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鬼の宝

 ( 初心者のための小説投稿城 )
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御鴇 ★iPad=ZxB1LQckD4

注意:特に面白くないです。小説の書き方をよく知りません。誤字脱字も多いです。不定期投稿です。

それでもよければ、どうぞ見ていってください。

切替: メイン記事(11) サブ記事 (6) ページ: 1


 
 

御鴇 ★iPad=ZxB1LQckD4

白尾 威風(しらお いふう)は双子の弟である、白尾 風威(しらお ふうい)と2人で蓮咲(れんざき)村という小規模な村に住んでいる。
蓮咲村では、12〜15歳までの双子が10年に一度、別の村に連れて行かれる。今年がその年。14歳で双子の威風と風威も別の村に行くことになっている。

6ヶ月前 No.1

御鴇 ★iPad=ZxB1LQckD4

「姉さん」

家の庭で遊んでいた風威が、家の中にいる威風を呼ぶ。

「なあに?」

窓から風威を覗いて様子を伺う。威風から見えたのは風威の背中。しゃがみ込んでいる。

「前に植えた花、枯れてる。」

少し前に、名も知らない黄色の花を2人で植えた。「綺麗だったから」といって風威が根っこごと持って帰って来たのだ。

「風威が水あげなかったからじゃないの?」

「違うよ。水はちゃんとあげてた。それに僕が水やり忘れた時は姉さんがあげていたじゃないか。」

「そうだったかな?じゃあ、水のあげすぎ?」

「違うよ。この花は僕たちが居なくなることを知って枯れて逝ったんだよ。」

「夢見るのもいいけど、風威も支度しな。今日は大晦日。私たちがこの村を出て行く日だよ。」

6ヶ月前 No.2

御鴇 ★iPad=ZxB1LQckD4

2人の家に生活感はない。村長には「凄く必要な物だけ持って行きなさい」と言われていた。2人に必要な物は互いのみ。家にあった家具やら日常品やらは全て捨てた。

「寒いよ、姉さん。」

風威の声は震えていた。時刻は夕方。辺りは真っ暗で冷たい風がびゅうびゅう吹きつける。

「本当。寒いね…」

威風も同等、声が震えている。2人は互いの冷たい手を繋いだ。決して暖かくはない。それでも、優しさは伝わってくる。

「紅葉(べには)君達は家を焼くんだって。僕らはこのままで良いの?」

北里 紅葉(きたざと べには)は、白尾姉弟と一緒に別の村へ行く15歳の双子の1人だ。

「私たちはこの家を焼く必要はないわ。この家は私たちの家ではないから。」

「それもそうだね。」

白尾姉弟の両親は2人がまだ嬰児(みどりこ)の時に何処かへ消えてしまった。なので、2人は村長の持ち物である森の中の家で生活していた。

6ヶ月前 No.3

御鴇 ★iPad=ZxB1LQckD4

村長の家に着くと、家の中から泣き声が聞こえてきた。家の外まで聞こえるその声は2つだった。
ドンドンとドアを叩く。すると村長が困り果てた顔で出迎えた。家の中では、村長の娘が少女を抱き締め、声をあげて嘆いていた。村長の孫、雨神 波雷(あまがみ はこ)と池雫(ちだ)も別の村に行くのだ。

「村長、なんで僕らは別の村に行かなくちゃいけないの?」

風威は泣く母親と地雫をただじっと見つめた。威風は俯いて、顔を上げない。

「前にも言っただろう。お前達の為だ。」

「そんなの嘘だ。両親と離れて俺たちは喜ばない。」

ギィと音を立てて紅葉と弟の双花(そうか)が入ってきた。
北里兄弟の両親は亡くなった。夫婦で心中したのだ。2人が生まれた三年後に。

「これで揃ったか。これは《お前達の為》であって、《お前達が喜ぶ為》のものではない。そして、お前さんら双子はこの運命に逆らえない。我らがどんなに愛され、愛していようが関係はない。腹を痛めて産んだ愛しい我が子も、血の繋がりはないが本物の家族以上だった子らも、な。」

村長は自分の娘に言い聞かせるようにして娘をなだめた。北里兄弟も雨神兄妹も、諦めかけていた白尾姉弟までも、村長に対して敵対心が芽生えた。村長の娘は壊れてしまったかのように、ただ頷き続けている。

6ヶ月前 No.4

御鴇 ★iPad=ZxB1LQckD4

「さあ、行くぞ。」

村長だけが持つ1つの提灯が、6人を照らす。みんな不満そうな顔をして村を出た。10分程だらだらと歩いていたら村長が足を止めて振り向く。

「…これから話すことを良く聴いておきなさい。」

呟くかのような声量で言うと、再び歩き出した。

「蓮咲村は、異能者の為の村。異能を持つ者だけが集う村だ。異能者と異能者の間には異能者が生まれる。つまり、全員が異能者と言うこと。ただし、物事には例外がある。異能を持たない子供が生まれてきた。双子の子供がな。どうやら、双子は異能を持っていないらしい。偶に生まれるのならば良かった。が、異能者と異能者の間に生まれる子供は双子が多かったのだ。我らの村は異能者以外を受け付けない。だから、お前さんらは村を出ることになったのだ。」

みんなは理解した。理解してしまった。自分達が存在してはならない者だったと言うことを。
池雫は再び泣き出した。その場にいた双子達の耳に、その声が警報の如く纏わりつく。威風が風威の手を強く握りしめて俯いている。風威が顔を覗き込むと、今にも泣きそうな顔をしていた。しゃくり上げそうなのを必死で我慢し、呼吸が荒く、不規則になってくる。

「ごめん。ごめんね、風威。私、知ってたの。村を出なきゃいけない理由も、…これからどこに連れて行かれるかも。」

風威は困った表情で威風に肩をぴったりくっ付けた。

「謝らなくていいよ。怒ってないし、不満もない。僕は姉さんが良ければそれで良いから。」

6ヶ月前 No.5

御鴇 ★iPad=ZxB1LQckD4

呼吸を整えて、みんなについて行く。

「今から向かう村は《縁(えにし)村》。鬼の住む村だ。」

「待ってよ、お祖父ちゃん!なんでわざわざ鬼のいる村に行かなくちゃいけないの!?お祖父ちゃん達が何考えてるか分かんないよ!!」

池雫が劈く様な声で叫ぶ。全員が足を止め、村長も振り向く。村長は池雫を睨む様に見つめたが、無言で前に向き直して歩き出そうとした。

「なんで何も言わないんだよ村長!!」

紅葉が村長の元までズンズン進み、物凄い剣幕で胸ぐらを掴む。

「それは言え「それは私達が生け贄だから」

村長が「それは言えない」と言うのを威風が遮った。全員の視線が威風に集まる。

「蓮咲村は縁村と《生け贄を捧げる替わりに物資を送る》っていう約束をしていて、10年に一度要らない子供、異能者じゃない私たちを捧げるの。」

「威風!?何故お前さんが知っている!!」

「どういうこと威風ちゃん!?生け贄って…私たちどうなるの!?」

池雫が威風に抱きつく様にして縋り付いてきた。

「ごめん。私も良くは知らないの。でも、私達はどうしたって縁村に行くし、入ったら出れない。そうさせるのが村長の異能力。」

6ヶ月前 No.6

御鴇 ★iPad=egXVDyOJIa

「私達、逃げられないんだよ。」

威風が目を閉じて、はっきり伝える。静寂が訪れる中、風威はこれからも威風に寄り添うことだけを考えていた。威風と風威は《普通の双子ではない》から少し特殊な人生を9年間過ごしてきた。だから、この程度の不幸はなんともない。

「村の為と思って、我慢してくれ。」

その一言にカチンときた紅葉は村長の胸ぐらを再び掴んだまま殴り掛かろうとする。と、双花が呟くように「やめなよ」となだめた。

「どうせ逃げられないのだ。」

村長が紅葉の手を振り払って歩き出す。どうする事も出来ない双子達は不満と不安を抱えてついて行く。

「ここが縁村。鬼の住む村だ。」

そこは、蓮咲村とあまり変わらない普通の村だった。





第1話「双子の運命」 END

6ヶ月前 No.7

御鴇 ★iPad=egXVDyOJIa

第2話

村に入り、一番最初に連れてこられたのは縁村村長、花村 幸玉(はなむら こうぎょく)の家。幸玉は穏やかな表情で蓮咲村村長と双子達を家に迎え入れた。

「花村、今回の双子達だ。」

「今回は3組か。少ないなぁ。」

「次回が多い。6組だ。」

「それは多いね。10年後が楽しみだよ。で、今回の双子は………」

幸玉は6人を品定めするかの如くじぃっと見る。白尾姉弟以外の4人は目を合わせないように俯いていた。白尾姉弟は目を合わせてはいないが、逸らそうとしているわけでもなかった。

「…そこの兄弟、仲が悪いのかい?」

最初に目を付けたのは北里兄弟。

「そうだな…喧嘩は見たことないが、仲良くしているところも見たことない。」

「生け贄に向いているな…。そっちの兄妹と姉弟は仲が良さそうだが?」

「あぁ、両方共仲が良い。…そろそろ年が明けてしまう。帰らせて貰うよ。~~~~~~~」

村長がぶつぶつと何かを呟くと6人の左足首に足枷が現れた。
幸玉に一礼して村長は帰って行く。今にも倒れそうな池雫を波雷が支える。

「…生け贄は嘘だから安心してほしいな。」

5ヶ月前 No.8

御鴇 ★iPad=egXVDyOJIa

村長の姿が見えなくなると、幸玉が波雷の肩をポンと叩いた。

「それってどういう…」

「縁村は《存在を認められなかった人々の為の村》なんだよ。君たちみたいなね。蓮咲村以外からも来るけど、来る人は滅多に居ない。だから、蓮咲村の人は2人しかいないけどね。」

「良かったぁ…良かったぁ…」

池雫が安堵のあまり、地面にへたり込んだ。波雷も頬を緩めて池雫の頭を撫でる。
紅葉と威風もホッとして微笑む。

「ちょっと待って、おかしい。」

喜ぶ4人に水を差したのは双花。

「10年前に出て行った双子は4組だったはず。なのになんで2人しかいないの?」

「理由は簡単。縁村の村民は他所者が好ましくなくてね、もう一人の村長が気に入った人しか入れないようにしているんだ。それ以外の人は出て行ってもらっている。」

「それも変。村長にかけられたコレがある。」

風威は足枷を指差す。

「あぁ、それね。それ、死ねば消えるから。」

そこに居た誰もが寒気を感じた。もう一人の村長に気に入られなかった人は殺されるのだ。

「さ、今日はもう寝ると良いよ。明日、もう一人の村長凸守 白刻(でこもり はっこく)のところに連れて行くから。」

3組共家に案内されて、《寝るように言われた》。

「風威、まだ私と一緒に居てね。」

「うん。あと少しだもんね。」

「愛してるよ、風威。」

「僕もだよ、姉さん。」

5ヶ月前 No.9

御鴇 ★iPad=egXVDyOJIa

次の日の朝、日の出と同じ時間に幸玉が白尾姉弟の使っていた家を訪問して来た。
話を聞くともう一人の村長の所に連れて行くので支度をしろとの事だった。その後、幸玉は他の双子達にはもう伝えてあると言葉を残して何処かへ消えて行った。

「早く行こう」

風威が威風に手を差し出す。威風は泣きそうな顔をしていたが、風威の手をしっかり握った。
家の外に出るとすぐ隣の家、北里兄弟の使っている家の前に本人達が立っているのが見えた。雨神兄妹の使う家とは距離があって良くは見えない。

「威風、風威おはよう」

「おはよう」

「おはよう」

紅葉は白尾姉弟に気付いて声を掛けてくれて、2人の方へ来てくれた。双花も紅葉の後ろからついて来た。

「双花君もおはよう」

「おはよう」

「…おはよう」

双花は少し抵抗していたが、ボソッと挨拶は返してくれた。いつもは会釈だけなので、白尾姉弟は嬉しかった。
少し経つと遠くから雨神兄妹を連れて幸玉が来ていた。

「じゃあ、行こうか。」

威風は雨神兄妹を見た。池雫は波雷の腕にギュッとくっついていて離れる気配はない。おまけに2人共目の下にクマが出来ていて、寝不足なのが良く分かった。北里兄弟を良く見ると紅葉にも薄っすらクマがあった。双花は俯いていて見えなかった。

(皆寝てないのかな。私と風威は眠れたけど…)

幸玉が連れて来たのは人気もなく、畑なんかも殆どない場所。そこには一軒だけ家が建っていた。
家の中には家具が全くなくて、生活感がない。

「この人がもう一人の村長…というか鬼人達の長、凸守 白刻(でこもり はっこく)」

幸玉が紹介したのは長い白髪に赤色の隻眼。右の目は空っぽで闇のようだった。気怠そうな態度で双子達を見ようとしない。

「…お前らはこれから村民の家に行ってもらう。そこで今日1日その人を手伝え。夜、その村民に話を聞き、お前らに少しの質問をして決める。花村、兄弟を朱増(あかまし)、姉弟を草間(くささま)、兄妹を小林(こばやし)の所へ連れて行け」

「こっちへおいで。案内するよ。」

白刻は最後、睨むようにしてちらっと双子達を見たが、興味はなかったらしい。すぐに視線を逸らした。幸玉が双子達を外に連れて行く。
朱増宅、小林宅と連れて行き、残るは白尾姉弟だけになった。

「草間のじいさんは頑固で有名でね。朱増の所の息子よりかは接しやすいけど、大変だと思うよ。それに比べて小林さんの所に行った子達、楽だろうね。あの人は人が良い。ま、健闘を祈るよ。」


第2話「鬼人の長」END

5ヶ月前 No.10

御鴇 ★iPad=egXVDyOJIa

第3話


トントン
戸を叩いて声を掛ける。

「じいさん、花村です。例の双子を連れて来ました。」

「ちょっと待ってなさい。」

家の中でガタガタ物音が聞こえてきた。

「草間のじいさん、人の過去が見える《化け物》だから気を付けなね。」

幸玉は小声で面白そうに教えた。二人は表情を変えなかった。幸玉は二人の反応が面白くなかったのか、呆れた顔をする。
スッと戸が開いて、草間が顔だけを外に出す。特に人と変わった所はない。
この村は鬼人の村のはずなのに、いるのはただの人と変わらないのだ。

「そこの二人、入りなさい。」

家の中は暖かく、七輪で餅が焼かれていて、神棚には鏡餅が置かれている。
今日は元旦。また新しい一年が始まりを迎えたのだ。

「おじゃまします」

「おじゃまします」

草間にすすめられ、座布団の上に座る。

「私は草間 菜由太(くささま なゆた)という。」

「私は白尾 威風です。」

「弟の風威です。」

「………」

菜由太はただ静かに二人を見つめ、頬に涙を伝せた。

「「おじいさん、どうして泣いているの?」」

同時に言い、同時に首を傾げた。
同じ顔、同じ背丈、同じ服の威風と風威が同時に同じ行動をすると鏡合わせのようで奇妙だ。

「君等2人は《双子ではなかった》のか。」

「…おじいさん、本当に過去が見えるんだね。」

風威は悲しそうな顔をして俯く。威風は気にしていないようで、キョトンとしている。

「双子ではなかったけど、《今は双子》だから良いの。」

威風は満面の笑みで笑った。が、それと正反対に菜由太は溜め息を吐く。

「…辛くは、ないのかい?」

「僕は今幸せだよ。」

「私も幸せだよ。どうしてそんなこと聞くの?」

2人の笑顔は本物。顔を見合わせて「ふふふふ」と笑う。

「花村に聞いたと思うが私は過去が見える。君等2人の過去も見た。だが、断片的にしか見えなかった。…全て教えてくれ。この村で生きられるよう、白刻様に伝えておくから。」

「…」

威風は迷っているようで、言葉を失っている。

「…僕は、9年前まで死体だった。正確に言えば、《存在しなかった》。」



白尾 威風は白尾 花威薇(かいら)と風護(かざもり)の間に生を授かった一人娘。花威薇と同じ顔、風護と同じ瞳と髪の愛らしい少女だった。威風が5歳になり、世の中を知り始めた頃、突然両親が行方不明になった。周りの人たちは憐れみの意を込めた目で威風をみる。そんな中、雨神 乃々(あまがみ のの)という女性が威風を育てた。乃々は旦那に先立たれ、子供が居なかった。乃々の教育に愛はなかった。《自分の望んだ娘》に仕上げる為、育てた。夜は自分の家に帰り、威風と一緒にいない。威風にとって夜は至福の時だった。
そんな中、村で一つの噂が流れた。「威風が両親を殺したのではないか」と。

「もう嫌!母上も父上も死んでなんかない!《お願いだから》誰か私の味方になってよ!そばにいてよ!乃々叔母さんなんて大っ嫌い!」

威風は布団の中で丸くなり、ただひたすら泣いていた。顔を布団に埋めて喚く。台風のような泣き声は深夜までも続いた。しかし、そのうち泣き疲れて寝てしまった。
朝になり、開けたくない目をしぶしぶ開く。
目の前に居たのは自分と同じ顔の少年。姿形は威風にそっくりで寝ているようだった。少年に触ろうとすると、ハッとして目を開けた。

「誰?」

威風は首を傾げる。威風はその少年を知らなくても恐怖しなかった。それどころか安心感がある。少年はゆっくり起き上がって威風と向かい合う。

「君の味方。家族。血縁者。もう一人の君。」

少年は虚ろな瞳で威風だけをずっと見つめる。

「名前は?」

「ない」

「じゃあ、私がつけてあげる。私の名前の反対で《風威》。それでいい?」

「いい」

「風威はどうしてここに来たの?」

「君の願い、叶える為。」

「私の味方に、家族になってくれるの?」

威風は風威に近付いて、ギュッと抱き締める。

「うん…僕はこれから君だけなんだ。」

威風は側にいてくれる人が出来たのが嬉しくてたまらない。
それから威風は幸せだった。何故なら、乃々が居なくなったからだ。村の人に聞いても誰も「乃々なんて人は居ない。」と答え、「白尾 威風には風威という双子の弟がいる」と言う。人々の記憶が改竄されたのだ。

風威は威風に説明し終わると、動かなくなった。自分でご飯も食べないし、風呂も入らない。そんな風威に威風はご飯を食べさせ、体を洗い、毎日毎日【愛している】と伝えた。大切に大切に世話をした。

そんな生活が続き、3年の月日が経った。
威風は風威に依存していた。風威が居なくては生きて居たくない。そうまで考えるほどに。
そして、事件は起こった。

「風威、ただいま。」

畑仕事から帰って来て、いつも風威が座っていた場所に視線を向ける。居なかった。動けなかった風威が居なくなっていた。
威風は持っていた野菜をごろごろ落として唖然とした。

「う、そ。風威…?」

威風は泣いていた。唇が震え、脱力感が襲ってきた。動悸が速くなり、頭の中がぐるぐるとして吐き気がしてくる。流れる涙が溢れてくる度着物の裾で拭く。

「嫌だ。嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌!!!」

叫びながら走った。風威が何処にいるかなんて検討もつかない。が、威風は一心不乱に森へ走った。確証はなかったが、そこで風威が呼んでいる気がした。

(風威…多分崖らへんにいる。)

泣き止んではいなかった。泣きながら走って風威を探した。

「…やっぱり、崖にいた。」

やっと見つかった風威は崖に立っていた。特別高いわけではないが、落ちたら全身骨折は免れられない。最悪、内臓が潰れる。この場所から落ちる者は少なくない。威風は落ちて大怪我をした大人を8人以上見てきた。幸い、死者は出なかったがそれは大人の場合。
風威の足元には綺麗な黄色の花が咲いていた。

「風威、帰ろ?」

風威に近付いて手を差し出す。風威は振り向いた。そして、後ろに飛ぶ。威風にはとてもゆっくりに見えた。風威は落ちる。それを追って威風も崖を飛び降りる。

「《お願いだから》!風威を助けさせてよぉ!」

威風はもう泣いていない。必死に手を伸ばす。届かなかいはずの威風の手は風威の着物を捕まえた。ぐっと風威の体を引き寄せて、自分が下になる。通常ならこんな事出来なかったが、威風には今この瞬間がゆっくりに感じた。
風威を守るようにして抱き締める。と、声が聞こえてきた。

「どうして体が動かないんだ。どうして…あぁ、あの女の存在を消した代償か。僕は所詮《偽物》だから。早く動いて、動いて。こんな僕じゃ威風は愛してくれない。威風。威風。愛されたい。威風に愛されたい。威風はいつも愛しているという。けど、怖い。怖い。こんな僕を本当に愛しているの?愛して貰えないなら僕は存在していたくない。生きていたくない。側にいれなくてごめん。今までごめん。さようなら。愛しているよ。威風。威風。威風。威風。______愛しているよ。」

とても優しい、風威の声。寂しがり屋の、愛して欲しがり屋の、風威の声。威風を愛し、威風に愛された、風威の声。

「それでも愛しているよ、風威。」

そして、威風は地面に叩き付けられた。「愛されながら死んでゆく。それはとても幸せ。」そう思って目を閉じる。目を覚ました風威が見たのは大量出血している威風。だんだん冷たくなっていった。脈をとってみたがもう、動いていない。心肺停止。

「…そんな!」

風威は泣き叫んだ。世界を怨んだ。

しかし、風威は変化に気付いた。流れ出ていたはずの血液が消えたのだ。
それから暫くして、威風は目を覚ました。

「風威。私にはね、もう貴方だけなの。貴方が居ないと生きていけない。___側にいてね。」

威風は起き上がって風威の頬に手を当てる。母親の様な、慈愛に満ちた笑みを浮かべて風威の頭を撫でる。

「…約束、したからね。」

泣いた。今までに見せたことのない、人間らしい顔で、泣いた。



第3話「双子の真」END

4ヶ月前 No.11
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