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また二人で…

 ( プロ小説投稿城 )
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トイプー好き @kanatyan ★Tablet=D5RwH5DCuv

ねえ、美南…覚えてる?
あのとき、見た桜を

雲ひとつない綺麗な青空を背にして
大きく広げた枝に
いっぱい咲いた
透き通るような桃色の花びら

大きな桜の木から
舞い降りてくる
花びらの中にいる美南は
天使みたいに綺麗で………

お願い……
あのとき見せてくれた笑顔を、
あと一回でいいから
一瞬だけでもいいから

私をおいていかないで
もっと一緒にいてよ……
死なないで……
約束したでしょ
あのとき、あの桜の下で





「また来年も見に来ようね、この桜」

1年前 No.0
切替: メイン記事(5) サブ記事 (1) ページ: 1


 
 

トイプー好き @kanatyan ★Tablet=D5RwH5DCuv

「莉奈ちゃん、今日もお見舞い行くの?」

「はい」

「大変ね。いくらお友達といっても、
学校帰ってすぐ行くなんてしなくてもいいんじゃない?」

「大丈夫です。私にできることは
顔出して励ますことぐらいしかないんで」

莉奈は、ここ最近元気がなかった。
昔から元気ではつらつとしていると評判だったため、
心配した近所の住人からこうして
声をかけられることが度々あった。
ひとつの親切心からではあるが、
莉奈にとってはいい迷惑でもある。

(美南がどれだけ苦しんでるか、私がどれだけ悩んでるか
知らないくせに、何で全部知った口きくの?!)

他人から何か言われるほど、苛立ちを覚えるのだ。
やり場のない不安や恐怖を
誰かに擦り付けたいだけなのかもしれない。
なにより、自分自身の無力さに一番腹が立つ。
逃げるように走り出した莉奈は、
近くのコンビニへ駆け込んだ。

(あーもう、ムシャクシャする!)

何も考えず、目に入った商品を片っ端から
買い物カゴへ投げるように放り込んでいく。
あっという間に山盛りになったそれを
全てレジに出して買い尽くしてしまった。
おかげで財布がとても軽い。
だが、まだバスに乗る分は残っている。
大きく膨らんだ袋を両手に掲げた莉奈は、
バスを利用して美南の元へ向かった。




1年前 No.1

トイプー好き @kanatyan ★Tablet=D5RwH5DCuv

『金萎縮性側索硬化症』
という病気を知っている者は
この世の中、どれだけいるだろう。
『ALS』と呼ばれることが多い。
莉奈の友人である美南はこの病に侵されていた。
原因不明どころか、これといった治療法もない。
異変を感じて病院で検査を受けた美南から
電話で結果を聞いた莉奈は
血の気が引き、恐怖と絶望で
頭がどうにかなりそうだった。
最初は、走り辛い・手足の違和感がある程度だったため、
まさか病気だとは美南本人も、その初期症状について
相談されていた莉奈も思いもしなかった。
二人ともまだ高校生だ。
そんな重荷を背負うのは相当辛いはずだ。
しかし、現実から目を背けようとは決してしない。
お互いの未来の為に、約束の為に頑張らなければ
いけないという思いがあるからこそだった。

病室の入り口前で、莉奈は泣きたくなる衝動を
必死で押し殺そうと深呼吸を何度も繰り返す。
気づいたら、部屋を区切るものがなくなっている。
落ち着くより先に、扉が開いてしまったのだ。

「あ、莉奈……。来てくれたんだね」

「…………あっ、うん! ねえ、コンビニで
色々買ってきたよ。遠慮しないで全部もらって!」

「ありがとう。すごい、袋がはち切れそう」

1年前 No.2

トイプー好き @kanatyan ★Tablet=D5RwH5DCuv

美南は、既に
歩けなくなってしまったため車椅子で
移動をこなしていた。
上半身は動くため手動のものだ。
しかし、近づいてくる美南を目にして
莉奈は症状が進行していると判断せざるおえなかった。
左腕が辛うじて動くしかできないのだ。
それでも匠に乗りこなしている。

「もうほんと、無我夢中って感じだったから。
何買ったか全然覚えてないよ」

「……私がこんなだから、莉奈を苦しめてるの?」

「…………余計な心配しちゃだめだよ。
美南は病気を治すことが、一番の目標でしょ。
だから私も友達として協力してるんだから」

病室に入り、ベットに設置されたテーブルの上に
大きな袋を置くと、後から入ってくる美南を見守った。

「ごめん。なんか、私より莉奈のほうが強いね。
私だったら、もしこの病気になったのが莉奈で
応援する立場だったら、そんなに明るくできない」

「これ、美南が好きなチョコじゃない?!
あっ、漫画もある! ほら、早くこっち来て」

ベットの前まで来た美南を、ベットに上がらせると
袋のひとつを躊躇いなく逆さにした。
当然、中身が思いっきり散乱する。
しばらくその光景を呆然と見ていた美南は、
何かが弾けたように笑いだした。

「え、え? なに、どうした?」

「やっぱり楽しい。莉奈といると」

美南の笑顔は、桜の木の下で見たときと
同じぐらい優しく眩しい。
つられて莉奈も笑顔になる。
莉奈は山からひとつお菓子の箱を選らんで開けると
美南の口へ一粒入れる。

「あ、イチゴ味だ。おいしー、他はどんな味ある?」

「抹茶とかオレンジとか。………えっ?! れ、レバー味?」

「チョコにレバーって、合うの?」

「さあ、どうだろ。食べてみる?」

二人が仲良さげにはしゃいでいるのを、
病室の外で聞いている者がいる。
険しくも、楽しそうな声に安堵しているような
複雑な表情を浮かべている。
三十代半ばと思える男性で、白衣を着ている
ことから医師であることが見てとれる。



1年前 No.3

トイプー好き @kanatyan ★Tablet=D5RwH5DCuv

だいぶ時間が経ち、莉奈は時計を確認すると
名残惜しそうに立ち上がる。

「じゃあ、そろそろ帰るね。何かほしいものある?
金欠気味だから高いものは無理だけど」

「今日こんなにくれたから、もういいよ。
ありがとね、りなな」

「あっ、そのあだ名、久しぶりだね。
小学生のとき以来だっけ。」

「うん、懐かしいね。私のことはみっちゃんだったよね」

「そうそう。……あ、話してちゃダメだったんだ。
今日、これからピアノのレッスンだから」

莉奈は、美南に手をひと振りすると
危機迫る勢いで、病室から飛び出した。

「うわっ! ……びっくりした。どうした、莉奈」

「要お兄ちゃん!」

病室の外で盗み聞きしていた男性が
驚いて思わず声を上げた。
だが、怪しい者ではない。
美南の主治医である、新井田 要医師だ。
そして、血の繋がりはないが莉奈の兄でもあるのだ。
莉奈の頭を軽く叩くと静かに微笑んだ。

「病院内ではお静かに」

「! ごめんね、要お兄ちゃんっ! じゃあね」



1年前 No.4

トイプー好き @kanatyan ★Tablet=D5RwH5DCuv

新井田は、注意を受けたにも関わらず、
風のようにまた走り出した妹に苦笑してから、
美南の病室へ入っていった。
こちらへ気づいた美南に優しげに微笑む。

「美南ちゃん、莉奈がいると元気だね」

「はい。あの子にはいつも元気をもらいます。
太陽みたいに明るくて、見てるだけで心が温かくなって……。
私の、自慢の友達なんですよ。さすが、要医師の妹です!」

「嬉しいね。そう言ってくれると。血の繋がりはないけど、
真の妹として接することができる。この年では容易ではない。
それが自然にできるってことは、美南ちゃんの言う通り、
莉奈には温かい、光のパワーがあるんだろうね」

「………はい」

美南は、柔らかい表情で静かに肯定した。
十人中十人が見とれるような魅力的な雰囲気を、
醸し出している。莉奈が明るく眩しい太陽なら、
美南は優しい穏やかな木漏れ日だ。

1年前 No.5
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