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みどりのくずかご

 ( 書き捨て!小説 )
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rain_ta ★lsMK8rU4Di_RyT


書いて書いて書いて消して
捨てて捨てて捨てて

捨てて

でも
やっぱりもう一度拾う
全部抱えてまた歩き出す



言葉にして言えたら楽なんだけど
難しくてできないから
態度で示そうと思ったんだ
本当はそっちのほうが難しかったわけだけど





8年前 No.0
メモ2016/12/27 04:45 : てれれーん★iPhone-pM2pmlze9g

気づけばもう五年も経っていてびっくり

長くお世話になりました

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てってれー ★iPhone=4LwQE3Lk3O

藤が死んだ。
連絡が取れなくなってまる一年たった昨日、ザコブの山奥でバラバラになった飛行艇が見つかったらしい。
朽ちかけた機体に特徴的な薔薇の模様が認められたから間違いないと、ニュースで記者が言っていた。
死体はあがらなかった。



「これ」

ジロウが差し出したものを、志麻はひどく不思議な気持ちでみつめた。
もとが青色だったのがかろうじてわかる木の破片に、薔薇の花が彫ってある。

2年前 No.980

てってれー ★iPhone=daEZ86NBS4


「ぼくはさ、あいつ、生きてると思うよ」

ジロウは、欠けた薔薇の花びらに目を落としたまま、言った。

「いつも運だけはよかったじゃん。オズーの大群に吹っ飛ばされたときもけろっとして帰ってきたし、猛吹雪で半分氷漬けになったときも自力で帰ってきたし。きっとどっかで生きてるよ。飛行艇が落ちたくらいで、死ぬようなやつじゃない」
「……」

ーーーーーー

「あそこは不思議なことが起こるってずっと昔から言われている場所なんだ。誰も見たことないような生き物が現れたり、通りがかった人間が消えてしまったり…、最近も謎の生き物の足跡が見つかったらしいぜ」

ソー太の言葉に、藤が身を乗り出した。

「足跡って、どんな形だ?もしかして、三角をくずしたような、いびつな形をしていなかったか?」
「さあ。おれは話聞いただけだから知らないけど」
「そうか。ますますおれのハートが熱くなってきたぜ」
「ええ、お前、マジで行くつもり?」

2年前 No.981

てってれー ★iPhone=daEZ86NBS4


行くな、と言いそうになる気持ちは、冷たく重い石のようにかたまって、腹の底に落ちた。
行くなよ、藤。

ーーーーーー

「時空の歪みによる、突然転移。信じられる?」
「君の家のうさぎに羽が生えて空を飛んだと言われた方が、まだ分かるんだが」
「歪みを起こしているのは、あそこ一帯に張り巡らされている強力な磁場だ。三角岩そのものが原因だと言ってもいい」

2年前 No.982

てってれー ★iPhone=daEZ86NBS4


「突然転移ねえ」

ソー太は鼻と口の間にはさんだえんぴつをもごもごと動かした。

「おまえんちのウサギに羽が生えて空飛んだって言われた方が、まだ信じられるんだけど」
「転移の原因はあそこ一帯に張り巡らされている強力な磁場だ。三角岩は知ってるでしょ」
「ああ、うん」
「あれは今でこそ三角岩って呼ばれているけど、昔はそうじゃなかった。」

2年前 No.983

てってれー ★iPhone=daEZ86NBS4


兄弟に戻る、じゃなくて、ずっとずっと兄弟だったじゃん。
今までどおりだろ。

まじめな顔して、とんちんかんなことを言うのがおかしくて、笑った。
笑って、のどのあたりがぎゅっとつまるような気がして、ちょっとだけむせた。

2年前 No.984

てってれー ★iPhone=daEZ86NBS4



珍しくテレビがついていた。
大きな画面いっぱいに映し出される、どこか影のある表情をした男。

「珍しいね。おまえがドラマを見てるなんて」

藤は静かに笑った。

「昔好きだった人に似てたんだ」

2年前 No.985

てってれー ★iPhone=daEZ86NBS4



珍しくテレビがついていた。
大きな画面いっぱいに映し出される男。
どこか影のある表情と、猫背気味の背。

「珍しいね。おまえが映画を見てるなんて」

藤が驚いた顔をして、ふりかえった。

「早いな。帰ってたのか」
「閉まってたんだよ。また行かなきゃなんない」
「そうか。あそこのマスターは腰が悪いんだ。週に二回は病院に通ってるそうだから、今日がその日だったのかもしれない」
「ふうん。ついてないなあ」

ため息をひとつついて、それからもう一度テレビに目をやった。
雨のシーンだった。
猫背の男はずぶぬれになってうつむいている。

「どんな話なの」
「うーん。なんとなく付けて見てるだけだから、よくわからない」
「なんじゃそら」

よくこんな盛り上がらなそうな話をずっと見てられるな、というと藤は静かに笑った。

「昔好きだった人に似てたんだ」

2年前 No.986

てってれー ★iPhone=daEZ86NBS4



古い映画のようだった。
大きな画面いっぱいに、猫背気味の男が映し出されている。
藤は、どこか影のある表情をしたその男をじっと見つめていた。

「なんていう映画?」
「……びっくりしたあ。帰ってたのか」

文字どおり小さく飛びあがって振り返った藤は、有だと分かるとほっと息をついた。

「閉まってたんだよ。また行かなきゃなんない」
「たしか、あそこのマスターは腰が悪いんだ。週に二回は病院に通ってるそうだから、今日がその日だったのかもしれない」
「ふうん。ついてないなあ」

ため息をひとつついて、それからもう一度テレビに目をやった。
雨のシーンだった。
猫背の男はずぶぬれになってうつむいている。

「どんな話なの」
「うーん。なんとなく見てるだけだから、よくわからない」
「なんじゃそら」

しばらく見ていたが、特にシーンは動かず、ただひたすら猫背の男は雨に打たれていた。

「変な映画」
「さっきからずっとこんなだぜ」
「マジ?よくそんな見続けられるなあ」

思わずそういうと、藤は少しだけ笑っていった。

「昔好きだった人に似てたんだ」

2年前 No.987

★iPhone=J97nGvJSbX

腕が痛い。目が開けられない。
もう無理だと思う瞬間はこれまで何度もあった。
ああ死んだと思って、でも死にそびれて、今まで生きてきた。
やっと、やっと、休めるのかな。

1年前 No.988

★iPhone=J97nGvJSbX


「あのさ。言ってなかったことがあるんだけど」
「うん?」
「おれ、……おれ、お前のことが、好きだ」
「え?」
「ずっとすきだった。どうしても一緒にいたかったんだ」
「……えっ、すきって。え……?」

ーーーーーー

よっくんと一緒にこの街に来た日のこと、今でも覚えている。
つめたい雨がふる夜のことだった。

ーーーーーー

「なんで、今言ったんだ」
「……わからない。いつか、言わなきゃって思ってたんだけど」

ーーーーーー

「おれ、ここ出るよ」
「えっ、なぜ」
「なぜって……、嫌だろ。こんなやつと一緒に暮らすなんて」
「そんなことない!なんで、そんなこと言わないでよ」
「はあ?」
「だって、だって一緒に暮らしたらいいじゃないか。今までどおりで」
「……お前、おれのことすきなの?」



1年前 No.989

★iPhone=J97nGvJSbX


「朔」
「うん」
「さみしいか」
「いや、全然」
「おれはさみしい」
「……うん」
(おれもさみしいよ)

ーーーーーー

ちょっとだけ泣かせたくて、ちょっとだけ困らせたくて、ちょっとだけ怒らせたくて、でも、ほんとうはずっと笑っていてほしかった。
笑ったかおを見ていたかった。

1年前 No.990

★iPhone=J97nGvJSbX


シスは、めずらしくぼうっとしているようだった。

ーーーーーー

「あのさあ。お前、ここから出て行ったほうがいいよ」
「……えっ」

シスはちょっとだけ笑った。

「おれ、お前のこと、嫌いじゃないから。きっといつか壊しちゃうもん」

気に入ったものほど壊したくなるんだ。
めちゃくちゃにするのが楽しくて、気持ちよくて、だからたぶんお前のことも壊してしまうよ。
小さな子がしゃべるように、ゆっくり、おだやかにシスはいった。

1年前 No.991

★iPhone=J97nGvJSbX


きっかけはなんだったか、もう覚えていない。
スウが宝くじで3億あてたか、親戚のつてでイツがようやく就職を決めたか、カオンがバイト先で知り合った子と同棲を始めたか・・・。
とにかく、何かがきっかけで、だれかが家を出ていった。
それまでも一緒にいるようで一緒にいないような日々を送っていたけど、さらに自由度があがって、みんなが好きなように過ごすようになった。(いつも好き勝手しているじゃないというマミーの声が聞こえたようだが、すこし横に置いておく。)

なんのあてもなかったけれど、さすらいの旅というものにあこがれて、ふらっと家を出た。
ちょっと旅してみて、困ったり立ち行かなくなったらふつうに家に戻るつもりだった。
しかし、なんだかんだで旅先のひとに助けられ、

1年前 No.992

★iPhone=J97nGvJSbX


「おれ、ここ出るよ」
「えっ、な、なんで」
「なんでって…嫌だろ。こんなやつと一緒に暮らすなんて」
「そんなことない!なんで、そんなこと言うんだ」
「はあ?」
「だって、だって一緒に暮らしたらいいじゃないか。今までどおりで」

あせってつかんだ手は、びっくりするくらい冷たかった。
どれくらい長い時間、ここにいたんだろう。
どうして、勝手にいなくなろうとするんだろう。
一つも分からないよ、真央。
このまま、行くなよ。

ぎゅっと手をつかむ隆を、真央は、ひどく不思議なものを見るような目で見つめた。
好きだと言ったけど、こいつのことを理解できたことはほとんどない。
それは今も。

「……お前、おれのことすきなの?」

1年前 No.993

★iPhone=J97nGvJSbX


「お前、おれのことすきなの?」
「えっ。いや、……ふつう」
「は?ぶっとばすぞ」
「痛いいたい!」

足をふんづけると、隆は悲鳴をあげてしゃがみこんだ。
涙目でみあげてくる。

「だってそうだろ。こんなに長いこと一緒にいるんだから、嫌いじゃないよ。まあ、好きな方だと思うよ。けど、たぶん、お前の言う好きとはちがうから」
「……」

そうだ。そのとおりだ。
わかってるじゃん。
お前の言うすきと、おれのいう好きはちがう。
だから、一緒にはいられない。

1年前 No.994

★iPhone=J97nGvJSbX


「吸う?」
「いや。やめた」

「たばこ吸うんだっけ」
「んーん。それ、ジロウくんの」

1年前 No.995

★iPhone=J97nGvJSbX


「肺が黒くなったらおわりだからね。野球選手は」
「意外ときちんとしてるのな」

そういえば昔からへんなところだけ真面目なやつだった。
やすっぽい灰皿をながめなら、あれでも、と声をかける。

「たばこって、吸ってるやつの近くにいるだけでもよくないんだろ」
「えっ、そうなの」
「うん。なんか、フクなんとかいうやつで、吸わなくても吸ってるのと同じになるらしいよ」
「エーーーッ。うそだあ」


「まあ、いっか。タバコ吸ってるジロウちゃん、かっこいいし」
「げっ、急に何言ってんの」
「」

1年前 No.996

★iPhone=J97nGvJSbX


たばこを吸うジロウを見るのが好きだ。
火をつけるときに伏し目がちになるところや、灰を落とすしぐさ、ときどき煙でわっかをつくって遊んでいるところ。
なんだか分からないけど、ずっと見ていたいと思う。

1年前 No.997

★iPhone=J97nGvJSbX


朔がいなくなった。
雪の降る日のことだった。昼前にふらっと出て行ったきり、帰ってこなかった。

もう20もとうに過ぎた大人の男だ。
家を出て行くことは、そんなにおかしなことではない。
母さんや父さんは心配したけど、もとからあいつはへんなやつだったし、そのうちひょっこり帰ってくるだろう、大人なんだから大丈夫だという兄たちのなぐさめもあって、取り乱すことなどはなかった。

1年前 No.998

★iPhone=J97nGvJSbX

くそマフィアが死んだ。
サボテンとへんてこな帽子、四六時中陽気な音楽が流れている、あいつが好きそうな国で、抗争に巻き込まれて死んだ。
「お前もはやめに姿をくらませろ。やつら、つながりのあるモンはみんな消しちまうつもりだ」と、親切なジジイに言われ、とりあえず店をたたんで、地下の隠し部屋に閉じこもった。
そこからぜんぜん頭が働かない。
考えることを脳みそが拒否している。
幸いこの部屋はあのくそが作った隠れ家なので、

1年前 No.999

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一人きりのさみしい夜は、あの日のことをおもいだすよ。
よく当たる占い屋があるといって、今度こそ本当だというから、おれはまたお前についていった。
そこは遠かった。
電車に乗って、トンネルをくぐって、海の側の街を抜けて、知らない街へ行った。
ようやく見つけた占い屋は、しかしニセモノだった。
「おい、どうすんだよ」
「す、すまん。さっきそこの亭主に聞いたら、実はここじゃなくてもう一つ次の街にあるらしいんだ」
そんなやりとりをして、おれたちは次の街に行った。
でもやっぱりそこも外れで、違う街に行って、外れで……。
金なんてないから、その日暮らしで、飛び込みのバイトをしたりしながら食いつないだ。
たまにふっと、何やってんだろと我に返るときもあった。
それを言わなかったのは、案外楽しかったから。

1年前 No.1000

★iPhone=J97nGvJSbX


よし言おう。
あの長い針が5のところに行ったら言おう。
いや、5は微妙かな。
なんだか斜めになっているし。6になったら言おう。

「時計がどうかしたの」
「ウアア!しゃべりかけんじゃねえ!」
「ヒエッ」

1年前 No.1001

★iPhone=J97nGvJSbX


ぜんぜんだめだ。フレーズが思い浮かばない。
ヨシトキはいらいらとして、頭をかきむしった。
その隣で、ユキがうとうとと眠っている。
「今日はやめにしたら」
「うん……」
この会話ももう何度目だろう。
ヨシトキは眉間にしわを寄せ、深いため息をつきながらも、決してやめようとはしなかった。
時計の針はすでに23時を回りかけている。
この分じゃ、まだまだ帰れそうにないなあ。
ジュンペーは、いくつか出ている歌詞を小さく口ずさんだ。
どれも悪くない。ヨシトキの考える詩は、本人に反してやわらかく、春の陽だまりのようにあたたかみがある。

1年前 No.1002

★iPhone=J97nGvJSbX


「おれらが出会ってもーすぐ一年だろ。なんか曲つくりたくねぇ?短いのでいいからさ。カゲキなやつ」
ユキがはしゃぎながら言ったのを、なんとなく覚えている。
ヨシトキは競馬中継を見るのに夢中で生返事だったし、ジュンペーはテスト勉強に集中していて半分くらい聞き流していた。

「短くてカゲキってむずいわ」

1年前 No.1003

★iPhone=J97nGvJSbX


兄弟なの?仲良しね。

ぼうっとしているミワの足を思い切り踏んづけると、ギャッと悲鳴をあげてとびあがった。
「な、なんでぇ?!」
「ボンヤリしてんじゃねえ。行くぞ」
吐き捨てるように言って、先を歩く。
ミワはもたもたと後ろからついてきた。
それすらいらいらして、チッと舌打ちがこぼれた。


べつに、名前をつけなくてもいいと思う。
兄弟とか友人とか恋人とか、そんな枠に押し込めることに

1年前 No.1004

★iPhone=J97nGvJSbX

たぶん来るだろう。来るはず、来るかな?
ネガティブが顔を出すのはもう昔からのことなのでしかたがない。
あんまり暗い気持ちになるまえに、とっとと布団をかついで階下に降りる。
やっとの思いで物干し竿に布団を干して、仕事おわり。あとはあいつが来るのを待つだけ。
布団は太陽の光をいっぱいにあびている

1年前 No.1005

★iPhone=J97nGvJSbX

はい。
ああ、おれだけど。
どうした。
いや、ちょっと。明日の打ち合わせの後、暇?
たぶん。


抜けたいんだけど。
サブはいつもの冷たくて読めない顔のまま言った。
どういう意味?
そのまま。このバンドを抜けたい。
なんで、お前、何かあったのか。

1年前 No.1006

★iPhone=J97nGvJSbX

アスターとデイジー

久々に再会を果たしたあと、近況を報告するのもそこそこに酒盛りが始まった。

わいわいとにぎやかな声が遠くから聞こえる。
酔っ払って歌うフジの声、取っ組み合いでもしているのだろうか、何か怒鳴っているスターチスとショウブの声。その一つ一つに耳をすませながら、ふと、胸のおくがじんわりあつくなるのを感じた。
帰ってきたのだ。この場所に。

すべてを失くして、ずっとひとりで生きてきた。
生きて、生きて、何のために生きているかわからなくなったとき、彼らに出会った。
(みんなが、生きる意味を教えてくれた。)

1年前 No.1007

★iPhone=J97nGvJSbX

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1年前 No.1008

@tiisai ★iPhone=J97nGvJSbX

なにげなくやった商店街の福引きで温泉旅行を当てた。
一泊二日の旅、2名様まで無料という文字をまじまじと見つめる。
さて、どうしようか。

選択肢はいくつかあった。
一つ目、父さんと母さんにプレゼントする。日頃の疲れを癒すのに、温泉旅行はうってつけだろう。二つ目、内緒で使う。ひとりじめするのはぜいたくだが、男のひとり旅というものを一度はしてみたい。三つ目、だれかを誘って一緒に行く。この場合、だれを誘うかが鍵になる。

1年前 No.1009

@tiisai ★iPhone=J97nGvJSbX


「愛してる」
「……」

ジロウはまばたきをして、それから小さく笑った。
そういうことを言うやつじゃなかったのに、すこし会わなかったうちに、ずいぶん歳をとってしまったらしかった。(そして、それを心地よく感じてしまうじぶんも。)

「いちいち言わなくていいよ」
「うん」

エイショウも笑っていた。

1年前 No.1010

@tiisai ★iPhone=J97nGvJSbX


「あのさ、おれたちって解散すんの?」
「は?」

「知らないけど。え、どういうこと」
「いや、おれもわかんないけど。マネージャーに、週刊誌に載ってたって言われたから。知らないうちになんかそんな話になったのかなって」
「おれも知らねえよ。えっ、リーダーは?」
「連絡してない。でも、嘘なんだろ」
「うん、たぶん」
「なんで不安そうなんだよ。自信もてよ」
「ああ、うん。すまん」

11ヶ月前 No.1011

@tiisai ★iPhone=J97nGvJSbX

表示された名前に、思わず目を見開いた。

「よっくん?」
「へっ?どうかされましたか?」
「あ、いや。ちょっと電話出ます」

部屋を出る間もなり続ける電話に、ふっといやなものがよぎった。
必要な連絡はすべてマネージャーを通してやり取りしている中で、直接連絡をし合うなんてことはこれまで一度もなかったのに。
浮かんだ予感を打ち消すように、力をこめて通話ボタンを押した。

「もしもし?」
「おそい!どんだけ待たせんねん!」

突然の怒鳴り声に思わず耳を離す。

11ヶ月前 No.1012

@tiisai ★iPhone=J97nGvJSbX


「ごめん。どうかした?」
「ああ、確認なんやけど、おれらって解散するんか?」
「は?」

意味がわからない。どこからそんな話が出てきたのか。
よっくんはいつもより早口に話し始めた。

「おれもびっくりしたんやけど。マネージャーが週刊誌に載ってたって言うから。なんか、お前が記者にもうすぐ独立して、バンドは解散するって言うたって」
「言ってないよ。それ、嘘だよ」
「そっか、嘘か。そうやんな」

11ヶ月前 No.1013

@tiisai ★iPhone=J97nGvJSbX


「おれもびっくりしたよ。事故にでもあったんじゃないかって」
「悪い。はよ確かめたかったんや」

「おまえ、ほんまに解散する気ないよな」
「ないよ」

「よっくんは?」
「おれも。……ごめん。たぶん、そんな意味わからん記事が出るんはおれのせいやろ」

「今どこにいんの?」
「アメリカ。もうすぐそっちに戻るつもり」
「じゃあそんときに一度会おうよ」
「おう」
「ユキも、さみしがってるよ」
「あいつ、ちょくちょく連絡くれんねん。変な写真とかばっかやけど」

11ヶ月前 No.1014

@tiisai ★iPhone=J97nGvJSbX


ヨシトキが帰って来ると聞いていちばん喜んでいたのはユキだった。
喜びすぎてなんと発熱までした。
見舞いに行くと、ユキは真っ赤な顔をしながらうんうんうなっていた。

「何やってんだよ」
「ちょっと、こうふんしすぎた」

興奮して熱を出すなんてまるで子どもみたいだ。
39度と表示された体温計を写真に撮ってヨシトキに送ると「日本はあいかわらず暑いのですか」というとんちんかんな返事がきた。

11ヶ月前 No.1015

★iPhone=AZ8Dc67zwn


となりでユキが寒いなぁとつぶやいた。
まるで小学生のように、鼻の頭と頬のあたりが赤くなっている。
手を握るとか、肩を抱くとか、お揃いのマフラーをするとか、そういう諸々のことは、このままでいる限りできなかった。
おれは別にいいんだけど、ユキは、ユキはそれでいいんだろうか。

9ヶ月前 No.1016

てん ★iPhone=4ZYHnoL9Os


1つ上の兄は何かとトラブルにまきこまれやすいやつだった。
なんにもないところでこける、悪さをしていないのにしかられる、車とぶつかる、怒鳴られる、押しつけられる。
幼いころからそんなことばっかりでよく泣いていたが、身体はだいぶがんじょうなほうだったようで、痛いことがあってもちょっとすればけろっとした顔をしていた。

8ヶ月前 No.1017

てん ★iPhone=4ZYHnoL9Os

小学生のとき、役者になりたいと言い出した。
「役者になって、ドラマに出るんだ。ラブストーリー、コメディ、サスペンス。いろんな世界の住人になってみたい」
そう語りながら、目をきらきらとかがやかせた。
卒業文集で、将来の夢という題の作文を書いたときだったと思う。
将来の夢なんて聞かれても何にもやりたいことがなかったし、書くのが苦痛でしかたなかった。

8ヶ月前 No.1018

★iPhone=AZ8Dc67zwn

嫌いだった。憎かった。
手を伸ばしても届かないくらい遠くて、まぶしくて、何にもみえなかった。
消えてほしいと何度思ったことだろう。

「嫌いや、お前のこと」
「うん」
「なんでお前がってずっと思っとった。お前さえおらんかったらって」
「うん。なんとなく、そんな気がしてた」

うつくしい夜空の色をした瞳に、困ったような、さみしそうな色が差し込んだ。
ああ、そういうところも。
(嫌で嫌でたまらなかったんや。)

7ヶ月前 No.1019

★iPhone=AZ8Dc67zwn

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7ヶ月前 No.1020

★iPhone=AZ8Dc67zwn


「つきあうことになったときのこと、覚えてるか」
「さあ、もう忘れた」

うそだ。今でも鮮明に覚えている。
大切な大切な思い出。一度死んだ恋心が息を吹き返した日。

「おれは覚えてるぞ。台風の前の日かなんかで、すごい天気の悪い日だったんだ。おれもお前も雨でびしょびしょだったな」

ここには透と尚しかいないのに、尚はまるで誰にも聞かせたくないかのようなささやき声になった。

「それで、お前がおれの腕をつかんでいったんだ。言わなくても分かれよ、好きだよって」
「言ったっけ」

頬が熱くなる。
なんでこいつはそんなことまで覚えているのだ。

「うん。うれしかった。びっくりして泣いちゃったけど、本当にうれしかった」

7ヶ月前 No.1021

★iPhone=AZ8Dc67zwn

となりに住んでいる人

ぼくはアパートの二階に住んでいる。
お金を貯めて、もう少しいいマンションに引っ越したいけど、なかなかそうはいかなくてもう三年目になる。
ぼくのとなりの部屋に、一人暮らしの男が住んでいる。
名前は内田さん。
歳はよくわからない。
たぶんそんなに変わらないと思う。
背が高いけど猫背で死んだ魚のような目をしている。
あと、アパートの近くの工場で働いている。

ーーーーー

ぼくは内田さんのひみつを知っている。

ーーーーー

「あそこの工場ってブラックって聞いたけど、ほんとう?」
「うん。7時出勤の21時帰宅。休憩なし」
「やばいじゃん。しんどくないの」
「一年目二年目はしんどかったけど、だんだん麻痺していった。あと、勤務はクソだけど、お金はまあまあいいんだよね」

ーーーーー

そこである人と出会ったんだ。
取引先のやつなんだけど、何度か会ううちによく話すようになったんだよ。
いってもおれは口下手だから、向こうがいつもしゃべってた。
そのうち、まあ、部屋に遊びに来るようになった。



7ヶ月前 No.1022

★iPhone=AZ8Dc67zwn


そっから急に来なくなった。
電話かけても出ない。
メッセージも未開封のまま。
工場にも来てない。
取引先のひとにそれとなく聞いたら、あいつはこないだ辞めたよと言われた。
3ヶ月くらいしたら、とうとう電話がつながらなくなった。

ーーーーー

おれも、馬鹿みたいだと思ってる。
でも、約束したんだ。
また来るって言われたから、

7ヶ月前 No.1023

★iPhone=4Z2HwRp4jS

新入りだ、面倒見てやってくれ。
半ば押し出されるように前に出てきたのは、痩せこけた小さなガキだった。
「部屋は適当に割り振っとけ。読み書きと計算は絶対にさせろ」
「いやちょっと待ってください。誰なんですか、この子は」
「店の裏で倒れてたのを拾った。名前はカズキ。歳は知らんらしい」
「そんな、なんで入れたんですか」
「気分」
じゃ任せたからと言って源蔵は部屋を出て行った。

2ヶ月前 No.1024

★iPhone=4Z2HwRp4jS

「言い忘れてたけど、もう1人いるんだ」
「は?」
「おんなじように店の裏に倒れてた。ただけっこうな怪我をしてたからシュッツんとこに連れてったんだわ。治ったらお前の部屋にとりあえず入れるから、そいつの面倒も見てやってくれ。」
「無茶言わないでください、ここは保育所じゃあない」
「そ、保育所じゃない。いずれお掃除の方」

2ヶ月前 No.1025

★iPhone=4Z2HwRp4jS


「いずれお掃除の方に回ってもらう。テメェの指導次第だ。頼んだぞ」

今度こそボスは部屋を出て行った。
残ったのは、こちらをうかがうようにして立っているガキ。

「ふざけんなよクソ…」

ーーーーーー

「呼びましたかぁ」
「新入りだ。名前はカズキ。歳はわからん。今日からお前の付き人をする。だいたいのことを教えてやれ。いいな」
「はあ、新入り?」
「読み書きできるようにしとけ。あと、機器の使い方も少しずつでいいから教えろ。半年経ってできてなかったら山に埋める」
「そんな殺生な!」

1ヶ月前 No.1026

★iPhone=aZVTWfY0wf

「オメーも面倒なところに拾われたもんだな。あとふたつ向こうの路地だったら、運が良ければパン屋のオヤジに見つけてもらってたかもしんねえのによ」
「あのパン屋、こないだつぶれたらしいよ。夜逃げしたらしい」

28日前 No.1027

★iPhone=4Z2HwRp4jS

ここ意味わからんと言って投げ出されたワークをちらと横目で見る。
円の中にあるさらに小さな円の面積を求める問題だった。
公式を使えば簡単に解ける。
「なあ、これどうやって解くん?」
「ヒント書いてあるやん。まず半径を求めろよ」
「なに、半径って」
「お前さすがにそれはやばいって」
リュウトと顔を見合わせる。
お互い同時に吹き出した。
「お前変顔すんなや」
「いやもともとこういう顔やから。てかさあ半径とか円とか習った?習ってんくない?」
「習ったって」
「ほんま?なんでおれ知らんのやろ」
「お前アホやからな」

21日前 No.1028

★iPhone=4Z2HwRp4jS

「なんか、おまえんちのおかあさんが、おれんち来たらしいで」
「は?」
リュウトは、ワークを見つめたまま言った。
「おれらいっつも一緒に遊んどるやん。で、遊びすぎやって。あんまり一緒やと、アキトの勉強の邪魔んなるから、困るらしい」
「……え、マジで」
「うん。まあおれもおかんに話聞いただけやで、あんまよう分かってへんけど」

21日前 No.1029
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