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泣くな、セリヌンティウス

 ( プロ小説投稿城 )
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nancyu☆spidIVaZLEVg ★vq25BV5v5E_vyj


セリヌンティウスは呆れた。
「なんで俺が?」
俺には理解できなかった。
何かの間違いじゃないのか?よりにもよって、俺だなんて…。
王の衛兵に連行されながら、俺は不満でいっぱいだった。

城の広場に着いた時、メロスと目が合った。
その目は真剣だったが
その正義ぶった、品行方正そうな顔立ちが鼻についた。
王が俺に聞く。
「お前はメロスの親友だというが、間違いないか?」
「は……ぃ」
「声が小さい」
「メロスがそう言うなら…」
「よし。お前は3日後に死んでも構わないのだな」
「そ、そんな!」
俺が知らないうちにそんな約束ができていたんだ。
汚いぞ、メロス。

俺はメロスとのこれまでの付き合いを思い返してみた。
出会いはちょっとしたことがきっかけだった。
ある日、街なかで、メロスの靴ヒモが切れたのを、
通りがかりの俺が、たまたま持っていた余分のヒモで直してやったのだ。
ほんの出来心だった。
なのに、メロスはなぜか大感激。
見ず知らずの人に親切にされたのは初めてだという。
…年は俺と同じようだが、こいつ友だち、少ないな…
「なんでもないって、こんなこと」
「でも、ありがとう。これ、取っておいてくれ」
そう言って、リンゴを俺に差し出した。
「いいリンゴだね」
「そう、お礼と友情の証し」
「友情?」
「そ、友情」
友達にされちまった。
ま、いいか。
そんなことがあったのはつい先月のことだ。
そんな俺がメロスの「親友」ということで、いまこんな窮地に置かれてしまった。
情けは人の為ならず。
あれっ、その真逆が俺に降りかかってきやがった。

メロスは解放され、一目散に城門を駆け出していった。
メロスの表情は見えなかったが、ペロッと舌でも出していたに違いない。
すぐにメロスの姿は人ごみにまぎれて見えなくなった。
俺は地下の石牢に連行された。

「あ〜あ、俺って、なんてお人好しなのだろう」
俺は後悔した。
王に、お前はメロスの親友か?と聞かれた時、
いいえ親友なんかじゃありません。
ただの通りすがりが、たまたま出会って…と言うべきだったのだ。
そう言ったら…メロスは殺されていただろう。
それも、どこか合点がいかない。
だって、俺のせいで殺されたみたいじゃないか。
それはさすがに耐えられない。
でも、そのせいで俺は石牢。
おまけに3日後には俺は殺される。
俺は死んで、メロスが助かる!?
そんな訳わかんねえってことってあるかよ!
俺は石牢の壁におもいきり頭を打ち付けた。
目から火花がでて、涙がこぼれてきた。
「ほれ、飯だ」
牢番が夕食を鉄扉の隙間から差し入れてきたが、
とても食う気にならない。

2日目の夜が明けた。
牢番の話では街中の人が、メロスの機転をほめ、
俺の馬鹿さ加減をあざ笑っているらしい。
俺はますますメロスを呪った。
友情というやつを呪った。
友情というものさえなければ、俺はこんなところにいずに済んだ。
友情ってなんだ?
その友情のせいで俺は死にかかっている。
くそ、いまいましい。
メロスはいま故郷でよろしくやっているにちがいない。
妹の結婚?
それもデタラメだろう。
故郷で、のほほんと何ごともなかったように暮らしているに決まっている。
メロスのせいで、いや、友情とかのせいで俺はもうボロボロだ。

3日目の朝がきた。
朝から外が騒がしい。
「何かあったのか?」
牢番に俺はたずねた。
「お前の処刑の準備さ。観客席もつくるっていうので大忙しさ」
俺は絶句した。
今日の夕陽が沈むと同時に、俺は処刑されるのだ。
メロスは助かり、俺は死ぬ。
死ぬ理由は、
「友情を信じたから」
ああ、もう…、俺は深い絶望の中に落ち込んだ。

「セリヌンティウス、出ろ」
牢番が俺を引き立てて広場に向かう。
午後の広場は残忍にまで明るい陽射しがそそいでいた。
広場に出ると、観客から激しいののしりが飛んできた。
「お前のような馬鹿は死ね」
確かに俺は馬鹿だよな。友情のために死ぬなんて。

夕陽が水平線近くなり、俺は死を覚悟した。
と、遠くからなにか騒がしい声が届く。
何だ、と思っていると、メロスが広場に駆け込んできた。
お前、なんで帰ってきたんだよ。
お前殺されるんだよ。俺の代わりに。
馬鹿だなあ。友情のために死ぬなんて。
あれ?
これ俺自身に投げかけていた呪いの言葉だったはず。
あれ?
これどういうことだ?
友情を信じるのが馬鹿なのか、馬鹿だから友情を信じるのか。
俺は死を覚悟した。
メロスも死を覚悟している。
互いが死をかけて結びあうもの。
ひょっとして、これが親友というもの?

メロスが俺に駆け寄り、言った。
「すまん、セリヌンティウス。僕は一度だけ君を裏切りそうになった」
正直なやつだ。
「すまん、メロス。俺はずっとお前を呪っていた」
俺も正直に言った。
それから王が涙ながらに何かわめきちらして、
なぜか、ふたりとも解放されることになった。

ひとりの女がメロスに近づき、
からだに布をかけた。ほとんど裸同然だったから。
メロスのやつ、顔を赤らめてやがんの。
ところで俺に食べ物を持ってくる女、いないの?
俺3日間、何も食べてないんですけど。
(完)

2年前 No.0
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