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口火を切る

 ( 書き捨て!小説 )
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とと ★iPod=FgavlHQY92

「幸せ者だね」
「ありがとう」
金属バットに蜂蜜を塗り付けても、その力はちっとも甘くならないし、そもそもそんなべたべたしたものでわたしを殴るだなんて、とても不潔。消えちゃえ。









少しの後悔と、あと、よくわかんないもの

4年前 No.0
メモ2017/04/25 15:42 : とと田☆pZFOWxlGRjQ @totototo★Android-4OhkCRUD6l

少女信仰と血縁信仰が甚だしいので気をつけてな

いいね20もありがとうございます

--------------------------------

*「手折る(http://mb2.jp/_ste/1929.html)」→「心臓のレプリカ(http://mb2.jp/_ste/2184.html)」→「花葬(http://mb2.jp/_ste/2432.html)」

マイメビさんの書き捨てです。よくお子さんをお借りしてます。瑞々しい文章と柔らかくも繊細な描写でいつまでも読んでいられるぞ!

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とと @totototo☆3vKXjwll5qo ★iPod=FgavlHQY92


静かで、ちょっと重い空気が充満した教室では、先生が眉を八の字にしてわたし達を見渡していた。

「先生は犯人探しとかしたくないんだけどなー……」

でもなぁ、とくるくるパーマの髪をぐしゃぐしゃと手のひらで乱した先生。しかめっ面に拍車がかかった。
先生の言っていることは分かる。犯人探しなんて気持ち良いものじゃない。だからといって、今回でもう8回目になる盗難事件をこれまでと同じように、誰にしているのかも曖昧な説教で対処するわけにもいかなくなってきているのだ。
今回盗まれたのは笹木さんのお財布だ。高級そうな革でできた横長いもので、よく見せびらかしては周りに自慢していた。ちなみにわたしも欲しいと思っていた……。

最近クラスで続いているこの連続盗難事件には変わったところがある。まず、ものを盗んだ人の机に、いつの間にか可愛い猫のシールが貼られていること。学校の近くにある文房具屋にも売ってある小さなシールだ。だから机にシールがあったなら、それは何かを盗まれた合図になる。
二つ目は、盗まれたものは翌日に必ず戻ってくることだ。




かけない

3年前 No.161

とと @totototo☆3vKXjwll5qo ★iPod=FgavlHQY92

「ください」
「なにを?」
「せーし。せーしください」
「わたしはおんなだからでません」
「せーしないの?」
「うん」


せーしって言わせたかっただけですさーせん

3年前 No.162

とと @totototo☆3vKXjwll5qo ★iPod=FgavlHQY92

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3年前 No.163

とと @totototo☆3vKXjwll5qo ★iPod=FgavlHQY92


携帯で時刻を確認した後、真上にある時計塔でもう一度時間を確かめた。どちらもやっぱり五時半を指していて、ううん、とあたしは低く唸った。赤い日が街一面を照らして綺麗だった。それでも外はまだまだ寒く、少し憂鬱に思ってしまう。
右手に握りしめたままの携帯で一昨日涼音としたメールの中身を見返した。そこに書かれているやり取りは何度見ても同じで、「じゃあ五時に、時計塔の前で」という涼音からの一文に思わず顔が緩んでしまったのを思い出した。と同時に、約束の時刻から三十分も経っているのに未だ現れない涼音に考えを巡らせた。
今までも二人きりで遊ぶことは珍しくなくて、いつも涼音は早めに待ち合わせに到着するからあたしはそれよりもずっとずっと前に着くようにしていた。今回も一時間半前からここで待っている。何か用事でもできたのかな、でもそれなら連絡の一つくれるはず、とさっきから悩み続けている。もしかしたら大きな事故にでも遭っているのかも……さあっと血の気が引いていった。普段しっかりしている涼音だからこそ、尚更不安が大きくなる。
また時計塔を見上げて、動き続ける針を見つめていると、

「……伊折!」

少しびっくりして肩が跳ねて、ゆっくり振り向いた。涼音だった。
涼音が全力で走ってきたので、こちらからも駆け寄って近づいた。涼音は肩を激しく上下させながら、何度も大きく呼吸をした。その一つ一つの息が白く染まり、暗くなってきた夕方の空へ滲んで消えた。顔が真っ赤だ。



マイメビの子
テスト勉強したくなくて伊涼書いてたけど気に入らないからポイッ

2年前 No.164

とと @totototo☆3vKXjwll5qo ★iPod=FgavlHQY92

「お、怒ってるんですか……?」
「……………………ずびっ」
「うわあああああああ泣き出した!」
「う、うううううだっでぇ……わだじわるぐないもん……」
「鼻水!鼻水垂れてきた!汚い!」
「わあああああん酷いよおおおお」

2年前 No.165

とと @totototo☆3vKXjwll5qo ★iPod=FgavlHQY92

それは私の、ほんとうの家族だった。

「こんにちは」
「……どーも」
「あなたが結?」
「そうだけど」

薄汚れて煤だらけのパーカー、よれて皺がたくさん寄ったズボン、傷だらけのスニーカー。パーカーのポケットに手を突っ込んだまま無愛想に受け答えするその姿は、まさに捨て子だなと思った。見事に捻くれてしまった、悲しい子供。まぁ、私もなのだけど。私は結に笑顔を見せた。

「姉さんって呼んでね」
「同い年じゃん」
「生まれた日は私の方が早いわよ」

「正確な日にちはお互い分からないけど、確かそうだったはずよ」――少々自虐的な言い方をしてしまったが、結は対して気にしていないようだった。私はほっとすると共にとても残念な気持ちを覚えた。
まだ気だるげな返事を続ける結は一度あくびをして、目をこすった。瞼がほんのり赤く染まった。私の家族……。私の……妹。

「じゃあオレのことは好きに呼んで」
「分かったわ。妹ちゃん」
「妹?オレ女に見える?」
「どっちにも見えるわね。でも、性別は関係ないのよ」
「は」
「私が妹が欲しかったから、妹なの。分かる?あなたは私の『妹』なのよ」

私はちょっとだけ嬉しかった。私はお姉ちゃんなのだ。

「……ふ〜〜ん。分かったよ姉さん」

結――妹ちゃんはさっきまでとは一転、唇を歪めて、何だか楽しそうな顔をした。今までで一番可愛かった。

2年前 No.166

とと @totototo☆3vKXjwll5qo ★iPod=x2Qb6kzaF2

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2年前 No.167

とと @totototo☆3vKXjwll5qo ★iPod=x2Qb6kzaF2


暗夜と六について

暗夜は忍(父親)との強い繋がりが欲しかったんだよね。父と娘って関係は保ったまま、他に何か繋がっていた証拠が二人の間に欲しかった。だから無理矢理忍を眠らせて、無理矢理子供を作ろうとした。でも暗夜は不妊症で子供はできない。そのときはの暗夜そんなもんか、って感じだった。でもちょっと悲しかったと思う。それは繋がりとかそういうことじゃなくて、単に忍が好きだったから。今まで暗夜は忍に盲信的で結構歪んだ愛を抱いているところしか見せなかったけど、それは自分が父親に恋をしてしまっていることを認めたくなくて、ただ単にああいう家庭だとか育ち方をしているから他の子より依存して執着しているだけだって思いたかったから。忍にもそういうちょっと歪んだ子だって、ただそれだけだって勘違いしてほしかった。でも本当は、ただ恋をしていただけ。純粋に好きだった。愛しているわけじゃなかった。束(母親)は多分それに気づいてた。だって束もそうだったから。
六は透磨に高一のとき惚れて、ずっとそのまま。それまで男を好きになることはなかったしストレートだってずっと思ってたけど、案外好きになってからはストンと腑に落ちた感じ。ああ俺男も好きになるんだ、って。六は周りに迷惑かけたりするのは本当に嫌いで自分を許せなくなるけど、自分のことになると割とあっさりになる。だから暗夜を初めて抱いたときも最初は抵抗したけど結構すぐに諦めだした。
そんな二人は最終的には一緒に暮らすようになるけど、別に愛し合ってるわけじゃない。暗夜は忍に恋をしていることを認めて、六は周りに迷惑をかけられるようになった。お互いに自分の好きな人に一途で、でもお互いに支え合ってる。もうカモフラージュで付き合ったりしないしキスもしないし身体も重ねない。なのに自分の言いたいことは一番に言える。別の人が好きだけど、一番に相手にもたれかかれる。これ、ずっと思ってたけど、最高の友情だと思う。六暗は歪な恋人関係から始まって、これ以上ないくらいの友情で終わる、そんな関係。めちゃくちゃ萌える。



あーーなんかだらだら書いてたらよくわかんなくなったな……

2年前 No.168

とと @totototo☆3vKXjwll5qo ★iPod=x2Qb6kzaF2


「お兄ちゃん」意地悪心からそう呼んでみると、浩人は困ったような顔をした。久しく見ていなかった顔だ。今までずっと目をそらして生きてきたから。あの顔は、私たちが本当のことを見ないという事実から逃げるときの言いわけだった。相変わらず浩人は、情けなくて保身的なお馬鹿さんだった。
「うそよ。ちょっとからかっただけじゃない」それでもまだ不安そうに眉が下がるので、仕方なく、浩人、と名前を呟いた。表情が和らいだ。私も胸の中をたゆたっていたもやもやが消えた気がした。と同時に、また浩人に対する背徳的な愛おしさが生まれてきた。
気持ち良かったんだと思う。
目を閉じたあのときから、長い間不安定な気持ち良さの中にいたのだ。
浩人は、一人の独立した人間なんかじゃない。お兄ちゃんなのだ。私も浩人も、それをとうの昔から知っていたけれど、それは都合の悪いことなので知らないことにしていた。だから困るのだ。浩人ではないと。
でも、私はいつも呼んでいる。お兄ちゃん。お兄ちゃん。口には出さないから、もう何年も胸の中に積もったままだ。早く流れだせばいい。ずっと貯まったままでいい。

2年前 No.169

とと @totototo☆3vKXjwll5qo ★iPod=x2Qb6kzaF2

田辺 英介
19歳。大学生。少し意地っ張りなところはあるものの、根は優しい。姉の万江と同居している。小さい頃から万江が好きで、しょっちゅう万江に告白紛いのことをしている。若干マゾ。

田辺 万江
24歳。BL漫画家。感情の起伏があまりなく、落ち着いて冷静。英介の必死のアプローチを難なく交わし続けている。生活面では少しだらしない。実は英介に想いを寄せているが、それを表には出していない。

ヨウコ
高校生。田辺姉弟と同じマンションで、隣の部屋の住人。口が悪いが面倒見は良い。従姉妹のフミカと一緒に住んでいる。実家は田舎だが、フミカと二人暮らしすることを条件に都会の進学校に通っている。駄目駄目なフミカを養う為に、仕送りとバイト代をやりくりしている。

フミカ
成人済み。職を持たず常時家の中で好きなことばかりしているニート。田舎の両親や親戚にはエリート企業で働いていると嘘を吐いている。ぼけっとしており、掴みどころのない性格。ヨウコに依存していて、寂しがり屋。駄目人間。

リリカ
大学生。万江と同じ漫画サークルにいた後輩。万江が大学を卒業した後も二人で遊ぶなど、交流が続いている。男受けしそうな仕草が多くあざといが、観察眼は鋭い。レズビアン。年上の恋人がいるらしい。

2年前 No.170

とと @totototo☆3vKXjwll5qo ★iPod=x2Qb6kzaF2


「大体、どうして俺がお前らなんかと一緒に昼食を摂らなきゃいけないんだ。この完璧な俺が」
「それはこっちの台詞だよねぇ。君達といることで僕の美しさが半減してしまうよ」
「割とどうでもいいからそんなこと。ていうか別にあたしだって好きでここにいるわけじゃないし」
「どうでもいいってなんだ、それ。俺が完璧じゃないって言いたいのか?お前の目は節穴か?」
「ふん……まぁ僕が美しいなどということは、最早当たり前だからね。君達に理解されなくても大いに結構だよ」
「うわめんどくさ……あんた達黙ってたらまだマシな見た目なんだから一生黙ってれば。どうでもいいけど」



マイメビの子
しょっちゅう衝突して口喧嘩しながらも実はなんやかんや一緒にお昼ご飯食べてそうな三人組、個人的第一位は透司早!

2年前 No.171

とと @totototo☆3vKXjwll5qo ★iPod=x2Qb6kzaF2

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2年前 No.172

削除済み @totototo ★iPod=x2Qb6kzaF2

【記事主より削除】 ( 2015/05/06 01:16 )

2年前 No.173

とと @totototo☆3vKXjwll5qo ★iPod=x2Qb6kzaF2

「俺、宏太だけはどこにも行かないって思ってたんだ」

陽典がぽつりと漏らすと、暗夜は意地悪い顔でふぅん、と笑った。

「他にも仲良い奴っていたけどさ、こう……何があっても俺の側にずっといるんだろうなーって。そういうの、そういうのはさ、俺、宏太にしか……」

それ以上続かなかったのか、もう話さなかった。陽典はベッドで胡坐をかいた状態で部屋を見渡した。驚くほど、何もなかった。質素なベッドと、小さな机と、黒いカーテン。壁に制服がかかっていた。心なしか肌寒く、独房のようだった。それがいつもの暗夜のイメージとは合わなくて、でも、自分の知っている暗夜とはぴったりで、何とも言えない気持ちになった。

「お前、いつもここで生活してんの?」
「うん」
「じゃあ、向かいにあったあの部屋は?」

そう言って先ほどちらりと覗いた向かいの部屋を思い出す。ピンクや白で埋め尽くされ、リボンやレースで飾られた、フリルの付いた柔らかそうなカーテンが揺れていた、いかにもなあの部屋を。あれこそまさに、皆の知る‘‘可愛い暗夜ちゃん’’のお城だった。

「あれはね、フェイク。もし誰かが家に来たときに、私の部屋だって嘘吐く用の、偽物なの」
「……趣味悪ぃ」
「ふふ、宏太君が来たときも、あそこに案内したの。照れてもじもじしちゃってて、結構可愛かったよねぇ」
「……死ねこの性格ブスぶりっ子女」
「えぇ、幼馴染の男好いてる男色趣味のゲイの方がよっぽど気持ち悪いよ?」
「俺ノンケだし。宏太が好きなだけだし」

2年前 No.174

とと @totototo☆3vKXjwll5qo ★iPod=x2Qb6kzaF2

「アタシもアンタも、ただ人を幸せにしたかっただけなのにね」

ならばどうして、こんなに違ってしまったのだろう。お互いを憎みあうようにして信仰を続けなければいけなくなったのだろう。
同じやり方で、争うことなんてせず、人を救うことはふたりにはできなかったのか?



伊波と万智は分かり合えない
勉強は朝しよ

2年前 No.175

とと @totototo☆pZFOWxlGRjQ ★iPod=x2Qb6kzaF2

「……あ」
 窓から外を眺めていた初が漏らした声に、終は反応した。
「どうしたの?」
「雨が……」
「降ってきたの?」
「そうみたいデス」
 間もないうちに、窓を優しく叩く雨音が聞こえてきた。透明だった硝子が濡れて、外の景色がぼやけていった。
 何も見えないというのは、こういうことなのだろうか。
 初はふと考えた。目を閉じて、耳を済ませてみた。より音が鮮明になる。薄ぼんやりと光が滲む、それでも暗い視界の中、どんどん強くなる雨音だけが、外の世界との繋がりを感じられた。ここがどこだか分からない。心臓の音と呼吸が乱れる感覚を覚えた。段々気分が悪くなっていき、堪らなくなって瞼を開いた。
 終はこんな世界でずっと生きている。
「初、食べないの?」
 慌てて初が振り向けば、終が机に皿を並べて座っていた。初が隣に座ると、終はそれぞれの皿に小さなケーキを乗せ始めた。
「自分で食べられマスカ?」
「……うん」
 初の問いに小さく頷き、それきりどちらも黙った。何となしに気まずさが部屋を彷徨っていた。しばらくして終は手を握ったり開いたり、何か言おうとしてやめたり、ちょっと様子がおかしくなった。初が疑問に思って声をかけようとすると、決心したようにその手を動かし、視界を覆っていた包帯をゆっくりと外した。初は驚いて息を漏らした。久しぶりで眩しいのか、目をぱちぱちとさせて慣らしてから、終は伏し目がちに言った。
「今日くらいは……我慢できるよ。大丈夫。初しかいないし。だから……」
 終は初の手を、自分の手で包んだ。温かかった。いつも繋いでいるというのに、今日は特別に感じられた。
「初も、今日くらいは……」
 照れ臭そうな終の顔に、初は少し笑った。
 今日くらい、自分を傷つけなくたって良いだろう。今日くらい、あんな暗い世界で、音と、姉の手だけを頼りに生きていかなくたって良いだろう。あんな不安定な暗闇は寂しいだけだ。
 来年は自分が弟の包帯を外してあげよう。雨音を聞きながら、初はそんなことを思った。
 ハッピーバースデイ、あなたと私、君と僕。



マイメビの子
ちょっと遅れたけど終初誕!!
この双子は多分自分が相手を不幸にしてるって考えちゃってお互い思いがすれ違っちゃって、今回も初ちゃんがそういうことを考えそうだったんだけど、終君が勇気を振り絞ってそのすれ違いをあの一瞬だけでもなくせたよって話

2年前 No.176

とと @totototo☆pZFOWxlGRjQ ★iPod=x2Qb6kzaF2

彼の背中は小さくて、弱っちくて、本当に駄目駄目だった。でも、綺麗な背筋だった。彼はあんなに美しく、嫌に白いまま行ってしまうのか。とても悔しかった。不器用なあの姿のなんと愛おしいことよ!
わたしはあの横を歩きたかったし、微笑みあって愛を語りたかったし、それでなくとも凭れくらいにはなってあげたかった。傲慢だった。わたしも不器用な人間だったから、彼が嫌いだけれど、けれどまだ、理解したいと思っている。
彼が去ってしまうのか、……わたしが離れていくのか。本当はどちらでも変わらないのだった。さようなら。愛していたし、憎んでいた。

わたしはあなたとプラネタリウムが見たかっただけなのに。



実在の二人をイメージして書いた。多分あの二人は、今日いい意味で決別したんだと思う。付きあってたとか別れたとか、本当にそういう話では全然ないんだけど、あの二人にとってはそういう話よりも大切で痛切なさよならで、あそこからまた新しい道が二人ずつにできるんだろうな。彼の方は気づいていないだろうけど。似たもの同士の二人が、帰ってきたときもっとそっくりであれば良いと思いつつ、違う人間になっていてもそれはそれで真理なのだろうとも思っている。さようなら、不器用な二人。

2年前 No.177

とと @totototo☆pZFOWxlGRjQ ★iPod=T0zf1jZ1Ab

「昔読んだ漫画でね、ひょんなことからバレエ始めた主人公がどーしても発表会の主役やりたくて好きな男の子と踊りたくて練習してトゥシューズもすぐ履けるようになって子供の頃からずっとバレエやってた上手いライバルの子オーディションで負かして見事白鳥の湖で綺麗なオデット踊るっていうストーリーがあったの。……正直作者を殺してやろうかと思った。…………あ、あ、あんなに……あんなに簡単にトゥシューズ履き慣らしちゃってさ……あたしが履くの許してもらえるまで何年かかったと…………六年よ、六年! 傍からみたら大したことない年数だけれど、初めてオレンジに光るスワンを渡されたとき、あたし、どれだけ嬉しかったか! リボンをライターで炙るあの匂いが、すごく好きだった! まだ未熟だからってチュチュを着させてもらえない頃、上級生のキラキラ光るチュチュの胸元がどれだけ眩しかったか! スペインの踊りでようやっと着られた赤いチュチュ、もう脱ぎたくないって…………ずっと忘れられないのに! ふざけんなって、思ったわ……たかが漫画なのにね…………悔しかった……あたしの人生全部否定されてるみたいで…………もう足が動かないの。指がぼろぼろで痛いの。股関節が限界だって、言ってる……でも、それってみんな同じよね。それを隠してみんな踊って、評価されるんだから…………あんなに苦しい思いして美しさしか見てもらえないなんて……バレエを最初に踊った人は相当馬鹿だったのね。だから、もう、本当に……それでもまだスポットライトを浴びたいだなんて、つまり、そういうことなんだわ。馬鹿よ。バレリーナは馬鹿の遺伝子よ。……そうね、そんなの、誰だってとっくに分かってるわね」




iPod touchのデータ消えて書き溜めてた小説も全部消えて本当にショック過ぎて今激しい虚無感に曝されている

2年前 No.178

とと @totototo☆pZFOWxlGRjQ ★iPod=T0zf1jZ1Ab


「こんにちは」
 目の前の女の子が言った。白い眉が優しそうに垂れて、目尻に愛らしいしわが寄った。透き通るような肌が光を柔く反射しながら鈍い煌めきを映していた。私はそんな真っ白な姿に見惚れるように釘付けになっていた。少し落ち着いて周りが見えるようになってから、差し出された彼女の手を取った。冷たい陶器のような肌はそれなりに温かく、私はおやっと思った。それと同時に、懐かしい熱によって、よく分からない曖昧な記憶が自分の中でつっかえ始めたことに戸惑いを覚えた。
 ――どこか、で、会ったことあります?
 口元まで出かかった疑問をぐっと呑み込んだ。そんなことあるわけなかった。けれど未だに胸は捉えようのない感覚に囚われ続けていた。痛み。ちっとも甘くなんてない、刺すような、痛み。
「私、花籠です」
 ころころと控えめに、しかし爛漫と笑う花籠はさながら天使のようだった。

2年前 No.179

とと @totototo☆pZFOWxlGRjQ ★iPod=T0zf1jZ1Ab

オリキャラ


茶木
葉緑
雷紫
花桃
雲灰
陽光
日陰

白雪
夜黒
風透
蒼凍
雨水
星黄
火赫

エミリー

藤野 由妃
藤野 志貴
明司 蓮賀
宿禰 祐史

黒木 留衣
フィン

日瀬 飛鳥
如月 真琴

荒時 柚乃
構野 竜

牧野 朱雀
葛城 碧
渡辺 明里
一条 蒼真

刹那
雪奈
日向

浦田 梨乃
浦田 華夜
浦田 秋亜
浦田 魅深


朝輝
望無
空乃
ロゼッタ
雛菊


金芽
主咲

ラン
メル

赤井 海
ソラ
トーコ(岸辺 敏子)
アメリア・ドゥリトル
チェルシー・ドゥリトル
コウタ
リュラ
ソフィ
ブレイク
エフィム
コナー
チェイス
エマ
ミーガン
クレア
レミィ
ネクト
ターリン
クルミ


めい子
伸二

結衣
結友

安東 静流
古屋 瑚守
皆川 智
小野井 時也
有野 暮刃
有野 富香

つん子
メイド
アイドル


一匹狼

由里

美々

マリ・アリンネ
ヨルネア・ケレス
ユーサ

白奈 悠



水桜

一年 里歌
川前 糸
渡 マリア

赤井 鞠


華子
麗子
美子

桜田 南
ライナ
真子

椿




舞子
出海
恵那
栄江
めい子
友里

ハル
ナツ
アキ
フユ




軒山 有希
真鍋 透磨
志田 菫
遠峰 六
一ノ関 暗夜
倉下 陽典
森澤 宏太
軒山 章子

広町 友枝
鈴木 雪子
宇田 正野
右塚 佐世
立花 瞳
新田 めぐ
堀越 由海
神野 赤李
長谷部 真夜
中嶋 留衣
多賀 美怜
宮内 莉奈

青木 大雅
杉山 恵斗
竹内 雨
麒麟さん
麻里奈

川井 和花
神崎 晴
神崎 裕二
平山 冬吾
横田 響子

安東 秋与
安東 春恵
井谷 拓真
大岩 亜沙
神門 さゆり
久保 雅二
木暮 万智
坂本 博実
真田 海斗
瀬雲 裕太
多田 圭吾
遠宮 陽子
新田 伊波
野津家 守
橋崎 律
降尾 椎華
三國 元久
宮代 ベルサ(Bertha・Granfelt)
和嶋 樹


(((単体)))
荒海 小嵐
千種 柚子
うさぎさん
しらたまくん
ゼリアル・メリィ
相田 加代
魔法少女まにゃん
文世


(((総合)))
前の神様:霙
今の神様:赤井 鞠
監視役:千種 柚子、うさぎさん
?:小袖、花籠



いまのところのうちの子
みんな可愛いよ……

2年前 No.180

とと @totototo☆pZFOWxlGRjQ ★iPod=T0zf1jZ1Ab

 ※一人の主人に対し、一つの「ドール」です!お忘れ無きよう!譲り合いの心が大切ですよね!


 ▽ 招待客各位


 「好きなこと?そうねぇ……私は本を読むことが好きよ。恋物語が特に。誰かが作ったお話だって分かっていても、すぐに登場人物達に心を動かされてしまって……ふふ、これだから人間は駄目ね。ああ、そうだわ!今日は午後からお茶会にしなくて?この前とっても美味しい紅茶を見つけたの。是非貴方にも口にして頂きたいわ」

 『うわぁ、本当に精巧にできてるんだな……。えーと、こんにちは、綺麗なドールさん。早速だけれど、私は君が欲しい。でも、君には拒否権がある。ドールは人間に逆らえないんだっけ?……まぁ良いや、聞いてくれ。私は無価値な人間だ。ゴミ屑程度にしか値しない。家は兄が継ぐし、私はただのスペア、しかも女で、どっかの貴族か王族の長男に嫁ぐかしなきゃ家にとってのお荷物だ。君はそんな何もない人間のドールとして生き――てるのか?いや、そういう話ではないな。……こんな人間のドールとして生きていけるか?君に自尊心というものがあるならば、それを傷つけずにいられるか?もし君が良しと言ってくれるなら、良ければ私の家族に――いや、何でもない。私の、と、友達になってはくれないか?』


 名前:ロネル・カンデイユ
 読み:
 愛称:

 性別:女
 年齢:19

 性格:周りに見せている彼女は、明るく天真爛漫で、少し茶目っ気のあるお嬢様。感情のまま笑ったり、怒ったり、小さな出来事にさえ反応を見せる豊かな性格。細やかな思いやりができ、特に小さい子供の面倒を見るのが得意という世話好きな一面も。

 容姿:

 「ドール」か所持者様か:(「主催」か「王族」か「貴族」かも御記入下さいますようお願い致します。)
 「ドール」の異能力:(「ドール」の方のみで結構で御座います。戦闘目的、防御目的、芸術・美術目的など、どんな物でも可能とします。)

 武器:(「ドール」の方でお持ちの方がいらっしゃれば。所持者様はもしもの為にナイフなどの武器を所持している方がいらっしゃれば。)

 備考:(一人称、二人称は必ずお願い致します。)

 募集:(お互いの<パートナー>(「ドール」は主人、主人は「ドール」)の募集は必ず、お願い致します。募集したいものがあればどうぞ。)





夏休み終わったら参加したい……!

2年前 No.181

とと @totototo☆pZFOWxlGRjQ ★iPod=T0zf1jZ1Ab


裕二さんが消えた。昨日まであんなに普通に笑って花を売っていた裕二さんが、泡のようにいつの間にかいなくなっていた。晴のことはどうするつもりなんだろう。置いていってしまって、大丈夫なのだろうか。いや、今の時点で大丈夫じゃなくなっている。かなりピンチな状態だ。ただでさえ静寂を保っていたこの家が更に静かになって、逆に変に耳にうるささが生まれるくらいで、本当にあの人がいないんだなぁと改めて思い知らされた。

「おい」

突然の声にびっくりして、ワンテンポ遅れて振り向くと、トーゴさんが不機嫌そうに立っていた。いつ入ってきたんだろう。それらしき音も何も聞こえなかった。晴を呼ぼうかと思ったけれど、どうせまた口喧嘩が始まってしまうだけなのでやめた。こんなときでさえ(こんなときだから?)言い争う二人が想像できてしまうのは少し笑えた。
トーゴさんは一度辺りを見回してから、机に置きっ放しでどうしようもない裕二さんのメモ書きを手に取った。

「これは何だ」
「……そのまんまです。裕二さん、どっか行っちゃったんです。聞いてませんか?あの、本当にいきなりで、それで……」

説明が途切れた私を見て、トーゴさんはメモ書きをぐしゃりと握ってごみ箱に放った。

2年前 No.182

とと @totototo☆pZFOWxlGRjQ ★iPod=T0zf1jZ1Ab

 暗夜の持っていた紙をぱっと取るなり、六はその内容を確認した。己の紙と見比べて少し目を見開いた後、俯いて、くっくっと肩を揺らして笑い始めた。声を押し殺した、いつも控えめな微笑みばかりの彼らしくない笑い方だった。暗夜は困惑した。六はまだおかしさの余韻を残したように息を吐きながら自分の持っていた紙と暗夜のものを同時に見せた。

 そこには二枚の婚姻届が並んでいた。

 暗夜は全く同じ二枚を眺めると、しばらくぽかんとした顔で呆けて、だんだんとおかしそうに顔を歪めて、ついには震えた声を出して笑ってしまった。六も我慢できないというように噴き出した。翳りのない柔らかい表情。これが、初めて二人がお互いに見せた自らの綻びだった。ひとときの温もりが緩やかに部屋を包んでいった。
 婚姻届を机に置き、向かい合う二人は両手の指を絡めた。額をくっつけ、まるでなだめ合うように髪を触れ合わせた。
「甘えてたのが見え見えだね」
「だな」
 伏せた目をちょっとずつ開き、目線をお互いに向けた。手を緩め、額を離し、相手と距離を作る。
「これ、捨てる?」
「必要ないだろ。まさか相手のあてでもあるのか?」
「ううん。父親のお嫁さんにはなれないもの」
「ああ……。確かに同性との結婚も、まだ認められてないな」
 二人はもう一度、ふふっと笑った。

 ――暗夜と六は諦めないことにしたのだ。

「じゃあ一緒に燃やそっか」
「馬鹿。そういう余計なことするからその分もっと傷つくんだ。普通に捨てたら良いんだよ」
 六が二枚の婚姻届を丸め、ごみ箱に投げ捨てる。時間が止まったような、あるいは今まで止まっていて、たった今から動き出したような。不思議な感覚だった。
 それを見て、暗夜がぽろっと気持ちをこぼした。
「……私、お父さんのことが好き。ずっと好き。家族に飢えてるとか歪んでるとか、そんなんじゃない。本当にただ恋をしてて、それだけ。それだけだったの。だから、この先いつまでもそうありたい。好きでいたい」
 その言葉を紡ぎながら、暗夜は、自分が抱えていた罪の意識と向き合えるようになった気がした。真剣な顔だった。やっと自分の愛を認められる、そんな確信があった。
「俺も、ずっと透磨を好きでいるよ。男だから、なんて、そんな理由で誤魔化したりしないし、今日みたいにお前を逃げ道にしないよ」



クライマックス。二人が自分の愛にけじめをつけるシーン。婚姻届捨てたところから微妙だなぁセリフは良いんだけど無理矢理ねじ込んでしまった。六の最後のセリフは駄目。もっと練るべし。この二人は私なりに幸せにしてあげたいと強く思う

2年前 No.183

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わたしの上司は出来損ないだ。

「マイさん」
「は、はいっ。あっ、ご、ごめんね、びっくりしちゃって……。えっと、何かな?」
「さっきの書類。何個かミスがあったんですけど」
「ああっ、ごめんね!いつもいつも……わ、わたしったら全然学習能力なくって……本当に……」
「謝罪とか泣くのとかは後で良いんで、さっさと修正してもらえませんか?」
「あっ、う、うんっ。ごめん、ごめんね。すぐ終わらせるねっ」

わたしが分かりやすくため息を吐けば、マイさんは肩を跳ねさせて、一度こちらを伺ってから席についた。一生懸命早く作業しようと頑張っているんだろうけど、頻繁にタイプミスを起こしている。あの調子じゃ、また修正をしなければいけないだろう。
マイさんは頭もそんなに良くなくて要領も悪くて不器用でドジでとろくてお人好しだから騙されやすくて泣き虫で弱虫で駄目で駄目で駄目で、本当に何もできなくて、だけどαってだけで社会的にはそこそこ良い感じの立場にいる。それに対してわたしは、頭も良いし要領も良いし仕事に関しては器用だししっかりしてるし人の言うことはすぐ信じないようにしてるしすぐ泣かないし強くあろうとこんなにも頑張って頑張って頑張っているのに、βとかいう量産型の人種だから、あんな頼りない人の部下をやっている。
わたしの方が断然この会社に貢献しているはずでも、クソみたいな階級制度が根本にある今の社会じゃ、αのマイさんの方がテンプレート的に良い感じの遺伝子で、βのわたしは平凡でそこら辺にうじゃうじゃいる普通の遺伝子なのだ。本当胸糞悪い。αがなんだって言うんだ。あんなの、社会的に立場の弱いΩを見下して、番とかいうアホ臭い契約なんぞで縛りつけて、それでいて自分達は相手を守ってるなんて思い込んでるような高圧的で勘違いの激しい奴らばかりじゃないか。
ムカムカした気分でパソコンをいじっていると、携帯のバイブが鳴った。片手で操作しながら新着メールを見れば、同僚の矢島君から今晩の夕食のお誘いがあった。今日のスケジュールを確認してから、OKの返信を送る。少し遠くの席に座る矢島君を盗み見ると、メールの返事を見たのか嬉しそうな顔をしていた。満足だ。これで良い。
おそらく、わたしは将来的には矢島君と結婚するのだと思う。どこにでもいるβ達はお互い同じ人種同士でくっついて、大体βの子供を産んで、育てて、そこで終わり。そういう風にできている。矢島君は優しいし可愛いし、誠実で仕事も熱心に取り組む、すごく好印象なタイプだ。彼と結婚したとしても、誰も文句は言わないだろう。
修正を終えたのか、マイさんが立ち上がってこちらに駆け寄ってきた。途中でつまずいてこけそうになる。やっぱりドジなんだなぁ。こんな人が本当にαなんだろうか。他のαとは大違いだ。

「あっ、あの……マキノちゃん……」
「はい」
「これっ、が、頑張って直したから、えっと……。た、多分大丈夫だと思う!」
「……分かりました。もう良いですよ」

マイさんに手渡された書類に目を通すと、またいくつかミスを発見する。でも、もう彼女に言う気はない。
わたしは心の中で舌打ちをして、書類を直し始めた。


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そういえばオメガバース流行ってたな〜と思いつつ勢いで書いた
おどおどαと冷たいβの社会人百合読みたくない!? 読みたい!!!

2年前 No.184

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2年前 No.185

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青白く、痩せこけた顔で眠る、棺の中のお母さんは、ちょっと悲しそうに眉を下げて、でも口もとには微笑みを湛えて横たわっていた。死人の顔だぁ、と思ってまじまじと見れば、あんまり目をやるものじゃあないとお婆ちゃんに怒られた。かなり恐かった。お婆ちゃんは今日初めて会ったばっかりだけど、そんなにお母さんのことを好きそうに見えなかったから、私もこの人とは距離を置いた方が良いと段々分かってきた。
いつもは白い服のおんな達が、今日だけは黒い服を着て、肩を寄せ合って押し殺すように泣いていた。お婆ちゃんが、あの人達はどうしてこの家に住んでいるの?と不快感を露わにした声で聞いてきた。私は答えを曖昧にしようと少し唸って、心の中でお婆ちゃんの足を踏んだ。
優しすぎるお母さんが見捨てられなかった、可哀想なおんな達。救いの主であるお母さんのことを、母様、と敬って、何十歳も年下の私のことを、姉様、と慕ってくれたおんな達。
以前、どうして白い服ばかり着るようになったのか、問うてみたことがあった。一人のおんなが、死んだ夫の通夜からずっと喪服ばかり着続けていたのをお母さんが見兼ねて、言ったのだそうだ。

「もう、そんな悲しい服を着るのはやめましょう。白いワンピースでもまとえば、きっと少女のように笑えるときが来るはずです。次に貴方が黒い服を着るときは、旦那さんと同じくらいに大切だと思っていた人が亡くなってしまったときです。きっとその瞬間は、自分も死にたくなるくらい苦しいけれど、それは黒い服にしまって、また白い服を着ましょう。自ら悲しみで身を包む必要も、義務も、ないのですよ。貴方が本当に着たい服は何ですか。それを考えることこそが、幸せというものだと、そう思いませんか」

それからおんな達は、白い服だけを毎日着るようになった。お母さんは困ったように「そういうことでも、ないんですけどね」と言ったけれど、笑って受け入れたそうだ。



可哀想な女の子達を救ってあげる一人の女性が出てくる夢を見たので、そこから書き起こしたやつ。一つ上のやつもそう。

2年前 No.186

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「駄目だ」

静かな樹海の中に、お父さんの声はよく通った。
「死ねない」

お父さんは泣いていた。瞬きする度に、涙が下瞼に溜まらずに、すうっと頬を滑っていった。青く病的だった肌が膨張するように赤くなって、やっぱり不健康な色を浮かばせた。垂らした縄の前で、鼻を啜りながらお父さんは項垂れた。
「死にたくないの?もう、いいの?」
いつまでもこうしているのも何だかなぁ、と思ったので、私はできるだけ責める声色にならないように気をつけながら聞いた。
「貴方は死にたいのか?」
「死にたいけど。お父さんが嫌なら、どっちでもいいよ」
お父さんが私を射抜くように見た。少し動揺の映った瞳が揺れていた。涙が乾きかけていた。



「変なときに泣くんだね。お母さんと一緒」
「あの人と?」
「うん。お母さんはね、自分が小学生の頃、本当は青いランドセルが良かったんだって。でも、女の子だからって、そういうよくあるやつ……えっと、固定観念?のせいで赤しか買ってもらえなかったって。その話してたとき、お母さん泣いてた」
「確かにおかしいかもなぁ、余程悲しかったんだろう」
「お父さんもおかしいよ。死にたかったくせに、死にたくないって、泣くんだもん」
「貴方が悪い」
「私?」
「あのとき、貴方が俺をあの部屋で見つけさえしなければ、俺は一人で死ねてたんだ」
「……」
「死にたくないんじゃない。死ねないんだ」
「……じゃあ、お父さんも悪い」
「俺が?……まぁ、こういう結果になったのはすまなかった」
「違うの。私、今日より前に、一回死のうとしたの」
「いつ?」
「お母さんが死んだって知らされた次の日の夜。お父さんと同じで、ドアノブに縄引っ掛けて、……でも無理だった」
「どうして?」
「お父さんが、晩ご飯ができたって、叫ぶから。私、返事しちゃって。あ、これは今死ねない、駄目だ、って」


エンジンの音がうるさかった。ときどき道がでこぼこになっていて、そこを通る度に車はがたんと揺れた。いつもより不安定な車内に酔ってきたので、窓を開けると、朝の木の水っぽい変な匂いがした。

「ごめんなさい」

えっ、と思った。横を見ると、お父さんが堪えたような顔で前を見ていた。

「どうして謝るの」
「だって、俺が悪いって」
「そうだけど。でも違うじゃない。そうじゃないよ」
「……貴方が捨てた髪飾りを、見つけた」
「えっ?髪かざ……あ、ああ……うん…………。……そうなんだ……うん…………」
「本当は別にすごく悲しいわけじゃないんだ。今すぐに首を吊らなきゃいけないとか、手首を切らなきゃいけないとか、そういうんじゃない」
「……うん」
「ごみ箱の中の髪飾りを見つけたとき、少しだけ初めて実感が湧いたんだ。ああ、死んだんだって」

お父さんがブレーキを踏んだ。車は木々に挟まれた道でゆっくりと、緩やかに止まった。音がしないわけではなかった。だけど、耳の奥がきんきんとうるさくて気が狂いそうなほど、体が拒んでいるみたいに、他の音は全く聞こえてこなかった。お父さんは決して私と目を合わせようとはしなかった。ただひたすらに耐えるように前を向いていた。







「お、かあ、さんが」

怖かった。


「お母さんが、いないことに、私、慣れてきたかもって」

神様だと思っていたから。

「それが嫌で。私はあの人がいないと生きてけないと思ってたから」

ずっと側にいないと駄目なのだと。

「だから早く生きることに不慣れにならなきゃって。でも無理だった。私は平気だった。じゃあもう死ぬしかないじゃない」

私自身が彼女を否定することになるのだと、思ったから。



「お父さん」

自分の声が震えているのを感じていた。今まで何ともなかったようなことが、一気に私を悲しみのようなもので包んでいって、ぺらぺらな心が裂かれていくような感覚だった。
未だこちらを見ないお父さんの左耳を掴んで、優しく引っ張った。目が合って、私はようやっと激しい熱に、痛みに苛まれることができた。それは苦しいものだけれど、ずっと欲しかったものだ。息を吐くと、涙がこぼれた。



「お父さん…………。お母さん、……死んじゃったよ……!」

2年前 No.187

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「国民あっての王だよ。私一人生きたって、何の価値もない。だって王は、多くの者に求められて、やっとそれとしての形を見出せるものなの。私自身は全く意味のない容れ物で、ちょっと昔の偉い人と同じ血が混ざってるだけで、それだけで馬鹿みたいに重い役目を詰め込まれる……この手に、足に、脳に、心臓に……。私じゃないものが入ってる。民が欲する理想の王が、私の中で勝手に息をしてる……!」

2年前 No.188

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「……私を、知ってた?」
「そう。ずっと前から知ってた。今よりもっともっと昔に会ってた。……そのときから、私、貴方を……」
「うん」
「貴方を、あいしてた」




「嬉しい」花籠は幸せそうに笑った。真っ白な天使……。


神様、私は貴方を決して信じてはいないけれど、もし、本当に空の上にいるのなら。そこから私を見ているのなら。

感謝してもいい。

恨み言はきっともうたくさんだろうから、貴方が慣れない言葉を口ずさもう。こんなにも綺麗な世界を瞳に映して貴方に贈ろう。

2年前 No.189

とと @totototo☆pZFOWxlGRjQ ★iPod=T0zf1jZ1Ab

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2年前 No.190

ととるんビーム @totototo☆pZFOWxlGRjQ ★iPod=T0zf1jZ1Ab

恥ずかしいことを言います。
あたしには、死んだ双子のお姉ちゃんの霊がとり憑いています。




こん、こん、と、わざと踵を地面に叩きつけるようにして歩く。息を吸うと、雨が上がった後の湿っぽいぬるい空気が肺を満たして、どうにも頭は冴えなかった。大きな水たまりを踏んで靴下に雨水が染み込んでいくのを、どこか他人事のように感じていた。
行き場のない両腕を揺らして、日が照り始めた住宅街を眺めた。高そうな家、家、家。手を繋ぎ、笑顔で歩く知らない親子が今日の夕食について楽しそうに話していた。あたしが遅いのか彼らが速いのか、親子はすぐ小さくなって、どこかの家に吸い込まれるようにして消えた。

《――私、刹那っていいます》

さらさらと砂のように流れていく記憶。耳の奥で響くあの声を消す方法はあるのだろうか。


一体、どんな気持ちで、あたしと話してたの?



「刹那」

あんたのいない世界が、どれくらいまでにしんどかったか。顔も名前も覚えていなかったけれど、けれど、それだけがあたしの罪でしょう。ただ一言、本当の心で名前を呼んで、あんたを抱いてみたかった。

《日向……素敵な名前ですね。明るくて、優しい……》

「本当にそう思ってた?」
思い出に悪態をつく。これが思ったより虚しい行為で、思ったより心を支えてくれるのか、あたしは初めて知った。
上を向くと、雲が割れて白い光がすうっとこちら側に伸びてくるのが見えた。彼女の柔く光る白銀の髪を思い出させた。




「本当ですよぉ。信じてなかったんですか?」



ハッとなって後ろを振り返っても、当たり前のように誰もいないわけであって。あたしはおかしくなっちゃったのかも。姉の幻に縋りつくような、可哀想な人間に、成り下がってしまったのかも。
……それでもいい?
……返事はない。
それはやっぱりあたしの妄想だからか、それとも、あんたが死んでもまだずるい人間でい続けているからなのか。
どっちだって構わないね。死者は生者を救えない。

あたしはあたしの為だけに泣くし、あんたもあんたの為だけに泣くべきだ。

2年前 No.191

ととるんビーム @totototo☆pZFOWxlGRjQ ★iPod=T0zf1jZ1Ab

「今日来た転校生達、どう思う?」

陽子の唐突な質問に、博実は固まった。こんな突拍子もない振りはいつものことなのだけど、やはり慣れるものでもなく、少し間の抜けた表情を晒してしまうのは仕方のないことだった。

「…………とっても当たり前なことを言いますが、どう思ったか、というのはですね」
「うん」
「それはつまり、どうか思わなければ、成立しない話題でありまして」
「……んん?えーと、じゃあ、博実はどうも思わなかったんだ」

「そういうことになりますね」いつもの無表情に戻った博実は、飲み終わった二人分のティーカップを持って立ち上がった。静かな空気が好きではあったけれど、今はなんとなく気まずくもあるので、いつもの特有な明朗さを出してはくれないものかと博実は細々と胸の内で陽子に願った。

「では、陽子は……」
「うん、なぁに?」
「陽子は、あの二人に、何か思うところでも?」

ああ、そうだなぁ、と口にして、白いベッドに飛び込んだ陽子は、はめ殺した窓の外をちらりと盗み見ながら少し笑った。柔らか過ぎる寝床。新しいこの家にはまだまだ慣れそうにない。

「最初は兄妹かと思ったの」
「はぁ……どうして?」

「目がね」

陽子はぴっと自身の目を指して、

「目が、似てたでしょ。あの二人」



「なーんか、ヤな感じよねぇ」
「おや、気に入らないことでもあったの?」

がやがやと猥雑な騒ぎ声で溢れるファストフード店。カウンターに腰掛けて唇を尖らせるさゆりに、注文から帰ってきた拓真は横の席に腰を下ろして不思議そうな顔で問いかけた。

「いや、今日の転校生ちゃん達さぁ」
「うん。あ、はい、コーラ」
「ありがと。……何か、根暗じゃん?」
「……あぁ、まぁ、そうっちゃそうか?」
「いや……違うわね。別に性格は何だって良いんだけど、こう、その……」
「気に入らないことがあるんだ?」
「…………その、あたし達って、ちょっと、おかしいじゃない?一般的に見て。あたしは裸眼だと外に出ることさえできないカラコン依存症で、アンタは靴に欲情する変態で、クラスの皆もそんな感じで。この際、何を持って一般的とするのか、とかいうよくある議題は置いといてね」
「あはは、そうだな」
「でも、あたし達は好き好んでおかしいわけだし、例え自ら望んでなくったとしても、ちゃんとそのおかしさと折り合いをつけて生きてる」
「あの二人はそうじゃないって言いたいんだ、神門は」

さゆりはコーラを一口含み、神妙な顔でゆっくり頷いた。

「あの二人、何背負ってんのかまだ知らないけど。明らか自分の首締めながら生きてるでしょ」
「理由は?」
「勘よ。こーいうのは勘が大切なの。……ま、あえて言うなら目、かしら」
「ふぅん。神門サンはついに他人の眼球にさえ意識が向き出しましたかぁ」
「あたしの話はカンケーないの!あの二人の目、暗くて濁って陰気臭くて、あたしのカラコンプレゼントしたいくらいだわ」

「二人して、何の話してんの?私も入れてーや」

そこに、プラチナブロンドの髪を優しく揺らし、興味津々で無邪気な笑顔を見せるベルサが現れた。さゆりの顔がぱっと明るくなったことに、拓真は笑った。

「ベルサ!偶然ね。横空いてるからどーぞ」
「ありがとう。それにしても、放課後二人きりで寄り道なんて、怪しいですなぁ。……さゆりと拓真のそーいう噂はたくさん聞くし、実際お似合いやと思うけど、そこんとこどうなん?」
「はは、ベルサ、冗談も程々で頼むぜ。俺とコイツはただの友達だ。なぁ?神門」
「友達っていうか、まぁ、あたし主導の主従関係よね」
「出ました神門さゆりサンの女王発言!これはこれは、ワタクシ、友人などと出過ぎた発言をしてしまい、とんだご無礼お許し頂きますよう……」
「分かればよろしくてよ」
「二人共その茶番楽しいん?」





う〜ん転校生組の話を書こうと思ったらかなり話逸れたし全然良くなかったのでやめた。供養!
にしても転校生組かなりボロクソに目のこと言われてんな……めちゃくちゃ死んだ目してんだろうな……

2年前 No.192

ととるんビーム @totototo☆pZFOWxlGRjQ ★iPod=T0zf1jZ1Ab


広町 友枝/ オレンジ
鈴木 雪子/ 茶
宇田 正野/ 灰
右塚 佐世/ ピンク
立花 瞳/ 緑
新田 めぐ/ 青
堀越 由海/ 黒
神野 赤李/ 白
長谷部 真夜/ 紫
中嶋 留衣/ 黄
多賀 美怜/ 水色
宮内 莉奈/ 赤


好きな色まとめ。一応それぞれの性格に合ってる色だと思う…

2年前 No.193

とと田 @totototo☆pZFOWxlGRjQ ★iPod=T0zf1jZ1Ab

「あ、ッ」

体が動いたときにはもう遅く、手から離れたコップは嫌な音をたてて割れた。砕けた破片の一つひとつが陽光を己に灯して、きらきらと光っていた。
涙みたいだなぁ、と感傷に浸るみたいに馬鹿なことを呑気に考えながら、ばらけたガラスを集め始める。
わたしはふと、あの人のことを思った。ビニール袋の中で重なる破片は途端に輝きを失くして、無機質な涙のように、そこに有るだけとなった。命を刈り取るような、わだかまりを産むような、逆に遂には溶かすような、感覚。

わたしは心地よささえ感じているのですよ。
知っていますか。
あなたはわたしの灯火を、消していっては、くれないのですか。

1年前 No.194

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第27章 ハッピーバースデー



「俺は、毎日が誕生日だからなぁ……」
「ハァ? ほら、この人また意味わかんないこと言い出した……」
「割と真面目だぞ」


「あの時、お前に助けてほしいと言われたから、俺なりのやり方をした、それだけだ。間違ってたというなら止めればいい。でもな、お前、もう今日の自分が何回目かも忘れたろ。そういうことじゃないのか? …………うーん、俺もお前も嘘を吐き過ぎたなぁ」


「そんなの……長くは続かない。いつかきっと耐えられなくなって、溢れ出して、僕はまた元通りだよ」
「じゃあ、毎日殺せばいい。自分を殺すんだ。明日死んで、生まれて、明後日死んで、生まれて、明々後日死んで、生まれて……」




「ハッピーバースデー。今日からめでたく二回目の人生だ! 明日からまた三回目、四回目、五回目……何度も何度も生まれ変わろう。たくさん殺そう。殺されよう。そうやってこれから毎日自分の誕生日を祝えばいいのさ」

1年前 No.195

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 苦しみは癒えたけれど悲しみは癒えない。
 違いが分かりますか。苦しみは胸が裂けるように痛みますが、悲しみは喉が張り詰めるように痛みます。
 わたしは、ずっと、唾を飲み込んで待っている。コーラ味のガムを噛んだ後は、溶けたプラスチックのような、薬っぽい匂いと味で口内が満たされるのを面白いと思った。もっとあなたに囀ってほしかった。
 死は自由の象徴だとあなたは言ったし、永遠の呪いだとお父さんは言った。わたしは、二人ともなんて大げさだろう、と。それだけ。わたしの友達は死んだら儲かる、と楽しそうに呟いていたけど、あの子は少し特殊なので……。あの子の薬草みたいなシャンプーの香りと、太い髪、パンツが見えそうなくらい短いスカート。わたしはそれを思い出すと、ほんの、ほんのちょっと、笑いが漏れてしまう。負けです。
 トランプゲームが得意ではないのをわたしは遺伝だと思っていた。そんなのが血なんていうもので受け継がれると本気で考えていたわけではなかったけれど。あなたはババ抜きがとっても弱かった、……わたしも。お父さんは神経衰弱が弱かった、…………わたしも。少し、嬉しかったことをずっと隠していました。共通点を見つけられると、ささやかな幸せに気づいたみたいで素敵ではないですか。わたしが勝てるトランプゲームは一つとしてなかった。クローバーのジャックが何故だか苦手だった。
 モノクロの方のジョーカーを見て、おもむろに絵の具で色を塗り始めたあなたを、お父さんは笑っていた。
 二人でつけた足跡を逆に辿っていきたい。あなたとお父さんを作った世界の匂いを知ってみたい。わたしを作る世界はここ、あなたがいなくても、ここ。悲しいです。唾が甘い。人間は学習して成長する生きものだから、わたしはあなたの匂いがする場所で、ベッドの下に入り込んだハートの3を探す。
 あなたがしてくれた髪の結い方が分からないので、ずっと下ろしたままで生活しているわたしに、似合っているよ、とクラスメイトが言ってくれた。
 なんにもわかってないんだなぁ。


1年前 No.196

とと田 @totototo☆pZFOWxlGRjQ ★iPod=K6sJg30RJj

第6章 鈍足



「お母さん、お母さん」
「なぁに、騒々しいわよ。どうしたの」
「金魚死んでる」

オレンジ色の二匹の金魚は、どちらも黄色く光らせた腹を上にして水面に浮かんでいた。早朝にわたしが撒いた餌が、ふやけて二匹と共に漂っていた。小さく丸い目の玉が濁って虚空を見つめていた。

金魚を庭に埋め、盛り上がった土に山茶花を添えてやった。蟋蟀が鳴いていた。晩秋だった。うつくしいものたち。赤い空と優しい風のささやかな冷たさに甘えたくなるのだ。しばらく庭で立ち尽くしていると、母が金魚鉢を持って、ゆったりとした動作でこちらに歩いてくるのが見えた。

「これ、蔵に入れておいてちょうだい」
「どうして? いつもの場所に置いておけばいいのに」
「どうしてって、金魚は死んでしまったのだからもう使う必要はないでしょう。逆に、空の金魚鉢をどうしようっていうの」

母の言葉に、確かにその通りだと思い、わたしは蔵の奥にそっと金魚鉢を置いた。舞うほこりにくしゃみが出た。





赤い椅子に腰掛けて笑う男と、わたしもまた同じ色のそれに座りながら向かい合った。男は手にしている紙を流し見て、こちらをちらりと一瞥した。

「あー……それでですね、これからここで生活するにあたってなんですが」
「ええ」
「まず、貴方には本名を捨て、新しい名前でこの先ずっと生きていただくことになりますが……宜しいですね?」
「はい、確認済みです」

そもそもわたしには本当の名など無いに等しいのだ。一度だって他人に呼ばれたことなどなかった。

「で、まぁ……その、新しい名前は既に決まっているんですけどね。実はそれはここを卒業してから与える決まりなんです」
「はぁ」
「ですから、卒業までは自分が呼ばれたい名前を名乗っていただいて構わないのですが、何か希望はありますか?」
「希望……ですか」
「本当に何でも良いですよ。外国の名でも、食べ物でも、アルファベットでも、擬音語でも……」

男は指折り数えながら目を細めて微笑んだ。つり目と平たい顔が狐みたいで、飄々とした雰囲気。あまり好きなタイプの人間ではないと思った。

「他の人はどんな名前なんですか」
「他の人……そうですね、例えば貴方が使う予定の部屋の両隣の方々ですと、“山茶花”と“蟋蟀“かな。……まだまともな方です。ふざけ半分かは知りませんが、“ピョンピョン”なんてのを名乗る人もいるんですよ」

山茶花と蟋蟀。その二つの名を耳にした途端、わたしの中であの日の情景が浮かび上がった。萎びた山茶花、蟋蟀の音色、金魚が死んだ秋の日。用済みとなった青い金魚鉢。

「決まりましたか? あ、いえ、ゆっくり考えていただいても……そんなに急かす話題でもありませんし」
「金魚鉢」
「え?」
「名前。“金魚鉢”が良いです」

わたしはずっと哀れんでいた。
空っぽのまま、今はもう蔵の奥でほこりを被っているであろうそれに。何かに満たされていなければ価値すらない、そんなものが存在することの穏やかな恐ろしさと、そこに己を重ねてしまうわたしの愚直さに。
賭けてもいいと。
それだけが唯一わたしの強さだと暗示して歩きたい。


空の金魚鉢をどうしようっていうの。


母の声が優しく蘇った。

1年前 No.197

とと田 @totototo☆pZFOWxlGRjQ ★iPod=K6sJg30RJj


「ボクには前世の記憶なんてありません。そもそも前世なんて全く信じていませんでしたし。だからボクが貴方のお姉さんの生まれ変わりなんて聞いてもいまいちピンときませんし、正直痛い人だなあって思います。あ、貴方は人じゃなくて天使でしたね」
「…………うん」
「でも、ボクと貴方、双子みたいにそっくりですね」
「え?」
「……繰り返しになりますが、ボクは前世とか信じてません。けど、もし……もしですよ。貴方の言うことが本当で、ボクが貴方のお姉さんだったとしたら…………。お姉さん、貴方になりたかったのかも、しれませんね」

フィンの言葉には妙な説得力があった。僕になりたかった、なんて。姉はそんな馬鹿みたいなこと考えるような人間だっただろうか。だって、だって彼女は、天使に。

天使になりたいと。


<空は、あたしの天使>


喉奥がひゅう、と鳴くのが聞こえた。
僕はわんわん泣いた。人は死んでも涙が出るんだなあと、心のどこかで冷静に思った。フィンが背中を撫でてくれて、そしたらもっと悲しくなって、その悲しみが頬を伝った。後悔ばかりだ。僕だけが、後悔。姉にも悔やんでほしかった。うつくしく、おろかな姉。僕を果たして待ってはくれなかった。フィンが「ごめんなさい」と小さく言ったけれど、それが何に対しての謝罪なのか、もしくは謝罪ではないのか、あまり考えたくなかった。だって彼は彼であって、決して姉ではないからだ。



納得いってない文章だけどそろそろ更新しときて〜〜な〜〜と思ったので空とフィン

1年前 No.198

とと田 @totototo☆pZFOWxlGRjQ ★iPod=K6sJg30RJj

「おえっ」

アタシ、メリー。メリー・カーライル。13歳のダンピール。ダンピールって分かる? 吸血鬼と人間のハーフってワケ。あ、でも最近はハーフって言い方がなんかネガティブだとかなんとかで、ダブルって言う人が増えてきてるみたい。どっちだっていいわよそんなの。親は何年か前に戦争に巻き込まれて死んじゃったわ。ここら辺に居ついてる人にはよくあることだから、ちょっと寂しいけどまあそんな感じ。戦争ばっかやろうとするんだから、みんな暇なのね。それよりも今困ってるのはお金がないことかな。たまに気まぐれな貴族さんがアタシ達浮浪児にお恵みの食べものをくださるんだけど――生憎、アタシってば飲み物以外胃が受けつけなくって。今も何してるのかっていうと、貰った以上口にしないと、と思って何とか飲み込んだパンを吐いてるとこ。吐いてばっかいると歯がぼろぼろになるらしいからやめたいんだけど、体っていうこと聞いてくれないのね。アタシ、ダンピールなのに。人は優しさで死ねるって知ってた? 案外ポキッといっちゃうものなんだって。どんなに甘く柔く触れていても耐えられないときってあるから、例えばそんな瞬間を目で捕らえられたら、耳に焼きつけられたら、血よりもジャムよりもおいしそうだなって。そう思うからお願い。優しくしてよ、世界。

1年前 No.199

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暗夜がゆったりとした動作でカツラを外すと、そこにはいつもの金髪、だが明らかに短くなった髪の彼女の姿があった。忍は信じられないと言いたげに目を見開き、その後、何かを諦めたかのように瞼を伏せて泣きそうな顔をした。
目の前にいたのは、己と瓜二つの少女だった。
蜂蜜色の髪はばっさりと切られ、もう結べないほどの長さになっていた。昔より大人びた顔が、本当に自分とそっくりだった。

「パパ」

周りに決して聞こえない声で暗夜は歌うように呼んだ。

「ちょっと期待してた。他人なんじゃないかって。本当はパパ、違うんじゃないかって。でも違わなかった。私はちゃんとパパの子だったよ……こんなに似てしまったんだもの、言い訳できない。言い訳できないよ」

暗夜は穏やかにそう言い終わると、丁寧にカツラを被り直した。恐るおそる忍に触れようとして、怖気づいて、やめた。

「パパ……。結婚、おめでと。美人でお金もあって優しくて父親がお偉いさんの、あの女の人とくっついて、早く幸せになって。できるだけ早くもっと良い役職に付いて名声手に入れて勝ち組になってよ。私とかママとか今までのこととか、知らない間に忘れて、そのまま死んで。あの女の人と一緒に高そうな大きいお墓入って。ごめんね今まで。たくさん迷惑かけて、人生掻き回すようなことして。ずっと私のこと歪んだ人間だって思ってたでしょ、父親に執着する悲しい娘だって。違うよ?私もママも、ちゃんと普通にパパのこと好きだったから、でもやり方が分からなくて、そもそも普通に好きって何なのってところからの問題で……。全然歪なつもりなかった。父性に飢えてたんじゃない。愛情に飢えてたんじゃない。ただ貴方に恋してた。人間が人間に片想いしてた、それだけなんだよ。ずっと好きだった、パパ……ううん」

忍はもうやめてくれと言いたげに暗夜を見つめた。
優しく残酷なとどめだった。

「忍」

1年前 No.200

とと @totototo☆pZFOWxlGRjQ ★iPod=K6sJg30RJj


父の訃報の電話がかかってきたとき、わたしはマナちゃんとホテルのベッドで体を重ねていた。



「かなたちゃん。留守電、誰からのだった?」
「……大学の、友達」
「ふーん」

マナちゃんは「今時フツーの電話してくるなんて珍しいね」と興味なさげに呟くと、ベッドにうつ伏せて携帯を弄り始めた。可愛い子。何でも好きそうに見えて実は何にも好きじゃない、ピンクの、フリルの、ちょっぴり痛い女の子。小ぶりな尻がオレンジの照明に照らされていた。

「また指名するよ」

ぼんやりと空中に視線をやりながらそう言うと、マナちゃんは勢いよく起き上がってわたしに抱きついた。細い腕がわたしの首に回される。父に首を締められたときとは全く違う、か弱い力で。

「ほんとっ?二回目だと指名料かかるけど大丈夫?」
「それくらい払うよ」
「わーかなたちゃん大好きっ」




父が死んだ。街中でひったくりをして、逃げている途中に車に跳ねられたらしい。クソみたいにしょうもない理由で、あっけなく。
葬式の費用はやはりわたしが出さなければいけないのだろうか、なんてことを考えながら、わたしはマナちゃんと乱れたシーツを整えた。

1年前 No.201

とと @totototo☆pZFOWxlGRjQ ★iPod=K6sJg30RJj

ママがわたしの首に手をかけた。わたしはどうしようかなぁ、と考えて、もう張りのないママの胸を掬うように触った。

「大丈夫よアイちゃん。来世でもママ、アイちゃんのこと産んであげるからね」
「うん、うん……。わたしのことちゃんと産みなおしてね。そしたらまた今みたいに、お父さんに内緒で沢山しようねっ……?」

もう生きられない。この世界で子供でいられない。そんなの嫌。わたしはずっとママの子供でいるのだ。誰の母にもならない、妻にもならない。ママの中で生まれて中で死にたい。



ママは首締めがヘタクソ。息じゃなくて血を止めなきゃ楽に死ねないのに。次わたしを産むときは、もっと上達してると良いな。

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1年前 No.202

とと @totototo☆pZFOWxlGRjQ ★iPod=K6sJg30RJj


第3章 BANG!



 嘘は一度もつかなかった。本当のことだけ言ったし、言われた。




「兄は死にました。もう来ないでください」

 ぺこり、と。そんな音が付いてきそうな礼儀正しいお辞儀をしたミカちゃんは、乱暴な手つきで玄関の扉を閉めた。衝撃で吹いた風が俺の髪をほんの少し舞わせた。五時の鐘が鳴って、もう二度と開きそうにない扉を前に俺は呆然と立ち尽くすしかないのだった。






 少し前まで、コタロウとミカちゃんは加害者の子供と、俺は被害者の子供と呼ばれていた。それは変えられようもない事実で、俺の目の前で土下座した二人の母親を俺の父親が罵倒したときにそれを強烈に実感した。
 二人の家の前を通ると、必ず玄関の扉には蔑みの言葉が書かれた紙が何枚も何枚も貼られていた。死ね、出ていけ、町の恥、死んで詫びろ、ゴーカンマ、ゴーカンマ。
 二人が転校するのはそう遅くなかった。





「はじめまして。今日からこのクラスにお世話になります」

 コタロウの顔が静かに絶望に染まった。クラスの奴らはそれに全く気がついていないようで、俺だけが真実を知っていた。そうそう、そういうのが見たかったんだ。





 ミカちゃんは震えた手でブラウスのボタンを外していった。今すぐ殺してやる、というような形相でこちらを睨みつけながら、しかし恐怖で身体は制御が効かないようだった。率直に、可愛い、とおもった。

「私……私のこと犯したら、もう全部、許してくれるの?」

んなわけねーだろ、バカ

1年前 No.203

とと田 @totototo☆pZFOWxlGRjQ ★Android=4OhkCRUD6l

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※警告に同意して書きこまれました (性的な表現)
1年前 No.204

とと田 @totototo☆pZFOWxlGRjQ ★Android=4OhkCRUD6l

あたしが世界一不幸だって、言えたら良いのにな。


同じ血を持ってても、運命なんてのはこれっぽちも感じないんだよ。どこか漠然とした、つながり、みたいなもの。それだけに依って生きてく人間がここにはたくさんいる。あたしもそうするのが正しかったの? あのむかつく綺麗な顔で笑って答えてみせてよ。未練なんて呼ぶにはほんとにほんとに弱いし、しょうもないし、でも悲しみだけは心から滲みてきてるんだな。それがちゃんと、まだ分かる。分かる自分に、ほっとしてる。あたしの息は熱いよ。


死ぬとき、どれだけの痛みが体に射し込んでくるのだろう。心の話はもういいね。いっぱい考えたけど、分からなかったもんね。


もういっかい白い髪に触ってみたいなぁ。気が向いたら垂らしてみせて。顔は隠して。泣いてしまうかもしれない。甘すぎるものを食べると喉が焼けるみたいにひりつくでしょう。あたしはずっと痛いの。火が灯ってる。そろそろ死ななきゃいけないのかもしれない。あんたみたいにあんなに綺麗に死にたくない。




日向と刹那 いい双子の日なのだ

1年前 No.205

とと田 @totototo☆pZFOWxlGRjQ ★Android=4OhkCRUD6l

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9ヶ月前 No.206

とと田 @totototo☆pZFOWxlGRjQ ★Android=4OhkCRUD6l


「あなた、知ってます? 子どもはね、生まれてきてからまず、母親と恋をするんですよ。そのときだけは確かに二人だけの世界というものがあって……後でどんなに憎しみを抱こうとね、そのときだけは……。そういう営みがずっとずっと続いていって、螺旋状になったものを、歴史って言うんですよ」

おばさんの声は確かに心地よいものであったが、わたしはそのとき、ただただ山岡さんへの弁解の言葉を構築していることに必死であった。わたしが壊してしまった彼女の定規、プラスチックに浮かんでいた青い花柄模様、彼女の責めるような顔。頬骨に沿って浮き上がった汗に見とれて揺れる空気……。

8ヶ月前 No.207

とと田 @totototo☆pZFOWxlGRjQ ★Android=4OhkCRUD6l

「おっと。すまない、ぼうっとしていたようだ。よく見せろ、怪我は……ないな。良かった。ああ、もう4日寝てない。……子供の不眠自慢に聞こえるか? ははは、そんな必死に否定しなくたって良い。何も違っちゃいないさ。俺はずうっと、小さな子供のままだよ」
「」
『睡眠はいわば疑似死――ニアデスだ。どうしようもなく眠くて眠くて堪らないとき、ゆっくり意識を手放していく感覚はさぞかし心地よいだろう。俺はその快楽に溺れて抜け出せない。気持ちいいのが好きなんだ。……まるで猿みたいだなぁ』

名前:
性別:男
年齢:(十六〜十九 / 教師は二十五〜)

性格:(個性的であれば良し、詳しく改行無しの三行ほどでお願いします)

容姿:(個性的でも良し、過度の美化はおやめくださいませ。詳しく改行無しの三行ほどでお願いします)

服装:(個性的でも良し。自由です。改行無しで二行ほどでお願いします)

学年/クラス:(1〜3組まで / 教師は担当の学年クラス、または教科を)
委員会/部活:(生徒会役員の場合は下記記載をみてください)
異常性レベル:(測定基準を参考にどうぞ)
寮:(詳しくは寮設定を)

備考:(一人称等。依存症、トラウマについてもこちらに)

募集:(あれば)


いちほだよ

8ヶ月前 No.208

とと田 @totototo☆pZFOWxlGRjQ ★Android=4OhkCRUD6l

「ミーシャ」

うわ言のようにその名を紡ぎ続ける。ミーシャ、ミーシャ、ミーシャ。くすみのないブロンドの髪に陶器のような肌、薔薇色の頬! 甘い声で私を褒めて、諌めて、なじって、突き放した、私の可愛いおかあさん――。

「男とヤってるときにママの名前なんか呼んでんじゃねーよ」
「うっ、うう……やだ、ママ、ママぁ」
「は、マザコン女とか初めて見た。思ってたよりキモいもんだな」
「いた、いたい、もぉやだぁ」

6ヶ月前 No.209

とと田 @totototo☆pZFOWxlGRjQ ★Android=4OhkCRUD6l

「こ、この……この世で……」
一ノ関は浅い息を不規則に繰り返し、それはもう酷い顔で、心臓を患った病人が、発作の痛みから逃れようと喉をかきむしるみたいに、己の生っ白い首すじに爪を立てた。
美しいものなのに。
それが嫌なんだ。欲しくないって自覚できることは、救済であって地獄の終わりではないんだな。
「この世で一番やっちゃいけない罪ってのはね……」
二律背反だ。
「血が繋がってるひとを、好きになっちゃうことなんだから」
がくりと床に崩れ落ちる一ノ関。白い体。脆くて、そう……なんだかな。浜に重ねて象った砂みたいに、小さくはないのに、触れてはいけないと一目で分かる。
俺はずっと、今の今まで分からなかったけど。だって惨くて酷い人間が本当はこんなに柔らかいなんて。
砂の城を壊したいってのは、全員が思うものなのか?
俺は絶対に嫌だよ。
「一ノ関、顔が」
「ん……」
「顔が怖い」
「いつもあんまり、そういう馬鹿なこと言わないのに」
「だから……頑張って言ったんだよ」
「どうして?」
もたげた頭にしなう髪の流れが別れたところから、桃色の瞳がうっそりと、暁星のように浮かんでいた。桃って、実は白いのに、桃色なんだな。俺は小さい頃から妙に納得できていないけれど。だから林檎も赤い果物だとは思えなかった。
「お前、林檎って赤いと思うか?」
「林檎……うん」
「でも実はさ、赤くないだろ。あれ、何て言うんだろうな。クリーム色っていうか……」
「わたし皮も食べる」
「いや俺も食うよ……」

25日前 No.210
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