Google
    
<< TOPページ 掲示板TOP 記事データ お知らせメール ▼レス(1301) >>
★この記事には「性的な内容」「ショッキングな内容」が含まれます。もし記事に問題がある場合は違反報告してください。

 詳細は取扱説明書をご覧下さい。

 ( 書き捨て!小説 )
- アクセス(6258) - いいね!(37)

ぼっち。 @myuu10☆SKeWosbaJPA ★8cfd0izEyf_mgE








 ( 宴もたけなわと言うことで、 )



 ――!、

 ▽ 孤独をものともしない僕だけの書き捨てです。主に野郎共がキャッキャしてます。
 ▽ 閲覧は自由ですが荒らしや冷やかしさん達は左手の出口から全速力で去って行って下さい。チキンハートな僕に荒らしや冷やかしなどは結構堪えます。
 ▽ 同性愛要素やら何やらが入り乱れておりますので閲覧注意です。たまにグロ要素のものも含まれるかも知れません。
 ▽ パクリさんも荒らしさん達同様に左手の出口から全速力でお立ち去り下さい。
 ▽ 一代目が記念すべき2000レス行ったので二代目です。
 ▽ 文才なんてどっかに捨ててきました。しょーもないもんばっか書いて自給自足生活を満喫してます。






 「 孤独が嫌いだなんて、何と君はまあ、 」








 ( ――それでは皆さん、お手を拝借! )


3年前 No.0
メモ2017/11/11 22:00 : とみや。☆SKeWosbaJPA @myuu10★Android-pwXnxWHVkM

  


 ロンリー、ロンリー、ロンリー!→詳細は取扱説明書をご覧下さい。


 キャラとか諸々/ http://mb2.jp/_sts/2876.html


 ――


 ぱち:37

 アクセス:6200超え


 さんくす!


 

ページ: 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14

 
 
↑前のページ (1251件) | 最新ページ

とみや。 @myuu10☆SKeWosbaJPA ★Android=pwXnxWHVkM





 その瞳にだけ恋をした。


 「ふ、ふふ……ふはははは! 残念だったね、朱雀くん=v

 煌めく、光る。空に浮かぶ一等星のように、天にかざしたビー玉のように。あるいはその瞳は、照りつける太陽のように眩しく、清潔で。パチパチ。その擬音が正しいかもどうかも分からないけど、その鮮やかな何かが弾ける。

 ヒーローみたいだ。なんでだろう。

 「君とは負った傷の数が違う」

 不敵に笑った。花が咲いたように、周りを明るくする。そうさせてしまう何かが、ある。きっと。おかしくもないのにいつも笑って、バカにされても、また笑ってる。ヘン。まあ、ヘンだよ、十分。でもそれが画になるから、また、憎いよなあ。
 ぐ、親指を立てる。チャーミングにウインクまで添えちゃってさあ、カワイイんだから。おちゃめにくるりと一回転。スカートがふわりと浮かんで、今日は――紫? ヒュウ、口笛。セクシーだね、なんて言おうものならその体勢のまま急に飛び蹴りを寄越してくるから知らんぷり。俺はなにも見てませんよ、神に誓え――るかはわかんないけど。

 「大丈夫、全部深手だよ!」
 「バカなんじゃないの……」

 「実に、正に、結構、完全に、正真正銘、最高に、最低に――無様だね!」



 (あきぽ)



7ヶ月前 No.1252

とみや。 @myuu10☆SKeWosbaJPA ★Android=pwXnxWHVkM






 「あ、おかあさん」

 イン、学校。真っ直ぐに掲げられた指先はこちらに向いて、心臓を突き破るくらいで。視線が刺さるとは、まさにこのこと。あまりにも多くの眼が自分に向きすぎた。先ほどの単語を吐き出した人物は事に気付いたのか、明らかに慌てて口をわざとらしく手のひらで塞いだ。そこからは簡単で、踵を返し、何事も無かったかのように進行方向とは逆に、足早に現場から遠ざかる。背中にも突き刺さるそれは、そこ離れればどんどん少なくなり、最後には背後にある一人分の足音と同じ数だけになる。はあぁ。吐き出した溜め息を聞くことすらなく、一定の距離をついてくるので、流石に先ほどのことではないが、目を引く。唐突に立ち止まれば、わぷっ、背中に軽い衝撃。思っていたより近くに居たようで、振り向きつつ尻餅をつく相手に軽い礼を――あれ、これ。俺が悪いのか?

 「……わりい」
 「、ごめんなさい」

 同時に口から飛び出た言葉が、混ざりあった。眼鏡のレンズ越しの瞳は歪んで、なぜかこっちが申し訳なくなるほどで、なんていうか。

 なんていうか、困る。単純に。

 「あ、あの、おかあ――せんぱ、いや、」

 手を差し出した。もちろん、倒れた体を引っ張り起こすために。ここはまだ、非常口前とは言え、誰が見ているかわからない。特に、あの知り合いの趣味の悪い後輩の誰かに見られたらたまったモンじゃない。これをネタにされて、またいらんことを頼まれたりするのが目に見えてる。それだけは避けたい。マジで。そもそもこんな呼び方されてる時点でヤバい。今までそれを知らなかったという事実もだけど、その呼び方≠ヘマズい。

 「双子のどっち」
 「え、あ。イズルです。お父様には、イズって呼ばれてるほう。」
 「……ああ。あの、“ツバメ”の方か」

 肯定するように、顎を引いた。



 (お父様(愛)とおかあさん(愛)とぼく(生))


7ヶ月前 No.1253

とみや。 @myuu10☆SKeWosbaJPA ★Android=pwXnxWHVkM





 「無条件に頑張るって案外大変だよ?」「そうかもね!」「しかも、人のためになら、なおさら」「そうだよねぇ」「なのにさ、ホントに――」「ねえ、春樹くん?」「なあに、叶ちゃん」「僕は頑張れるよ」「根拠はあるの?」「頑張るのに根拠なんか必要ないよ。僕は、僕がやりたいように、やれるだけ頑張るだけ。何を否定されても、やめないよ」「……強いねぇ」「弱いからだって、前にも言ったでしょ」「俺からすれば、ジューブン強いよ。さいきょーだよ。」「君にそう言われるなら、……良かったなあ」「いつでも彼女にしてあげるよ」「まさか。春樹くんは僕が嫌いだろう?」「はは。うん、そうだよ。叶ちゃんなんて、大嫌い。テンション高くてウザいし、いっつもデートの邪魔してくるしさ」「僕は君のこと、結構好きだけどねっ」「社交辞令、どうもありがとう」「あははっ。ほんとだね。僕は君が大嫌いだよ、春樹くん。頑張らない人は大嫌い」「あんまり頑張りすぎると、体壊しちゃうよ?」「それでもいいの! 応援してっ!」「わがままだなー」「それくらいが可愛い、でしょ?」「よくお分かりで。」



7ヶ月前 No.1254

とみや。 @myuu10☆SKeWosbaJPA ★Android=pwXnxWHVkM






 「あの人は“イイ女”だったでしょう」「あー、まあ、確かにね。すごく。」「恋愛相手としては?」「マイナス一万点、ってところかな」「貴方って案外酷いんですね」「あの子の方がヒドイよ。眩しすぎるしね?」「ああ。それは、……そうですね」「でしょ? 俺にはムリ。友達で居られるのもフシギなくらいだし」「……時には、助けてあげてください、友達として。」「俺じゃ間に合わないかも。里桜ちゃんも手、貸してよ」「ええ。それがこの学校の為になるなら、ですが」「そう言われると痛いなあ」「おふざけは常識の範囲内でお願いします」「それじゃあ意味がないんじゃない?」「……減らず口」



7ヶ月前 No.1255

とみや。 @myuu10☆SKeWosbaJPA ★Android=pwXnxWHVkM





 「あ、おかーさん」

 デジャビュ。
 くひひ、鋭い八重歯が覗く。明らかに笑っている、まごうことなく笑っている。あの時より少し長い爪をこっちに向けて。緩やかに傾けた首の筋さえ美しく、まるで人形みたいな綺麗な顔、ムカつく。アイツによく似てるし、アイツに全然似てない。もちろん、俺にも似てない。誰にだって似てない。確かクォーター、だっけか、ハーフ? なんかそう聞いた気がしなくもない。どうだったか。どうでもいいし関係ないし。

 「オレのことは知ってる?」
 「……知らない」

 知るわけも、知る由もない。周りに集まった視線を振り払うように踵を返して、誰もいない場所を目指す。



7ヶ月前 No.1256

とみや。 @myuu10☆SKeWosbaJPA ★Android=pwXnxWHVkM

この投稿はフィルタされています。表示するにはアカウントにログインして下さい。

7ヶ月前 No.1257

とみや。 @myuu10☆SKeWosbaJPA ★Android=pwXnxWHVkM





 「君、うそをついたね?」
 「根拠が無いな」
 「知らないの? 君、うそをつくときに必ず前髪を触ってる!」



6ヶ月前 No.1258

とみや。 @myuu10☆SKeWosbaJPA ★Android=pwXnxWHVkM







 「いっさざわむっつーだよーっ!? やったー! こんにちはっ、やあやあ。はろー、ぐーてんもるげん、ぼんじゅーぅる! 元気? 元気かなっ、元気だよね! うんうんっ、元気ってことにするね!」
 「むつはねー、たのしーことがすきだよー! いっぱいたのしいことしよ! ねっ、ねっ。鬼ごっこもかくれんぼもしようね、約束だよ。はい、ゆーびきーりげーんまん!」
 「やったー! ん、んんっ――今日も放送室からぷれぜんとふぉーゆー! 君に幸せを配り歩くよー! むっちゃんでぇす」

 名前: 十六沢 睦(いさざわ むつ)
 年齢: 十六歳
 性別: 男

 性格: 素晴らしいほどに無邪気。純粋ではなく、ある程度酸いも甘いも知っている子供。それでも精神年齢は実年齢よりも低く設定されており、言葉遣いも舌足らずでいまいち真実味や真剣さがない。喜怒哀楽という感情の起伏が激しく、表情が忙しない。泣く時は大声で泣き、怒る時は(本人としては)真剣に怒る。「楽しいことはいいこと」という考えが根底にたるため、周囲の人間の“笑顔でいられること”にベクトルを合わせる。多少自分を犠牲にしても人を楽しませるためには仕方ないと思っている道化師じみたところが昔からあり、他人とは上手くいかないこともあるが、そこまで気にした様子はない。多くの人間には嫌われることなく、むしろ、ある程度は好かれるような愛嬌のある性格。どこか小動物のような雰囲気が否めない。




 (むっつ。あきぽ。)



6ヶ月前 No.1259

とみや。 @myuu10☆SKeWosbaJPA ★Android=pwXnxWHVkM






 FOREVER LOVE




 「先生、愛してたの」

 本当よ。先生に身も心も捧げたの。でも貴方には奥さんという、邪魔な存在がいるから、わたしを愛せないって言うの。いやね、先生。そんなのわたしに言えばいつだって――

 「いつだって、ねえ。“こうして”あげたのに」

 ああ、返り血がうざったい。手についてベタベタする。もう、もう、もう! 忌々しい! どうしてこの女が、わたしに勝ったような面をして貴方の隣に並んでるの!
 わたしはそれが受け入れられない。貴方の隣には、貴方の傍にはわたしが居るだけで良いでしょう。だってわたしはこんなにも貴方を愛しているの。先生を、愛しているのよ? それにね、先生。わたしもう、結婚できる年齢なのよ。知っていた? うふふ。だから結婚指輪もプレゼントしたじゃない。先生がこの女と同じのを着けているのが耐えられなかったから、それよりずっと、ずっとずっとずっと先生に似合う指輪。大丈夫、知っているから。学校ではわたしが贈った指輪を着けていてくれたから。それだけでどんなに嬉しかったか。

 「でもね、先生。ダメなの」
 「だって先生は、この女と別れてくれなかったから」
 「だから、だからね。……うふふ、ふふっ、――許さない。」

 ええ、はい、そう。許さない。許さないわよ、絶対に。奥さんも、先生も、その血を継いだ子も。全部ぜんぶ許さない。またムカついてきた。斧を振り上げて、頭蓋骨を壊す。呻き声も聞こえない。いい気味ね、嫌な女だけど死にざまだけはお綺麗よ。大丈夫、大丈夫、せめてもの償いに顔以外は綺麗に残してあげているでしょう? もしわたしじゃなかったら、先生が触れたところ全てを壊していたでしょうね、感謝してほしい限りよ。子供? ああ、鳴き声がうざったかったし、乱暴にしちゃった。どうだっていいでしょう、どうせ死んでいるんだから。

 「わたしは優しいでしょう。……ねえ、褒めてくれる?」

 あらあら、泣かないで、先生。どうして泣いているのかしら。脚が無いから、妻子を一度に亡くしたから、それとも目の前に斧を持ったわたしが居るから? あら、どれか分からないわね。どれだってそう変わりは無いかしら。ふふっ、貴方は泣き顔も可愛いのね、ちょっとだけ貴方のこと許しちゃいそう。いやね、先生。そんな顔しないで? 純粋に貴方を愛する気持ちは、今だって誰にも負けないつもりよ。そこに転がる死体にだって言ってやれるくらいに。

 「だから先生もわたしを、“純粋”に愛してくれるでしょう。うふふっ、……どう?」

 ご、よん、さん、に、いぃち――――ぜろ。

 「貴方は3.6秒以内にはいつも返事していたの。でも違ったから……――殺す? どうしてそんなことすると思うの! 失礼しちゃうわ。」

 斧を振りかざす。もうこの部屋に生きた人間はひとり。
 殺すんじゃないわ。そう、そうよ! どうしてわたしが先生を殺すだなんて、全く、有り得ないわ。さっきも言ったでしょう、わたしは貴方を“純粋”に愛しているから。これは、そう、そうね。永遠の愛、かな。わたしから貴方の愛を、貴方からわたしへの愛を、ずっとずっとずっとずーっと存在させる方法。わたしったら、どうして最初からこうしなかったの? すごく素敵、貴方もそう思う?

 「あは、あははっ! 最後にわたしを綺麗だと思ったでしょう、先生。女って、好きな人のためならなんでも出来るのよ。そして、いくらでも綺麗になれる。すごい?」

 先生、先、生、先生先生先生先生センセイ先生先生先生先生先生せんせ先生先生先生せんせえ先生先生、先生先生、

 「……キスもしてくれない、恥ずかしがり屋な先生」

 ごとり。貴方の首が血の上に転がった。



 * * *


 『凄惨な殺人が行われたのは、昨日、午後十時以降――』

 ピッ。

 『犯人は未だ判明していない模様です。くれぐれも気を付けて、夜道には一人で出歩くことのな――』

 ピッ。ピッ。ピッ。

 『東京都××区在住、――――』

 ピッ。テレビは黒く染まる。
 最後のトーストを齧り、スカートのホックを締めた。豆から挽いたコーヒーを飲み切り、カバンを持って、出ていく前に鏡で全体チェック。その後玄関に置いた“それ”にキスをする。

 「世の中、物騒よね。何があるか分からないし、気をつけて行ってきます」

 履きなれたローファーに足を通し、ひらひらと手を振りドアを開く。

 「先生=v




6ヶ月前 No.1260

とみや。 @myuu10☆SKeWosbaJPA ★Android=pwXnxWHVkM






 ミシェル及び(自称)ワトソン/(覚えている限りでは)十一/探偵の助手、或いは誰かに拾われて同居中等
 「紳士淑女のみなさま、お集まりで? ああっと、僕が誰か、だって? 僕はワトソン、かの名探偵の助手さ!」
 「ねえ! 起きて、起きてってば! ……ああ。やっと起きた? あのさー、歯磨き粉無いなら言ってくれないかなぁ。昨日の内に買いに行けたろ!? 言い訳はいいよ、別に。現状が変わることはないからね。早く買ってきて。……いつもの、ミント強めのじゃなきゃダメだから!」
 「年齢とかそこまで気にすること? 僕はおよそ十一歳だけど、まず、君より弁が立つ。その上、家事もできるよ。たかだか十数年生まれただけでえばるような、そんな“大人”で、恥ずかしくないの? ……しかも君、短気でしょう。今の顔ひど――……あちゃ〜、これは危ないヤツだ。よし、逃げなきゃ。」


 ハミルトン・ヘルキャット/三十/ピアニスト兼食人鬼
 「ぼくにとって、“弾くこと”も“食べること”も、生きるためなんです。……ぼくはずるいから、自分の生きるためなら。生きていくためなら、手段を問いません。非難されても構いません。死にたく、ないから、」
 「あ。えっ、と、ハミルトンです。……どうか、ハミィとお呼びください。ネックレス……あ、コレですか? 姉からもらったんです。誕生日プレゼントに、って。――キレイでしょう。きらきらの砂と、つやつやしたガラスで出来た砂時計。宝物なんです。」
 「ごめんなさい。……ごめんなさい、ごめんなさい。あなたの尊い命を奪ってしまって、本当に、ごめんなさい……。でも、あなたが、僕の血となり肉となるんです。だから、……あなたの分まで、醜く、生きますから。……ありがとう、ございます。」




6ヶ月前 No.1261

とみや。 @myuu10☆SKeWosbaJPA ★Android=pwXnxWHVkM




 アイザック・ロードナイト/二十四/神父
 「神の下生き、神の下で死ね。傲慢で在ろうとするな。天使に逆らうな。信じる者は全て救われる、そうでしょう?」
 「あんたは死んだ後の身を案じたりするんですか? 不思議な人ですね。人間は皆、死んだら。神のお導きにより、天国に逝けるのです。まあ、私は――おれは、おれの身さえ保証されれば、あんたらが地獄に落ちようが関係ありませんがね。どうせみーんなそうでしょ? 他人の心配するなら、自分が天国に逝ける方法、探しますよ。……利己的で在れ、人間。」
 「どうも。しがない民衆の皆様、しがない神父で御座います。インチキ? 人聞きの悪いことを言うなあ。私は全ての人々の心の安寧を、云々。所謂ですね、つまり、神を信じる者に悪いヤツは居ねえって話だよ。」


6ヶ月前 No.1262

とみや。 @myuu10☆SKeWosbaJPA ★Android=pwXnxWHVkM





 【鴉が鳴いたら、】


 大正浪漫。ヤッター!
 ぼやぼやふわふわぽわんぽわん。


 ・男女双子
 お互いを「にいさん」「ねえさん」と呼ぶ少年少女。表情があまり動かない。本当に血の繋がりがあるかは不明、うつろ。

 ・人斬りと
 人斬りでありながら、貴い御方を守る護衛の仕事もしている。腰に刀をこさえた青年。

 ・茶屋の娘と盗賊の息子
 察して。

 ・枯(からす)
 みなしご。十五歳前後の少女だが、口調は男性的。



6ヶ月前 No.1263

とみや。 @myuu10☆SKeWosbaJPA ★Android=pwXnxWHVkM

この投稿はフィルタされています。表示するにはアカウントにログインして下さい。

6ヶ月前 No.1264

とみや。 @myuu10☆SKeWosbaJPA ★Android=pwXnxWHVkM






 「アンタは違う。違うじゃん、そうでしょ? 何でもかんでも、いつまでもずっと一緒とか、思わないで。どうせアンタも置いていくんだ。知ってるから、言い訳なんてしないでよ。そんなのこっちが虚しいだけ。せめて申し訳ないって思うなら、さっさとどっか行って」



5ヶ月前 No.1265

とみや。 @myuu10☆SKeWosbaJPA ★Android=pwXnxWHVkM





 「あの人をおれが殺した? ふぅん。……――あはッ、あはは! なァに、きみ、バカなの? 自殺志願者を殺すなんて面白くない遊び、おれはしねェよ」


5ヶ月前 No.1266

とみや。 @myuu10☆SKeWosbaJPA ★Android=pwXnxWHVkM

この投稿はフィルタされています。表示するにはアカウントにログインして下さい。

4ヶ月前 No.1267

とみや。 @myuu10☆SKeWosbaJPA ★Android=pwXnxWHVkM





 「僕は正義のヒーローになりたかったんだ」「では、正義とはなんなのか?」「それは自分を殺すことだ」「他者のために生きること、それが正義だと僕は思う」「罪を憎み、自分の信じたものを貫き、民を守り、皆から賞賛される」「それが正義であり、ヒーローになる。そう思うんだ」「では、僕はどうだろう?」「罪を罪だと認め、それに怒ることは僕にはできない」「信じたものを貫こうとしようが、それに歯向かう者がいれば太刀打ちできないかも知れない」「民を守るだなんて、僕一人では到底ムリだ。あらゆる悪意から誰かを守るのは、途轍もないものだ」「賞賛――素晴らしいと言われるだけが賞賛なら、僕は、」「でも、違うんだ。こうじゃない。」「僕の憧れたヒーローは誰からも賞賛されなくとも、常にそこに存在していた。」「その心強さがどれだけのものか、そこに在る為にどれほどの時間を要したか」「そう考えると、僕はヒーローなんかにはなれないと思った。」「結局利己的な人間だったんだ。他者よりも自分の面を守るのが精一杯だった」「ねぇ、これで聞きたいことは済んだ?」「……よし、じゃあこの話はおしまい! どうか、笑い話にしてくれると嬉しいかな。」「もう、随分と昔の話だしね?」「あははっ。そっか、じゃあ、この辺でお開きにしよう。さよなら、また会おうね。」


4ヶ月前 No.1268

とみや。 @myuu10☆SKeWosbaJPA ★Android=pwXnxWHVkM





 いつの間にか夏だった。真夏と言うには早く、しかし梅雨は通り過ぎたような、そんな日になっていた。だから汗も出るし、「暑い」と感じることが増えた。何もかもが不愉快で、不快で、投げ出したくて。とにかく、兎にも角にも、絶対的に、相対的にそれはあまりにも夏だった。

 昨日は雨が降っていたらしい。ガラス越しにでも伝わる蒸し暑い朝に眉を顰めて、現実から目をそらすように素早くカーテンを閉めて、ベッドにUターンし枕元に置かれたスマートフォンに手を伸ばす。手早くメッセージアプリを起動し、一番上に堂々と居座るその人物へ『三限からいく』と打ち込む。これもまた枕元に置かれたエアコンのリモコンを手にし、温度を二度下げ、首元まで冬用の掛け布団を持ち上げて瞼を閉じる。


 * * *


 目が覚めたのは本来であれば四限目の時間。ノロノロとベッドから這い出て、寒いほどの冷気を吐き出すエアコンをそのままに、学校へ行くための支度を始める。
 結局家を出たのは四限目の半分が経過した辺り。そこまで距離の掛からない場所にあるお陰で昼までには着きそうだな、と思いつつなるべく日陰を歩くようにフラフラと学校へと向かう。その途中コンビニで昼飯を買い、ひんやりとした店内の空気を堪能したところで、自動ドアが開けばまた、むわりと湿度80%の不快な熱気が体を包む。気をそらすべく、通知の形跡もないメッセージアプリへ『今日はこなくていいですよ』と可愛らしい絵文字を沢山添え、朝と同じ人物へ送信する。
 校門を潜ったのが四限目の終了のチャイムと同時だった。チラチラとこちらの機嫌を伺うような瞳が気に食わず、敢えて大きく響かせるように舌打ちを向ければ蜘蛛の子を散らすように消えていった。それ以降は気にすることなく目的地へゆったりとした足取りで向かい、長い階段を登り着れば、力任せにドアノブを捻り開け放つ。

 ぶわあッ。
 そこへ足を踏み入れるのを拒否するように、抵抗するように風が流れ込む。直射日光を浴びてしまい、昨日の雨の跡のないコンクリートへ風をものともせず。一歩、踏み出す。

 「──ああ、なんだ。パパじゃないか」

 ドアの向こう側から現れた姿には見覚えがある。いや、見覚えがあるどころではない。

 「何してンの、イノ?」

 くひひ、鋭い犬歯を覗かせながら肩を揺らして笑う。同時に日本人離れした、それこそ、人間離れさえしてるような。銀糸のみたいな髪も揺れ、太陽に照らされキラキラと輝いた。三つ編みした両サイドの髪が猫じゃらしのようにひらひらと動き、摘むようにそれを手にする。大きな瞳から眼球がそのまま零れ落ちそうなくらいに目を見開いて、しかし、その意味に気付くことはなくとも穏やかに笑った。女性らしく、少年のように快活で、何より自分らしい笑い方で。ひとしきり笑い終わればこちらに手を伸ばし、つけていたヘアピンを抜き取られる。パサリ、少ない一束の髪が耳に掛かった。鬱陶しい。
 自分の前髪につけていたヘアピンを抜き取り、人から盗んだそれを不自然に空いた隙間に差し込めば、満足気に頷いて笑う。自分のヘアピンを今度は器用にこちらへ差し込んできて、また耳が心なしか涼しさを感じとる。

 「昼飯を食いに来たついでに、パパが居ないかと思ってな」
 「ふぅん。イズは?」
 「ああ。……んん、どうだろうな。今日は来ないかも」

 用があるなら呼び出すが、と付け加えられれば首を振り、同時に摘んでいた三つ編みを手離す。またふわふわとおばけのように浮遊し元に戻る三つ編みが気になるが、昼飯を食べるべく、フェンスの近くへ寄り掛かり胡座をかいて座る。ぴょんぴょんと跳ねるように歩きながら近づいて、すとんと軽やかに隣に腰を落としてこっちを見てくるその姿はさながら犬のようで。綺麗に縛られた三つ編みに干渉しないように、ぐしゃぐしゃと頭を撫でてやればゴロゴロと猫の真似をするように喉を鳴らして、ゆっくりと大きな瞳を細めて見せる。
 一通り戯れたあと。袋から紙パックのカフェオレを取り出してストローを差したあと、次にメロンパンを取り出して封を開ければ、ふわりとバターの香りが食欲を誘う。

 「そういえば、」

 思い出したようにゆるりと口を開き、くひ、と笑みを浮かべてみせるその顔を見つめて首を傾げる。ガシャン。ぐらぐらと建て付けの悪いフェンスが不気味に揺れ、その小さな背中と共に体重の半分くらいを一手に引き受ける。ぱくぱく、もぐもぐ、ごっくん。ちゅうー。随分と長い間があり、特に気まずい沈黙でもなくゆっくりとメロンパンを咀嚼し、消化していく。ただの菓子パンなのにここまで美味いのは罪なのでは、なんて下らないことを考えながら次に続く言葉が一体どんな形をしているのか待ちわびて。ようやっと、手のひらを眺めていた視線が横顔に注がれる。その後には「まあ、いいか」という適当な独り言によって体を上げ、フェンスは重みから放たれて安心したように軋んでみせた。

 「マナ、って知ってるか?」
 「ソレ……懐かしいなァ、そのあだ名。あー、でもおれ、名前で呼ばれたことなんかねェか」

 口角を上げて、くひひ、と笑い方を真似るように息を漏らす。マナ、まな、愛。そう、懐かしい呼び名だ。小学生の時のあだ名だった、ハズ。当時三年生の時に転校した子が「マナ」という名前だったし、漢字が一緒だし「イトシ」より文字数が少なくて楽だからとそう呼ばれていた。もっとも、その時期は名前の呼び方なんてどうでも良いと考えていたし、そもそも同級生や上級生がその名前を呼ぶ時は大抵ロクでもなかった。もぐもぐと最後の一口のメロンパンを口の中で何度も噛み、最後にはだいぶ汗をかいて濡れたカフェオレで胃の中に流し込む。
 過去のことを思い出していいことなんかない、と口にするのもなにか癪で、いつもより覇気がない口から吐き出される話に耳を傾け、ストローを噛み潰し、閉口。
 唐突に立ち上がって、軽やかに跳ねながら今でも思い出せるそれを鼻歌でうたい、上機嫌に踵を鳴らす。ふんふん、こつん、かつん、かっかっか。指揮者にでもなったつもりなのか人差し指をくるくると振れば、きゅ、とそれを握り締めれば曲が終わる合図。

 「――なあ、あの時のアンタ、“みんな”のこと嫌いだったろ?」

 明日の天気を尋ねるみたいに、まるで友達に軽口を叩くみたいな疑問文。その質問の意図がまるで分からないとでもいうように肩を竦め、ストローを口から離せばメロンパンのゴミと一緒にコンビニの袋へリバース。さよなら、と口をきゅきゅっと結べば全てが後腐れなく終わりになる。そう、感じただけ、気分的な問題には違いない。ぐしゃり、袋を潰す。なんなら踏んづけてしまいたいとも思ったけど、ここで心を乱せばすべてが壊れる。すべて、全部。無理矢理にでも笑みを作り、いっそのこと自嘲するように、喉に苦い薬をくぐらせた後みたいなキブン。

 「おれは“みんな”を好きだったよ。……でもなァ、嫌ったのは“みんな”だろ?」

 ニッコリ。被害者ヅラでも、なんだって良かった。誰に都合が悪くとも、誰に迷惑が掛かろうとも、今更関係なんてない。その顔に指をさせば、答え合わせでもしていたのかと思うくらい、素直にこくりと首を縦に振る。やがて。くく、くふふ、いひひ。肩がぐらぐらと揺れる、揺れる、笑う。何を?

 「ああ、そうだ。そうだよな! 確かにパパは何をしたって∴ォくない。結局、アンタが正義だったってワケだな?」




4ヶ月前 No.1269

とみや。 @myuu10☆SKeWosbaJPA ★Android=pwXnxWHVkM






 「だっておれは世界に絶望しないのです! キラキラでユラユラでフワフワで、そーんな世界が大好きだから!」


4ヶ月前 No.1270

とみや。 @myuu10☆SKeWosbaJPA ★Android=pwXnxWHVkM





 「あれぇ? あれれ? あれれれれー? おっかしいなあ、“この魔法”は、ボクしか使えないはずなんだけど。……ぷぷっ、ふ、くく──ねえ、きみは誰だ?」
 「おやぁ? まだ気づいていないようだね。“コレなら”気づいてくれると思っていたのに。まったくもって残念だよ、キミと鏡合わせの魔法使い(ぼく)のことをしかと、その目に焼き付けておくことだね」



4ヶ月前 No.1271

とみや。 @myuu10☆SKeWosbaJPA ★Android=pwXnxWHVkM

この投稿はフィルタされています。表示するにはアカウントにログインして下さい。

4ヶ月前 No.1272

とみや。 @myuu10☆SKeWosbaJPA ★g2l2NwnCpr_mgE





 「せん、ぱ、――風見、さん」

 ひどく傷ついた顔をして、聞きなれないその呼び名を口にする。ぬるい風に髪が靡き、刹那、その顔が見えなくなった。どうしてもその表情を見たくて、その視線をこちらに向けたくて、桜に攫われてしまいそうなほど悲痛なその手を掴む。びくり、肩を震わせてあげた顔は悩ましげに顔をゆがませていた。しかし、いや、でも。無理に笑っているより、ずっといい。ずっと、より一層、綺麗に見える。俺のために歪ませた顔が、ふわりと、春を感じさせるように彩られる。

 「……先輩、風見さん、風見先輩?」
 「何、水織」

 手のひらに込める力が強まる。



 (つづきは春に書きますたぶん。先走りで6000アクセスありがとうございましたとだけ言わせて)



3ヶ月前 No.1273

とみや。 @myuu10☆SKeWosbaJPA ★Android=pwXnxWHVkM





「応援団」文字通り誰かを応援する為に作られた。だがこの学校ではあまり運動部が盛んではないので、活動は毎週水曜、一度の活動となっている。一昨年、チアリーディング部と統合されており、元々の「応援団側」と「チア部側」の派閥争いが数年経った今でも続く。

「金融機関部」通称闇金。金持ちの部長が秘密裏に金の貸し借りを行う。限度額は一万円と可愛らしいものだが、返済が一日でも遅れれば、靴箱に通達が来たり教室に取り立て屋≠ェ乗り込んでくる。部活申請はしておらず、生徒会や教師までもが「昼飯代」などとして利用しているため、黙認されている。

「机上遊戯(テーブル・ゲエム)倶楽部」とは仮の名称であり、専ら「カジノ」や「賭博場」と呼ばれる。麻雀やその他トランプ、全てのゲエムに賭けを行い、賭けるものは大体同等の値段のものであれば品物は問わない。低レートでコツコツといくか、高レートで一発逆転を狙うか、判断力が試される。

「代理貸出部」お助け部とやることは似ているが、こちらは運動部専門。雑務はこなさない。それに加え、等価交換ということで、代理人が好きなものを渡して代理を頼むのがルールとなっている。運動が得意な部員が集まった、奇特な文化部。

「お助け部/Q.S部」いわゆる何でも屋。落ちこぼれ・不登校児などが、単位及び内申点稼ぎの為に強制的に入部させられている。部員は全員三年生となっており、来年この部活は廃止される予定、らしい。代理、雑務、肉体労働、なんでもござれ。対価は支払われない。救済・支援部。

「青空研究会」部活をサボりたい生徒がサボりたい為に創った部。サボりによる、サボりのための部活とも言える。毎週水曜が活動日だが、その内晴れた日にのみ活動。屋上で空を眺めるのみ、時には無理矢理レポートも書かされる。どうしようもない怠惰な人間が集まるので、「堕落部」とも呼ばれる。

「デザート部」略称・デ部。悪質な嫌がらせである。週に二度(火曜・水曜)に集まって、お菓子を作って食べるだけ。その日の活動の終わりに、次に作るお菓子を決める。勿論ほとんどが女子生徒で構成されている部活であるが、最近はちらほら男子生徒も居る模様。

「B部」通称BB。勉学部として申請しようとした所で、部長が面倒になって略してB部で申請、承認された。天才・秀才誰でも構わず放課後に勉強をする部。勉強したければ週何度でも。テスト前には部活動が盛んに行われるが、それ以外の時期ではそうでもないと思われる。

「色彩研究部」カラーギャングと学校内では呼ばれている。赤・青・黄の三原色で派閥が存在しており、最近では白・黒のモノクロの派閥もチラホラ見受けられる。それぞれの派閥の色の持ち物を見えるところに所持・身に付ける。同じ部室内で、派閥にわかれて駄弁ったりなど自由にしている。ギスギス。

「映画鑑賞部」通称エイカン。国やジャンルを問わず、とにかく様々な映画を鑑賞するのみの部活。菓子や飲み物の持ち込みも許可されている。放映時間・映画内容は当番の人間が決める。居眠り・余所見厳禁である。時折、当番の人間の趣味嗜好がバレてしまうような事故も起きる部活。

「芸能部」芸能人好きが集まる部。アイドル好き・お笑い芸人好き・俳優女優好きとにかく色んな人間が在籍。週に何度かのペースで、自分の好きな芸能人を他の部員にプレゼンをする機会も設けられている。明らかにヤバそうなタイプのオタクも在籍しているというウワサも、たまに流れてくる。

「奇術研究部」通称KK部。本格的な奇術(マジック)研究を行う部活。時折、学校内の火災報知器が鳴るのは大体この部活のせいであるのは、全校生徒周知の事実。爆発音がするのも大体この部活のせいである。人体を利用するマジックで大抵何かしら問題を起こしたりなど、とにかく教師が手を焼く部活。

「対バンハウス!」感嘆符までが部活名、らしい。様々なバンドが在籍し、日々ローテーションで二バンドずつ対バンを行う。音楽を愛し、音楽に生きる者達しか集まっていないので、何だかんだ平和な模様。バンドのジャンルは様々。時折、運動部の生徒がオーディエンスとして紛れ込んでいるとか。


3ヶ月前 No.1274

とみや。 @myuu10☆SKeWosbaJPA ★Android=pwXnxWHVkM






 されども、愛憎。


 さがさないでください。
 学年通信の端っこをちぎって、わざとらしいくらいの女の子みたいな可愛い文字で書かれた十一文字。


 * * *


 みぃくんはぐしゃぐしゃにその紙を握りつぶして、舌打ちをした。びっくりするくらい怖い顔をして、ぼくの方も見ないで。ううん、たぶん、見えなかったんだと思う。名前を呼ぼうとしたけど呼べなくて、手を伸ばそうとしたけど伸ばせなくて、結局ぼくが掴めたのはカーディガンの裾くらいだった。じわじわとくるしい時間が流れて、ぼくは、やっと深呼吸をするために口を開いて。そしたら、みぃくんと目が合った。

 「うさぎ、俺、」
 「……ううん。大丈夫だよ、みぃくん。ぼくは、大丈夫だから」


2ヶ月前 No.1275

とみや。 @myuu10☆SKeWosbaJPA ★Android=pwXnxWHVkM

この投稿はフィルタされています。表示するにはアカウントにログインして下さい。

2ヶ月前 No.1276

とみや。 @myuu10☆SKeWosbaJPA ★Android=pwXnxWHVkM




 毒 693


「あはは! そうそう、俺、あの時宇草のこと大嫌いだったからさ」「別に悪いとは今でも思ってないよ?」「選べる人間と選べない人間の違いなんだよね、こういうの。俺らは一生分かり合えないなあ、多分」「別に? 今でも好きとか、思ったことないよ。まあ、殺したいと思うことはなくなったけどね?」「そ。俺たちはないものねだりしてるの、知ってるよ。」「……いいよ、バラしても。宇草は結局、最後まで俺のこと視界の端にすら入れてくれなかったし、きっと変わってないと思うけど」「天才サマのオメガネに叶わなくてざーんねん。シクシク、貴瀬良くん悲しいなあ?」「ん? ……そう、近々会うんだ。じゃあ、よろしく伝えといてよ」「あ。あと、俺からの伝言頼んでいい? ──“人間にはなれたか”、そう伝えてくれればいいからさ。お願いね」


2ヶ月前 No.1277

とみや。 @myuu10☆SKeWosbaJPA ★Android=pwXnxWHVkM





「きみの優しさが痛い」
「壊れてくれよ。一生の、おねがい。」
「誰かの為に生きていくことが正解だとは思わない」
「さあ、今日も仲良く殺し合おう」
「ボクはおヒマじゃないんだぜ? イヤイヤ。だってボクは、これから君を殺すために集中しなければいけないからな。」
「子供のままでいたい」
「これはイフ、あるいは希望」
「ギフテッドなんてクソ喰らえ」
「一時的なものでも、もはやそれが愛情でないにしても、そばにいて欲しい」
「君だけは諦めないでいてくれると思ったのに」
「愛しいから殺す? 愛しいから護る? 愛しいから共に生きる? ああ、どれも正解だ。そして不正解。この世もあの世も、所詮矛盾でできた、傲慢な人間達による傲慢な人間達の為の世界ってワケ。まあ、できることは願い祈るだけか。それでも、信じるものは救われる、だろ?」
「こんにちは。新たなストーリー・テラー、今度はどんな話を聞かせてくれるんだい?」
「人を愛するのには労力がいるだろ? だから、人を愛すという莫迦なマネはしない。そう、これは計画的怠惰と言う。」
「ああ、もう。愛だの何だの鬱陶しい。目で見て耳で聞いて指で触れられるものしか、信じない。信じられないんだよ。感情に左右される程、簡単に出来た人間じゃないんだ。」
「愛した人間に裏切られたことがあるか? 無いよなァ、お前みたいなヤツは。だから、嫌いなんだ。気持ち悪い。愛を信じて救われたことなんて、一度もないのに、」
「それでも、俺は俺を肯定する。」
「ああ、愛してるぞ! そうだ。全ての人間――全人類を!」
「優しくないあなたが好き」
「今さらそんなのどうだっていい。物語の主人公はいずれにせよ、何かしらの終わりを迎えて眠りにつくんだ。」
「おれは好きでしたよ、みんな≠フこと。でも、そうじゃないでしょ? みんな≠ェおれのこと嫌いだったんだから。」
「オレぁ幸せそうにしてるヤツが、大ッッッ嫌いなんだァ。だからよォ、つい、この手で――殺しちまう」
「君の酸素になりたい。」
「理由なんて。君がいる、それだけでいい。」
「きみは正しい。けど、正しいことがすべてじゃない。」
「キミがキミであるなら、そうであるなら。それでいい」
「ヒトの真似事をするのも、カンタンじゃァ無い」
「うるせーよ、ぺド野郎!死ねッ!殺す!!」
「大衆がそれを「正義」と言うのならば、最早それが如何なる悪行であろうと「正義」となるのだよ?」




1ヶ月前 No.1278

とみや。 @myuu10☆SKeWosbaJPA ★Android=pwXnxWHVkM





「僕には夢がある。この学校に関わる人たちを、“いかなる方法をとっても”幸せにすることだ。」「そして、僕には夢がある。僕はヒーローになりたかった」「余談だが、僕は負けん気が強くてね。ちょっとやそっとじゃ、大抵のことは諦めてやらない。何度だって、いつだって食らいついてやる」「……そして最後に、僕には夢がある。僕は僕の夢を全て叶えたいんだ。」


1ヶ月前 No.1279

とみや。 @myuu10☆SKeWosbaJPA ★Android=pwXnxWHVkM





PP


 シンデレラ:ガラスを操る能力
 白雪姫:毒を操る能力
 かぐや姫:光を操る能力
 人魚姫:水を操る能力
 赤ずきん:銃を操る能力
 ラプンツェル:髪を操る能力
 眠り姫:夢を操る能力
 雪白・紅薔薇:薔薇を操る能力
 グレーテル:炎を操る能力
 親指姫:花を操る能力
 └計10人

 ヒーロー:男女各5人ずつ
 └計10人

 コースター:三人
 サポーター役。スパイが一人。内密者。


 南ノ国:山、花畑(外れの森:御菓子の家)
 東ノ国:海(端の方に竹林及び日本の農村)
 西ノ国:城が多い
 北ノ国:一般市民が多く住む
 中ノ国:不思議の国(全貌は誰も知ることがない)
 雪と眠りのとこは獣人多め



1ヶ月前 No.1280

とみや。 @myuu10☆ylSWQ5sA46A ★Android=pwXnxWHVkM







 「あはっ、こんにちは。みくは冬郷未来です。あなたのお名前はなんですかー? ……あ、みく、聞いたことありますよぉ。確か三年生さんですよねー? んふふ! みくは偉いので、人の名前は忘れないのですよ。えっへん、良いでしょう。あなたにみくを褒める権利をあげますっ!」
 「この傷、ですか? みくも、よくわからないんですよねー? 知らないうちになってたというか、みくが倒れたあとにあった傷なんですけど、記憶がなくて……。え? ああ、もう大丈夫なんですー。みく、体丈夫なので!」

 『みくは、……あなたが幸せだとうれしいんですよ。あなたがみくのことを嫌だなあって思ってても、みくはあなたが生きてくれているだけで、すっごくうれしいんです。だから、だからね、みくは、――えっと。あなたが大好きなんですよっ! あのね、みくのこと、おいて行かないでくださいね……?』


 名前: 冬郷 未来(とうごう みくる)
 性別: 男
 年齢: 十六
 学年/クラス: 二年三組
 委員会/部活: 保険委員会/吹奏楽部(パーカッション)
 備考: 一人称は「みく」。二人称は「あなた、(親しくなれば)呼び捨て」。三月二日生まれ。「依存依存症」であり、基本的に他者に依存することに依存している。自分にはこの人が居なければいけない、あるいはこの人には自分が居なければいけないと思うことに依存するように。依存相手が普通に生活している分には何の影響もなく生活出来るが、相手がもし死んでしまったり瀕死状態になった場合に強く精神に影響が及ぶ。一度それにより自殺未遂をしかけたこともあり、“三日間”自傷行為や自殺未遂などを行うが、その後は依存相手の記憶を全て失う。原因は不明だが、脳が自動的に未来自身を護るべくそういった情報を根元から処理していると思われる。記憶を失った後は何事も無かったかのようにいつも通りに過ごし、“三日間”の記憶も同時に失う。




 「愛や恋は人を変える! いつだってそうだろう? だから私は人を愛し、人に恋して自分を変えたいのさ! ……それは生涯を共にする相手に出会った時だけだろう、って? ノンノン、ナンセンス。人は誰をも愛せる力を持っているんだから、そんなの勿体ないじゃないか!」
 「イチトじゃ少し男勝りに聞こえるし、そうだなぁ。私の事は「いっちゃん」とでも呼んでくれたまえ! ああ、でも。愛する君に呼ばれるのなら、何だっていいけどね?」

 名前: 密日 一止(みつび いちと)
 性別: 女
 年齢: 十七歳



1ヶ月前 No.1281

とみや。 @myuu10☆SKeWosbaJPA ★Android=W8NegY7gxW





クリーニング屋、八百屋、魚屋、お好み焼き屋、古本屋、花屋、電化製品屋、古具屋、文具屋

「あたし、海から来たの!」「どうしてあなたは海が嫌いなの? あんなにもきれいで、やさしくて、あったかくて……とってもいい場所なのに!」/海神

ルーク:ドッグタグ│クィン:鍵│サミュ:手袋│ノック:ピアス│グラン:懐中時計│ハミィ:砂時計のネックレス│ザック:中途半端なタトゥー│ラッド:アンクレット│コニー:バンダナ

ネブラ:年齢不詳ではあるが、管理機関の自称“代理人”であるが、基本的に指揮を執っている。幼い少年の姿をしているが、言うことはひどく大人びている。月狼団のことを酷く恨んでいる(?)頭の回転が早く、時にいう言葉は残酷であるが、部下のことはこれでも一応大切にしているつもり。らしい。

レイヴン:齢十九にして異例の部隊長となった青年。天才。飄々としているが実力は本物。上官にも気に入られているが、そんなことをどうでも良さそうにする素振りがよく見られる。情報通であり、どこに居ても常に新しい情報を既に耳にしている。誰に対しても気を遣わない失礼極まりない男。
「俺はこれでも正義のヒーローが好きなんだぜ? 例え偽善だとしても、無条件に人を救える姿は感動モノだよな。ウソだと思う? 別にどちらでもいいさ、夢物語なんだから。」



1ヶ月前 No.1282

とみや。 @myuu10 ★Android=W8NegY7gxW






 我問 理(がとう ことわり)
 「いいよ、助けてあげる。……気が向いたらね?」「オマエは、一体、誰に、口を、きいてるんだ? 答えられたら……そうだな、花丸あげるよ。」
 「なんで? 世界はオレを中心に廻ってる。そうだろ?」

 創造のギフトと消滅のギフト。無効化
 人の痛みがわからないとんでもない人間。
 灰と白の混ざった斑な髪で、そこに黒のメッシュ入れている。わや。ドストレート。前下がりに長く、もみあげが顎と同じ程度。前髪はざっくりと真っ直ぐに切られていて、右目が少し隠れる程度で、邪魔になった時は耳へかける。
 アーモンド型の猫目、ライトグリーンの鮮やかな瞳。すこし吊り眉気味で、割と人相が悪い。


 栗里 晴間(くりさと はるま)
 「おれが生徒会様に抵抗するなんてありえないッスよ? めちゃくちゃ怖いし?」「世の中――違う、この学校に。優しい嘘はついていいって言われたんスよ。……あれ? 言ってない? あははっ、嘘、ついちゃった」
 「嘘は隠し通せば本当になるんだよ。知ってた?」


1ヶ月前 No.1283

とみや。 @myuu10☆SKeWosbaJPA ★Android=pwXnxWHVkM





「この世に必要のない正義なんかない。時としてそれが相反することで、正義と悪が生まれるだけで。結局、人が何かを思えばそれは“正義”なんだよ。それで誰が幸せになるか、誰と幸せになるか、が違うだけでね。けど、僕はそれでいいと思うんだ。誰かのために誰かが犠牲になることも、また、その犠牲の上で成り立つ幸せがあることも。僕は、知っているから。……きみも、きっと知っているよね。いやはや全く、事実は小説よりも奇なり。面白いことも、苦しいことも尽きないね。──人生はこうでなくちゃ!」



1ヶ月前 No.1284

とみや。 @myuu10☆SKeWosbaJPA ★Android=pwXnxWHVkM




一日目:絶対服従、マイ・レディ!



 どこを探しても居ない。居ないったら居ない。校舎裏も、図書室も、職員室にも邪魔して。女子トイレは、流石にモラル的な意味で入れなかったけど。しかし居ない。もはや気配すら感じられなくて、あの人のことだから先に帰ったのかも知れない。なんて、二人分の荷物を持って校舎を出た途端に、遠くからあの声が降り注ぐ。一瞬でも分かる。四六時中聞いているその声を頼りに、上を向いて、やっとその姿を見つけた。

 「……ま、く……シマ……く、──シマくん!」

 しかし、あまりにも。あまりにもその姿は、

 「ッ、リリカ嬢! えっと、あの、それは……?」
 「無駄話はよろしい! ほら。さっさと荷物を下ろして、……私を受け止めて!」

 なにを、と聞く前にその人は窓枠に足をつく。受け止めるのは愛でもなく、はたまた憎悪のようなものでもなく、もしや。もしや、自分自身なのでは。そう気付いたところで、いや、もしかすると気付く前に。全ての荷物を投げ捨て、園芸委員会が昨日綺麗に整えたばかりの花壇を踏み荒らし、落下地点へ走り込む。足を踏ん張り、上を見て、失敗しないように。
 ふわり。正にそんな擬音が似合うふうに、何もかもを身に任せて寂れた校舎の三階から飛び降りる。はためく柔らかなスカートを押さえつけながら、無重力状態にあるみたいに焦った様子もなく、優しく口許を緩ませた。その笑みは“トチったら殺すわよ”なんて脅されているみたいで、文字通り手に汗を握って唾を飲み込む。
 思ったより滞空時間は短く、思ったより衝撃は軽く、その人は小さな悲鳴を上げて腕の中に収まった。わたあめのように軽いとまではいかないものの、平均以下の体重、と自身が言っていたようにとても軽いその身体を抱き留めて大きく息を吐く。女性は壊れ物のように扱いなさいと教えられてきたけれども、壊れ物が自ら壊れようとすることが多々ある場合はどうしろと言われたか。記憶にない。そもそも、教えられた覚えもない。

 「いつまで抱き締めているつもり、シマくん? そんなに私が好きなの?」
 「いえ。今下ろしますね、リリカ嬢」

 ふん、鼻を鳴らして苛立ったように頬を抓まれた。わざわざ爪を立ててまで。あからさまに機嫌が悪くなったように顔を逸らして、ゆっくりと地面に下ろせば「ご苦労」と声を掛けられる。教育の賜物か、この人はこんなナリでこんな性格をしていても、律儀なところはある。見た限りではわからないけども、だから、誤解されがちなんだけども。

 「あっ。そういや、その髪、」
 「髪? ああ。切ったの、私が。」
 「へ……?」

 そう、そうだ。その変わり果てた姿にわざわざ指をさして、問いかける。思わぬ回答に顔の筋肉が釣りかけたが、ゆっくりと頬を解す。抓まれた箇所が痕になって痛い。いや、そんなことはどうでも良くて。夕陽に照らされてキラキラ輝く金髪が眩しくて、目を細めながら、まじまじと見つめる。
 朝、というか昼休みまでその綺麗な髪は腰くらいまで伸ばされていたのに。今は肩より上にまで切られていて、切り口も通いつけの美容院に言ったものじゃなく、無理矢理切られたような。鬱陶しそうに手の甲で髪を払うその人と、横髪についた髪飾りを交互に見比べて、言葉がつっかえたままあたふたと手を動かすだけ。口を開いても、感想なんて出てこずに。結局何もかも飲み込んでしまう。そうすると、次は足を踏まれた。何故か室内から降りてきたのに、外靴を履いたその足で、ジリジリと潰すように。

 「いッ、……リリカ、嬢……?」
 「……貴方は、世辞の一つも言えないの」

 問い掛けではなく、落胆。はぁ、小さく溜め息を吐き出して、踵を返して歩き出す。自分だけの荷物とトレードマークの傘を持って、一人で、歩いていく。たった一人、乱れた髪を鬱陶しげに揺らして。
 とくべつ心が痛んだとかではなく、なんとなく。ただなんとなく、その人をそのままにしては置けなくて、走って追いつかなければいけない気がしたから。校門を出ようとする後ろ姿から三歩下がって、ゆっくりと歩幅を小さくしてついていく。

 「リリカ嬢、……髪、どうするんですか」

 背中に投げかけた言葉は、ただの壁に当たったみたいに無視される。と、思ったけど、その人は振り返りもせずに声を出す。

 「シマくん、手先だけは器用なんだから整えてよ」
 「……でも、リリカ嬢は──、ッ……ぁ、の?」

 「いーい、シマくん? 貴方が私へ返す言葉は、“はい”か“イエス”。あるいは賛辞の言葉だけよ。奴隷(いぬ)が主人の価値を決めて、勝手に意見しないで。」

 傘の先が首元に、喉仏を押し込むように当てられる。小さく紡いだ了承の言葉に気を良くしたように、またくるりと踵を返してその人は歩き出す。少し押されただけなのに、どういうメカニズムか咳が止まらないけども、歩くのをやめるわけにはいかない。この人に相対する上で、拒否権など行使できると考えない方が利口だ。だから、なので、ならば、どうしたら。考えても、結局この人には叶わないのだから、最終的には首を縦に振って言われたことをやればいい。きっと、たぶん。そうしたら、少しは褒めてくれる。そうだといい、そうだとしたら、何だっていうのか。

 「ええ、はい。どうかあなたのお望み通りに、……マイ・レディ」

 ちらりと振り向いた瞬間、瞳がとろりと溶けた。夏祭りの時に見た、りんご飴の色に似ている。

 おいしそう、と口にした瞬間、傘で叩かれた。


 * * *


 「リリカ嬢、これ。今日の弁当です」
 「いつも通り、気持ち悪いくらいに手の込んだお弁当ね。わざわざどうも、シマくん」
 「あ、それから。」
 「それから? 用があるなら手短にって、いつも言っているでしょ」
 「髪短いリリカ嬢、……すっげえ綺麗です」
 「──ふん、成長したのね? いいわよ、褒めてあげる。いい子ね」
 「……あ、りがとう、ございます……?」


22日前 No.1285

とみや。 @myuu10☆SKeWosbaJPA ★Android=pwXnxWHVkM




二日目:かみさまわらって。



 人身事故かなんかで、朝から踏切のバーは下ろされたまま。いつものコンビニで肉まんを買おうとしたら売り切れてたし、昨日充電し忘れたスマホはあと20%で命が尽きる。夏服のまま外に出たら思いのほか寒いし、なにより、そんなことよりも、今日に限って雲ひとつない快晴なことが何より不快ってこと。


 「……なにより不快、だったんだけどなァ」


 目の前に転がるのは、見覚えのある形をした死体。


 * * *


 そもそも、今日は夜にしか外に出るつもりはなくて。昼までゆっくり寝るつもりだったのに。どうしようもなくうるさいモーニングコールと、うるさい声にパッチリ目が覚めちゃって。だから仕方なく、仕方なァく家を出たらこんな有様。やっぱりドア開けるんじゃなかったとか、今更後悔したって遅いのはわかってるけど。
 顔を逸らしても、首を捻っても、しゃがみこんで“ソレ”を見つめてみても、導き出される答えは同じで。どう足掻いても、何がなんでも神様はとにかくおれを不幸にしたいらしい。構ってちゃんなのはいいけど、節度ってモンがあるよな。なんて、お説教してみたり。


 錆びたみたいに、綺麗な赤色じゃない血をつけて。息もしないで横になってる猫を、その絶妙にブサイクな顔を、おれは知ってる。たまに会ったらついてきて、人の昼飯のおこぼれにあずかろうとする頭のいいヤツだけど、やっぱり可愛くなかった。飼い猫だったのか野良猫だったのか、首輪をつけてるのが特徴的だった、気がする。だから、おれはコイツを知っている。
 明らかに「喧嘩で負けた」とかいうバカみたいな理由付けは誰もしないだろうし、まァ、これは。人為的なモノで。ということは、この猫を殺した犯人が居るってことで。


 「かわいそーに、痛かったろーになァ。……ま、おつかれさま」


 そのままそこから離れようとしたけど、流石に顔見知りの奴を放っておけるほどおれは非情じゃないわけで。まだ乾ききってない血に触ったあと、冷たい体を触って、仕方なく持ち上げる。幸いにも、と言えるのかは知らないけど。道に人は居ないし、学校も放課後な上テスト週間だし残ってるヤツはほとんど居ない。そうと決まれば、仕方なく、連れていくしかないわけで。全く、ホントのホントに仕方なく。


 * * *


 地面を掘る。ざく、ざくざく、ざく、ざく。ざ、く。
 丁度いいところにあったスコップで、校舎裏の土をひっくり返す。湿気た臭いがするし、土が冷たい。適当に生えた雑草もまとめて投げて、いっぱい、もっと、掘る。指が汚れても、まァ、もう血で汚れてるし、そんなの大した問題じゃない。二の次、三の次。とにかく、今は掘ることだけを、


 「先輩……?」


 聞いたことがある声。だれだっけ、なァんてのはウソ。おれの記憶力を舐めてもらっちゃ困る。おれを「先輩」なんて、若干敬って呼ぶ子はそう多くないしね。なによりこのおれを疑ってるのに、シンセツかなんなのか声掛けてくるカワイコちゃん、たぶん一人しか知らない。
 意図的に冷たくなったソイツを隠すみたいに、体だけそっちに向けて、スコップを傍に突き刺した。あからさまにおれの行動を気にしてる視線の前で、いつも通りにヘラヘラ笑ってやる。あ、思い切り嫌そうな顔。猫被るのもやめちゃったんだァ、とか声掛けようとしたけど、前置きなんかなく近付いてこられたから切り出せなかった。ザンネン。
 すん、と小さく鼻で息を吸って、緊張したみたいに目線がうろうろ。目の前につったたれても流石に困るんだけど、面白いからほっとこう。この子に用があるのと同じで、おれにもなるべく早く済ませたい用事があるわけだし。おれは何でもかんでも合わせてあげるほど優しくねェからな。


 「何、してるんですか」


 “何”とか言われると困っちゃうなァ。ウソだけど。刺したばっかりのスコップを引き抜いて、ちょっとだけ考えるフリ。


 「なんだろーなァ? あはッ。──死体遺棄、とか」


 あ。五十音の一番最初も出てこない誰かさんの弟くんは放置して、また穴を深くしていく。まだ、もう少し。ちょっとだけ背伸びして、おれの向こう側にあるモノを見て、やっと何が何だか分かったみたいで。分からないけど舌打ちされた。そういうとこはあんまり似てないな、とか、おれが未練あるみたいで笑っちゃう。未練があるなら、わざわざこんな場所選ばないって。誰に言い訳してる最中か分かりませんけど、弟くんも何故かスコップを持ってきて、腕まくりを始めたからビックリ。


 「おれに優しくしてイイの? もしかして、おれに気が──」
 「あっはは! 先輩になんてありませんよ、絶対に。死んでもね。でも、……俺、動物好きなんで」
 「はァい、ダウト」
 「うるさいな。わざわざここ選ぶあんたなんか、好きになるわけないだろ」


 笑った顔はちょっとだけカワイイのに、すぐ眉間にシワが寄る。相当嫌われちゃってる、なァんて。今更傷つかないし、手伝ってくれるならおれとしても楽になるし。つまり、今日一番のラッキーなことだったり。仏頂面のまま、ひたすらざくざくやってくれる分にはいいけど、時々おれを睨むのだけはやめてさっさと掘ってくれねェかな。もちろん、口にはしませんとも。愛くん、人の気持ちはよくわかる子だからな。わざと言っちゃっても、分かってたから次に何言われても怖くないもんなァ。なんて考えてたら、流石にチラチラ睨むどころか普通に睨まれたから、おれも手を動かしてあげる。頼んでもないのに手伝ってるのはそっちなのに、随分と上から目線だこと。おれ、これでもセンパイなんですけど。仕方なく、掘り進める。もうすぐ。
 ざく、ざく、ざく。ざくざく。ざく。穴というより、溝ができてきた。深すぎじゃないけど、埋めるには丁度いいサイズの溝。弟くんはと言えば、必死になってまだ掘ってるけど、それは放置しといて。


 「天国ではオシアワセに、じゃーなー?」


 鉄くさい、手のひらサイズのソイツ持ち上げて、最後の挨拶。にゃあ、とも鳴かない。寂しくはないけど、違和感はある。弟くんもやっと気付いたみたいで、小さくなんか言ったような気がしたけど、おれは聞こえなかった。聞こえなかったフリ。バレないように鼻で笑ったら、地獄耳だったみたいですぐにスコップを向けられた。怖い怖い。弁解もせずに、手に持ったソイツを冷えた土の上に置いたら溜め息をつかれた。カワイくないコーハイ。
 じゃあ。ひらひら手を振って、またスコップを持って掘った分の土をかけていく。名前も知らない猫を、おれのことが大嫌いな年下と一緒に。その途中、ぽつぽつ土にシミが出来てた気がするけど、優しいおれは雨のせいにしといてあげる。貸しイチね。


 おれが帰る頃にはたぶん、踏切のバーも上がって。コンビニの肉まんも新しく追加されて、家に帰れば充電器もある。日も傾いてきたし、明日は雨って聞いたから。恐らくもう、死体なんて見ない。だから、明日はいい日になる。楽しい日になる。なにせ、今日、こんなに頑張ったし。ね、神様。おれのこといくらキライでも、おれはアンタのこと愛してるから機嫌直してよ。


 * * *


 「お手伝いドーモ。えーッと、二号クン?」
 「あんた、全く反省してないし馬鹿にしてるだろ」
 「まっさかァ! そんなワケ、ぜェんぜんあるよ」
 「……ほんっとに嫌いだ! あんたのこと! 死んでくれ!」
 「そんなに言ってるのに相手してくれるってことは、おれのことダイスキだったりして」
 「自惚れも大概にしろ、バーカ! さよなら!!」
 「バイバーイ、彼岸クン。……よーし。じゃあ、説教受けに行きますかァ」



21日前 No.1286

とみや。 @myuu10☆SKeWosbaJPA ★Android=pwXnxWHVkM




三日目:青春ストライキ



 二時間入り浸ったハンバーガ屋を出たら、オレのお先みたいに空も真っ暗だった。息を吐くと白くなるくらい寒いわけじゃないけど、それにしても十分、寒い。ツヅキなんてもうコートまで出してるし。まぁ、コイツのは極度の寒がりってだけなんだろうけど。オレもカーディガンだけじゃ寒くなってきたし、そろそろ上着出さなきゃな〜とか。そんなこんなで、そろそろ解散しようかなんて話してたら、なんだかよ〜く知った顔を発見。遠くからスマホ見ながら歩いてくるソイツは、“オレ達”のかぁいい後輩くん。オレとツヅキには気付いてないみたいで。まぁ、イヤホンつけてるし当たり前か。

 「どうする?」
 「……二次会行こか」

 それさんせーい。


 * * *


 というわけで、ファミレスについた。

 「なにか用事があったんですか」
 「いいや、あらへんけど?」
 「イオリは用がないと、オレ達に会ってくれないの?」

 シクシク。下手な泣き真似をしたら鼻で笑われたうえ、勝手に注文ボタン押してるし。ご丁寧にドリンクバー三つを注文したあとに溜め息をつかれて、オレもツヅキも悲しいぞ。ツヅキはへらへら笑ってるけど、悲しんでるハズ。多分。そんなことすら露知らず、勝手に席を立って勝手にドリンクバーコーナーに向かうイオリを追いかけるために、ツヅキに飲みたいものを聞いてから立ち上がる。オレはイオリくんと違ってやさしいから、ツヅキの分の飲みものも持ってきてあげるんです。イオリくんと違ってやさしいから。そんなん、口に出して言ったらまた怒られそうだけど。
 からんころん、ガラスのコップの中で氷がシャルウィーダンス。ちょっとだけ店内が暑いからなのか、アイスティーを所望したツヅキのためにめいっぱい氷を入れといてあげる。片手間に、オレのウーロン茶もついでいく。ボタンを同時に押して注がれていく液体に夢中になって、もう少しで零しかけた。危ない危ない。イオリはと言えば、ぐるぐるしてまだ飲みものに迷ってるみたい。こういう優柔不断なところがたまにあるけど、基本的にコイツは割とハッキリものを言うしちょっと生意気。オレは心が広いから許してあげるけどね。

 「イオリ、きょうのスープはコーンポタージュだよ」
 「……それにします」

 ふうん、なんて相槌をうって一足先にツヅキが荷物番をしてくれてる席に戻る。言ったことどおりに、小さなマグカップにコーンポタージュを注いでるイオリを見て、ちょっと笑っちゃうなぁ。オレの言うこと聞いたみたいな、ユーエツカン? そういうの。そういうトコが、かぁいいって思うんだけど。イオリに言ったら怒られるに決まってる。だから、ツヅキに目線で訴えたら楽しそうに目を細めた。これは同意か、否定か。ツヅキ検定初級だから、オレにはまだ分かんない。都合よく解釈しよーっと。

 「おー、あんがとさん。ん、……美味い」
 「それはよかった。ツヅキ、紅茶とか好きだもんなぁ」

 視界の端っこでツヅキが頷いたのを見て、特に反応もなくオレもウーロン茶を飲む。この苦味が、ちょっとだけクセになる。実を言うと、緑茶の方が好きだけど、それは家に帰って飲めばいいし。なんとなく小腹も空いたしサイドメニューでも頼もうか、なんて考えてるあいだにやっとイオリが帰ってきた。あったかそうなマグカップを、わざわざ両手で持っての帰還。ツヅキがそれをからかって無視されてる。どっちが悪いかといえば、十割ツヅキだからフォローもしないけど。この世には自業自得って言葉があるんだよ。
 席についてからイオリは、律儀につけた黒の腕時計を何度も確認してる。カノジョと待ち合わせしてるのか、ってくらい。もしかしたらイオリのことだし、カノジョ勝手に作ったりしてるかも知れないけど。ツヅキもオレとおんなじことに気付いたみたいで、横を向いたら目が合った。目が合った瞬間、ツヅキが嫌な笑い方をする。詳しく言うと、人をからかう時の顔。

 「なんや。さっきから、時計ばっか気にしよるみたいやけど」
 「どうしてちょっと喧嘩腰なんですか……別に、人と待ち合わせがあるからですけど」
 「とうとう、“俺らの”伊織君にも恋人ができたっちゅーこと?」
 「ハア? 何言ってるんですか、アンタ。……からかうのも程々にしてくださいよ」

 空気がピリピリする。この二人、何かと相性が悪いから、なんと凄くめんどくさい。ウーロン茶を啜りながら会話する二人を眺めるの、オレは面白いから好きだけど。けど、流石にヒトには地雷ってモンがあるし、ツヅキにはそろそろやめてもらわなきゃなぁ。踏み込んじゃいけないって分かって踏み込むのは、ワリと犯罪級ってことも、まあコイツなら知ってんだろうけど。なおさらタチが悪い。大切な後輩にでさえ、嫌われていいと思って接するバカだから。出会う時期間違えてたら、オレ、ツヅキのこと殺してたかも知れないね。なーんて、冗談。

 「で、イオリは誰に会いにいくの? マジでヤバいことなら言わなくていいけど。例えば、エンジョコーサ──」

 あ、睨まれた。

 「……駅で、財布とスマホ拾ったんです。その持ち主から、お礼がしたいって言われただけ。他に聞きたいことは?」
 「なァんや、つまらんな。いちお聞いとくんやけど、性別は?」
 「多分、男」

 顔をしかめる。盛大に溜め息を吐き出して、吐き出したあと、ツヅキが笑った。今度の笑顔は、そんなに嫌な感じじゃない、気がする。コイツの笑顔は基本的に胡散臭い。意図的にそうしてるなら、コイツは相当頭がいいけど、してそうだから怖い。そんなこと考えてるあいだに、バカなオレには理解できない領域で、賢いイオリくんとツヅキくんで会話がなされてるのかも知れない。一人ぼっちにしないで欲しいんだけどなぁ。
 でも、イオリが不器用に笑ったからまだ良かった。これでイオリが帰ってたら、絶対、もうオレ達とは絡んでくれないだろうし。ツヅキに横目で、「イオリの優しさに感謝しろ」って言ってみたけど。多分気付かれてない。気付いたとしても、まぁ、コイツなら無視しそうだから。とりあえず、足を蹴っておいた。特になんの反応もされなかったけど、舌打ちはされた。オレに向けたものじゃないと仮定して、話を進めよう。コイツを敵に回すとただめんどくさいから、何だかんだ放置するが吉。
 本日七度目くらいに時計を確認したあと、慎重にマグカップを持って口元に運ぶイオリを見て、どうしても隣のツヅキと同じように顔を逸らして笑っちゃう。そのあと、その言葉を口にするかが、オレとコイツの違いだけど。

 「ほんま、伊織はかいらしいなァ」

 そう言われた本人は、思い切りツヅキを睨みつけた。で、またスープを飲み始める。イオリも、やっとコイツに何を言っても無駄だってのが分かったらしい。もしかすると、そんなの気にしてる暇がないくらいだったのかも知れないんだけど。それにしても、いくら猫舌だからって飲み方が慎重すぎるんだよ、イオリ。


 * * *


 「たった数百円ぽっちの奢り、ありがとうございました。」
 「ええんよ、気にせんとっても。なんや伊織くんのこと、怒らせてもうたみたいやし?」

 完全に気付かないふりをしてるのがバレバレ。おどけたみたいに首を傾げるのが、またムカつく。だから今この瞬間、後輩からオマエへの好感度がダダ下がりしてんだよ。白けた目をしてツヅキを見たあとに、オレに対しては特に何もなさそうなかぁいくない後輩くんは、「それじゃあ」なんて別れの挨拶を始めてる。イヤホンも既に片耳に入れられて、もう片耳にもつけられる前に、

 「イオリ、……あったかくして寝ろよ」

 ふん。また、鼻で笑われた。


20日前 No.1287

とみや。 @myuu10☆SKeWosbaJPA ★Android=pwXnxWHVkM

この投稿はフィルタされています。表示するにはアカウントにログインして下さい。

20日前 No.1288

とみや。 @myuu10☆SKeWosbaJPA ★Android=pwXnxWHVkM





五日目:お酒は大人になってから



 まさに地獄絵図。

 「あっはっは! 月寄が潰れた!」
 「う、ぅ……吐きそ、」
 「……あの、大丈夫ですか?」

 夕方六時にも関わらず。一部ではどんちゃん騒ぎ、一部では早くも潰れるヤツが居て、未成年は肩身が狭そうにオレンジジュースを口にする。よく行くライブハウス主催の親睦会みたいなもので、こうして何組かのバンドが集まって居酒屋で年齢問わずいろんな話に花を咲かせるのが、もはや恒例化されている。居酒屋の店員も最初は不審な目を向けてきていたが、今は慣れたのか酔っぱらいに絡まれても冷静に対処している。毎度毎度、何故か申し訳なくなるな。

 「何してんの」

 氷柱みたいな声。振り向けば、手にしたコップに注がれたオレンジジュースが不釣り合いで、鼻を鳴らす。そうすれば一瞬にして不機嫌な顔になり、苛立ったような態度のまま隣に腰を下ろす。少し前から顔を見たことはあったが、知り合ったのは割と最近な女子高生。そう書くと俺の犯罪臭が凄いが。最近はよく俺に話しかけに来るし、それを無視するわけにもいかずに相手をしてやってる。
 俺らとよく対バンするバンドのファンらしくて、ソイツらのパーカーをよく着てるのを見る気がする。この前、聞いたら色々語ってた気がする。特に気になるとこはなかったから、コーヒーを飲みながら聞いていたし何も覚えていない。そう言ったら、軽く殴られたのを覚えている。手が出るのがはえーな。

 「いつあっちに駆り出されるかと思いながら、呑んでる」
 「一人で?」
 「……哀れんでんじゃねえぞ」

 ふっ、鼻で笑われた。女子高生に、哀れみの目を向けられながら。誠に遺憾であるが、訂正するのも面倒だから放っておく。

 「ひとくち」
 「ハタチになったらいくらでも呑め」

 唇を尖らせて顔を逸らされた。遠くから「あー! 涼真がミコちゃんいじめてるー!」だのと聞こえてきた気がするが、俺は何も悪くないし、当たり前のことを言ってるだけだと思うんだけど。他からの冷たい視線がチクチクとコッチに刺さっているような、そんな気もするが、まあ気にしないでいい。当のいじめられているらしい本人は、俺を見て意地悪が成功した子供のようにニヤリと笑っている。それにムカついたのでデコピンをかましたら、思い切り睨まれた。ざまあみろ、と小さく笑う。
 仕方なさそうに果汁百パーセントのオレンジジュースをちびちびと口にして、ため息を吐き出したあとに自分の伸ばした足を見つめている。久しぶりにセンチメンタルなアレでも来てるのか、そうまで落ち込まれると俺も一ミリくらいの罪悪感が出てくる。それでも、未成年に酒を飲ませることはしねえけど。俺はこう見えて、法律は守りたいと思ってるオトナだからな。

 「まあ、……頑張れ。成人なんてすぐだし」
 「何それ。オジサンくさい」

 顔を綻ばせながら、鼻をつまむ。いつまでも。小生意気でムカつくけど、今日くらいは許してやろう。

 「──あ、月寄さんが寝オチした」
 「ちょっと大宮ー! 迎え頼んで□!」

 遠くから聞こえる声に、ため息を吐いて立ち上がる。これも恒例行事。俺を見上げるソイツの頭に手を置いて、雑に掻き回すように撫でると怒られた。が、本気で怒っている感じではなかったので許されたことにしよう。


 * * *


 「んん……ティナが、酒……うえぇ……」
 「あたしはそんな飲ませてないって!」
 「いや、ティナさん死ぬほど飲ませてましたよ……」
 「じゃあ、お前が悪い。」
 「ハァ? 結局、少数派が負けるってこと?」
 「うわ、罪の意識の無さがすごい」


19日前 No.1289

とみや。 @myuu10☆SKeWosbaJPA ★Android=pwXnxWHVkM




六日目:その空腹のためにある世界


 最近、雨の日は決まって機嫌が悪い。そう見える。いつもよりおれに話し掛けてこないし、いつもより動きが気だるげな気がする。

 「……宗佑、大丈夫?」
 「大丈夫、って何が? 俺は大丈夫だよ?」

 ほら、やっぱり。いつもなら、まず「なんで?」って笑いながら聞いてくるくせに。わざわざ注いでくれた甘めのコーヒーを飲みながら、なんでもないって返したら特に返事もなく、皿洗いを再開した。最近は雨が降ったり止んだりで忙しいから、体調を崩してるのかも知れない、なんて二日前に確認してみたけどそんなことはなくて。じゃあ、原因はなんなのかって考えたら。宗佑が悩むなんて、きっとそんなに多くない。関わる人が少ないのももちろん、同時進行で何かを進めるのが苦手だから。

 それなら、原因は、

 「分かんねえな……」


 * * *


 何日か進んで、また雨が降った。
 テレビの中では不機嫌な顔をした政治家のおじさん達が、難しい言葉を並べて今の世の中を語っている最中で。家の中では美味しそうなハンバーグの匂いが立ち込める。今日はチーズインって言ってた気がする。今から楽しみになってくる。

 「──この人、いつも同じこと言ってるのに」
 「まあ、色々大変なんじゃない? おれにはよく分かんないけど」

 一瞬だけ、ひどく嫌そうな顔をした宗佑が皿に盛ったハンバーグを運んでくる。原則的に、おれはキッチンへの立ち入りを禁じられているので、なにか手伝いたくてもこうして待っていることしか出来ない。皿の用意も何もかも、全部宗佑がやってくれる。やってくれている。一度、「なにか手伝おうか?」なんて聞いた時、「すずは座ってるのが仕事」って言われたし。申し訳ない気持ちもあるけど、まあストレス発散とかそういう意味があるなら、無理に手出しするのも野暮かと思って今は席について大人しくご飯を出されるのを待つだけ。なんとなく餌付けされる動物みたいだけど、宗佑の作る飯はなんでも美味いし、納得してしまっている。
 おれの目の前に小さな山が出来たハンバーグの盛られた皿を置いたあと、自分も席についてテレビのチャンネルを替えた。特にテレビ番組にこだわりとかないので、それは置いといて、取り皿にハンバーグを乗せてる。いただきます、手を合わせて小さくお辞儀をしたあとに、真ん中を切ればハンバーグの中からどろりと出てくるチーズが食欲を煽る。

 「ん〜っ、うまい!」
 「そっか。喜んでもらえたなら何より」

 反応はいつも通り。口の中でハンバーグを堪能しながら、ちろりと宗佑の表情を窺おうとしたら目が合った。目を逸らすのはいけないかと思って、ゆっくりと咀嚼を繰り返しながら下手な笑顔を見せたら、モデルみたいな笑顔をつくって首を傾げられた。その辺の女の子ならイチコロかもなあ、なんて感想を抱きながら二個目のハンバーグを取り皿の上に置いた。テレビの中の話題は、政治の話から日々の生活に役立つ豆知識の話に変わっていた。

 「──最近、なんかあった?」

 こういうのはハッキリ、サッパリ切り出した方がいいって誰かから聞いた気がする。誰だったか忘れたけど。宗佑はおれの言葉とハンバーグを同時に咀嚼して、おれの言葉だけがつっかえたのか、難しそうな顔をする。さっきの笑顔が嘘だったみたいに、その顔がゆっくり馴染んでいく。

 「すずの方こそ。この前から、俺によく聞いてくるけど。どうしたの?」
 「だって、宗佑、不機嫌に見えるから」

 それから、言葉に詰まる。お互いの箸も進まないまま、テレビの中だけ時が進んでるみたいに何も喋れない。

 「大丈夫だよ。不機嫌に見えてたなら、ごめんね」

 そういうことじゃない。けど、どうにも反論する気になれなくて頷くだけで話は終わった。何個目か数えてないけど、切り分けた真ん中からチーズが溢れて、皿の上を侵食していく。それを防ぐようにまたハンバーグを口にして、噛んで、噛んで、噛んで、胃へ届けていく。埋まらない空腹感と、話に納得出来ない不満感がぐちゃぐちゃになって、小さく溜め息になって出て行った。添えられた野菜スープが美味しくて、また、騙されるみたいな幸福感に満たされていく。美味しくてズルい。
 宗佑は何事も無かったみたいに、いつも通り静かに食事を進めていく。もう、不機嫌さは感じない。椿井宗佑という人間はそういう人間だから、と納得してしまいそうになる。美味しいハンバーグも、その人間性も、何も悪くない。悪くないけど、ちょっとだけ憎い。ちょっとだけ。


 晩飯のあとは流れ作業。デザートのゼリーを食べて、風呂に入って、歯を磨いて眠るだけ。ぐう、小さく腹の虫が鳴る。あんなに食べたんだけど、どうしてか胃が満たされないと呻いている。けど、また何か作ってもらうのも申し訳ないし、いつも通りの流れでベッドに入る。まだ暑いかと思って着た半袖が、思いのほか寒かった。

 「すず」

 甘い声。この世の、どんなに甘いものを溶かしてもこんなに甘くないってくらい。テレビがつけっぱなしの、そこだけ音が存在していた中で聞こえたその声に、誘い込まれたみたいに擦り寄ってみる。手を掴まれたけど、あったかいからそのままにしておく。
 ぐう。また、小さく腹の虫が主張するように鳴き声を上げた。すぐそばから笑い声が聞こえて、ちょっとだけ顔を顰めたら、それも分かっていたように喉を鳴らす。何年の付き合いだと思っているの、なんて言われてるみたいでおれも笑ってしまう。隠し事なんて、きっと宗佑には通じないに決まってる。

 「おにぎり、作ろうか」
 「……食べる」

 手は掴まれたまま、導かれるように起こされる。テレビには、宗佑が嫌そうな顔をしていた政治家のおじさんが映ってる。

 「チャンネル変えねえの?」
 「あー、……うん、いい。すずが観たいのに替えて?」
 「そ、っか。わかった」

 あったかい手が離れた。キッチンへ行く宗佑と、また座っておにぎりを待つおれ。なんとなしにテレビに目を向ける。さっきまでは難しい顔をしてたのに、今はなんか満足そうな顔をしているテレビの中のおじさんに、人の印象って変わるもんだなあって。宗佑も、さっき見せた笑顔は不自然じゃなかった。作った感じもしなくて、少し前のに戻ったみたいにいつも通りの。おれの知ってる宗佑。おれだけが知ってる宗佑。
 キッチンに視線を向けたら、また、視線が合う。さっき名前を呼ばれたくらいに、甘い瞳に、少しくらくらする。頭の片隅で、食べたらまた歯磨きしなきゃなあなんて考えて気を紛らわせることにした。きっとおれが思ってるより宗佑はおれを見て、宗佑が思ってるよりおれは宗佑を見てるってことなんだって、ハッピーエンドに繋がるように自己解釈をして。
 テレビが天気予報に変わった。明日も明後日もその先も、久しぶりに見る晴れマーク。それなら多分だけど、不機嫌な宗佑は見ない気がする。おれの勘は当たるってウワサだからな。

 「はい。中身は梅干しと鮭のみだけど、召し上がれ」
 「……ありがと、宗佑。いただきま〜す!」

 もっと雑でいいのに。ちゃんと海苔も巻かれたおにぎりの一つを手に取って、一口。幸せな味がする。一口ずつ、ゆっくり胃が満たされる感じがする。また、目の前に座る宗佑を見上げれば、世界で一番の幸せ者になったくらいの顔で笑っている。そのまま「美味しい?」と聞かれたら、例え宇宙一不味い飯を食べてもイエスと答えてしまう。いや、宗佑の作るものは宇宙一美味しいけど、それくらいのことって意味。

 「やっぱ、おれは宗佑の飯が一番好き」
 「……俺は、すずにそう言ってもらえるのが一番嬉しいよ」

 暗に、世界を語るおじさんより、降り続く雨より。おれの空腹が大事だと言われているようで、返す言葉も見つからずに、酸っぱい梅干しを口に含んで眉をひそめることしか出来なかった。


19日前 No.1290

とみや。 @myuu10☆SKeWosbaJPA ★Android=pwXnxWHVkM




七日目:おれのかわいい同居人


 知らないヤツと暮らすのは怖い。知らないヤツというか、つまり家族じゃない人間と暮らすこと。何されるかたまったモンじゃないしね。だからおれは信用できるなら、っていう理由で一緒に住むのを受け入れたハズなんだけど。つまり、“こういうこと”が怒らないように、父さんに、ちゃんと言っておいたんだけどさァ。なら、今この状況はどういう説明であの人はまた言い訳してくれるんだろう。同居人に馬乗りになられる状況なんて、そうそうないと思うんだけど。

 「なァにしてんの、綾瀬」

 ゆっくり、形の綺麗な唇が動いた。暗い部屋の中でもよく分かる。

 「……お前を、殺しに。」


 * * *


 おれと綾瀬はいわゆる異母兄弟ってヤツ。浮気症な父さんの本妻の息子がおれで、愛人の息子が綾瀬。初めて会ったのは高校に上がる前の冬で、綾瀬の母さんが病気が原因とかで死んでしまったあと、身寄りがない綾瀬をウチで預かることにしたってワケ。
 まあ、綾瀬はおれも父さんのことも憎んでるみたいで、マトモに会話してくれたことなんて一度もないけど。でも帰る場所がないから、仕方なくこの家に住んで、なるべくおれや父さんと接触しないように家にこもりきり。学校だって一緒なのに、顔を合わせても挨拶もしないしニコリとも笑わない。その徹底ぶりがいっそ面白いから、ほっといてるけど。父さんも基本家には居ないし、あの人は例えおれが問題起こしても何も言わないような人だから、綾瀬が何をしようが同じことをしてると思う。
 で、なんで綾瀬がわざわざ夜這いするようなことをして、おれを見下げてるのか。それはおれにも分かんない。今までいろんな暴言吐かれてきたけど、実際こうやって行動に移されるのは初めてだなァ、なんてぼんやり考えて。

 「殺すの? おれを?」

 暗闇の中で、綾瀬が頷くみたいに髪が揺れる音がした。思わず笑い声の代わりに、くつくつと喉が鳴る。わざわざ綾瀬が、おれを殺すって言い始めるなんて。おれの態度に怒ったみたいに、舌打ちをぶつけられた。やることなすこと、子供みたいで、呆れるくらいに可愛い。そもそも、綾瀬がおれを殺せるワケない。そんな根性ないんだもん。

 「どうやって殺すの」
 「首を、」

 おれの首に、綾瀬の細くて女みたいな指が触れた。指が冷たい。そう言えば綾瀬は冷え性だった気がする。寒い中、わざわざご苦労さま。辿々しい手つきのまま両手をおれの首に置いて、たぶん、唇を噛み締めながら情けない顔を晒してるに決まってる。緊張を紛らわせるために一度息を吐いて、吸って。手のひらに、じわじわと力が込められていく。でも、これじゃあ人は死なない。おれは死なない。一定の力加減で止まった感覚に、仕方ないから可愛い綾瀬のために殺人を手伝ってあげることにした。手首を掴んで、おれ側へ引っ張るように、おれの首を押えつけるように。
 綾瀬が息を呑む。段々、息が苦しくなってきた。緊張からか、それとも今までの憎しみを込めてんのか分かんないけど、手のひらの力が強まってきた。いい子だね、って褒めるみたいに軽く手の甲を親指で撫でたら、また舌打ちされた。

 「ッ……ぁ、は、──すなおじゃ、っは……ないんだ、から、」
 「うる、っさい……!」

 強情だこと。酸素も回らなくなってきて頭もクラクラするけど、結局それまで。意識飛ばすまではいかないし、おれからしてみればずっと苦しいままで、もしかしたらそれが狙いだったりして。綾瀬にそこまでの考えがあるとは思えないけど。

 結局、綾瀬はそれからしばらくしてから手を離してくれた。手が疲れたのか、精神的に疲れたのかは分からないけど、すごい息を荒くしてたから過呼吸になったのかと思ってちょっと心配しちゃった。

 「は、……あやせ、よくがんばったね」

 おれも、割と肺と喉と頭が痛い。でも、よく出来た子は褒めてあげろってテレビで聞いた気がするから、上半身だけ起こして頭を撫でてあげる。ビックリするほど弱い力で振り払われて、綾瀬は何も言わないままかと思ったら、掛け布団にポタポタとなにか落ちていく音がする。手探りなまま頬に触れたら、冷たい雫が指を濡らしていく。つめたい。心なしか体も震えているし、流石にかわいそうになって、止まらない雫をなるべく優しく拭ってあげる。手のかかる子供みたいに、でも子供みたいに喚かずに静かい泣いてる綾瀬は、今何を考えてるんだろ。おれを殺せなかった後悔、父さんに対する憎悪、もしくは母さんの愛情を思い出してるとか。
 時々、おれにも聞こえるか分からないくらいの嗚咽を漏らして、綾瀬はしばらく泣き続けた。よくもまあ、そんなに長く泣き続けられるモンだな、なんて最終的な感想がおれから飛び出すくらいに。悪口とかじゃなく、純粋にね。
 そのまま綾瀬は泣き疲れて、おれの方へ倒れ込んできて寝ちゃったから。わざわざ部屋まで運ぶのもめんどくさいし、おれのベッドで一緒に寝ることにした。見えないけど、きっと泣き腫らした目の端に口付けて、ちょっとしたおまじない。

 「おやすみ、綾瀬」


 * * *


 「……な、なん、で。この、部屋……っ!」
 「おはよ、綾瀬。よく寝れた?」
 「ふ、ざけるな! お前、僕になにか──」
 「してねェよーだ。なにかしようとしたのは、おまえの方じゃん?」
 「……ぁ、」
 「あれ、思い出した? ねぇ、綾瀬、」

 次はちゃんとおれを殺せるように、頑張ってね。


18日前 No.1291

とみや。 @myuu10☆SKeWosbaJPA ★Android=pwXnxWHVkM





八日目:不快指数は下がらない。(傷痕は塞がらない。)
└うちよそ。郁くんお借りしました!!!!!!!!!!!!



 学校からしばらく離れたところで、予報にない雨が降った。今日に限って迎えを断ったし、当然のように傘は持ち合わせていない。まあ、特別家が遠いわけでもない。途方に暮れることはないが、ただ単純な話で、寒い。ヘタをしたら風邪をひくレベルで。雲の間から降り続く雨を睨みつけて、小さく溜め息を吐いて。不意に誰かが横に並んだ気配に、盗み見るように視線を動かせば、まるで示し合わせたみたいに目が合った。それで恋なんて落ちるわけもなく、本当に落ちたのは、遠くの廊下でぶちまけられたプリントくらいでしかない。

 「傘、入る?」

 首が傾く。そもそも、迎えを断れと言った気がするのはこいつだったはずなのに。悪びれもなく、朝の話を覚えているのかどうかすら怪しい顔から目を逸らして、「入ってやってもいい」と返せば。なにそれ〜、なんてケラケラ笑って、軽やかな音を立てながら傘を開く。

 「おれ、ちゃんと傘持ってきたんだよ。偉いでしょ〜?」
 「ふうん。褒めてやろうか、この策士」

 メガネの奥の瞳が、俺を嘲笑うように歪んだ。


 * * *


 傘を叩く雨音がうるさい。パチパチ、ポタポタと弾けるように傘に触れて地面に落ちていく。これだから雨は好きじゃない。何もかも、音も空気も気に入らない。具体的に何が嫌いかと言われれば、特に理由なんてない。ただ俺が不快だから、嫌い。それだけ。
 仕方なく身長差の問題で俺が傘を持ってやらなきゃならないし、折り畳み傘はどうしようにも、どうやったって。如何せん狭い。あらゆる不快感に眉を寄せるも、この状況が改善されるわけでもない。隣で陽気に俺の知らない曲の鼻歌をうたう幼馴染も、どうしてこう脳天気なのか。

 「みく、怒ってる?」
 「お前は脳天気でいいなって思ってただけ」
 「あっ、今バカにしたでしょ? ひどい!」

 気にした風でもなく、陽気な鼻歌には飽きたのか、ああだこうだと話し掛けてくるようになったから、より一層不快指数が上がった。適当にあしらっても、それもまた気にしていないように絡んでくるから、なかなか呆れるくらいに根性がある。素直にウザいだけなんだけど。その独り言の延長のように、特におれからの答えは気にしていないように、口を開く。

 「このまま、おれの家行くでしょ?」

 問い掛けに頷く代わりのように横を見たら、また目が合った。すぐさまからかうようにつり上がる口角にイラついて、鼻をつまんだらすぐに非難の声が飛んでくる。結局、なんだかんだとこいつと相合傘をするように仕向けられたとしても、いちいち話し掛けてくる声がうるさくても、なんだかんだ暇つぶしくらいにはなるから付き合ってやる。付き合ってやっている。他意はない。放課後にすることが無いから、俺が暇だから、遊んでやる。昔からそれは変わらないし、今だってそう。遊びの内容は、年々ロクでもねえもんに変わっていってる気がするけど。
 当然のように放課後どちらかの家に寄るのが、いつからか恒例化している。何もなくても、何かあっても、理由なく無断にお互いの部屋に踏み入って帰る。いつからこうなったかと考えても、俺が小さい頃からこうだったかも知れない。もう記憶にない。無遠慮に部屋に立ち入られても今更怒ろうとも思わねえし、そこまで子供じゃあない。
 「あ」と発した口から、次になにか言葉が続く前に。面倒だから、なんて理由で空いた方の手でそいつの手を掴んで、顔を寄せる。物理的に口を塞いで、お互いの体温が唇から移るように熱が溶かされていく。甘くもないし、レモンの味もしないキスは特別なものでもない。

 「お前は、静かに歩けねえの?」
 「おれのこと一番知ってるの、みくじゃないの?」

 至極当たり前のように、遠回しにノーと言われた。そのまま流れるように唇を奪われそうになったけど、人差し指を押し付けてやり過ごす。不平不満なんざ受け付けるわけはない。そんな義理もないし、ついでにデコピンもしてやる。流石に抗議してきた。

 「ぼーりょくはんたい!」
 「……人の振り見て我が振り直せ」

 俺が指し示した首元を見れば、さっきまでぎゃんぎゃん喧しく喚いていたのが嘘のように鳴き止んで、途端に赤色の瞳が妖しく嗤う。何が原因なのかとか、そういうのはどうでもいい。問題は消えかかったこの首の痕。定期的につけられる“コレ”は、もはや呪いめいた何かがかけられてるのかと言うほど、何をしようがよく目立つ。そして消えにくい。コレをつけようとする度に俺より小さい手で、その見慣れた手で、殺されかける。別に殺されないからいい、と許容してるわけじゃない。まあ、特に記憶がないから分からねえけど。拒否した覚えもないが許容した覚えもない。隠しているつもりはないにしても、流石によく目立つみたいで周りからの視線もよく刺さることを、こいつは知ってるのかどうか。
 じゃあ、なんて掛け声のあとに制服の襟をずらして、“ソレ”を見せられる。明らかな噛み痕。記憶にあるが、意味は無いはず。俺のと同じように、ようやく薄く消えかかった痕は、確かに見覚えがある。見覚えがあるどころじゃない。

 「みくはどうなの」
 「俺はいい。俺だから。」

 さすがオウサマ。わざとらしく、呆れ顔を浮かべて口にする。敢えてそれに構ってやらずに、薄らとした記憶を頼りに断りもなく項に触れれば、首を竦める中で指先で辿っていく。そこにさっきと同じような痕を見つけて、小さく鼻で笑ってやる。長く触ってるとのちのち面倒なことになるから、すぐに手を離してさっさと家に帰れるように、何ともないような顔をして歩き出す。
 このお互いにつけた傷が、何になるのか俺たちは知ってる。遊びの延長線のような、書類に必要な印鑑のような、商品を示すためのタグ替わりのような。
 絶対にこれは愛の証とか、そんな綺麗で気持ちいいモンじゃない。もっと、他人の目なんか気にしていない、下らないこと。理性を知らない獣。今更、何がきっかけだったかすら思い出せない上、ほぼ確実にまたこの痕は新しくされる。だから、やり返すように俺も傷をつけてやる。いっそ死ぬまで、殺すまで。いくらでも。

 「だってさー。みく、すきでしょ? 痛くて、苦しいの」
 「ふざけんな。俺は痛めつける方がいいに決まってんだろ」
 「首はいいのに?」
 「お前が直せば済む」

 唇を尖らせる。
 首元に手を伸ばしていくら触ってみても、鏡がなきゃ自分じゃコレに気づかない。それを惜しいと思うことは無い。

 「見せびらかすのは、すきなくせに」
 「よく言えるな。お前が。」

 隠さないのはお互い同じ。俺は隠すにしても面倒なだけで、こいつの場合は知らない。考えがあるにしても、ロクなモンじゃないから放っておく。そうこうやっていれば、傘を伝ってきた水滴が、終わらない問答をからかうように鼻に落ちてくる。俺の不快指数は一定値から下がる気がしない。このあとの予定を勝手に立てて、横でまた鼻歌をうたい始めた幼馴染も、降り止まない雨も、首元の痕も。どうしようもなく面倒で、かと言って放り出すというのもまた面倒。大人しく全部を受け入れるのも、癪に障る。

 なんだかんだ歩き続ければ、ようやく目的地に到着した。お互い肩やら髪が普通に濡れて、傘の意味があったのかと聞かれれば答えに詰まる。あった方がマシってくらい。俺が傘を持つのも疲れたから、結果的にプラマイゼロだな。

 「風呂入る」
 「あ、おれも入るー」
 「寝言は寝て言えよ。後から入れ」

 人の話も聞かずに濡れたパーカーを脱ぎ始めた。舌打ちをしようが、眉間に皺を寄せようが、気にしないところがまた腹が立つ。呆れるくらいに言うことを聞けない、バカな犬を相手にするくらい疲れる。そのまま苛立ちをぶつけることが出来ないまま居れば、ちょうど良く制服を脱いだ後ろ姿に、さっき触ったはずのあの噛み痕を見つけたから。意味はと言えばただムカついた、そんな理由で、また傷を上書きするようにそこに噛み付いた。
 十倍返しが来たら、百倍にして返してやればいい。その手で殺されるまで、俺も殺そうとしてやる。


 * * *


 「血、出てるんだけど〜?」
 「痛えの?」
 「ぁ、いッ……たい、……なんで舐めたの」
 「知的好奇心が旺盛だから?」
 「おーぼーだ!」
 「うるせえな。噛むぞ」
 「ひどい!」


17日前 No.1292

とみや。 @myuu10☆SKeWosbaJPA ★Android=pwXnxWHVkM

この投稿はフィルタされています。表示するにはアカウントにログインして下さい。

17日前 No.1293

とみや。 @myuu10☆SKeWosbaJPA ★Android=pwXnxWHVkM

この投稿はフィルタされています。表示するにはアカウントにログインして下さい。

16日前 No.1294

とみや。 @myuu10☆SKeWosbaJPA ★Android=pwXnxWHVkM

この投稿はフィルタされています。表示するにはアカウントにログインして下さい。

※警告に同意して書きこまれました (性的な表現)
16日前 No.1295

とみや。 @myuu10☆SKeWosbaJPA ★Android=pwXnxWHVkM





十二日目:コンビニまで、愛の逃避行



 姉にコンビニへ使いっ走りに出されたので、釣りで豚まんを買ってやった。息も白くなり始めた季節にこれは欠かせない。真ん中から割ると、湯気が飛び出てオレの顔を包んで消えていく。ふわりと食欲をそそるにおいにつられるように、右手に持ったそれを一口、含んで噛み締める。溢れ出た肉汁と、それを邪魔しないたけのこやしいたけのバランスが絶妙過ぎる。幸福感に満たされて、つい溜息がこぼれる。
 そんなつかの間の幸福は終わりを告げて、頭の上に少しばかりの重力感。のし、とでも効果音がつきそうなくらい勝手に、人の頭に肘を載せてオレが手に持った豚まんを凝視している。

 「食いたい」
 「内蔵もない人間に食わせる豚まんはない」

 厳しいなぁ、ケラケラ笑いながらソイツは“地に足もつかないくせに”、地面に降り立った。

 「それ食べ終えたら、デートでもするか?」
 「寝言は寝て言えよ」
 「そういうトコが、可愛くねえの」


 * * *


 寒い日は、どうしてか泣きそうになる。これは昔からの秘密。誰にだって教えてなくて、知らなくていいどうしようもない秘密。
 豚まんを食い終わっても、なかなか家に帰る気にはなれなくて、ガードレールにもたれ掛かったまま今の時間を確認する。9時40分。まだ帰らなくてもいい。心配もされてないし、まあ、いつ帰ってもあの家族なら適当に流すに決まってる。頼まれたのも、どうやら明日から使うみたいなマスクやカイロだったし、そう急いではいないのは分かってる。これで怒られてもオレは悪くない。はず。姉を持つ弟というのも、周りが思っているより数倍は大変なことを気付いた方がいい。よしよし、と甘やかしてくれるのはせいぜい言葉が喋れるようになったくらいまでだ。

 それにしても、夜は冷える。肺がキンとつめたくなって、涙の膜が張るみたいに一瞬だけ視界がぼやける。雑にそれを拭って前を見れば、にんまりと笑ったその顔が視界に入る。いつのまにか目の前に立つソイツは、気配を消していたのか何も気づかなかった。

 「泣きたいなら、おれの胸貸すぜ?」
 「黙ってろ、貸す胸なんて無いクセに。」

 毒を吐くと、またからかいと自嘲を混ぜた笑みでケラケラと笑って、オレに触れるフリをした。フリじゃなくて、確かにそこには感触がある。けど、体温も、人間らしい何かもその指先に感じることは無い。すらりと撫でられた手のひらを見つめても、やっぱり、何もない。そこに熱すら感じられないのに、感情なんか伝わるわけはない。柔らかく緩められた唇に手を伸ばしても、確かに感触はそこにあるのに。ただ“何かがある”だけで、それがよく分からない。それでもいいと言うように、ただ無機質で正体すら分からないソレが、オレの唇と重なった。

 「意地っ張り」
 「……どっちのことだか」
 「ふは、そりゃそーだ!」

 穏やかに肩を竦めた。答えを探すみたいに考える素振りを見せて、やっぱり何事も無かったかのように下手くそな口笛を吹いた。唯一、首元につけられたネックレスがオレに同情するように優しく揺れる。全くどうして、こんなヤツに憑かれてしまったのか、理由が一切分からない。何度聴いても、何を聞いても、はぐらかされていつも話題をすり替えられている。
 今日こそは、といつも思って話しかけている。はずだが、その答えを聞けばオレとコイツの間に確かな名前がついてしまいそうで聞けていなかった。不確定で不安定で、馬鹿みたいに慰め合って生きているくらいがオレたちにはお似合いだから。答えを聞いてしまえば、少なからずなにかが分かってしまう。結局、オレは──オレもコイツも、ソレを怖がってるだけ。簡単に言えばそれだけのことを、ずっとうやむやにしている。それがいいと思ってるオレもオレだと思うけど。
 いつだって服装の変わらない薄着のまま、ソイツは寒さも感じないクセに「あ□っ、寒!」なんて声を上げてオレの手を引っ張る。ほぼ自分の力で立ち上がって、冷えたアスファルトに置きっぱなしにしていた荷物を引っ張りあげて持ってみた。よくもこんなに買わせたものだ。こういうのは、コンビニで買うよりスーパーの方が安くつくのになどと思いを巡らせつつも結局は、あの姉の思い通りに動いてしまっている。

 「なあ、」
 「──このまま全部ほっぽり出して、逃げちゃう?」

 こうして、またはぐらかされる。まあ。そういうのもたまにはいいかと思って、冷たい風を浴びながら目を伏せる。自然と頬が緩んでいく。

 「明日もガッコーだし。オレはお前みたいに、自由じゃない」
 「だから、逃げようぜ。ガッコーも、トモダチも、カゾクも、ぜーんぶ投げ出しちゃってさ?」
 「寝言は寝て言えってば。……まあ、気が向いたら考えとくけど」

 その答えに、隣の幽霊≠ヘひどく気分を良くしたように大きく頷いた。



15日前 No.1296

とみや。 @myuu10☆SKeWosbaJPA ★Android=pwXnxWHVkM




十三日目:イン・パステルカラー・デイ



 ふんふんふん。お気に入りの曲を鼻歌で奏でながら、パレットの上に絵の具を出していく。小学生の頃から、ずっと変わらないメーカーの絵の具。キャップの色がパステルカラーでカワイイから。
 カワイイものが至高です。昔から、“カワイイ”が崇めたてられてきたのは当たり前のことだからです。だって、カワイければ世界征服だってできるにきまってるんです。もちろん、カワイイを追求するのに忙しいからそんなことしてるヒマがないだけで。それくらい“カワイイ”って凄いんです。

 「そうですよねっ、穂月さん!」
 「はあ?」

 不機嫌でカワイクないお顔、ブサイクです。まるで、パレットに広がる原色みたいに。世界中が早くパステルカラーに変わらないかなぁ、なんて考えていたら「用はなんだよ」ってスケッチブックで頭を殴られた秋の放課後。


 * * *


 キャンバスに、パステルカラーを塗りつけていく。空も、海も、雲も、建物も。全部全部パステルカラー。甘くて優しい色合いに、思わずニッコリしてしまいます。穂月さんはその“美”を理解できないみたいで、絶対に賛同してくれませんけど、わたしはこれでいいんです。自分の好きなモノを描いて、それが好きな人に賛同されることで、やっとわたしの価値が見出せます。無理に賛同しろ、なんて言いません。わたしの芸術を理解できないのを悪だと、罵ることもしません。けど、けれども。わたしの愛(パステルカラー)を、否定することは許しません。その辺りを穂月さんは分かってくれているから、良いんです。
 今でもわたしが汚したらしい机(記憶にないですけど)を、必死に綺麗にしてくれていますし。言うなれば小間使いのようなもの。そう言ったら、また怒られそうですね? 仕方ないから、口にしないままで居てあげますよー。

 「穂月さんは、どうしてパステルカラーが嫌いなんですか?」

 こんなにもカワイイのに!

 「フワフワしてるから。不安定だから。何となく。」

 最大限に否定をされても、わたしは傷つきません。ちょっと胸は痛いですけど。キャンバスに出来ていくわたしの世界は、フワフワで不安定で、女の子の理想なんです。女の子はカワイイモノが好きで、好きで、仕方ないんですよ。わたしも大好きです。パステルカラーは、女の子の“カワイイ”の象徴なんです。服も、スカートも、持ち物も、下着も、全部がパステルカラーだとカワイイでしょ?

 「残念ですよう。穂月さんの考えが」
 「勝手にそう思っとけ。ついでに、この机綺麗するのも手伝え」
 「んふふ、穂月さんが「パステルカラーはカワイイ」って言ったら考えてあげます」

 あら、諦めたみたいに掃除を再開されてしまった。じゃあわたしも描きかけのキャンバスに向かって、カワイイをつくりあげることを再開しましょう。ぺたぺた、きゅっきゅ。テスト前だから、わたしたちしか居ない美術室はいつもより寂しいです。まあ、わたしはいつも皆さんと違う場所に居るからいつも通りなんですけど、遠くから笑い声が聞こえてこないのは違和感。
 これでもわたしは美術特待生で入学したので、多少の無茶は許されてるんです。例えば、教室を汚したくらい少しの損失。わたしを失うのと、どちらが重いかと言われればもちろん後者なんです。実力に自覚はありますし、誇りもあります。でも、誰かに従わなければ絵が描けない環境には居たくないから、ここに入学しましたし。穂月さんはわたしのお世話係らしいですけど、そこまで必死に机を綺麗にしたりしなくてもいいんです。だって、わたしは許されてるんですよ。
 前にそう言うと、無言で置いて帰られましたから、今は言おうなんて思いませんけど。なんたってわたし、物覚えが良くて利口なので!

 「お掃除終わりました?」
 「おかげさまで」

 皮肉。チクチク刺さる。この人はわたしのことが嫌いなのか、好きなのか分かりません。きっと、嫌いなんでしょうけど。

 「今回もまあ、キレイなパステルカラーだこと」

 眉間にシワを寄せて、わたしの背後にあるキャンバスを睨まれる。いいんです。穂月さんは、出会った頃からわたしに対してこうですし。具体的に何か言われることはないし。理不尽に、「わたしがムカつくから」みたいな理由でキャンバスを破られるようなことが無い限りその不遜な行いは許容してあげます。何だかんだ、わたしのやることを大目に見た上で勝手に自分の増やしてるだけみたな穂月さん、可哀想だし。パステルカラーをカワイイと思うのは、そう思えるのは女の子特権。女の子ってやっぱり、素晴らしいです。

 「穂月さんが女の子だったらなあ」
 「気色悪い話すんな、パステル女」

 その呼び名は気に入らない。思わず、絵の具を片付ける手が止まってしまう。

 「入夏、ですってば。わたしは、尺梅入夏」
 「…………ハイハイ、尺梅サン」
 「それでいいんです! 親しみを込めて、入夏さんと呼んでも──」
 「誰が呼ぶか」

 断られてしまった。でも、何かとわたしに攻撃的な癖に、わたしが描いたキャンバスは宝物みたいに丁重に扱ってくれるから。わたしは穂月さんを許しているんです。絵に対してはとてもとても真摯な姿が、わたしの心をずきゅんと撃ち抜いたのです! 半分冗談ですけど、半分は本当です。わたしは、自分の描いたモノじゃなく、他人の描いたモノにも真摯的に接することのできる人はステキだと思うんです。カワイイとは、また別のベクトルですごいことですよ。
 そんな穂月さんは、わたしの使ったパステルカラーでカワイイバケツまで片付けてくれて。やることがなくなってしまった。

 「わざわざご苦労様です、穂月さん」
 「お褒めに預かりコーエイデス」

 わざわざ皮肉りついでに礼をして、自分の荷物を持って出て行こうとする穂月さんの背中をわたしも追いかける。歩幅が違うから、追いついた頃には、わたしも穂月さんも第三美術室を出たところでした。全く無愛想で困りますね、この人は。
 鍵を閉めて、それを制服のポッケに入れて。夕陽が沈んで行く中わたしたちは、ゆっくり靴箱に向かって歩き始める。外にはパステルカラーなんて溢れてなくて、わたしのカバンに付けたクマのストラップが唯一甘いピンク色をしてるんです。カワイイ。

 「このあとのご予定は?」
 「帰る」
 「じゃあ、パステルカラーな何かを求めてお買い物でも、」

 喋っている途中に、今度は素手で頭を押し込むように上から力をかけられる。痛いです、カワイクないです!

 「オマエも、俺も、帰る。いいな?」
 「うぅ、……はい……」

 暴力反対、と付け足そうとしたら睨まれました。物騒な世の中です。仕方ないので、帰りの別れ道までずっとわたしの“カワイイ”について、語ってあげることにしました。どうです、穂月さん、そろそろパステルカラーを好きになって来る頃でしょう。


 * * *


 「穂月さん! 聞いてますか?」
 「どちらかと言えばノー」
 「スマホを触らないでください」
 「めんどくさいカノジョか?」
 「んふふ、わたしは穂月さんみたいな人はお断りです」
 「笑いながら言うなクソ女」
 「あー! 今、わたしは! 聞きましたよ、もう許さないですからね!」


15日前 No.1297

とみや。 @myuu10☆SKeWosbaJPA ★Android=pwXnxWHVkM





最終日:さよならファンタズマ
(10/31)



 愛して欲しいと口にするのは、違う気がした。願いを口にすると叶わないと言われるみたいに、そんなのは、ただの高望みみたいで。もちろん、ただの高望みだから間違いはないけど。それでも愛されたかった。ワガママでいいから、ウソでもいいから。ウソだと気付いた時にちょっとは傷付くけど。まあ、それでも良かった。本当に愛されたら困るから。矛盾だらけの不安定な自分に、また何かが濁っていく気がする。気がするだけでおれの根底は変わらないまま、ずっとこのままで、死んでいくしかない。それがおれの役目なんでしょ。

 けたたましい音が静寂を破る。暗い部屋に光が飛び出すように灯って、ほのかに顔を照らして眩しい。そういえば、電話をかけてくる人それぞれに着信音を設定したのを思い出し、だったらこの音は。そう、思い出して嫌な予感がした。液晶をマトモにみれば、表示されるその名前。寝転んだままで液晶に触れて、通話時間が進んで、これがウソじゃないと思い知らされる。一度息を吐き、緊張を解すように起き上がって素晴らしく間が悪い文明の力を耳に当てる。
 ザワザワと背後が騒がしい。こっちは夜だっていうのに、あっちはこれからグッドモーニング。楽しげな会話も、騒がしい街の声も、今は煩わしい。煩わしいだけで、他の代わりにもならない。どちらも話さないまま時は進んで、いつまでもこのままじゃあしょうがないから、仕方なく話を進めてやることにする。いつも通り笑顔を作って、いつも通りの声を出して。

 「ハロー! そっちのハロウィンムードにあてられて、上機嫌に間違い電話かけまくってンの?」

 茶化したつもりなのに、通話相手は冷気でも吐き出しておれを凍らせるみたいな溜め息。不機嫌に鼻を鳴らしたかと思えば、返事も寄越さないままにほかの人間との話に花を咲かせてる。おれが知らない声をして、おれが知らない笑い声で、おれが知らない誰かと会話をして。今更気にはならないけど、自分がかけてきたクセに、とは思う。それを待つのもめんどくさくて、スピーカーモードに切り替えて、着替えを始める。賑やかな通話口の向こうは、きっとおれの知らない世界が広がってて、ウソみたいに綺麗な海だってあると思うとちょっと憎い。おれが行きたいと駄々を捏ねれば、宿泊するホテルだって、滞在している間のガイドも心配いらない程度の世話をしてくれるのは分かってるけど、この人にはあんまり頼りたくない。行くなら、好きな人が出来たら。なァんて、ロマンチックな夢物語。
 ぷちぷち。小さなボタンを一つずつ外していく。制服から着替えれば、高校生のおれというアイデンティティが失われそうで。このまま着替えて外に出れば、街ゆく人はおれが、どこの誰か分からなくなるのが嫌でたまらない。一人くらいは気付いて、肩を叩いて声を掛けてくれたらイイけど。そうだったら。うん、まあ、そうだったらうれしい。
 ゴホン。大きな咳払いをして、硬い声質がおれを押さえ付けるように飛び出してくる。気を紛らわせるようにTシャツを着て、もう寒いかな、なんて。

 『進路はどうするんだ』
 「……は、ぁ?」

 思わず、机に置いたスマホに向き直って素っ頓狂な声を出さざるを得ない。開口一番に、何よりおれも、おれの吐き出した冗談も無視しておいてこのザマ。多少の音でおれが居るのは伝わっているみたいで、「おい」と悪いことをした子供を叱るみたいにおれを急かす。ベルトを外す暇もなく、相手に触れるワケでもないのに。冷たくなったスマホを持って、何を言おうか考える隙もなくまた咳払いをされる。

 「……アンタ、洒落たジョークも返せねェのな」
 『無駄話はいい。それで、進路は』

 コンビニにでも入ったのか、うるさいくらいのハロウィンムードに満たされた曲をかけているのが耳に入る。煩わしい。こういうイベントごとは嫌いだって、この人には言ってあるっけ。ああ、そもそも話もしてないどころか何年も顔を合わせてないから、顔も覚えてないんだった。ウソだけど。おれに笑いかけることなく、勝手に海外に行って数年も帰ってこないような親を忘れるワケない。忘れたら、この人を覚えていてくれる日本人なんて居なくなる。流石にかわいそうだし、いつまでも恨んでやるために覚えといてやる。
 向こうから聞こえるビンのぶつかる音や、レジの音を無視して。仕方なく質問の答えを考える。進路と言われても、どこに行こうが今更関係ないハズなんだけど。三者懇談にも来ないし、高校に進学する時でさえ二つ返事で金を振り込んで終わりだったのに、今更なんで進路なんて聞き出すワケ? 特に聞き出すことも出来ずに口を開いて、うるさい向こう側にきちんと聞こえるように声に出す。

 「大学、行く」
 『そうか』
 「なに。裏口入学させるために、金でも積んでくれンの」

 ふん。嘲笑うみたいに鼻を鳴らして、冷たい声が「お前に金を積んで何になる」だのと返された。期待も愛もない、突き放そうと思って話してるワケじゃなく、素直にそう思ってることがわかって。むしろ、良かった。これで情けでも掛けられてたら、ホントに縁でも切ってどっかの養子に貰われにいくとこだった。この父親がクズで良かった。

 「もう金はこれ以上くれなくていいし、アンタに金積まれなくても、おれは大学くらい行けるからさァ」

 どうせ、大口叩いてると思われてるんだろうけど。おれは勉強は嫌いじゃないし、むしろアンタの方が嫌いだよって言ってやろうとしたけど。そこまで鬼じゃないし、証明するにも何年も顔合わせてない、おれの成績すら知ってるのか分かんない相手に何を言ってもムダだし。
 普通の家族なら、もっといろんなことを話すんだと思う。でも、おれは、おれたちは普通の家族じゃないから。そんなの昔から知ってる。顔も覚えてない母親と、小学生の一人息子を置いて海外に逃げた父親が普通なワケもない。そんな家族がおれを愛してるとも思わないし。でも、おれはクソお父様もちゃァんと好きだけどな。ほら、血の繋がりは何よりも濃いとか言うじゃん。おれに興味が無かろうと、おれの顔を見たくなくて海外に逃げてるとしても、おれはクズで頭固くておれが嫌いなクソお父様がだァいすき。

 『手が掛からなくて何よりだな。用も済んだし、切るぞ』
 「は? あのさ、ちょっとは──」

 ブチッ、ツーツーツー。無機質な機械の音が耳元で鳴り止まない。『クソお父様』で登録されて、写真もない電話帳の中のその人。

 「……祝いの言葉一つもナシかよ」

 スマホの電源を落とすとブラックアウトして、それすら重く感じてベッドに放り投げたあと、それを真似るみたいに倒れ込む。悔しくも悲しくも、嬉しくもないけど。誕生日とかそういうの、この人にだけは祝われたことがなかったし、わざわざこの時期に連絡をよこすから期待したのはウソじゃない。同時に、期待してなかったというのもウソじゃないけど。ただの一言の「おめでとう」すら言われないし、たぶん、誕生日なんて忘れられると思うと悲しみも湧き上がってこない。うえーん、なんて嘘泣きをしても無駄だった。動かなくなった壁掛け時計を睨みつけて気を紛らわせる。
 愛されてないのを実感するたび、心臓が痛い。寝て起きたら回復する風邪みたいな傷だけど、大きくなっていったらおれは、どうなると思う? どうなるんだろ、楽しみだなァ。なーんて、ウソ。おれは自分の不幸でさえ喜べるヘンタイじゃないし、おれはおれを幸せにしてあげたいから。
 とりあえず今は、なんだっていいから好きって言ってもらいたい。だから、またスマホを開いてそのままにしていた電話帳から、お目当てのひとを呼び出して通話ボタンを押す。暫く待たされて、おれのだいすきな不機嫌な声。甘くもないし、冷たくもないし、硬くもない。

 『……死ね』
 「せんぱい、今すぐおれに「すき」って言って」
 『はあ? 俺、今から課題すんだけど』

 盛大に感情のこもった溜め息に安心する。優しくない声にさっきも触れてたけど、さっきとは全然違う。そんな気がするだけ。

 「イイコちゃんは大変ですねェ。みんなに嫌われても、みんなと同じことして頑張らなきゃいけねェの?」
 『……ワルイコちゃんは、みんなに嫌われて楽しいかよ』

 可愛い反論に口角が上がる。せんぱいはなんだかんだ、“契約”があるにせよおれに付き合ってくれてるし、本気で嫌がってないあたりも気に入ってる。おれのせいでみんなに避けられてるクセに、気付かれてないと思っているのかわざと伏せるし。おれが気付かないとでも思ったのか、この人。そうだとしたら、この人はおれを侮っているか、おれを護りたいのか。もしくは、自分の惨めな現状を認めたくないのか。正しいのは一番最後だと思うけど、それにしてもかわいそうな人。幼馴染を間接的にでも幸せにするために、自分がいろんな人間から嫌われてもいいって思えるのは、素晴らしく狂った愛をお持ちで。
 そんなせんぱいも好きだけど、おれに質問をしてどうするんだろう。インタビュー雑誌でも出してくれたりしちゃう? なァんて、冗談。せんぱいは純粋におれが嫌いだし、おれは愛してくれないもんね。

 「みんなで右ならえするイイコちゃんより、全然イイ。せんぱいも、“こっち”に来ればいいのに」

 半分、こっち側に居るようなものだけど。それでもせんぱいはおれを否定して、イイコちゃんであろうとする。かわいくて、かわいそうな人。もうどこにも行けやしないのに。おれとの“契約”は、そんなに甘くて優しいモノじゃない。今更、逃がしてなんかやらない。

 『ハイハイ。──お前のことは好きだから、切るぞ』
 「うんっ。せんぱい、愛してるよ。……おやすみ」
 『おやすみ』

 優しい声が消えて、また無機質な音が聞こえてくる。今度こそ画面をブラックアウトさせて、寝転がったまま目を伏せる。

 愛されたいって口にすることは出来ないのに、愛してって頼むことは出来る天邪鬼な自分が恨めしくもあり、可愛らしくて脱力する。いくら望んでもおれの愛されたがりは消えないまま、おれは死んでいくしかないのを自覚している。そんなの、他人より誰より、おれが一番理解してるし。だから、ウソでもいいから、時には慰める代わりに愛の言葉をくれればいい。おれは、それを貰って生きて、死んでいく。気休めにはなるハズ。単純だって言っていいから、好きって言ってくれればいいよ。片手間におれを愛してくれるくらいのひとが、おれはだいすき。
 時間を確認するためにスマホを開くと、ちょうど十二時がきた。誕生日も終わって、静かなハロウィンが終わりを告げて消えていく。

 「あ、せんぱいに「おめでとう」って言ってもらうの忘れた」

 明日、プレゼントと一緒に貰おう。なんて考えて、目を伏せた。呆気ない誕生日も、久しぶりに話した父親のことも、「好き」って言ってくれたせんぱいも、全部思い出にしてもう寝よう。

 それじゃあ、オヤスミ。



14日前 No.1298

とみや。 @myuu10☆SKeWosbaJPA ★Android=pwXnxWHVkM





「あ」




 からん。氷が音を立てて、なみなみと注がれた麦茶の中で崩れていく。


 * * *


 緊急事態、発生。
 珍しく、というわけでもなく、いつも通りに眉間に皺を寄せる。あからさまに不機嫌であると主張する顔に文句をつける人間など居るわけもなく、ゆっくりとその皺は深く深く刻まれていく。そもそも、俺は何も無条件に怒りを覚えるほどには馬鹿じゃあない。今回の不機嫌にもきちんと理由がある。無ければこの行き場のない怒りは誰かしらに既にぶつけられてた筈。まあ、とにかくこの緊急事態を簡単に説明するなら。

 「エアコンが壊れた」
 「……本気?」

 盛大に顔を歪める幼馴染を鼻で笑いながら、おどけるように軽く肩を竦めたあと、特に視線をやるでもなく手にした本のページを捲る。開け放たれた窓の前に座っている筈なのに、未だ体温は一定の熱を溜めたまま冷めようとはしない。



 ついでにボツ



14日前 No.1299

とみや。 @myuu10☆SKeWosbaJPA ★Android=pwXnxWHVkM






 村:不知火愛、鈴燈彼岸、星水瑞貴、餌木令奈、餌木令存、宇佐美兎
 狼:鈴燈月下、暮戸実怜
 占:柚木余田
 霊:卯月愛
 狂:萬谷不吹
 狩:如月梢



7日前 No.1300

とみや。 @myuu10☆SKeWosbaJPA ★Android=pwXnxWHVkM





 「人様の幸せを自分の基準で測ろうなんて傲慢なこと、キミはよく言えるね?」



4日前 No.1301
ページ: 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14

 
 
<< TOPページ 掲示板TOP 記事データ お知らせメール ▲ページ上 >>
★必ず ローカルルールメビウスリングのルール をご覧ください。
 ▼スタンプ▲スタンプ
※スタンプはいちどに 3個 まで使えます  ×閉じる