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Memory of the moment

 ( 短編集投稿城 )
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インク/inc @hkinc ★PSVita=RRQfGMEoWv

過ぎ去る時間と比例して、僕はまたあの日の記憶を忘れていく。

過ぎ去る時間と比例して、私はあの日はなくなっていく。

過ぎ去る時間と比例して、俺の言葉はかすれていく。


時間はどこまでも平等でどこまでも無情に僕らの過去を奪っていく。

輝くように一瞬のあの時間も私からは奪われていく。

忘れないと誓ったあの日々も俺から逃げるように消えていく。



消えないでほしい。それがだめでも、消える前に残したい。

これは僕たちの物語。

メモ2017/07/26 09:52 : インク/inc @hkinc★PSVita-RRQfGMEoWv

スレ1〜3 The evening star

切替: メイン記事(5) サブ記事 (2) ページ: 1


 
 

インク/inc @hkinc ★PSVita=RRQfGMEoWv

The evening star♯1

職員室を出ると湿度の低い空気と赤い夕日がぼくの体を覆った。あまりの肌寒さに僕はブルッと一回震えた。
12月のどこか浮わついた空気は流石に放課後の学校の中にまでは残っていないようで、寂しいくらいの静けさが寒さを倍に感じさせた。
職員室の暖かい空気に別れを告げて僕は廊下を歩き出した。
寒さと格闘しながらしばらく廊下を歩いていると、何故か人の気配を感じた。足音が聞こえたのである。
若干の恐怖を感じながらも後ろを振り向く。
そこにいたのは、僕の先輩。吹奏楽部の部長。桜木ほのかであった。
「よっ、後輩君。どうしたんだいこんな時間に」
部長は僕の顔を見るなり話しかけてくる。
「こっちのセリフなんですけど。そもそもなんでここにいるかは知ってるでしょ?」
僕は言いながら今日の部活を思い出す。
今日は、いや、今日も。全く自分の演奏ができなかった。
この高校に入り、吹奏楽を初め、トランペットを初めてもう半年以上が経つ。
一年生は他にも15人いるが、全員、日に日に演奏が上手くなっていく。
僕は一人置いていかれているのだ。
いや、その表現は間違っている。僕は演奏が下手なわけではない。ただ、自分らしさが、自分なりの表現が出来ないのである。
演奏する曲を自分の物に出来ない。
そのせいで顧問の教師にこの時間まで話をされた。というのが、僕がこの時間まで学校にいた理由だ。
「確かに、部活中も顧問に言われてたねぇ」
部長はへらへらと笑う。
「僕もう帰りたいんですけど」
うんざりとした顔をしていたのだろう、部長はそれを見てさらに笑った。
「まぁ、そう言わんでくれよ。一緒に帰らない?」
「遠慮します。そもそも帰り道違うでしょ。」
強いて言えば真逆である。
「ちょっと寄り道するくらい良いじゃない」
部長は頬をぷくーっと膨らました。夕日があたって、綺麗な肌が余計に強調される。
後輩に優しくない。強引。でもちょっとかわいいのはズルいと思う。
「はいはい、分かりました。喜んでお供しますよ。」
僕は諦めてついていくことにした。

3ヶ月前 No.1

インク/inc @hkinc ★PSVita=RRQfGMEoWv

The evening star♯2

無言で歩く。部長の気持ちはいつだって読み取ることが出来ない。探りを入れる僕の思考回路は会話をしようということには一切使われていなかった。
なぜ、僕と寄り道をするのか。
怒られたことを励ますため?それとも部長として僕を怒るため?
いや、どちらでもないのかもしれない。
いつだって、気持ちを読み取ることが出来ない…

「後輩君。何か喋ってよ。おこってんの?」
流石に部長も不審に思ったらしい。
「いや、別に怒ってるわけではないです。」
僕はありのままを答える。
「じゃあなにさ」
部長はショートヘアを弄りながら僕の方を向く。
「じゃあ、まず、どこに行くんですか?」
一つ一つ聞いていこうと口を開く
「秘密」
部長はそう言って意地悪く微笑む。
「じゃあ、なにするんですか?」
どうせ秘密なんだろと僕は思う。
秘密。部長の口はそう動いてまた前を向いた。
夕焼けはもうどこかに消えていて、静かな闇が迫っていた。

「学校の近くにこんなところがあったんですね」
部長に着いていくと、そこは小高い丘のような場所だった。
僕の住んでいる町全体を見渡すことができる。
日が沈んだ夜の町並みに、恐ろしいくらい綺麗な部長の目がキラキラと光って見えた。
「よく一人で星を見に来るの。」
部長は上を向いていた。
星?僕は上を向く。
日が沈んだばかりの夜空に星なんか出ていない。
「ほら、あそこ」
部長は空を指差した。そこには、明るい光が一つあった。
「金星。ですか?」
中学でやったなぁ、宵の明星。と思いながら金星をみつめた。
「そう、金星。」
部長は前を向いて、そしてくるっと回って僕の方を見た。
「後輩君はトランペット好き?」
唐突に、部長は首を傾げながら聞いた。
「もちろん、好きですよ。生き甲斐です。」
嘘をついた。本当は今は好きではない。そもそも、吹奏楽が好きでは無くなってしまった。
「いいんだよ?正直に答えてくれて。」
部長は少し悲しそうな顔をした。
何が見えているのか、分からない。
気持ちを読み取れない。
「一体どこまで知ってるんですか部長は。」
僕は苦笑いしながら頭を掻く。
「うーん。全部、かな?」
部長はニコッと笑った
「吹奏楽って夜の星と一緒ですよね。」
一旦言葉を切って、僕は上を向く。気がつけばチラチラと無数の星が夜空に浮かんでいた。
「キラキラと光ってるようで名前は覚えられてない。綺麗だって言われてるわりには深く知られていない。個人のことなんてどうでも良いみたいに。」
僕は一気に喋りきった。部長の目を見ることが少し怖かった。
「私は、そうは思わない。分かってくれてる人は、いると思う。」
学者とか、学校の先生とかみたいに。と部長は弱々しく言う。
「今の君は、金星みたい。」
部長と目があった。大きな瞳に全てを見透かされてい気がした。
「金星ですか?」
意味が分からなかった。
「気にしている人には見えるけど、知識のない人には見えない。本当に、姿、形までもが。」
まだ、分からない。
「僕が金星なら、あんなに光ってないです。」
「そんなこと、ないよ」
そんなことないよ。
二回、繰り返された部長の言葉は痛いくらいに心に刺さった気がした。

夜の町は、制服姿の僕を襲うように寒かった。白い息が、僕の頭の中のように、出ては消えている。部長と別れた帰り道はいつもより長く感じた。

3ヶ月前 No.2

インク/inc @hkinc ★PSVita=RRQfGMEoWv

The evening star♯3

金星みたい。

部長は僕に何か伝えようとしてくれていたはずだ。
きっと部長は何もかもお見通しなのだ。
僕が部活で伸び悩んでいることも、自分らしさが見つからないことも。

だったらなぜ、僕は金星みたいなんだろうか。

僕は光っていない。
あんなに、金星みたいに光れていない。

わかってくれている人はいると思う。
部長はそう言った。

誰が僕の事を分かってくれてるんだろう。
自分ですら分からないのに。
自分ですら…

そう思ったとたんに僕はスマートフォンを開いていた。

『星は、金星は、自分自身の光を見えていなかったんですね。』
部長それだけメールを送り、僕はスマートフォンの電源を落とした。



『後輩君。今日は土曜日かつ冬休み初日だ。どうせ予定も無いだろうから昨日の場所に12:00に来るように。』
朝起きると普段使うこともないスマートフォンが部長からのメールを受信していた。
一言余計な文面を見て、僕は苦笑する。
また、それが図星なことにも笑った。

11:45分。集合時間よりも15分も前に到着したのに、部長はそこにいた。
ポケットに手を突っ込んで、とても寒そうにしているあたり、ちょっとオシャレに気を使いすぎたらしい。
「はやいですね」
僕もまたポケットに手を突っ込んでいる。
「後輩君はどうせはやくくるだろうと思ってね。」
「さすが部長」
でも、今のは嘘だろう。部長はここまで電車で来るはずだ。
このあたりは田舎だし、時間ぴったりの電車なんてない。
かれこれ30分はここで待っていたはずだ。
「まぁ、遅れたくなかったってのもあるかな。」
それが本心だろうと思う。
「それで、何ですか。用事でもあるんですか?」
僕は気になっていたことを聞く
「あるわ。昨日のメールのこと」
部長はスッと息をすう。
まぁ、予想していた通りの答えで僕は安心した。
「昨日のメールは50点ね」
部長はニヤリとした。
「意外と高いですね。平均点は?」
僕は生意気な事を言った。
「あなた一人だから50点。残念ね偏差値も50よ。」
部長は楽しそうに笑っている。
「何が足りなかったんですか?」
僕の昨日の返信は割と完璧なはずだったんだがと思った。
「光っているのは自分では分からない。じゃあ、他人には?見えているはずでしょ?」
「そんなん、気づいてますよ。当たり前のことじゃないですか。」
「じゃあ、書けば良かったのに。」
なんだよ、そんなことかと僕は思う。
「でも、僕を見てくれている人なんていないでしょう」
僕は部長の目を見て言う。
「いないわけないじゃない。顧問は、どうしてあなたを指導するのよ。」
「あと人、僕を否定するだけじゃないですか。」
「否定できるだけ、あなたを見ているのよ。否定するだけ、あなたには課題があるのよ」
否定は僕を認めているわけではないじゃないか。
「認めることばかりが評価じゃないんだよ。あなたには可能性がある。もっと上に行ける。」
部長の目はいつもの通り綺麗だった。でも少し、怒っていた。
「なんで、なんで。そんなこと言えるんですか?部長は。」
部長は僕の何を知っているんだ。
「私が、あなたの事を見ているから。」
僕のからだに電撃が走った
「もしかしたら分かったつもりになっているだけかもしれない。でも、あなたの、後輩君の演奏を聞いていると、あなたが見える。」
僕は部長の目に固められて閉まったように動けない。

自分らしさなんて他人に強要されて初めて生まれるものだと思っていた。
回りに埋もれてしまう吹奏楽なんて嫌いだと思っていた。
でも違った。
今の僕でも見たいと思う人には見えていた。
知らず知らずのうちに自分らしさは生まれていた。

「後輩君。これ。」
気がつくと部長は僕に何かを差し出していた。
「何ですかこれ。」
「遮光板」
遮光板は太陽を見るための道具だ。
「どうして?」
「良いから、太陽を見てみてよ」
僕の言葉を遮るように、部長は僕に遮光板を押し付けて上を向かせた。

太陽のなかに点があった。
小さな点。
でも、それからははかりしれない力を感じた。

「太陽面通過、ですか?」
「そう、金星のね」
部長は笑っていた。
「後輩君もああなりなさい。」
いつもは私みたいな人にしか見られてないけど、努力していればいつか誰かに見られる時が来る。
部長はそう言った。
「僕も、部長を見ています。部長の演奏が、いや、部長が好きだから。」
言葉が自然と口から滑り出た。
「私の光が消えそうだったら、もう一回その言葉を言ってほしい。」
部長は呟くようにそう言った。

冬の町はどこか寒そうに萎縮していた。
そんな町に、威勢のいいトランペットが鳴り響いていた。

3ヶ月前 No.3

インク/inc @hkinc ★PSVita=RRQfGMEoWv

Virtual image♯1

私は多分モテている。
少なくともこの学校のなかでは。
でも、それって別に良いことじゃない。
断ることが多ければ多いほど、私の心はすさんでいっている気がする。

今日もまた、同じクラスの男子から告白をされた。
放課後屋上に来てくださいって、ベタすぎないかな?と思いつつも、取り敢えず、断るために屋上に向かう。

「好きです。付き合ってください。」
男子からそう言われるのは、誰であろうと嬉しい。
今、目の前で赤面して頭を下げている男子も、決して嫌いな訳ではない。
少なくとも、私に好意を抱いてくれて、私のことを認めてくれている。
だけど、だけと、違う。

この人は本当の私を知らない。

「どうして、私のことが好きになったの?」
私は唐突に、頭を下げている男子の頭の上から声をかける。
男子は予想外の言葉だったのかビックリした表情になった。しかし、すぐに口を開いてこう言った。
「優しいから」

違う。
私は優しくなんかない。

きっとこの男子が見てきた笑顔はは私の取り繕った笑顔だ。
きっとこの男子が聞いてきた優しい声は、精一杯テンションを上げて出した作り出した声だ。
きっとこの男子が好きになった私は、ただの虚像だ。

ふと、我に帰るとごめんなさいと頭を下げていた。

日が沈みかけの屋上に長い影が何時までも残っていた。

3ヶ月前 No.4

インク/inc @hkinc ★PSVita=RRQfGMEoWv

Virtual image♯2

押し付けるのは簡単なんだ。そして、目に見えないけど、それは凄く重い。
虚像でしかない私には、実像の感情が重すぎて重すぎて支えられない。
だから私は逃げてしまう。深く入り込まれないように。

虚像があるのだから実像も何処かにあるはずなのに。
それは消して自分には見えない。
いつかいつか会えるかな。私の実像を捉えられる人に。

1ヶ月前 No.5
切替: メイン記事(5) サブ記事 (2) ページ: 1

 
 
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