、よ」
 「うーん、まあその時はその時。英介にも協力してもらうよ」

 「そうかい」そうとだけ言って、如一はタバコの煙を吐いた。如一の口角は、なんとなく上がっているような気がする。ついて行く事を約束した。大恩があるからついて行くことにした。
 それが、奏の始まりだった。アルバに付いていくことを選んだ答えだった。だが、今は違う。勿論、幼なじみの破った約束を代わりに果たすというのもあるだろう。ただ、今は。
 目の前の疲労しきった如一を一人にしてはならないと、そう思った。近いうちに終わるであろうこの戦と、命の灯火を消すであろう横暴で傲慢な政策であったが、国民の為に自由を求めた紛れもないアルバの英雄を、“祝詞”の災厄の火種が消える瞬間を見届けてやろうと。そう、思っていたのだった。


 およそ半年後、決着がつく前にアルバの大将が急死したそうだ。心因性の疲労からだとローデの医者は言う。元々タバコの吸いすぎもあって肺がめちゃくちゃになっていたらしいが、騎士隊の隊長がアルバを抜けて殆どすぐに糸が切れたように胃癌を患ったそうだ。が、それを治そうとしていなかったという。結果的に東国の勝利で収まり、アルバは金輪際東国に手を出さないという約束で東国とを繋ぐ橋を壊し、多大な賠償金を東国に払い、東国に借金を作った。
 確かに横暴で傲慢でとんでもない政策を行っていたが、負けが確定しても尚、病を患っても尚、自由を求め自分の体を顧みず無茶をしてまで立ち向かった姿はアルバの英雄として讃えられた。


 時は経ち、アルバは復興を終えたずっと先の未来、アルバの英雄の名を覚えている者は殆ど居なかった。国民も、忘れたい記憶であったのだろう。ただ、たった一人を除いて

 「最期まで見届けたよ。“如一”」

 アマリリスの花が、タバコの匂いと混ざって風に揺れた。










× 千里が逃げ出した後。千里はアルバにとって大きな存在だったんだよってお話。

× ルグノールがアルバに手を貸してるってのは他の内陸国に伝わってそう。ルグノール国土面積小さいけど軍隊がめちゃめちゃ強いから狙われてそう。

× 色々不幸が重なった末のアルバ負けルート。ルグノールが他国に進軍されてなければ或いは……。

× アマリリスの花言葉は西洋で「誇り」「輝き」みたいな意味があったはず。

▲▼ めちゃめちゃ恥ずい誤字あったから修正

3ヶ月前 No.289

@akira0908☆G2g5KGLD3yBo ★Tablet=UIgVrM4Ag0

あってんしょんぷりぃず
 千里が可哀想。楔がエグすぎるうえに病んでる。


 「俺も正直国のやり方にはついていけなくなってきたんだよね、やり方が卑怯で、ネチネチしてて嫌味っぽくて意地汚くて……。正直そろそろ逃げてやろうと思ってたんだよね、あんたもどう?一緒に逃げない?そしたらそのお嫁さんとその人が仲良くしてるのも見なくて済む、その人と付き合ってるところも見なくて済むよ。どう?一緒に逃げない?俺はお前の決心がつくまでこの中立国の此処で待ってるよ。決心がついたならまた来な。俺の名前は地雷千里。元はこれでも中立国の人だったんだよ。とある理由で西に入っただけ。こっちの大将にちょっと恩義があってね。でも、もうそんなの関係ない。もあ恩も義理も何も感じないね。君がこっち……東国に来てくれと言うなら大将の首だろうとなんだろうと手土産に持ってくるよ。あぁ、もちろんその時は俺は君の駒となり足となり手となろう。そのためなら縁楔くん。君と生刀と死刀を分かち会うのだって構わない」

 楔は、疲弊しきっていた。故に、今まで見てきたことを何を考えていたのか全て吐露してしまった。言うべきではなかった、と軽く後悔したものの、目の前の左頬を隠すようにマスクをしている女性、地雷千里の言葉で何かが吹っ切れていたようで、ウォッカを一気にぐい、と飲み干すとにっこりと微笑んだ。

 「何言ってんだお前」

 楔の口角はあがったままで、瞳も三日月を描いている。楽しそうにも見える笑い顔のはずなのに、楔の瞳の奥は笑ってなどいなかった。寧ろ、睨みつけてるようですらあった。千里は、楔の笑顔とは裏腹に出てきた酷い口ぶりに思わず目を数度ぱちくりとさせてしまう。誰かに騙られてる?そんな事さえ思ってしまう。

 「お前みたいな人から貰った恩を返そうとすら思わないようなクズ誰がついていくかよ。それと、お前みたいな人からしてもらったことに感謝の一つすらできないアルバの生き恥が橘家に伝わる生刀と死刀をそんな簡単に口に出すな。……殺すぞ」

 口角はあがったままだが、ただでさえ黒い楔の瞳は、確かに千里を捉え、ギッと睨みつけた。楔は殺すぞ、とまで言った後に「あ」と小さく声を漏らしたかと思えば、何か思いついたかのように頬杖を付いていたのをそっと外し、両手をパチン、と合わせると無垢な笑顔で「あぁ、そっかぁ」なんて声を漏らした。

 「……アルバの大将はいいからさ、ビスターチェの男の首取ってこいよ。一緒に逃げてやってもいいぜ」

 くすくすと笑いながら楔は言う。念のため何故、と聞かれる前に注釈を入れることにした。

 「俺が殺したらさぁ、伊織ちゃん泣いちゃうじゃん。そうだよ、あの男が全部悪いんだよ。俺も伊織ちゃんも悪くないよ、そうだよ、あの男が悪いんだった。きっと伊織ちゃん無理矢理刀取られて折られちゃったんだよね。きっと脅されてたんだよね。俺が助けてあげないとね。だって俺は伊織ちゃんの旦那さんなんだから。伊織ちゃん守るって誓ったんだもん。伊織ちゃんを大切にするって約束したんだもん。そうだよ、こんなのいい訳ないよ。……だからさ、アルバのお前が殺してくれたら俺としても都合がいい訳よ。殺してくれんなら一緒に逃げてあげる。……もし殺さないなら、俺はお前をここで殺して伊織ちゃんにお前の首をあげるよ。伊織ちゃん、きっと喜ぶだろうなぁ、あは、あはは、お前が居なくなったらアルバはきっと大変だもんねぇ。伊織ちゃん優しいから、ちゃんと事情説明すれば許してくれるし、脅されてたってこときっと言ってくれるもん。だって俺が1番伊織ちゃんの事知ってるし、伊織ちゃんも俺のこと1番知ってくれてるんだもん。俺みたいなクズに一目惚れして分かった気になってるような俺以上のクズとは違ってさ!」




× 最後の病んでる楔が書きたかっただけ

× この後千里どうしたんだろうね

× ちなみにハールィチの首取ってきたら一緒に逃げるのは本当だけど相手が気を抜いた瞬間首射抜いて平然とした顔で首持って東国に戻るよ。

3ヶ月前 No.290

@akira0908☆G2g5KGLD3yBo ★Tablet=UIgVrM4Ag0


 「……信じても、いいの……?」
 「うん、ごめんね、ごめんね、伊織ちゃん。……俺を、信じて。二度と裏切らないって誓うから」

 先日、ローデの酒場に行った時楔は敵国の地雷千里と顔を初めて合わせた。その時に一緒に逃げないか、という提案をされたものの、やはり吹っ切れない気持ちもあった。……故に、楔は一度、何も言わずに逃げてしまう前に、伊織と話しておこうと思った。いくら千里の方に揺らいで居たとしても、それでも、恋人でなくとも幼なじみを裏切ってはいけないと、本能的に思った。
 結果、誤解はちゃんと解けた。解けてしまった。
 なんだ、1人でうじうじしてたから伊織ちゃんに余計な心配抱かせちゃったんだ。最初から伊織ちゃんに全部話しておけば、あの女の戯言に心が動かされるのともなかったんだろうから。なんだ、伊織ちゃんは俺が好きだったから心配になってたんだ。なんだ、俺は……幸せ者じゃないか。

 「あの、でも、その……生刀、その……」
 「大丈夫。俺達の繋がりは刀だけじゃないでしょ?」

 申し訳なさそうに眉を寄せる伊織の姿に、楔はいつにもなく優しい笑みを浮かべて伊織の頭を撫でると、伊織も少しは落ち着いたかのように小さく微笑を零した。
 ああ、やっぱり俺、

 他の誰でもない、伊織ちゃんが好きだ。

 東国では見かけない赤色の瞳を揺らがせた後に、ぼろぼろと泣き出した伊織の姿に思わず楔は驚いて伊織の涙をすくいながら「え、な、え?」と露骨に慌てたように伊織に尋ねると、伊織は涙混じりの震えた声で「ごめんね」と謝った。
 何を謝るの?大丈夫、ちゃんと話して。俺は伊織ちゃんを信じるから。

 「楔の事信じてあげられなくて、ごめんね…………」

 涙を零しながらそんな事をいう伊織の姿に、楔は心の底から言ってよかったと思った。こんなにも優しい幼なじみが居るのに、逃げるなんて卑劣なことをしようとしていた自分が許せなくなってきていた。ちゃんと話さないと分からないこともある。楔は、しみじみとそう確信した。
 ふと伊織の左手を取り、薬指を楔が触れると、意味が分からなさそうに伊織は首を傾げた。

 「7号か……」
 「へっ!?」
 「ん〜、いや、指輪欲しいなって思って。刀以外にも繋がり方はあるんだもん。……それに、さ……この戦が終わるまで我慢、なんて、俺には出来ない、かな……って、今確信した」
 「……!」

 7号かぁ、細いなぁ、なんて思いながら頭の中に叩き込んで伊織から手を離して戻そうとした時にふと左手を掴まれて楔は目を見開く。伊織もむにむにと楔の左指を触ったかと思えば、ふと薬指に触れる。

 「だ、だめだ……分からん……」

 唸りがちにそんな事をぽつりと呟いた伊織の姿に思わず微笑が零れた。楔がそっと伊織の左手に触れ、薬指にそっと口付けをすると、柔らかく微笑む。

 「今度一緒に作りに行こうか」
 「……!うん……!」

 月明かりに照らされた伊織の嬉しそうな笑みは、より一層楔の想いを強くした。









× 和解ルートが無いって誰が言った?ダメウーマン!花は、自分からミツバチを探しますか?……探さない、作るの。ダディッワークッ

× 今まで誰か死んでたから和解ルートを書かないと精神的におかしくなる気がした



3ヶ月前 No.291

@akira0908☆G2g5KGLD3yBo ★Tablet=UIgVrM4Ag0

 「よぉ、橘」
 「……なっ、んで……」
 「まあまあ、ここはローデだ。戦の話はやめにしようぜ。大先輩の俺様が奢ってやる。何がいい?つーかお前未成年だったっけ。オレンジジュースでも頼んどくか」
 「もう未成年ではないですがオレンジジュースが良いです」

 ローデの酒場。急に伝達が入ってきたかと思えば、識からの久々に顔を見たいという事でローデ以外にもアルバや東国の者が集まる酒場に来ていた。どうやら識は今ここで住み込みでバイトとやらをさせて貰っているようで、ギリギリ未成年卒業者の伊織にとってはなかなか敷居の高い場所ではあった。とはいえ、識も未成年で酒場で働かせてもらっているのだから、この気持ちは同じなのだろう。
 そんな時、声を掛けられたかと思えば敵国の大将、如一がタバコを口にくわえながら話しかけてくる。お酒の匂いもタバコの匂いも苦手な伊織は怪訝そうな顔をしながらも、やたらと気前の良い目の前の敵国の大将をまじまじと見つめた。
 深く被られた帽子は左目を覆うようになっていて、影で見えづらいものの、その中でも確かな輝きを持つ右目のエメラルドグリーンの瞳はなかなか引き込まれてしまうものもあった。
 渋めの店主がオシャレなグラスにオレンジジュースを伊織の前に出してくれたかと思えば、如一の前にはカクテルグラスに入った真っ青な飲み物を出す。

 「っげぇっ!!なんですかそれ!」
 「カクテルだよ!ブルーハワイってやつ。甘ったるくて飲む気分にはなれねぇが……まあ、そういう気分だ、今日は。……ノンアルで何か飲むか?」
 「僕お酒の匂い嫌いなんで大丈夫です」

 短くなったタバコを揉み消したかと思えば、如一はカクテルグラスのブルーハワイとやらを一気に飲み干した。伊織が「うげぇ」なんて言いながら明らかにドン引きした様子で如一を見ると、如一はケラ、と笑いながら「ンだよ」だのと言った。
 この人も普通に笑えるのか、と半ば失礼なことを思いながらも、笑った時に見えた八重歯と、薄く細められた右目の消えない輝きと、左目に微かに見えた鷲の頭に目をぱちくりとさせてしまう。あの鷲、どこかで見た事あるんだよなぁ。

 「お前、旦那に逃げられたんだって?」
 「貴方直球で嫌なこと聞きますよね……。……そちらこそ、大事なお仲間が逃げられたそうではないですか」
 「……幼馴染み、って思ってたんだけどなぁ、俺は」

 アルバに生まれた女は世間的に知られているのは3人だ。伊織と、如一と、そして千里。如一と千里の家は所謂一般人如きがそうそう近付いてはいけない娘だった事もあり誰も何もしなかったが、その二つに劣る貴族は残念なことに酷い扱いをされる。それが伊織だった、それだけだ。
 伊織は楔に逃げられた。如一は千里に逃げられた。楔と千里、2人は恋に落ち、駆け落ちしました。めでたしめでたし。
 という訳にも行かず、あの2人は何も言わずにお互いの前から去った。勿論伊織だって今更ながらに話を聞けばよかったと後悔しなくもなかったが、それよりも“幼なじみとして”どうして何も言ってくれなかったんだという怒りの気持ちは強い。
 ハールィチの事は確かに信頼しているが、恋慕なんてものは一切抱いていない。生刀を折るようには確かに頼んだが、正直の話をすると、楔が多くの人を斬りすぎている影響で伊織の体に支障が出てくるようになっていたのも紛れもない事実だった。勿論一時の迷いでもあったが、体の負担が大きかったのも事実、ハールィチもそれを見越した上で折ろうか、と提案してくれていたのも伊織には分かっている。
 死刀は生気を奪い取る。そしてその生気は生刀に伝わるのだが、それのバランスが取れないと生刀は生気を保つ事が出来ず外に蔓延する。すると、健康状態の人間は大体体調を崩す。術師の打った刀とは、どれもそのようなものだ。

 「もう正直、戦とかどーでもよくなっちまってよ。アイツ居ねぇなら勝てねぇし」
 「はは、奇遇ですね。僕もです。……自ら手放しておいて言えることではないのですが、楔が居ない以上生きる理由も殆どありませんから。あるとしても英介くらいですかねぇ」
 「お前らで結婚しちゃえば?」
 「英介は僕みたいな人よりもっといい人が居ますから。……それに、疑ったのは僕の方ですけど、虫が良いのも分かってますけど、…………まだ、楔が好きなんです」
 「あ〜、俺そういうの無理。やめて」
 「ぶっ殺しますよ」

 お互いにケラケラと笑いながら如一はタバコに火をつけ、伊織は目の前のグラスに口をつける。口の中に広がるオレンジジュースの味に少しだけ頬を緩めると、如一もタバコの煙を吐いた。

 「あいつ……俺の約束破りやがって」
 「あはは、貴方もですか。僕も破られまして」

 『伊織ちゃんの事、何があっても幸せにするって約束する』
 真剣な瞳で言っていた彼は、一体何だったのだろう。何があっても幸せにする?貴方は居なくなってしまったじゃないか。約束する?約束って、貴方にとってはそんなものなの?貴方の言う僕に対する幸せは、僕の前から勝手に居なくなるような卑怯な事なの?だとしたら、僕は貴方に失望する。

 「……戦、どうする?」
 「降伏しても良いですよ。ひーくんも明らかに弱ってる相手に漬け込むような攻撃はしたくないと言っておりましたし。ひーくん、元々根が優しい方なので」
 「条約でも結んでお互い様っつーことで終わるか?俺は……アイツらをボコさねぇと気が済まねぇ」
 「おやおや、先程からよく意見が合いますね。……僕も丁度、二人共とっ捕まえてぶっ殺してやりたいって思ってたところです。そんなに2人が良いなら、あの世でもいいですから。この世のどこかで生きてると思うと、イライラしてたまりません」
 「おまっ……」
 「だって、この世界の果てで彼が誰かと共に何かをしていると考えるだけで嫉妬をしてしまうほど醜い。そしてその自覚は僕の中にもあって、嫉妬してしまうくらいなら死んでしまえばそれで終わりですから。この世界のどこかで彼らの幸せそうな姿を想像しなくて済みますから。僕は、彼に当てられて歪んでしまったみたいですが……彼は寧ろ綺麗になってしまいましたね。人を歪めといてそんなのは酷いです。殺したくてたまりません。僕を幸せにすると言ったのに、その結果がこれですから。殺しても許されるに決まってます。……東国では、いずれにせよ彼は裏切り者だと有名になってしまっていますし、のこのこと戻ってくる前に始末してしまった方がずっと良い。彼が死んでくれれば、僕の中で彼への気持ちは消えますから」

 へらり、と伊織は笑いながら言う。真っ赤な血を彷彿とさせる瞳は、怒りで充血していた。それなのに、こんな末恐ろしい事を笑いながら言う伊織の姿に、如一は一瞬動けなくなるほどの悪寒を背筋に感じたものの、今までにない程の威圧感に思わず口角があがる。

 「じゃあ、俺がその男を殺してやるから、お前が千里を殺してくれねぇ?俺多分、千里は流石に殺せねぇ」
 「もちろん、寧ろ、あの女の方が僕は自らの手でこの世から抹消したいです」
 「ひっでェ……ここに仮にも千里贔屓してる奴居るって忘れんなよな……」
 「楔の事、好きにして良いですから」
 「よっしゃ分かった許す」
 「トドメは貴方がしてあげてください」
 「じゃ、男のトドメは橘が」

 お互いに口角をあげながら頷くと、静かに握手を交わした。その瞬間、握手をしているのを見たローデの人間がひそひそと話し始めたかと思えば、伝言ゲームが始まり、最終的にはアルバの酒に酔った鷲の紋が入った鎧の男が歓喜の声をあげた。

 「もう、戦争は終わりだァ!!」

 如一も伊織も思わず顔をお互いに見合ったが、すぐに二人してくすくすと笑ってしまった。昨日の敵は今日の友とはよく言うが、同じ目的があれば敵味方は関係ない。とはいえ、お互いこの行く先の無くなった戦をどうするかと思っていた事だし、いっそこれでいいとすら思った。
 騒ぎ始めた頃に丁度識が戻ってきたかと思えば「どしたの?」なんて伊織にこそこそと聞きながら如一を見て一瞬怯んだものの、すぐに会釈をした。

 「もう戦争は終わりって話」
 「…………ほ、ほんと?」
 「ほんと」
 「俺、また、伊織姉ちゃんと過ごせる……!?一樹と外で会える!?」
 「そうだよ〜」
 「ん?一樹の友達ってお前かよ。なんだ、橘の弟だったのか」

 嬉しそうな声を上げる識に、呆れたような笑みを零す如一と伊織。誰もが予想していない形で、戦争は終わった。


 アルバと東国の身分差別はそれ以降無くなり、互いが互いの街を復興支援をし、祝詞に戻すかどうかの話もあったのだが、アルバは自由を求めている、東国は平和を求めている。それに変わりはなかったゆえに、国内で対立するくらいならいっそ分けてしまえ、ということでアルバと東国は別の国となった。
 アルバと東国を繋ぐ橋をどうするかとの話もあったが、アルバの大将だった如一からの「俺らは今後も他の内陸国と戦うことがあるかもしれねぇ。その時に東国に支援を頼むなんつー迷惑をかける訳には行かねぇ、故に、橋はぶっ壊す」との事で繋ぐ橋は壊された。アルバは恐らくこれからも勢力を伸ばしていくだろう。それが最善の選択でもあった。大将の思いがけない判断と後述される同盟の話もあり、アルバと東国はすぐに親友国となった。
 ついでに、アルバと東国は同盟を結び、お互いの領土を求めないというのを前提として、東国は島国故にビスターチェ以外の国との連携が取れないということを踏まえ、アルバは東国との連携、東国での災害の支援、そして東国はアルバでの病人や怪我人の受け入れと食料や武器の補充のみ支援する、という条件で同盟を結んだ。アルバはビスターチェとも同盟を結んだようで、アルバの今の敵はルグノールだそうだ。ルグノールは兵器を多く使っていた事もあり、アルバの被害が東国同等になっていた事に如一はご立腹だったらしい。あとは、自国防衛第一と言いつつビスターチェに手を出すやり方が気に食わないということもあるらしい。ビスターチェはアルバの(渋々)支援をするという約束もしたようだ。
 東国は今後は戦争には参加しない。ただし、己の国は己で守るというスタイルに収まったらしい。確かにアルバの支援もあるが、アルバの兵が来ての支援は自然災害の時のみだ。東国は広い海里を持っていたおかげで海軍がとてつもないスピードでめきめきと力を伸ばしているようで、遠く離れた国では現代の海賊と呼ばれているようだ。……海賊、ではないが。
 余談だが、アルバの統治者は冬木の家で一応纏まったそうだ。ただ、国民の意見を多く取り入れるという意味では、国民全員が統治者でもある。東国は天城か橘かという話になったが、天城は東国だけに留まっている訳にもいかないような仕事をしている故に、橘の家が東国をまとめる事になったそうだ。ローデは年齢不詳の化学系術師が今後も統治するらしい。如一と伊織も復興の際何度か顔を合わせたが、やはり変人以外の感想は持たなかった。


 「……大丈夫なんですか?アルバ、これから大きな戦いをするそうではないですか」
 「ああ、俺の部下は優秀だ。……それに、戦いの才は一樹の方がある。アイツに任せてるうちは被害はでかいかもしれないが負けはしないだろうな。ありがたい事にビスターチェもいくらか手伝ってくれるとの事だ。東国に迷惑はかけねぇさ。……それに、“約束”しただろうが。あの2人をぶっ殺すって」
 「ええ、“約束”しましたもんね。あの2人をぶち殺すって。……さて、と、冬木さんならどこに逃げます?」
 「宇宙」
 「貴方しか出来ないようなこと言わないで頂きたい」
 「冗談。……けど、幼なじみの行きそうなところくらいは大体わかるわ。隠し事が多いやつだったが、付き合いは長い」
 「おやおや、偶然。僕もどこにいるかくらいの検討は付きます。……世界の端っこ。東国から離れた、ずっと北西の方でしょう」
 「おう、奇遇だな。俺もそう思ってたさ。船と飛行機どっちがいい?アルバので良かったら貸してやる」
 「東国の海軍舐めないでください東国の船の方が早いです」
 「はいはい。じゃあ、それで行くかぁ。……長旅になるかね」
 「長旅にはさせません。僕らが彼らに殺意を抱いているうちに見つけますよ、必ず。……逃がすつもりもありませんし」
 「その言い方……なんか作戦でもあんのか?」
 「……ええ、勿論。この作戦、沖海さんが提案してくださったんです。沖海さんすっごく頭良いですよね。わざわざ東国にまで来てくださいましたし……お優しい方でした」
 「あ〜、あいつの考えた作戦なら絶対行けるな。……つーかお前奏と結婚すれば?」
 「貴方はいつもそうですよねぇ……。結婚してるからって偉そうに。まあでも、楔が死ねば考えるかもしれません。死人に恋はしませんから」
 「おう、奏は良い男だぞ。お前の帰りをアルバで多分まってるだろうから、帰ってきた時は奏を東国に連れ出してくれ」
 「……もし、死人に恋をしなければ検討します」
 「おうよ」
 「ていうか一応結婚してましたしバツイチの女ってきつくないです?」
 「あいつは多分むしろ滾るから気にするだけ無駄だと思うぜ」
 「滾るなよ……」
 「橘さん、船出しますよ!」
 「あ、はい、お願いします!ここからずっと北西の国……名前は、ええと……」
 「シュネルマーヴィス・リバルロディアまで頼む」
 「分かりました!」
 「よく覚えてますね……」

 薙刀を背中に背負った羽織られた鷲の紋の入ったコートは風に揺れた。それと同時に、銃を背中に担いでいた鷹の紋の入ったコートも、同じように風に揺れる。
 大地を彷彿とさせる輝かしい緑の瞳は海を見つめ、鮮血を彷彿とさせる真っ赤な瞳は────









× 伊織病んでもいいじゃない

× 冷静に考えて二人共殺意湧いててもおかしくないと思うの

× この2人だと本当に殺してそう

3ヶ月前 No.292

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 「僕イタリア語苦手です」
 「俺も日本語苦手だ」
 「ペラペラの癖に何言ってんですか」
 「お前もな」
 「ていうか東国からシュネルなんちゃらかんちゃらってどれくらい時間かかるんですか?」
 「シュネルマーヴィス・リバルロディア、な。そうだなぁ。こんだけ早けりゃ2日と半日くらいだな」
 「ほぼ3日!!」
 「飛行機でも3日かかるんだ、早いもんだぜ」
 「まあ東国からあんまり人出ていきませんし……来る人もそんなに居ませんし……そのシュネルなんちゃらかんちゃらの人も東国なんて有名ではないかと……。ビスターチェと東国以外は内陸国ですから飛行機がまず流通してませんからね……」
 「いや、東国は唯一の島国って意味では有名だぜ。あっちの方だと学校の授業でやるらしい」
 「唯一?ビスターチェは?」
 「ビスターチェは植民地支配されてた時期が長かったからな。植民地支配を受けてないって意味では唯一の島国って言われてたらしいぜ。アルバとローデに関しては統合って言われ方をしてるんだってよ。親父の書斎の本に置いてあった」
 「へぇ。なんか誇りですね。でも東国に正式になったのは7年くらい前じゃないですか?冬木さんが喧嘩ふっかけて来た時なんで」
 「お前は……あー……まだ26か。若いってズリぃ……」
 「そんな事ないですよ。復興に3年もかかるのは予想外でした。ルグノールの恐ろしさを痛感しましたね。ローデとアルバの協力もあって3年だと考えると……負けていた時の場合を考えたくないですね……」
 「そっちは3年で済んで良かったじゃねえか。俺のところまだ終わってねぇぞ。ビスターチェの奴……ボッコボコにしてきやがって……」
 「陣地に直接入ったのは殆どビスターチェですしね……。帰った時までに復興が終わっていなかったらお手伝いしますよ。……ていうかアルバは復興するしないの前に殆ど常に戦場に立っているからでは?」
 「その可能性を考えてなかったな……。帰ったら暫く休むように言ってやるか……あいつらも疲れてるだろ」
 「なんというか……気が利く方なのは分かるんですが……なんか違うんですよねぇ……」
 「は?」
 「いいえ、なんでも。……ところで、なんちゃらかんちゃらって結構国土面積広かったですよね?どの辺に居るか分かるんですか?」
 「シュネルマーヴィス・リバルロディア、な。まあ海岸沿いだろ。アイツ賢いように見えてどっか抜けてるから本当の意味で世界の端っこに逃げたんだろうよ」
 「うわぁ、楔みたい……」
 「はは、それなら確信は持てたな。……つっても、2日かぁ。思ってたより設備が整ってる船だっつっても……暇にならねぇとは言ってねえよ」
 「じゃあ殺し方でも考えます?一応僕繚乱持ってきましたけど」
 「リョウラン?」
 「ああ、薙刀の名前です。東国は多くの職人が命を込めて作ってるので武器には大体名前が付きますよ」
 「……お前職人の命折ったじゃねえか……」
 「…………術師は死にませんし大丈夫です」
 「お、おう……。でも名前あるのってかっけぇなぁ。俺も東国で俺の武器作ってもらおうかなぁ」
 「東国は基本和武器ですから銃なら銃剣か種子島銃になると思います。銃剣専門の鍛治師も居ますし、アルバが落ち着いている時に一緒に見に行きましょうか。呪われてるの呪われてないのどっちがいいです?」
 「呪われてねぇほうがいいに決まってんだろ!!」
 「ですよね。でも僕の繚乱は東国よりも優れた鍛治師の方に作っていただいたものでして。とはいえ、その方はもう亡くなってしまったようで。僕の薙刀が最後だと父から聞きました。伝説なので本当かどうかは分かりませんが、弁慶の薙刀を極限まで再現して頂きました。本物が手元に無いので流石に岩融の名は付けなかったようです」
 「和武器とか全然わかんねぇ……」
 「東国の者でも知っている方は僅かだと思いますよ。橘は武器が多く置いてあるので。……まあ、父が一番得意なのは柔道ですが」
 「ああ……この前橘にかけられたやつ……」
 「腰の骨折れました?」
 「折れてたら死んでるっつーの!!そんな嬉しそうな顔して聞くな!!」
 「失敬、顔に出てしまったみたいで」
 「……ったく……。んで、殺し方だろ。どうするかっつー話」
 「冬木さんスナイパー銃ですし遠くからでいいと思いますよ。まあ最悪トドメやっちゃっても良いです。僕は女の方をギリギリまで自分で殺せたらそれで良いので。……あ、ていうか、死んでくれたらもうなんでもいいですかね」
 「お前サイコパスって言われねぇ?」
 「ははは、僕横文字弱いんです」
 「…………」
 「いやでも、横文字弱いのは本当です。まともに言語教育を受けていなくて……日本語覚えるのが精一杯でしたから」
 「イタリア語ペラペラなのに?」
 「イタリア語は小さい頃嫌という程聞いてましたからね。当時は言われている意味がよく分かりませんでしたが、大人になってからは分かりましたよ。アイツら多分東国軍に殺されてるので!」
 「やっぱお前怖いわ……」
 「……あ、で、2日も何する?って話でしたっけ」
 「しりとりでもするか?」
 「りですね、り……り……繚乱……」
 「いや終わらせんなよカス」
 「おっと失礼」
 「りからな、り、あー、りんご」
 「ごましお」
 「お前塩好きだよなぁ……。あー…………。俺」
 「先にあなたを殺しますよ」
 「すまん」


3ヶ月前 No.293

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 「おお、緑だらけだなぁ……」
 「いやはや、田舎とは聞いていましたがこれ程とは……」

 2日と10時間後、伊織と如一は二人して双眼鏡をのぞき込みながらポケーっとした様子で思っていたよりも田舎な国に思わず謎の失望をしてしまう。流石にもう少し栄えていてもよかっただろ、という気持ちもあった。
 ここまでの船旅、しりとりをやってる途中で飽きた如一がいきなり「ちょっと喧嘩しようぜ」と言い出しては銃を向けてきたりそれにキレた伊織が船から如一を投げ飛ばそうとしたり如一は「喧嘩しようぜ」と言い出した結果船酔いしてはリバースしそうになったりその度に伊織に吐くなとみぞおちを殴られたりでなんとかバイオレンスな方法で二日はしのげた。最初こそは険悪(?)だったものの、二人の仲は縮まったと言ってもいいだろう。

 「つーかこれ二時間後ってこっちの時間だと男は殆ど隣国に働き出てるぞ?クッソ、時差考えるの忘れてたわ……。……どうする?夜まで船で時間潰すか?それともここ観光する?」
 「そうですねぇ。……まあ僕は彼女が殺せたら正直どうでも良いので、トドメは諦めてここで別れて街の人に色々話を聞いてみるのはどうでしょう?見つけ次第ぶっ殺して、時間決めて戻ってきません?ここの共通言語フランス語でしたっけ?話せませんけど」
 「あ〜、まあ俺もこんな辺鄙な土地長居してぇとは思わねぇ、それでさっさと片付けるか。……あ、あとよ、ここ戻ってくると多分バレるから俺車運転してやるよ。隣国は車工場多かったはずだ。あと言語については心配いらねぇと思う。見ての通りこんだけ辺鄙な土地だと色々外国行く奴多いから全員少なくとも4ヶ国語は話せるはずだぜ。……つっても、日本語はどうか分かんねぇからイタリア語かドイツ語で声掛けた方が良いな」
 「え、車運転できるんです?出来るならそちらの方が効率も良いですしお言葉に甘えたいところです。あと僕ドイツ語苦手なのでイタリア語にしようと思います。……どこに落ち合いますか?」
 「迎えにいく。あの辺うまくうろうろしてろ」
 「了解です」

 この時、2人は考えるべき可能性を素で考え忘れていたのだが、この2人はやはり運は持っているらしい。この考えで実はなんとかなってしまうのだ。皮肉なことに。2人がやたら幸運なのか、逃げた2人が不運なのか、それともそのどちらもか。それこそ分からないが、確実に言えることは、この2人は揃うだけならまだしも、結託するとまずい、という事だ。
 ふと如一は目を凝らすと、更地の中に大きな学校が建っているのが目に見える。そこに至るまで多くの国を横切った中でも、シュネルマーヴィス・リバルロディアに隣国する工場や会社の立ち並ぶところに一つづつ目をつけ、胸元に入れてあるメモ帳に万年筆でサラサラと当たりを付け始めた。

 「……え、分かるんすか?」
 「実質、今の俺は3つ目があるわけだ。視野は広いんだよな」
 「3つ?数え間違えてますよ?誰がどう見ても1つですよ?酔ってます?」
 「お前……ほんと…………。鷲の目はいくつ?」
 「2つですねぇ」
 「その分も見れんだよ。見えすぎてキモイから隠してるだけで。まあ、一つだけを捉えて見るのは苦手だな」
 「六合さんが凄いですね」
 「使いこなす俺もすごいわ!」

 メモ帳にサラサラと随分と綺麗な筆記体で横文字を書いたかと思えば「あ、伊織イタリア語読めねぇや」などと言い出したかと思えば次は縦にこれもムカつくほど達筆な日本語で文字を書き始める。如一は武力こそは伊織に劣っているが、全体的な総合としては確実に伊織を超越している。家柄の問題もあるだろうが、それにしても、というのは伊織の中ではあった。

 「千里は俺の予想があってればあの学校で教師やってる。もしくはちと離れるがあのでっけぇ建物の中。確かお前の国でいう国会議事堂みてぇなもんだな。まあでもまだ数年しか経ってねぇし教師の方が可能性は高い。男の方はあんまり分かんねぇけど、どっちにしても片方はこっちに残ってるだろ。俺は既に話から聞いてる感じでいくつか目星は付けてるから、取り敢えずその2つ行っとけ。それでも居なかったらめんどいだろうけどまた1から聞き直しだな。まずは学校への行き方を聞いとけ」
 「うわぁ、なんだろう、こういうの聞くと貴方が大将だった理由がわかります……」
 「お前……」

 こめかみをピクピクと動かす如一を見て、伊織はくすくすと微笑を零した。終わったら締めてやろう、そう思いつつ如一は頭をガリガリとかいた。いつもは深々と被った帽子も、もうだいぶ気が抜けたのかもはや被っていないと言っていいほどに浅く被っていた。
 伊織の方も当初とは全く違うただただ普通に友人と関わるような瞳をしていて、その目の変化は如一としてもなかなか悪い気はしなかった。

 2時間が経ち、船から降り立つと、船はすぐに沖から出ていった。いくら平日とはいえここにずっといたらこんなでかい船すぐバレてしまう。帰りは如一の車とやらがあるらしいということもあって、申し訳なくなりながらも感謝を伝えて帰らせることにした。

 「んじゃ、俺はこっちなんで」
 「僕はあの辺ですよね。……それでは、この辺で」
 「おう、この辺で」
 「……夜明けを、待っています」
 「…………俺も、東のお前を待ってるぜ」

 お互い、拳を作ったかと思えば、軽くコツン、と拳を合わせて別々の向きに踵を返した。








× ここから如一と伊織別々で書いてくよ

× 如一と伊織の相棒感半端ない。さすがうちの子


3ヶ月前 No.294

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3ヶ月前 No.295

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3ヶ月前 No.296

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3ヶ月前 No.297

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 「俺も正直国のやり方にはついていけなくなってきたんだよね、やり方が卑怯で、ネチネチしてて嫌味っぽくて意地汚くて……。正直そろそろ逃げてやろうと思ってたんだよね、あんたもどう?一緒に逃げない?そしたらそのお嫁さんとその人が仲良くしてるのも見なくて済む、その人と付き合ってるところも見なくて済むよ。どう?一緒に逃げない?俺はお前の決心がつくまでこの中立国の此処で待ってるよ。決心がついたならまた来な。俺の名前は地雷千里。元はこれでも中立国の人だったんだよ。とある理由で西に入っただけ。こっちの大将にちょっと恩義があってね。でも、もうそんなの関係ない。もあ恩も義理も何も感じないね。君がこっち……東国に来てくれと言うなら大将の首だろうとなんだろうと手土産に持ってくるよ。あぁ、もちろんその時は俺は君の駒となり足となり手となろう。そのためなら縁楔くん。君と生刀と死刀を分かち会うのだって構わない」
 「……じらい……さん」

 そう語る少女の姿に楔は目を奪われた。そしてそんな楔の姿を、伊織は、偶然、本当に偶然、見て、聞いてしまった。中立国の酒場は、よく賑わっている。識と伊織は何度かここで会う約束をしていて、今日がその日だった。だが、それが、知りたくもないことを知る結果になってしまった。識とはもう既に話したが、もうちょっとここでのんびりしたら帰る、なんて言った結果がこれだった。
 この世界の皮肉に、伊織は唇を噛んだ。


 「ただいま」
 「お、かえり」

 いつもと変わらない様子で帰ってきた楔の姿に、少しだけ伊織の表情が翳る。いつものようにおかえりなさい、と言えない自分がもどかしい。どうしても言えない。だって刀を折ってしまったのは自分だから。刀をあげてしまったのは自分だから。何も言えない。どうして?なんて聞けない。一人で突っ走ってしまった自分の事なのに、それなのに、何も、言えない。それを、聞くことが出来ない。
 伊織の明らかにいつもと違う姿に、楔は眉を寄せて「どうしたの?何かあった?」なんて伊織の頭を撫でながら尋ねてくる。伊織は言えない気持ちや聞けない気持ちが渦巻いているうちに、両の目からボロボロと涙が零れるのがわかる。泣くつもりなんてなかった、それなのに、何故。
 楔は慌てながらも指で伊織の目から零れる涙を拭う。

 「嫌だ……」
 「え?」
 「楔、離れちゃ嫌だ……」

 伊織の言葉に楔は目を見開く。揺らぎかけていた楔の気持ちが、一気に引き戻された瞬間だった。それもあったが、何故それを知っているのかという疑問が頭に浮かぶ。なんとなく酔ったまま帰ってきていたものの、その酔いも一瞬にして醒めてしまった。

 「僕、本当は……ずっと、隠し事してた……」

 その言葉に、楔は唖然とした様子になる。何を隠されてた?もしかして知られてる?そんな気持ちが渦巻いていた。だって、そうでもしないとこの話が外に漏れてるわけ……

 「生刀は……死刀の持ち主の感情を読み取る力があって…………楔だから言わなくても大丈夫って思ってたんだけど…………楔、僕、に……隠し事、してて……でも、言ってない僕が悪いのに、僕、一人で躍起になっちゃって…………刀、折っちゃってっ…………忍刀も……もう、楔がいないならって……思っちゃって…………でも、僕、ぼくっ……」

 伊織の言葉に、そうだったのか、と合点がついた。隠していたつもりでも、バレていたこと。そして信じてくれていたからそれを言わなかったこと。隠し事された事が悲しくて、刀を折ってしまったこと。守る物が無くなったと独りよがりになってしまって、刀をビスターチェのハールィチに渡してしまったこと。
 楔は何も言えなくなってしまい、ぎゅうっと力強く伊織を抱きしめた。伊織は一瞬驚いていたようにしていたが、すぐにまた泣き出して「ごめんなさい」と何度も謝ってきた。ごめんねなんて言わないで。俺が安心させてあげられなかったのが悪いんだから。伊織ちゃんを裏切ろうとした俺が悪いんだから。そんな気持ちを抱きつつも、ただただごめんねと泣く伊織が泣き止むまで抱きしめ続けた。


 「そ、その……あの……アルバの人と逃げるなら、と、止め、ない……」
 「嘘つかないで」
 「……あの人と逃げないで」

 ここに来てまで強がりをいう伊織の頬に触れながら嘘つかないの、と言うと伊織は恥ずかしそうに目をそらした後に逃げないで、と言った。ついでに、その後に小さな声で「僕の前から居なくならないで」なんていう伊織が可愛くて、楔はその場で抱きしめたくなる気持ちをグッと抑え込んで大丈夫だよ、なんて声をかける。

 「た、たしかに、僕頭悪いし……あの人みたいに可愛くないし……そ、その、ばかみたいに強い、自覚はある、けど……」
 「頭悪くなんてないよ。すぐに言葉覚えたでしょ?伊織ちゃんは凄いよ。それに、可愛いよ。俺にとっては伊織ちゃんが一番可愛い。強いのだって悪い事じゃないよ。俺はそんな伊織ちゃんが大好きなんだから。……ね?」

 楔の所謂褒め殺しに伊織は恥ずかしくなっていたものの、そうやってフォローしてくれる楔に感謝をしていたのも事実だった。楔は伊織の頭を撫でるように梳きながらそうだ、なんて声を漏らしながら小さく笑った。

 「俺と、二人で逃げる?」
 「……へ?」
 「俺と、伊織ちゃんとで逃げる?って話。戦争してるから疑心暗鬼になっちゃうんだよ。……俺もそう。二人で逃げようよ。そんで、逃げた先で……幸せになろうよ。それに、指輪、早く渡してあげたいし」

 そんなことをはにかみながら言う楔に目を見開いた伊織だったが、すぐにこくり、と相槌をうった。肯定だ。伊織と楔は、次こそはちゃんとお互いを信じられるように、と。そう誓った。









× あっれれ〜当初と予定が逆になったぞ〜??楔が言っちゃったぞ〜??


3ヶ月前 No.298

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3ヶ月前 No.299

@akira0908☆G2g5KGLD3yBo ★Tablet=UIgVrM4Ag0


 「伊織、ちゃん……?何、やって……」

 嫌な予感がして楔が早退を申し込んで早めに仕事をあげて帰ってくると、蹴破られた玄関の扉と、その前に広がる地獄絵図に楔は目を見開いた。
 家の壊された扉を潜って部屋に入るや否や、目に入ったのは赤。一面の赤。明らかな人が死んだような鉄錆の匂いと肉の腐ったような匂いに楔は口と鼻を右手で覆う。
 こんな状況でも平然とした様子でリボルバーを肩に乗せるようにしながらタバコを吸いつつ読書をする黒と銀の男のような女の姿と、もう既に原型を留めていないそれをこれでもかと言うほど刺し続けている口角の上がっている赤い瞳の女の姿。
 そして楔は、その二つの姿をよく知っていた。
 楔が震えながら声を絞るようにして出すと、先に気が付いたのは本を読んでいた男のような女の方で、楔に目線を投げたかと思えば、くわえていたタバコを口から離し、タバコの白い煙を外に吐き出すと床にタバコを落とす。

 「よう、おかえり、縁くんよ。伊織〜、もう辞めとけ〜、縁くん帰ってきちゃったぞ〜」
 「駄目だよ。こいつ図太いんだ。まだ生きてるかもしれないでしょ。それに実際まだこいつ生きてるんだ。図々しいよ。人の幸せ奪っといて幸せに生きてるなんて絶対に許さないんだから。もっとぐちゃぐちゃにしないと。こいつが幸せになっていいはず無いんだ。こいつは昔からそうだ。僕と同じ血が流れてるはずなのに、こいつはいつも幸せになりやがる。そんなの不公平だ。同じ血が流れてるのに。僕が幸せになれないなんてそんなこと信じないんだから」
 「いやそこまでやったらもう死んでると思うが……ま、いいわ。好きなだけやりな。……悪ぃな縁くん、もうちょい待ってやってくれ。……あ、暇だろ?ガキの目玉いる?コイツさ〜、今までにないくらいキレちゃってさぁ。まあ煽った千里も悪いんだけどよ。キレて、ガキ一番最初に殺しちゃったんだわ。……ああ、あと腹ん中のガキもな」

 まあ悪いのは千里だから、伊織は許してやってくれ。如一はケラケラと笑いながら眼球を投げる素振りをしたかと思えば腰に掛けていた拳銃で眼球を撃ち抜く。その光景に楔は気が狂いそうになったが、却って冷静になってしまっているのも事実だ。冷静になってしまっているのはきっと、既に気が狂ってしまっている証拠だろう。
 ただただふつふつとこみ上げる怒りに、楔は強く握り拳を作って唇をかんだ後に強く如一を睨みつけて声をあげる。

 「何、やってるんだよ……!!」

 楔のその言葉と大きな声に、ぐちゃぐちゃという肉と血の混ざる音がピタリと止んだかと思えば、光の宿らない赤い瞳を持った伊織の短刀……忍刀・寵愛を握る手が止まった。
 伊織の手に握られた刀を見て、楔は絶句する。伊織が持っていたのは忍刀の加護の筈なのだ。それなのに、今の伊織が握っているのは楔が逃げる時に持ってきたはずの寵愛だった。千里を守ると約束をし、願いをかけた寵愛だった。忍刀が先日無くなったのが気になってはいたのだが、効力を発揮して溶けたのかと思ったのだが、そんな甘い事ではなかった。取られていた。そして、願いは今の持ち主に委ねられている。

 「そういやそれまだ伊織願い事してなくね?」
 「ん?してたよ〜。地雷さんを殺す為の力を貸してくださいって。でももう叶っちゃったからなぁ。次は何にしようかなぁ。……裏切り者が苦しんでくれますように、とか?」
 「もうだいぶ苦しんでるだろ」
 「……僕の生まれを知ってこんな事してるんだよ?こんなんで苦しんでるうちに入れていいわけないじゃない」

 くすくすと笑う伊織の姿に楔は目を逸らす。昔は大好きだったあの笑顔が、今は恐怖や底知れない違和感を感じさせる。そして、伊織の言葉に何も反論できないことも事実だったのだ。楔は伊織の生まれを知っている。そして、伊織を未だ好いていた頃、伊織が千里の従姉妹に当たることも、伊織よりもずっと先に知っていた。
 千里と逃げることになった時、確かに伊織の事を想わなくも無かったが、それよりもずっと、伊織と似ている千里ではなく、千里そのものに恋焦がれていたのは楔の方だった。紛れもなく、楔は千里をその時既に好いていた。

 「生まれた時地雷さんは地雷の家だからっていじめられなかったのに、僕はいじめられて、名前もらえなくて、言葉話せなくて、売られそうになって、地雷さんの御両親が亡くなった時、正直ざまあみろって思ってたけど、やっと僕に家族ができたと思ったらお母さんは死んじゃうし、殺されちゃうし、お母さんの死体はまだ見つからないし、その矢先アルバの馬鹿野郎が喧嘩吹っ掛けてくるし」
 「すまん……悪気はない……」
 「僕はお母さん殺されて悔しくて、お姉さんがこの国を守ろうとしてたから、お母さんがこの国を愛してたから僕は前線に立つことを選んだのに、地雷さんはお母さんとお父さんが死んだのにローデなんかに逃げて、如一さんにお父さんとお母さんの死体まで見つけてもらって約束までしてて、僕はやっと家族が出来るんだと思って楔を好きになったと思えば地雷さんが楔と出会って、楔はそれを僕に隠して、何も話してくれなくて、それなのに地雷さんには色々話してて、挙げ句の果てには地雷さんと楔は2人で逃げちゃうし、僕は楔を信じてたのに裏切られたし、楔の事何も知らないくせに地雷さんに楔は取られちゃうし、約束だってしてたのに如一さんとの約束破るし、楔も僕との約束破るし、地雷さんの自分勝手も楔の嘘つきも何もかも許せないよ。僕ばっかりこんな目に遭うなんておかしいよ。僕は何もしてない。僕はアルバに生まれただけ。僕は地雷さんのお母さんの妹になってしまっただけ、それだけ、それなのにこうなってしまった。僕は普通になりたかっただけ、僕は幸せになりたかっただけ、それなのに地雷さんにそれを奪われてしまった。…………こんなの、不公平だよ。こんなの、おかしいよ……血が繋がってるはずなのに…………なんでいつも地雷さんが幸せになるの……なんで地雷さんは逃げるの……。僕だって逃げたかった。僕だってあんな争いしたくなかった。逃げたかった。でもお母さんが愛した国だから、お姉さんが守ろうとした国だったから、だから戦った。それなのにあの人は、お父さんとお母さんが守ろうとしてた国を捨てた。そんな人に楔が取られて…………悔しくて、悔しくて…………僕は幸せになっちゃいけないんだって…………」

 早口だった伊織の言葉は少しづつ遅くなっていく。最初こそは堪えていたみたいだった涙だって止まることを知らないかのようにボロボロと零れている。伊織の出生を知っていたはずだったのに、伊織のこの言葉を聞いて楔はゆっくりとしゃがみこんで俯いて耳を塞いだ。
 もう何も聞きたくないと言っているようですらあった。幸せにすると約束した日が嫌でも頭にフラッシュバックする。伊織を幸せにすると決めた瞬間が鮮烈にフラッシュバックする。幸せになってもいいんだよ、と。唇を震わせて言いそうになるのをぐっと堪える。
 ────もう、俺の声は届かない。
 楔は唇を噛んで、土下座するような形になりながら声を押し殺して泣いた。何故泣いたのかは分からない。いや、分かる。分かるのだ。理由が多すぎる。愛した人を殺されたショック。愛した人との唯一の血のつながりを失ったショック。愛そうとした人を裏切った後悔。愛そうとした人を信じることが出来なかった自分への嫌悪。愛そうとした人を見捨てた罪悪感。

 「………………ごめんっ………………」

 嗚咽と涙を押し殺して出てきた第一声はその一言だった。何にごめんなのか。妻?娘?生まれてくるはずだった子供?それとも、愛そうとした自ら裏切った愛せなかった人?

 「……………………ごめんっ……………………ごめんっ………………」

 それ以外の言葉は出ない。楔が泣きながら謝るものの、伊織は失望したように楔を見つめたかと思えば、さっさと外へ出てしまった。


 「如一さん、アルバにお願いできますか。こき使ってください。……消えた地雷さんの分まで、4年分存分に働かせてください。使えなくなったら好きにしてくださって構いません。奏の分は今後も僕が行きますので。ああ、でも、殺すのはやめてください。ギリギリまで生かしてください。自殺もしないように監視願います。東国統率官として願いを聞き入れてくださいませんか」
 「おう、もちろんだ。今まで東国の仕事もあったのに千里の分まで手伝ってもらって悪いな。あ、あと奏もうアルバの連中じゃねえし東国でこき使ってやってもいいから。奏の分もこいつにやらせるから良いよ。……そんじゃ、縁くん、これからアルバの者として死んだ千里と伊織の旦那さんになった奏の分までしっかり働いてもらうからな。病気になっても怪我になってもお前だけは治療しねぇ。ローデにも治さねぇように話は通しておく。自分で何とかしろ。恨むならお前自身の行動とお前の愛した人を恨め。お前が愛せなかった人を恨む権利はお前には無い。ま、俺のことは好きに思うといいさ」
 「……ええ」

 楔は、もう何かを言い返そうとは思わなかった。伊織を恨む権利はない。自分を恨む。千里を恨む。楔は、ここまで来て、もう既に死んでしまった後にも関わらず、恨みの矛先を千里に向けて辛うじて生かされることを決めた。楔を殺さなかった事は、伊織の最後の善意だったという事は、楔にも分かっていたから。











× 伊織ちゃん書いてて思ったけどこの子本当に不幸体質だな

× 取り敢えずこのルートに進んだ伊織は奏ちゃんルート。ハールィチだと国の問題で出来ないこととかあるし、このルートの伊織はそういう意味ではハールィチを全然好きになってないわけだから……

× 如一さんのラスボス感よ


3ヶ月前 No.300

@akira0908☆G2g5KGLD3yBo ★Tablet=UIgVrM4Ag0

 「縁、今月何ヶ月目だっけ?嫁さん」
 「……3」
 「なんだよその嫌そうな顔は……」
 「別に好きで結婚したわけじゃねえし」

 はぁ、と溜め息を吐きながら目の前のパソコンに目を向けるのは結婚も早いもので6年が経過した縁楔だった。6年も経つとこんなもんか、というものだが、驚くことにこの縁楔、1年目どころか会社に入社した頃からずっとこの調子だった。仕事の時は指輪を外し、帰るときに指輪をして帰る。残業になると喜び、定時になると絶望的な顔をしながらも表情を作って帰る。
 そんなこんなもあってか、楔の会社の中でのイメージは殆どの人間には恐妻家と言われている。まあ実際のところそうでもないのだが、この際恐妻家でも良いだろう。それでもちゃんと面倒くさがりながらも子供の面倒は見ているし、奥さんへの記念日のプレゼントを忘れないあたりは、やはり奥さんのことが好きなんだなぁという印象は持たせるものの、一部からは脅されてるんだろうなとあらぬ疑いまでかけられてしまっている。
 まあ、この際楔からすればむしろそっちの方が助かっている。うまくそんな変な噂が広がって誰かが訴訟を起こしてくれないものかとぼんやり考える。楔の猫かぶりは社内でも有名だが、元々の顔の良さと元の性格の大雑把ながらも男前(雑?)な性格、面倒見の良さや楔の教育した新人の驚異の出世率や仕事の出来からは周りからはそんなに悪い目で見られていないのがまた厄介だ。何かあったら会社側は楔側にすら立ちそうだ。

 「今日飲んで帰らね?流石にそろそろ疲れてんだろ?」
 「あ?あ〜……どうしよっかな……。いや、ダメだ、今日朝早く帰るつっちゃったんだった。クッソ……。明日でいい?」
 「旦那様も大変なこった」
 「お前結婚しねぇの?」
 「出来たらしてますぅ〜。しかも縁見てると結婚したくなくなる」
 「ん……まぁ、俺も本当は結婚したい人居たんだけどねぇ。……叶うなら、今からでもいい」
 「は?その話昼休み問い質すからな」
 「……はぁ?」

 疲れたようにしながら楔は苦笑を浮かべながらまたデスクに向き直った。次の昼休み、面倒なことになりそうだな。そんな事を思いつつも、好きな人の話をするのは楔は好きだった。好きな人の話をする時は、唯一彼女のそばに居られるような気がするから。話していると、そのうち彼女が側に来てくれそうな気がするから。
 だから、楔はあまり好きな人の話をすることを拒まない。もう会えないことは分かっているし、自ら絶った人生最大の失敗だということもわかっている。こうしてたまには話して、彼女を思い出しては「ああ、会いたいな」なんて思いながらどうか生きていますように、と願うのが楔の日課、のようなものだった。
 後輩や部下の女性から告白される度に、妻がいるから、ではなく今までずっと「好きな人がいるから」と断ってきたのはそういった理由もある。確かに最初こそはこれで良かったと思ったが、時間が経つ度に後悔をし、6年も経ってしまった今では、もはやヤケにすらなっていた。そういう時もある。人生というのは何があるのかわからない。……とは、行かないが。

 昼休みになると、屋上でコンビニで適当に買った弁当を広げながら話を問い質される。楔が元々東国の者だということも知っているが、さて。どこから話したものか。

 「何から話せばいいの?」

 楔が困ったように頬をかきながらそう尋ねると、同僚の方もうーん、と唸った後にあ、と声を漏らしたかと思えば「どんな人なの?」と尋ねてみる。楔の嫁が所謂鬼嫁(同僚イメージ)という事もあり、もしもその相手とやらも鬼なのだったらこの男の性だろうと思って今後はこの男の嫁に対する愚痴を惚気として受け取ろうと思っていた、のだが。

 「めちゃめちゃ可愛いよ……いや、美人でもいい、かな」
 「は?」

 そんな事を考えている間に、迷うことなく楔から出てきた一言に思わず目を見開く。そんな早く出てくるものなのか。写真なんかがあるなら是非とも見てみたいとすら思う。楔の嫁の写真は何度か見たことがあるが、同僚からすればその嫁だってムカつくくらいの可愛い人だったのを覚えている。その時ばかりは美男美女だとは思ったが、実のところ同僚は彼の嫁以上に可愛い人を見たことがない。
 アルバ特有の明るい茶髪に、少し濁ったような茶色混じりの黒色の瞳。幼さの残る童顔に、ぱっちりと開いた瞳、口元はムッとしているようにきつく結んであったが、それはむしろ女性らしさをよく表していたようにも見える。が、あれ以上の美人、可愛い人を同僚は知らない。

 「東国の旧家の養子でね。アルバ生まれだから目は赤いけど、髪は黒。びっくりするぐらい綺麗だよ。すごく。可愛くて美人で、すごく優しい。ちょっと抜けてるけどそこも凄く可愛いし、心配性でちょっと人見知りかも。礼儀正しくて言葉遣いが丁寧で、仕草一つ一つが女性らしくて……怒ってるのは見たことないな。でも怒ると多分怖い。武道家の娘でもあるから格闘技強いしね。といっても、無闇矢鱈にやる訳じゃないよ?昔言ってたけど、武道は守るためのもの、誰かを傷つけるためのものじゃないって言ってたし。あ、あとちょっと泣き虫で寂しがりで、すごく綺麗に笑う。この子を守るために生まれたんだって思ったくらい、素敵な子だよ。お前があったら一目惚れしちゃうかもね。俺がしたんだし」
 「ハイスペック……」

 楔から出てきた言葉の数々に色々驚く。そんなに良い女性がいながら何故アルバの女性とこんな辺鄙な土地へ来たのか、だとか、お前みたいな奴が言葉からわかる程可愛い奴が出会えるか、だとか。養子……というのは少し気になったにしても、武道家、それも旧家の娘とはどれだけ育ちの良い娘なのだとか。色々突っ込みたいこともあったが、どちらかと言うと同僚の胸にはあってみたい、という気持ちの方が強かった。

 「……ん?てかなんでそんなにいい子いんのに今の嫁さんと結婚したんだよ」

 原点に戻る。同僚がなんとなく聞いてみると、楔は「……ホントだよなぁ」と半ば魂の抜けたような状態になった。つい先程までの嬉々とした黒い黒曜石のような瞳はいつもの死んだ魚の目になってしまった。贅沢な悩みを持っているものだとは思うが、やはり色々あるんだろう。それにどうもこいつの事は憎めない。顔が良いからだろうか。多分それもある。
 楔によると、今の奥さんと結婚したに至るまでは自分が色々と血走っていた、らしい。東国とアルバの戦争はなんとなくだが知ってはいた。あのような状況になれば誰もがまともな判断が下せなくなるし、もっと言うのであれば疑心暗鬼になってもおかしくはないだろう。その事を踏まえると、楔がショックを受ける気持ちも分からなくはない。とは言え、実際に東国とアルバの戦争を見たわけでも参加したわけでもない側からすれば、やはり羨ましいものは羨ましいが。

 「伊織ちゃん会いたいなぁ……」

 ぽつりと呟いた楔の言葉に同僚は思わず目を見開く。今までに聞いたことのない程弱々しい楔の言葉だった。今にも泣きそうな震えた声には流石に拍子抜けですらあった。色々思うことはあるだろう、それでも、今こうして泣きたくなってしまうほどに好きだった人を、恋焦がれていた人を諦めてしまわなければならない理由があるとすれば、少し楔を羨ましいと思う気持ちは薄れていった。

 「……会いに行っちゃえば?東国だろ?3日かかるけど……往復で6日……まあでも、お前仕事はできるし、今まで1回も有休取ってないだろ。その分まで休めるんじゃねえ?嫁さんには俺から出張だって言っとくし、ほかのヤツらにも口裏合わせてもらうしさ」
 「ははは、お前千里のこと何もわかってないな。アイツはな、俺みたいなクズ好きになったその時点で助けてもらった恩捨てて逃げようなんて提案してくる阿呆だ。アイツは恋に盲目って言葉がよく似合う。俺がそんな長い間出張するなんて知ったらどうなると思う?俺についてくるか、ついてこないにしてもお前殺されちまう」
 「え?俺殺されるの?」

 心底意味がわからなさそうに目を丸くした同僚を見て、楔はクスクスと笑った。東国に戻りたい。戻れるなら戻りたい。戻れない理由が多すぎる。そう思うと、楔はうんざりして溜め息が零れてしまう。溜息をすると幸せは逃げるというが、楔からすれば伊織と離れたその瞬間幸せが逃げたようなものだ。会いたい。
 本当に会いに行こうか、そんな事を楔はぼんやりと考え始めていた。ただ、やはり同僚の命を危険に晒すのは正直避けたかった。なんというか、同僚は彼の幼なじみを彷彿とさせてしまうもので、またしても自らの手で失うなんてことはしたくなかったのだ。それに、もし仮に東国に行って、だ。もし伊織が亡くなっていたらどうする?伊織が自分を突き放したらどうする?
 その可能性の方が高かった。そして楔は、この期に及んで伊織には嫌われたくないと、突き放されたくないと強く強く願っていた。いっそ嫌われてもいいから、そんなふうに考えて行動する伊織とのこの意見の食い違いが、また引き合わせてくれるのだが。それはもう、悲しいほどリアルな出会いに。

 「つーか縁タバコ吸わねぇの?前まで吸ってたじゃん」
 「子供居るのに吸うわけいかねぇだろ……。それに、うるせぇの、タバコ吸うと。あいつタバコ嫌いなんだよ」
 「なんつーか……お前なんだかんだでちゃんと配慮してる辺りいい旦那さんだよなぁ……」

 しみじみと目を細めながら同僚が言うと、楔は少し考えた後に目を伏せて、俯いた後にぼんやりと噛み締めるように言葉を紡ぐ。

 「違う。本当の理由はその好きだった人がタバコの匂い嫌いなの。前まで吸ってたけど、吸ってると本当にその人が居なくなった気がして虚しくなるから吸わないようにした。……昔はタバコも酒も好きだったんだけどね。我慢してた頃の方がずっと幸せだった。タバコも酒も飲める、よっしゃ、って思った時期もあったけどさ、タバコも酒もいざそうなると楽しくないんだわ。……なんでだろうな」

 寂しそうに笑みを浮かべる楔の姿に、同僚の男は楔の姿を見つめる。タバコも酒もいざそうなると楽しくない。それはきっと、お前の求める人が隣にいないからじゃないの?お前のタバコと酒を本当に嫌がってほしい人に嫌がられてないからじゃないの?お前がタバコも酒もやめるきっかけの人が側にいないからじゃないの?そんな気持ちが渦巻いたが、それは口に出さないでおいた。
 いくらなんでも、今の楔にこれを言うのは酷だと思った。今日は定時帰りだと決まっているのに、そのせいで帰る気が失せてしまってはたいへん困る。帰る気が失せたら自ら残業を詰め込んで以前1度あった過労死寸前まで働きかねない。東国の者は働き者だとは国民性から言われていたが、楔の場合はどちらかというとストレス発散のために働いているような節は否めない。

 「もしさ、その人と会ったら俺に紹介してよ」
 「やだよ。お前絶対好きになるもん。……それに、俺でさえ不釣り合いな人なんだから」
 「マジかよ……」

 楔の言葉に絶句する同僚。そんな人が本当に存在するのか。会ってみたい、会ってみたいが、それと同時に、楔の心からの幸せをどこかで願ってしまう。最初こそは東国の馬鹿野郎だとは思っていたが、こうして月日が経つと考え方も変わる。人の見方も変わる。凄いやつだと素直に思った。嫌っているのに妻子を愛そうとする姿勢は尊敬したいと思った。疲れているのに家でさえ自らを作る姿勢は男として尊敬しなければならないと思った。そういう意味で、楔には幸せになって欲しかった。

 「にしても、今日定時かぁ……やる気出ねぇ……」
 「俺は定時だからやる気で満ち溢れてるわ」
 「独身はいいよなぁ」
 「離婚しろや」
 「今更離婚したところで俺にもあいつにも他に逃げ場所がないの。それに離婚持ち出したら多分俺殺される。1回指輪し忘れて出勤した時殺されるかと思ったもんマジで」
 「うわ怖い」

 楔の半ば震え上がる姿にくすくすと笑った後に、友人の幸せを切に願った。同僚として、というよりも、友人として、だった。楔には幼なじみがいるらしい。その幼なじみの1人に似ていると言われた時、不思議と嫌な気もしなかった。ならば、出来る限り代わりを努めよう。そう思った。
 余談になるが、同僚は少し気になっていることがあった。どうやら、ここ最近海辺で東国海軍の船が見られているらしい。貿易なのでは?と言われているが、東国の貿易はビスターチェだけだ。新しい条約でも結ぶのだろうか。分からないけれど。

 「それにしても赤色の瞳か。目立ちそうだな」
 「アルバかビスターチェにしか居ないくらい綺麗な赤だしね」
 「へぇ、そんなにか」

 そう思いながらコンビニ弁当と一緒に買った紙パックの牛乳を啜った。なんとなく、いつもより牛乳が甘かった。
 その日の晩、同僚の家から遠く離れた場所で女性とその子供が死んだという。本来なら物騒な事件だなと思う前に、なんとなく同僚は思う。「やっと自由になれるのか」なんて。
 楔の事はなんとなく分かっている。約束通りその女性とも会わせてくれるのだろう。そう思うと、物騒で不謹慎な事件があったのにも関わらず、同僚の男は明日を楽しみにして眠りについた。楔の話に出てきた苦手だと言っていたタバコと酒は控えて。












× 引っ張るよ〜これは序章みたいなもの。楔が吹っ切れてないのをよりよーく描写したかったのさ(ゲス顔)

× 次は伊織と如一が来るよ。とりあえず殺して、その次に後日談入れられたらいいかな。同僚の男が東国に来るよ。英介と顔合わせ。似てる!

3ヶ月前 No.301

@akira0908☆G2g5KGLD3yBo ★Tablet=UIgVrM4Ag0

 「お疲れ様でした〜」

 楔が一気に表情を作って左手の薬指に指輪をして帰るのを夜勤組の者達は憐れむような瞳で楔を見た。楔の恐妻家は夜勤組にも伝わっている。わざと夜勤を入れたり残業にしたりする辺りから、やはり広く伝わってしまっているみたいだが、ありがたい事にそれは社内だけの話で終わっている。たまに取引先の人にバレたりもするが、大体は恐妻家を持つ旦那さんと会うことが多い事もあり、その時はお互い大変ですね、なんて話をする。
 とはいえ、楔は少し今日は帰る足が早くなっていた。同僚から昼休みが終わる直前に聞いた東国海軍の船。それが気になっていた。取引先から帰ってきた同僚の内1人が言っていた言葉も気になる。

 「取引先から帰るときめちゃめちゃ綺麗な人見たわ」
 「あ、あとすっごいイケメンも一緒に歩いてました!!そりゃもうすんごいイケメン!!」

 興奮気味に話す女性部下とそれに呆れるように肩を竦める一緒に取引先まで向かった同僚。そいつもめちゃめちゃ綺麗な人見たわ、と言っておいて何を言ってるんだとは思っていたが、少しだけ楔には引っかかることがあったのも事実だ。

 「……目の色は?」
 「俺が見た人は赤だった。あんなに綺麗な赤見た事ねぇけど黒髪だったからビスターチェの人なんじゃねえかな。もう片方はエメラルドグリーンだった。黒髪に銀髪混ざってたから多分アルバかビスターチェの人だと思う」
 「へぇ……」

 赤い瞳に黒髪、エメラルドグリーンの瞳に銀髪混じりの黒髪。どちらも、知っている気がする。いや、知っている。赤い瞳に黒髪なんて東国とアルバの混ざりをそのまま表している。エメラルドグリーンの瞳に銀髪混じりの黒髪。そいつこそがアルバの災厄だ。
 同僚の話を聞いてにやけそうになるのを堪えた後に「どした?」なんて聞いてきたので、うーん、ちょっとね、とはぐらかしておいた。今まであんなにも嫌っていた定時帰りをこんなにもありがたく思える日が来ただろうか。今日が定時で良かったとどれほど思っただろうか。
 そう思っているうちに楔の足は確実に早くなっていて、駐車場までたどり着くと車に急いで乗り込んでエンジンをかけて家まで走らせた。田舎の国は車がないと不便だったが、そのぶん交通の整備はしっかりされている。それでも走っている車はこの時間は少ないこともあり、カーチェイスさながらに家まで車を飛ばすのはそう難しい事ではなかった。隣国にある我が家へ急ぐために、アクセルを踏んだ。

 半ば息切れをしながら比較的広めの豪邸と言われても違和感のない家にたどり着くと、鍵はかけっぱなしで無残に開いた壊された玄関に目を見開いた後に壊れた玄関を潜りながら急いでリビングまで走った。広い家は、リビングも遠い。とはいえ、やはりただの家だ。遠く感じたのは、楔の逸る気持ちがあったのだと思う。

 「────伊織ちゃん!!」

 閉ざされたリビングの扉を雑に開けて叫ぶようにそう言うと、三つ編みにされた黒髪が揺れた後に、赤色の瞳が楔の姿を捉えた。
 伊織ちゃんだ。本当に伊織ちゃんだ。綺麗。可愛い。伊織ちゃん。伊織ちゃん。また会えると思ってなかった。会いたかった。生きててよかった。伊織ちゃん、伊織ちゃん。
 驚きのなかに嬉しさを含んだ瞳で楔を見て座っていた椅子から立ち上がる伊織と、驚きの中に絶望を孕んだ目で楔を見る千里とその娘の姿を一瞥した後に、伊織を抱っこするかのようにだき抱えて楔は伊織を強く抱きしめる。

 「ずっと……会いたかったっ……!!」

 楔が若干涙をためながらそう言うと、伊織は驚いているというか焦っているというか、困っているというか、助けを求めるように如一の方を見たが、当の如一は「ひゅーひゅー」と棒読みで茶化してくる。楔の耳には棒読みの茶化しですら届いていなかったみたいだが。
 伊織も諦めたのか、抱っこされているようなこの状況が恥ずかしいのか、楔の肩に触れると、楔は1度伊織を抱きしめる力を弱め、「どうしたの?」と伊織を微笑みながら見つめる。伊織も敵わないなぁなんて思いながらそっと楔の左手に触れると、楔は思い出したかのように小さく声を漏らすと、伊織から手を離した。
 ひとまず解放された伊織は、流石に緊張したのか心臓部辺りに手を当てて深呼吸。楔は左手の薬指にされた指輪を外して、机の上に乗せた。

 「おいそこの東国組。余計な時間かけんなお前ら諸共殺すぞ」
 「ちょ、ぼ、僕はやめてくださいよ!!いや楔も駄目ですけど!!……それに、如一さんが「俺が片付けてやる」って言ったんでしょう?今の間にやればよかったじゃないですか」
 「縁が伊織引き摺ってんのが完全に計算外だったんだよ!!俺は縁の叫び声聞きたくて待ってやってたのにとんだ時間の無駄だわボケ!!」
 「如一さんって優しいんだかなんだか……」

 呆れたように如一が頭をガリガリとかきながら噛むようにしながら吸っていた短くなったタバコを口から離すと、火は消さずに床に落とした。流石に良い床という事もあって火は広がらなかったが、そのうち火をつける予定なので如一はライターの残りを確認して余裕があるのを見てタバコをもう1本取り出して口にくわえた。
 するとだるそうに銃口を千里の後ろに隠れた千草に向ける。千草は震えながら更に千里の後ろに隠れるようにすると同時に、千里は如一の前に出てきた。

 「あの子には手を出すな」

 如一はつまらなさそうに口にくわえていたタバコを離すと、ふっ、とタバコの煙を千里に吹きかけた。千里が噎せる姿を楽しそうに見たあとに「やーだっ」と言いながらタバコの火がついた先を千里の左目に押し込む。千里は急いで左目からタバコを離したが、それでも熱さや痛みは確実に広がっている。

 「ちょっと黙っててくんね?うっぜぇ」

 如一が目を細めて笑いつつもそう言うと、ぽんぽん、と千里の肩を叩いた後にポケットにしまったタガーナイフを千里の腕に突き刺してじりじりと千里の娘である千草に寄る。如一が近付くとそれと同時に数歩千草は目元に涙をためながら首を横にふるふると振りながら後ずさる。ふと千草と千里の顔を見合った後に、しゃがみこんで千草の顔をジィっと見た。
 一度デザートイーグルを床に置くと、千草の頬に触れて千草の顔を見た後に、如一はふと振り向いて楔の方を見る。も、楔を見るのは一瞬で、すぐに千草の方を見た。

 「お嬢ちゃん、パパは好きか?」
 「…………うん」
 「ママは好きか?」
 「…………だいすき」
 「ママのどんな所が大好きなんだ?」
 「やさしいとこ……」
 「パパのどこが好きなんだ?」
 「かっこよくて……いつもおしごとがんばってるとこ……」
 「はは、ママもパパもかっこよくて自慢だな。お嬢ちゃんは幸せ者だ」
 「うん……。……ちぐさのこと、ころさないの…………?」
 「殺さないよ。俺はね」
 「ほんとう……?」
 「ほんと」

 如一の行動にその場にいた全員が拍子抜けだった。楔と伊織はもちろんだが、千里は如一の予想外の行動に何もしない安心感と同時に、頭のキレる如一が何を考えているかわからない事もあり、不安感も強く抱いていた。ただ、腕の痛みと左目の痛みがやっと耐えられる頃になった時、千里はふらりと立ち上がった。

 「お嬢ちゃん、人を殺すことは、優しいことか?」
 「………………まま…………」

 如一が笑いながらそう尋ねた時、如一の頭に置いたデザートイーグルの銃口が当たる。見なくてもやったのは誰かわかる。震えながら如一の後ろを見る千草の行動ですぐに分かった。如一がにっこりと微笑んだ後に千草を見る。千草はどうすれば良いのかわからず、ただおろとろと如一と千里を交互に見た。

 「……何考えてんだ。死ね」

 千里がそう言ってデザートイーグルの引き金にそっと手を掛けると、千草は目を見開いて如一はにこにことしたまま千草の叫び声にも近い言葉を黙って聞きながらその言葉に従った。

 「おにいちゃん、あたま!!」

 お兄ちゃん?とは思わなくもなかったが、まあこの際いいだろう。如一が頭を伏せると、それに覆い被さるように如一の頭を踏んで肩甲骨辺りに立つと、千里の持っていたデザートイーグルを拙い両手で掴む。しかし時既に遅し、千里は既にデザートイーグルの引き金を引いていて、デザートイーグルの銃弾が千草の頭に撃ち込まれた。
 千里はその光景に目を見開いてデザートイーグルを落とす。

 「あ…………」
 「な、嬢ちゃん。殺してないだろ。……俺“は”」

 既に亡くなった千草の穴の開いた頭を撫でてやると、千里は今にも発狂しそうになっていた。如一がそっと伊織に目配せをすると、伊織も呆れたように肩を竦めた後に頷いた。

 「如一さん何やってるんですか……!!もー、娘は殺さない約束でしょう?あ、やばっ、言っちゃった。まあいっか。もう死んだし。……ああ、殺したの如一さんじゃなくて地雷さんでしたっけ。ていうか、銃弾は1個で大丈夫って言った結果これですけど。どうするんですか?僕武器なんて死刀しか持ってませんけど」

 わざと、とは到底思えない完全な演技に大したものだと如一は苦笑を零した。伊織がそっと楔に目配せをすると、楔はしょうがないなぁ、なんて言いたげに伊織を抱きしめていた手を離すと、そっと千里を通り越して千草に近付いた。

 「千草……!!」

 楔が千草の亡骸を泣きながら抱きしめると、如一は「ホントやだこの東国組」だとか思いつつお涙頂戴の夫婦寸劇を眺めてることにしておいた。実際、千草が死んだショックは楔には少なからずともあった。まあ本当に少ししかそれもショック〜程度にしか思っていなかったが。千里は泣きながら千草の亡骸を抱きしめる楔の姿に涙を流しながら絶叫に近い形で「ごめんなさい」と言った。
 娘は殺さない。その言葉に千里の中で何かが切れた。己のしたことの愚かさや人を信頼しないが故に起こした悲劇。自分のことは好いていなくとも、娘のことは愛してくれていた様子の楔。その姿に、千里はもう何も言えなくなってしまっていた。自らの手で娘を殺したショックは、一生癒えることは無いだろう。死んでも、きっと癒えない。千里はボロボロと泣いた。これでもかというほど泣いた。そして楔も、千草の亡骸を抱きしめながらその間ずっと泣いたふりを続けた。5分ほど時間が経った頃、ついに如一と伊織はこのつまらなさに目が死んでいた。痺れを切らした如一が伊織を見てふと言った。

 「あ〜、うっぜ。伊織、死刀?とやらはあるんだろ。それでこいつら殺してくんね?」
 「だから楔は駄目だって言ってるでしょう!!それに死刀は僕が使ったら死にますから!元々死刀は生刀との対です。普通の人でさえ使うのは危険だというのに、生刀を折った僕が死刀を振るったらどうなるか……考えたくもありません」
 「なんで薙刀持ってこなかったんだよ……ほら、あの……リョーラン?」
 「だ〜か〜ら〜!貴方が俺がやるとかカッコつけたんでしょ!!あとリョーランじゃないです繚乱です!!」
 「え?じゃあどうすんの?俺包丁やだよ。バレちゃうし」
 「そ、その、死刀は元々の持ち主が使えばなんともならないと言いますかなんといいますか……」

 気まずそうに伊織がそう言ったかと思うと、楔は千草の亡骸から顔をあげて、ゆらりと立ち上がった。目元は演技とはいえ見事に泣いたのか真っ赤に腫れていて、随分と演技のうまいこと、震えた声で「伊織ちゃん」と手を差し出した。伊織はすっとぼけるように「?」と首を傾げると、楔は夕霧の名前を出した。
 伊織が眉を寄せながら渡すべきかどうかでわざとらしく暫し悩んでいると、楔が言った。

 「もちろん、伊織ちゃんの為って言うのもあるよ。でも、それとは別に……千草を殺したのは、流石に許せない」
 「で、でも、楔は地雷さんと結婚して……」
 「本気であんな女好きになると思う?……言ったでしょ。俺には伊織ちゃんだけだって。伊織ちゃん以外有り得ないから。……遅くなってごめんね。……迎えに来たよ」

 楔が目を細めて笑うと、伊織は死刀を楔に手渡した。楔は久々の死刀の感覚にそっと鞘を撫でた後に、鞘から死刀を取り出し、未だに輝きを放つ死刀を千里に向けた。千里は泣きじゃくっていて、未だに「ごめんなさい」と謝っている。

 「うるさいなぁ」

 楔がそう言ったかと思うと、何のためらいもなく、それこそ今も尚アルバと東国の戦いが繰り広げられているかのように慣れた無駄のない手つきで、刀を振り下ろした。最後の最後まで、千里は謝りながら泣いていた。そして伊織は最後の最後まで、地雷千里という自らの従姉妹を許しはしなかった。
 如一がようやく終わったかとやれやれと肩をすくめると、ライターをつけたまま千里の死体の上に落とし、火が広がるのを待った。10分もした頃、その場所には火が広がっており、野次馬は出来、隣国からも時折人が来た。
 実はここまでの時間に相当時間がかかっているようにも思えるのだが、その実発火するまでに1時間程しか経っていない。楔が普段会社から帰る時間よりもずっと早い。今日ばかりは近道をしてアクセルを馬鹿みたいに踏んだこともあってほんの数10分で帰ってきたが。
 これからの事は明日話そう、そう言って楔は丁度野次馬に来ていた同僚の家を頼る事にした。如一と伊織も厄介事に巻き込まれるのは勘弁したかったこともあり、ホテルに戻ることにした。

 「また明日」楔と伊織の交わしたその言葉が、今の2人の胸を暖かくさせた。












× 娘の殺し方が如一の計算だって言ったらどうする?

× 文字数が千文字くらい足りないから無理やりカット。

3ヶ月前 No.302

@akira0908☆G2g5KGLD3yBo ★Tablet=UIgVrM4Ag0

 有休を取るか悩んだが、今回ばかりは普通に仕事に行くことにした楔は、仕事が終わったら伊織と如一と合流して話そう、と思った。千里とその娘である千草が死んでから1晩経つ。あれは結局、如一の抜かりなさの凄さか、デザートイーグルは知らぬ間に回収していたこともあり、ただの事故ということで片付けられた。
 翌日、楔が会社に行くと、「おめでとう」と言われたあたり、千里の死を祝われてるんだろうなぁとは思ったが、不思議と嫌な気はしなかった。今まで余計に嫌なふりをしておいて良かったなんて思ってふと、こうなることが昔の自分には予測できていたんじゃないかなんてぼんやりと思った。諦めようかと思った矢先にこれだ。良くも悪くも楔は恵まれているようだった。

 「俺……東国に帰ろうかな……」
 「え!?」
 「大切な人はきっと東国に戻るだろうから……。帰ろうかなって。東国の人に受け入れてもらえるかどうかが問題だけど……まあ、土下座すれば許してくれそうなそこそこ偉い人な幼なじみが居るから」

 伊織から聞いた話だが、英介は東国の統率官補佐になったらしい。東国の統率官は伊織がやっているらしいが、それと同時進行で千里が居なくなった分のアルバ幹部の仕事もしているらしく、実質東国で一番偉い人は英介だと言っていた。あの英介が?とは思わなくもなかったが、なんだかんだで東国を一番見ていた人であったと思う。
 東国とアルバの争いの時に先頭に立ったのは天城陽ではあったが、彼は本来東国に留まっていていいような人材じゃない。それこそこんな辺鄙な土地にも目をかけるような素晴らしいお仕事の偉い人をしている訳であって、東国とアルバの争いが終わったあとはすぐに会議に参加してあちこちを姉と回っているらしい。結婚するなら連絡しろと言っているみたいだが、忙しくてそれどころじゃなさそうでもある。
 嫁のことは嫌いだったが、この国は好きだった。最初こそは言えなかったが、今なら空でも言えるこの国が。この国は確かに田舎だったが、仕事はちゃんとしていたし、平和だった。隣国まで仕事に出るのは少し面倒ではあったが、同僚や上司は良い人が多かった。本当にお世話になることも多くて、未だに色々考えることはある。まあでも、どちらにせよ一度東国に戻るつもりである。

 「すんませーん。縁楔さんいらっしゃいますかァ。縁さんの有休1週間取ってくれませんか〜?東国に1回連れて帰りますぅ。やることやったらこっちに帰すんでぇ」
 「あ、あれ、アルバの統率官じゃ……」
 「ちょっと!!本当に貴方って人は……!!」
 「あ、めちゃめちゃ綺麗な人だ」
 「イケメンだ」

 そんな声が聞こえたかと思えば、楔はふと首根っこを掴まれ、如一の肩に担がれる。色々突っ込みたいことはあったが、昨日話した同僚は少し呆れたように連れていかれる楔を見送り、メールを送った。楔がそのメールに気がつくのは東国についてからの事だった。

 東国につくと、英介が目を丸くしながらも伊織には「おかえり」と言って背中をとんとん、と叩きながらお疲れの旨を伝えたが、楔を見ている姿はなんとも言えない微妙な表情だった。
 驚いているような呆れているような、怒っているような泣いているような、嬉しいような悲しいような、そんな感じだ。英介の久しぶりの顔に楔は泣きそうにすらなっていたが、英介ですら泣いていないのに泣くわけにはいかないとぐっと涙を堪えたかと思えばぶん殴られた。殴ったのは英介だったが、殴った後の英介は「生きてる……」だのと言いつつ目元に涙をためていて、泣きたくなっていたのは英介も一緒だったのだと思うと楔も駄目だった。
 普通殴って生きてるかどうか確認するかよ。そう思っていたが、やはり嬉しいという気持ちの方が勝っていた。お互いバカやって少し泣いた後、落ち着いた頃に英介は伊織と楔を呼び出して如一は「もうコイツら疲れた。頼んだ。帰る」と言ってアルバに帰ってしまった。まあ積もる話もあるだろうという如一の配慮でもあった。如一は本当に気が回るんだか回らないんだかよくわからない節がある。そしてそれを考えているのは伊織だけではなく、英介や楔も一緒のようだった。

 「生きてたんだな、死んでてもよかったんだぜ」
 「嬉しくて泣いてたのはどこの誰だ馬鹿野郎」
 「……どうすんだよ、この先」
 「え?ええと……取り敢えず1回シュネルマーヴィスに戻って」
 「伊織の事だよ」
 「僕!?」
 「射水さんに頼まれてんだ。お前これからどうすんだよ。伊織と。……つーか正直、まだ伊織お前にやるのには不安要素しかねぇ。如一から聞いたが離れてる間も随分と伊織にゾッコンだったらしいじゃねえか。それ聞いたから今この話をしてるんだが……どうすんだ。東国かお前のところか。伊織は楔についていくつもりらしい。統率官の仕事は俺に引き継ぎ出来るようにはしてあるだと」
 「俺、は……」

 少し考える。同僚から来たメールを少し思い出す。確か仕事辞めて東国に行く、だったか。それはつまりお前には東国がお似合いとでも言いたいのだろう。それを見てしまっては楔も戻ろうとはなかなか思えない。それに、泣きながら(殴るオマケ付きで)再会を喜んでくれた幼なじみとまた離れてもいいのか?わからない。しかし、正直会おうと思って会える距離ではない。伊織はどうだ。楔についてくるとは言っているが、今の東国には弟の識もいる。光や陽がたまに遊びに来てくれるらしい。それなら、言える事は、決めるべき決断はひとつしかないだろう。

 「俺は東国に居るよ。統率官は流石に出来ないけど……補佐の補佐くらいなら俺にもできる」
 「だよな。そういうと思ってアルバの統率官補佐に話付けてある」
 「は!?」
 「アルバ幹部だった千里の分の仕事宜しく御願いしま〜す。残るなら伊織がやってた分少しは手伝え。俺もようやくただの補佐に戻れるんだし。あ、ちなみに今更やっぱ無しとかそっちの方が無しな」
 「何でよりによってアルバ……海超えるじゃん……しかも橋壊したんでしょ……」
 「東国海軍舐めんな」

 英介と伊織の声が重なってそう言われたら、楔は何も言い返せなくなってしょうがない、と小さく笑いつつも満更でもなさそうに仕事を引き受けることにした。英介と伊織、そして如一と楔はアルバの幹部の仕事をやることになってから知り合った沖海奏とかいうなんとなく気に食わない男の力のおかげでこちらから仕事を辞めることが出来た。ついでに伊織の統率官の仕事っぷりの凄さの一つとして、シュネルマーヴィス・リバルロディアとの条約を結んでお互いの貿易をすることになったので千里の分の仕事が終わった後は楔は貿易商として働かせてもらうことになった。

 楔が仕事に慣れた頃、アルバの幹部部屋に来客があった。英介と伊織と、元同僚。

 「よ」
 「お前マジで仕事辞めたのかよ……!?」
 「うん。英介が補佐の補佐やらせてくれるって。あと縁が言ってたとおり橘ちゃんめちゃめちゃ可愛いな」
 「ちょっと待ったお前英介と仲良くなるの早すぎね!?あと橘じゃなくて伊織ちゃんは今縁な!?次間違えたら殺すからな!?」
 「うわこいつ怖い」
 「ツッコミのキレは昔と変わらずだな」
 「え、縁って昔からこんな感じだったの?」
 「そだよ〜。昔からツッコミが上手。僕はボケが下手だからツッコミづらいのかされた事ないけど」
 「あ〜……なるほど……」

 同僚の呆れたように頷く姿に英介は「こいつ昔から伊織には甘いんだよ」とか言いながらこそこそと話した。もちろんそれは楔にばっちり聞こえている。こいつら伊織ちゃんがいなくなったらしめあげる、その目線が英介が気がついたのか、にたりと嫌な笑みを浮かべると伊織を盾にするようにして伊織の後ろに立った。
 分からなさそうな同僚の姿とよく分かってないけど何故かやる気になってる伊織ともはや何も言えない楔でその状況はカオスであった。
 同僚は楔の左腕の付け根にふと目をやり、そのまま目線を動かし左手の薬指にされた指輪をふと見て「お」と声を漏らした。ここで言うべきか悩んだが、まあ揉めたらその時はその時、面白いことになればいいやくらいのつもりで声に出すことにした。

 「指輪外してないんだな」

 その言葉に伊織は「えっ」と心配そうに眉を寄せたので口を滑らせてしまったかと思ったが、それよりも先に楔が立ち上がって同僚の胸倉を掴んだかと思えば、今にも同僚を噛み殺しそうな勢いで睨みついて低くドスの効いた声でぶつぶつと呟くように口に出した。

 「あの女と違うんだから指輪外すわけねぇだろボケァ……つーかお前伊織ちゃんに馴れ馴れしすぎるんだよあんまり伊織ちゃん困らせんなよ首締めるぞつーか今締めるぞ死ぬまで締めるぞいい加減にしろよお前英介と似てるし仲良くなったからって調子乗ってんじゃねえぞお前が伊織ちゃんに気に入られてないうえに英介に似てなかったら今ここでぜってぇ殺してるからな舐めんなよボケコラカス」
 「よく舌が回るなぁ」
 「殺すぞ舐めプ!!」
 「まあまあ、やめなよ楔。僕全然困ってないし。さっきの聞いたらなんか嬉しくなっちゃったし」
 「伊織ちゃん…………」
 「は?何この子可愛いな?お前に確かに不釣り合いだわ」
 「お前の方が不釣り合いだわバーカ!!」
 「今は楔の方が不釣り合いだな」

 ゲラゲラと笑いながら言う英介の姿に、伊織もつられてくすくすと笑った。如一の「おめぇらうるせぇ!!」なんて怒号にまたもや顔を合わせて笑ってしまった。
 今が楽しい。それ以上に思うことは無かった。幸せだと思う。そうだ、子供の名前どうしよう。楔はそんな事をぼんやりと考えながら、今の状況をただただ噛み締めていた。











× この後伊織の事呪い殺しにくる千里とか面白そうだよね()

× この同僚くん裏設定で後々亜留斗と結婚するよ。亜留斗が術師やめるか同僚くんが術師になるかのどっちかだけど多分後者。二人して不死身になるつもりかな。

× 裏設定で英介実は光ちゃんと結婚してるよ。奏は秋良と、如一は佐原先生と。陽くんは国際保証連合軍のそこそこお偉いさんの娘で可愛い優しくて穏やかなお嫁さんゲットするよ。

× さらにその裏設定。アルバはルグノールに勝ったおかげでビスターチェからの支援がより来るようになってルグノールはもう島国には手を出さない条約結んだよ。

3ヶ月前 No.303

@akira0908☆G2g5KGLD3yBo ★Tablet=UIgVrM4Ag0

〜オストイルズィオン〜
 エイスケはオストで18歳の誕生日を迎えた。兄貴分のように慕っていた幼なじみクサビと妹のように可愛がっていた幼なじみイオリの婚儀が間近に迫った時、それを止めに入るかのように遠いヴェストから黒魔術師イツイが時空を歪めてしまう。オストの者達は口を揃えていう。
 「ついに来てしまったのか」
 と。エイスケの家には代々伝わる名刀、カネシゲが眠っている。なんとそのカネシゲという刀は200年に一度、時空の歪みを正すための力が宿っている伝説の刀だった。そう、200年前にもエイスケの子孫が成し遂げたことを今度はエイスケがやらなければならなかった。
 クサビの家には時空の歪みを浄化する弓矢が、イオリの家には時空の歪みを切り裂く薙刀が眠っていた。そう、つまりこの3人は偶然なんかではなく、昔からの決められた運命だったのだ。
 愛する人と共に生きていくために、平和のために、そして使命のために、3人はヴェストへイツイを倒しに行くことになったのだ―――






× 某FF的なネタがやりたかった。

× オストはドイツ語で東、ヴェストは西。イルズィオンは幻想。

× 次回予告→人物紹介

3ヶ月前 No.304

@akira0908☆G2g5KGLD3yBo ★Tablet=UIgVrM4Ag0


エイスケ/18歳/♂/剣士/カネシゲ
 スピードタイプ。攻撃威力はそこそこだけどスピードが早くて順番が回ってきやすい。後々手に入れるスキルも殆どは行動順を早めたり相手の動きを遅くしたり味方の動きを早くしたりなど。武器はカネシゲ固定だが売ることが出来ないだけで他の強い武器に変えることが出来る。しかしストーリーのうち半分くらいまではカネシゲが手放せないくらいには強力武器。もちろん初期の武器を買って戦うことも出来るが、カネシゲに比べると攻撃力が低く心もとない。後半になると攻撃力強い、スピード早いで流石主人公になる。

クサビ/19歳/♂/弓士/オニウチ
 遠距離タイプ。攻撃力が3人の中で一番高いけど実はそれは初期のみ。遠距離故に大きい敵に狙われやすい。行動順は2番目か3番目。普通の弓矢攻撃はあんまりと言った感じだが後半になるとスキル+弓矢が攻撃の必須になるので上位を争うレベルで強い。育成が早ければ早いほどストーリーが進めやすい。売ることが出来ないだけで他の強い武器に変える事が出来るが、オニウチに関しては最後の最後までお付き合いできるレベルの安心の強さ。弓士限定イベントなどがあったりするため基本的には前衛に出すべし。

イオリ/17歳/♀/治癒士/リョウラン
 ヒーラーだがヒーラー(物理)みたいなところがある。治癒魔法使いで基本的には後衛サポート。ただしリョウランがあるので全く戦えないわけじゃない。どっちかというとがっつり戦える。ただしリョウランは時空を切り裂く為の武器なので攻撃的な意味では攻撃力はイマイチ。ただし本人の元から持つスキル的に使えなくはない。リョウランは売れない。後半になると完全に治癒係。スキルのうちに薙刀+反射魔法だとかそういったまたちょっと変わった魔法も使えるようになる。それが取得できるようになるとかなり強いがそれを取得するまでにめちゃめちゃ時間かかる。ボス戦で治癒的な意味でもサポート魔法的な意味でも物理的な意味でも欲しい所ではある。

シキ/15歳/♂/黒魔術師/リンドウ
 弓矢使いのメイン黒魔術師。弓矢攻撃を目的としていないので弓矢の威力は弱い。リンドウは一番最初の土地で買える武器なので固定武器ではない。いつでも買える。黒魔術師で炎、水、雷、風が使える。割と普通に強いけど若さが祟って倒れやすく体力も低い。逃げ足は一番早いが実は結構な重装備なので行動順が遅い。ただし数少ない黒魔術師でボスのイツイと同じ属性に入るので居ないよりは居た方がずっと多い。イオリの弟でイオリに何かあった場合は強制的に後退するのがちょっと厄介。15歳にして既に形成されたシスコン。

アルト/??歳/♀/召喚士/シキガミ
 仲間なんだか敵なんだかよく分かんないけど最終的に仲間になってる奴。最初は召喚士として色々な獣とかと戦わせられるけど唯一の召喚士で後半になると重宝される。召喚士が本来の仕事なので召喚するものが無くなると爆弾投げたりと薬物係に転職。本職が召喚士なので実際のところはヒカル(後述)が殆ど行う。スピードが早くお金かすめとったり武器盗んだり。召喚すると行動順は大きいものなのでそりゃ遅くなるが、攻撃力は凄い。ただし体力が少なめなので配慮が重要。イオリが倒れた際のポーション役でもある。年齢不詳のイケメン。召喚獣戦の時に必ず出てくる。

ヒカル/20歳/♀/盗賊/カミカクシ
 初対面で色々こいつに盗まれる。タガーナイフの使い手で攻撃順が一番早い。仲間になるのはアルトよりも後。双子の生き別れの弟を探していて、弟かどうかの判別に武器の大太刀カミカクシが弟のカミゴロシと近付くと赤い光を纏うので赤の光を探し求めている。盗賊特別イベントがあるのでその際は前衛にしないと強制的に負ける(イベント名、弟)。行動順が最も早くアルトの作った爆弾を投げてスキルのうちにピッキングを身につけ始めると通れない場所に通れるようになったり宝箱をあけたり。イオリの唯一の理解者であり本編ストーリーで最もイオリと親しいキャラ。守銭奴。

ヒカリ/20歳/♂/剣士/カミゴロシ
 最初は商人として出会ってそこそこ高いけど値段に合わないほどめちゃめちゃ良い武器売ってくれる。場所が変わる最初の地点に大体居て「装備は大丈夫ですか?」と言って強制的にショップメニューを開いてくれる。ポーションの補充もできる。ボス戦前も何故かいる。ヒカルの双子の弟で、ヒカルが仲間になった後に一度戦うことになる。めちゃめちゃ強いのでヒカルがヒカリよりも先に行動に出て首締めるか何かしないと即負けする。攻撃速度は遅いものの、それを覆えるほどの攻撃力を持ち、最終的に召喚士のアルトを除いて最も物理が強い。数は限るが召喚士でもあり、仲間になる前はアルトの召喚獣と戦って召喚獣のレベル上げに力を貸してくれたりアルトがヒカリに勝つと召喚獣をくれたりする。ついでに召喚獣専門の回復役でもある。ヒカリとヒカル限定で同じく前衛にするとコンビ技があるのでそれは見物。







× next→如一側

※警告に同意して書きこまれました (性的な表現)
3ヶ月前 No.305

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イツイ/20歳/♀/黒魔術師/カシラ
 銃士サブの黒魔術師だが割と普通にシャレにならないくらいには銃も強い。倒せないけど出てくる時は大体黒魔術+銃だったのだが、最後のボス戦では黒魔術師1本でヤミウチ捨ててくれる。シキの時に書き忘れたけど水(氷含む)、炎、雷、風、そしてイツイのみ特別枠で時空が使える。時空を作っても切り裂くイオリが居るとすぐに壊されるのですごく厄介。浄化する楔が居ると浄化の効果で発動しづらくなるし英介が居るとすぐに時空直されちゃう。ただし時空を扱われるとかなり厄介なことに順番が暫くの間全然回ってこない。ずっとイツイのターン。しかもポーションでめっちゃ回復するし流石ボスとも言えるがボスにしてもボスじゃないにしても普通にイライラしてくる。最終的にはちゃんと和解する。

チサト/19歳/♀/剣士/カラダ
 剣士メインのサブに召喚士。中ボス辺りに出てくる倒せそうで倒せないけど何回か死んだ後に最終的には倒せる召喚獣は大体チサトのもの。最後のボス戦ではかなり重い一撃を食らわしてくるで有名。あんまり酷いと一撃で死ぬ。道中で出会う弱いわけでもなくだからといって強いわけでもなく地味強いなんかイライラしてくる敵は大体チサトのもの。チサトの召喚獣はアルトの初期で所有している召喚獣だけだと歯が立たないので各自武器を扱ったり遠回りをして召喚獣を手に入れたりも必須条件。クリア後に特別イフストーリーが遊べるが、それだとチサトが出向く中ボス戦でクサビと出会い…………。中身はプレイしてのお楽しみ。

ソウ/20歳/♂/剣士/ハネ
 剣士メインのサブに治癒士。ボス戦でイツイかチサトが攻撃される度に回復してくるので倒すならこいつから、と言いたいところではあるが攻撃を跳ね返す確率がめちゃめちゃ高い。避ける確率も高くてすごくイライラする。ただしソウから倒さないといけないのは事実。イオリのターンになると少し動きが鈍くなるのでイオリの地道な攻撃で削っていくのが一番確実。中ボス2辺りの所でスパイ的な感じで視察してた時にエイスケ達にバレてギリギリまで追い詰められたら逃げるっていう強制イベントがある。このイベントでエイスケ達が勝つことは絶対にないのでそこは要注意。クリア後に特別イフストーリーが遊べるが、特別イフストーリーではソウのイオリのターンで鈍る真実が明かされる…………。中身はプレイしてのお楽しみ。

イツキ/17歳/♂/黒魔術師
 完全な黒魔術師。中ボス3辺りで出てくる。普通に黒魔術師としての才能がとんでもないものでスキルがおにつよ。イオリ居ないと普通に死ぬ。ただしイツキ戦だけはイオリが敗走してもシキが唯一後退しないで相手をする。同じ黒魔術師として思うこともあるのだが、それ以上にイツキも覚えているが知らないふりをしているだけで、イツキとシキは時空の歪みでそれこそ変えられてしまったが、元々の世界では所謂親友、盟友といった仲で、イツキもシキ相手にはちょっと手があんまり出せない。倒せなくはないけど一番攻撃を与えられるのはそういう意味ではシキ。ただし仲間になることはないが、ボス戦直前にもう1回イツキと戦って「姉貴を頼む」的なことは言われる。むねあつ。

3ヶ月前 No.306

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3ヶ月前 No.307

@akira0908☆G2g5KGLD3yBo ★Tablet=UIgVrM4Ag0

アルトが仲間になるまで。


 「…………あの、助けてくれてありがとうございました」
 「助けた?僕が?君たちを?ふざけたこと言わないでくれ。僕はそんなにお人好しじゃない」
 「あ、すんません……」
 「それじゃあ、僕はやる事があるからこれで。君たちのようなひよっこが召喚獣と戦おうなんてそんな馬鹿な事は考えない方が良いよ。召喚獣を見つけたら逃げることだね」
 「イオリ姉ちゃんはひよっこじゃないよ!」
 「そんな事ないよ〜僕もまだまだだから!」
 「ありがとうございました!」
 「でもまさか召喚士さんが近くに居るとは思ってなかったよ〜。僕達あの人が居なかったらさっきのでっかい召喚獣にブチッとされてたよ。本当にありがたいねぇ。変な人だけど」
 「お、おい、イオリ……」
 「い、イオリ姉ちゃん……」
 「誰が変な人だって?」
 「ひぇ、ま、まだ居たんですね…………」→イオリ締めあげられたあとようやくストーリー展開


 「いってて……うわぁ!?は、何、俺ら召喚獣相手に戦わねぇといけねぇ感じ!?」
 「ちょ、ふざけんなよエイスケ!!俺ら今のままじゃ無理だっつーの!!イオリちゃんどうすんだよ!!」
 「クサビもエイスケもうだうだやってる暇あんならイオリ姉ちゃん助けにいく手伝いくらいしろよ使えねえな!!」
 「悪いねがきんちょ共。この子の持つ武器は僕のこれからのいい研究材料になりそうだ。悪いけどこの子は諦めてヴェストに向かうといいよ。それじゃあ、達者でねひよっこちゃん」
 「うがー!!むっかつく!!イオリ〜!!死ぬなよ〜!!」
 「ちょっとエイスケ!!シャレになんないこと言わないでよ!!ああ、もうっ、イオリちゃん取り戻すなら俺らであの人ぶっ倒すしかないんじゃない!?」
 「はぁ!?相手は召喚士だぞ!?お前自分のレベル見直せよ!!まだ20だろドアホ!!」
 「エイスケなんて18じゃん!!」
 「2人ともどっちもどっちでしょ!!こんなかで一番強い俺だってあれはさすがに無理!!今は作戦考えて少しでも早くイオリ姉ちゃん助けられるようにしないと!!」
 「こりゃまた随分と元気なひよっこ共だな。それじゃ、イオリとやらは頂いていくよ。ま、強くなった頃にでも取り返しにおいで」→他のストーリー進めつつアルトの住まう国まで3人で行くよ


 「……おや、本当に来るとは思ってもいなかったな」
 「イオリ姉ちゃん攫われてんだから来るに決まってるでしょ」
 「早くイオリちゃん返してくれませんかね」
 「まあまあ、お茶を出すよ」
 「なっんだコイツ……。つーか!イオリはどこいんだよ!」
 「ん?イオリ?この時間だとティータイムでもしてるんじゃないのかい?僕も今は戦う気にならないし、ゆっくりお茶でも飲んでいなよ」
 「この人意味がわからなさすぎる……」
 「レベル40超えないと入れない国(攻略本曰く)つってたけどこれほんとに40もいるのか…………?」
 「俺ら逸りすぎて50まであげちゃったよな……」
 「ってギャー!!クサビ!!エイスケ!!後ろ!!でっけぇのいる!!」
 「はぁ!?うわっきも!!」→戦闘開始。アルトの下級召喚獣。最低レベル40でギリ勝てる


 「あ、エイスケ、クサビ、シキも来てくれたんだね!」
 「そ、そりゃもちろんだよ!イオリ姉ちゃんだし!」
 「イオリちゃん……!」
 「な、なんつーか……すげぇケロッとしてんなお前……」
 「うん。なんかね、アルトさんいっぱい白魔法教えてくれた。あと召喚獣戦の白魔法ののうはう教えて貰ってたよ。あとレベル上げるの手伝ってくれたよ。アルトさんめちゃめちゃ強いから一気に58になっちゃった」
 「イオリ姉ちゃんが今1番強い…………」
 「て、ていうか!イオリちゃん何もされなかった!?嫌なこととか気持ち悪いこととか殴りたくなるようなこととか!!されてたら言って!?殺してあげるから!!」
 「ううん。何もされてないよ。リョウランの時空を切り裂く能力がずっと気になっててどうなってるのか知りたかったんだって。でもイマイチよく分かんないって突っ返された」
 「本当になんなのあの人……」→イオリはアルトにお礼を言って次の中ボス1までアルトと出会うことはない。


 「しまった、イオリMP切れたか!?」
 「ごめん〜〜!!もう無理かも……!!」
 「ああああっ、俺イオリちゃん庇うからエイスケちょっと補助魔法頼むわ!!」
 「ああもうっ、イオリ姉ちゃん居なかったらここで絶対逃げてたのに!!俺が時間稼ぐから!!」
 「すまねぇ!!」
 「それには及ばないよ、弟くん」
 「あ!?」
 「全く……あまり僕の監視下以外で暴れないでくれるかな。僕は一応こんなんでも召喚士統率官なんだ。誰だい、これを解き放ったのは……恐らくヴェストの馬鹿だろうが……ま、こんながきんちょ共よりも僕の子と遊んであげてよ。最近戦ってなくてね、暇だったんだ。僕も」→アルトの召喚獣が中ボス倒してくれるよ。強い!かっこいい!でかい!ちなみに、この後アルトがうだうだ言って最終的に仲間になるよ



3ヶ月前 No.308

@akira0908☆G2g5KGLD3yBo ★Tablet=UIgVrM4Ag0

 「大人の理不尽に振り回された人生送って、大人になって、大嫌いな大人みてぇに子供たちを理不尽に振り回しちまうくらいなら、俺はいつまでもガキのままでもいい」

 そう言って火のついた甘い香りを漂わせる煙草を口にくわえたその男の横顔は、子供を望んでいるくせして、ずっとずっと大人びていて綺麗なものだった。
 (―――お前なら、大丈夫だよ)
 子供の事を理解する、お前なら。
 煙草を吸う姿は子供とは程遠い。乾いた笑いを不意にこぼす仕草だって大人よりもずっと大人びていた。今にも消えそうな広い背中だって、ずっとずっと大人びている。
 「お前なら、いつまでもガキ共の味方なかっこいいヒーローみたいな大人になれると思うけどな」
 へらり、と笑いながら男は言うと、煙草を吸っていた男はケラケラと乾いた笑いを零した後に「本当に馬鹿な奴だなぁ、お前は」なんて眉を少し寄せては言葉を零した。
 馬鹿だとは言われ慣れていたが、まさかこんな所で馬鹿と言われるなんて誰が想像しただろう。男はきょとんとしたように煙草の火を消しながら目を閉じて笑う男の姿を見た。
 「大人になっちまったら駄目なんだっつーの。ガキの世界はガキにしか分かんねぇ。ガキの振りしたクソみたいな大人じゃ、ガキ共のヒーローにはなれねぇ。ガキ共のヒーローは、ガキにしかなれねぇんだ」
 目を閉じたまま笑う男は、夕焼けの逆光に当てられて少し悲しそうな笑みを見せた。

 お前は────



 大人になりたがらない誰よりも大人びたその男は、その晩死んだらしい。詳しい話は分からない。話を聞いていた男にもわからない。分かるのは、ただ。



 お前は、やり直したいんだよな。

 やり直さなくてもいいんだ。俺はお前に助けられてるんだから。だから、死ぬなんて馬鹿なことするなよ。

 俺はもう、お前が俺の親父を殺したことなんて、恨んでないんだから。








× 大人になりたくない大人の話。たまにはこういうのも良いかなと。

2ヶ月前 No.309

@akira0908☆G2g5KGLD3yBo ★Tablet=UIgVrM4Ag0



 ローデンブルク、ザクセン=アンハルト州、ザーレ郡。ザーレにはあまり目立ったものはないが、ザクセン州として見れば数多くの観光地が並び極めつけにバウムクーヘンがめちゃめちゃ美味いと言われる州に周りの家に比べて少しだけ大きめのレンガ造りの家が緑に囲まれてひっそりと、それでもどこか堂々と建っていた。
 家の中には輝かしい金髪を揺らす女性と、白髪が本当に少し入った笑うと目尻の弛む優しそうな顔の整えられた金髪の男性、金髪の髪の短い白人の少年が住んでいた。そして、その中に混ざる明るい茶髪に所々混ざる金髪のアジア系統の顔立ちをした少年、針邪馬麻酔がその場に生きている。
 麻酔は日本からドイツ留学に来ており、ホームステイ先のシュメルツァー家にお世話になっていた。シュメルツァー家に住む若々しい女性はドイツ屈指のピアニストらしく、家には立派なグラウンドピアノが置いてある。それも、真っ黒な黒曜石のような美しいものだけではなく、青薔薇の似合いそうな純潔の白のピアノまで。
 麻酔はシュメルツァー家の息子、ルーヘンと共に昼間はドイツの学校に行き、夜は元ピアニストの母に当たるヴェラにピアノを教わっていた。麻酔は昔から医師を目指していた。そのうち麻酔科医を目指すようになり、元々持っていた聡明さで高校一年生にしてドイツへ医学留学をしている。

 「……麻酔?どうしたの?」

 麻酔はピアノの楽譜をじっと見た後にいつもなら喜んで鍵盤を叩く……いや、弾くというのにも関わらず、今日はなかなか鍵盤に手を触れない麻酔の姿にヴェラが麻酔の隣に座りながら不思議そうに尋ねる。
 麻酔は頭の中でヴェラの話すドイツ語を解読しながら理解をすると、次は答えるためにドイツ語を引っ張り出してぎこちないドイツ語で言葉を紡ぐ。

 「ランゲの美しき青きドナウって曲なんだけど……。ドナウ河ってドイツのバイエルン州に流れてる川なんだよね。ルーヘンに近くの観光地とかそういう所は案内してもらったんだけどバイエルン州には行ったことがないと思って。……と、いうか、実際にドナウ河を見てみたい。元々どちらもプロイセン王国だというし、ザクセン州から南西にあるって地図で見た」

 麻酔の子供らしからぬ知識と日本人らしいようならしくないような淡白な答えにヴェラはきょとんとして青色の目を丸くさせたかと思えば、艶のある金髪を靡かせたかと思えばその場から離れてしまった。
 何かしてしまっただろうか、内心ヒヤヒヤしていた麻酔ではあったが、すぐにヴェラは戻ってきたかと思えば車の鍵を取ってきたらしく、車の鍵をチャリ、と鳴らしながら麻酔はキョトンとしたようにヴェラを見た。

 「バイエルンは治安がいいから今からでもいいんだけど……明日は日曜日だし朝行きましょう?それに下手に夜に出てるとちょっと面倒なこともあるからね。ドナウ河を見に行って、午後はバイエルンでコーヒーでも飲んでからゆっくり帰りましょうか。夜はシュヴァイネハクセにしましょう」
 「ありがとう」
 「気にしないで、真面目な子は好きよ」

 シニカルにウィンクをしながら笑うヴェラの姿にほっとしたように少しだけ麻酔が口角を緩める。日本ではなかなか気付いて貰えないのだが、ドイツではこれがまた驚くほど気が付かれる。ヴェラが麻酔の頭を撫でたかと思うと、麻酔は少し照れくさそうに目を逸らして目の前の楽譜とピアノに目を移した。
 麻酔はドイツに来て3ヶ月程になる。3ヶ月で驚異のスピードでドイツ語を覚え、最初こそは挨拶しか出来なかった麻酔も今では片言で少し歪んだ発音であるにしても難なく話せるほどにはなっている。

 「ムッティ!麻酔!ファティがバウムクーヘン作ったって!俺もコーヒー用意したから一緒に食べようよ!あ、ねえねえ麻酔、この前麻酔が言ってたアイスコーヒーなんだけどさ、アイスコーヒーってなんだろうって思ってよく分かんなかったから取り敢えずアイス突っ込んどいた!」
 「ありがとうルーヘン」
 「!?ドイツってアイスコーヒー通じないのか……」

 ドイツに来て3ヶ月もたつが、やはり新しく学ぶことも多い。麻酔が後々に聞いた話だが、ドイツでは、というより冷たいコーヒーは日本発祥の飲み物だそうで、アイスコーヒーと言われると海外の人はアイスを入れるらしい。ちなみにその晩麻酔が口にしたアイスコーヒーはチョコレートアイスだった。
 ルーヘンが手をバタバタとさせながら麻酔とヴェラを呼びに来たので、ヴェラと麻酔はパティシエの父、メーメットの元まで向かう。メーメットはバウムクーヘンを切り分けてお皿に移すと手作りであろうジャムを皿に綺麗に飾り付けて目の前に出した。

 「麻酔、ヴェラ、明日バイエルンにドナウ河を見に行くんだって?送って行くから帰る頃にまた連絡してくれれば迎えに行くよ」
 「そうなの?いいなぁムッティ。俺も麻酔とドナウ河見に行きたい」
 「ありがとうメーメット。お願いしてもいいかしら。あ、それとルーヘン、麻酔と出掛けたいのね?大丈夫、麻酔はまだここに居るんだからそんなに焦らなくていいわよ。それにルーヘンまで居なくなったらファティが一人になっちゃうでしょ」
 「じゃあファティと一緒に送るし迎えに行く!」
 「ルーヘンに朝起きれるかなぁ」
 「へ!?ちょ、麻酔!日本と違ってドイツはそんなに朝早くないんだからしょうがないじゃん!」

 ぷくぅ、と頬をふくらませながらバウムクーヘンを頬張るルーヘンの姿に思わず麻酔は口元に手を当ててはくすくすと微笑を零す。日本では気付いてもらえない微笑も、ここにいると逐一拾われてしまうことに少しの恐ろしさも覚えていたのはここだけの秘密でとある。
 麻酔の微笑にルーヘンが「あぁっ!」なんて言って尚更顔をふくれっ面にさせると、メーメットとヴェラは顔を見合わせてしょうがない、とでも言いたげに苦笑を零した。
 (明日……楽しみ、だな)
 麻酔もメーメットの作ったバウムクーヘンを頬張りながらそんな事をぼんやりと考えてから、3ヶ月経っても未だに慣れていないベンツに乗る準備を既にし始めることにしておいた。










× 麻酔くんの留学先でのお話。ドイツ好きじゃ〜〜!!私はローデンブルクも勿論だけどドレスデンに行きたいんじゃ〜〜!!

× じいちゃんの家に行く話も書きたいなぁ。これ書き終わった時にスイスドイツ語圏だわって思い出してカタコトのドイツ語ダメじゃんって思ったからじいちゃんヨーロッパのフランスだかイタリアの人にしておこう。



2ヶ月前 No.310

@akira0908☆G2g5KGLD3yBo ★Tablet=UIgVrM4Ag0



 「……ちは」
 「よ、こんちは。楔くん」

 伊織と英介が学校を休んだ。楔は御見舞ついでにプリントを届けに伊織の家に来たところ、家から出てきたばかりの様子の伊織の部活の先輩である如一の姿を見る。
 楔は正直な話をすると、如一があまり得意ではなかった。理由は様々だ。自分よりモテるのもあるし、伊織に疎まれていることも理由の一つだし、如一の部下が伊織を殺そうとした事件や伊織の母を殺しているわけでもあって、いくら部下と言えどお前の監視が悪いとも思っていて、どうしても如一だけは得意にはなれなかった。
 勿論、人並みの会話はするし、普通に話もできるが……楔としてはこの人との会話だけはなるべく遠ざけたいものでもあった。厄介なことにこの人間、人徳というのが普通に生きていたら得られないレベルにある。学校外でも勿論だが、学校内での人徳だってすごい。
 男子軍には「女の子ホイホイ」と呼ばれては様々なところに連れ出されているらしいし、女子軍には男顔負けのイケメンっぷりに惚れては玉砕している子も多いそうだ。元々イタリアの方に家がどうのこうのあるそうで海外の友人も普通にいるようなとんでもない人間でもある。
 自分と住む世界が元から違う人間と関わりたいとは思わないし、所謂日本の裏社会、汚職のトップの偉い人の家だとかいう噂を小耳に挟んだこともあり、楔からすれば生きてる内に出会いたくない人種の三本指に入ってしまっていることもあり尚更如一への印象というのはそこまで良いものではなかった。
 英介や奏、伊織や千里は普通に親しくしているが、やはり楔は仲良くしようとも仲良くなろうとも思えない。もっと言ってしまうならば、友人の口から出てくる「冬木が」「冬木先輩が」「如一が」の言葉だけで充分お腹いっぱいだ。

 「伊織のお見舞い?今病院行ってるっぽくて誰も家居ないんだよな。俺と外で待たねぇ?」
 「………………は?」

 最悪のお誘いに頭が真っ白になる、という言葉の正式な使い方に今更ながらに楔は分かってしまった。嫌いな人ならばどれだけ良かったことか、苦手な相手となるとまたタチの悪い。
 嫌いな相手だとすればなんの遠慮もなく「馬鹿雑魚阿呆死ねカス殺すぞふぁっきゅー」くらい余裕で言えたのだが、苦手な相手となるとそうもいかない。どちらかと言うと会話もあまり交わしたくないくらいだ。こういう時ばかりは英介の存在が心強く感じるが、あの男はこういう時に限って毎回居ない。楔からすれば羨まけしからん事に同じタイミングで休んでいる。
 楔からすれば学校なんてものは伊織に出会うための手段であり、その肝心な学校に伊織が居ないのであれば残る理由も居る理由も無い。学校なんてものは伊織との会話の接点の場所であって、英介だとかいう馬鹿男の相手をする訳でもなく千里とかいう面倒な女の相手をする訳でもなく奏とか言う顔を見るだけで無性に殺したくなる男の顔を見に行く訳では無い。
 伊織という名の(楔曰く)天使に会いに行っているようなもので、こうして伊織を疎ましがっている伊織の苦手な先輩に伊織の代わりに会いに行くわけでもない。いくら楔でも伊織のためとはいえ出来ることと出来ないことくらい…………無い。
 そう、縁楔という男は伊織のためならなんでも出来てしまうのだ。伊織の頼みであれば人を殺すのだって命を投げ捨てることだって躊躇わない。命よりも大事な伊織なのだ、自分の苦手とする人との交流なんてものは伊織に嫌われて無視されることよりもずっと楽だ。
 そう思うと案外如一との空気が苦じゃなくなるというのもストーカー男の本領発揮といったところだろうか。

 「楔くん部活はどうしたん?」
 「……冬木………………センパイ、こそ」

 冬木、と呼び捨てにしようかと1度止まったが、流石に後が怖かったので嫌々先輩を付けながら顔を顰めて尋ね返すと、如一は楔の露骨な態度にひとしきりゲラゲラと笑った後に「サボり〜」なんて何事もないように寧ろ堂々としているようにすら思えるほどはっきりと笑う。
 ただ、如一の背中には薙刀が背負われている様子からするに、やはり元々ちゃんと行こうとはしていたのだろう。それを考えるとサボりの原因は伊織だろう。そして楔も弓道の弓を今背中に背負っている。つまり、皮肉なことに苦手な人と同じことに、楔は伊織が原因で部活をサボっている。
 楔は弓道が好きで弓道部に入ったわけでもなく、「え!楔も武道やるの?かっこいい〜!僕弓道苦手だから教えて欲しいな!」と伊織に言われるのが目的であるくらいにはこの男も馬鹿である。恋は盲目とは言ったもんだが、この男に関してはその言葉を限度を越している。

 「冬木先輩は何故伊織ちゃんの家に?学年違いますよね?」
 「あ?何休んでんだ馬鹿って文句付けに来ただけだわ」
 「……あの、あんまり伊織ちゃんに負荷かけないでくれません……?文句なら俺伝えときますし……」
 「ダメダメ、武道で勝てねぇならこういう所でちゃァんと勝っとかねぇと俺のプライドっつーもんが許さねぇ。俺ァ負けず嫌いなんだ。そんでもって、ねちねちしてしつこい。俺に敵対するやつには全力で嫌がらせする。それが俺のやり方だし、今までとやることは変わらねぇ。誰だからって贔屓することもねぇ。……それに、アイツには初めて負けたんだ。ぜってぇ潰さねぇと気がすまねぇ」
 「…………意外とちゃんとしてる方なんですね」
 「は!?潰すぞガキ!!」
 「1個しか違いませんから。それに俺もう誕生日迎えたんであなたと同い年ですけど」

 プライド人間めんどくさっ!なんて心の中で悪態をつきながらも、如一の言っていた『アイツには初めて負けたんだ。』の言葉に楔は少し嬉しくなった。
 自分のことのように嬉しかった。伊織が認められることが、楔にとっては嬉しいのだ。もちろん男に認められるのは嬉しくもなんともないしむしろ死ねと思うくらいだが、周りが畏怖するような存在にここまで言わせるようなことが出来る伊織は素直にすごいと思った。
 伊織ちゃんを好きになることが出来てよかった、ぼんやりとした頭でそんな事を思っていると、マスク姿の伊織が驚いたように楔と如一を見て、後ろから歩いてきた伊織の父である射水さんも驚いたように2人を見た後に、ごめんね、と苦笑をこぼした後に如一と楔を家に招き入れた。

 『誰だからって贔屓することもねぇ。』

 ────嘘はよくないっすよ、冬木センパイ。











× 珍しい組み合わせ書きたかった

× 眠い

2ヶ月前 No.311

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うちの子で医者パロやりてぇ!!

 「あはは、君の場合は頭の神経が悪いんじゃなくて、頭そのものが悪いんじゃないかな?帰ってくれる?」

 楔/脳神経外科医……医者一愛妻家の先生。女性人気ナンバーツー。男性人気はワーストに近い。毒舌も寧ろご愛嬌。頭の悪いギャルが「頭悪いんですぅ〜」って来る時が多いけどその度に「馬鹿に渡す薬はない」で一蹴。小児科医の伊織と結婚してる。


 「あ?こんなもんちょっと骨戻せば治るだろ。ちっと待ってろ、いてぇから気絶するかもしんねえから」

 如一/外科医……医者一イケメンの先生。老若男女問わず人気ナンバーワン。めちゃめちゃイケメンでノリが良いけど治療の仕方がたまにとんでもなく荒業。「骨戻してやる」とか言いながら思い切り骨戻されて気絶する人が多い。ただし手術のスピードが早い。リハビリが厳しい。


 「全く……。あまり僕の手を煩わせないでくれるかい。まあいい、これでも僕は医者だ。話を聞こう」

 亜留斗/内科医……医者一安心度の高い先生。女性人気ナンバーワンで、高齢者人気も安心のナンバーワン。これがまたイケメンで手術の技量が病院内トップ。スピードも手際もよく失敗も全くしないのでたまに「外科医の先生怖い」という理由で外科にも行ったりする。


 「うんうん、よく我慢できたね、えらいえらい!大丈夫、君はかっこいいお兄さんになれるよ!」

 伊織/小児科医……医者一優しい先生。子供人気ナンバーワンで男性人気もナンバーワン。小児科に来る人は多くが子連れのパパさん。何から何まで優しくて安心安全の信頼感。ただし怒るとめちゃめちゃ怖い先生。脳神経外科医の楔と結婚してる。


 「大丈夫です、すぐに終わらせますから。だから少し、眠っていてください。痛いのは少しだけ」

 麻酔/麻酔科医……医者一仏頂面の先生。老若男女問わず人気ナンバーツーで仏頂面だけどめちゃめちゃ面倒見が良いで有名。麻酔科医としての技量がとんでもない。たまに亜留斗の手伝いしたりもする。めちゃめちゃ可愛い彼女さんがいるらしい。


 「ん?オレサマちゃん?別になんとも思ってないけど。むしろこんな近くで人の血液見れるんだぜ?オレサマちゃんたのち〜!」

 千薬/血液内科医……医者一頭がおかしい先生。老若男女問わず人気ワーストナンバーワン。頭おかしすぎてめちゃめちゃ怖い。出来ることなら血液内科医にはお世話になりたくないと言われるレベル。でも1番復活率の高い科でもある。ただしその後多くの人は精神科に患う。


 「ふむふむ、なるほど。××ちゃんはこれからこうしたいんだよね、分かるよ。私も力にならせて!」

 安心院/精神科医……医者一エスパー説のある先生。老若男女問わず不思議な人ナンバーワン。なんでもかんでも言いたいことを先読みしてくるのが怖すぎる。ただし話してる時に一番安心する先生でもある。実はとんでもないサイコパス説。


2ヶ月前 No.312

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 生きてって言われたいけど死にたい伊織と死ねって言われたいけど生きたい千里の話。伊織が病んでる。



 「じゃあ……じゃあ、誰に必要なの?!伊織のことも、街のみんなのことも、お母さんもお父さんも守れなかったんだぞ?!そんなやつが必要とされるわけねぇじゃん!惨めになるから、必要とされてる、なんて嘘言わないでよ……」
 「……千里さぁ、奏ちゃん困らせるのはそこまでにすれば?」

 千里の叫び声のような切羽詰まった言葉にどこから出てきたのかいきなり千里と奏の間に割って入った伊織がどっかりと開いた席に座って千里を無理矢理近くの席に座らせた。
 伊織のにこにことした笑顔はいつもの通りだったが、それが逆に恐ろしさに近い何かを纏っていた。人離れした見た目は、どこか千里の母を彷彿とさせる。

 「僕はね、千里。誰も守って欲しいなんて言ってないよ。それに、守ってもらうならあんたじゃなくて楔とか英介の方が良かったしさ〜。あ、それに!あんたのおかげで姉さんが死んで本当によかった〜って思ってるから感謝もしてる。あのさ、自分の生きる必要性の有無を決めるって、自分勝手もいいところだよね。……あ、分かった!千里は悲劇のヒロインで居たいんだよね!女の子だもんね、そりゃヒロインになりたいよね〜。可愛い可愛いみんなの可哀想な千里ちゃんで居たいよね〜!昔愛されてた人は違うな〜。僕みたいな昔本当に拒絶されてた人とは違って恵まれてるもんね〜。あ〜恨めしい恨めしい。姉さんも義兄さんもその間に生まれたあんたも日向さんも、恨めしくって仕方無いなあ〜。そんなに死にたいなら今すぐにでも死んでほしいくらいだよ!イライラするから!あ、死ねないなら手伝ってあげようか!僕ってば優しい〜!!」

 にこにこと伊織は笑っているものの、伊織は右手で首をガリガリと乱暴にかきながらそんな事を言う。伊織の異常性にゾッとしたのも事実だが、千里が何よりも怯んだのは、伊織の掻き毟る首から血が溢れ出ているのにも関わらず、伊織の首をかく手は止まらない上に指先が首から出てきた血で真っ赤になっている。
 それでも痛い素振りひとつ見せずむしろにこにことした様子の伊織の様子に思わず奏が手を伸ばして伊織の手首を掴むと、不思議そうに「?」と首を傾げたかと思えばすぐに自らの右手を見て、「あっちゃ〜」といかにも慣れたような声を漏らす。

 「どう、したの……?」

 奏が伊織の手首をがっちりと掴んで尋ねると、伊織は少しだけ考えた後に左手を器用に使って鞄から大きめの絆創膏を取り出すと、奏から右手を振りほどき首元に絆創膏を貼った後に笑った。

 「うん、なんかね。僕昔から首掻き毟っちゃう癖あってね。楔と英介といる時はすんごい怒られるからやんないんだけど……なんでかな〜。これバレたら明日怒られちゃうから楔と英介には言わないでね。なんかね〜、僕昔何回も死にかけたせいで、常に痛いのが何か無いと逆にダメになっちゃったみたい。生きてって言ってくれる人がいるから生きるけど、死ぬ時はきっとすごく痛いんだろうね。……やっと痛みを感じなくてもいい、って、思えるんだろうね」

 恍惚とした表情でそんな事をいう伊織の姿に、思わず千里は咄嗟に首元を抑えてしまった。自分がなにかしたわけでもないのに、心のどこかで、伊織を見て思ってしまったのだ。
 (死にたくない)





2ヶ月前 No.313

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伊織/実はお姉ちゃん大っ嫌い子。自分が虐待されてたのを知ってるはずなのにそれを見て見ぬ振りした姉が嫌いでたまらない。事故死した時は正直「ざまあ味噌カツ定食」って思ってた。お葬式は来いとは言われてたけど元家族に顔を合わせたくなかったのと姉の為なんかに足を運ぶのと姉の娘と顔を合わせたくなかったのが重なってボイコットした。多分伊織呪われる()

 如一/アジアは敵対勢力なお馬鹿さん。汚職と言えばで本拠地はイタリア。おっとイタリアンマフィアとかそんなんじゃ全然()。曾爺様の代から日本に勢力を拡大してものっそいスピードで今に至る。ヨーロッパや北欧と手を組んでいてかなり昔の話になるがバイキングに手を貸してたとか貸してないとか噂が(肥大化していってるだけでノルウェーのバイキングとは全然関わりはなかった。どっちかと言えばイギリスのパイレーツの方が……)。本拠地はイタリアで、勿論一番強いのはイタリアンマフィアだが冬木家の血縁として成り立っている所謂そういうお仕事の拠点はイタリア以外に日本、アメリカ、ロシア、スウェーデン、ブエノスアイレスにある。ちなみに如一の全然知らない人もいっぱいいる。スウェーデンの人とか誰だそれ。

2ヶ月前 No.314

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普通の如一「俺様誰様冬木様!!いいぜお前ら!!俺様の手下にしてやらねぇこともねぇ!!俺はイキがイイヤツが好きなんだ!せいぜいちっちぇ事にくたばんじゃねえぞガキンチョ共!!跪け!!許す!!……あ?横暴、だァ?ははは、笑わせてくれるぜアマちゃんよォ。俺みたいな世界のハズレものっちゅーのは、横暴でこそ、だ。俺の横暴は俺のため。そんで、俺の大嫌いなお家のためっつー事だ。親父は嫌いだが、爺さんは好きだし、わざわざイタリアから日本に出てきた曾爺さんの苦労を潰すようなことはしねぇ。親が嫌いなだけであって血の呪いそのものにはなんとも思ってねぇ。まあつまり、親と切り離して考えんなら、俺はこの家に誇りを持ってる。んで、俺は周りの人間にいくら蔑まれようと、俺は俺が好きだし、俺はこの家が好きだ。……文句あっか。馬鹿」

アルバの如一「……あ?俺に何か用かよ。……ああ、そうかいそうかい、そんなくだらねぇ事で俺とお話しようなんざ100年早ぇ。いんや、1000年でもお前は俺には追いつけねぇんじゃねえかな?ははは、俺と話してぇってんならそのくっだんねぇ技術磨きあげるかその両腕吹っ飛んでも尚功績を残すほどの根性と意地汚い生命力を見せつけてからにするんだな。俺はお前なんか知らないし、俺はお前なんかと話したいとも思ってねぇ。まあつまりなんだ、邪魔なんだよ、ザコ」

2ヶ月前 No.315

@akira0908☆G2g5KGLD3yBo ★Tablet=UIgVrM4Ag0

・唐突に降る夏の雨
・蒸した空の匂い
・蒸発した大きな水たまり
・叫び声も小さくなる雷
・水がはねる深いツンとする水の匂い
・水たまりに映る雲の隙間の青空
・誰かの頭にあたる何かが綴られた紙飛行機
・そんなに取り繕うのは楽しい?
・「離れないで」「離れないよ」「離れちゃ嫌」「待っていて」
・黒い雲の奥に見える炎みたいな紅の色
・眠りから覚めた朝は、酷く唯物的だった
・命はきっと僕を嫌っているんだろうけど
・「まま居なくなっちゃった」
・不登校予備軍くらいで、俺は不登校って訳ではなかった。問題児扱いは多分されてたと思うよ。
・「もしもまた10年やり直せるって言ったら、どうします?」
・「皮肉な事もあるよな。あれだけは違うって信じてたものが本当は正解だったりする。世界ってのは理不尽で不条理で、つまらないもんなんだよ」
・好きなバンドのCDの8曲目が流れたその時、目の前が真っ暗になったかと思えば、隣で俺が死んでた。じゃあ、俺は誰だ?
・「貴方は馬鹿です。本当に馬鹿です。どうしようもなく救いようの無いほどのお馬鹿さんです。ただ、そんな貴方を信じた私も、そんな貴方を頼った私も、いえ、私の方がずっと、貴方よりも馬鹿です」

2ヶ月前 No.316

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 「────……まま?」

 目の大きな痩せ細ったあどけない様子の小さな年端も行かないような女の子は、そう言って私を指さしたのでした。


 ―――大学進学が決まった春、両親の反対をなんとか押し切って一人暮らしをさせてもらえることになり、実家から少し離れたところでとても綺麗とは言い難いですが、人1人が住むには充分なほどのアパートを借りる事になりました。
 住人の方は私のような若い大学生の方が多いらしいそうで、一番端の205号室が空いているとの事で205号室に入らせていただくことになりました。204号室は母子家庭のお母さんが住んでいらっしゃるようで、夜中がうるさいとの苦情が多かったこともあり205号室は比較的安めに取引してくださいました。
 203号室の方は近くの国立大学の方らしいのですが、どうやら寮生活に入ったようで寧ろこちらに帰ってくることも少ないと大家さんは仰っていました。同じ大学の方も数名いるということもあり、私は初めての一人暮らしにそこまでの不安は無かったのです。
 同じアパートに住んでいるということもあり、すぐに仲良くなりましたし、学部こそは違うものの、何度か出掛けたりするような事もありましたし、お家に誘われることもよくあった事ですから、1人や孤独という感情は抱くことはありませんでした。

 しかし、暫く経っても噂の隣の家からの騒ぎ声というのは聞こえず、夜中がうるさいと言われていたのも覚悟はしていたのですが、それはそれはもう、気にする暇もないほどにゆっくりする事が出来ました。もしかしたら前の人が神経質だったのかもしれない、そう思うのが自然でした。
 1週間が過ぎた頃でしょうか、大学から出された課題を早めに片付けるために取り掛かっていたところ、隣の家から玄関の扉の閉まる音がしました。
 こんな時間に?
 ふと時計に目線を投げると、時計は夜中の2時をさしていました。子供がいらっしゃる母子家庭ですし、やはり昼間は子供の面倒を見ているのでしょう。子供が眠っている夜中に仕事に出て資金稼ぎをする。多いとは言えないにしろ、そういう家庭がある事は私も分かっていた方ではありましたので、特にそれを深く思うことはありませんでしたし、寧ろこんな時間までお疲れ様です、なんて思いました。
 この時、違和感を違和感のままにしてしまったのが私の失敗だったのかもしれません。いや、或いは、一つの成功だったのかもしれませんね。


 ある日、夕食の準備をしようとしたところ冷蔵庫の中が空っぽなことに私は気が付き、夕食の買い物に行こうと家を出た時に、丁度隣の家の扉が開こうとしていたのを見て、やはり隣の方がいらっしゃるというのは分かりました。
 しかしなかなか開かない扉に不思議から私が首をかしげていると、「うわぁ!」という大きな甲高い声と共に勢いよく飛び出てきた小さな桃色のフリルのワンピースを着用した少しぼさついた長い黒髪の女の子の姿を私の瞳の中に捉えると、女の子もどうやら私の姿をまんまるな大きな瞳に捉えたようで。

 「────……まま?」

 女の子は、そう言いました。



 「ままだ!」

 女の子が輝くような笑顔で私の足にすがり付くように抱きついてきました。私は驚きのあまりどうすれば良いかわからず、1度女の子の手を私の足からゆっくりと離した後に女の子の目線に合わせてしゃがみ込みます。
 女の子は、これでもかというほど痩せ細っていて、桃色のフリルの可愛らしいワンピースの胸元に見える鎖骨は子供らしからぬ骨が浮き出ていて、輝くような笑顔を見せる女の子の姿は透けてしまっているような、そんな覚束無い状態でした。
 「私は、ママじゃないよ……?」
 女の子の肩に触れて、私が女の子のままでは無いという事を女の子に伝えると、女の子は首を横にふるふると振っては、「ううん、まま」と言いました。
 私もどうすれば良いかわからず、お隣さんの家に勝手に上がるわけにもいかない、隣から物音がしたらきっとこの子の本当のママが帰ってきた時だろうから、その時に隣の家に帰してあげよう。
 そう考え、私は女の子を家の中に連れていくことにしました。人の家に勝手にあがるよりは、ずっと良かったですから。

 まだ扉を開けてすぐの事だったので、女の子もすんなり私の家に入ってくれました。1人では少し広すぎるかなと思っていた手前、このような形で少しだけ部屋が埋まるということは、不謹慎にも実は少し嬉しいと思ってしまっていました。
 この子が痩せ細っているのはきっとお母さんがお忙しいからなんだ。ならば私がお母さんの手をあまり煩わせないようにお手伝いする事が出来るんじゃないだろうか、そう思い、私は女の子のお世話なるものをしてみようと思います。お母さんには、早いうちにその旨を伝えておきたいものです。
 「お名前は?」
 私が女の子に聞くと、女の子は不思議そうに首をかしげます。傾げた首も細く、頭の重みで今にも首の骨が折れてしまうのではないかと見ているだけで怖くなってしまうものがありました。
 女の子の丸く大きな瞳は、じっと私を見つめた後に、柔らかそうな桃色の唇を動かしました。

 「ままが、わたしのなまえをつけてくれるんでしょ?」

 これは。予想外も良いところです。もしかしたらこの子のお母さんは昼間もお仕事をしているのかもしれない、先日聞こえた夜中の扉の開閉音はもしかしたらお母さんが昼間の仕事からご帰宅した合図だったのかもしれません。
 ただ、この子の純真無垢な瞳を無下にするわけにも行かず、本当はこの子のお母さんにお名前を聞いておきたいところではあったのですが、お家にはお母さんはいらっしゃらないようだったので、私の家にいる間だけという事で名前をつけてあげることにしました。
 ……といっても、実のところ、私は誰かの名前をつけるなんてことはしたことがありません。九星気学を学んでいた母に昔言われたお花の名前と月の漢字や濁点がつくもの、三水や水に関する名前をつけてはいけないよ、と言われていたことも思い出しながら、女の子の名前を反応してくれるかどうかはともかく、呼んでみることにしてみました。
 「シホ、ちゃん」
 私がそれとなく口に出すと、女の子は嬉しそうに満面の笑みを見せて、私に続いて拙い言葉で「シホ」と繰り返しました。珍しい名前ではないにしても、やはり私のネーミングセンスの無さというのはこういう形で露呈してしまいます。
 とはいえ、この子が「シホ」になっているのは私の家にいる間だけのお話ですし、「シホ」のお母さんが帰ってくれば、この子は「シホ」ではない普通の子になるのですから。まだ娘なんてものを持つには随分と早い年ではありましたが、やはりご近所さんの事を助けたいという私の余計な善意は自分でも呆れてしまうほどに強いものだったようです。
 「シホちゃん、お留守番できる?」
 シホちゃんに尋ねると、シホちゃんは少しだけ寂しそうに目を伏せたものの、すぐに自信満々の顔でこくこく、と強く頷きました。家を開けてしまうことに申し訳なさもありましたが、空っぽの冷蔵庫ではシホちゃんのご飯を作ってあげられることもままならない。
 それなら、さっさとお買い物に行ってしまった方が良いだろうと思ったこともあり、シホちゃんの事を家にひとりで残すことは不安ではありましたが、外で一緒にお買い物に行ったとして、シホちゃんに荷物をもってもらうわけにも行きません。

 「いってらっしゃい、まま」

 小さな手をいっぱいに開いて懸命に振るうシホちゃんを見て、早くこの女の子のために、この女の子のお母さんのために私に出来ることをしようと強く決意しました。
 少しだけ、お店に向かう足取りを早くして進みました。
 「まま」と言われるのは、当然ではありますが未だに慣れないものですが。


2ヶ月前 No.317

@akira0908☆G2g5KGLD3yBo ★Tablet=UIgVrM4Ag0



 午後7時、夏でも日が暮れ始めた頃、ずっと被っていた布団からもそもそと出てきて、締め切ったカーテンを開ける。空のずっと奥はまだ幻想的な紅が残っていて、それを目を細めて見送った後に中学時代に着用していた体育着、上には体育着の大きめに書かれた名前を隠すために中学時代に着ていたジャージを羽織って、チャックを一番上まで締める。
 そして机の上に乱暴に置かれたキャップのついた群青色の帽子を深く被る。人よりも小さめの頭は一番きつくなるよう調整しても少し緩いが、前が見えても見えなくてもやることは変わらない。どちらでもいい。
 屈伸と足を伸ばしたり軽い準備運動を済ませた後に、スポーツメーカーの踝くらいの靴下を履いて、下駄箱から家族の靴を避けて自分のランニングシューズを取り出して靴紐を解いてから靴に足を入れ、紐をしっかりと結んで玄関の鍵を開けて家を出る。
 マンションのエレベーターは使わず、階段を使って5階から1階まで歩きながら確実に一歩づつ進んでいく。
 マンションのフロントにある自動ドアが開き、外に出ると周りをキョロキョロと見渡して誰もいない事を確認する。誰もいない事を見ると、カーテンを開けた頃に比べて暗くなった空に目を細める。
 遠くに見える紅の色が消えるのを見届けて、走り出す。


 「あれ?たぁくんは?」
 「さぁね〜。まだ引きこもってんじゃな〜いの〜、あ〜のバカ兄貴め〜」
 「えぇ〜!?今日折角パパとママが居ないんだからって思ってめーちゃんと一緒にたぁにぃの好きなご飯いっぱい作ったのに!」
 「母さんと父さんが居ない時くらい部屋から出てきても良いと思うのにね。まぁ、兄さんも色々思うことがあるんでしょ。それに……」
 「はい、レイくんそこまで!」
 「何よ、ルイ」
 「にぃくん、自分のいないところで自分の話されるの嫌いでしょ。それに、にぃくんの妹のボク達も自分のいないところで自分の話されるの嫌なんだからやめようよ」
 「ルイちゃんってたまぁにいい事言うよねぇ」
 「なんだとぉ!?ボクはいつもいい事しか言いません!」
 「……ご飯近いんだからルイもレイも手伝って。ほら、かおるも制服汚れるんだから」
 「あーい!ってボク達何すんの?レイくん」
 「そんなことも分からないのね、お馬鹿なルイ」
 「めーちゃ〜ん、引っ張って〜」
 「馬鹿言わないで。自分で立ちなさい」
 午後7時、日が暮れ始めた頃、様々な洋服に身を纏った計7名は暖かな料理の匂いがするリビングに集まっていた。
 キッチンに立つ白色のワイシャツと黒色のレザースカートの上から水色のエプロンをしながらもくもくと料理をしながら味見をする長女、長女と共にキッチンに立って洗い物をするシックな服の次女、リビングの大きなテーブルに両の手をべったりと付けながらぐだぐだするセーラー服の三女、茶碗や箸の用意をしながらぶすくれた様子のブレザー姿の四女、軽い口喧嘩をしながら瓜二つのネイビーブルーのマリンセーラーの五女と六女、失礼なことをポロッと零すスプレイグリーンの七分袖のシャツにクリーム色のプリーツスカートの七女がリビングには集まっていた。
 少子高齢社会が進む世界で随分とお疲れ様なことだと言いたくなるものがいくつかあるが、この家に両親が揃う日というのは殆ど無い。
 両親共にいい所の企業で働いているそうで、普段から忙しく出張三昧、夫婦揃って同じところに出張することも多いらしく、この日が丁度夫婦揃っての同じところへの出張だったそうで、1週間は帰ってこないということもあり、家では7姉妹がこうして家事を執り行っていた。
 7姉妹のうち三女から下には1人の兄がいる。女兄妹ということもあり兄は肩身が狭い思いをしているのか基本的に部屋に篭っている。とはいえ、やはり面倒見の良い兄だということに変わりはないもので、なんだかんだと面倒は見てくれている。
 しかし、その兄はある日を境に部屋に引きこもってからはずっと出てこない。姉妹のうちの1人が1日に1度会えたら良いくらいで、部屋から出てくるのはお風呂とトイレ、喉が乾いた時のみで、夕食といったご飯の時間にリビングに姿を現すことは無い。
 いい所の企業で働いている両親のおかげで7姉妹に2人で一つ、長女のみ別室で、長男の部屋が与えられるほどの余裕のある生活空間ではあるが、それゆえに兄と妹達の間ですきま風が吹いてしまっているのは致し方ないことと言えど寂しいことではある。
 さすが超高級マンションと言うべきか、仮に父と母の別室を作ったとしても少し部屋に余りが出てきて物置部屋になるような隙間もできている。
 「めーちゃん、お箸これだっけ?」
 「それは……」
 「あ〜、ゆっちゃ〜ん、それね〜アタシの〜」
 「かおるとめーちゃんのお箸似ててややこしい」
 「ルイとレイもね。あ、あとルイとレイのに似てるのはしぃちゃんも!」
 「あれ?これりんの?」
 「そうだよぅ。あ。ルイねーね、それたぁにーにの新しいお箸だよ」
 「えぇ!?レイくんが出したんだよこれ」
 「馬鹿素直に持っていったのはルイじゃない」
 夕食前も騒がしいこの家の7姉妹。それが本当に仲の良さを意味しているのかどうかは分かりかねるが、この騒がしいは悪い意味ではない。
 家賃も高いだけあって防音完備ということもあり、夜中でもこうして騒げるのはやはり恵まれているからだろう。7姉妹は、今、兄が家の中に居ないことを知らない。7姉妹は今、兄が夜の闇の中に溶けていることを知らない。
 タッタッタ、と。軽快な音を立てて特定のリズムで足を動かして一駅走る兄の姿を知らない。
 走る兄の姿は知っている姉妹は、今も尚、走り続けている兄の姿は、誰も知らない。気がついたら部屋に引きこもっていて、ふとした時に顔を合わせる。顔を合わせた時に少しだけ話して、兄は逃げるように部屋に帰る。そんな姿しか、今は知らない。
 そして兄の方もまた、それで良いと思っている。自分のせいで妹たちは今のこの生活になってしまっているのだし、当の兄本人は今の生活に実のところそこまで困ってはいない。
 紅の色が消えた頃、7姉妹が手を合わせて食事開始の合図をする。紅の色が消えた頃、兄が人目を気にして走り出した頃に。
 「たぁくんとご飯食べたかったなぁ」
 「ゆう、ご飯中に喋らないの」
 「かったいなぁ〜めーちゃんは〜。あたしも〜しぃちゃんも〜兄貴とご飯食べたかったし〜」
 「!?かおるってもしかしてエスパー!?」
 「そんなの、かおる姉さんとしおり姉さんだけじゃないよ。私もルイもきっと2人と同じだよ」
 「りんこくんも、ね!ボクにぃくんが走ってる姿大好きだったなぁ〜。また走ってほしい」
 「りんこはあんまりにーにが走ってたの見たことないからりんこも見たいなぁ」
 「走ってる時の兄貴はかっこいいぞ〜!」

2ヶ月前 No.318

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 学校の保健室の奥の部屋には似つかわしくないほど立派で大きな木製の扉がある。彫刻も人の手で出来るとは到底思えないような精密さや細さで、見る人をみな魅了してしまうほどの大きな木製の扉だった。
 生徒達はその扉の存在を知らない。保健室の奥に行くことなんて今まで無かったのだから。それに、先生がいない時は保健室の鍵がかかっている。先生が居ない時に保健室に勝手に入るような悪い輩は進学校であるこの学校ではまず居ない。

 保健室の奥の扉を開くと、そこにもこれでもかと言うほど精密で引き込まれてしまいそうな程に丁寧な彫刻のされた柔らかな木の匂いのする部屋がそこにはある。聖堂の中のようになっているその部屋は、光の加減によってまるで色とりどりの食彩が彩れているようにすら見える。
 電気が消えている時にはただの木の彫刻にしか見えないものの、電気一つで食材のようにも見えてしまうという電気の不思議。
 そんな広い部屋がずっと続いているかと思えば、広い部屋のずっとずっと奥に、それはもう立派なパイプオルガンがそこには鎮座している。ずっと使われていないようなのに、埃一つ被っていないパイプオルガン。
 部屋に足を踏み入れれば絨毯の柔らかな足音がその部屋に反響する。大きなパイプオルガンの鍵盤にそっと撫でるように指を置くと、それこそまさに大聖堂のような神々しい音色がその場には響き渡る。


夢で見た場所をちょっとまとめた。

2ヶ月前 No.319

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 「僕は二週間後に死ぬよ」
 「……はい?」
 「二週間後に死ぬ。自殺するって決めてるんだ」
 「なんで……」
 「自殺することに理由なんていらないでしょ?」


 “自殺することに理由なんていらないでしょ”
 彼はそう言って、二週間後に電車の路線に飛び出したみたい。だけど、私の心の中は不思議とすっきりしてた。

 なんでかな。彼のことが好きだったはずなのに。
 ……好き、だったのかな?分かんないけど。だけど、死んでよかったってどこかで思った。なんでかな。彼のことが好きだったはずなのに。

 君はどういうつもりで、二週間後に自殺するって決めたの?
 こう言ってはなんだけど、君の生活に死ぬような理由も死ぬような原因もなかったように見えるけど、君は何が嫌で自殺したの?

 まあ、もう聞けないんだけど。





2ヶ月前 No.320

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 伊織がグレた。

 ……いや、グレたっていうより、素に戻ったって言い方の方が正しいのかもしれない。
 伊織は昔の家庭環境もあって、本当にいい奴だし素直で純粋な奴だったけど、それは異質なほどのものでどうも人間味に欠けていた。中二の頃だって、それこそ迷宮入り間違い無しの完全犯罪が起こせるんじゃないかってくらいに顔の使い分けができていたし、正直、伊織が「巴」だった、なんて話は……未だに信じられない。
 一番近くで伊織を見てきた方ではあったが、それでも伊織に対しては知らないことがいっぱいで、どれが本当の伊織なのかすら分からなかった。
 一番伊織との付き合いも長い。ただ、ずっと小さい頃から伊織は今と変わらない。何かに怯えるように、人の逆鱗に触れないように愛想を振りまいて、人の嫌なところに触れないように、自分の嫌なところを触れられないように、引き際を分かって人との関わりを持っていた。
 それ故か、人間関係にも固執しない。固執しているのが俺の方だって事もわかってる。ただ、この前、伊織が初めて何かに固執しているのを見た。いや、何かという言い方は正しくない。
 人間に固執している伊織を、初めて見た。

 『……ほんっと、ムカつかせてくれるなぁ、お前はよぉ』
 『わぁ、伊織ちゃんこわ〜い』
 『殺すぞボケ!!』
 『どうぞ?』
 『っ…………!!オメェのそういう所、ほんっと嫌いだわ!!』

 夢でも見てるんじゃないかって思ったよ。あんな口の悪い伊織を見たことが無かった。ただ、分かったことが一つあるんだ。
 血は争えねぇなぁって。






× ギャグなのかほのぼのなのかよく分からない



2ヶ月前 No.321

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 ―――この学校には、一つだけ誰にも知られていない部活がある。
 その名も、「腐女子部」。名前こそは知れ渡っているものの、誰が部員なのか、誰が顧問なのか、どこが部室なのか、それすらも分かっていない。
 今にも廃部しそうな「腐女子部」ではあるが、実はこれ、設立されて7年目だそうだ。7年間ずっと、周りに露呈されることなくこの部活は細々と活動をしていたという。

 この学校は元々女子高で、共学校になったのは昨年の事。それ故に未だに女子比率の方が高いものの、一昨年と比べて昨年度は男子生徒も増えたそうだ。それでも、「腐女子部」というのが何か。それだけは分かっていない。
 新入生歓迎会の部活紹介でも名前だけは出てくるものの、紹介はしてこないのだ。強制ではないので部活に入っていない人も多いもの。しかしこれがまた、部活に「腐女子部」という欄が無いのだ。いかにも夏のビックイベントに参加していそうな部活ではあるが、腐女子部とは別に漫画研究部もアニメ同好会もある。「腐女子部」に誰が参加していて、誰が顧問をしていて、何をしているのかはわからない以上、部活として夏のビックイベントに参加しているかどうかもわからない。

 ただ、一つ分かっていることは、いや、実はこれも噂なので本当かどうかは全く分からないが、一つ分かっていることは、部員の1人は生徒会長様という噂だ。
 生徒会長。まだ3年生が生徒会長をやって居ることもあり、生徒会長は女性。そして女子生徒の憧れでもある。ボーイッシュに切りそろえられた短い髪に、丸い瞳、人柄の良さと口元のほくろ、ボクシング部の部長で、凛とした佇まい。
 みんなの憧れな生徒会長様が「腐女子部」なんて噂だ。といっても、この学校は兼部は禁止されていないにしても、兼部はなかなか難しい。それにボクシング部は会長ありきで強豪になっているそうで、会長様が部活を休むなんてことはまず無いらしい。

 「おい、お前。制服のボタンズレてるぞ」
 「ったく、ネクタイが曲がってるじゃねぇか。身だしなみはちゃんとしろ」
 「おっと。怪我はない?レディ」
 「私のことは気にすんな。やりたい事をやればいいさ。誰かの指図を受けてやる事はやりたくない事に変わっちまうだろ」

 と、こんな感じでかっこいい生徒会長様は、


 「にゃー!!絶対ここは攻めです!!」
 「いいや、違います、これはモブの立ち位置です!いやモブじゃないけどこのカプではモブっていうかなんというか」
 「モブでもなんでもいいけどさ〜、この子受け以外〜私受け付けないから〜ね〜」
 「あら、でもこの子の攻め様ちょっといいかも、なんてこの前言っておりませんでして?全く、気が変わる方です事」
 「いやキミの一途さはもはや病だよ」

 「ごちゃごちゃうるせぇ!!こいつは受け!!んでこいつは攻め!!そんでこいつは俺の嫁!!決定!!」

 「ぶー!!反対します!!」
 「部長ちゃんに物申したいことが100個ほどあるのだけどいいかしら」


 「腐女子部」の部長でもありました。



2ヶ月前 No.322

削除済み @akira0908 ★Tablet=UIgVrM4Ag0

【記事主より削除】 ( 2017/09/10 00:25 )

2ヶ月前 No.323

@akira0908☆G2g5KGLD3yBo ★Tablet=UIgVrM4Ag0

 「ただいま」と言ったとき、「おかえり」という暖かな返事がある事が羨ましかった。
 それが普通の事だとは分かっていた。分かっていたが、ぼくに「おかえり」を言ってくれる人はこの世に存在しなかった。『お母さん』や『お父さん』って存在を、ぼくは知らない。
 知ってるけど、知らない。
 自分の為に叱ってくれる存在を、自分の為に泣いてくれる存在を、自分の為に心配してくれる存在を、自分の為に喜んでくれる存在を、ぼくは知らない。
 ぼくが悪いところをしたところで叱ってくれる人は居ないし、ぼくが仮に居なくなったところで心配してくれたり泣いてくれたりする人も居ない。ぼくがなにかを成し遂げたとき、ぼくと一緒に喜んでくれる人も居ない。
 ぼくは、“普通”にはなれない。
 だから。

 「俺母さん居ないんだよね。五年前に男と逃げたんだよ」
 「オレ捨て子なんだってさ。おばさんが言ってた。……まあ、分かってたけど」
 「僕のパパとママって血が繋がってないんだ。そりゃそうだよ。B型の両親からO型が生まれてくるわけないじゃん」

 ぼくと同じ人が居るんだって思って、嬉しかった。
 両親が居ないぼくと一緒にするなって思われるかもしれないけど、それでもぼくは、嬉しかったんだ。
 失礼だってのは分かってる。分かってるけど、“普通”じゃない奴がぼく以外にも居るんだって思って、ぼくは嬉しかったんだ。
 「ただいま」を言っても暖かな「おかえり」が返ってこない、ぼくらの返ってきた「おかえり」が機械的なものだった。でも、やっと。

 「高校卒業したらさァ、俺らで住まねェ?」
 「って……ことは、オレが「ただいま」つったら、「おかえり」って返ってくる、てこと、だよ、な?」
 「ぼ、僕が何かしたら、怒ってくれる人がいる、ってこと……だよね……!?」

 ぼくらはどこか歪だった。
 五年前に母親に逃げられた男はグレるにグレて不良ってやつになった。実の両親に捨てられて親戚の家に回された男は自己主張の少ない男になった。詳しい理由が分からないまま養子になった男は引きこもりになった。物心ついた時から施設に居たぼくは、自分嫌いの皮肉屋になった。
 どこか歪だったぼくらには、ぼくらが“普通”であれる場所が必要だった。
 “普通”が病的に足りなかったぼくらには、“普通”を補うための“家族”が必要だった。
 歪でもいい、ただ、支え合える何かがぼくらには必要だった。歪んでいてもいい、ただ、お互いのために喜んだり悲しんだりできる存在がぼくらには必要だった。
 独りを強いられたぼくらは、独りに慣れすぎたぼくらは、人と馴染む術が、独りを寂しい事だと思う感情が必要だった。

 「“家族”になろう、俺達」

 ―――歪んだぼくらは、歪んだ家族ごっこを始めた。




× プロローグ案1。プロローグが難しいなこれおい

2ヶ月前 No.324

@akira0908☆G2g5KGLD3yBo ★Tablet=UIgVrM4Ag0

 「楔……」
 「どしたの?伊織ちゃん」

 昼休み。楔は伊織をご飯に誘おうと思っていたのだが千里がこれがまたこれでもかと言うほど伊織に嫌がらせ(?)をけしかけたせいでこれは誘えないなぁ、なんてぼんやりと思って、英介も彼女とハッピーライフを送るとのことだったので珍しくも楔はぼっち飯に勤しもうと中庭に向かった。
 千里との1件があった後、伊織はどこからともなく現れては疲れ果てたかのようにフラッフラになりながら楔に力と覇気のない声で話しかける。千鳥足になりながら歩いている伊織が不安だったこともあり、咄嗟に体を支えながらどしたの?と優しく尋ねるのは楔の伊織贔屓か、もしくは生まれ持った紳士的な性格なのか否かは分からないものの、伊織の体を咄嗟に支え、近くにあった中庭のベンチに座らせるというアフターフォローまで完璧である。
 疲れ果てているのかなかなか口を開かない伊織を見て、楔は立ち上がると「待ってて」と伊織に言い残して自動販売機に向かった。伊織は自分に呆れてしまったのかと思い申し訳なさそうに「あ……」とか細い声を出した後に眉を寄せて目を伏せては俯いてしまった。
 が、本当にすぐに楔が戻ってきたかと思えば、ついさっき自動販売機で買ってきたであろうオレンジジュースを伊織の頬に当てる。伊織は驚いたように猫の如く肩を震わせた後に楔を見ると、キラキラと輝いた目で楔……の手に握られているオレンジジュースを見た。
 目線だけでも分かる伊織の「欲しい」「飲んでいいの?」なんて感情に、思わず分かりやすいなぁ、と思いながらくすくすと笑うと、楔は「どうぞ」と口に出して伊織に渡した。伊織も「ありがとう!」とすぐに元気になってオレンジジュースを受け取ると、何度か焦ったのかオレンジジュースのペットボトルのキャップを握る手を滑らせて「あれ?開かない」なんて事をやっていた。
 もちろん手を滑らせなくなってからはすぐに開いた。
 相も変わらずドジというかどこか抜けているというか天然気質というか、そういった性質の伊織の姿に愛しさやらなんやらでくすくすと笑ってしまう。楔が笑っていることにも気が付かず、伊織はお菓子に食いつく子供のようにオレンジジュースをがぶ飲みしている。ちなみに、楔と伊織は付き合っていない。傍から見ればカップルだ。
 「ぷはー!」と言いながら中身が少ししか減っていないオレンジジュースを見て伊織の少食がこんな所にまで反映されてしまうのかと楔は少し不安な気持ちから眉を寄せていると、伊織が「あの……」と言いづらそうに口を開く。

 「あ、どうしたの、伊織ちゃん」
 「……………………地雷がうざい」

 そう、言うまでもなく楔と千里は付き合っている。故に、伊織も言うべきかどうかで悩んでいたのだが、声を振り絞って出てきた言葉に思わず深刻な話かと思っていた楔は噴き出してしまった。
 唐突に吹き出した楔の姿に伊織は驚いてどうすればいいのか分からず行き場のない開いた両手を上下右往左往に振ったり「え?え??」といかにも混乱してます、な声を出した。
 1通り笑って、笑いから出てきた目元に溜まった涙を拭うと、楔はおかしそうに少しだけ口元を抑えたあとすぐに伊織の頭を軽く撫でた後に言葉を放った。

 「それすごい分かる!」

 楔から出てきた思わない言葉に伊織が目をぱちくりとさせる。思うわけがないだろう。普通付き合ってる彼女の悪口なるものを言われて笑いながら何が「それすごい分かる!」だ。伊織も信じられないのか自らのほっぺたを2、3回つまんだ。
 そんな伊織の姿を見てしまったおかげか、楔はお餅みたいに伸びそうなほっぺただなぁなんて事を考え出してしまい、お餅みたいに伸びそうな伊織の頬を想像して可愛さとつまんでみたさに思わずまた笑いが零れて1発自分にビンタを入れた。


 「お、おい、楔聞いてくれよ」
 「はぁ?」

 放課後になり、弓道部は顧問の理由あって今日は休みという事になり、伊織が薙刀部へ向かう姿を見送った後にそろそろ帰ろうかと帰りの準備をしていると、教室の後ろ扉からフラフラとした様子でなんだかやけににまにまとした様子で近付いてくる千里の姿だった。
 伊織の時とは程遠い冷たさではあったが、千鳥足で歩く千里を見て腕を引っ張って取り敢えず自分の座っていた席に座らせると、その隣にある伊織と部活に行った英介の席に楔も座った。
 くくくく、と気味の悪い笑みを零す千里の姿を「なんだこいつ」と彼氏とは思えない冷たさで若干蔑むような目で千里を見ながら頬杖をつきながら千里が喋り出すのをじっと待った。なかなか喋り出さずに気持ちの悪いニヤケを浮かべ続ける千里にそろそろ1発ビンタでも入れてやろうかと左手を振りあげようとした時、千里は「あのさ」とニヤニヤした顔を保ったまま楔に声をかけてくる。
 やっと口を開くのかと思ったこともあり、振りあげようとした左手をそっと戻すと、「はいはい」と流すような相槌を楔が返す。適当な楔の態度はいつもあーだこーだ言う千里であったが、今回ばかりはそういうこともなく、いつにも増しての気味の悪さに楔は不穏な雰囲気を感じ取りながらちょっとだけ椅子を離した。

 「伊織って超可愛くねぇ?」

 千里から出てきた言葉に楔は目を見開くと、ついさっきまで気持ち悪いだの気味が悪いだのと言っていた千里のニヤケ顔が思わず楔にも移った。楔はそっと千里の手をとると強く頷く。

 「それすげぇ分かる」







× 血は争えない。


2ヶ月前 No.325
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