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I'll forget you.

 ( 書き捨て!小説 )
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Jack @nowhere ★iPad=vDNdBHTRdS





さよなら、さよなら。

明日になれば。

何もかも失くなってしまうから。





(趣味の塊。意味不明なもので溢れるかも。其れでもよければ、閲覧可)





今は下を向いたまま。





3年前 No.0
ページ: 1


 
 

Jack @nowhere ★iPad=vDNdBHTRdS

【消えたソプラノ】

シャーロット
貴族の娘。音楽をこよなく愛し、聴くこと奏でること問わず精通する。その中でも特に歌に執着し、古い唄流行りの歌拙い歌美しい歌、どの様な歌も見事なまでに何処までも響くソプラノで歌い上げ、人々を或いは人で無き者まで感動させる。自分自身でも歌を作ることもあるが其れを他人に聴かせることはない。
誰にでも穏やかかつ優雅に接し笑顔を絶やさないことを半義務付けられていたことにより難なくこなすが、本来の激しい気性を隠しているだけ。愛猫家。

3年前 No.1

Jack @nowhere ★iPad=vDNdBHTRdS

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3年前 No.2

Jack @nowhere ★iPad=vDNdBHTRdS

【消えたソプラノ】

コリン
貧民窟で生まれ育った少年。17歳程度。父は知らず、母と二人で育ったがために慎重だが周囲の誰かを気遣うことを憶えた。その日その日を生きる事に一生懸命で様々な仕事を掛け持ち、同じような場所で育つ老人や幼子をも養う。周りは貴族嫌いばかりがいる中で、数少ない貴族を敬う人間。暇のある日は滅多に無く昼間は常に働きどおしで、栄養の足りなさから痩せてはいるものの同年代の一般市民に比べれば筋力のある少年。来たないものに囲まれて育ったせいか綺麗なもの、美しいものへの憧れが人一倍強く、体の強くない母のための薬を買うために働くかたわらで綺麗な家を借りれないかとお金を貯めている。
短く汚れた真っ黒な髪は細く、丁寧に汚れを洗い落とせば触り心地の良いものになるだろうと思われるが、今はかたく触れば汚れがうつる。瞳は濃い葉の色か、其れよりは更に濃い色をしている。元は白い肌も屋外での仕事時間が長くやや浅黒く日に焼けて、更にあまり風呂にも入れないことから顔や腕は薄汚れている。ごわごわしたグレーの長袖のTシャツは袖を肘の上までまくり、焦げ茶色をした長ズボンを膝下まで折り返している。
純粋さを失わないながらも、生きることの苦しさを知っている。

3年前 No.3

Jack @nowhere ★iPad=vDNdBHTRdS

【消えたソプラノ】

コリン
貧民窟で生まれ育った少年。17歳程度。父は知らず、母と二人で育ったがために慎重だが周囲の誰かを気遣うことを憶えた。その日その日を生きる事に一生懸命で様々な仕事を掛け持ち、同じような場所で育つ老人や幼子をも養う。周りは貴族嫌いばかりがいる中で、数少ない貴族を敬う人間。暇のある日は滅多に無く昼間は常に働きどおしで、栄養の足りなさから痩せてはいるものの同年代の一般市民に比べれば筋力のある少年。汚いものに囲まれて育ったせいか綺麗なもの、美しいものへの憧れが人一倍強く、体の強くない母のための薬を買うために働くかたわらで綺麗な家を借りれないかとお金を貯めている。
短く汚れた真っ黒な髪は細く、丁寧に汚れを洗い落とせば触り心地の良いものになるだろうと思われるが、今はかたく触れば汚れがうつる。瞳は濃い葉の色か、其れよりはやや明るい緑色をしている。元は白い肌も屋外での仕事時間が長く浅黒く日に焼けて、更にあまり風呂にも入れないことから顔や腕は薄汚れている。ごわごわしたグレーの長袖のTシャツは袖を肘の上までまくり、焦げ茶色をした長ズボンを膝下で折り返している。
純粋さを失わないながらも、生きることの苦しさを知っている。どんなに辛い日々、苦しい生活、貧しくてひもじくて耐えられない程の人生であっても其の中にある細やかな喜びを、希望を、幸福を感じられる強い人間。動物への愛情も強く、よく街や裏路地で見かける猫にサファイアと名付け餌をやったりする。


3年前 No.4

Jack @nowhere☆EahuoiZosm6 ★iPad=vDNdBHTRdS

「(キャラクターに合ったセリフを2つ、3つ)」


名前:アリッサ・オールウィン
性別:女
年齢:32

性格:「多くを求めず一つに拘る」をモットーに生きており、興味のある範囲には物凄い集中力を発揮し、其れ以外にはとことん無頓着な生活を送る。それは日常生活に大きな影響を及ぼしており、学問や工作、鉱物などに関しては広く深い知識を有するも、流行りのものや料理などへの関心が薄く、生きて行く為に必要な衣食住に対しては「必要最低限」の物しか身の回りに用意しない。知識としては敬語なども脳に刻まれてはいるが、対人関係で使用する事はごくまれな事で、そもそも気が向いた時や必要に迫られた時、そうしなければならないような状況下でなければ他人と積極的に話すことはないと言っても過言ではないほど。それゆえに気の長い人や気の合う人でなければ親しくするのは難しいと言える。
容姿:(上記に同じ)

備考:(一人称や好みなど、他なにかありましたらどうぞ)
文字色:(あまり被らないようにしていただけると嬉しいですが、被っても問題ないです)

夢:(必須項目です)
bleuet:(ブルーエの募集条件です)

募集:(お友達など、なにかありましたらどうぞ)

関係:(ある程度集まりましたら説明します。現時点では無視してください)


3年前 No.5

Jack @nowhere☆EahuoiZosm6 ★iPhone=1uVeEKanfu

【云えなかったさよならを。(仮)】

愛しい人に別れを告げて。此処まで来てしまったのは、如何してだったのだろう。

窓から見える夕焼けは私の生きた町と変わらず綺麗で、けれどふと気を付けてみれば全然違う街並みが目に映るから、すぐに寂しさに溺れてしまう。一番賑やかな町の中心からちょっと外側の静かな住宅街の一角、かなり古くから残るこの地区のとある坂道を上ると、私の暮らす下宿はある。お年を召した、優しく笑うおばさんと、たまに見掛けるとお菓子を分けてくれるおじさんがやっている此処は、私の他に一人だけ、私と同い年らしい少年が住んでいる。

古いけれど掃除が行き届いたその下宿の二階、昼間は陽のあたりの悪い西向きの窓が一つある私の部屋は、丁度この辺一帯が一望できる。歴史の浅い私の町とは違う、古き良きこの町らしい優しげな建物が立ち並ぶ姿は、此処に来て初めて知ったものの一つだ。其処から少し目を逸らして自分の部屋を見回せば、目に映るのは小説やノート、ルーズリーフ、教科書、筆記用具に学校で配られたプリント類が乱雑に散らばった机と、脱いだグレーのパーカの掛けられた椅子、床に置かれたリュック、其処から覗く教科書類、籠に入った脱ぎっ放しのパジャマと掛け布団の乱れたベッド。整理整頓の苦手な私の性格をよく表した小さな部屋が其処に在るばかり。

自分の町のでは無い高校に入りたくて、一応受かってこの町へ来てからもう二年目になる。去年の今頃は私の引越し作業に追われて忙しくて、碌に町を見て回る事も出来なかったけれど、今では此の付近は大抵行き慣れて、やや入り組んだ細い路も迷わず歩けるようになった。
新しい町で一番怖かったのは、知り合いのいない教室で上手く馴染むことが出来るかだったけれど、クラスの皆は優しく、初対面で緊張する私にも普通に話し掛けてくれて、今では町の中心の賑わうショッピングモールとかに、一緒に買い物に行ったりもする仲だ。

気付けば此処に馴染んでいたけれど、今でも心の何処かが虚ろに感じるのは、やはりまだ自分の中で吹っ切れてない事が、此の町では無い場所で、在るからだろうか。

さよなら。ねえ、愛しい人。
私は貴方から離れたくて。
だから此処まで逃げてきたのよ。
其れでも未だ囚われたままで。
苦しくて敵わないわ。

ああ、苦しくて堪らない。思わず胸元をぎゅっと掴んで、少しだけ息を止めた。

3年前 No.6

Jack @nowhere☆EahuoiZosm6 ★iPhone=1uVeEKanfu

苦しみから逃れる様に部屋を出ると、丁度もう一人の下宿人が帰ってきた所のようだった。白地のダボっとした半袖シャツに丈の長いジーンズ、腰に掛けられた紺色のパーカ。色の白い肌に、色素の薄い髪の色、鋭い茶色の瞳。整った顔立ちが、此方を見る。目が合った。彼はすっと眼を細める。それは、視力の良くない人が物を見る時にする癖に似ていた。

「......おかえりなさい」
「ああ」

親しいわけじゃない。学校は同じだけどクラスは違うし、正直どんな人なのかも分からないのだ。けれど挨拶をすれば返してくれるし、煩くもない。学校で見掛けてもあまり騒いでる様子は無いから、元々無口な、或いは静かな人なのだと思う。ゆっくりとした、ちょっと疲れた足取りで彼は私の隣の部屋へ入って行く。唯一の隣人は、そんな人だった。

何処へ行こうとも考えてなくて、私は部屋の外でドアに凭れて悩む。木の板の廊下、端にある窓、そこから漏れる光、微かに聞こえる家主のおばさんの足音、遠くから響く幼い子の笑い声。愛おしいと思う。そんな風に一年で慣れ親しんだ色んなことが。一階に降りると、おばさんが晩御飯の用意をしてくれていた。テーブルの席に何気なく座って、頬杖をつく。

「あらあら、どうしたの。もうお腹すいちゃった?」
「ううん、なんか、暇を持て余しちゃって。手伝うことある?」
「大丈夫よー、そんな気を遣わなくても」
「今日の晩御飯は豚汁ね、楽しみに待ってる」
「ふふ、ありがとう」

結局どうしようもなくてそのまま其処で晩御飯を待った。完成して、隣人を呼んで、おじさんも呼んで、皆んなで食卓テーブルを囲って食べ始めて。隣人はあまり話さないけど、おばさんやおじさんと話しながら食べる食事はとても美味しい。それから食器を片付けて、少し手伝って、部屋に戻って、気が乗らないまま数学やって、やっぱり駄目で、おふろ入って、また部屋に戻って、眠ろうとしても出来ないから真夜中に窓を開けてみた。

やっぱり流石にまだ寒い空気が部屋に入ってくる。その空気が心地よくて、私は部屋の電気を消したまま窓もカーテンも開け放して夜空を頬杖付きながら眺めた。ふわりと真白なレースのカーテンが外にはためいて、少しすると戻ってきて。次は内側の淡い橙色のカーテンまで一緒に夜風にさらわれて、また戻ってくる。そんな繰り返しを感じながらどうしようもなく寂しくなって私は窓を閉じた。まだ私は、狭い世界に閉じこもるしか出来なくて、少しでも開いてしまったら私を見失ってしまう。

堪らなくて唇を噛み締めて、部屋を出て居間へと向かった。今までにもこうして真夜中に此処へ降りてくる事があった。自分以外の誰かがいた、けれど今は誰も居ない場所。そんな所に唐突に行きたくなる事があるのだ。そうして其処で小さくなって、泣きたい日だってあるのだ。声を殺してでも、流し切ってしまいたい痛みがあるのだ。誰も知らなくて良いような、自分だけの苦しみなんて誰でも持ってるのだ。分かってても諦められ無い愚かさを知ってるのだ。

ふと、ぎしりと床の軋む音がした。思わず固まる。足音は階段の方からした。ソファに体育座りをしている私は其方に背を向けている。降りてきた彼が私に気付かなければ良いと願いながら。

「なにしてんの」

仕方なしに振り返る。と、目の前にいた彼が、私を見下ろしていた。思っていたより近い距離にいた隣人に言葉を返そうとして、でも驚きと泣いていたのとで声が出なかった。彼は、私が泣いていた事に驚いたのか眼を見開いて、それから視線を逸らして、何故だか私の隣に腰掛けた。

「悩みごと?」
「そんなところ」
「......びっくりした。君が此処で泣いてるなんて、思わなかった」
「たまにね、こうして此処で泣きたくなるんだよ」
「今までにも?」
「うん。何度も。衝動的に」

膝を抱えた私と、前屈みに座る彼と。穏やかに時間が流れる。夜独特の、異世界じみた雰囲気が、私達を何処か遠くへ誘ってしまった様な。

「どうしてか、聴いてもいいの?」
「いいけど......難しいなあ。なんでだろう。......強いて言えば、未練、なのかなあ」

彼が身じろぎした。私も、膝を抱えなおす。
彼の吐息が聞こえる程の静けさに笑いそうになる。

3年前 No.7

Jack @nowhere☆EahuoiZosm6 ★iPhone=1uVeEKanfu

「私ね、好きな人、いたんだ。ずっと、好きだった人。今でも好きな人、いたの。いるんだよ。でもさあ、その人はきっと私の事、好きじゃなくってさ。友達として認められてるんだと思うけど、それ以上にもなれないし。あのままだったら、それ以下にすらなれなかったと思う」
「以下?」
「地元の人なんだけどさ、その人。もし私が地元の高校進んでたら、その人とはきっと廊下とかで顔を見かける事があるでしょう。そしたら、私を忘れてなんてくれないじゃん」
「......君の出身て、どこ?」
「田舎。街中に鹿がいても、もう驚かないくらい田舎。面積だけ広くて、人の住んでるとこは狭い、そんなところ」
「それで君は、その人に忘れてもらうためにこっちに来たの?」
「......そう。......いや、少しだけ、違う」

彼が私の方を向こうとして、やめる気配がした。私はそんな彼の横顔を見ながら、ふと思う。彼は何故、今までまともに話した事のない私の話を、聞いてくれるのだろう。こんな夜に起きてきて、偶然泣いてるところを見てしまった、ただそれだけなのに。見ないふりもできたし、そのまま寝に戻る事だって出来たのに。そんな事したって、私は怒りやしないのに。

「私が、忘れたかったの。どうせ叶いやしないのに、いつまでも引き摺るなんて馬鹿みたいじゃない。そんな未練たらたらなの、嫌だったの。離れれば、忘れられると思った。そしたら、きっと次の恋をして、あんな恋もしたなあって綺麗な思い出になればいいって思って」
「うん」
「それで、彼も私を忘れてくれてれば、本当に綺麗に全部収まるような気が、してたんだよ」
「うん」
「でも、一年経っても変わらない。まだ私、引きずったままで、凄いださい」

返事が途絶える。寝たのだろうかと様子を伺うと、彼はふとこちらを見た。目が合う。整った顔立ちに、硬い表情と思っていたのに、今見る彼の表情は優しい。そして何処か寂しげに見えた。彼の右手が伸びて、少し悩むように宙を彷徨ったのち、私の頭に乗せられた。そのままゆっくりと左右に、柔らかな手つきで撫でられる。

「俺、隣の県の出身なんだけど。親が、この町の出身で、ここのおばさんとも親しくて。失恋して、そのショックで元いたところにいたくなくて、そんで......前から来てみたいなって思ってたこの町の高校受けて、んでここで下宿させてもらって」
「失恋?......あなたが? ふられたの?」
「んん......まあ、そんなところ。それで、来てみたはいいけど、別に特別な所でもないし、どうしたら良いか分からなくって、闇雲に一年経ってた」
「そっか」
「でも、俺が移ってきた数日後に君が入ってきて、同い年だって聞いて、凄い勝手な話、励まされたっていうか。......知らない場所で、知ってる人とか全然いなくて、不安ばっかで、孤独だなあって思ってたけど。考えてみたら君も同じだよなあって思ったら、独りじゃない気がしてさ。たまに今でもすごく寂しくなるけど......独りじゃないって思えるんだよ」

勝手だろって、私の頭を撫でながら笑う。普通なら払ってしまう様なその優しい手を払えなかったのは、彼が今にも夜の中に解けてしまいそうで怖かったから。彼の中にある闇が夜の深さに解け込んで、そのまま彼すらも消し去ってしまう様な、うまく表現のできない恐怖が生まれたから。そして何より彼のその手が、どうにも心地よくって。
ふと、彼の手が頭を撫でるのをやめ、すうっと左頬に触れた。涼しい部屋にいて冷えた彼の手が、私の体温を微かに奪っていく。涙がまた、溢れてきた。それを彼は指で拭ってくれたけれど、それでは間に合わないくらいに溢れてきて、でも不思議と苦しくなくて。色んなどろどろとした何かを彼が分解してくれた様な気がした。それらは全て涙となって流されて、もう私には還らない。
気づけば私は彼に縋っていたし、彼はあやす様に私の背中を叩いてくれていた。

さよなら。ねえ、愛しい人。
私は全てを捨てる覚悟で。
今も夜闇を彷徨ってるのよ。
あなたではない悲しい光を、
追い掛けて泣いてるの。

もう、忘れさせて下さい、愛しい人。


3年前 No.8

Jack @nowhere☆EahuoiZosm6 ★iPhone=1uVeEKanfu

学校での日々はそこそこ楽しい。クラスの子と、仲良くなって。勉強を教えあったり、好きな人の話をしたり、音楽とか、小説や漫画とか、もっともっとたくさんくだらない事ばっか話したり出来るようになった。物足りなさも薄らいで、皆と同じ様な生活を過ごしてる。私が何かにおいて特別だった事は、今まで一度も無かった。勉強も運動神経もそこそこ、自慢できる様な特技もなく、誇れる様な容姿でもない。性格だって少しきついだろうし、うざったい所もあるって自覚ある。すぐ調子にのるし、気分が乗らなかったら何も出来ない。何も目立つ所のない、普通の高校生だ。そして、私は誰かにとって特別であったこともない。そんな自信がある。

「さよなら。ねえ、愛しい人」

それは私がよく口ずさむフレーズだった。メジャーでは無いけど私の好きなグループの何年か前の歌で、失恋ソングとされているけれど、そういうのとは別に私はこれが好きだった。強くかっこいいメロディが、歌詞をより一層引き立てる。
私がこれを歌うのは、たいてい夜の、みんなが寝てしまった頃。窓を開けて夜風に吹かれながら、小さな声で歌うのが好きだった。近所迷惑にはならないような、人と話す時よりも小さな声で。泣きそうになりながら歌うのだ。

隣人は最近、学校で見掛けると微笑んだり片手を上げて挨拶をしてきたりする。私はそれがなんだか嬉しくて同じように返すけれど、周りはそれを不思議がる。それはきっと、彼が今までそんな風に誰かと関わってこなかったから。それはきっと、私たちの共通点を知らないから。クラスも違う私達がどんな風に出会ったかなんて、誰も知らない。
そんな彼とはあの夜以来、よく夜中に居間で話すようになった。

「みんな不思議がってるよ、あなたのこと」
「だろうね。共通点のない君と挨拶とかしてるんだから」
「私も最初驚いたもん。まさか学校であんな風に笑いかけられると思わなくて。隠そうとするかと思った」
「まあ、そうしようかとも思ったけど。これは作戦」
「なんの?」
「秘密。......それよりさあ、たまに夜、君、歌ってない?」

ソファに並んで座り、互いに凭れながら話をする。彼のその体温にほっとする。眠くなる目を擦りながら、んー?と返事をすると、腕を私の頭の後ろに回して、右手で彼は私の頭をくしゃくしゃと撫でた。ちょっと顔を傾けると、思っていたよりも近くに彼の瞳があった。鋭い目。でも、今は優しい。

「うん。窓開けてるから、君の部屋にも聞こえちゃうんだね。気をつけるよ」
「や、いいよ、聞こえる方が。そのが、安心する。......なんて歌?」
「good-bye Mylove」
「さよなら、愛しい人」
「そう。サビの最初もそうなの。さよなら。ねえ、愛しい人。って」

ふと、彼は何を思ったか、頭を撫でていた右手と、残った左手を私の背中に回して、そっと、それから徐々に強く抱きしめた。吐息が、耳の近くにかかる。鼓動が、聞こえた気がした。どうしたら良いか分からないまま彷徨った私の両手は、躊躇いがちに彼の背中のシャツを掴んだ。肩に顔を埋めていると、すごく近くで、少し掠れた彼の低い声が聞こえた。

「歌って、さっきの」




3年前 No.9

Jack @nowhere☆EahuoiZosm6 ★iPhone=1uVeEKanfu

「さっきのって......今、このまま?」
「うん。近くで聴きたい」
「近過ぎでしょ」
「そうかも」

それでも彼は私から離れようとはしなかった。私もそんな彼を押し退けようという気にはなれなかった。躊躇いがちに息を吸って、歌い始める。
愛した人との別れの歌。さよなら愛しい人、貴方とはもう会えない。何故ならもうその術を持たないから。貴方と会いたくても会えないなら、そんな気持ちすら無くなってしまえばいい。そうしたらこんなにも苦しまないで済むのに。そんな風な意味の歌詞。決して明るくはない、その曲調。
どうして貴方に会えないのだろう。いつだか気になって調べたことがある。どうやら作詞家兼ボーカルの人がかつて、親しい人を病で失ったことを書いた詞だかららしい。成る程、身近な人の死は、その人が思っているよりずっと心に大きく残る。それが、どんな形であれ。

もう、忘れさせてください。愛しい人。
ああ、黒く冷たい流れが、弾ける前に。
嫌だよ、いかないで、会いたいよ、何も要らない。
明日まで待つよ、いつまでも私は。

さよなら、ねえ、愛しい人。
私は貴方を本当に愛してたわ。
だからお願い、弱い私を、
どうか許して、救われたいだけなの。
まだ、あの日には戻れない。

歌い終えると、彼はゆっくりと私から離れた。それからこつりと、私と額を合わせる。目を閉じた彼の顔が目の前にあって、そこで初めて鼓動が早くなった気がした。

「ありがとう」

やはり掠れた声だった。

学校では、挨拶だけでは無く、廊下で立ち止まって話したりするほどの仲になった。下宿にいても、互いの部屋を行き来したり、勉強を教え合ったり、互いの趣味や最近の出来事なんかを話したりする様になった。下宿人同士の仲がいいのが嬉しいのか、おばさんとおじさんはそんな私達を優しく見守ってくれた。それでも夜に今で話す習慣が無くなることはなく、寧ろ夜の時間こそが最も正しい世界に思えた。
その頃になって漸く私は、好きな人がいた事を吹っ切ることが出来そうな気がしてきていた。彼との間に特別な関係があるかというと、世間一般の常識に当てはめてしまえば、そんなものは無いのかもしれない。けれど、下宿人、隣人、同級生、友達、なんていうありふれた言葉では括れないような関係を、私達は当たり前に、尚且つ秘密として持っているのだ。そんな明確で無い関係こそが、何より確かな形で今の私を支えてくれているのだ。

3年前 No.10

Jack @nowhere☆EahuoiZosm6 ★iPhone=sCRoeQcYmY

それから私達は段々と距離を縮めていった。その地道な時間が愛おしかった、堪らなく大切だった。外では決して共に過ごしたりしないけれど、それでも夜にリビングのソファに並んで座って他愛のない話をするのが最高に大好きだった。ぼそぼそとした声で話すのが好きで、いつもより低く聴こえる彼の声が好きで。そして彼も私の歌う声を好きだといい、並んだ時の体温が好きだといってくれた。
そんな日々の中で私は、地元の好きな人を忘れられる気がした。その人よりも隣の彼のが私の中で大きな存在になっていく気がした。そうであれば良いとも思ったし、そうであるなら幸せだとも思った。もう苦しまずに済むとすら、思った。

「ねえ、私が君に好きて言ったら驚く?」
「唐突だね......少しは驚くけど。でもそれよりは、なんか、嬉しいかもしれない」
「嬉しいのか」
「ん。俺が、君を好きだから......て、言い忘れてたね」
「......じゃあ、好き」
「じゃあ、て。......なんか、あったんだ?」

うん、と呟いて私は彼の右肩に凭れた。額を肩に押し付けるようにして目を閉じた。少し経って彼の左手が私の頭を撫でた。優しくゆっくりと撫でられて、私は泣きたくなった。堪らず彼の体にしがみつく様に、彼の肩を掴んだ。

「前に言った好きな人、こっち来るんだって。久々に会いたいて、言うんだよ。やだよ、会いたくないよ、でも会いたい。どうしたらいんだろ」
「会いたいなら会えば良いじゃんよ、嫌なら会わないばいいよ」
「だって、会ったら、せっかく忘れられそうな感情が戻って来ちゃうかもしれない。君を好きだって思ってるのもどこか行っちゃって、私、駄目になるかも知んない」
「うん、大丈夫。もし君が俺を好きじゃなくたってさあ、俺の方は好きなの変わんないし。結局、今この生活の中で一緒にいれんの俺だからさ。俺がそのうちそいつのこと忘れさすよ」
「......じゃあ、会う」

そうしな、と彼は言って、体を私の方に向けて私を抱き締めた。優しい。穏やかな時間、落ち着く。涙で彼の服の肩は濡れてしまっていた。

2年前 No.11

Jack @nowhere☆EahuoiZosm6 ★iPhone=Fhcq14AN8W

名前を呼ばれた気がした。
立ち止まって顔を上げ、人の群れの向こうに目を凝らす。けれどそこに声の主は見つからない。知った声な気がしたのに。今一番会いたい声だと思ったのに。気のせいでしかなかったのか。
「高崎っ」
もう一度だけ目を凝らした。だって、さっきより声が近い気がしたんだ。少し離れた人影の間に、彼の頭がちらついた。思わず彼の名前が口から漏れる。ほんの小さな声、彼に聞こえた筈はないけれど、その瞬間の彼の表情がぱっと輝いて見えた。
「良かった、会えて。......元気?」
「数日ぶりの言葉じゃないよ、それ。君こそ熱出したって聞いたけど」
「あんなん微熱だよ。それよりさ、なあ、この後時間あるなら花火とかどう」
なんてことない風に言う彼に、笑いが漏れた。随分とスマートになったなあ。私がそう言うと彼の耳が赤くなった。数年前は、一緒に何処か行くというのでさえお互い緊張したものだというのに。
「でもまさか、こんな忙しい日に帰ってくるなんて思わなかったよ」
「祭が見たかったんだよ。......しょぼくなったなあ」
「それをしみじみ言うんじゃない!」
はは、と笑うと軽く頭を叩かれた。
かたぬきだとか、くじ引きだとか、金魚掬いだとか、金平糖だとかの横をゆっくりゆっくり歩きながら連絡を取ってなかった間の話をした。

2ヶ月前 No.12
ページ: 1

 
 
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