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また会う日まで

 ( 初心者のための小説投稿城 )
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@yyyy @19900703r ★iPhone=4RnQjbRef2



プロローグ




あの日君と出会って初めて人を好きになって__

灰色だった私の空は真っ青に晴れた

蒼空色に__


あの日の君にもう一度会いたい


メモ2017/01/16 01:22 : @yyyy @19900703r★iPhone-4RnQjbRef2



第1章__ はじまり no.1〜15


第2章__ 嫉妬 no.16〜27

関連リンク: Important past 
ページ: 1


 
 

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第1章 はじまり






「ねぇねぇ!さっき見た?蒼空くんたち学校来てたよ!!」
「うそー!?私も見たかった!!」

「蒼空くんも琉生くんも晴哉くんも碧くんも悠斗くんも!」
「えー!?私も晴哉くんに会いたかった!」

「え?あんた晴哉くん派?私は琉生くん!」
「いやいや、碧くんでしょ!」
「いや、悠斗くんでしょ…あ!ほら!みて!」



女の子たちの視線をたどるとそこには男の子が5人
その5人は沢山の視線を集めていた。四方八方から色んな名前が聞こえる


もちろん私も…なんてことはなくてただ1人窓側の1番後ろの席に座りただ黙って中庭を見つめていた




九条華美(くじょう かほ)15歳。

そこらへんにいるただの女の子
ただ、そこに1つ違いがあるとすると私には友達がいない__


昔から男の子にはからかわれ、女の子には嫌われてきた

そんな私に友達なんていなかった


休み時間、みんなが友達とお喋りをするなか私は独りぼっち。
息苦しさを感じ私はある場所へ向かおうと立ち上がった

その時1人の男の子が声をかけてきた。確かクラスメイトの山岸くん

「あの、九条さん。よかったら今日一緒に帰らない?」

友達のいない私に気を使ってくれる優しい人。

「ごめんなさい…今日は急いで帰らなくちゃいけないの…」


そう言って断ると私は教室を後にした。
そんな私の元へ聞こえてくるヒソヒソした声。


「なにあいつ。ちょっと顔がいいからって。友達いないくせに」
「だから友達いねぇんだよ」
「ほんとにそれ。男好き」


こんな悪口慣れっこだ。なのに心は苦しくていつまでも傷をつくる




そんな悪口から逃げるように向かった先は屋上


今日も空は真っ青なのにどこか灰色。今にも雨が降り出しそうな。泣き出してしまいそうな。それはまるで私の心のようで__




私はそっと柵に体を預け座り込んだ



眠ろうと目をつぶりしばらくたつと人の気配を感じた__



うっすら目を開けるとそこには私の顔を覗き込んでいる男の子の顔があった

かなり距離が近くてビックリした




「!?」

その男の子はすごく綺麗な顔をしていた。10人いれば10人が綺麗というほどの顔



「あんたが噂の…噂通りすげえ綺麗じゃん。見たことないくらい」



その彼は見たことがある顔をしていた。



「俺、一之瀬蒼空。確か3-4組。よろしく」

「よろしく…お願いします」
「あぁ。」

そう言って彼は私の頭を撫でて屋上から去っていった




あまりに突然の出来事で私はしばらくの間ボーとしていた




一体どれくらいの時間が経ったのかわからない。
1分だったのか1時間だったのか。ただ、最終下校を告げるチャイムが聞こえてくるので5時には間違いないらしい。


私は急いで教室にカバンを取りに行き学校を後にした。




3ヶ月前 No.1

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学校から電車で15分。
そこから歩いて5分。

まっすぐな道を歩き一回左に曲がり、すこし歩くとあるのが私の家


玄関のドアを開けると、男物の大きい革靴が1つ。女物の綺麗な真っ赤なピンヒールが1つ。

それを確認すると私は急いで廊下を走った。私の鈍足ではすこし時間がかかるが私なりには早く走った。
1番奥のドアを勢い開けると聞こえてくる温かい声



「華美おかえり」



そこには大好きなお兄ちゃんとお姉ちゃんがいた



「ただいま!!」


私は嬉しくてキッチンで料理を作っている4つ上の姉に駆け寄った



「お姉ちゃん、今日もすごく綺麗だね。何か手伝う事はない?」


私は会うたびに姉に 綺麗だねと言う。

その言葉通り私の姉はすごく綺麗だ。少女漫画から出てきたかのような小さい顔。その顔の半分を陣取るかのように存在するパッチリの大きな目。真っ黒な髪は胸元で綺麗に巻かれていて、手足はすごく細長い。



「はいはい、知ってる。知ってる。手伝う事なんてないから座ってて」



一見冷たそうにも見えるが本当はすごく優しいお姉ちゃん。ただ素直になれないだけ。ちょっと正直すぎるだけ。

そんな姉は昔からすごく綺麗で同性から妬まれてきた。それでも姉は堂々と生きてきた。そんな姉が羨ましかった




「華美、おいで」


そう言って優しい笑顔を浮かべ手招きしてくれるのは5つ上の兄。


すごくカッコよくて妹の私でも見惚れてしまうくらい。その上優しくって私は昔から兄も姉と同じように大好きだった



「お兄ちゃん、ただいま」


そう言って私はソファーに座っている兄の上に座った



「学校は楽しかったか?」
「うん。パパとママは?」

「今日も忙しくて帰ってこれないらしい」

そう言いながら私の頭を優しく撫でてくれた

兄は1年前、姉はこの春、高校を卒業とともにそれぞれ家を出て行き兄は働きながら、姉は大学に行きながら一人暮らしをはじめていた



両親は仕事が忙しく帰ってこれるのは月に一度。
私は家でもひとりぼっち。
でも悲しくはない。父も母も私のために頑張ってくれているのだから。でも寂しいのは寂しい

そんな私のために兄と姉は忙しい中2人で家に帰ってきてくれる





3ヶ月前 No.2

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3ヶ月前 No.3

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ピピピピ、ピピピピ


私は目覚ましテレビの音で目を覚ました



心地いいベットから立ち上がり、一階のリビングへと向かった


水を一杯飲み、顔を洗い、テレビをつけた。今日もニュースには、誰かが事件を起こした。誰かが亡くなった。誰かが__ と聞きたくもない話題が流れている


私はテレビを消し、無音の中学校へ行く準備を進める


朝は何も食べれない私はココアを飲み、制服に着替える。髪をとかし、歯を磨き、今日もテーブルはの上に置いてあるお札を財布の中に入れ、家を出る

駅の途中にあるコンビニでお昼ご飯を買い、電車に揺られ、15分。

そこから少し歩けば見えてくる学校。
私の大嫌いな学校。

私の学校はやたらと校区が広く、電車で20分もかかる私の家までが学校区内だったりする。歩けば50分かかる。
でもそれが学校を嫌いな理由ではない



私には友達がいない__

3ヶ月前 No.4

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学校に入り、教室へと向かい、1番後ろの窓側の席へ座る。
ただそれだけなのに色んな所から私の名前が聞こえる。決して友好的ではない。敵意さえ感じられるような声__


私は何も聞こえてないかのように一限目の準備をする


そして一限目が始まり、二限、三限、四限と時間は流れる

もちろん休み時間はただボーとして。


お昼になると私は朝買ったパンとジュースが入った袋をもちお昼を食べる場所を探す



今日は天気がいいから中庭へ




ただ、中庭にはたくさんの生徒が集まる。だから私は奥の誰もこない方へ行き1人で食べる


今日も1人で寂しく食べるはずだった

なのにそこにはもう人がいた



綺麗な顔をした彼はベンチで眠っていた

私は恐る恐る近寄る。その綺麗な顔に見とれてしまい、つい腕を伸ばしてしまった



その腕は捕まり、彼に届くことはなかった。彼は目を開け、綺麗な二重の目が私を見つめている





「あぁ。なんだ華美か。昨日ぶり」


そう言って彼は優しく微笑んだ


「あ、ごめんなさい…」


「え、なにが?…あ、ごめん。腕。痛かった?」



私は顔を横に振った



「ならよかった。ねえ、今から昼飯?」

「うん。」
「そっか。なら一緒に食べよう。」

3ヶ月前 No.5

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「私なんかと一緒にいたら一之瀬くんが嫌な事言われちゃうから…私に気を使ってくれているならいいから…」

「あのさ、なんでそういう事言うわけ?別に周りなんかどうでもいいし。むしろ俺は華美のその発言が嫌だ」

「ごめんなさい!そういうつもりじゃないの…」


「知ってるよ。そんな必死になんなよ」


そういうと一之瀬くんは小さく笑った



「だから一緒に食べよう。ていうか、俺なにも持ってないけど」

「あの!私のでよかったら…」


「いや、大丈夫。そろそろ誰かが届けてくれるはず」


意味がわからず私は少し考えた
でも考えても私にはわからなかった



「やっと見つけた…」


その声とともに4人の男の子が現れた
みんなどこかで見た顔をしていた





私はいきなり人がたくさんになり固まってしまった



「あ、華美紹介する。これ、俺の友達」


「あー。君が噂の華美ちゃんか。初めまして。朝比奈晴哉です」


メガネをかけた彼は私と同じ目線になるようにしゃがみ込んで優しく笑ってくれた








3ヶ月前 No.6

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「五十嵐碧です。よろしくって言っても2年の時同じクラスだったけどな!」


そういうとヤンチャそうな彼は可愛い笑顔を浮かべ楽しそうに笑った



「阿久津悠斗です。よろしく、華美ちゃん」


彼はそういうと私に触れようとした__が、一之瀬くんに掴まれ私に触れる事はなかった



「悠斗。華美はダメ。華美はそこらへんのやっと違う。」


「なーんだ。華美は蒼空のお気に入りか…ざーんねん。まぁ仲良くしよう」



「おい、琉生あとお前だけだぞ。名前くらい言えよ」


五十嵐くんにそう声をかけられても明後日の方向へ向いている彼はさっきから私を一切視界に入れてくれない



「お前が自分でしないなら俺が言うからな。 橘琉生、趣味は手芸です」



五十嵐くんいわく彼は橘くんと言うらしい



「おい、碧。嘘つくな、俺は手芸なんかじゃなんかしねえ」

よくやく彼はこっちを向いてくれた

「なら自分で言えよ」

そう言う五十嵐くんの言い分に納得した様子の彼は渋々といった感じで口を開いてくれた




「橘琉生。関わってくんな」



自己紹介で、初対面で関わるなと言われるのはさすがの私でも初めてで動揺もしたが何より心が少し痛くなった





「ごめんね、華美ちゃん。こいつ、女嫌いなの。悪いやつではないんだけど…気にしないで」



そう言って朝比奈くんはさっきと同じ優しい顔をしてくれた



「ありがとう、朝比奈くん」

「どういたしまして」


朝比奈くんは大きな手で優しく頭を撫でてくれて、兄のようで落ち着いて少し嬉しかった

3ヶ月前 No.7

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「ねえ、華美も自己紹介してよ」

立ったままの私を座っている一之瀬くんが下から見つめてきていた



「えっと…九条華美です。3-2組です」




下を向き少し緊張しながら言い終え、みんなの様子を伺おうと少し顔を上げるとそこには優しい顔のみんながいた





「よろしく」


そう言って優しく声をかけてくれた

こんなにも家族以外の人と喋るのは久しぶりで嬉しかった



「うん」



すごく嬉しくて思わず顔が緩んでしまう

そんな私を見て一之瀬くんは優しく笑ってくれた__

3ヶ月前 No.8

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お昼休み終了5分前を知らせるチャイムがなる__



「あ、私帰らなくちゃ…」





楽しかった時間ともこれでお別れ。
それはあっという間で魔法が解けてしまったように現実へ引き戻された




「華美授業頑張って。」


そう言って五十嵐くんは優しく笑ってくれた

「ありがとう」



一之瀬くんたちが授業を受けないのは当たり前で、彼らはいつも気が向いたときに学校へ来て適当に遊んで帰りたくなったら帰る__ とさっき阿久津くんに教えてもらった





「華美、一緒に教室まで行こう。俺隣のクラスだから」



そう言い朝比奈くんは立ち上がった



「え?晴哉授業受けんの?」


みんなびっくりした顔をして朝比奈くんを見つめていた




「いや、久しぶりに洋ちゃんの顔みようと思って。ほら、華美行こう」


洋ちゃんとは朝比奈くんのクラスの担任の先生



「あ、うん」


朝比奈くんと共に私は教室へ向かった。つい最近の私では考えられない事で自分自身すごく驚いている。私に友達ができるなんて__ しかもそれがこんなに人気な人達だなんて__




色んなところから朝比奈くんを呼ぶ声が聞こえる。


「朝比奈くん!」「晴哉!」「はる!」「朝比奈先輩!」「はる先輩!」


呼ばれて方は様々で、男の子に女の子、同級生に年下の子、たくさんの人に呼ばれている。
中にはすごく綺麗な子も。

朝比奈くんはどの子にも優しく笑い、手を挙げる




そんな朝比奈くんがすごく羨ましく思えた

3ヶ月前 No.9

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それと同時に女の子の冷たい目

きっと “なんであんな奴が朝比奈くんの隣に” と思っているんだろう

それがヒシヒシと痛いほどに伝わってきて辛かった
私なんかがこの人達と一緒にいたらダメなんだと改めて実感させられて悲しかった__


下を向き、そんな事を考えている私に朝比奈くんは気づいているのか気づいてないのかわからないけど声をかけてくれた



「華美。堂々としてなよ。大丈夫。あと少し。あと少ししたら何も言われなくなるから」





朝比奈くんは優しく笑って頭を撫でてくれた。
少し、少しだけ元気が出た私は小さく笑った


朝比奈くんはクラスまで送り届けてくれると自分のクラスとは反対の元来た方へ戻って行った。
クラスに行くなんて本当は嘘で。私を一人ぼっちにしない為の優しい嘘で

久しぶりに家族以外の優しさに触れた私はすごく温かい気持ちになった__

3ヶ月前 No.10

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5時限目はあっという間に終わり、掃除当番のない私は早々と家路へ急いだ


時刻は午後2時。まだ少し家に帰るにははやいので隣町まで行って少し寄り道して帰ろう。

最寄駅から3駅下り、降りた町は桜町。
綺麗な桜が立ち並び、オシャレなお店がたくさんある。

まず駅前の花屋さんへ向かいいつも白いマーガレットの花束を包んでもらい、私は大好きな本屋さんへと向かう。
2年ほど前から月に一度。ここへやってきて本を買いに来る。それは小説だったり、漫画だったり、ぬり絵だったり、色々。私が通い始めたときはふわふわの白い髪のお爺ちゃんだったが今はお孫さんの綺麗なお姉さんになっている。



「あら、華美ちゃん今日も綺麗ね。いらっしゃい」

優しい笑顔で迎えてくれるのは香織さん。

「こんにちわ。これどうぞ」


私は毎回来るたびにお花を渡す。お爺ちゃんが大好きだった白いマーガレット

ここに通い出すきっかけはお爺ちゃんだった。中学校へ入り、悪口は悪化していき耐えられなくなった私は隣町のここへ__桜町に逃げてきた

ふらりと立ち寄ったこのお店で、お爺ちゃんに出会い私は救われた。
そんなお爺ちゃんの奥さんが生前、このお花が大好きだったそう。だから私はここへ来るたびいつも白いマーガレットを持ってくる。大好きなお爺ちゃんのために



「いつもいつもありがとうね、華美ちゃん」

「いえ。お爺ちゃん元気ですか??」
「うん。ぼちぼちね。最近は少し外に出れるようになったの」


「そっか。よかった…」

お爺ちゃんが元気と聞きすごく嬉しかった。

「今日は?」

「あのね、香織さん。真っ青な空が描きたいの。キャンバスがほしい」
「わかった。宅配するわ。何日がいい?」


「えーと、いつでも大丈夫」
「じゃあ、明後日でも大丈夫?」
「うん。いつもの場所置いておいてください」

いつもの場所とは敷地に入り、玄関へ行くまでの間に左へ曲がる。そこには小さな小屋がある。そこは私の趣味部屋。

絵を描く為の道具、お爺ちゃんのお店で買った本、大切なものを置いている。
鍵は香織さんに渡していて宅配の際にいつもそこへ届けてもらっている



「了解。300円ね!」

「香織さん、いつもありがとう」

本当はキャンバスは300円では買えない。しかしお爺ちゃんはずっと私に300円で売ってきてくれた。そんな香織さんも私にいつも300円 と言ってくれる


「いえいえ、こちらこそ。いつでもおいでね」



香織さんは優しい笑顔で来た時と同じように送ってくれる


私も手を振り、本屋さんを後にする

それからはいつものパン屋さんへ行く。いつも朝ごはんのバケットと、食パン、あとは大好きなクロワッサンとお店手作りのパンを買う。

そうすると叔父さんはいつもオマケでクリームパンをくれる。


「華美ちゃん、いつもありがとう。」
「叔父さんもいつもありがとう」


叔父さんも2年前のあの日以来ずっと優しくしてくれている。


そのあとは野菜屋さんへ。

トマトにきゅうり、なすびにピーマン、パプリカとキノコ。あとはミカンとりんごとイチゴ。


野菜屋さんのおばあちゃんもあの日以来の仲で、いつもオマケしてくれる。それはその日によって違い、今日はりんごを1つオマケしてくれた



「華美ちゃん、いつもありがとうね。本当に綺麗になって。今日はりんごが美味しいからね」

「おばあちゃん、いつもありがとう。美味しくいただきます」


しわしわの温かい手でいつも私の手を握って優しい笑顔をくれる

「また来るね」

隣町の私に優しくしてくれるこの町が私は大好きだった

両手にパンと野菜を持ち、坂を下り私は自分の町へ帰ろうとしていた

その時、足元にりんごが1つ。転がってきた__


「??」


パンの袋を左腕で抱え、野菜の袋を左手で持ち、りんごを持ち上げた




「あ、ごめんなさい!!」


その女の子が現れた時、風が吹き、さくらが舞った。
現れた少女もまた、さくらのように綺麗だった



「あの、ありがとうございます…」



その女の子は、今にも折れそうなほど華奢で肌は真っ白だった。


大きな目で私を不思議そうにじっと見つめ__




「あ!ごめんなさい!これ!」



渡そうと手を出したが、彼女の持っている荷物はとても多くて1人じゃ持つには重そうできっとこんな細い女の子には尚更大変だろうと思った__

なぜか私は口走っていた



「あの、荷物。手伝いましょうか?」



「え、そんな…いいんですか?」

「はい。どちらまで?」
「あそこの病院まで」



彼女は坂を下った先にある、大きな病院を指差していた





「わかりました」

誰かのお見舞いに行くと思い、私は快く引き受けた



「本当にありがとうございます。1人じゃ多すぎたみたいで。お姉さんはこの町の方ですか?」

「いえいえ。私は隣町から来ました。すごくいい雰囲気でついつい通っちゃって…お見舞いですか?」
「そうなんですか!いい町ですよね〜。いや、お見舞いじゃなくて私が入院しているんです」


3ヶ月前 No.11

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「あ、そうなんですか。大丈夫ですか?」
「はい、最近やっと外に出れるようになりました。病院の外に出るの2年ぶりくらいですごく嬉しくってついつい買いすぎちゃって。」

「そうだったんですか。それなら楽しくて買っちゃいますよね。」


「あ、お姉さんって何歳ですか?」
「今年で15歳です。中学3年生です」

「あ、同い年だ!私も15歳です!よかったら敬語やめませんか?」
「そうですね!あ、私は九条華美です」

「私は宮内桜です!華美ちゃんって呼んでもいい?」
「もちろん。私は桜ちゃんって呼ぶね」


「うん!」


和やかに話しているうちにあっという間に病院の前まで付いた



「ありがとう、華美ちゃん!!」
「重いしよかったら病室まで持っていくよ!」
「え、でもそんな悪いよ…」

「私は全然!桜ちゃんがよかったら!」
「じゃあお願いしてもいい?」
「もちろん!」

「私は東棟の3階なの」

東棟は重病患者さん専用の棟らしく、お年寄りの方や車椅子の方が多かった




「華美ちゃん、このあと少し時間ある?この前美味しいクッキーもらったんだけど私1人じゃ食べれなくて…よかったら一緒に食べてくれない?」

「え、いいの?」
「うん!華美ちゃんがよかったら!」


「ありがとう」

とてもさっき出会ったとは思えないほど仲良くなれて私はすごく嬉しかった



華美ちゃんの部屋はエレベーターから降りて長い廊下を真っ直ぐ生き、左曲がった1番奥の部屋。


376号室。そこは華美ちゃんだけだった



「この前までは2人部屋だったんだけどね〜。だからとっても広いの」



そう言われ入ると確かに病室は1人にしてはすごく広かった

「あ、琉ちゃん来てたんだ!」


琉ちゃんと呼ばれる男の子はこっちに背を向け、部屋の真ん中にあるソファーに座っていた




桜ちゃんの声と共にこっちへ振り向き、優しい笑顔をした彼は__同じ学校の橘琉生くんだった




「桜、どこ行ってたんだよ?いくら外出許可が出たからって1人で出歩くなよ。危ないだろ?」

橘くんはまだ私には気づいていない



「もう、琉ちゃんは心配性なんだから…大丈夫だよ!!あ!さっき知り合った九条華美ちゃん!ここまで荷物運ぶの手伝ってくれたの!」


そう言い、桜ちゃんは橘くんに私を紹介した




「は?なんであんたが…」



橘くんは、その言葉通り意味がわからないっといった顔で私を見ていた







3ヶ月前 No.12

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「えっと…」


「え!?2人ともお友達なの!?」
「友達じゃねえよ。ただ今日自己紹介させられただけ」

「へー。誰に?」
「蒼空に言われて、碧にやらされた」

「2人は同じ学校なの?」
「あぁ。今日初めて知り合った」

「琉ちゃん華美ちゃんに意地悪言ったらダメだよ?それとももう言っちゃった後?」
「別になにも言ってねえよ。普通だよ普通」
「その普通が意地悪なの!華美ちゃんは優しいし可愛いからダメ!」

「いや、可愛い関係ねえだろ」



すっかり2人の世界に入ってしまった2人はとても可愛くて夫婦のようだった



「ねえ!華美ちゃん意地悪言われてない?大丈夫?」

「え!?」


急に話を振られテンパっている私を桜ちゃんの奥から橘くんが無言の圧力をかけてきていた



「うん…大丈夫…だよ?」
「ならよかった!!琉ちゃん昔から女の子に冷たくって…本当は優しいのに誤解されちゃうけど琉ちゃん良い子だから華美ちゃんもよかったら仲良くしてあげてね」


「うん」

「いや、なんで俺が ''仲良くしてもらう側” なんだよ。あと、良い子ってなんだよ。子供扱いやめろ」


「もう!そういう事言わないの!あ、華美ちゃんクッキー出すね!!」

3ヶ月前 No.13

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「ありがとう」
「いえいえ!あ、ソファーに座って待ってて!華美ちゃんミルクティー飲める?」

「うん」


部屋の真ん中にある、さっきまで橘くんが座っていた反対側のソファーに腰掛けた


「よかった!この前ね美味しい紅茶もらっちゃったの!」
「いや、紅茶もらったのにミルクティーかよ」

橘くんは準備している桜ちゃんの隣に立ち優しく見守っていた

「いいの!ミルクティー美味しいもん!」

「俺、甘いの嫌い」
「わかってるよ。琉ちゃんはココアでしょう?」

「ココアも甘いだろうが」
「あ、そっか。じゃあコーヒーでもいい?」

「あぁ。」
「砂糖とミルクは?」

「甘いの嫌いだからいらない」



「わかった。はい、琉ちゃん持って行ってね」


そう言って桜ちゃんは橘くんにクッキーを渡した。橘くんはそのクッキーを受け取り、こっちにやってきた



私の目の間へのソファーにどっかりと座り、テーブルの真ん中にクッキーの入った大皿をおいた




「華美ちゃんお待たせ〜」



飲み物をもって桜ちゃんが現れた



「はい、どうぞ」


目の前に湯気がたっている美味しそうなミルクティーがおかれた



「ありがとう」

「いえいえ」


橘くんの前に甘そうなココアと自分の前にブラックコーヒーを置いた


当然、ブラックコーヒーが目の前に置かれると思っていた橘くんは今の状況にすごく驚いた____ といった感じではなくて当然かのようにそれを飲んだ




「甘ったるい」
「琉ちゃんのコーヒー苦い…」




お互い文句を言い合いながら飲む姿を私は疑問に思えて仕方がなかった



それが顔に出ていたようで橘くんにイライラした顔をされた



「あ?」

「あ!また琉ちゃんそういうこと言う!!ダメ! 華美ちゃん好きなの食べてね!!」




お皿には美味しそうなクッキー。2色のものや、真ん中にジャムがあったり、ココア味やプレーン。 クッキーだけじゃなくて、マドレーヌやブラウニーなんかも置いてあった




「ありがとう。いただきます」



「どうぞ〜。いっぱいお菓子もらっちゃうんだけど私だけじゃ食べれないの。琉ちゃんも食べてくれないし」



私が食べた2色のクッキーはサクサクしていてとても美味しかった

桜ちゃんはココア味のクッキーをゆっくりと食べていた

となりの橘くんは甘いものが苦手と言ったにもかかわらずブラウニーとマドレーヌだけ食べてきた




甘いものが苦手な橘くんが食べるのだからすごく美味しいのだと思い私もマドレーヌを頂くことにした


口にした瞬間、すごくビックリした。さっきのクッキーも美味しかったが比べ物にならないくらい美味しかった


あまりの美味しさに私は言葉を漏らしていた



「美味しい__」



「え?本当に?ありがとう!!」

桜ちゃんはすごく嬉しそうな顔をした



「久しぶりに作ったから美味しくできたかわかんなかったしよかった〜。」


「これ、桜ちゃんが作ったの?」
「うん!そうだよ〜」


あまりの美味しさに私はビックリした。
橘くんが食べていた理由もわかった。

美味しい って言うのも1つの理由なんだと思う。でも、それ以上に桜ちゃんが作ったから なんだと思う



「すごく美味しいね!ビックリしちゃった!」

「大袈裟だよ〜」


あまりの美味しさに私は興奮してしまった


「お菓子作り好きなの??」
「うん。だからキッチンのついた病室にしてもらったの。私にはこれくらいしか趣味がないから」


「すごいね!すごい!」

興奮する私を桜ちゃんは嬉しそうに笑ってくれた


「ありがとう。あ、よかったら持って帰ってくれない??ちょうど今日の朝、アップルパイ焼いたんだけど…」

「え?いいの?」


「華美ちゃんがよかったら!今日もお菓子の材料買いすぎちゃって…」


「ありがとう!!」

2人で仲良く喋っている間橘くんは黙って桜ちゃんの入れた激甘のココアを飲んでいた__

3ヶ月前 No.14

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「華美ちゃんちゃんと食べてる?朝ごはんとか食べてないでしょ??」

「え、なんでわかったの??」

「だって病人の私とあんまり変わらないんだもん。ダメだよ〜ちゃんと食べなきゃ。朝は特にね!」
「朝ごはん食べる気になれないんだよね〜…」

「あ、朝ごはんは1番大事だよ!!パンだけでもいいから!パンならすぐ食べれるし焼くだけだから楽だし!」

「なんか桜ちゃんお母さんみたい。明日からちゃんと食べようかな〜」

「うん!そうして!」

桜ちゃんが嬉しそうに笑うたび、橘くんも少し笑う



それからも喋っているとあっという間に日は暮れ、時刻は5時半。
ミルクティーのお代わりを2杯ももらった。あんなにもいっぱいあった焼き菓子はすぐになくなり、桜ちゃんの作ったチーズケーキを頂いた。マドレーヌやブラウニー同様美味しくて私はすごく興奮した




外は薄暗く、夕日が沈みかけ。
4月下旬にしては外は少し暗く、遅咲きの桜が映えていた



「九条送ってく」



橘くんは立ち上がり、荷物を持った



「あ!もうこんな時間!!華美ちゃんお父さんとお母さん大丈夫?」


あまりにも楽しくて、人とこんなにも楽しい時間を共有するのが久しぶりで、今からやってくる寂しさのあまりつい口に出してしまった



「大丈夫。お父さんとお母さん、家にいないから__」


あまりにも寂しい声が溢れた
そんな私に 何を聞くでもなく桜ちゃんは


「そっか。あ、アップルパイちょっと待っててね!」

何も聞かずに普通に接してくれた。変に気を使うわけでもなく、ただ普通に__



桜ちゃんは少し大きめの袋を持ってきてくれた


「これがアップルパイね!あと、プリン!」

大きな箱に入ったアップルパイ。
それと可愛い瓶に入ったプリンが2つ



「あ!あと、ジャム!こっちの赤い蓋の瓶がイチゴね!こっちの黄色の蓋の瓶がオレンジの!」



可愛い瓶に入ったジャムもくれた
きっと朝ごはんを食べていないと言った私のために、パンにつけるジャムをくれたんだと思う




「全部桜ちゃんの手作り?」
「うん!」

「すごく嬉しい。ありがとう。毎朝パンにつけて食べるね。アップルパイとプリンはデザートに食べるね」


「こちらこそありがとう!」




「宮内さん〜!検査の時間ですよ〜」


1人の看護師さんが入ってきた


「え!もうそんな時間なんだ!!ごめんね、華美ちゃん下まで送れない…」



申し訳なさそうな顔をする桜ちゃんはすごく可愛かった



「全然大丈夫!今日はありがとう」


「こちらこそありがとう!いつでも来てね」



優しく笑って手を振ってくれた桜ちゃんは私たちと反対の方へ歩いて行った__


きっと桜ちゃんは家でひとりぼっちの私のために いつでもおいで と言ってくれたんだと思う。
初対面のはずの私にこんなにも優しくしてくれて、ご飯の心配までしてくれる桜ちゃんだから__




橘くんと2人になってからは無言ですごく静かだった。
駅のホームへ入り、電車の時刻表を見るとさっき電車が出たばかりで次の電車まで30分も時間があった


ホームの椅子に無言のまま並んで座った


そんな沈黙を破ったのは橘くんだった__





「今日は悪かったな。用事とかなかったのか?」

「いや、そんな。用事なんてなかったしすごく楽しかった」


友達もいない私に用事なんてあるはずがない



「桜、心臓病なんだ。生まれつきだけど4歳まではそんなに症状は重くなかったんだけど、4歳の春に病代が一気に悪くなってそれからずっと病院暮らしなんだ」


ポツリ__ポツリと橘くんは桜ちゃんのことを教えてくれた



「小学校の頃はたまーに体調の日だけ学校に来てた。でももう今は無理でずっと病院からでれないんだ」

「そんなんだから友達もできないからお前と今日仲良くなれてすげえ嬉しかったんだと思う」

「俺あんま喋んねえし男だし、だからお前が来てくれてすげえ嬉しかったんだと思う」

「あいつ、飯も食えねえくらいやばいとき何回もあるんだ。食べれても、お粥とか野菜とかだけ。食べれる物も少ねえから俺らみたいな何でもたべれる奴が羨ましいらしい。だからお前に食えってうるさいんだよ」


「大丈夫。嫌だなんて思ってないよ。嬉しかったから。」


それを聞いた橘くんは少し安心したようで表情が柔らかくなった



「あの、1つ聞いてもいい…?」
「なんだよ」


「どうして苦手なのにお互いの飲みモノを交換するの?」


「あー…桜、人よりも生きれる時間が短いから少しでも思い出を作りたいらしい。それで必死に考えたうちの1つがあれ。」


理由があまりにも可愛くて__悲しくて__



「桜ちゃんと橘くんは付き合ってるの?」


「いや、付き合ってねえ。別に付き合っても付き合わなくても俺らは変わんねえし、何よりも桜が俺と付き合うの嫌がるんだよ」


「え?」

あんなにも相思相愛って言葉がぴったりの2人だからびっくりした




「先に逝っちまったときに俺を縛りたくないらしい。だからだってよ__」



「そうなんだ__ あの、よかったら私もたまーに桜ちゃんに会いに行ってもいい?」



恐る恐る聞く私に橘くんは優しく笑ってくれた




「あぁ。桜が喜ぶと思う。ありがとう」



初めて橘くんが私の目を見てくれた

それくらい桜ちゃんが大切なんだ伝わってきた





ちょうど電車が来て、私が降りるまで私たちはまた無言だった

でもさっきのように気まずくはなかった




あっという間に私の降りる駅についた





「今日はありがとう」

「あぁ」


橘くんは最後少し笑ってくれた





私はすごく嬉しくてベットに入っても中々寝付けなかった


それくらい今日は私にとって大切な日だった__

3ヶ月前 No.15

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第2章 嫉妬






次の日、学校に行くといつもより冷たい視線を向けられた

疑問に思いながら私は1日、冷たい視線を浴び続けた
今まで通り、授業を受け、休み時間は1人で外を眺め、お昼は1人で食べた。

そしていつも通り家に帰る__ つもりだったがそう言う訳にもいかないらしい






「ねえ、九条さんちょっと来てくれる?」


派手な女の子5人に連れられ私は体育用具室に連れてこられた
みんなバッチリと化粧をしていて、大きな目で私を見つめていた
同じように伸ばされた髪は全員綺麗に巻かれていた。下着が見えそうなくらい短いスカート。何もかもが一緒の彼女たちを私は少し不思議に思った






「ねぇ、九条さん?どういうこと?」


その中でも綺麗で気の強そうな女の子が口を開いた



「なにがですか?」
「どぼけても無駄。昨日、晴哉と教室帰ってきたじゃない。しかも放課後、琉生と2人でいる所を見たっていう子がいるの」

「はい」
「あんたなんかがなんで一緒にいんの?バカなの?確かにあんた顔はいいけど中身空っぽじゃん。いっつも暗い顔ばっかして。あ〜ヤダヤダ。あんたみたいなのにはあの5人はもったいない。だいたい自分の立場考えなよ。」


あまりにも一気にまくし立てられ、私の5日分は喋ったんじゃないかというほど一気に喋られ私は少し動揺した



「ねぇ!?聞いてんの!」
「ご、ごめんなさい」


「あんたのそう言うところが嫌なの!なんかあったらすぐ守ってもらって!」



その瞬間、その女の子は手を振りかざした__ その瞬間、私は頬に強い痛みを感じた__ はずなんだけどいつまでたっても痛くはなかった。その代わり誰かに包まれているような暖かさを感じた
恐る恐る目を開けるとそこには一之瀬くんがいた。
正確に言うと、一之瀬くんだと思う人がいた。 片手で抱き寄せられている状態で胸元しか見えなかった。でもいつも一之瀬くんがしているリングのネックレスがあったからきっと一之瀬くんだと思う




「おい、莉子どういうことだよ。1人相手に5人って多すぎだろ。それより、なんで華美の事殴ろうとしてんだよ」



「それは違うくて…」
「何がだよ。こんな雰囲気で楽しくお喋りしてました。なんて言わねえよな」

「…」


一之瀬くんの言葉にその場にいた全員が反論できずにいた



「1回だけ。1回だけ見逃す。けど2回目はないから。他の女子にも伝えといて。華美の事傷つけたら許さないって」


「なに…よ。なによそれ!!!」





その言葉に女の子は全員走って行った






展開が早すぎてついていけずに私の頭は混乱していた




「華美、俺らのせいでごめんな。怖かったよな。これから絶対にこんなことにならないようにするから」


そう言って一之瀬くんは優しく頭を撫でてくれた





「うん…大丈夫」



男の子に初めて抱き寄せられて緊張してうまく言葉が出ない




3ヶ月前 No.16

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「おーい。蒼空〜華美〜なにしてんだよ〜」



ニヤニヤとしながら現れたのは阿久津くんだった




一之瀬くんはパッと私の肩から腕を外し、なにもなかったかのように阿久津くんに笑いかけていた




「なに〜?もうそんな感じ?」

ニヤニヤと笑う阿久津くんに一之瀬くんは



「そんなんじゃねえよ。悠斗と一緒にすんじゃねえよ」


軽く笑い阿久津くんを軽く蹴った





「あれ?華美、行くぞ?」




先に歩いて行った2人は私を振り向き、一之瀬くんが手招きをしてくれる




「あ、うん」



軽く走り一之瀬くんと阿久津くんの後ろへと向かった


「華美、おいで」


一之瀬くんは私を阿久津くんとの間に入れてくれた





3人で並んで歩き、私の教室へと向かった
ほとんどの生徒が下校していて、学校は静かだった





私のクラスの3年2組に入るとそこには橘くんがいた




「あ、橘…くん」


私が少し戸惑いながら声をかけると橘くんは普段のクールな顔から想像できない焦った顔でこっちを振り向いた





「九条!大丈夫だった?」

「え?」
「お前、呼び出されたんだろ?」
「あ、大丈夫だったよ。」

「なら、よかった」
「ありがとう」



橘くんが私を心配してくれたのが嬉しくて笑顔が溢れた




「琉が女子を心配するって珍しいな…なに?2人ともなんかあったの?」


阿久津くんがさっきと同じようにニヤニヤしながら楽しそうに笑っていた



「いや、別に…?」
「昨日一緒に帰っただけ」


橘くんは平然と答えた



「え…!?」



阿久津くんはすごく驚いた顔をして、一之瀬くんは何だか怒ってように見えた




「九条。今日も送ってく」
「え、いいよ。そんなの」

「いや、ついでだし」
「あ、ありがとう」



桜ちゃんの病室に行くついでに送ってくれるというので私はお言葉に甘えた





「おい、琉。お前には桜がいるじゃねえか」



一之瀬くんはすごく低い声を出し、橘くんの肩を掴んだ



「だからそんなんじゃないって。ただ九条に話があるだけ」



橘くんは一之瀬くんの手を肩から下ろし、そのまま下駄箱へ向かっていった




私も橘くんを追いかけ、教室を出た



「一之瀬くん今日はありがとう。私帰るね。一之瀬くん、阿久津くん」





橘くんはもう階段を降りていて、私が下駄箱に着く頃にはもう靴を履いていた
私も急いで靴を履き、橘くんの半歩後ろを歩いた



「あの、橘くん…今日はそのどうしたの…?」


多分、橘くんは私を送るためだけに声をかけたんじゃないと思う。きっと何かがあるんだと思う。昨日初めて喋ったやつになにがわかるんだ と私も思うけどそう思えてしょうがない。だって橘くんはきっと桜ちゃんがいないのに女の子と2人で帰ろうなんて言わないと思う。





「なにほしい?」

「え?」


いきなりの質問に動揺してしまい、マヌケな声が出てしまい橘くんは眉間にしわを寄せた



「誕生日。なにほしい。女だったら」



「…あ!桜ちゃんの誕生日プレゼント??」
「うん」
「桜ちゃん誕生日まで春なんだ!」

「どういう意味?」
「ほら、名前。桜って春でしょう?それと桜ちゃんってなんだから春って感じしない?ふわってしてて、暖かくて。初めて桜ちゃんに会った時、私桜見たいに綺麗な子だな って思ったの。それで誕生日も春だからとっても桜って名前が似合う女の子だな〜 って」


言い終えた後に、自分が喋りすぎたことに気づきハッとした
恐る恐る橘くんの顔を見上げると顔が少し緩んでいた



「確かに」



やっぱり桜ちゃんが大好きだってことが伝わってきてすごく温かい気持ちになった




「あの、誕生日プレゼント。その子によってほしいと思うのはバラバラだと思うの。」
「うん」

「桜ちゃんだったらお菓子作りに関係するものがいいと思うんだけど、きっと桜ちゃんはだいたいのものは揃ってると思うの」

「確かに…」

「でも、食材はなんか違うと思うの。消耗品じゃなくて形に残るものがいいと思うの」
「うん」


「でもね、きっと桜ちゃんは何もらっても嬉しいと思うの。橘くんが桜ちゃんのために一生懸命考えたものなら」

「…」


「…って、これじゃあ何もわかんないよね!ごめんね!でも本当にそうだと思う…桜ちゃんならきっとどんなプレゼントでも喜んでくれるよ」



「…ありがとう」
「いえいえ。あの、桜ちゃんの誕生日っていつ??」


「4月26日」
「え!?もうちょっと…!」


今日は4月24日。


「あの、もしよかったら私も桜ちゃんの誕生日25日にお祝いしてもいい?」
「は?桜の誕生日26日」

「いや、当日はご家族の人もいるだろうし、橘くんと2人で過ごしてほしいの。私は25日がいい」

「わかった。ありがとう」
「うん。あの、桜ちゃんって何が好き?何プレゼントすればいいかわかんなくて…」


「桜のために選んだプレゼントならどんなものでも喜んでくれる__だろ?」
「あ、そっか」


私の言葉が人に届いていて嬉しかった



「俺、今日はやっぱ桜のとこ行かねえ」

「え!?」

いきなり橘くんは桜ちゃんの病院へ行かないと言い出してびっくりした。
「桜のプレゼント買いに行く」




そういうと橘くんはいきなら反対へ歩いて行った



あまりの橘くんの自由さに思わず笑ってしまった





「あ、ありがとうな。じゃあ」

橘くんは少し振り返ってまた歩き出してしまった

「じゃあね!」


私も橘くんとは反対の方へ歩き出した



電車に乗り、家へつく間、私はずっと桜ちゃんの誕生日プレゼントを考えていたがいいものが思い浮かばない


「あー!もう!どうしよう…」

ふと左を見ると、小屋が目に入った


「久しぶりに行こうかな」


最近留守がちにしていた私の趣味部屋へ入ると、中央のテーブルに大きなキャンバスが立てかけられていた



「あ!香織さん今日届けてくれたんだ」

真っ白なキャンバスはすごく大きくて綺麗だった





「…あ!そうだ!香織さんのところだ!」



プレゼントはあっという間に決まった



3ヶ月前 No.17

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次の日、朝学校に行くと珍しく橘君が朝から来ていると騒ぎになっていた



「ねぇ!琉生くん朝から来てるんだって!」
「うそー!!どこにいるんだろう?」


「ちょっ!琉来てるらしいよ!」
「マジで!?晴とかもきてるかなー?」
「とにかく探そ!」
「いや、その前にメイク!!」




女の子は慌ただしく大変そうだった




5時間目も終わり、残りの授業は6時間目の数学だけになった。
今日も相変わらず休み時間も昼休みも1人で過ごした




「りゅー!!」
「橘くーん!!」


廊下が騒がしい


「??」





どんどんとその声は大きくなっていて、その声はピークに達した
さすがに気になり廊下へと目を向けると驚くほど教室の周りには女の子が集まっていた


一瞬びっくりしたがすぐに自体を把握することはできた
なぜなら彼がいたから。朝から話題の中心の橘くんが___



その彼は教室に入ってきて、何故か無表情でどんどんと私に近づいてくる
ついには私の席の真ん前まできて止まってしまった。女の子の声は止み、代わりにすごく冷たくなった





「体調はいい。大丈夫だ。あと、お前がくるとは言ってない。」




そういえば桜ちゃんの体調を橘君に聞いておいたのは私だった




「あ、よかった…ありがとう」


「あぁ」




そういうと橘君はさっさと帰ってしまった




その後、女の子の冷たい視線は浴びるものの前のように呼び出されることはなかった。



6時間目も無事終わり、私は急いで電車へ乗り、桜町へ向かった。
お花屋さんにで白いマーガレットを包んでもらい、一緒に胡蝶蘭も包んでもらった


本屋さんへ行くとそこにはいつも通り綺麗な香織さんが優しい笑顔で迎えてくれた




「華美ちゃんいらっしゃい。今日も綺麗ね」

「香織さんこんにちわ。この前は大きなキャンバスありがとうございます!これおじいちゃんに」
「いつもありがとう。母も父も喜ぶわ」

「いえ。あの、今日は友達にプレゼントで絵本を送りたいの。」
「あ、じゃあそのお花も?」
「うん!」

「どの本かは決まってる?」
「うん。人魚姫がいいの。『幸せの人魚姫』」



「わかった。可愛くラッピングもしとくね」
「ありがとう」






胡蝶蘭の花言葉は

‘純粋な愛’


桜ちゃんにピッタリだと思った。
それともう1つ花言葉はあって、それは ‘幸福が飛んでくる’
桜ちゃんがたくさんの幸せに囲まれますように、という願いも込めてある





そしてもう1つのプレゼントの 『幸せの人魚姫』


本来の人魚姫はバッドエンド。

大切のために死を選び人形は亡くなってしまった。


幸せの人魚姫は、最後はハッピーエンド。
本来では結ばれなかった人魚と王子様が結ばれる。




自分がいなくなったあと橘君を縛りたくないと言って桜ちゃんは決して付き合わない。
本当は好きなのに。目の前にいるのに。伝えたいのに。
それでも伝えられない。
好きだから。好きだからこそ___


そんな桜ちゃんだからこそ読んでほしい。ひとりぼっちで王子への想いを告げる事が出来ずに泡になってしまった人魚が幸せにわらっているんだって。
桜ちゃんも笑えるよって。




そう伝えたい






「はい、できたよ」




淡いピンクにラッピングされていてとても可愛かった



「ありがとう、香織さん」



「いえいえ。300円ね」
「いつもありがとう!」




この絵本も本当は300円で買える代物ではない。




「また来てね。お友達にもよろしくね」
「うん!」



私は急いで病院へと向かった。

376号室の前へ着くと、少し緊張してしまった





3ヶ月前 No.18

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深呼吸を三回して__



コンコン



「はーい。どうぞー?」
「久しぶり〜」


ドアを開けるとそこには前と変わらない桜ちゃんがベッドの上で本を読んでいた



「え!!華美ちゃん!?うそー!」
「来ちゃった。今大丈夫??」

「え、うん!!あ、座ってて!」


桜ちゃんの言われた通りソファーに座り待っていると桜ちゃんがあの日と同じミルクティーを茶菓子を持ってきてくれた




「ちょうど今日の朝焼いたの。アップルジンジャークッキー」
「とっても美味しそう。ありがとう」


「いえいえ」



優しい笑顔を浮かべた桜ちゃんは真っ黒なブラックコーヒーを飲んだ






「あの、桜ちゃんこれ!!!」



私は胡蝶蘭の花束と香織さんに可愛くラッピングしてもらった『幸せの人魚姫』



「え?」
「15歳のお誕生日おめでとう!!これからもずっとよろしくね。それと、生まれてきてくれてありがとう」



桜ちゃんに伝えたい言葉はたくさんあった。でもとりあえずはこれだけでいい。これから伝えていければいい






「ありがとう。生まれてきてくれてありがとう…か…」



そういうとすごく優しく微笑んでくれた




「とっても素敵なプレゼントと言葉をありがとう。やっぱり華美ちゃんは琉ちゃんと似てる」

3ヶ月前 No.19

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クスッと笑った桜ちゃんは少し悲しそうな顔で微笑んだ



「え?」
「琉ちゃんも私に言うの。毎年。毎年、生まれ来てくれてありがとう____って。本当に2人は似てる」





「本当にありがとう。ねぇ、華美ちゃん胡蝶蘭もきっと色々考えてプレゼントしてくれたんだよね?でもね、華美ちゃんはもう私にたくさんの幸せを運んで来てくれたよ」



きっと桜ちゃんは胡蝶蘭の花言葉を知っているんだと思う

でもどうして桜ちゃんは悲しそうに見えるんだろうか



「この胡蝶蘭、飾っておくね?本当にありがとう。とっても素敵な絵本も」



桜ちゃんは嬉しそうに笑って胡蝶蘭を花瓶に飾ろうと立ち上がった




「ねぇ、桜ちゃん何かあった?」
「え…?」


「なんだか桜ちゃん悲しそう」
「あはは…気のせいじゃない?」


「ううん。きっと気のせいじゃないと思うの。」
「あーあ…隠しきれてると思ったのにな〜…ごめんね、せっかくプレゼントくれたのにこんな変な雰囲気で」
「ううん。大丈夫だよ」

「はは、ありがとう。本当に華美ちゃんは優しいな〜… 本当どうしてこうなっちゃうんだろう…せっかく出会えたのに…ね」
「えっと…」


あまりにも桜ちゃんが悲しそうな声を出すから私にはなんて言えばいいかわからなくなった




「私、あと1ヶ月生きれるかわかんないんだって…あはは、笑っちゃうよね」
「え…?」



あまりに突然で私には信じられなくて時が止まったようだった




「この前やっと外に出れるようになったのにって…でも今思えばあれは死ぬ前の私の最後の自由だったんだと思うの。元気になったからなんかじゃないの。ねぇ、もうなんなんだろう。私ってそんなに悪い事したのかな?」

「もっと華美ちゃんとお喋りしたかった。お買い物だって行きたかった。もっと琉ちゃんと一緒にいたかった。もっと生きたかった______」


桜ちゃんは涙を流した。



2ヶ月前 No.20

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生きてたら誰もがぶつかる 死 と言う大きな壁。
私だってわかってた。いつかはこの大きな壁にぶつかるって。でもこんな形でこんなにもはやくぶつかるなんて思ってなかった。




「桜ちゃん、大丈夫。大丈夫だから。大丈夫。大丈夫。大丈夫」




なんて声をかければ良いかわからなくて、私の口から出るのは同じ言葉ばかり。
口から言葉が溢れ、目からは涙が溢れる。




私が泣いちゃダメだってわかってる。辛いのは桜ちゃんの方だから。でも一度溢れてしまった涙は止まってくれない





「うぅー…」



2人とも時間を忘れて声を上げて泣いた。ひたすら。何も考えずに。





「わたしっ、なん…て伝えればいい…の…どうやって…琉…ちゃ…ん…に言え…ない…よ」



桜ちゃんの口から出たのは橘くんへの想い




「わたし…琉ちゃんに…言えな…いよ…置い…ていっちゃうのっ…なの…に好き…なのっ!」



嗚咽で途切れ途切れに言葉を吐き出した。きっと桜ちゃんは死ぬことへの恐怖と同様に、橘くんに知らせることの恐怖も大きいんだと思う





「さくっ…らちゃ…ん」





わたしもつられて涙が次々に溢れもうどうすることもできない




「どうしたんだよ…」






そこには橘くんが立っていた




「琉…ちゃんーーーー!」




桜ちゃんは何かが切れたように大声をあげ涙を流した。さっきのように何かを押さえつけるようにではなく、思いっきり。



橘くんは見たことないくらい焦っている顔をして急いで桜ちゃんの元へ駆けつけた



「ん?どうした?」


そう言って橘くんは優しく桜ちゃんの頭を抱き寄せた。
桜ちゃんは橘くんの胸で声を上げて泣いた。



いつもと同じ優しい笑顔__ のはずなのにその笑顔はどこか悲しそうだった




今から橘くんに話すんだと思い、私は席を外すことにした。




「あ、 の…わたっ、わたし…かえるね…」



嗚咽で上手く喋れずに途切れ途切れに言葉をつないで私は立ち上がった




「九条。せっかく来てくれたのに送らなくてごめんな。ありがとう」

「う、ううん。大丈夫…だよ…」



精一杯の作り笑顔をしてわたしは病院を後にした。


きっとこの時のわたしは作り笑顔なんか浮かばれてない。






涙で前がよく見えない。
重たい足を引きずり、電車に乗り私は自分の街へと戻る。




最寄り駅に着き、改札を出る頃になっても私の涙は止まってくれない




「華美!」




暖かい声に呼ばれ、それと同時に暖かい手に腕を引っ張られ、暖かい体温とシトラスの香りに包まれていた。






「華美、どうしたんだよ…」





心配した声色でぎゅっと優しく、強く抱きしめてくれる彼は__今1番会いたかった人。




「そ…らくん」



その暖かさに、優しさが、苦しさ、悲しさ、寂しさを溶かしてくれるような気がして私は背中に腕を回した






「大丈夫だから。大丈夫」




そう言って優しく頭を撫でてくれる。何度も何度も。私が名前を呼ぶたびに。




私が泣き止む頃には赤かった空も黒くなり、夕日は沈み、三日月がのぼっていた。





「あ、ごめんなさい」





正気に戻り、恥ずかしくなり、パッと離れた




「もう大丈夫か?」



優しい笑顔で顔を除きこんでくれる一之瀬くん。




「うん。ありがとう。」

「いえいえ。送ってく。家は?」
「え!いいよ。ごめんなさい、迷惑かけちゃって…」
「迷惑なんかじゃないし。こんな暗いのに1人で返せるはずないだろ?送らせて」


「ありがとう。じゃあ送ってもらおうかな」




お言葉に甘えて、送ってもらうことにした私は歩き出した
一之瀬くんは少し間を空けて隣を歩いた




「あの、どうして一之瀬くんは「なんで一之瀬くんなの?」


「え…?一之瀬くんでしょう?」
「いや、さっきそらくんって呼んでくれたじゃん。」
「え!?うそっ!」
「本当。そらくんって泣きながら。」
「うそ〜…」



あまりの恥ずかしさに顔が赤くなっているのがわかる




「あはは、華美真っ赤じゃん。これからもそらって呼んで」
「いい…の?」
「当たり前。むしろ呼んでほしい」



「じゃあ…そらくん。」
「なんか華美に名前で呼ばれると嬉しいな。」


そういうと蒼空くんは優しい笑顔を浮かべてくれた




「あ!さっき華美なんか言いかけてたじゃん?なんて言おうとしてたの?」
「どうして蒼空くんはここにいるの?」



私たちの中学校は2つの小学校の子達が通う。私たちの小学校は南で蒼空くんたちの小学校は北で正反対だ





「なんか、華美の最寄り駅がここで向かいに行け って琉から電話きた」

「そうだったんだ…」



きっと橘くんは気を使ってくれたんだ。自分が送れなかったから危なくないように代わりに蒼空くんを呼んでくれて。それときっと気づいているんだ。私が蒼空くんを好きなこと__

2ヶ月前 No.21

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「じゃあ、次は俺から華美に質問していい?」
「ん?」


「なんでそんな琉と仲良いの。一緒に帰ったり、今日だって。」



蒼空くんは楽しくなさそうな顔をしていた




「えっと、私の大好きな町で女の子とお友達になって、そのお友達がたまたま橘くんの幼なじみだったみたいで…」

「あ、桜?」
「うん!蒼空くんもお友達なの?」
「同じ幼稚園と小学校だから昔はよく遊んでたよ」


「そうなんだ!」
「はぁ〜…よかった…」

「ん??なにが?」
「ん?こっちの話」


蒼空くんは嬉しそうに笑って優しく頭を撫でてくれた__

2ヶ月前 No.22

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次の日、朝起きると目は腫れていてすごく不細工な顔をしていた



「ひどい顔…」



氷の冷たさが心地よかった
目の腫れがひいていくと同時に私は昨日のことを思い出した


あのあと、桜ちゃんは橘くんに話したのかなと心配だった
本当は休んでしまいたかったが父や母が心配するのでしょうがなく学校へ向かった
学校へ行くと、いつも通り冷たい視線は浴びるが前のようなあからさまな嫌味は言われなくなった。香奈ちゃんや日向君が卒業する前のように私に平和が訪れた



3時間目が終わり、午前中最後の休み時間橘君が教室にやってきた




「りゅう!」


昨日のようにたくさんの女の子が橘君の名前を呼んだ




その声が聞こえてないかのように反応することもなく真っ直ぐ私の元へやってきた


「あの、話あるんだけど。4時間目、いい?」
「あ、大丈夫」


私は橘君の後をついていき、向かったのは蒼空くんとはじめて出会った屋上だった。
橘くんは柵にもたれて座り込んだので隣に私も座り込んだ




「昨日は悪かった。送らなくて」
「全然、大丈夫だよ。蒼空くんを呼んでくれたの橘だよね。ありがとう」
「おう。九条って蒼空のこと名前で呼んでたっけ?」
「あ、昨日からなの…」
「へぇー。あのさ、桜から昨日聞いたよな」
「うん…」

「お前がどこまで聞いたかわかんねえけど、桜昨日はまともに喋れる状況じゃなかったしお前も直接桜から聞きたいと思うけどもしかしたら桜に会えないままになるかも知んねえから俺から話すけ「会えなくなるって!?死んじゃうの!?いなくなっちゃうの!?」


次々に涙が溢れてきて、橘君の腕を掴む手に力がこもる




「落ち着けって。」


橘君話す私の頭を撫でてくれたが私の涙は止まることはなかった



「別にまだ死んだ訳じゃねえ。ただ、しばらく会えなくなるってだけ。」
「本当…?」
「あぁ。日本の医療じゃ桜の病気は治せねえからフランスに行くらしい。あっちの方が何かといいらしい。だから短くても1年は会えない。下手すると一生会えねえ。来月の5日にフランスに飛ぶらしい」



2ヶ月前 No.23

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「フランス…?」
「あぁ。余命は1カ月だって言われたんだけどそれは日本の医療技術では。世界一の医療技術を誇るフランスの有能ドクターに手術してもらって成功するかもしれねえ。でもその確率は50%。
だから桜はそんな成功するかもわからねえ手術を受けたくなかったらしい。当然金だってかかる。これ以上親に迷惑をかけたくないって。あとは一度も行ったことのない場所で死ぬぐらいなら生まれ育ったこの街で死にたいらしい」

2ヶ月前 No.24

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「色んな不安が重なって、あいつは1人で悩んだらしい。あいつ、お前が初めて病室に来た日の夜に聞かされたらしいんだけどずっと1人で抱え込んでた。結局は日本で治療を受け、死ぬ事を決めたらしい。でも九条の顔を見て決心が鈍ったらしい。死にたくないって思ったらしい」



あんなに小さな体でそんなに大きなことを1人で抱え込んでたと知り、溢れ出ている涙は増え、息もうまく吸えなくなる
橘くんは大きな手で背中をさすってくれた





「本当は誰にも言わないつもりだったらしい。俺にも。九条にも。黙って逝くつもりだったらしい。でも昨日お前にあって無理だって。死にたくないって思ったらしい。俺も正直、聞いた時は絶望的だって思ったよ。どんな辛い治療もずっと耐えて来た桜が生きる事を諦めたんだ。でも、俺は生憎桜の好きなようにしろなんて言ってやれるほど優しくもねえし、理解ある男じゃねえ。桜にはどんなに辛いことでも俺は桜が生きてくれるならなんだっていい。どんなにどん底でも桜とならどこだっていい。だから俺はフランスに行ってほしかった。50%しか成功率はねえけどそれでもその50%に俺はかける。何もしないで死ぬよりも、50%にかけた方がいい。運が良かったら成功、運が悪かったら失敗。こんな博打うつもんじゃねえってわかってるけど生きる可能性があるのに黙って桜を死なすなんて俺には無理だ。どんなに桜にひでえこと言ってるかわかってた。でも俺は桜にフランスに行けって言った」

2ヶ月前 No.25

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「でっ、でも、たちばな、くん…は、そっ、れでいい、の?会えないま、ま死んじゃっ、うかも、しれ、ない」


嗚咽でうまく喋れない。





「それでもいい。そん時は天国で待っといてもらうよ。死んだらずっと一緒だしな。生きてたら帰って来たらずっと一緒だし。どっちにしろ俺らはずっと一緒にいるんだし離れてる間が1年か何十年かって違いだしな」


橘君の言葉に迷いはなかった





「たち、ばなくんは強いね…」
「いや、強くねえよ。俺だってすげえ不安。桜なしの人生なんか考えらんねえし。でもまぁ、桜は死なねえよ。絶対死なねえ。」



「だよね」
「あぁ。だから俺らは桜を信じて待っとけばいい。」
「うん…」
「正直、俺も桜なしで1年も生きられるか自信ねえけど桜もあっちで頑張るし我慢する事にした。あいつ、俺に遊びにくんなっていうんだよ。行きたくなくなるから会わねえって」

「そっか…じゃあ私も会えないね…」
「まぁ来年なったらいつでも会えるしな。病院以外で」
「そうだね!色んなところ遊びに行こう!」
「あぁ。」

「じゃあお誕生日なのに会えないんだね…」
「いや、毎日会いに行く」
「え?でも…」
「桜にバレなかったらいいだろ。桜が寝てから会いに行くよ。病院側には特別に許可してもらってるし。」
「いいね!」

「俺らさ、生まれてから14年間。ずっと2人の誕生日は一緒にいるんだよ。俺は死ぬまで続けるつもり。」




橘君が桜ちゃんを本当に大好きってことが伝わって来た



「いいね。そういうの。すごく素敵」
「そうか?」
「うん。とっても」

「まぁ、そういうことだから。九条色々ありがとうな。桜もお前のおかげで色々助かってる」
「ううん。私の方こそありがとう」
「あぁ。俺行くわ。」


「うん。橘君、お誕生日おめでとう」
「ありがとう」

橘くんは片手を軽くあげ、屋上を後にした

桜ちゃんのお誕生日であり、橘君のお誕生日である今日。
2人に幸せが訪れますように__

2ヶ月前 No.26

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教室に帰って、授業を受けれる気がしなかったので今日は帰る事にした。荷物を取りに行き、教室を後にした。靴を履き替え、校門へ向かっていると腕を掴まれた



後ろに振り向くと蒼空君が焦った顔をしていた



「華美、荷物なんか持って何してんの?帰るの?」
「うん。」
「なんかあった?体調悪いのか?目、赤いけどなんかあったのか?」
「大丈夫だよ。ちょっと疲れただけ。きっとさっき目にゴミが入ったからだと思う」
「大丈夫か?」
「うん。私、帰るね」
「送ってく。」


「大丈夫。ありがとう」



今は1人になりたくて、蒼空くんを断って1人で帰ろうとするとまた腕を掴まれた。

「蒼空…くん?」


振り返ると蒼空くんではなく、橘くんがいた。



「九条、大丈夫か?」
「あれ?橘くん帰っちゃったんじゃないの?」
「いや、中庭に昼寝しに行こうと思ったら九条がまだ泣いてるみたいに見えたから」

「大丈夫だよ。わざわざありがとう」


「…まだ?」


私たちの会話を黙って聞いていた蒼空くんが口を開いた



「なにが?」
「琉、まだってどういう事?」
「そのまんま。さっき2人でサボってるとき泣いてた」
「なんでだよ」
「内緒」
「お前っ!」



一之瀬くんは橘くんの胸倉を掴み、2人は睨み合っていた




「はい、ストップ」



そこに朝比奈くんがやってきた




「琉、それはさすがに煽りすぎ」
「だって蒼空がもたもたしてるから背中押してやんねえとなって思って」

「いや、それでお前らが喧嘩してどうすんだよ。せっかくの誕生日に何したんだ」
「いいよ、別に。俺は桜に会えたらなんでもいい」
「お前、本当に桜一色だな。ほら、蒼空もわかってんだろ?琉は桜一筋だって。他にもってかれたくねえならさっさと自分のもんにしろ。」

「うっせえな。わかってる。」


そういうと橘くんは私の手を掴んだ



「華美、行こう。」
「えっ、あ、うん…」




「琉、ありがとうな」
「あぁ」





蒼空くんはさっきまで喧嘩していた橘くんにお礼を言って、私の手を掴み学校を出た



「あの、喧嘩してたけど仲直りしないままきて大丈夫なの?私1人で帰れるよ?」


「いや、喧嘩じゃないから大丈夫」

橘くんは優しく笑って、掴んでいた手を離して、手を握ってくれた



男の子と手を握るのは初めてで、しかもいつも楽しい話で笑わせてくれる蒼空くんはなにも喋ってくれてなくて余計に緊張して家までのたった数十分がすごく長く感じた。





「蒼空くん、わざわざ送ってくれてありがとう。」


お礼を言い、私は家に入ろうした_





「華美」





けど蒼空くんに呼び止められ、振り向くと真剣な表情の蒼空くんがいた




「あのさ、華美。俺と付き合って」




「え…?」


「俺、初めてあった日から華美に惚れてた。俺と付き合ってよ」
「本当…?」
「あぁ」


「私も…蒼空くんがすき」

「よかった」



蒼空くんは昨日のように優しく抱きしめてくれた




「これからよろしく」
「こちらこそよろしくお願いします」




「俺はもう帰るけど今日はゆっくり休めよ?」
「うん。ありがとう」






その日、私は蒼空くんのことを考えては胸を踊らせなかなか眠りにはつけなかった__

2ヶ月前 No.27

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第3章__ 別世界



次の日学校に行くと、また冷たい視線を向けられた。今日はあからさまに敵意がむき出しで、どこからかは私への不満まで聞こえてきた


「あーあ。またあいつ〜?なんなの。琉だけじゃなくて晴哉と蒼空まで?あいつのどこがいいんだよ」




きっと、昨日のやり取りを見られていたんだろう。確かにお昼休みだったし、校門の前であんなにもめていると目につくだろう。しかもあの人気な3人だから。


「どうする?悠人と碧まであんなやつがいいとか言いだしたら」
「いや、もうそれはないでしょ〜?」



みんな楽しそうに笑っていたが私にとっては楽しい話でもなく怖かった
久しぶりに向けられる自分への敵意。



それからお昼休みまでをなんとかすごしたが、休み時間のたびに違うクラスの子や違う学年の子たちもわざわざきて大変だった


お昼休みは1人でいれるところを探そうとして、今日の朝買ったパンをもった時__



「華美、おはよう。」


そう言って私の前の席に座ったのは蒼空くんだった。


「ここだれ??あ、山本か。山本ー、席借りる〜」
「うわっ!蒼空久しぶり!座ってもいいけど、また遊べよ〜」
「りょーかい」



こうやってだれとでも喋れる一之瀬くんはやっぱり私の憧れ__ なんて言ってる場合じゃない…



「こ、ここ…で?」
「嫌…だよな…ごめんな。今日だけちょっと我慢して」
「いや…じゃないです…」


蒼空くんが申し訳なさそうな顔をするから嫌なんて言えない


たくさんの子がたくさん教室に集まって来て大変なことになって来る人が増えるたびに私もどんどん喋らなくなり食事どころじゃなくなった




「そういや、華美って兄貴たちの事知ってるんだよな??」
「あ、うん!1年生の時に香奈ちゃんに助けてもらってから…」
「へぇ〜…香奈強そうだもんな〜」
「あはは、香奈ちゃんと日向くん元気??」
「華美、やっと笑った」


一蒼空くんは優しく笑って、頭を撫でてくれた



その瞬間、たくさんの女の子の悲鳴が聞こえた



蒼空くんは私の頭を撫でながら続けた



「華美、俺のせいでいっぱい嫌な思いさせて来てごめんな」
「ううん」
「でも、もう今から大丈夫だから。なんかされたらすぐいってきて?」
「うん。ありがとう」



「よかった。あ、兄貴と香奈に華美と付き合ったって言ったら家に連れてこいってうるさいんだ」
「あは、なんか嬉しいね。また会いに行ってもいい?」
「あぁ。いつでも」



一之瀬くんはとっても優しい笑顔で接してくれた




きっと、このころが私の中での1番幸せな時だ。

この約束もきっと、いつか果たせると思ってた____

1ヶ月前 No.28

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それからの日々は毎日が幸せで、幸せであふれていて私にはもったいないくらいだった。
あの日から蒼空くんの行った通り何も言われなくなった。



橘くんとは桜ちゃんの話をして。

朝比奈くんはお兄ちゃんのようでよく話を聞いてもらっていた

阿久津くんはいつも忙しそうだったが会うたびに声をかけてくれた

五十嵐くんとは2人で神経衰弱をよくした


蒼空くんとは毎日、お昼休みを過ごした。


そんな平穏な日々がずっと続くと私は信じて疑わなかった。




ただ、それは突然にやってきた





「華美、アメリカへ引っ越すことになった。」


幸せな日々にはあまりにもあっさり終止符が打たれた




それは、7月の中旬。
初夏になり、暑くなってきて蒼空くんとは屋上で食べるのをやめて、中庭の木の陰で食べていた頃。


久しぶりに帰ってきていた両親に大切な話があると言われた





「えっ?」



突然のことで頭が回らない





「お父さんたちの研究しているプロジェクトがアメリカの研究院と合同ですることになった。そこでお父さんとお母さんと助手の2人でアメリカの行く事になったんだ」

「私…も?」
「えぇ。お兄ちゃんもお姉ちゃんもそれぞれ暮らしているし、華美1人を日本に置いていかないでしょう?今までも全然帰ってこれていないけど国境を越えることになったらまた別の話よ…何かあったら大変でしょう?」




「引っ越すのは8月の1日。それまでに荷物をまとめておいてくれ。あっちにも日本人学校はある。10年くらいは日本には帰ってこないが長期休みとかなら帰ってこれるからな?」


あまりにも突然なのに話はもうまとまっていてついていけない



「転校するの?」
「そういうことになる。お父さんたちのせいでごめんな」
「ごめんなさい」


お父さんもお母さんもすごく悲しそうな顔をするから 現実なんだと思い知らされる




「だ、大丈夫だよっ!私は大丈夫!さっそく荷物まとめてきちゃうね!」




急いで私は自分の部屋へ駆け込んだ





1ヶ月前 No.29

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パタン__

妙にその音が寂しくて、ドアにもたれかかり座り込んでからうまく体に力が入らない



「どうしよう…もう15日しかないの…どうしよう…蒼空くん…」


あまりにも急で考えてもいなかった蒼空くんとのわかれ。

「なんて言えばいいの…」







次の日、眼が覚めるとあまりに寝ていないせいで目は赤くなっていた

一晩中悩んだ。


それでも同じ答えにしかたどり着かなくて、別れるなんて無理だった


でも、それはあまりにも我儘で言えなかった
それでも残りの少ない時間を蒼空くんと過ごしたくて、学校に向かった





学校に着くと、珍しく朝から来ている五十嵐くんを見つけた





「あっ!かほりんおはよ!」
「五十嵐くん、おはよう。朝早いね」
「昨日5時に寝たから6時に目覚めたから久しぶりに朝から来てみた!」
「ぐっすり眠れたね。」
「あぁ!」



「おーい!碧!ゲームしようぜ!」

「おぉ!!!!それ、新作じゃん!!じゃあね、かほりん!」



五十嵐くんは爽やかな笑顔を浮かべ、お友達のところは走っていった




私も教室へ行き、席に座り窓からグランドを見ていた



その間もずっと蒼空くんのことを考えていた。蒼空くんはなんて言ってくれるんだろう…




そんなことを考えているといつの間にかお昼で、さっきまでずっと考えていた蒼空くんが来ていた



「華美!中庭行こう」
「うん!」



いつも通り、中庭の木陰でお弁当を食べていた



「…てる?華美!」
「へっ!?」


「さっきから華美ずっと上の空じゃん。なんかあった?」
「え?気のせいだよ!ごめんね!」
「まさかなんかされた?」
「違うよ!そんなのじゃないの!」
「そっか。ならいいや。」



蒼空くんはいつもの優しい笑顔で頭を撫でてくれた

1ヶ月前 No.30
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