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-昊のあすなろ-

 ( 初心者のための小説投稿城 )
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洗濯蟻 @arinohito ★iPhone=n7Rebp7mCv


【あらすじめいたモノ -この小説は-】

『重篤ニンジャヘッズ(にわか)でブロンティスト(にわか)で┌(┌ ^p^)┐(にわか)な半ヲタ男性が車に轢かれそうな子供を助けて死んで別世界に転生しようとしたら本当に異世界に行けちゃって何故かモフモフなネコミミ少女になって妙にチートめいた装備で武装した商船(笑)の船長となってその愉快な仲間達と一緒に浪漫を追い求めつつ宇宙を駆けずり回って荷物を配達したり暴走したり戦争に巻き込まれたり命を狙われたり恋に落ちたりしながら尻尾をモフモフしたりします』


2年前 No.0
切替: メイン記事(33) サブ記事 (29) ページ: 1


 
 

洗濯蟻 @arinohito ★iPhone=n7Rebp7mCv

昊のあすなろ ~ep:0~


???:___さて、話を始める前に、一つ問題。


真っ白な部屋の中。其処におわします真っ白な人影が自分を見下ろす。


???:3つ。3つの単語。何でも良い。頭に思い浮かべて。


3つの単語…ねぇ。ふむン…?


頭をカカッとスパークが走る。

『アイエエエ』
『ニンジャ!?』
『ニンジャナンデ!?』

プツン。

???:真面目にやれよ。あくしろよ。

アッハイ。

『きた!盾きた!』
『メイン盾きた!』
『これで勝つる!』

プツン。

???:真面目にやれってば。

アッハイ。

『あなたが』
『コンティニュー』
『出来ないのさ!』

プツン。

???:あの…ちょっと?

アッハイ。

『アイムシンカー』
『トゥートゥートゥー』
『トゥトゥー』

プツン。

???:あの、

アッハイ。

『亜空の流れ』
『その果ては』
『何色か?』

プツン。

『ねこ』
『巫女』
『れいむ』

プツン。

『抱きしめて!』
『銀河の』
『果てまで!』

プツン。

『いるさっ!』
『ここに』
『ひとりな!!』

プツン。

???:もうやだコイツ。

ドッソイスイマセン。

???:まぁ、貴方の構成要素は大体分かったわ。

あれ?おにゃのこ?

???:…そうよ。何か問題でも?

問題にい。

???:…こほんっ。改めて説明するわね。

手短にね。

???:私のミスで貴方が死んだ。お詫びに転生どうぞ。

キタコレテンプレ。

???:貴方の知覚濃度に一番合ってるのが『こう』なんだけど。

そうかそうか。つまり君はそう言う奴なんだな。

???:…なんも言えねぇ。

大した事ねぇな、神様ってのも。

???:貴方の知覚濃度がそうさせてるのよ。私だって不本意だわ。

腹に据えかねるわね。

???:うるさいうるさいうるさい!貴方と話してるとなんか知らないけどこっちまで思考侵食されるわ!

よかったじゃん。

???:良くないわよ…もう嫌だよ…。

こんなのってないよ。あんまりだよ。泣き顔カワイイ。

???:…こほん。改めて説明します。貴方は私のミスで死にました。死ぬ前の事覚えていますか?

あい、覚えています。車に轢かれそうなおにゃのこを助けました。そして轢かれて死にました。おにゃのこは無事でした。

???:それが私のミスです。本来は助かるはずでした。

ノートに何か溢したとか?

???:単純に名前の書き間違いです。

仕方ないね。

???:お詫びに、貴方の好きな要素を含む世界へ転生させようと…。

それで先の問答を?

???:そうです。本来なら3つの単語から要素を絞り込むのですが、あの連発要素でほぼ完全に抽出が捗りました。

言いたい事は分かる。ヨツンヴァインになればいいんだろ?

???:違うわよ。世界観固定の為に改めて単語を5つ指定して貰いたいの。これで貴方の存在情報が向こうに上書きされる。つまり転生出来るって訳。

アッハイ。やります。行きます。

『ケモロリ万歳』
『板野サーカス』
『スペースオペラ』
『忍者と騎士』
『┌(┌ ^p^)┐』

???:あ?!ちょっと最g___、


プツン。

2年前 No.1

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2年前 No.2

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昊のあすなろ ~街で:2~


何だかんだで街に着いた。何だか人に溢れている。お昼時か?


どうやら、この世界はケモナーの天国らしい。


猫めいた人々が行き交い、更にはロボットめいた人や宇宙人めいて様々な造形をした者達も居る。自分の服装も気にされて居ない様だ。

取り敢えず、世界観を見る為に、ぶらぶらと歩いてみるか。


アスナ:(何コレ凄い)


見た事無い文字なのに、何が書いてあるか何となく読める。言語とかも大体同じ感じ。何て言ってるか何となく判る。簡単な英語を聞いている感じだ。

案外、やって行けそうな感じがする。

カバンの中に財布があると言われ、財布を開いてみた。それなりには入っていると思う。

……大体この辺りも元の世界と同じらしい。硬貨や紙幣の姿形は異なるが、単位は似た様な物だ。

道端のベンチに座り、辺りを見渡す。

んー。ドラクエとかFFとか、そう言ったファンタジー系のゲーム的な世界観の匂いがする。文明は地球より数倍進んで居る様だ。オホシサマ=センソウにも近いか?…魔法やフォースが使える人が居ても可笑しく無さそうだ。

どうやら、それなりに大きな街らしい。今居る場所は市場だとおにゃのこ神が説明した。まぁ、下町的な感覚がある。ランクとしては下の上。

こんな場所に良くちまっこいガキの泥棒が出るんだよな。

はは、まさか。


???:泥棒だ!誰か捕まえてくれぇ!!


………出た。ナチュラルに。フラグ回収乙。

見ると、見るからに泥棒猫と言った様相の、猫の獣人の子供(多分男の子)が、小さいカバンを抱えてこっちに駆けて来るではないか。その後を多分カバンを盗まれた人と思しき獣人が息を切らして走っている。


……やれやれ。

こんな状況になってしまったら、止めずには居られないじゃないか。

俺はガキが目の前を通り過ぎる時に、足を突き出してやった。


その結果。


見事に相手が躓いてコケた。ハデにカバンの中身をブチ撒けて。それはもう見事なコケっぷりだ。感動すら覚えた。カメラがあったら写真に収めたい所だが、生憎カメラは無い。

ベタな展開だねホントに。マンガか何かの展開だよ。

俺は立ち上がり、コケた泥棒猫が頭をさすって起き上がろうとした所を、ネット受け売りの護身術を応用し後ろ手を拘束して組み伏せた。

…全く___、


アスナ:一瞬の油断が命取り。インガオホーだ。お前調子ぶっこき過ぎてた結果だよ?


俺がそんな事を呟いている内に、鞄の持ち主が息を切らしながら追い付いてきた。

???:__はぁ、はぁ、ふう…、…捕まえてくれたか。ありがとよ、嬢ちゃん。

相手がそんな感じの言葉を言ったのが理解出来た。

アスナ:それほどでもにい。

泥棒猫の腕を取ったまま立ち上がり、相手の前に突き出す。泥棒猫のガキも観念した様子だったが、俺は内面、これまた流暢に異世界の言語を話せた事に驚いていた。

???:調整完了よ。大分時間が掛かっちゃったわ。

脳裏にテレパシーめいて響く声。有難い。

この後の流れもベタな物だった。この泥棒猫には付近の店も多大な迷惑を被っていたらしい。

相手の猫おっさんがジュースを奢ってくれると言う約束をしたが、どうやらこの猫おっさんは『クラックリット』と言って、近くで酒場を経営しているらしい。

アスナ:鞄を盗まれたのは治安案件では?俺は深い憤りに包まれた。

クラックリット:ハハハ!最近不景気でねぇ、よくああ言う輩が出るんだ。この通りは近所じゃ治安が良い方さ。

アスナ:治安重点…。

俺は少し唖然としながら、クラックリットさんに付いて歩いた。

クラックリット:そう言や嬢ちゃん、この辺じゃ見ない顔だねぇ?旅の者かい?

アスナ:俺はただの通りすがりの遠くから歩いて来た者。初めてこの辺りに来たから、地理とかも判らない。

クラックリット:アハハ、凄い『訛り』だな…。余程遠い場所からのお客様と見える。酒場は色々と情報が集まる場所だからな。役に立つぜ。

アスナ:有難み倍点な。

街中を歩いて行くと、寂れた西部劇の様な酒場に着いた。

クラックリット:着いたぜ。ここが俺の店だ。

アスナ:もう着いたのか。実際速い。

目の前に立つ建物は、何処となくウェスタンなアトモスフィアだった。

2年前 No.3

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2年前 No.4

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2年前 No.5

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昊のあすなろ ~ステーション:5~


アスナ:ホーテルさん、有難う御座いました。

ボウ:すまねぇな、突然押しかけて。

ホーテル:良いのよ。久々の仕事だもの。少し張り切っちゃったわ。

ふふふ、と目を細めて笑うホーテルさん。……そう言えば彼女の口はどこなんだ?

ボウ:張り切ったって…まさか?

ホーテル:法の抜け道ってヤツよ。ふふふ、後からのお楽しみね。

アスナ:アッハイ。

ボウ:料金は?

ホーテル:出世払いで。少し負けておくわ。

ガリガリと節目が回転する。タダにはしない辺り、彼女も商売人って事か。俺の免許証なので本人が料金を支払う必要がある。

ホーテル:あ、商船を買うならステーションに行くと良いわ。最近何隻か新しい船が入ってきたのよ。

ボウ:おお、そりゃ僥倖だ。

ステーション…おにゃ神曰く、宇宙港や造船所などの施設がターミナルめいて一緒くたになった施設で、物流の最先端に位置する場所らしい。払い下げジャンク船を扱うエリアもあって、其処に何隻かの艦船が売られていると言う。

ボウ:じゃあな。また何かあったら連絡するぜ。

アスナ:ドーモ…。

ホーテル:ええ、また来てね。儲け話期待してるわよ。

ホーテルさんに手を振って別れを告げ、裏路地を歩く事数十分後。吹く風に若干磯の匂いを感じる頃、巨大倉庫の前に自分達は居た。ジャンク船を扱う施設の管理人の案内で、倉庫の奥にある鉄屑置き場へと向かう。

???:イヤー、お客サン運が良いネ。取れ立てピチピチ入ッタばかりヨ。

何処か胡散臭いアトモスフィアを放つ同族の青年の後に続いて歩く。倉庫の前には大小様々な飛行機械、宇宙船が留められていた。

ボウ:ウーフォ、お前の見立てで一番良いのはどれだ?

ウーフォ:アー、一番イイのね。アレね。デカイ、カタイ、ツヨイね。

ウーフォと呼ばれる青年が指し示した先には巨大な船…と言うより小型の戦艦が鎮座していた。

ウーフォ:装備ゴリゴリの払い下げ品ネ。型落ち品だけど品質イイヨ。デカイ、カタイ、ツヨイね。

アスナ:色も黒っぽいのでダークパワーが宿ってそうで強い。

威風堂々たるその容姿。古びた装甲には歴戦の印が見て取れる。黒くて硬くてデカイ。ただしコレを商船とするにはちょっと…。

ウーフォ:ダークパワー?ああ、暗黒物質エンジンネ。アレはスゴイよ。パワー違うヨ。ゴリゴリよ。エンジンだけならアルよ。見てくネ?

ボウ:先ずは船だ。その後でも良いだろう。

ウーフォ:アイアイアイ。畏まったでゴザル。

ゴリゴリした戦艦の脇を通り過ぎ、次の候補へ。

ウーフォ:アアーコレ!コレスゴイよ!小型高出力ネ。シールドジェネレーター搭載型よ。

銀白色の流線型が美しい。さっきの戦艦とはまるで違う。

ウーフォ:コレスグ動くヨ。スグ動くけど中身ボロね。内装クソよ。シールドジェネレータースゴイけど中身ボロならボロクソね。

ボロクソと来たか。惜しいな。歩みを止めずに通り過ぎ、次の候補を見に行く。周囲に並ぶ舟達を見回す。大きいの小さいの。ゴツいの長いの丸いの。色々と並ぶその中で。

アスナ:……お?

その中で、ふと一隻の艦船が目にとまった。艶消しされた灰色の、角張った機体だ。ボウとウーフォは宇宙船の内装について話している。俺は二人の元を離れ、その角張ったデザインの機体の元へ歩み寄った。三胴の機体。上から見ると漢字の『丗』とロシア語の『Ж』を組み合わせた様な形だ。中心から左右に翼が伸び、長方形のコンテナ部分にフロートめいて繋がっている。

ウーフォ:オオー。お客サンシブい趣味ね。コレレア物ダヨ。もう殆ド生産してない型ネ。

ボウ:…こいつァ珍しいな。オンドゥール級三胴哨戒艦か。この型は中距離輸送用に改装した奴か?

ウーフォ:ソウソウ。エイパンサーブルからベアムーダ宙域の物資、人員輸送受け持ってたネ。歴戦のベテランヨ。

ボウ:第二次大戦下のか!?

ちんぷんかんぷんに会話する二人。会話を掻い摘み、おにゃ神の脳内解説も加えて整理すると、これは数十年前の大戦下において開発された三胴哨戒艦であり、何回かの哨戒任務に就いた後、輸送用に改装され戦線の最前線へピストン輸送めいて兵員と物資を送り続け、戦線を終戦まで維持し続けたと言う。

…擬人化したら運の値が高そうだ。

ウーフォ:この船ニハ名前が有るネ。ココ見るよ。

ウーフォが中央の船体の横に回り、船体を指差す。其処には逆様にしたハートを紅いセクシーな唇が加えている意匠のマークと、その後ろに続く船名が掠れたペンキ字で書かれていた。

『我らの愛人(ミス・トレス)』号。

こちゃこちゃした筆記体の現地語だ。戦地では戦艦や飛行機やらの兵器に女性名詞を付けて愛称で呼ぶと言うが。我らの愛人とは。地球語(?)にも同じ様な意味で同じ様な読みの単語があるのは偶然か。

ボウ:コレにするのか?

アスナ:気がひゅんひゅん行く。コレにする。

そう言って機体を撫でてみた。日光に照らされてやんわりと暖かく、重厚な装甲の質感が手に馴染む。

ウーフォ:愛人、身体ガタピシ来テるね。何しろゴリゴリのベテランだし。エンジンもダメダメね。飛べないカモ。武装も外して売っちゃたネー。航行用コンピュータまで中古ね。

ボウ:…何とか出来るか?

ウーフォ:難しいネー。従兄弟の改装屋紹介スル?ヤスイ、ハヤイ、アンゼンね。腕は確かヨ。

そう言って胡散臭く笑いながら右手でTELサインするウーフォ。

ボウ:…そうだな、お願いしよう。…ああ、そうだ!さっきのエンジンの件だが……。

ウーフォ:オー、そだッたヨ。案内スルから着いて来るネ。

ウーフォの案内で、倉庫の裏手のジャンクヤードへ来た一向。ウーフォは幾つか並んだ車庫の様な建物の内、一つのシャッターを押し上げる。真っ暗なシャッター内部。ウーフォが電気を付けた。

ボウ:こいつァ…!?

ウーフォ:コレね、暗黒物質エンジンヨ。拾い物ネ。

大型のバン程もある鈍鉄色の塊。…波動エンジンにも似た感じの形状だ。

ウーフォ:ゴリゴリね。全く持ってゴリゴリね。コレマデ品質イイの奇跡ヨ。ちょとパーツ交換するだけデもっとヤバくナルね。

ボウ:おいおい…本当に奇跡じゃねぇか?今時こんなドマイナーなエンジンが…。

ウーフォ:変換効率ちょと落ちるけど有り余ルネ。ゴリゴリよ。これホントガチで。飛びホーダイ撃ちホーダイ張りホーダイネ。

ボウ:一応他のエンジンも見せてくれるか?

3つほど離れた車庫の中を見て回る。

ウーフォ:光子置換のフォトンエンジンよコレ。一番のウレスジね。カスタム広いシ、互換性もイイ。チョと低出力だケドネ。

アスナ:さっきの暗黒物質エンジンとコレ、並列可能?

どうにもさっきのエンジンが気になってしまう。やはりロマンか。ロマンに耐えられず、俺はウーフォさんに訊いた。

2年前 No.6

洗濯蟻 @arinohito ★iPhone=n7Rebp7mCv

昊のあすなろ ~ジャンクヤード:6~


ウーフォ:……オモチロイ試みネ。主機にあのエンジン置いて副機にコレを配置スル?

ボウ:なっ…!?

何故かボウさんの方が驚いた。

ボウ:おいおい、そんなピーキーな組み合わせ、馬鹿でもやんねーぞ?第一、光子と暗黒物質は相容れない存在だ。事故でも起きたら大爆発じゃ済まされねェぞ?

ウーフォ:対消滅で特大ブラックホールお出ましネ。半径15光里がモレナク木端ミキサーなるヨ!

アスナ:ブッダ…。

どのぐらい凄いのか分からないが、兎に角凄いらしい。目の前に鎮座するフォトンエンジンを見ながら俺は独りごちた。

ウーフォ:デモ、案外イイ組み合わせヨ。何方も星間物質ネ。そこら中にアルヨ。変換装置加えればカンペキね。

あの三胴艦にロマンエンジンを突っ込む。ロマンにロマンが合わさって1000倍だ。

アスナ:借りに3つ積んだ場合、どの程度まで動かせる?

ウーフォ:さっきのゴリゴリ戦艦は余裕ネ。余剰出力有り余るネ。本来モト大きな艦ニつけるヤツよコレ。

此処で、ふと脳裏に浮かんだ疑問を投げかけてみた。

アスナ:………その余剰出力でシールドジェネレーターを使ったら?

その質問にボウとウーフォが硬直した。ビンゴだ。

ウーフォ:……お客サン、エゲツナイ事考えるネ…。エネルギー変換効率的に考えて第一級ヨ。ゴリゴリ戦艦単騎で惑星制圧デキるよ。

その答えを受けて、脳内ニューロンが加速する。パチパチと脳内で火花めいたフラッシュが広がる。

アスナ:……借りに。

地獄めいた声。

アスナ:暗黒物質エンジンとフォトンエンジンを三胴艦に乗せて、あの銀色の船のシールドジェネレーターと掛け合わせた上に、戦艦級の砲を搭載するとしたら?

思えばコレが、一番最初の分岐点だった気がする。俺の提案にウーフォが目まぐるしく表情を変えた。

ボウ:…装備超過でスペースが…いや、イケる…?重量は…高出力スラスターでどうにでもなる…。機動性は抜群…。

ウーフォ:シールドカタイ。動きハヤイ。攻撃ゴリゴリ。…アレ?……装備互換性…ヨロシ、改造…許容量十分…追加武装…アレ?

圧倒的なパワーが生み出す可能性。外見は旧式めいたあの三胴艦だが、古いなりに汎用性も高く、行く所に行けば替えのパーツも潤沢らしい。

ウーフォ:問題点上げるト、電子戦貧弱ネ。電磁パルス、ハッキング食らったらオダブツよ?あと、物理的装甲貧弱ネ。シールド無イと小型哨戒艦ソノモノよ。パルスレーザーでも穴ボコネ。

一見無敵に見えるが、実際の所かなり弱点箇所もある。完全無敵など無いのだ。

ボウ:…だが、その弱点すら何とかなりそうではある。中身を何とかすればな。

言いたい事は分かる。伊達にゲームをやってない訳では無いのだ。

アスナ:……電子制御の他に、油圧制御を。電子戦ならヤバイ級のハッカーを。物理的装甲は…より分厚く。重さなどエンジン出力が支えてくれる。そして強固なシールドがある。唯一ぬにの盾めいて、黄金の鉄の塊で出来た艦が海賊や軍隊にウカツを取る訳がにい。

カラテだ。カラテあるのみ。何たるエンジンパワーに依存したゴリゴリか!

ボウ:この艦が完成したら…戦艦級の戦闘能力を持つ商船に…。

アスナ:無論、無駄なイクサはしない。あくまでも俺は商人。武装は使わないに越した事は無い。状況判断だ。敵が出たら潰す。

そう、俺は戦争をするのでは無い。あくまでも運び屋、商人をするのである。

ウーフォ:……どうやら、商談纏マタみたいネ。さっきの通り発注スルの?

アスナ:お願いしたい。

ウーフォ:アイアイアイ!畏まったでゴザル!キッチリカッチリバッチリ御仕事するヨ!従兄弟も協力!一家総出でヤルネ!

大仕事と聞いて燃えるタイプなのか、ウーフォは相変わらずの胡散臭い笑みではあるが、その瞳には光が宿っている。

ウーフォ:一週間!一週間で全部終わらせるね!楽しみに待ってるとイイよ!!コレ契約書ね!

ウーフォに渡された何枚かの契約書類にサインをする。ボウが立会い人だ。不正は一切無い。

ボウ:コレで、船と免許が揃った。あと必要な物は…。

アスナ:人員。

裏路地まで戻って来た時、俺はボウさんと必要な人材について話し合った。幸い、此処は人材の宝庫であり、船員確保に事欠か無い。

取り敢えず、酒場まで戻り、そう言った人員についての情報をまとめる事にした。

クラックリット:成程なぁ、コレで嬢ちゃんも宇宙商人か…。

アスナ:アッハイ。

クラックリット:手持ちの金で何とかなるのか?

ボウ:分かんねェな…。

そうだ、資金の問題があった。何をするにも金が無いと行けない。手持ちの残高は色々あってもう底を尽きかけている。

何とかして金を稼がないと。

クラックリット:取り敢えず、船が出来るのは一週間後だよな?

アスナ:アッハイ。色々準備しないとならない行けぬいので宇宙への出発は実際一月先。

クラックリット:そうか、それなら…!

クラックリットさんは一つの提案を出した。それは、俺がこの店で日銭稼ぎを行うと言う物。早い話がウェイトレスである。それで多少のお金は稼げるし、酒場ネットワークで情報収集も出来る。更には貸し部屋も一つ与えられるのだ。

アイエエエ…ウェイトレスなんてやった事無いよォ…。

こんな時こそ、おにゃ神様の出番である。少し前に必要最低限の支援は行うと言われたのでそれを使い、接客の基礎を同期してもらったのだ。

更にこれもおにゃ神様の情報で、この星の1日は地球の2日分、つまり1日48時間の配分らしい。実際、心身共に対応して不調が出ないようにはしてあるが、心の持ちようが不思議である。

つまり、三日もすれば…。


アスナ:アリガトゴザマース。


店を出る客に一礼。何だか酒場にカワイイな女の子が働いていると聞いて、多少客足が増えた。未だ船員については情報収集中だが、客が齎す情報は実に有用。パフォーマンスとして見せたスモチ一気が妙に流行りを見せた事は内緒である。実際スモチ一気は働き疲れた心と身体に有用で、頭もシャッキリする。効果倍点だ。

そんな時であった。店に来店した1人の男が___、

2年前 No.7

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2年前 No.8

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昊のあすなろ ~鉄火場:8~


アスナ:…一瞬の油断が命取り。

クラックリットさんの部屋は宿屋の多少奥まった場所にあり、多少の音を立てても外には聞こえない。部屋の前で再度のクリアリング。その後シメヤカにノックしてもしもし。レスポンスがあれば即中へ。やはり中ではクラックリットさんが警戒態勢。

アスナ:装備は?

クラックリット:昔のツテで貰った古い銃が二〜三挺。それとナイフが数本。その辺から引き剥がせば鉄パイプなんかも。

そう言ってテーブルの上にリボルバーめいた拳銃と細身のナイフを並べるクラックリットさん。

ヴィレイゾ:相手は十中八九軍隊です。これだけの装備で戦うのは…。

アスナ:…最低限、一人倒す。後ろからカカッとアンブッシュ重点な。

リソースは少なめに。相手の装備を奪うのだ。こんな夜中に攻めてくるのだから、きっとサイレンサー付きの武器を持ってくるに違いない。それさえ手に入れられれば…。

クラックリット:かなり前に使った搬入路は多分見つけられては居ないだろう。そこから出て、排水溝を通れば外れの川まで出られる筈だ。

各自で武器を分配し、身支度を整える。あくまでも先ずは包囲を破って逃げる事が第一。大事にはしない。先程短い時間で話を聞いた所によると、ヴィレイゾさんが掛けた凍結は、ある程度までハッキング出来たとしても、最終的にはパスワード管理されている為に、そのパスワードを奪う為此処に軍が来たのでは?という事であった。やたら仰々しいのは問題に迅速に対応する為だとの事。

ヴィレイゾ:……念の為、パスワードはこの端末から打ち込まないと解放できない様にしてあります。私からパスワードを聞き出したとして、軍の所有する端末ではパスワードを入力できないのです。

アスナ:随分用意が良いな?

ヴィレイゾ:こう言う性分でして。

つまりはヴィレイゾさんを守れば良い訳だ。俺は分配された拳銃をベストの下の帯に差し、ナイフを握った。

丁度その瞬間、酒場へ軍が踏み込んでくる様な音が聞こえてきた。

クラックリット:さぁ、行こうぜ!

警戒しながら部屋を出る。未だ敵影無し。猫足を最大限使い、廊下を進む。前方の突き当たりの角から、薄緑色のポインターが何本か見えた。あの角の向こうにいる。

クラックリット:こっちだ。

クラックリットさんが手前にあった倉庫前の角に隠れる。俺の猫目には厳しい黒色のボディアーマーを着込んだ数人の人影が見えた。三人が角に隠れた瞬間、目の前をポインターが掠めて行く。

アスナ:危険がアブナイ…。

…通り過ぎたのを確認後、突き当たりまで移動。角をクリアリングして、左に折れるとその先に酒場のカウンターが見える。其処に数人の人影。カウンターはL字になっており、今自分達ははその底辺右側にいる。このまま底辺左側に抜けたいが、垂辺の中程に敵兵が居た。

クラックリット:あの野郎、酒を盗み飲みしようとしてやがる。

アスナ:御代は命で支払わせる。…俺が行くから見張り頼むわ。

そう言うなり口にナイフを咥え、四つん這いで飛び出し、猫めいた四足歩行で敵の後ろに接近。相手は酒に意識を取られ気付かない。ナイフを持ち、CQCめいて相手を後ろから引き倒しつつ体を押さえ込んで動けない様にして口を押さえ、そのまま喉元を掻き切った。……ショッギョ=ムッジョ!

アスナ:一瞬の油断が命取り。致命的な致命傷だ。助からにい。

何が起こったのか分からなさそうな相手の口を押さえつけたままそう言って、相手の息が止まるのを待つ。ゴポゴポとくぐもった水音と共に指先にぬるりと温かい液体が触れ、抵抗が少しずつ弱まっていく。…そして、かくりと頭が落ち、目が空虚になった。ナムアミダブツ!近くに落ちていたアサルトライフルを拾い上げる。思った通りサイレンサー付き。その他サイドアーム、手榴弾、特殊グレネードめいたものを剥ぎ取り、カウンター下へ押し込んで隠す。そして屈んだままバックステッポし、クラックリットさん達に合流、道を急いだ。

ヴィレイゾ:凄いですね…。

アスナ:それほどでもない。

トミーガンにも似た形状ではあるがアサルトライフル。マスターキーにポインター。暗視スコープに消音器。マガジンを抜いて残弾を確かめる。…大丈夫、撃てる。

クラックリット:あった!あのドアだ。あそこを入った奥に搬入路がある。

アスナ:さて、とんずら使おうか。


???:……何?発見できなかった!?馬鹿が!もっとよく探せ!情報では確かに此処に居る筈なんだ!

???:ですが、本当に何処にも居ないんです。隠れられる様な場所も多くはありません。

???……くそっ。情報が間違っていたのか?

???:人が居た痕跡は有りますが、何分宿屋みたいな物でして、誰が其処にいたのかまでは特定は難しいです。

???:もう良い。兵を下がらせろ…。

???:了解です。

通信が切れると、狼男めいた指揮官は苛立った様に無造作に通信機を置き、それでもまだ怒りが収まらないのかそのまま通信機を殴り倒した。

???:くそっ…あの小娘め、嘘の情報を寄越しやがって…。

ぶつぶつとつぶやきながら、指揮官は折り畳み式の端末を立ち上げ、荒々しくキーボードを叩いた。

???:おい!どういう事だ!?話が違うぞ?

Qia:…wel. 如何言う意味?

寸分遅れず返信が来る。

???:お前の情報は正しく無かった。奴は居なかった!

Qia:逃げられたのでは?

???:そんな筈はない!お前が間違った情報を私に送ったのだ!コレは重大な規約違反だ。良いか?報酬の支払いは無い物だと思え!そしてしかるべき処分を待て!

Qia:………aut.

通信を終えると、指揮官は立ち上がり側近に向かって言い放った。

???:兵を集めろ!私が直々に乗り出す!

………緋眼を丸く見開き、コンソール画面を見つめる人影。目を背ける様にして端末を閉じ、高台から眼下の街並みを見つめる。

視界の先には川があった。

やがて、川に流れ落ちる排水溝から三人の人影が出てきたのを目を細めて確認すると、長いマフラーを翻して高台から飛び降りた。


クラックリット:此処まで来れば一先ず安心だ。

ヴィレイゾ:良かった…、助かった。

アスナ:敵兵は如何やら移動し始めてるみたいだ。帰るのか?

三人して川辺に座り込み息を吐く。青っぽい月が周囲を照らしている。やっと少し風が出てきて、涼しさを感じる様になった。

汗を拭い捨て川面を眺める。月や星の光を反射して蒼く川面の向こう岸に小高い丘があった。ふと何気も無く周囲を見回す。

……視界の隅に、緋く光が二つ並んでいた。

2年前 No.9

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昊のあすなろ ~川辺:9~


アスナ:……誰だ!?

声を荒げ、立ち上がって武器をそちらに向けて構える。クラックリットさんとヴィレイゾさんも武器を構え立ち上がった。

レーザーポインターが二つの光の間上方に光った。

???:……sef. …敵じゃ、無い。危害を加える気も、無い。

無個性に平坦な少女の声だった。…情報統合ナントカめいている。

アスナ:何いきなり話かけて来てる訳?……身体注意重点。

レーザーポインターの切り替えでフラッシュライトを点灯した。不審人物の姿が明らかになる。

緋色の目。藍色の斑が混じった青灰色の肌。乳白色のもっさり姫カットロングヘアーにマフラーで口元を隠し、サイバー系ゴス風味の服装。肩からノーパソめいた端末を下げた少女が両手を挙げて立っていた。腰から生えた矢印型の尻尾を見て、アンデッド型悪魔っ娘を想起する。

不審人物は両手を挙げたままゆっくりと歩いてくる。如何やら本当に敵意は無さそうだ。

アスナ:……敵じゃ無いな。

武器を下ろし、少女を見据える。気持ち12歳前後。そんな身長は高くない。俺より頭一つ半分程度低い。

クラックリットさんとヴィレイゾさんに一旦下がる様に合図を出し、自分は少女の前に歩み寄る。

アスナ:ドーモ、初めまして。アスナロックです。

アイサツしてオジギ。嗜みである。

???:…wel…、『クィアー』です。

相手も小さく呟く様にしてぺこりと頭を下げる。頭を上げたクィアーはあからさまにホッとした様な表情を浮かべる。言葉少なだが所謂無口クール系では無い様だった。

クィアー:時間が無いので手短に。貴女達の置かれている状況は把握している。密かに監視していたから。

いつに間に、とクラックリットさんが呟く。

クィアー:…今、貴女達を襲った軍の指揮官がこちらに向かっている。如何にかしなくてはならない。

そう言って、クィアーは身に付けていた端末を開き、幾つか操作した。

ヴォン!

空中にホログラムが浮かび上がる。空間投影技術だ。そのホログラムがパチパチと動き、幾つかの映像をウィンドウ表示。

クィアー:……この男が指揮官。私はこの男に雇われ、其処の男…ヴィレイゾを情報操作で追っていた。

敵に雇われた…が、こうしてコンタクトを取ってきた?警戒したのか、後ろの2人が銃を構えかけた。クィアーの身体がビクッと震える。

アスナ:まぁ待て。話を聞くんだ。

クィアー:……私は彼に情報的な弱みを握られ、其れを盾に脅され動いて居ただけに過ぎない。長い間、反抗の時を伺って居た。

ヴィレイゾ:…それがこの機会だったと?

クィアーはこくりと頷き、指揮官の顔写真を拡大した。

クィアー:今、この男の隠し口座に電子的介入を試みている。この男が貴女達にしようとした事を、そのままやり返そうと。……浮いた口座内の金は、ヴィレイゾの口座に入金させる。

つまり、この指揮官とやらの隠し財産をそっくりそのまま奪ってしまおうとしているのだ。……中々面白い。

クラックリット:指揮官自体には何もしないのか?

クィアー:aut. 私が彼から受け続けた精神的苦痛は軽くは無い。彼には相応の罰を与える。

パパパッとウィンドウが切り替わり、憤怒の形相で小型輸送機らしき物に乗っている指揮官の姿。

クィアー:彼は飛行艇に乗って此方へと向かっている。この機体の制御システムに介入し、事故を起こさせる。

カカカカカッ。

ウィンドウにはオスプレイめいたローター機。其処のコクピット部分にある制御システムのアップが映った。

クィアー:貴女達が望むなら、すぐに。

そう言って、クィアーは小さな円筒形のスイッチを取り出し、投げた。

俺はそれをキャッチし、ボタン部分の透明カバーに指を掛けた。

クィアー:そのボタンを押すと、銀行口座と制御システムへの介入への、最後の命令が実行される。

……良くここまで出来るものだ。電子的介入(ハッキング)?しかもこんなに軽く?……この少女は一体…。

アスナ:…コレは元々、ヴィレイゾさんのケジメ案件では?なのでヴィレイゾさんが押すべき。

ヴィレイゾ:…良いのか?

アスナ:……悪者、裁くべし。慈悲は無い。

スイッチを受け取ったヴィレイゾさんは少し迷っていたようだが、その内手を動かした。

シャコッ、カチンッ!!

それは余りにも呆気無く終わった。ウィンドウに映る悪魔の尻尾的アイコンが、制御システムを移すウィンドウの制御箇所と銀行口座のパスワード画面を刺し貫く。当該箇所がキラキラしたエフェクトに包まれ、シメヤカに爆発四散するアニメーションが展開。ウィンドウは消えた。

ヴィレイゾ:……こ、こんなに呆気無く…?

クラックリット:普通じゃ考えられ無いぞ…?

驚きに目を見開く2人を他所に、クィアーは言い放った。

クィアー:『01線上の悪魔』は、凡ゆる電子的介入を可能とする。防衛機構も私の前では開け放たれた窓と同じ…。

パパパッとウィンドウが切り替わり、拡大投影される。

クィアー:……『01線上の悪魔』は何処にだって入り込み、それを操れる…。

山中に墜落した機体をその上空からの撮影映像と、マイナス表記になった銀行口座のウィンドウに挟まれて、クィアーが立つ。

圧倒的ポーカーフェイスの向こうに、緋色の目の向こうに、確かに光る強い意志。それを感じて、俺は少し…胸を動かされた。

クィアー:……画して、一つの陰謀が消えて、私の反抗も終わった。……私はこれで…。

消える、とでも言いたかったのだろうが、その前に、俺の脳味噌がフル回転した。

アスナ:おいィ?お前それでいいのか?

ピクリとクィアーの肩が震える。

アスナ:さっき言っていた。『この男は雇い主』と。『雇い主』が居なくなったらどうやって過ごす?最悪裏世界でひっそりとシメヤカに幕を閉じる事になる。

クィアー:……新しい雇い主を見つける。

少し伏目で応えたクィアーに、脳味噌ハレルヤだ。

アスナ:そうか、なら俺が雇うが良いな?

クィアー:……wel?

アスナ:俺はどちかと言うと俺の考えに大賛成なのだが。

ふんす、と胸を張って応える。これだけの手腕を持つ人物がフリーランス?なら雇うしか無いだろう常識的に考えて。

クラックリット:アスナちゃんは新しく航宙商人になったばかりでな。

アスナ:…商船の船員仲間を探している。今なら情報系要員の席が空いている。宇宙中をカカッと飛び回れる。実際タノシイ!

話を聞いていたクィアーの目がキラキラし始めた。目だけ輝かせるポーカーフェイスとは一体。大方宇宙に出た事など無いのだろう。

クィアー:…本当に…良いの?

ヴィレイゾ:……私は部外者だが…、きっと、素晴らしい経験になると思うぞ。

先程から黙って話を聞いていたヴィレイゾさんが横から言う。

アスナ:一緒に……、やらないか。

クィアーは少しだけ躊躇う様に間を置き。


クィアー:………sef…!!


こくりと頷いたのだった。

2年前 No.10

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2年前 No.11

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2年前 No.12

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昊のあすなろ ~スクラップ:12~


ステーションからの帰り道。

裏路地の通りにはどデカイゴミ捨て場がある。普通の生活ゴミの他にも、ジャンクヤードにさえ回収されなかった様々なゴミ、主に鉄屑やらスクラップやらが不法投棄されている所だ。常に作動している無人ブルドーザーと圧縮機がゴミを箱状に圧し固め、積み上げ、ある程度溜まると最終処分場に送られる。

アスナ:うるさい。すごく。

其処彼処から響く金属圧縮音と走り回るブルドーザーのエンジン音。これらの機械の動作音。実際道端に小山めいて堆く積まれた廃品の山。それらを横目で眺めながら歩く。基盤、エンジン、機材、モニタ、廃材、最早元の姿すら想像出来ない何かの破片やパーツの一部。大きい物では車両の外殻やデカいタイヤやフライホイール等が山積みになっていた。それらは皆一様に錆び付き腐蝕し、処理を待っている。

キィ…キィ…キィ…キィ…。

廃棄物の山の中で、壊れた太陽光発電玩具がぎこちなく剥き出しのギアを回している。何たるサップーケイ!

少し進むと道端に人が立っているのが見えた。…動かない。それも当然。近づいて見てみれば、それはただのマネキン。近くにはボロボロのロボットマニピュレーターや錆び付いたサイバネ腕、胴体など、人体的なパーツが山積みになっている。山の上に機械腕がゾンビ映画めいて数本突き立っているのが見えた。

アスナ:うわ。

破砕アンドロイドやロボットの頭部が晒し生首めいて並んでいる!コワイ!目を虚ろに開いている物。閉じている物。モノアイ、ディスプレイ、サイバーグラス。男女の顔立ちがはっきりわかる物。内部機構が剥き出しの物。上半分がひしゃげて潰れている物。どデカイ穴が開いている物。なるべくそちらを見ないように通り過ぎる。

と…その時、錆色だらけの視界の端で、日光を受けて蒼く煌めく物があった。ジェットエンジン廃棄物と小型ディスプレイ廃棄物の山の中に半分程埋もれる様に。

あの蒼いのは…髪!?人が倒れてる?

アスナ:カカッとダッシュ!

全速力で蒼い髪の人物の元へと駆け寄る。

……端的に言えば、それは生物の類では無かった。先程にも見たマネキンでも無い。顔の左側と、胸部から腰にかけての左半分と右脚とを大きく欠損した人の屍体?いや、人でも無い。コレは人ならざる物だ。

アンドロイドの少女。其れもかなり精巧に出来ている。肌の質感もシリコン的な素材で柔らかく覆われており、まるで内部から爆発してちぎれ飛んだかの様な機械の断面が大きく開いている。頭部の損傷は左目付近の肌が剥がれ、内部機構が剥き出しになって居るだけで、其れ以外に外傷は無い。綺麗なものだ。残された右目を閉じ、角度によっては泣いて居るようにも見える。胸元に開く、恐らくはエネルギーコアか人工心臓かの動力源が収まっていたと思うべき箇所がぽっかりと開け、複数本のチューブや配線コードがはみ出している。無理矢理中身を抉り取ったみたいだ。ジャンク屋にでも取られたか?

流石にスクラップの山の中でこれほど目立つ物も無い為、俺は単純に興味を惹かれた。アンドロイドの少女はいささか長過ぎる蒼い髪を散らし、ゴミ山に凭れ掛かる半ば減り込む様な状態で機能停止状態にある。これまた同じ様にズタボロに焼け焦げ穴の空いたボディースーツが辛うじて肌に引っ付き、亀裂だらけの白い肌が見えていた。

アスナ:……ちょとシャレならんしょコレは…!

周囲をずいっと伺い、左右を見てから道の反対側まで見渡す。人影は無い。アンドロイドの右腕を掴み引き上げた。其れほど重くない。身体が浮くと其処に腕を差し入れ抱え上げる。バランスが崩れ、ぐらりと傾くアンドロイドの身体を支え、ちらりとその背面を見る。肩甲骨の辺り、其処だけ金属製のカバーが剥き出しになっており、ユニットのアタッチメントやコードジャック、LANポートの様な物が見えていた。

首元にはバーコードと識別番号と思しき刺青。

『…………"A-3U』

数文字現地語での表記があっただけで、その前側は左半身の欠損に巻き込まれ無くなっていた。

アスナ:捨て猫を拾うのと同じか。あれ?捨て猫って居るのかこの世界。

猫はキャテラース星人では?

アスナ:…………。

ガチャッ。

アンドロイド少女を背負う。そして歩き出す。酒場へ向けて。その背を、剥き出しになったアンドロイド少女の左目が光無く虚ろに見つめていた。


………そんなこんなで。


クラックリット:………拾ってきたと言う訳かい。

アスナ:にゃす。

クィアー:sef. 情報照合完了。製品名『RULESERVICE(ルールサーヴィス)』。ツアーガイド型アシストロイドナビゲーター。『"A-3U』は恐らく製造元情報の一端。これだけで製造会社を辿るのは不可能。

クィアーが表示したホログラム装置には、確かにツアーガイドめいた服装で宇宙遊覧船に立つアンドロイド少女の姿。

アン:この映像とは多少趣きが異なりますわね?

確かに、映像の中の彼女は蒼い髪をおかっぱめいてパッツンショートカットに切り揃え、如何にもツアーガイド…と言うよりバスガイドめいている。蛍光ラインを配した紺色の制服に制帽を被り、手には小さな案内旗を指揮棒めいて持ち、如何にも案内してますと言うアトモスフィアを醸し出している。

自分の拾ってきた方はある意味正反対。先端がもふっと柔らかくカールしたストレート。前髪もパッツンでは無く普通に切られている。服装は焼け焦げ穴や欠損部位が酷いが少なくとも制服では無く、身体にぴったりと沿う様に作られたボディースーツ。制服のインナーである可能性も捨てきれない。

クィアー:wel…この型のアシストロイドナビゲーターを使用している宙域は今の所存在して居ない。恐らく嗜好用、もしくは本当に限定的な宙域のみで使用されたオリジナル。

そんな物が何故にあの様な場所に?

アン:……この子、撃たれていますわね。

不意に、アンお嬢様がアンドロイド少女を見つめて呟いた。一同の視線がアンお嬢様へ集まる。

アン:私、銃の類には少し詳しいんですのよー。どんな銃で撃たれればどんな効果があるか、少し調べれば大抵分かりますの。

そう言ってアンお嬢様は、ボディースーツの焼け焦げ痕を幾つか指でなぞりながら少し考えて言った。

アン:特殊な弾ですわねー。焼夷炸裂徹甲弾。50口径。3発ほど連続で撃たれて吹き飛ばされてますわ。撃った銃器は恐らくヴォローイングHM2。汎用的な重機関銃ですわねー。

肩口から左胸、脇腹を連続で撃たれて破壊されたという事か。

クラックリット:軍の武器じゃねぇか?

アスナ:横流し品かもしれないぞ。ほら、数日前の銃器会社と軍の癒着めいて。

クィアー:sef. あり得ない話では無い。

アン:問題は弾ですわ。軍が一端のガイド用アンドロイド目掛け、高価な弾丸を態々重機関銃で撃ち込む。そんな無駄な事を?

確かにそう考えるとおかしい部分がある。軍に破壊されたなら、あんな場所に捨てる筈も無いし…。

一同は沈黙した。

2年前 No.13

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昊のあすなろ ~懸案事項:13~


アスナ:…どうやら、この眠り姫は俺の想像が考える事の出来無い事件に巻き込まれているのは確定的に明らか。

クラックリット:何処かの遊覧船が航宙中に軍じゃない何か…海賊か何かに襲われたか何かしたのか?

クィアー:………!!……その考えは半分だけ当たってる。……コレを。

そう言ってクィアーはとある映像を表示させた。

クィアーが見せた映像。だいぶ古いのかノイズで劣化し、色も音も無くブレも激しい。が、それでも見えた物があった。

黒色のどデカイ宇宙船に、兵装を身に纏った兵士達が乗り込んで行く場面を写している様だ。

クィアー:wel…、この映像の…この部分。ノイズキャンセラーと解像度補正をかける。

パッパパパパッ。

ホログラムが切り替わり、兵士達が乗り込んで行く宇宙船の入り口に小さな人影が見えた。

クラックリット:……こいつぁ…!?

その、入り口の脇に立って兵士達を見送っている人影こそ、このアンドロイドだった!

映像の白黒さと最低限の解像度でぼんやりとしか写ってはいないが、特徴的な髪型が一致している。

アン:じゃあ…この子は軍の所持品?

クィアー:sef……この戦艦は数年前にとある宙域で海賊に襲われ、行方不明になっていた艦だった。コレはその当時の記録映像の一部。

幾つかウィンドウが展開し、同型艦と思しき戦艦の戦闘映像が流れる。

その瞬間、脳内でスパーク!!


アスナ:アーッ!!!??


それを見たあまりの衝撃で、俺は思わず声を張り上げてしまった。

アン:…何事ですの?

アスナ:……この戦艦…!!見た事あるぞ!ステーションで……同じ型の…!

そう!それはまさしくステーションで商船を探していた時に見たあのゴリゴリ戦艦だった!!

スパークに続くスパーク!脳内大連鎖!情報が繋がる!

アスナ:あのゴリゴリ戦艦が…この子の乗ってた戦艦で…!海賊に襲われて…!数年経ったある時、ステーションに払い下げめいてやってきた!多分、この子もその時に…ステーションに来て…不法投棄!!

パチパチ、パチパチパチ。

アスナ:あのジャンクヤードに無くて、スクラップ置き場にあった理由!ジャンクヤードにあったら危険だった!『誰かに買われる可能性』!だからスクラップ置き場で処理する事になった!

グリングリンと頭を回しながら腕を振って叫ぶ!

アスナ:価値ある物を捨てる!即ち!この子は処理されてもおかしく無い『何か』をしたかされたか見たか知ったか何だかした!海賊に!後処理めいて情報隠蔽の為に捨てられた!

そこまで叫んだ時、頭の中で何かがプツンした。

ぐらりと視界が傾き…、

俺は床に倒れ伏した。


………実際知恵熱な。

与えられたスモチジュースで意識を回復。

アスナ:ドッソイスイマセン。

クラックリット:何事かと思ったぞ…。

アン:大丈夫ですのー?

クィアー:…aut. 少し吃驚した。

取り敢えず気を持ち直し、アンドロイド少女を見据える。

……如何してくれようか。

アスナ:…こいつ、直せるのか?

クラックリット:施設さえありゃ…そりゃまあな。

クィアー:何するつもり?

アスナ:取り敢えず言語的に修理して、話を聞く。それで何かあったら詳しく話を聞く。何も無ければそのまま修理して…仲間にする。

確か、『ツアーガイド型アシストロイドナビゲーター』とか言ったはず。つまりカーナビみたいな物だ。車にはカーナビがあると実際有難い。

アン:船のナビゲーター件サブコンにするのねー?良いんじゃない?

…それに。

アスナ:カワイイガイドさんが居れば実際ヤル気出る。気がひゅんひゅん行く。それに…。

アンドロイド少女の顔を見て、一言。

アスナ:……コレも、きっと縁。


その日の夜、俺は何時ぞやのおにゃ神様と連絡を取り、情報を同期し、ほぼこの世界に適応した。ついでに幾つかの『特典』を貰い、これから先は一人でやって行ける事を話し、『通信』を切る事を選んだ。

???:ま、精々頑張りなさいよ。そこから先は貴女のストーリーで、貴女の第二の人生何だから。

アスナ:分かってる。何も心配にい。俺は立派になってる。

???:次死んだ時、土産話を楽しみに待ってるわ。…長生きするのよ。

アスナ:あいよー。

???:どうしても、って時の為に、一回だけ再通信出来るよう仕込んで置いたけど、使われないことを祈るわ。…じゃ。

アスナ:…じゃな。

……其れっきり、脳内からおにゃ神様は消え、二度と出てこなかった。ここから先は正真正銘、自分の人生ストーリーだ。


ベッドの上から窓の外の蒼月を眺め、そういやあのアンドロイドも蒼髪だったなとか、次の仲間は如何しようかななどと考え…、

俺の意識は闇に沈んで行った。


___きっと其れは何回か目の分岐点。そして……、


明くる日、俺は再びスクラップ置き場へ出向いていた。目当ては、幾つかの機械部品。そしてエネルギーコア。

酒場から借りたリアカーめいた引き車には、動かぬアンドロイドの少女とその辺りで拾ってきたマネキンのパーツめいた素体の数々。

……この考えは独断だった。一種の賭けにも等しい。幸いにもジャンクめいて替えのパーツが此処にはたんまりある。

アスナ:……如何にも揃わない物は…、ストリートで買うか…。

数日前訪れたストリート。あそこならちょっとした足の付かない横流し品も売っている。エネルギーコアは彼処で買うしか無さそうだ。

アスナ:………待ってろよ『アスール』。今、起こすから。

ギギッ。ギギギッ…。

リアカーが軋む音を返事に見立て、俺はストリートへと向かった……。

2年前 No.14

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昊のあすなろ ~継ぎ接ぎ:14~


どんよりとした曇り空。その中を甲高く飛行音を撒き散らしながら三機の戦闘機が編隊飛行し横切って行く。

アスナ:…………。

黙って見上げたその空の向こう、遥か上空のそれを一瞥し、汚濁した川のほとりをリヤカーを引いて歩く。

やがて廃棄基板やスクラップ屑の山と、錆まみれのプレハブの列が現れる。訪れたのはそんなプレハブの中の一つだった。

プレハブの前にゴザめいた敷物を広げ、その上に幾つかのジャンク機械部品が並べて置かれている。その前で立ち止まったアスナは品物と木の椅子に座った草臥れた様相の店主の男を交互に見る。

互いに言葉は無い。

必要なパーツを幾つか指差すと、店主が立ち上がって奥へ行き、少しして紙袋を持って出て来た。店主とアスナの間で色紙交換めいて品物と電子マネー素子が交換される。

店主は役目を終えたとばかりに木の椅子に座り直し、アスナは頭を下げて紙袋を荷台に置き、リヤカーを引いて歩き始めた。今しがた買ったのはAIの電子基板。そして幾つかのアップデート用機材、電子制御の油圧シリンダーとチューブだ。

リヤカーの内部には既に必要そうなパーツが一揃い入っていた。

それらは全て流れに流れてきたジャンク品。拾い集めたり、同じ様に買ったり、交換して貰ったり。入手に一番苦労したのはエネルギーコアだ。丸々一個が手に入った訳では無く、三つのジャンクコアを組み合わせて貰ったものだった。

そう、アスナはこれらを組み立てようと言うのだ!一人で?否、アスナが次に歩みを止めたのは、服飾店めいて店先に機能停止アンドロイドやロボットが置かれている、実際廃墟めいた店舗。

一旦その店先にリヤカーを止め、入り口から幾つか中へ声を掛け、リヤカーを引いて裏手に回る。機械置換人や機械人、アンドロイドなどのメンテナンス場めいた工場が退廃的に立っている。

其処にリヤカーを運び入れたアスナは、この店舗件工場の主人と短く挨拶を交わした。

???:こんにににににちちは、お客様客様様ままままま。フォフォフォイフォイテーテーテーロロロロですす。

アスナ:…ドーモ。アスナです。

酷い電子音声ではあったが相手の名前がフォイテーロである事は分かった。全身機械のロボットである故性別は分からない。

アスナ:…この子の修繕をしたいのだが?

フォイテーロはリヤカーの荷台を見て、奥を指し示した。

フォイテーロ:こここここち此方へ。

フォイテーロに案内されて来たのは施術室めいた作業場。その中央にアンドロイド少女のスーツを剥いで寝かせ、周りの台に先程の紙袋や替えのパーツなどを広げた。フォイテーロがキャスター付きの仰々しい機械類を引き摺り作業台の上に設置。幾つかのコードをアンドロイド少女に繋げる。

フォイテーロ:私私私私しとしとし2人でやりりりり…す。

アスナ:問題にい。始めよう。

作業用手袋を嵌め、作業台を挟んで並び立つ。さぁ、作業開始だ。2人の腕が決断的に動く。まず取りかかるべきは欠損した半身の修繕。スクラップ置き場から持ってきた幾つかの素体パーツがずらりと並べられる。

アスナ:欠損したパーツと実際同じ様な物を拾い集めてきた。使えるか?

フォイテーロ:じゅ充分ぶんぶんぶんぶんででで。

次の瞬間にはフォイテーロの腕がまるでミシンめいて糸を紡ぐ様な速さと正確さで動き、パーツをバラし、組み換え、接続し、寄り合わせ、接合していく。アスナの腕の動きも決断的だ。接合部位を精密機械めいて簡易溶接!そして固定!何たるパーツの一体感か!迷いが実際無い!!

強化金属で骨格を形成し人工筋肉で覆い、金属パーツと生体パーツが縫い合わす。シリンダーとギア。電子回路とコード。パーツとパーツが組み合わさり、鈍金色の表面が煌めいた。あっという間に肩口までの修繕が終わった後、其処から更に2人は分担しそれぞれが腕と足を取り付け改造する過程に入る。

アスナは脚部の担当だ。…と言っても、欠損した部位に替えの素体パーツを接合するだけ。このアンドロイド少女は汎用性が高いパーツで構成されている箇所が多い為、交換は容易だった。

作業台の上部には完成形のホログラムが回転表示。アシストロイドナビゲーターの基本設計画面だ。それを見ながら調整し、完成形へと近付ける。

腕と脚を付け終わったら、鎖でマリオネットめいて立たせて吊るし更に修繕改造!2人の間に言葉は無い!ただ黙々とやる事をやり続ける!

台の上にあったパーツ類がみるみる減っていき、一つの形へ圧縮されていく。おお、今ここに新しいアンドロイドが生まれつつある!金属が露呈した半身と手足を特殊な成型カバーが覆い、其処に粘弾性特殊生体合金含有シリコンが流し込まれる。

プシュー…。ガコン。

カバーが外されると、金属部位が生体合金シリコンで覆われ、如何にも完璧な少女の肢体が現れた!素材の違いからか、継ぎ接ぎめいて僅かに色が異なるが、それも良し!

同時進行で行われていた顔面の修繕も終わり、同じ様にカバーで覆われ、外され、あどけなさの残る少女の顔が其処にあった。

アスナ:……ゴウランガ!

フォイテーロ:良いいい出来出来出来出来。後は中身みみみみとコアだだだだだ…け。

作業台に移動し、ベルト固定されると作業台がディスプレイめいて起き上がり、背面に穴が開いた。その穴からアンドロイド少女の背中の機械部分が見える。そしてそのソケットに幾つかの太いコードが繋がれた。いよいよ人工知能の構築が始まる。

元々あった欠損箇所の多いAIに、新しくAIを保管し補う。それは同じ型のアシストロイドAIに、軍用無人攻撃機AI、処理場の無人ブルドーザーのAI。その他補完用の様々な感情素子が継ぎ接ぎめいて組み込まれている。

外側が継ぎ接ぎなら、中身も継ぎ接ぎ。はっきり言って無事に起動する確証も無いのだ。

AI基板を組み込んだ記憶ディスクが背面のスロットに差し込まれ、同時にソケットと太いコードで繋がれた機械が冷却ファンの唸りを上げた。

2年前 No.15

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昊のあすなろ ~ガイドさん:15~


記憶情報のインストールが行われる。AIが、アンドロイドの命が吹き込まれていく。

アスナの手には、正立方体の機械。その中心には蒼い光を放つ球体が嵌め込まれており、巴めいた文様を浮かび上がらせている。

流れ物のエネルギーコアブロックを組み合わせた、新しいコア。これ無くしてアンドロイドは動かない。これを嵌め込むべき虚ろな胸腔部には菱形正方形のスロット。

キャバァーン!!

無骨な機械が人工知能のインストールが終わった事を知らせる電子音が鳴り響く。アスナとフォイテーロが顔を見合わせ頷き合う。

アスナは、手に持ったコアブロックを決断的に胸腔スロットへと押し込んだ!

手に感じる僅かな振動と巴文様の広がり。それはコアブロックと身体が完全に適合された事を示している。背面のコードが外された。

後は、起動キーを入れるだけ。そうすれば…!

接続コードを刺して胸部パネルを閉めると、エアロック音が鳴り完全にその部位を固定した。この状態で見ると青少年の何かが危ない様相ではあるが、これはただ人に近づける為の、アンドロイドには極々当たり前の使用に過ぎない。機械を生体合金シリコンで覆っただけの…。

作業場上部から人を一人覆い隠せる大きさの棺桶めいた鉄の箱が降りてくる。それが冷蔵庫めいて開き、作業台を挟み込む様に閉じる。

バシャッ!バシャッ!!

カメラのシャッター音の様な音が二度閃き、箱が開く。ボディースーツめいた新しいインナーが着せられていた。

その状態で倒された作業台の、アンドロイド少女の頭の方に空港の手荷物検査機械めいた長方形の機材が現れる。フォイテーロが作業台をスライドさせ、その機材をCTスキャンめいて設置した。

機材の側面にはディスプレイがあり、操作できる様になっている。その画面には『ツアーガイド型アシストロイドナビゲーター:RULESERVICE(ルールサーヴィス)』の文字。

そう、これはアンドロイドの服装を決定する装置なのだ。無数の素材から選択情報に合わせた服装を精製し、アンドロイドに着させる。幸いにも普遍的な観光会社のアンドロイド製品用制服情報が適用されていた。

スイッチを押すと手荷物検査機械、あるいはCTスキャン、もしくは洗車場の全自動機械めいて作業台が機械に通されていく。機械が超スピードで服を着せていく音が響き、物の数秒で作業は全て完了した。

ツアーガイド制服を着たアンドロイド少女は、最早遠目には人間の少女そのものだ。アスナはゴクリと息を飲んだ。

フォイテーロがモニターの前でキーボードを高速タイプ。

キャバァーン!と言う電子音に続き、起動キーを入れて下さい、と言う無機質な機械音声。フォイテーロが差し出した端末に、これまたジャンク品の起動カードキーをスロットイン。

起動の為のローディングが始まる。

カカカカッ…カカッ……カカッ…。

ローディング音が高く遅くなり、暫くして止まると、認証完了です、と言う電子音声が響く。

ガクンッ!作業台の上のアンドロイド少女が感電した様に震えた。

アスナ:ウェッ!?

心臓がズンズン鳴る。これでやったのか?成し遂げたのか?アンドロイド少女の、閉じられた瞼が震え、閉じられた唇が窄む。

そして、呟いた。


『起動完了デス。識別名を認証しマス』


はやい!きた!起動きた!オーナー認証きた!コレで勝つる!俺は逸る気持ちを抑え、冷静にアンドロイド少女の耳元で言った。

アスナ:識別名……『アスール』。

次の瞬間だった。


アスール:___認証完了デス___。


一言呟いたアンドロイド少女…、『アスール』は低く機械音を響かせながらゆっくりと身体を起こし…目を開け、横に入るアスナの方を見て、口を開いた。

アスール:御利用有難う御座いマス、マスター!これから宜しく御願い致しマス!

そう言ってはにかんだ表情を見せるアスールを見て、アスナは感極まり思わず涙した。

アスナ:あ……ああ……!此れから宜しくな…!アスール!!

アスール:ハイデス!

俺は先ず此処で達した。


__帰り道。

空になったリヤカーと、その上に座るアスール。リヤカーを引く俺。2人は短い自己紹介と、幾つかの質疑応答を経て、雑談話に花を咲かせていた。

アスナ:急造の継ぎ接ぎが上手く行くとは思わなかった。よかった。

アスール:奇跡デスねー。これで前の記憶情報が戻れば良いのデスが。

やはりと言うべきか、アスールには前の記憶が無かった。自分が破壊されてスクラップ置き場に捨てられていた理由は思い出せず仕舞い。まぁ、忘れてしまった物はしょうがない。

思い出せないならスルーすれば良いのだ。


アスール。


その名の意味する所は、『青』。彼女の青い髪があまりに鮮烈で、嗜好回路に焼きついていた。その上での命名だ。

俺の名前と若干被るが、それはそれでオーナー感覚だった。

アスナ:さーて…、どうにもこうにも言い訳説明を考えなくてはな…。

2年前 No.16

洗濯蟻 @arinohito ★iPhone=n7Rebp7mCv

昊のあすなろ ~ロードレージ:16~


国道めいた道路を、一台の装甲車めいたフロートカーが反重力エンジンの音高く駆け抜けて居た。そのドア側面には『安い・早い・凄い』と掠れたペイントが施されている。……即ち超特急便だ。

このご時世、配達業は度重なる強盗襲撃により辛酸を飲まされており、対抗策として施されたのが車両の装甲化なのだが、それでも襲撃者は後を絶たない。

この配達車にも暴走族めいたスカイバイク集団が前後から忍び寄って居た。配達車はこれを感知したかの様にスピードを上げる。

しかし明らかに速度や機動性で劣る。あっという間に取り囲まれてしまった。暴走族はスモークの掛けられた防弾ガラスや車体に向けて火炎瓶や小銃で攻撃を加える。

配達車が迷惑そうにふらりと機動。暴走族は煽情的な蛇行運転やクラクションを鳴らしたり罵詈雑言で配達車を煽る。そして配達車の四方を包囲し行動を制限。速度を落とし誘導めいてふらふらと路肩へ向かう。そして、四方を囲まれたまま停車!

暴走族は罵詈雑言を吐き出しながら配達車を取り囲み、その内の一人が運転席側のドアを開けようとした、まさにその時だった。

ジーッ…。

ほんの僅かに窓が開き、其処から黒っぽい色の紙か布の様な物がへろりと垂れ出してきた。暴走族はコレを上納金と見て掴み取り、引き出す。……長い?

その瞬間。


コキリ。


なんとも軽い音がして、一人の暴走族メンバーの動きが止まった。何故か?

……おお、何と言う事か。そのメンバーの首が180度回転し、後ろを向いているではないか!首を捻られたメンバーが倒れこみ、ふわりと黒い物が翻る。イメージするなら黒い反物、もしくはトイレットペーパーか巻物か。

ヒュココココッ!

またも軽い音。

暴走族達は自分達の持つ武器が残らず叩き落とされているのに気付いた。どれも真っ二つだ。車両の反対側に居た暴走族メンバーが命令を受け、雑多な銃器や火炎瓶で攻撃!

キャルルルルルル!!!

不意に配達車のエンジン始動!前方のスカイバイクを跳ね飛ばして急発進した!

ドゴォン!ゴギャッ!

跳ね飛ばされたスカイバイクが地面に激突!配達車はそのまま走り去る!暴走族の怒りが有頂天になった。各々スカイバイクに跨り、中の一人がどこかへ連絡!そして追跡開始!

突如始まったカーチェイス。追われる配達車、追う暴走族。暴走族面々は先程の無礼で殺気立ち、既に銃撃を加えている者も居る。しかし、半装甲化配達車に大したダメージはない様だ。暴走族はフロート装置に狙いを切り替えるも、華麗な操縦テクニックで避けられる!

配達車は鈍重そうな見た目に反し中々の素早い操縦テク!

キャキキキキキキキ!!!

配達車はドリフトしながら直角に折れ、細い道へとひた進む!その後を追う暴走族!何名かが曲がり切れず路地の壁にぶつかって爆発四散!尚も追撃を掛けようと迫る暴走族。配達車は折れ曲がった小路地を見事な操縦テクで切り抜けて行く!

道端にせり出したゴミ集積箱を片輪走行めいてすり抜け、地面に横たわった酔いどれホームレスは車高度を上げて飛び越える。目の前には行き止まりめいて金網が張ってある。しかし配達車は金網を強行突破!スクラップ置き場へ突入!

広場に出た事で暴走族は大きく広がり包囲を試みる。しかし迷路の様なスクラップ壁を切り抜けるのは至難の技。

数台のスカイバイクがスクラップ壁に激突!更に一台が作業中の無人ブルドーザーに激突!双方爆発四散!一方配達車は右に左に、時には上に巧みなハンドル捌き!

舞台はスクラップ置き場からコンテナ置き場へ。何名の暴走族がジャンプしてコンテナの上へ登り、高さのアドバンテージを取る。そして手に持ったマシンガンを乱射。装甲がこれを弾く。

キュキキキキキ!ゴガァン!ゴゴォン!!

配達車が左右のコンテナへ体当たり。コンテナを崩し、その上の暴走族諸共地面へ叩き落とす。爆発四散!

前方にコンテナ障害物!配達車は進路を変える!後に続く暴走族達は先程より数が増え、車種も増えている。世紀末じみた改造車が迫る!

ガガガガガガガガ!!!

改造車に取り付けられた回転機銃が火を噴き、ここで初めて配達車の装甲に幾つか穴が開いた。マズい事態。暴走族の一人が車上に身を乗り上げ、四角い筒を構える。筒の前面には四つの穴。

シャバゥッ!

ロケットランチャーだ!配達車はこれを間一髪回避!しかし第二第三のロケット弾頭が迫る。

ギャキキキキキ!!

配達車がドリフトめいて弾頭を交わし、そのまま前後反転!そしてバック走行で後方の改造車に相対する。

シャバゥッ!

最後の弾頭。直撃コース!

ヒュアッ!

爆発が起こらない!その代わり、暴走族改造車の目の前に、ポイと投げ捨てられた物体。

コレは…先程撃った筈の弾頭!


ズドォォォ……ン!!


バック走行を続ける配達車の両窓から黒い布状物体が翻っている!この布状物体がロケット弾頭を捕まえ、剰え投げ返したと言うのか?横に並んだ暴走族改造車の機銃掃射!布状物体が翻る。

ガキョン!

布状物体が伸び、左右の改造車のエンジンルーム貫通!そのままバタースライスめいて車体を前後切断、纏めて爆発四散!

ギャキキキキキ!!

車体をバックドリフトし、前後反転。まだまだ暴走族の数は減らない。むしろ増えているくらいだ。謎の布状物体の所為で接近が出来ない。ならば銃で攻撃だ、と言わんばかりに集中砲火が始まる!

ガキキキキンッ!

装甲が徐々に歪んで行く。限界が近いのだ。配達車が急激に進路を変えた。前方には暴走族が改造車を並べバリケードにしていた。銃撃を浴びながら、配達車がドリフト。車一台がやっと通れるかの通路に無理矢理車体を押し込んで行く。

スカイバイクや小型車は入れるが、大きい車両は続く事が出来ない。命令を受けて数台が回り道を探しに行った。

2年前 No.17

洗濯蟻 @arinohito ★iPhone=n7Rebp7mCv

昊のあすなろ ~カーチェイス:17~


轟音と共に、コンテナ置き場の倉庫の陰から穴だらけでボコボコの配達車が飛び出し、フロート装置の限界を超え地面で一度バウンドして、火花を散らして駆け抜ける。

その後ろから同じ様に飛び出したスカイバイクの内何台かが空中でバランスを崩し転落した。

それにしても、この配達車を運転しているのは何者なのか?これ程までの見事な操縦のワザマエを持つのは並の人間には殆ど有り得ない!

しかしそれを確かめる術は無いのだ。窓は全てブラックスモークか掛けられ、中に人影がある事しか分からない。

キャキキキキキ!!!

カーチェイスの舞台は下町にまで発展。それなりの交通量だ!豪快にドリフトを決め通りに飛び出した配達車が一般車にぶつかり掛ける。クラクションが一瞬で遠くへ消える。

一般車の間を縫う様に走る配達車。それを追うスカイバイク。改造車。暴走族の放った攻撃の流れ弾を食らった一般車が道路脇へ吹き飛ぶ。暴走族の放ったロケット弾頭が配達車を掠めてその先のバスを吹き飛ばす!バスの残骸が燃え盛るバリケードめいて道を塞ぐ!

配達車は全くスピードを緩めない。むしろ加速した。猛スピードで燃え盛るバリケードへと突っ込む!

ギャギャバァーン!!

バリケード突破!燃え盛る破片を撒き散らし、炎の中から飛び出す配達車!後に続く暴走族も怯む事無く炎に突っ込む。数人が火達磨だ!

交差点を右折!そして左折!また左折!暴走族を振り切ろうと配達車が交差点を右へ左へとジグザグに折れる。しかし、段々と追い込まれているのは確か!

左右の迂回路から先程の回り道暴走族が出現、配達車に左右から挟み込む様に横付け!身を乗り出した構成員が電磁スラッパーで窓ガラスの破壊を試みる。

ギゴキュキュキュッ!!

然し配達車は急ブレーキ!バランスを崩した構成員が車外に落下し、配達車の鋼鉄バンパーにぶつかってそのまま後ろに流れて行った。配達車は直ぐ様二台の改造車の間を抜け右の小路地に滑り込む!

後に続くスカイバイク!しかし、小路地に入って直ぐの位置に配達車が停車している!戦闘のスカイバイクが気付いてブレーキを掛け、衝突を避けようとするも、後ろに続いていた別のスカイバイクが其処に次々突っ込み、全員爆発四散した。

その隙に配達車は先に進む。

路地の反対側を抜け、周囲に暴走族が居ない事を確認し、一般車に紛れて進み始める。そのスピードは緩やかだ。

取り敢えず巻けたか…?

いや、そうでは無い!

正面の一般車が何かを避ける様に左右に分かれ…、なんと、こっちにトラックを世紀末改造した暴走族の車両が!その左右から機銃が突き出され…、


ドバババババババッッ!!!


吐き出された機銃弾が配達車の真正面を蜂の巣せしめる!しかし、ブチ抜かれたのは右側!運転席は左側だ!

グォロロロロロロゥッ!!

改造トラックと配達車がすれ違う。その瞬間、時間が泥濘めいてゆっくりになった。改造トラックの運転手が配達車の窓を見る。薄く開いた窓から黒い布状物体が翻る!

スパン。

軽い音。クルクルと頭が回転し吹き飛び、道路脇の店舗の窓に突入。ポイント倍点!改造トラックはつんのめる様にして横転し爆発四散。何れにせよ、まだ逃走劇は終わってないのだ!車列をかき分ける様に迫り来る暴走族!逃げ場は…対向車線以外に無い!

ヴォルルルルルッ!!

配達車は対向車線に飛び出す!当然の如く前方から弾丸めいて一般車接近!アブナイ!

キャキキキッ!

短く響く音。配達車は右へ急ハンドルして切り抜ける!ワザマエ!しかし直ぐに次の一般車接近。左へ急ハンドルだ!

パァーン!ドギャギャギャァン!!バォンバォンバォン!

次々と迫り来る一般車を見事なワザマエで避け続ける。車列に阻まれ暴走族が追い縋る事は難しい。みるみる内に距離を離されるが、何とか一台の二人乗りスカイバイクが車列を越え、遠くの角を曲がった配達車を追いかける!運転手の背後にしがみ付くメンバーの手には単発のロケットランチャー!

数秒もしない内に配達車が曲がった角を曲がると、その先の道端に配達車が止まる所であった。直ぐ様ロケットランチャーを構え、然る後発射した!

シャバウッ!!!

白線を引き、弾頭が配達車に迫り…着弾、爆発!そしてそれと同時に、二人乗りスカイバイクは横から飛び出して来た一般車に衝突した。

2年前 No.18

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2年前 No.19

洗濯蟻 @arinohito ★iPhone=n7Rebp7mCv

昊のあすなろ ~配達員:19~


遠くから聞こえるサイレンの音。

アスール:…爆発してマス。

クラックリット:お前の乗ってきた車か?

クィアー:wel…破壊痕から、噴進砲の直撃を受けた物と推測。

配達員は自分の乗ってきた配達車(だった物)をじっと見つめている。…如何するつもりなのか?まだ配達の途中だろうに。

アスナ:……あー…、アンお嬢様の小型船を貸して貰うか?

アン:別に構いませんけど…、この惨状は一体…?

アンお嬢様が残骸に近付き、落ちていた装甲板を拾い上げた。

アン:……38口径弾。普遍的な拳銃、あるいは短機関銃。族の襲撃かしらー?

アンお嬢様が装甲板をひらひらと振る。その面には幾つかの弾痕が開いていた。

クィアー:全方位から攻撃を受けてる。衝突痕も少し。一体何が?

クラックリット:…如何やら積んでいた荷物はその鞄の中の物で全部らしいな。良かったぜ…。

アクスィーロ:…………。

配達員は何も答えずアンお嬢様の方を見た。身長差が有るので、見下ろしている形になっている。

アスール:……情報取得完了デス。そちらの配達員さんは『ハルエリオ星系団』の原生種族、『ハルエリアン』デスね。言語を持たない種族デスが、此方の言っている事は理解していると思いマス。

アスールのツアーガイド的知識説明。

アン:…取り敢えず、案内しますわ。着いてきて下さいなー。

アンが自分の小型船を取りに向かう。配達員…アクスィーロさん?がそれに着いて行く。

アスナ:心配だから俺も着いてく。構わないな?

アン:宜しくてよー。


酒場裏の駐機場の隅には、白い流線型の小型船が駐機してあった。大きめのキャンピングカー程度の大きさ。

アン:これですわー。

機体横には『スィーニュ』と赤い古形文字で銘打ってある。アンが手元のキーのボタンを押すと、電子音が響き機体側面が開きタラップが現れた。

アスナ:高そうな船だなオイ。

アン:高そうでは無くて高いのよー?取り敢えず中へどうぞ。

タラップを上がり機内へ。シンプルかつ上品な作りだ。

アン:こっちが操縦席。操縦方法は分かる?

アクスィーロ:…………。

アクスィーロは無言で頷き、操縦席に就いた。如何やって操縦するんだろうか。

……と思ったら如何にも普通に制御盤を操作し始めたので少し驚いた。頭の翼…手?で操縦桿を握り、背中から伸ばした触手がパネルの上を走る。暫くしてエンジンが始動し、車体が宙に浮いた。

後は大丈夫そうだ。

操縦席からアンが戻ってきて、通路を挟んで反対側のドアを開けた。

アン:何かあったら知らせる様言ってあるわー。どうぞ中へ。

アンに続いてドアを潜ると其処は客室。実際キャンピングカー。小さいソファーと机、ホログラムテレビ。観葉植物に、壁には幾つかの猟銃の様な物が飾られていた。…そういえばアンお嬢様はハンティングが趣味だった筈だ。

対面ソファーに腰掛け、アンお嬢様はホログラムテレビの電源を入れた。この世界にもお笑い的テレビプログラムが有るのか。

アンお嬢様が手元のリモコンを操作し、チャンネルを変えた。

『…mて下さいこのタマg…』『…んた一人で陣n…』『…次の曲h…』

パチパチと切り替わるホログラム。

『…bスケt…』『…z害せよ、ランs…』『…今日未明n…』

アン:この時間帯、面白いモノってやってないのねー。

アンお嬢様は一通り番組を見た後、決断的に音楽系の番組にチャンネルを合わせた。


『___墓場で嗤うな少女達。死に急ぐ事も無かろうに___』


和風テクノが流れ出す。画面には、巨大なガラスドームの中に丸い輪の様に変形した鳥居の様な構造物が浮かぶ、赤と黒を基調とした浮島状のステージと、その中央で歌う和風ゴシックな衣装を纏った少女の姿。

『___夜はまだまだこれからよ___』

少女の黒髪に付いている風車と歯車が重なった様な髪飾りが回っている。ガラスの向こうは宇宙空間だ。

アスナ:……超銀河系アイドルとかじゃないだろうな。

アン:あら、良く御存知ですわねー。まさにそれですわー。

アンお嬢様がクスクス笑いながら続ける。

アン:『アーツ』。神出鬼没で正体不明、それでいて超有名。星系銀河、それどころか宇宙全域、宇宙の彼方此方に突如現れ、ゲリラ的ライブで宇宙中を沸かすアイドルユニット。分かっているのはメンバーの名前と簡単なプロフィールのみ。

『___ゆっくり歩いて逝こう…。ゆっくり…ゆっくり……___』

なんか、あれだ。歌で戦ったりしそうだ。そんな事は無いだろうが…。

アン:ある時は交戦化の戦闘区域に突如現れて、歌で戦場を掻き回した挙句、戦争をしていた兵士や司令官達を敵味方の区別無く一切合切ショーの観客に仕立て上げ、戦争を締結させたとか。

アスナ:流石アイドルすげぇなアイドル。

もうダメだ。このアイドルが可変戦闘機でシメヤカに戦場にエントリーして歌い始める所しか頭に思い浮かばない。じゃあくだ。

アン:『ケノン』ちゃんと『フォーモ』ちゃんの名前を知らない人はモグリよー。

ホログラムを眺める。ドーム内の浮島がステージごとぐるりと180度回転。白と水色を基調とした、古城か教会の内部めいた荘厳なステージに変わる。紺色と薄紫色の修道服めいた衣装を着た先程とは違う少女が歌っている。

『___脳内空想の果て、想いで出来た世界は___』


先程とは違う曲だ。少女の背後に聳えるのは、『4』を倒して『又』の字にした様な形状の巨大なシンボル。この世界で言う教会の十字架の様な物だろうか。その周囲には割れ崩れたステンドガラス。

『___謡う孤独な少女を閉じ込める。闇へ吸い込む___』

其れにしても、何処と無く暗い雰囲気が付き纏う様なアイドルユニットである事だな。歌詞の所為とも言い切れない何か重い空気を感じる。

少しして、振動と共に機体を駐機させる音。どうやら配達先に着いたらしい。がちゃりとハッチを開ける音がして、数十秒後、戻って来る。配達は後何件くらいあるのだろうか?

2年前 No.20

洗濯蟻 @arinohito ★iPhone=n7Rebp7mCv

昊のあすなろ ~運び屋代理:20~


再び動き始めた機内で、俺は予て気になっていた事を聞いてみた。

アスナ:アンお嬢様、あの壁に飾ってあるのは…?

アン:…ああ、私の得物ですわよー。

アンお嬢様はそう言って壁に飾られている銃を手に取り肩に預け、その下の棚から革張りのトランクケースを取り出す。…何方も年代物らしい。

ガシャッ、カキョンッ。

レバーアクションショットガンめいたコックカバー取っ手を起こすと本体が中折れ、空薬莢が排出された。…昔のショットガンで見た事あるタイプと混ざっている?銃身は普通の細身の物では無く長方形型をしていた。かなり長い。

アン:『フィンチェスティア M3781 ショットライフル』。この銃はその特注仕様品ですわー。

ガシャンッ!

ショットライフル…ショットガンとライフルの掛け合わせか?確かに外見はどちらにも似ているが。アンお嬢様はショットライフルを真っ直ぐに戻し、机の上に置いた。

その隣に先程のトランクケースを置き、開く。中身は整備用品や替えの弾薬のケース、銃剣やスピードリローダーなどが入っていた。…銃剣?ショットガンに…いや、ショットライフルだから違うのか?

弾が入っていない状態のショットライフルを再び取り上げ、構える。

アン:場合によって片手撃ちと両手撃ちを切り替えてるのよー。

チャキン。

片手持ちで部屋の隅の花瓶に銃口を向けるアンお嬢様。

アン:バン。バン。バン。

ガシャン、ガキンッ。
ガシャン、ガキンッ。
ガシャン、ガキンッ。

バン、と言った後に見事な片手スピンコック!くるりと銃身が折れながら、レバーを軸に一回転し、再び射撃状態へ。…実に様になっている。

アン:後はコレに動きを加えつつ、撃ち捲りますの。先に銃剣を付けて…。

そう言って棒術めいた動きで何度か素振りを行うアンお嬢様。先程のスピンコックも上手い事技の中に織り込まれ、長銃によるガン=カタめいた戦闘術になっていた。最後に普通に狙撃体制になって、バン、と一言呟く。

アン:獲物を狙う時は普通に狙撃ですねー。

アスナ:……俺の脳内インフェルノ。

再び駐機。昇降ハッチが開く音。

何と無く、アクスィーロの配達員っぷりを見てみたくなったので、通路に移動し、開いているハッチから外を見てみる。退廃的に傾いだボロボロのビルの前で、アクスィーロともう一人の人影が商品の受け渡しをしていた。

帰りかけるアクスィーロに、その場に現れたもう一人別の人影が声をかけ、小さいトランクケースの様な物を渡した。どうやら新しい荷物らしい。

帯状触手にそのトランクケースを提げて戻ってくるアクスィーロ。

アスナ:それで最後っぽいな。

アクスィーロの鞄は空っぽに近い様で、だいぶ萎んで小さく見える。アクスィーロはトランクケースを一瞥してから操縦席に座り、機を発進させる。無駄が無くなめらかな動作。

そのまま暫く彼女の運転を見ていたが、その内妙な事に気付いた。機体後部を映すモニター。バックする時などの後方確認に使う物なのだろうが、其処に一定の距離を保ちつつ付かず離れず着いてくる白いフロートカーが見えるのだ。

最初は気の所為だと思ったが、暫く観察してみると、やはり尾行されているに相違ない!

アスナ:ジーザス…。

小さく呟いたつもりだが、後ろのドアが開いてアンお嬢様が顔を出した。

アン:どうかしましたかー?

アスナ:…アンお嬢様、この機に武装は?

アン:機体前後に護身用の小口径機銃が有りますが…。

……うむ、そうか…。視線をモニターに移す。やはり変わらず白いフロートカーが居る。アクスィーロはとっくに気付いて居たらしく、機銃をアクティブに設定し、何時でも撃てる様にしている。

アン:……何事?

アスナ:尾けられてる。恐らくさっき止まった時からだ。

そう言って、傍に置かれたトランクケースを見る。…コイツが何かに関わっている?

昔見たアクション映画を思い出す。その辺の若者を金で釣り、薬やら金やらの運び屋に仕立て上げる。万が一警察にバレても、全ての責任を若者におっ被せて…。

アスナ:…俺は深い怒りに包まれた。この怒りは暫くの間収まる事が無い。

アン:…取り敢えず、届先まで一度行ってみては?

アスナ:…そうだな。気取られない様に…あっちは多分『こっちが一人』だと思ってる筈。

アン:一応銃の準備をして置きますわー。

そう言って引っ込むアンお嬢様。…窓の外は倉庫街。いよいよ持って怪しい雰囲気だ。後ろに居た白いフロートカーも相変わらず付いて来ているが…。

アスナ:見張り…と言う訳でも無さそうだな…。

わざわざ見張りを付けるくらいなら自分達で運べる筈だが…。見張りじゃ無いならば…、このケースを狙っている第三者?ややこしい…。兎に角目的地に向かう他に無いだろう。想定している最悪の事態にならなければ良いが…。


___数刻後。

倉庫街の奥まった一角にある襤褸けた倉庫前。最早通りがかる車も人も無く、自分達と尾行車の二台の他に周囲には誰も居ない。

…尾行車はアクションを起こさない。受け渡しの時をピンポイントで狙うのか?指定された倉庫の敷地内に入ると尾行車はその近くで停車した。俺達はそのまま倉庫の奥へ。少し進むと、積み上げられたコンテナの隅から黒い繋ぎを着た男が立っているのが見え、自分達はソファの置かれた部屋に引っ込んだ。

機体は停止し、駐機。ハッチを開けてアクスィーロが出て行く。離れていく足跡を聞き、少ししてから用心深く動き出した。

アンお嬢様から予備の小銃(と言ってもマグナムめいてはいるが)を貸してもらい、アンお嬢様は自分の長銃を構えている。そっとドアから出てハッチを手動で開け、隙間から周囲を伺う。人影は無い。操縦席の窓からは倉庫の壁しか見えない。…いや待て、さっきの白いフロートカーが…。

アスナ:…ブッダシット!やっぱり第三勢力か…!

フロートカーが停車し、五人の屈強な男達が出てくる。…見た目があからさまにヤクザなのだ!五人の男達は、傍の倉庫の方へ消えた。多分あそこで取引めいた何かが…!

注意深く見守っていると…。


タアアァァン!!!


アン:銃声!!

懸念すべき事が起きてしまった!忽ち連続して銃声と怒号が響き渡る!

アスナ:アイエエエ…!マズイぞ…!!

怒号と銃声が近づいて来る…。倉庫の通用口がシメヤカに開き、中から飛び出して来たのは…、アクスィーロ!その後ろから屈強な男達!銃を持っている!そして…アクスィーロを狙い始めた!

アン:撃ちますわー!

バンッ、とハッチを開け、アンお嬢様が銃を構える。


ズダァンッ!ガシャン、カキョンッ!
ズダァンッ!ガシャン、カキョンッ!
ズダァンッ!ガシャン、カキョンッ!


銃を撃ち始めたアンお嬢様に続き、俺も拳銃で支援攻撃!アクスィーロを狙う銃口が乱れる!

2年前 No.21

洗濯蟻 @arinohito ★iPhone=n7Rebp7mCv

~逃走劇:21~


交錯する火線を潜り、滑らかな低空飛行でマニューバしながらアクスィーロがハッチへ滑り込む!

ダンッ!バゴゥム!!ズダァンッ!ガシャ、カキョンッ!!

その瞬間、機体に銃弾が浴びせられる。こちらも撃ち返す。今の所ギリギリ防げてはいる様だが。

アスナ:発進!発進だ!!行け、行け、行けーッ!!

アクスィーロが操縦席に座ったのを確認し、ハッチを閉めたアンお嬢様が壁際の自動ターレットの管理装置に飛び付く。俺も反対側の制御装置に就いた。

キュルルルルッ!!!

フロートカー特有のエンジン始動音。急激に加わるGが急発進の速さを物語る。機体がドリフトめいて回転し、倉庫出口へと向かった!

銃声が遠ざかるが、奴等も追いかけて来るだろう。

アン:さっきの乱射戦で2人ほど、確かな手応えがありましたわー。1人は恐らく即死…。

アスナ:…後方の銃塔、何時でも撃てる様に。奴等、死ぬ気で追って来るぞ…!

果たしてそれは直ぐにやってきた。無数の重装甲フロートカーが距離をぐんぐんと詰めてくる。……お出ましか!

アスナ:来た!敵来た!はやい!

アン:…あの装甲…抜けるかしら?

アスナ:試さないと分からない。それ撃て!やれ撃て!

ダダダダダッ!ダダダダダッ!

車体後部の銃口から火が噴き出す。…糠に鳩鉄砲をぶち込んだごとく手応えが無い。

それでも牽制にはなる!

アスナ:取り敢えず加速!加速あるのみ!

このままクラックリットさんの店に逃げると報復が怖い。ふと思いついたのは、ステーション、ジャンクヤードだった。

アスナ:ヘイ、アクスィ!ステーションだ!ステーションへ向かえ!ジャンクヤードだ!

アクスィーロは無言で機体を急制動させ、交差点に赤信号ギリギリで突っ込み、ドリフト気味に右に折れた。

後ろから追いかけてくるフロートカー達もコレに続く。車体後部を映すカメラウィンドウにはフロートカー上部の銃座が動き始める姿が映し出された。

アン:ヴォローイングHM2!しかも二連装!?

火力は圧倒的に相手が有利。実際アレが当たると痛い。些かマズイ状況か…?

ギャガガガガガガガガ!!!

アン:う、撃ってきましたわよ!この船の装甲じゃアレを防げないわー!

キュキュキュッ!!!

華麗なハンドル捌きで躱せ!機体を掠めて銃弾が通り過ぎる。負けじとアンお嬢様が機銃を撃つ。お嬢様が…機銃を?何たるマッポーな絵面か!

アスナ:このままじゃピンチで危ないのは確定的に明らか!もっとスピードを!

グゥン、と更に加速度が加わる。しかし、その先は信号待ちの車列!

如何するのか、そう思った時、アクスィーロは機首を急激に上げた!

アン:ひぃっ!?

機体は車列を飛び越える様に浮き上がり、一瞬の浮遊感の後に船底を地面に擦りながら沈み込んで体制を立て直す。

ガッゴォン!!

追跡車達は車列を無理矢理抉じ開け跳ね飛ばしながら尚も追ってくる。何たるゴリ押しか!

目的地までは…まだ遠い。視界の遥か先に港のガントリークレーンめいた建造物の列が見える。あそこまで行かなくては…。


__さて、一方その頃酒場では如何なっていたかと言うと、クィアーとアスールがお互いの電子ポートを使って情報統合及びシステムのアップデートを行っていた。二人の間には幾つものホログラムウィンドウが並んでいる。

更にアスールの背中から伸びたコードは宙間航図に繋がっており、その上にもホログラムウィンドウが開いていた。

クラックリット:まさかこんな方法で情報連結するとは…。…大丈夫なのか?

カウンターの向こうで食器を整理しながらクラックリットさんが訊く。テーブルを挟んで向かい合って座っていたクィアー達は大凡の人が聞いても良く分からない様な機械的専門用語を早口で交わしつつクラックリットの問いに応える。

クィアー:sef. この辺りは情報濃度が薄い。レスポンスは上々。wel…船が出来たらまた情報を連結する必要がある。

アスール:最新版の航図をアップデート出来て良かったデス。私の持っていたナビゲート情報とこの宙間航図は少し情報が古かったので…。

クラックリット:まぁ、中古品の中から状態が良いのを選んで貰ったんだ。多少は仕方ないさ。

宙間航図の上のウィンドウには【アップデート中……71%完了】の文字。

クィアー:wel. 最近亜時空航路の深度レベルが更新された。深度レベル5から7までの移行が始まっている。

アスール:私達はその先を行くんデス。深度レベル8はまだ誰も使っていませんから。本当にクィアーさんには驚かされマス。

亜時空航路。早い話がワープする時に使うルートの事で、レベルによってその安全聖や転送スピードが異なる。レベル7が今の所最新であるが、クィアーは更にその上のレベル8を開拓しようとしているのだ。

クィアー:aut. この航路は本当に危険。簡単に使える物では無いし、融通が利く訳でも無い。

アスール:普段使用するのはレベル8デスが、レベル7は予備航路になりマスね。

ヤマトのワープ、それも最初期の慎重なワープ手順をずっと使い続ける様な物だ。連続ワープなど以ての外。……それをなんとか出来てしまうのが恐ろしい所ではあるが。

【アップデート中……100%完了】

ウインドウの表記が変わり、【アップデート完了】の文字が現れる。


ジリリリリリッ!ジリリリリリッ!


その時、店のカウンターに置いてある機械が甲高く金属音を巻き上げた。クラックリットがその機械の受話器を取り上げる。テレビ電話めいてホログラムが双方向で繋がった。

クラックリット:あーもしもし?こちr(((


アスナ:クラックリットさんか!?良かった、みんなそこに居るな!?

尋常じゃない俺の声に、酒場の皆がキョトンとした顔を見せる。

クラックリット:ああ、……何かあったか?

アスナ:配達の最中にどうやらマズい自体に巻き込まれた!汚いな流石マッポー汚い。現在無数の装甲車に襲われながらステーションに向かっている。奴等本気で俺達に病院食を食べさせようとしている。どうした物か?

切羽詰まりきった状況下。俺は尚もしつこく追って来る装甲車達を見据える。

アスナ:現在何とか対処出来てるが相手のガードが固い。このままじゃジリー・プアーなのは確定的に明らか!兎に角如何にか何とかせよ!

テレビ電話の向こうに居るクィアーは数秒考える素振りを見せ、呟いた。

クィアー:…何とか…する。

クラックリット:何とかっておい、何する気だ?

クィアー:取り敢えず…見てて。

クィアーはそう言って、自身の端末のキーボードを猛然と叩き始めた。

2年前 No.22

洗濯蟻 @arinohito ★iPhone=n7Rebp7mCv

~鷹の眼:22~


クィアー:___getcya. 捕まえた。

クィアーの操作したキーボードの上にホログラムが浮かび上がる。其処にアンの機体の立体映像が映し出された。

クィアー:座標特定完了。システム侵入。情報同期。

クラックリット:何してるんだ?

クィアー:通信回路からアスナ達の現在位置情報をハッキングした。位置情報は随時私の端末に送られる。

カタカタとキーボードが鳴るその横で、アスールは何らかの処理作業に没頭していた。

クィアー:wel…、アスール。今から私が転送するデータを元に逃走ルートを割り出してアスナ達をナビゲートしてほしい。アップデート後の試運転。

アスール:了解デス!

カカカカッ、と音を立てながらアスールの眼で光が明滅する。その脳内では想像もつかない様な処理が行われているに違いない!


__________


彼女達を追う走行フロートカーは電子機器を最低限しか積んでおらず、直接ハッキングしても大した問題にはならない。そこで、アスナ達の乗るアンの機体識別コードから得た座標の周囲にある、凡ゆる電子機器を同時にハッキングし、彼女達の位置情報を取得する。

それと同時にこれらの遠隔操作も行い彼女達の逃走の邪魔になる物を排除して行く。つまりは信号を青にしたり、自動運搬システムのコンテナを動かしたり、電光掲示板を使って一般車両を誘導したりするのだ。

リアルタイムで更新される位置情報をシミュレートし、そのデータをアスールへと送る。アスールはそのデータを自らのナビゲート情報と照らし合わせ、安全なルートを算出。クィアーの構築した情報転送チャンネルから機体識別コードを使って彼女達をナビゲートするという訳だ。

何たるハッキング技術とハイテックな人口頭脳システムの合わせ技か!機械操作に特化したクィアーとナビゲーションに特化したアスールのワザマエがトモエめいた見事な調和を成し、そのワザマエを10倍にも100倍にも引き上げているのだ!


__________


アスナ:おお、でかした!アクスィ、このナビゲート通信を見ながらステーションに向かうのだ!

アスール:バックアップは私達に任せて下さい!しっかり目的地まで御案内致しマス!

運転席の操作パネルの一角にあるホログラム投影装置に胸像めいたアスールの姿が浮かび上がり、その下の画面にカーナビめいて位置情報が映し出される!

アクスィーロがその画面を一瞥、次の瞬間猛烈な勢いでハンドルを切った!


クィアー:sef. コース形成完了。エリア1192から1185。

アスール:コース転送!


キャキキキキキキ!!!

曲がった先は車列の真ん中が大きく開いたストリート。クィアーの情報操作で緊急走行中の物資輸送車列が通る事になっていたのだ。


クィアー:nxt. ルート645から646。ポイント切り替え。

アスール:了解デス!アクスィーロさん!次の三叉路を操作しマス!そのままの速度で直進して下さい!


進行方向上に在った跳ね橋とシーソーを組み合わせた様な三叉路が一瞬進路と繋がる。その隙を突いて右の通路へと侵入。追っ手のうち2台がタイミングを逃して停車した。

アン:残弾パックは残り2つですわ!

アスナ:なるべく無駄弾を撃つな。細かく正確に、ピンポイント狙撃だ。


クィアー:nxt. ルート334のトンネルを右車線のみ開通。車列先頭を本線へ。


前方の合流路から一般車両が数台現れる。アクスィーロがそれを見事に躱し、そのままドリフト気味に合流路へ侵入した。後を追う装甲車が足止めを食らうが、何台かが反対の合流路へ無理矢理侵入して後を追い始める。


クィアー:wel…緊急コース形成。605から675。


ギュイイイイ!


進路上に在った建物の一部が迫り出し、そのまま倒れる様に開いてバンクを形成した。その上をドリフト走行する機体。アンお嬢様が白眼を剥きかけている。


クィアー:nxt. 1072から1078。スタンバイ。

アスール:了解デス!アクスィーロさん、速度を165kmまで加速して下さい。その機体のスペックなら耐えられマス。


言われるが早いが、アクスィーロが触手でバーナーを操作し操縦桿を強く引いた。その瞬間、Gが加わって身体が後ろに持ってかれる様な感覚がした。


そして。


ギャギャバァァァァァン!!!


高速道路の坂道から飛び出した機体が雄々しく宙を舞う。一瞬だけ重力が無くなり、内臓が浮く感覚がした。

アン:あぁあぁあああぁぁぁ!!!??

アンお嬢様の悲鳴が響く。ああ…永遠が…見えるゥ…!!


ズボゥンッ!!!


丁度右からやってきた輸送船の天板で一度バウンドし、更にその先のビルの上へと着地。更に下から迫り出してきた地中プラントの上を伝う様にしてバウンドしながら着地した。

アン:し"ぬ"か"と"お"も"い"ま"し"た"わ"!"!"!"!"!"

顔を引き攣らせてくしゃくしゃにしたアンお嬢様が悲痛な叫び声を上げる。その顔はくしゃくしゃだ。

アスナ:ここまで来てまだ追ってくるかコンチクショウが!

残り…2台。ステーションまで残り数キロ。撒けるか…?

いや!撒ける!こちとらクィアーとアスールのナビゲートとアクスィーロの操縦テクが合わさり最強に見える!

アスナ:流石だクィアーさん。後でジュースを奢ってやろう。

クィアー:aut. それほどでも無い。後、スモチジュースは嫌。

アスナ:何でや!スモチジュース美味いやろ!

クィアー:アレをストレートで飲める貴女が変。

アスナ:ちくせう。

そんなやり取りを他所にアクスィーロが猛然とハンドルを切る。その先には交差点。信号は赤。物凄い勢いで往来する車列。

この流れは、まさか。


クィアー:進路上の信号を全て青にする。


パッ。パパパッ、パパパパパパッ!!!


ゴウランガ!!進路上にある全ての青信号が点灯!!最早俺達を止める物は何もにい!

只管真っ直ぐ進み切った先に、いよいよ目的地が見えてきた。

クィアー:残りの処理も任せて。この先の踏切で排除する。

アスナ:何をする気だ?

クィアー:sef. 無人列車を5両、事故に見せかけて発車させた。wel…。

アン:…まさか、それで奴らを…?

クィアー:sef. そちらの位置から目的地までの間で確実に障害を排除できる。

作戦はこう。『走ってくる電車をギリギリ避けて進め』。分かりやすいね。

アスナ:……本当に大丈夫なのか?ソレ。

クィアー:sef.

アスール:反重力推進プレートを破壊されない限り大丈夫デス!

アスナ:…まぁ、シカタカナイコト。ダイジョーブ。

おお、数百メートル先に立体交差踏切!それを目掛けて突き進む機体!線路の右からは無人制御の5両編成貨物列車が黄金連結バッファローめいた勢いで接近してきている。

後ろからは装甲車。益々攻撃の手が厳しくなる。

俺はクィアー達のナビゲートとアクスィーロの操縦テクに掛ける事にした。どうやらアンお嬢様も気が気では無いらしく、胸の前で十字を切る様な仕草をした。……いつか見た『又字架』。

取り敢えず俺も祈ろう。


アスナ:メイン盾の加護を此処に。囁き-祈り-詠唱-念じよ。ブッダ-ジーザス-ナムアミ-アーメン……。

2年前 No.23

洗濯蟻 @arinohito ★iPhone=n7Rebp7mCv

~逃走の後:23~


踏切、俺達、列車、追手。それらがトモエめいた勢いで交わろうとしている。緊張の一瞬。後部機銃のマガジンポッドに決断的に替えの弾倉を押し込みながら俺は祈った。アンお嬢様も相手が近付けない様に牽制の手を緩めない。

アクスィーロも…多分必死に運転している事だろう。……多分。きっと。恐らく。メイビー。

アスナ:良いぞ…このまま進むんだ。行けるぞ!

が。


その時だった。


ダダダダダゥッ!!!


アスナ:Uh-Oh。

機体を揺らす衝撃。微細な振動。鳴り出す警告音。

アン:ま、拙いですわ!右後部推進プレート付近がブチ抜かれましたわよ!?

ビーッ!ビーッ!ビーッ!

煩わしい警告ブザーと共に損傷箇所を示すホログラムが浮かび上がる。

クィアー:aut!! 直ぐに対処する。アスール、ナビを御願い。

アスール:了解デス!

これはマズイのではないか?ブッダは寝ているのか?

アン:…エンジン出力低下…!ああそんな!

アスナ:ブッダは寝ているか!?残ってる推進器にエネルギー回せ!


キュルルルル!!


回路が切り替わり、機体が振動する。踏切まで間も無い。このスピードだと10秒もしない内に…。

アスール:列車側のスピードを調節しマス!

クィアー:sef!! そのままスピードを保って。一秒近く余裕がある。

おお!ブッダ!ブッダが起き始めている!ギリギリだ!しかし流石にキツい。追跡車の上部ハッチから長い筒を持った男が現れる。


シャバゥッ ゴゴゴォン!!!


矢継ぎ早に繰り出されるロケット弾を滑らか動作で躱し、逆に火を吹いた此方の機銃弾が男の頭諸共吹き飛ばした。ポイント倍点!

アスナ:ハッハァッ!見ろ、ワザマエなカウンターで返した。調子に乗ってるからこうやって痛い目に遭う!浅はかさの愚かしさ重点!

ガッツポーズ!今の内が好機。体勢を立て直した機体がとうとう踏み切りの立体交差に侵入。然る後弾ける電車の通過音。強振動。


おお!ゴウランガ!!ゴウランガ!!見よ、この鮮やかなスリヌケ・ムーヴメントを!!そしてこの中にエルフのけんしが居れば見えたであろう。
急ブレーキも間に合わず列車に衝突し木っ端ミキサーめいて空中に打ち上げられた追跡車の残骸が飛び散り爆発四散するのを!

クィアー:やりました。

アン:ああああ死ぬかと思ったわよおおお!

アスナ:……みんなよくやった。後でジュースを奢ってやろう。

安らぎが溢れあからさまに安堵する一同。流石俺の仲間達は格が違った。

アスール:このまま目的地まで案内しマス!

アスールがナビゲートを通常運転の案内表示に切り替えた。追っ手が俺達を見つける事はこの後おそらく無いだろう。

クィアー:通行誘導完了。情報隠蔽は任せて。

ガクンガクンと揺れる機内で俺はこの逃走劇での一番の功労者であるアクスィーロを褒め称える。

アスナ:ヘイ、アクスィ。お前はよくやった。とてもよくやった。お前の操縦テクが無ければ俺達は全員オタッシャ重点だ。有難う。

アクスィーロ:______。

アクスィーロは何も言わず、此方を振り返る事も無かった。賛辞に対して一片の喜びも映さぬその淀んだ瞳!追っ手を退けた歓喜、安らぎ。真っ直ぐ真正面を見据えながら、アクスィーロは笑顔と言う名の圧倒的無表情!あれ程の極限状況に居たとしても、ミラーに映る彼女の蕩けた笑顔表情が変わる事は決して無いのだ。

機体は薄煙と水蒸気を巻き上げながら、連絡を受けたウーフォの待つジャンクヤードへとシメヤカに滑り込んで行った…。



ウーフォ:アイヤ、最初トテモトテモ吃驚したネ。急いで整備倉庫一つ開けタヨ。

アン:修理にどれぐらいかかりますの?

ウーフォ:走行の張り替え、ソレに反重力エンジン交換にマルット4日ネ。ベリーイージーなビズよ。

ジャンクヤードの一角にある古びた倉庫内部で俺達は休憩していた。アンはすっかり傷だらけになった愛機を前に放心しかけたがウーフォのフォローとワザマエで持ち直し、今はウーフォと修理費の相談に入っている。

アクスィーロは会社への連絡があるらしく、今は居ない。

そして俺はと言うと。


アスナ:___おお……ブッダ…!!


修理とオーバーホールが終わり、機体も新品同様に再塗装されたあの三胴艦、『ミス・トレス号』の仕上がりを見て絶句していた。

既にエンジンもシールドジェネレーターも組み込まれ、後は武装及び内装の改造とチューンアップを残す所となったのだ。

そしてコレが俺の待ち望んでいた時間でもある。そう、それは………、


アスナ:___武装として何を積むかの算段だ!

センシャル:兄の命令で質良いの取ッておいたッスヨー。

対汚染ツナギを腰元で半脱ぎ袖縛りした黒タンクトップに赤キャップの少女、センシャル。相変わらずの健康的アトモスフィアだ。

アスナ:……して?それらのブツは何処に?

センシャル:これッス。


ギゴガガガ………


センシャルがスイッチを入れると、ミス・トレス号の格納庫の壁面や床面が迫り出し、悶絶する様な量の数々の武装兵器が展開された。

アスナ:ファキゴナシット……!!

其処に並ぶはまさにロマン。俺は目が輝くのを感じた。

センシャル:エート、あのサイズの艦にブッ込めるのはこの中でも大体『9単位』までッスネー。ヤリクリするなら多少前後するカナ。

流石にあのサイズの艦にこれら全部の武装を組み込めるスペースは無い。……つまり。

アスナ:……厳選のお時間となるワケか。心が躍るな!

センシャル:時間もお金もタップリあるッス。じッくり選ぶと良いスヨー。自分は仕事があるので一度戻ッてるッスネー。

そう言ってセンシャルは金属音を立てながらキャッチウォーク上へ消えた。

………取り敢えず片っ端から見るとするか…。

2年前 No.24

洗濯蟻 @arinohito ★iPhone=n7Rebp7mCv

~選択:24~


俺の脳内はシメヤカに澄み渡っている。片手の装置から発生するホログラムの武装選択画面から在庫の武器を選択するのだ。

ホログラムには各武装の名前や種類や用途の説明、その効果やステータスまでもが表記されている。ゲームの操作めいたアトモスフィアだ。

武装のジャンル。実弾系統、ミサイル系統、光学系統、その他の系統から細分化された表記を片っ端から調べて行った。

ネオアームストロングナントカ砲。恒星間次元反動弾道弾。波動レーザー砲。火焔直撃放射機。ドリルパイルバンカー。様々なモノが在るものだ…。実際興味を唆る。選択が捗るな。

アスナ:そうだな、ダークマターとフォトン関係で調べてみるか…。安定した出力と親和性を重点な。

黒色粒子砲…、ダークビーム…、フォトンメーザー、…コレは光子魚雷…。黒色物質重圧砲、光子転換レーザー砲…。多連装暗黒ミサイル。

ふむ、なんと言うか…アレだ。かなり際どいぞコレは。こんな感じの装備で大丈夫か?

俺が想像するのは圧倒的『弾幕』。そして『板野サーカス』。多連装アサルトマイクロミサイルとかビットとかファンネルとかホーミングレーザーとかそんな感じのものだ。一番良いのを頼みたい!

アスナ:この際威力はどうでも良い。必要なのは『弾幕』だ!百発のスリケンで足りぬなら一千発のスリケンを投げるのだ!

まず、『弾幕である事』。そして『誘導性能がある事』。『連射が出来る事』が最低条件だ。それを暗黒物質と光子力で変換出来るのが良い。

理想は多連装な感じのミサイルとホーミングレーザー、近接戦闘用のバルカン、そして補助兵装を二つは欲しい。

数的にはミサイル×2単位、レーザー×2単位、バルカン×2単位、補助兵装×2単位。コレで『8単位』。後はどうとでも出来る。……いや待て、バルカンは2つで1単位であろう。アヴェンジャーとは違うのだ。

コレでミサイル×3単位、レーザー×3単位に増やせば…丁度9単位では無いか!


ゴウランガ!方向性は決まった!


アスナ:機体は三胴艦だ。三胴其々にミサイルとレーザーを1単位、バルカンと補助兵装は中心部に配置…っと。

ピポピポと電子装置を弄くり、武装のレイアウトを決める。

アーイイ!タノシイ!!心が躍る!

俺の脳内はお祭りフェスティバルのカーニバルめいてハイテンション。試行錯誤に次ぐ思考錯誤と施行錯誤を繰り返し、至高の嗜好へと志向し、方向性の指向を行うのだ!

余裕があるなら一つ上のグレードを。変わった特性があるならそれを。効率が高ければそれを。奇を衒って有衒実行だ!!

途中でウーフォが様子を見に来たが、俺の気迫に圧されたのか無言で引き返していった。アンお嬢様とセンシャルが差し入れの小腹満たし食を差し入れに来た。うん、おいちい。

アスナ:……アー…、弾幕はパワーです…、アーイイ、レーザーの雨を降らせるのです…、……ウッ……、ミ、ミサイルポッドは三角形コンテナがベストなのです…アー…イイー…、お利口さんな光子魚雷を喰らわせるのです…コインいっこ分も残さず原子の塵に帰すのです…遥かにイイです…。オ、オブジェ!

段々と達し袋が温まって来ました…。これはもうダメかも分からんね。

そんなこんなで多分1/4日は格納庫に篭っていたであろうか。いよいよ冗談じゃない部分までテンションが上がって来た所で、武器の最終選択と調整が終わった。


アスナ:ハレルーヤ!シミルーヤ!俺は成し遂げた!ゴリッと成し遂げた!!ついに完成したぞ!!!至高の逸品が!!!!


目の前のホログラムには最終形態のミストレス号が浮かんで回転していた。


ウーフォ:……本当にコレでイイネ?

アスナ:……アー…イイ…!遥かに……!!

ウーフォ:……ヨクココまで調整シタね…。このゴリゴリ戦力キッチリカッチリ9単位に納メタ事オドロキよ……。

アン:主に顔が気持ち悪くなってますが大丈夫ですの?

ああ、大丈夫だよ。俺は至って健康さ!もう何も怖くない!今の俺なら頭からレーザーが出るぞ。たっぷりとな。

ウーフォ:取り敢えずコノ方面で武装組込ミネ。内装届イタラソレも組込ミヨ。完璧な最終調整まで5日カカルね。

つまり、5日後には行動を開始出来ると言う事。取り敢えず、今日の所は引き揚げか。

アスナ:これからも世話になりそうだな。宜しく頼むぞホント。

ウーフォ:コチラもよソレ。今後トモ御贔屓するヨロシ。


取り敢えず、帰りはクラックリットさんが呼んだ無人タクシーめいたモノで帰る事になった。こっちに来る時に宙間航図などの荷物も持って来るようだ。

倉庫の外でアンお嬢様とクラックリットさんが来るのを待っていると、其処にアクスィーロも戻ってきた。あの配達鞄と帽子と社員証を身に付けて居ない。

アン:……彼女、クビになったみたいよ。

アスナ:クビ!?

アン:ほら、此処に来るまでの経緯。

アスナ:あ…ああー…。

配達車の爆発四散。ヤバい取引現場に関与。カーチェイス。その他諸々。確かにクビになっても可笑しくはないが。

アクスィーロは何も言わず、特にリアクションも無いまま自分の横に立つアンの横に並び立って居る。

アスナ:代わりの仕事は?

アン:さぁねー。彼女に聞いて頂戴。


……気が重いぞ、なんと無く。

取り敢えず立っているアクスィーロの前に歩み出る。アクスィーロは俺の頭の向こうの何処か遠くをジッと見ている。

アスナ:アー…、ちょっと良いかねアクスィ?

……レスポンスは無い。仕方無く続ける。

アスナ:アート…、ウン、アレだ。仕事…、無いんだろ?……アアー、その、アレと言っちゃナニだが……。

一拍置く。尚もレスポンスは無い。

アスナ:アンタも見たと思うが…、あのフネを動かすにゃヤバい級の操縦テクとワザマエを持つ奴が必要だ…。しかし我等の仲間内にはあのフネを動かせる奴が居ない。……んでだが、俺はアンタにそのワザマエを見た。

この際まどろっこしいのはアレだし、キッパリ言ってしまおう。

アスナ:……我等のビズ…、つまりな、アンタを俺らの商会の専属操縦士として雇いたい…のだ、が……。

俺は俯きながらそう言った後頭を上げ、その後心臓が止まりかけた。


………無機質な笑顔が、俺の鼻先数十cmの位置に存在していたからだ。

アクスィーロの顔だ!


アスナ:!!?!!??


思わずビョン、と飛び退いてしまった。いや、誇張抜きで死ぬかと。色々飛び出るかと。

アスナ:アー…?……アクスィ?

アクスィーロ:________。

暫し見つめ合う事たっぷり20秒。アンお嬢様がへどもどし始めた所で、やっと相手が動き出す。

キリキリキリキリキリ

時計仕掛けの軽石が擦れ合う様な奇妙な音を立てながら直立不動に戻る。顔はこちらに向けたままなので、最終的に見下ろされる様な形だ。


ぽす


そしてなんか柔らかいものが肩に乗った。

2年前 No.25

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2年前 No.26

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1年前 No.27

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~出発前日:27~


俺達はこの日、ステーションに集まっていた。

出発に向けての最終準備の為である。

ウーフォ:アイアイ、オーライ、オーライ。アイ、ストーップ!

我等が商船が納められている格納庫では現在武装や内装、各種荷物などの積み込みの真最中であった。

あの古ぼけた船体は嘗ての哨戒艦としての威容を取り戻し、更に装甲マシマシのガン積み、其処にシールドジェネレーターと各種武装が組み込まれた事によりスケールアップしていた。

機体左右の輸送ブロックの前部に組み込まれたミサイルポッド。三角形のセルが敷き詰められた其処を見て脳味噌がぐわんぐわんしたり、機体各部に増設されたホーミングレーザーの砲口に身悶えたり、商船一隻に積むにはあまりに大きくゴリゴリ過ぎる出力のエンジンを見て笑いが止まらなくなったり、色々忙しない事だ。

アスールはクィアーと共に船のコンピュータと接続して情報の同期を行っており、アンはクルルァを連れ回し火器管制システムの調整に余念が無い。

クラックリット:………此処まで長かった様な、短かった様な。

アスナ:クラックリットさんには感謝の意を隠さない。まさか宇宙(ソラ)に出た後もサポートを引き受けてくれるとは。

クラックリットさんは拠点の提供だけでは無く各種仕事の斡旋や情報の提供等を手伝ってくれるらしい。つまり商会のホームはこの星のこのステーションという事になる。付近の星系にある通称連合との兼ね合いも一部任せてもらえる事になっていた。

ウーフォの陣頭指揮の元で次々と運び込まれていく各種内装や荷物達。既に簡単な仕事の依頼も選出して貰っているのは非常に有難い。

アスナ:何はともかくスモチのジュースサーバーは是非とも入れたかった。あって良かった。

ウーフォ:モノ好きなヒトもイルものネ。

アスナ:毒食う虫は皿も大好きという名セリフを知らないな?つまりそういう事だ。

そう言って俺は持っていたスキットルに口を付けた。
コレはこっちに来て持っていた持ち物の中に入っていた物で、要はよく映画に出てくる平たく湾曲した小さい金属製の水筒の事である。

俺はスモチジュースを入れているが。

クラックリット:そう言えば…アクスィーロは?

アスナ:知らないな。その内カカッと帰ってくるだろう。

ウーフォさんは午前の内に全ての仕事を終わらせるべき、後は宴をやるべきと宣うのでそれは良いなと俺達も仕事を手伝いに出た。

取り敢えず貨物コンテナの様子を見て、ぐるりと船体の周りを回る。

船の真後ろではエンジンの調整中で、其処で中のエンジンルームで作業しているセンシャルがどうやら手伝いを欲しがっていた事を聞いて、普通なら着かない様な速度できょうきょエンジンルームにエントリーすると、

センシャル:あッ、アスナさン!丁度宜しい所ニ!チョット手伝いを頼ンで良いッスカー?

と大歓迎状態だった。センシャルは機関の下で作業をしているみたいだったがその機械の一部が傾いて落ちそうになっているのを見て近くで素早くそれを支えた。

センシャル:有難うッス!アスナさンに暇が有れバ、もう少シダケ手伝ッテ欲しい箇所が幾つカ…。

アスナ:黄金の鉄の塊の精神力を持つ俺に出来ない事はあんまりにい!

センシャル:なら少しの間だけ、ココを支えてて貰ッても良いッスカ?自分一人だとどうにも……ット。

ギシッ、ギシギシッ

大丈夫なのか?何やらガタピシ来てるが。まぁ元々ジャンクだった部品も有るし、多少は仕方ないか。

センシャルはスパナを持って機関部の下のスペースに潜り込んで行き、モソモソと作業を進めている。俺はそれを支えながらじっくり観察……おっといけないぞ!こんな事では!

フィヒヒ。

センシャル:………あの、チョット良いスカ?

アスナ:何だ、槍から棒に。

作業の手を休めずに、センシャルが言う。
俺も支える手をそのままに答えた。

センシャル:アスナさンは、コレに乗ッて何処まで行くンスカ?

アスナ:陸海空魔界から銀河の果てまで楽勝よ。無限の彼方、亜空の果て、26次元やら逆流空間やら。目指すは恒星ケンタウリ!

センシャル:……スゴいッスネー…。

亜空間航路なら光速以上でブッ飛ばせるからな。滑稽速だわ。

センシャル:自分もアスナさン達みたいニ宇宙を駈けずり回りたいッスナー…。

アスナ:宇宙行かないのか?

センシャル:あ、イエイエ!そう言うワケじゃ無くッテー……その…………。

それっきりウンともスンとも言えなくなったのか、センシャルは話題をスルーさせる方向へシフトさせた。

センシャル:そう言えば……アスナさンッて変わッた目の色してますヨネー。

アスナ:ああ、これか。……そうか、そうでもあるか。

今までとんと忘れていた。今の俺の目は俗に言うオッドアイだった。左右で違う色の目をした猫は白猫に多かった気がする。俺主観で。
当然猫を擬人化したキャテラース人にもオッドアイは居るだろうが……。
ロシアンブルーの変種のネベロングでオッドアイ。まあ少なからず居るのだろうが此処では珍しいモノなのか。

オッドアイと言えば厨二病ネタの鉄板だ。

なんかまがんだとかふういんだとかのうみそにわるいものばかりついてまわる。こわい。

アスナ:特に気にしても無いし気にされた事も無かった……珍しいだな?

センシャル:……その、何と言うカ。アスナさンは『ハーフ』じゃ無いか、ッて思ッたンス。

アスナ:『ハーフ』?ハーフってとアレか、違う種族同士が混ざってポン的なアトモスフィアか?残念だが俺はハーフではにい。ハーフだったら良かったのか。

センシャルが手を止めて、ズルズルと機械の下から出て来る。どうやら手を離しても良さそうだったので、俺も機械から手を離した。

アスナ:しっかり留まってるな。流石センシャルは格が違った。

機械の下から出てきたセンシャルは、何とも形容し難い表情をしていた。

センシャル:……コレ、見てくれますカ?

センシャルは被っていた帽子に手を伸ばし、ゆっくりとそれを脱ぎ取る。
そこにあった物を見て、俺は少し息を飲んだ。

アスナ:……おいィ?


センシャルの頭から突き出している耳。右は見慣れた猫耳。しかし左側は、兎耳だった。

センシャル:その……もしかしたらッて思ッたンスけどネー…。

ぴこぴこと揺れるそれを見て、俺の頭がラグナロクになりかける。

成程、『左右でモノが違う』=『ハーフ』って事か。納得した。そしてこの様子だとセンシャルは……。

アスナ:ヴォースゲー!何これカッコイイ!カワイイ!!触ってイイ?!

センシャル:ふぇ!?

アスナ:ってかもう触る!マッハで!

この後めちゃくちゃ弄り倒した。
センシャルが顔を紅潮されくたりとしている様は最高に素晴らしい。同士なので何も問題がにい。

アスナ:ハーフって素晴らしいな。

センシャル:変じゃ…無いッスカ……?

アスナ:それが変と言うのなら俺は超変だな。流石俺の格が違った。

センシャルがくたりとしながら上目遣いでこちらを見上げてくる。目と目が合う。手と手が触れ…ない。

センシャル:……仕事に戻るッス。

センシャルはそう言って苦笑しながら機械の下に戻って行った。愛い奴め。

丁度その時、表で俺を呼ぶ声がしたので俺はセンシャルにちょっと行ってくる事を伝え、カカッとシメヤカに退出したのだった。

1年前 No.28

洗濯蟻 @arinohito ★iPhone=n7Rebp7mCv

~前夜祭:28~


その日の夜は我等商会のメンバーとウーフォやセンシャルだけが一同に会し、出発前夜の式典めいた宴になった。と言っても、十人にも満たないほんのシメヤカな物である。


___明日の朝、我等星から飛びます___。


そう考えるだけでも心が静かに踊る。簡単な料理を食べ、スモチジュースを飲み、ポツポツと語り合う。今までの事、これからの事、何時かの未来の事を。


アスナ:それにしても…今から緊張とか期待とかそう言ったものででストレスがマッハなんだが?

クラックリット:そりゃ誰だってそうさ。

アン:行ってみると意外に気楽な物ですの。

クィアー:バックアップは私達に任せてほしい。もう何回も演算処理をシミュレートした。

アスール:私がしっかり宇宙を目的地まで御案内致しマス!

クルルァ:何か良く分かんないけど私も手伝うよ!


暖かいな。何たるパーツ一体感。迷いが実際一切無い。
どうでも良いがアクスィーロって普段何食べてるんだ?食事を必要としない種族なのか?ハルエリオンって。

ウーフォ:そうそう、ボチボチ例の儀式ネ。

センシャル:準備が出来たら、船の前ニ集まッて下さイナ。


儀式。コレは俺が考案、と言うか皆に持ちかけた話だ。某海賊は酒樽を割った。某戦艦では盃を交わした。某映画では機体にペイントした。こう言うイベントを俺達がやっても何も問題は無いな。

色は緑の蛍光色。場所は船首の右側面、窓の下だ。此処にメンバーの手形を押す訳だ。

皆はそれに承諾した。実にイイ。こう言う事を一度やって見たかったんだ。


アスナ:最初は俺から押す。イイネ?

一同:アッハイ。

俺は、蛍光塗料を塗った右手を所定の位置に押し付けた。
ペタリ、と俺の手形が残る。

クラックリット:次は俺か。

俺と出会い、仲間になった順番だ。
俺の手形の隣にクラックリットの少し大きな手形が並んだ。

クィアー:sef.

その横にクィアーの手形。

アン:次は自分ですわね。

更に、アンの手形。

アスール:少し変な気持ちデスね。

アスールの手形。

その次はアクスィーロの手形を……、
俺は惚けた様に突っ立つアクスィーロの手翼に蛍光塗料を塗り、べしょんと機体に押し付けた。でかいな。

クルルァ:私のですね!

最後にクルルァが手形を付け、コレでメンバー全員の手形が並んだ訳だ。

アスナ:よし、コレで全員であるな。

手を洗い拭き取りながら一同を見渡す。
……と、その時。


センシャル:……あのッ!!


不意に響いた声。其方を見ると、センシャルが右手に塗料を塗って立っていた。

ウーフォ:……アー…センシャル?何しテルネ?

センシャル:アスナさンッ!!

アスナ:何いきなりはなs((

俺はそこまで言って彼女の意図を汲み、後の言葉を飲み込んだ後、どよめく周囲を抑えて言った。

アスナ:五月蝿い、気が散る。一瞬だけ静粛に出来るか?………何かね?

その後、俺はセンシャルに向き直る。
こう言う決断はこっちが何か言うのではなく、一歩引いて相手を立てるのが大人の醍醐味。

センシャル:あの、自分も……、自分も一緒に行ッて良いッスカ!!?

俺達は示し合わせるが如く顔を見合わせる。ウーフォさんはセンシャルの方を見て口をパクパクさせていた。愛い奴等だ。

センシャルは自分が如何に宇宙への憧れを懐いているか、我々の商会が如何に楽しそうである事か、如何に自分の見聞を広めたいか等と言う事をつっかえつっかえ話した。

ウーフォがセンシャルに向けて異国の言語で何やら会話を始め、ほんの少しの逡巡の後、やれやれ、と言う様に頭を振った。

アスナ:……お前それで良いのか?本当にそれで良いのか?

センシャル:ハイ!それに船体や機関部の整備改造トカ、商品の管理トカ、備品の調達トカ出来る要員が居た方ガ色々捗るンじゃないッスカ?自分にはソレが出来まスッ!

アスナ:……ほう、経験が活きたな。エンジニア系統の管理職が一人居た方が良いのは確定的に明らか。確かに言う事に一理あるな。

他のメンバーも同じ様な考えらしい。

俺はウーフォを見た。ウーフォの顔は覚悟の顔だ。……センシャルを俺達に任せても良いと言う事だろう。

俺はセンシャルに言った。

アスナ:センシャル!何をしている!!そこへ行ってカカッと手形を押すんだよ!あくしろよ!ハリーハリー!!

センシャル:アッハイ!

クルルァの手形の横にセンシャルの手形が着いた。慌てて荷物を積み込む準備を始めるセンシャルの姿を見ながら、細やかな宴は続いたのだった。


____『ネーヴェ商会』。これが当面の商会名。


そうした後に愈々以って進水式ならぬ進宙式が始まる。

と言ってもこれからの航海の安全と商売繁盛とその他諸々の祈願をシメヤカに祈りつつ酒とか飲んだり何だりするのが普通ではあるが、俺達のはちょっと違うやり方だ。

アスナ:……さて皆の衆。

一同:(……ごくり)

アスナ:瓶は持ったな!?さぁ投げろぉ!


俺は号令をかけると同時に、手に持ったスモチジュースの入った瓶を船首に向かって投げる!


ガシャーン!パリーンッ!ビシャアアアン!!


船首を取り囲んだ一同が思い思いに手に持ったジュースの瓶を投げ付けて行く。

ジャンジャンバリバリジャンジャンバリバリ!

アン:えいっ!このっ!!

クルルァ:てやぁ!!

アスール:は、はわわ……。

クィアー:たまにはこう言うのも良い……?

クラックリット:ジュースをひたすら投げつける進水式……どうなんだコレは?

アスナ:細かい事は気にするな!どんどんいけぇ!!!

アクスィーロ:_____。(ガシャガシャガシャガシャガシャガシャガシャガシャ

センシャル:な、何か複雑な気分ッス……。

自分達で作った船にジュースを投げつける。複雑になるのも分からないでも無い。

投げに投げ続けて、船首の下に割れた瓶の小山が出来た頃、俺はジュース投げを止めさせた。

アスナ:よし、こんなもので良いだろう。コレでこの船はダイヤモンド・パワーの耐久力を得た。鋼の様に硬い耐久力って事だよ。航海の安全が確定的に明らかになった!ブッダとかジーザスとかスモチの神とか宿ってますよコレは!(バンバンバンバン

俺は一人でクライマックス、周囲の様相はクライシス。


アスナ:………さて。片付けよう。


そう言って俺はやり切った感満載の一同へ向き直りシメヤカに言った。立つ鳥後を濁さずと言う名セリフだ__。

1年前 No.29

洗濯蟻 @arinohito ★iPhone=n7Rebp7mCv

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1年前 No.30

洗濯蟻 @arinohito ★iPhone=n7Rebp7mCv

~スイングバイ:30~

俺は感動に咽び泣いていた。
何故だろう、後から後から涙が溢れて止まらない。

アスナ:私は鳥さん。キャテラースは青かった。この一歩は小さな一歩だが我等に取っては偉大な一歩。……アーイイ、遥かにイイ……!!

コクピットの窓からキャテラースが見える。
地球の陸地と海、上下左右を反対にした様な感じであった。
俺達は丁度日本にあたる巨大な湖の近くから出立したらしい。奇妙な感覚だ。

ココでテストとして機内の人工重力を一部切ってみる事にした。やはり宇宙に来たからにはコレを味わっておかねばなるまい。

空中に浮かぶスモチジュースは格別だった。

アスナ:宇宙は如何だね?皆の衆。

クィアー:………綺麗。

アスール:良い所デス。

アン:私はよく来てますし。

センシャル:自分ハ初めてッス……。

クルルァ:この窓の向こうに出たら死ぬなんて思えないなぁ。

アクスィーロ:________。

言葉は無いが、アクスィーロもかなりテンションが上がっているらしい。
あのアクスィーロでもテンションが上がるのか。意外だ。人形みたいな奴だと思って居たのに。

現在はオートパイロット。アクスィーロやセンシャルも席には就いて居ない。
故に皆が皆無重力を満喫して居る様だ。

そんな中。

クィアー:wel…レーダーに感あり。前方軌道上に障害物。

アン:スペースデブリですわ。

アスール:シールド展開。回避行動、進路修正シマス。

アスナ:廃棄された人工衛星、嘗ての文明の残滓か……。

窓の外を丸っこい形の機能停止した人工衛星が通り過ぎていく。たった数ミリのデブリが装甲板にクレーターを作る事もあるのだ。
細かいデブリはシールドである程度は防げるが、あの人工衛星ぐらいの大きさだと流石に避けないとマズイ。止まって居る様に見えてその実ものっそいスピードで動いて居るのだ。

クルルァ:あ、あの人工衛星見た事ある!

アスール:あれは『コンヴィニオン』と言いマス。初めて恒星系から出た二人の人物の名前を取った人工衛星の片割れデス!

クィアー:wel…, 『コンヴィニオン』と『ジカタヴィアン』の二人が宇宙進出の先駆者だと言われている。

其奴らはなんだか凄く本名が長そうだな。

アスナ:クソマ・ミレーは居ないのか……。

アン:?


__________


見えた。月だ。
キャテラースの陰から蒼い球体が顔を出す。
今から彼処に行く訳だ。

じゃけん準備の方に入りましょうねー。

アスールとクィアーが算出した月までのルート。自動航行で大抵の事は出来るが、結局の所は人の手で行われなければ成らないのだ。

機内は緊張感に満たされている。
が、兎に角如何にか何とかすれば自ずと結果はやってくる。

座標更新。機体角度調節。軌道修正。出力調整。etcetcetcetc。
様々な行程が終わってやっとの事で月に向かえると言う寸法である。
幸いにもそう言った事はクィアーとアスール、センシャルのワザマエで解決出来る。
故にすんなりとキャテラースの周回軌道を外れたのだ。

アスナ:月とキャテラースの間の重力均衡点……。御伽噺か何かだと思って居たがあるものなんだなぁ。

アスール:ハイ、其処にはコロニーが三基存在して居マス。『ゴールディア』『ヴァイオレット』『セクサグラム』デス。

クルルァ:変な形……。

三基は如何言う集まりなんだっけ?
金、暴力、◯ックス的なのかな?
成る程、シリンダー型とドーナツ型、ドーム型か。この世界じゃ人口重力も発展してるからああ言う形のも出来るんだな。
いつか行きてぇなぁ。

クィアー:wel…, あの周囲は特にデブリが多い。昔色々あったから。

アスナ:その様だな、見りゃ判る。あれだけのコロニーだ、数多の尊い犠牲の果てに生み出されたユートピアのパロディだな。

アン:私の叔父様達があのゴールディアに居ますのよ。

センシャル:成金ッスねー。

今回はコロニーに用事はにい。
故にカカッとヘブンスルーだ。
コロニーの横を通り過ぎる間際、ちらりと見えた内部の景色。ゴールディアの内部であったがあれは正しくルネサンスでトレビアンなアトモスフィアだった。如何にも貴族が暮らして居そうだ。
次のヴァイオレットは何と言うか、アスール曰くあんまり治安がよろしく無いらしい。内部はウエスタンな感じだ。
最後のセクサグラムは一目見て大都市。不夜城めいた高層ビルと魅惑的なネオンの光が眩しい商業コロニーだった。いずれ此処には降りる事になるかもしれない。

三基のコロニーを過ぎれば特にデブリが多い地帯に入る。過去の遺物やコロニーから出た廃棄物などが不当に捨て置かれて居たりするらしい。
ゴミのポイ捨ては汚い。俺は深い悲しみに包まれた。

クィアー:……aut. 予定航路に異物侵入。スペースデブリ。

アン:避けますの?

アスナ:……いや、そう言えば武装のテストがまだだった。

アン:……!承りましたわ!!

クィアー:索敵良し、照準良し。火器管制へ座標転送。

転送が終わる頃には既にアンはデブリのロックオンを終えていた。流石だな。
使うのは黒色アサルトレーザー。暗黒物質を弾頭に使用した指向系光線兵器である。見紛う事無きロマン装備だ。
それを豪勢にも多重連射してデブリを一層すると言う寸法である。
光子誘導魚雷を使う手やマイクロミサイルを使う手もあったが今はこれでいい。

アン:銃を撃つより簡単ですわね。


ガチッ!


アンが引き金を引くと、中央船体の両舷の放射プレートから生じた黒色の光線が尾を曳いて撃ちだされ、その弾頭は鋭角的に方向転換し、緩やかなカーブを描いてデブリを捕え、粉微塵に吹き飛ばした。

アン:ドンドン行きますわよっ!!


ピーピーピーピーポポポポポポポッ!!!


索敵画面範囲内に於ける航路上の全てのデブリと、その付近のデブリに纏めてロックオンサイトが表示された。


カォン!カォン!!カォン!!!


機体の各所にあるプレートから黒色の光が三度閃き、黒色の爆発が巻き起こった後、黒色の小さな球体が爆発点に出現。被弾した物体を『削り取る』。
正しくは爆発した暗黒物質が瞬間的に超重力を掛けて文字通り粉になるまで圧し潰している訳だが。

アスナ:正に一掃だな。光と闇が備わり最強に見える。

アスール:前方障害物、全て排除されマシタ。

クルルァ:凄い、あれだけの数のデブリを……!

センシャル:各所武装へエネルギー再充填中ッス。凄いッスね、アレだけ撃ったのにエネルギーが殆ど減って無いッス。

アスナ:流石ゴリゴリエンジンだ、何とも無いぜ。後方に放射してる奔流だって生産過多のエネルギー余波を処理する為の放熱機関であるぞ、限定特化運用すれば小惑星の一つや二つベイビー・サブミッションであるわ!

高笑いが止まらない。兎も角これで行く手を遮る物は無し、月までの直行便だ。
レーダーと索敵、兵装。後してないテストは……。機関と操縦。

アスナ:センシャル、機関テストだ。通常航行速度の倍に出力を上げろ。同時にアクシィ!この機体で荷物が崩れない程度に立体機動出来るかテストしてみよう。

センシャル:了解ッス。

アクスィーロ:________。


ゴゥン……


微細な揺れと共に船速が上がった。同時にアクスィーロが操縦桿を引く。上昇、下降。面舵取舵。捻り込んだり回転したり。
各部のスラスターは問題無く動いている。

アスナ:うむ、チョージョーチョージョー。コレでやる事はやった。月も近くなってきたな。

地球の月とは違い色は蒼く、大きさも倍はある。何より所々に都市の灯りが見えるのが良い。この月の周りを一周したら着陸だ。

アスナ:矢張り、裏側には何もにいな。

アスール:キャテラースに降る隕石を受け止めてマスからね。裏側は死の世界デス。

クィアー:sef. 月の裏側には犯罪者の流刑地がある。過酷な環境だから。

アン:彼処には行きたくありませんわね。

月の裏側はクレーター塗れだ。汚いな。
ポツポツと見えるのがその流刑地か。
残念ながら今回行くのは表側である。悲しいかな。

キャテラースを出発して、巨大な『∽』の軌道を描き月に来た。
着陸まで後数十分。地球の月と違って大気も有るし塵芥も浮遊している。この大気圏を突破できるかはクルー次第だ。キャテラースから宇宙に出るよりも有る意味難しいのだから。


アスナ:さあ備えよう。エルフの戦士に嬉しい備えだ。



1年前 No.31

洗濯蟻 @arinohito ★iPhone=n7Rebp7mCv

~宇宙の何処かで:幕間~


???:___宙間縮結、終了。

???:実宙海に出ます。

???:次元反動備え。警告。座標宙域周辺に重度領域侵犯確認。

???:捕捉。確認。当宙域は未確認挙動体の浸透攻撃を受けている模様。

???:艦実体形成と同時に攻撃開始。

???:受理。受理。受理。


漆黒の宇宙空間に亀裂が入る。
分厚い氷を押し割って浮上する潜水艦めいて、砕けた空間の壁から細長い四つの直方体を一つの直方体状に束ねた様な青銅色の巨体が姿を現した。


???:Tlrluniya, 了解。起動。

???:Rlusiya, 吶喊。YRLAAAAAaaa!!!!!


____YRLAAAAAAAAaaaaaa____


無数の鬨の声と共に、同じ形の巨大な戦艦が空間を押し割って次々と出現。同時に発生した赤紫色の閃光が一帯を埋め尽くす。


Tlrluniya:対象を目視で確認。受理。選択。多重捕捉。飽和攻撃します。

Rlusiya:受理。受理。受理。排除します。攻撃開始。


ヴヴヴヴヴヴ………

ゴッ

バババババババシャッ!!!


上下左右対称の艦体の、丁度立方体が連結している部分に並んでいる無数の箱型砲塔に収束音と共に形成されていた閃光が炸裂し光線をバラ撒いた。

攻撃目標とされている『未確認挙動体』は閃光を浴び、水飴に絡め取られたかの様にその動きを止め、続く光線を浴びて一瞬の内にスライムめいてドロドロに融解。原型を失うと同時に瞬時に凍結してシメヤカに爆発四散した。


____未確認挙動体は現時点より外敵性存在と断定。Kornotilda軍、全艦攻撃続行。余剰外敵性挙動体を剿滅せよ。


全艦隊が隊伍を組み、ゆっくりと進軍していく。外敵性挙動体は尽くその動きを固められ、融かされ、凍結し、氷を砕くかの様に爆発四散した。


Tlrluniya:出力上昇。再突入。追撃せよ。

Rlusiya:戦列先端部応答停止。右辺砲塔大破。……当該区域に生体反応無し。射線を再接続。形成確認。回頭します。


艦体が九十度左に軸回転した後、艦側面に形成された力場に引っ張られる様に回頭する。同じ様に近くの友軍艦も回頭して外敵性挙動体に向けた更なる追撃を行った。反撃は散発的だが既に何隻かの友軍艦に被害が出ており、その中には早々に戦線を離脱したものもある。無論この艦も被弾していた。


ヴヴヴヴヴヴ………

ゴッ

バババババババシャッ!!!


幾度目かの閃光が炸裂し、光線が疾る。
次々と巻き起こる空間振動が艦体を揺らすので体勢を保持するのにも一苦労だ。

Tlrluniya:対干渉装置施行。重力鋲穿て。

Rlusiya:艦体癒着。同化開始。損傷部位に補填します。………Tlrluniya!!

Tlrluniya:沈黙。制圧確認。……Rlusiya, 予備緩衝区画にも充填を。射程距離外に出現した新たな目標に対して左辺鉛直方向の戦列を当たらせて。

遠く離れた空間に出現した新目標。その前に無数の友軍艦が展開し陣形を組んだ。此方はまだ動けない。観測していた戦闘区域で無数の爆発が起きて行くのをただ眺める事しか出来ない。


____我操舵不能!我操舵不能!

____艦橋大破。戦線離脱します。

____機能停止。自爆!

____生命維持困難。制御不能。


一転攻勢。友軍艦がどんどんとその数を減らして行く。其処に、止めと言わんばかりに巨大なエネルギーの奔流が流し込まれる。僅かに残った友軍も奔流に押し流され、爆沈。追加で繰り出した別働隊も撃沈された。

Tlrluniya:………補填完了と同時に宙間縮結。

Rlusiya:反対。否定。却下。拒否。回答は見送られました。

Tlrluniya:汚名を濯ぐ機会は幾らでもある。今は生き延びる事が先決。

Rlusiya:………受理。


程無くして、唯一隻だけ残った艦体は空間を砕き破って沈降。空間の狭間へ消えた__。


____帝国に敗者は居ない。貴艦の総聯隊指揮の任を解きGalnga大腕Solyow方面遠征軍への異動を命ず。


亜空間の中を進む戦艦。その艦橋は重い空気に包まれていた。あの戦闘に敗北し、剰え戦域から逃亡したとあっては恥の上塗りどころの騒ぎでは無い。


Tlrluniya:当初の目的は果たせた。後は帝国の手の届かない場所まで行くだけだから。

Rlusiya:然し……。Tlrluniya, 艦内の士気にも翳りが見えています。このままでは指揮系統に障害が。

Tlrluniya:でも、このNnetrailに乗っている。Nnetrailに乗っている以上はNnetrailの配下。

Rlusiya:………受理。

此処に居る『Tlrluniya』と『Rlusiya』の他に
『Nnetrail』の艦橋には誰も居ない。現在は宙間縮結の最中な為に艦橋は薄暗かった。艦橋前方に展開された投射膜には亜空間廻廊内の次元奔流が映し出されて居るのみ。多少の私語は問題無い。

Rlusiya:あの外敵性挙動体は何処の物なのでしょうか?

Tlrluniya:恐らく、極外宙海。それも実宙海よりも時間的希釈濃度に極端な差がある宙海の。


其処まで話を進めた所で宙間縮結が終了した。

衝突音と共に何かに跳ね返される様な振動が巻き起こり、空間の壁を圧し破って実宙海へ艦実体形成を行う。同時に艦橋内の全ての機能が回復し、明かりが戻ってきた。

Galnga大腕Solyow方面。

宙海追跡も亜空間廻廊での階層移動とそれに伴う次元奔流の転移によってほぼ完璧に遮断した。廻廊内での海難事例はそう珍しい物でも無い。後は此処から更に規則性の無い宙間縮結を繰り返すのみ。

Tlrluniya:この座標宙域周辺で規模が大きく秘匿性の高い宙海港は?

Rlusiya:確認。統合。該当件数一件。



Rlusiya:星帯名………“Cattearth”。



7ヶ月前 No.32

洗濯蟻 @arinohito ★iPhone=n7Rebp7mCv

~あの艦を追え:幕間~



____遡る事数十刻。



Rlusiya:戦列左端部が外敵性挙動艦と交戦開始。

Tlrluniya:受理。確認。軸線上の戦列艦は強行突入。外敵性挙動艦旗艦を攻撃。重力鋲解放。実宇宙境界面へ浮上。

Rlusiya:受理。受理。受理。


ゴゥン……


巻き起こる空間振動。次元境界面を穿孔し、圧し破り、その異様な艦体を擡げて“Nnetrail”が姿を現した。周囲では先に交戦していた友軍艦が敵艦と鎬を削っている。戦力は拮抗していた。

“Nnetrail”の外見は巨大な直方体に相似している。周囲の友軍艦とは一線を画すその威容。全長約2300m、全高約350m、全幅約350mののっぺりとした青銅色の艦体は正に動く壁。

Tlrluniya:上辺砲塔及び右辺砲塔。自由射撃許可。

Rlusiya:外敵性挙動艦攻撃開始。攻勢に移行。

Tlrluniya:反撃。各個剿滅。


ヴヴヴヴヴヴヴヴヴ…………


赤紫色の光が艦体にあるブロックの隙間に発生し、収束していく。


ゴッ


次の瞬間、泡が弾ける様に強烈な閃光が発生。敵艦をスポットライトの様に照らし出す。光を浴びた敵艦は忽ちの内に空間に張り付けられ行動を停止。


バシャッ!!


続いて撃ち出された光線が敵艦を穿ち、その艦体の一部をもぎ取った。まるで水飴が弾け飛ぶ様だ。その被弾面は融解して瞬時に凝固、爆発する。


バババババババシャッ!!!


続け様に連射された光線が敵艦を穿ち尽くし、原型を失う程にドロドロに融かしきる。そのまま凍結して凝固。木端微塵に粉砕した。

Rlusiya:前方に外敵性挙動艦多数。

Tlrluniya:右辺と左辺に戦列分離。このNnetrailは右辺鉛直方向へ回頭。

Rlusiya:確認。回頭。

Tlrluniya:外敵性挙動艦戦力低下確認。追撃。

艦隊は二手に別れ、敵艦隊を挟み込む様にして進軍する。次々と撃沈されて行く敵艦隊の遥か後方に旗艦と思しき一層巨大な艦が居る。だが其処に至るまでの道程は長そうだ。

Rlusiya:警告!警告!警告!前方に新目標多数発見。既存情報不一致。

Tlrluniya:新式……。交戦許可。情報採取優先。

Rlusiya:受理。

現れたのは無数の小型艦。左右に配置されたユニットが展開し、その内部から無数の砲身を伸ばしている。恐らく攻撃に使うものだろうと判断したTlrluniyaはRlusiyaに情報収集を命じた。初めて交戦する相手には先手を譲りその攻め手を観察し、必要ならば情報を通達する。

新型の敵艦は砲身から無数の光線を放ってきた。黄色っぽいそれは鋭角的な軌道を描いて友軍艦に直撃。貫通した。が、光線は消える事無くそのままの勢いを保ち、更に軌道を変えて別の友軍艦に狙いを付ける。危険性は言うまでも無く、更にこれが無数に居るともなれば此方の被害は甚大な物になるだろう。

Tlrluniya:強誘導性。強貫通性。無減衰性。重度脅威確認。警告。警告。警告。優先攻撃目標と断定。直ちに排除。

Rlusiya:了解。優先攻撃目標確認。飽和攻撃開始します。

その場で交戦していた周囲の友軍艦が新型艦に向けて集中攻撃を開始する。が、相手も直ぐ様応戦して来た。戦域を光の弾幕が満たす。交錯する二色の光は次第に一方が押し始めた。

敵艦の攻撃はその特性上、撃ったらそのまま残存し続ける。厚い装甲で受け止めれば打ち消す事が可能だが、薄い箇所を撃ち抜かれればそのまま撃破されてしまい光線を減らせないのだ。幸い、再発射までインターバルに時間がかかる様なのでその間に一気に削りきる事で対処は可能。相手も数は居るが此方はそれ以上に数が居る。そして何より。

Tlrluniya:……あの攻撃はこのNnetrailの装甲を貫徹不可能と判断します。Rlusiya!!

Rlusiya:確認。先行。強行突入。射線確保後陣形変更。このNnetrail主軸の徹形陣形へ移行。射線を再接続。形成確認。回頭します。

Nnetrailが敵の攻撃に対して盾になる様に陣形を再配置し、そのまま敵陣への強行突破を試みる。最終防衛線は直ぐそこにある。近衛と見られる無数の敵艦が方陣を組んでいるのを確認したTlrluniyaがとある命令を下す。

Tlrluniya:次元反動弾道弾装填。目標捕捉。出現座標設定。重力鋲穿て。艦体固定。

Tlrluniyaの命令に従いRlusiyaが幾つかのシークエンスを実行していく。通常攻撃とは異なるその攻撃は今の状況において最も効果的であると判断しての事だった。

Tlrluniya:座標多重挿入。挿入本数は直射にて判断。次元反動弾道弾射出。

Rlusiya:受理。確認。次元反動弾道弾射出。警告!警告!警告!


ゴゥン……ボボボボボボッッッ!!!


艦体正面に存在する十字形の窪み。その中央部に小さな四角い穴が無数に開く。其処から細い杭の様な物が迫り出し、放射状に射出された。杭は暫く直進した後次元境界面を突破。消失する。

Rlusiya:射出終了。着弾観測。出現感触確認 。感触した地点への誘導終了。重力鋲解放。出現まで感触を維持。


___数秒後。方陣を組む敵艦隊の前後左右上下方向に空間振動が発生した。更に方陣の中央にも一つ。

Rlusiya:感触。


ズボゥンッ!


次元を突き破り空間振動が発生していた座標の全てに杭が出現。次の瞬間周囲空間に揺らぎが発生したかと思うと、杭に囲まれた宙域に猛烈な『地震』が発生した。

音は無い。遠目から見れば、方陣を組んでいた敵艦隊の全てが猛烈に震え始め、ミキサーに掛けられたかの様に回転しながら四方八方に散っていき、制御を喪って互いに衝突し分解している様に見える。実際はもっと大変な事になっている訳だが。そして爆発すらせずにひび割れた次元境界面に沈み込んで行く。

無人の最終防衛線を友軍艦隊が突破する。

敵旗艦は泡を食ったかの様に反転し、背後にあった惑星への降下軌道に乗った。如何やら逃げるつもりらしい。その後ろから友軍の放つ光線が雨霰と襲い掛かるが、既に相手は大気圏内に突入しており手の出しようが無い。


Tlrluniya:警告。外敵性挙動艦旗艦は“Astecoat”へ突入。……追撃不可能。

Rlusiya:否定。Nnetrailは重力鋲の多重固定により“Astecoat”当該座標域へ突入可能。

Tlrluniya:確認。追撃許可。このNnetrail以外は軌道上で待機。

Rlusiya:受理。突入準備開始。重力鋲展開用意。舳線固定。回転。力場形成。了解。底面蓋面調合確認。

Nnetrailは舳先を地表に向け降下準備に入った。艦体を270度回転した後平らな面を下に向け、円形の力場を周囲に多重形成する。降下に従い艦体表面が白熱を始めたが、正面に展開した力場が代わって熱を受ける。全長約2000mの巨体は全面が平らで有る為抵抗はかなり大きいらしく、全体的に猛烈な振動が発生していた。更に力場を発生させて進路を調整する。

大気圏を突破し、分厚い雲の層を突き破ると眼下に荒涼とした地表が見えた。同時に遥か彼方を飛行する敵旗艦の姿も。

Rlusiya:重力鋲展開。反動減衰。底面蓋面調合終了。


ズ ズドォゥンッッッ!!!!



その瞬間、殆ど真っ逆様に落ちて来ていた艦体が一気に水平状態になり、急制動。水面を強く打った様に強烈な衝撃波が巻き起こり、地表にある物を吹き飛ばして行く。これだけの衝撃が有りながらも艦体に差したる異変は無い。


ギギギギギギ………


青銅色の艦体が陽の光を受けて鈍く輝いていた。空気のある地表では艦体から発せられる音が響き渡る。分厚い氷の塊が擦れ合い軋む様な音だ。これは艦自体の推進音でもあるし、それを支える力場や重力鋲が発する音でもある。

Tlrluniya:艦体均衡安定。外敵性挙動艦旗艦の捜索及び一帯の制圧を開始。

Rlusiya:受理。確認。浮動します。


ギゴガガガガガガ………


ゆっくりと艦が動き出す。空に浮かぶ巨大な直方体は威圧的に異音を響かせながら前進を開始した。最初は歩く様なスピードだったがその内その外見とは似付かわしく無い異様なスピードと大気の影響を受けていないかの様な機動を持って敵旗艦の追跡に入った。

7ヶ月前 No.33
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