Google
    
<< TOPページ 掲示板TOP 記事データ お知らせメール ▼レス(15) >>

あいもかわらず。

 ( 短編集投稿城 )
- アクセス(145) - ●メイン記事(15) / サブ記事 - いいね!(4)

@nekozuki13 ★P5OM3y56Vz_SH7


それは水たまりに映った空だったり
誰かが飛ばした赤い風船だったり
昨日泣いた君が笑っていたり
ありふれていてそれで愛しい、
そんな変わらぬ日常を、今日も。


*****

たまにしかこれません。
拙い文章しか書けません。
それでも読んでくれると嬉しいです。

*****

ページ: 1


 
 

@nekozuki13 ★P5OM3y56Vz_SH7

「私の後輩」


部活の後輩である二つ下の彼は、
とても無愛想だ。
集合写真とか一人だけ笑ってないし、
そもそも部活にそんなにこないし、
いつも何考えてるかわかんないし、
まともに会話すらかわしてくれないし、
というかちゃんと誰かと話しているのか
この半年、みたことすらない。


不真面目で。
無愛想で。
無表情で。
無口で。


「……いつまでそこにいるんだし」
「……早く帰りなよ」
「彼氏に振られたからって拗ねるなし」
「うるっさいなぁ……」

不器用で。
たまに優しい。

「ほれ、帰るぞ姉貴」
「……学校では先輩だからね」
「ここ学校じゃないからいいじゃん」
「つーか部活ちゃんと来なよ」
「気が向いたら」


私の、弟。

2ヶ月前 No.1

@nekozuki13 ★P5OM3y56Vz_SH7

「幸福未満」


「思うんだけどさ、後輩くん、図書委員が
本好きだなんて一体誰が決めたんだろうか?」
「いや、特に決まってはいないと思います…」
唐突に話題を振られた僕は曖昧に言葉を濁して誤魔化した。
言えない。僕もそんな風に思っていただなんて、きっと。
放課後の図書室は、試験前になると自習する生徒で
いっぱいになるものの、普段は司書の先生以外誰もいない。
今日もカウンターは僕と先輩の二人きりだ。
「でも、図書委員って本嫌いのイメージは
たしかにあまりないと思いますよ、」
「えー、そうなのかあ」
先輩は不満そうに眉を寄せて何かを考え始めた。
ちらりと、その横顔を盗み見る。
白い肌。眼鏡。整えられた前髪。
肩まで切り揃えられた黒髪。
髪と同じ色の瞳。細い指。
去年からカウンターで本を読んでる先輩で、
如何にもって感じの文学少女で、だからこそ
今年は同じ委員会にと図書委員を立候補した
ところまではよかったのだが、
「おすすめの本?私?」
意を決して声をかけたら開口一番がこれだった。
その容姿にそぐわぬ甲高い声で急に笑い出して、
私は本が嫌いなんだって、口元を隠しながら
秘密をそっと打ち明けるように言って、
それが僕と先輩の初会話。


2ヶ月前 No.2

@nekozuki13 ★P5OM3y56Vz_SH7

それから、部活に入ってない僕らは、
なんとなく放課後誰もいないここで話すようになった。
といっても、主に話すのは先輩ではあるけど。

「じゃあ後輩くんは本が好きなのかね?」
「いや、僕も好きってわけではないです……」
最初に名前を聞かれたときにしどろもどろになっていたら
勝手に「後輩くん」と名前をつけられ、僕も「先輩」と
呼んで、お互い名前が分かってる今でも、「先輩」「後輩」は
定着してしまっている。
「ほう、じゃあ君も仲間じゃないか」
目を細めて先輩がクツクツと変な声で笑う。
「仲間」という言葉の響きに少し動揺しつつ、
僕は平坦を装って冷静に言う。
「その笑い方では文学少女にはなれませんよ、先輩」
途端。先輩はぴたりと動きを止め、大きく目を見開いて僕を見る。
見れば、耳まで真っ赤になってる。
「文学少女らしからぬ、笑い方?」
「文学少女らしからぬ、です」
「うぅ……」
先輩は僕から視線をずらし、そっぽを向く。
拗ねたのかもしれない。先輩は、わかりやすい。
好きな人に合わせるために、眼鏡をかけて、
好きでもない本を読んでみたりして。
ほんとに、わかりやすい。
「大丈夫ですよ、本を読んでいれば、それっぽく見えますって」
「後輩くんは随分適当だね、ひどいなあ……」
「先輩の方がひどいですって」
「え、私が何かしたか?」
「……なんでもないです」
恋とも呼べないこの感情が、報われないことぐらい
とうの昔からわかっていたことだけど。
「そういえば、後輩くんはなんで図書委員に入ったんだ?」
それでも叶うことなら。
「……秘密ですよ」

少しでも長く、君の隣にいられますように。

2ヶ月前 No.3

@nekozuki13 ★P5OM3y56Vz_SH7

「やなやつ」


放課後。荷物を整理してると、彼が近寄ってくる。
どうやら今日は一緒に帰る日のようで。面倒だ。
「また二人で帰ってんの?」
「ほんっとラブラブだよね〜羨ましい!」
「はいはい邪魔はしないってば」
「あとで話、聞かせてねー」
二人で帰るようになってから一ヶ月。
周りの反応は大体こんな感じ。

作り笑いで適当に受け流して、素早く教室を出た。
瞬間的に笑顔を消して彼を見ると、
彼はまだヘラヘラ笑ってて、どこからともなく
怒りが湧いてくる。腹立たしい、ほんとに。
「ほら、いくよ」
「はーい」
「あと二週間だからね」
「ういー」
適当な返事も、見え見えの作り笑いも、ボサボサの髪も、
全てが、嫌い。大嫌い。

2ヶ月前 No.4

@nekozuki13 ★P5OM3y56Vz_SH7

私たちは、世間的には付き合ってる。
らしい。
もともと私たちは共通趣味が多くてよく話すことはあった。
しかしそれが恋愛感情に達することはなく、というかむしろ、
わたしは彼のことが、けっこう嫌いだったりする。
そもそもの始まりは一ヶ月前。
放課後の教室、自習中に彼から相談が来たのだった。

「あのさー、しばらくの間だけでいいから
付き合ってることにしてくれね?」
「は?」
彼の顔を見ると彼らしからぬ真面目な顔をしていた。
即刻断ろうとしたものの、事情があるようだったので、
話だけ聞いてみることにした。
「こないだ後輩に告白されて、彼女がいるって
断ったんだけど、名前を教えてくれってせがまれてさ、
咄嗟にお前の名前を使ってしまった」
ほんとに申し訳ない、と彼は両手を前に合わせて頭をさげる。
よほどわたしが嫌そうな顔をしていたのだろう。
わたしが彼のことを嫌ってるのは、彼も既に知っている。
それでいてよくこんなに話せるとは思うけど。
「……メリットは」
「、へ?」
予想外の答えだったのだろう。彼が唖然としているのがわかった。
「その話をわたしが受けて、何かわたしにメリットはあるの?」
随分合理的だな、と彼が苦笑する。
「世間的にとはいえ、君に彼氏ができることで
告白を蹴る手間が省けるはずだ」
「……よくご存知のようで」
何人かの複数回によるアプローチを思い出す。
…手紙、待ち伏せ、果てにはストーカーまがいの行動に及んでる人もいる。
たしかに、仮にとはいえ彼と付き合うのも
悪くないのかもしれない。
そう思って、そのときは彼の提案に頷いたのだった。

…と、そう思ったのが間違いだった。
たしかに嫌がらせは終わったものの、気づいたら学年中に広まり、
一人で帰ると危ないと言って彼はほぼ毎日のように一緒に帰るようにしたり、
「まるで彼氏彼女みたいじゃん」
「実際にそうだしね、世間的には」
隣で彼が苦笑する。端正な顔立ちの彼が笑った顔はたしかに女子からすると
魅力的に見えるのかもしれない。実際何度か羨み半分やっかみ半分で言われている。
「……」
それでもわたしは彼が嫌いだ。少なくとも、今は。

2ヶ月前 No.5

@nekozuki13 ★P5OM3y56Vz_SH7

時々、彼に聞いてみたくなる。
憶えているのか。
あの頃を。

「あのさ、」
「なに?」

いつも、言いかけてやめる。
きっと、彼は忘れている。
昔の話なんて。

「なんでもない」

小学校の頃の彼は、今と同じように
告白されるのが常だったわけで。
その頃に断った平凡な女子の一人なんて、
覚えてない方が、きっといいのだ。

「ねー、俺のこと嫌い?」

こうして数年経った今、嫌いになった今、
隣で彼氏彼女として歩いているのだから、
なんて皮肉なのだろう。

「…もちろん」

2ヶ月前 No.6

@nekozuki13 ★P5OM3y56Vz_SH7

「なー、ほんとに付き合ってみたりしない?」
「みたりしない」
「俺、よくお似合いだって言われるんだけど」
「しない」
「嫌いなんだっけ」
「ええ、嫌いよ」

なんてことない日々の応酬。
毎日のように嫌いだと言われているけど、
それでも構わないと思ってしまう。
隣にいるだけで幸せだって思ってしまうわけで。
要するに、俺はバカなんだと思う。


「よくふりで付き合ってくれたよな」
「…」

彼女が無言で睨んだ。
誰のせいだ、とでも言いたげだ。
少しだけ申し訳なさを覚える。

「そりゃ、君のことは嫌いだけど」

唐突に彼女が話し始めたことに驚く。
(仮ではあるけど)付き合い始めてから、
二人になると、彼女は殆ど話さなくなった。

「それでも君と話すのは少しだけ楽しいのよ」

俺の片思いは、
たぶん、実らないんだと思う。
それでもいいと思う。
時々見られる彼女の笑った顔は、
好きだと、素直にそう思えるのだから。


「あと二週間だからね」
「わかってるって」




(片思いがすれ違った二人が書きたかっただけです…
グダグダで大変申し訳ない…)

2ヶ月前 No.7

@nekozuki13 ★P5OM3y56Vz_SH7

「最後に」

三時限目の授業が自習になったのを機に、
さりげなく教室から脱出。
いつものように屋上の鍵を開けて、外に出る。
誰もいない屋上は殺風景で、愉快だ。
初夏の湿っぽい風が吹き抜けてとても心地いい。
少しだけプールの匂いがする。
授業か部活か、と想像を廻らせつつ、手元にある
本を開く。挟んでいた栞はどこにいったのだろう。

「あっ!いた!」
乱入者の声に全身が固まる。
聞き覚えのある声。誰だろうか。

「ねー、これ落としていってたよ!◯◯ちゃんのでしょ?」

なくしていた栞を差し出す彼女。
高めのポニーテール。快活そうな声。
垢抜けた性格。大人びた顔立ち。
きっと彼女は、違う世界の人間だ。

「…、ありがと」

栞を受け取りながらもごもごとお礼を言う。
羞恥で次第に顔が赤くなるのがわかる。

「てかたまにいないなーって思ってたら
ここにきてたんだーいいなー屋上ー」

周りをしげしげと見渡しながら彼女がつぶやく。
屋上の鍵とかどうしたのさ、と聞かれたけど
姉から受け継いだなんて言えるはずもなく曖昧に誤魔化す。

「私もご一緒していいかしら?」

本の世界に没頭しかけた私を見ながら
楽しそうに彼女が言う。
正直、面倒だ。人がいない屋上が好きなのに、
闖入者がいると集中できないのも事実。
でも、1日くらいならいいのかもしれない。




2ヶ月前 No.8

@nekozuki13 ★P5OM3y56Vz_SH7

世界は思っている以上に窮屈にできていて、
人と人の間には必ず何かがあるわけで。
煩わしくなった私は人とは関わらないように、
狭い教室の中で身を潜めて生きようと
固く心に決めていた。

はずなのだけれど。
「めっちゃ難しい本読んでるねー!一瞬貸して!」
「いいけど…」
ぼそぼそ話す私は、あまり通る声をしていない。
彼女の鼓膜に正確に行き届いたかは不明だが、
とりあえず持っていた本を貸す。
「わあ、重っ!こんなの死ぬ前に読みきれないよ〜」
大袈裟に彼女は驚く。言動がいちいち大きくて、
「◯◯ちゃんすっごいね!あったまいいなー」
少し、楽しい。

わたしと、彼女とでは住んでる世界が違うのだろう。
きっと彼女は、輪の中心にいるような、
話を先導するようなそういうタイプの人で、
決してわたしなんかが仲良くしていい人ではないのだと思う。

「ねーねー、世界五分前説って知ってる?」
「…知ってるよ」
「おー!びっくり!あたしの友達誰も知らないんだよねー!」
あっはっは、と彼女は笑う。
わたしは、笑わない。
「なんかさ、そういうの想像すると楽しいー
ちょっと気分が楽になるの」
「ふうん」
適当にしたり顔で頷く。気分ってどんな気分だろ。

2ヶ月前 No.9

@nekozuki13 ★P5OM3y56Vz_SH7

『世界五分前説』
簡単に言うと、世界は五分前にできて、その間の記憶や知識は全部
五分前に植え付けられてるんじゃないかって話だっけ。
そして、この説は立証できない代わりにそうではないと言い切れないのもポイントだ。
「信じるか信じないかはもちろん自分次第なんだろうけどさー、
でもこういうのって信じたもん勝ちだと思うの!」
いつもの笑顔で話す彼女。風で髪が少し揺れる。
彼女は、いつだって笑ってる。
上手く笑えないわたしは、無言で流した。

終業の鐘が鳴る。あまり本は進まなかったけど、
それもまた仕方ないのだと思う。
「ねーねー、友達だって思ってもいいかな?」
彼女が立ち上がるわたしを見て嬉しそうに聞く。
友達。懐かしい響きだ。
「…いいけど」
少しの逡巡の後、頷いた。
すると、彼女は大きく目を見開いて、いいの?ともう一度聞く。
ほんとに驚いてる顔だった。
「やった!ありがと!最後に仲良くなれてよかった!」
言葉の端に少しの引っ掛かりを覚えつつも、
促されるままに握手。彼女の手は氷みたいに冷たかった。
その本貸して、と両手を出す彼女。あまり面白くないよ、と
断りを入れつつ手渡すと、彼女は嬉しそうに握りしめる。

「あのねぇ、」

ふと、彼女がわたしの目を見る。
瞳が潤んでみえるのは、気のせいだろうか。


「わたし、そろそろ死んじゃうんだって、」

風が、止まる。
色も、音も、世界も、時間も、
全てが、止まる。


「だから、最後に話せて楽しかった」


「…えっ」
「なんちゃってね!」

言葉を詰まらせてる間に、彼女は舌を出しごめんね、
と笑った。さっきまでの寂しそうな色はもうどこにもない。

「今日はお邪魔してごめんね!」

彼女が大きく手を振る。
わたしもそれに応える。

「またね!」



またね、と彼女は最後にそう言った。
でも、次はこなかった。
彼女が本を返して二日三日してから、彼女が家で倒れた
という連絡が学校に届いた。そしてその数日後には、
眠るように亡くなったそうだ。病死、と聞いた。
余命宣告は彼女自身にも彼女の両親にもされていて、
でも最後まで普通の生活がしたいという彼女の願いから
生徒側にはそのことが伝えられていなかった。
葬式には、クラス全員が参列した。皆泣いていた。
泣かなかったのはわたしだけだった。泣けない、の方が正しいかもしれない。


彼女の親から、貸していた本が返された。
死ぬ間際まで読んでました、と彼女の両親は涙ながらに語った。
そうなんですか、とわたしは返した気がする。よく覚えていない。
人と話すことが苦手なのは、結局変われないままだった。


読めなかった続きは家で読むことにした。
最後まで読み終えた感想は、
「つまんない…」
布団の上で思いっきり背を伸ばす。ずっと同じ姿勢だったからか肩が痛い。
もう少し面白い本を貸せばよかった、と後悔していると、
ひっくり返った本に何か白いものが挟まってるのが見えた。
取り出してみると、白い紙切れだった。覚えがない。
ひっくり返すと、震えた筆跡でなにか書かれていた。


「おくじょう、ありがとう。
なかよくしてくれてありがとね。
うそついちゃってごめんね。
やくそくはもうできないけど、
さいごにおねがいがあります。

わらってください」


「…っ」
ばかだなって笑おうとした。
最後に伝えたかったことが、こんなことだなんて。
彼女にはもっと、他の友達に伝えるべきことが
あったはずなのに、なんでわたしに。
そうやって、笑おうとしたけれど、
嗚咽が漏れた。視界がぼやける。
やっぱりわたしは、うまく笑えない。


人に近づくのが、怖かった。
結局最後に傷つくのは自分だったから。
人を嫌いになれば、せめて自分のことは
好きになれるんじゃないかって思っていたから。
それから、上手く話せなくなって、
上手に笑えなくなって、それでもいいと、
彼女に会うまではそう思っていたのに。




教室に入る前に深呼吸。なんとなく緊張する。
扉を開けると、数人の同級生がいつも通り駄弁っている。
数人がわたしを見たものの、すぐに戻る。
心が折れそうになるけど、息を整える。笑顔。人の目を見る。
「おはよ!」



人と接すると緊張するのも、上手に笑顔ができないのも、
本の世界の方が楽だと感じるのも未だに変わらないです。
それでも、あなたに会えたおかげで、わたしは少し変われそうです。

2ヶ月前 No.10

@nekozuki13 ★P5OM3y56Vz_SH7

「意味があるなら」


「たまに思うんだけどさー人って死んだら何になるんだろーね」
放課後の教室。居残り。幼馴染の君と二人。
友達が居残っていれば、すぐにでも茶化されてるところだったけど、
運のいいことに彼らの部活がある日だったりして。
つまり、邪魔する人は誰もいないんだった。
「なんか、死んだら星になるよーとか雲になるーとか花を咲かせるーとか
いろいろ聞かされて育ったけど、結局科学的にそうじゃないことを
いまは知っちゃってるわけだし」
「…普通に、人は灰になるんだと思うよ」
投げやりに僕は答えた。彼女のこの問いかけはいつものことだ。
生きる意味とか幸せの定義とか、彼女が悶々と考えてることに
適当に答えを出して、何故か不服そうにされてこの会話はいつも終わる。
「そうなんだけどねー」
珍しく彼女が肯定する。少し嬉しそうだ。
「だから、みんな生きてるんだよねーちゃんと自分の死に意味があるように」
「…お前が死んだら、親は泣くだろうし、同級生は悲しむし、それで周りのみんな変わるんだと思う」
「そうかなー悲しむかなー」
どうだろう、とか気怠げに言って彼女は足をばたつかせる。机の上に山ほどあったプリントがバサバサと崩れる。
なにしてんだよ、と呆れつつも拾う。結局、この課題から逃れたいだけの雑談である。
付き合ってる僕も僕だけどね。
「なーなー、わたしが死んだら、お前は悲しむのか?」
「…たぶんなんだかんだで死なないと思う」
彼女が死んだら。僕は上手に泣けるだろうか。
そんなどうしようもないことを考えていると、
彼女はそっか、と寂しそうに呟いた。
「教室には、まだこないのか」
「うーん、まだちょっと人が怖いかも、もう少し先でもいいかな」
「…構わないよ」
保健室通いでも、彼女はだいぶ苦労してるのは重々分かっているつもりだ。
或る朝、突然人の目が怖くなった彼女は、その日から一歩も外に出れなくなった。
勉強が遅れている彼女を気遣って先生が大量の課題を出したのはいいものの、
それを消費する力が彼女には足りなかったらしく、
気づけばこうして放課後手伝うようになっていたのだった。
「お前だけ、」
彼女が、寂しげに息を吐く。
「お前だけは、変わんないでほしい」
彼女の身に何があったかは知らない。僕も聞かない。
だから僕は祈ることしかできない。
彼女が上手く生きられますようにと、そんな風に。

2ヶ月前 No.11

@nekozuki13 ★P5OM3y56Vz_SH7

『恋って。』

「恋したい」
「勝手にすればいいじゃない」
電話の向こうから相手の友人の呆れたような溜息
が聞こえたような気もするけど、敢えて聞こえなかった
ふりをして続ける。
「君みたいに画面の向こうの人とはしたくないの」
「酷い言い様だな」
片恋って楽しいのよ、と彼女は嘯いた。
余程画面の向こうの遠い人とやらに惚れ込んでる様子だ。
「別に、付き合いたい!とかそういうのじゃないのよ。
ただね、あの人のことを思い出すだけで、今日も一日
頑張れる!って思って、それで好きだなって思うの」
夜の静まり返った部屋に電話越しの彼女のはしゃぐ声が響き渡る。
昔彼氏がいた頃より充実してる、と笑った彼女が思い浮かんだ。
君も恋したほうが絶対楽しいのに、とすら言う。
「でもさ、会えないじゃん」
「いつか会える。それが今じゃないだけ」
きっぱりと彼女は宣言する。
実らぬ恋でも、楽しいんだろうか。
叶わないとわかってる恋は、あとから虚しく想うだけじゃないんだろうか。
「わたしは、」
言葉を選びながら、わたしは続ける。
「わたしは、画面の向こうとかじゃなくて、ちゃんと、
面と面で話せるような、そんな人に恋がしたい」
「人と、じゃなくて人に、っていうところが君らしいよね」
いろんな恋があっていいんじゃない、
と意外にも彼女はあっさりと引いた。
画面の向こうの人に片恋する彼女と、
両思いになるなら片恋志願するわたしの、
よくあるような中身のない会話。




追記
(実話です。所謂ノーフィクション。
何が言いたいかというと、この話にはオチがないです。。。
ご了承ください。。。)

2ヶ月前 No.12

@nekozuki13 ★P5OM3y56Vz_SH7

『けだるげ』


彼氏と付き合って一年が過ぎた。
「なんか、いまさら新鮮さも何もないよねー」
「そーだな」
彼氏の家で勝手にテレビを借りファミコンしつつ
ぼやくわたしに彼氏も同調する。
ちなみに、彼も自分の携帯でRPGをやっている。
「付き合って3ヶ月くらいまでは
祝ってたけど、一年で祝ってもね」
というか、彼は多分覚えてないだろう。
彼の記憶力が弱さはこの一年で数多く見かけてきた。
「あ、今日だったんだ」
案の定、吃驚した顔をする。本当に忘れていた模様。
…別に何か期待したわけじゃないけど、ね。
「ごめん、めっちゃ忘れてた」
「いいよ、なんか覚えてなさそって思ってたし」
めっちゃ忘れるってなんだろうとか
考えを廻らせつつ、適当なフォローをする。
初めて下の名前を呼びあった時や、デートの帰りに
手を繋いだときのような初々しさはもう欠片もないけど。


「あの、話って何ですか?」
「もしよかったら、わたしと付き合ってくれませんか?」
「え!!まじ?」
「ま、まじです」
「よろしくお願いします!」
「え!ありがとうございます!」


「…なーんかさ、最初敬語だったよね」
「あー、うん。あんま覚えてねーけど」
「あの頃のわたしはかわいかったな〜」
今は恋してない、という意味では決してないけど。
でもあの頃は恋に一直線で、ひたむきで、健気だった。
彼が何か呟く。聞き取れない。
「なんか言った?」
「なんでもない」
そろそろ帰りなよ、と彼が時計を指差す。
長針が6時を指す。外もだいぶ暗くなってる。
「んー、じゃ、帰るね」
身支度を始めると、なぜか彼もコートを羽織る。
「暗いし、送ってくよ」
これも、いつものこと。
家に来て、外が暗くなるまでお互い違うゲームして、
家まで送ってもらうのがいつもの流れ。
今日も今日とて、何も代わり映えのない一日だった。
「…記念日なのにな」


少し前に、帰り道を目撃されたクラスの友達に言われた。
「最近、二人手繋がないよね」
確かに、そうだ。彼女の言う通りだ。
いつから繋がなくなったんだろう。
いつから、好きと声に出さなくなったんだろう。
いつから、二人で遊ぶとき着飾らなくなったんだろう。
思えば思うほど、わからなくなってくる。
自分のことも、彼のことも。
「寒いのに、ありがとうね」
「お前が礼を言うって珍しいな」
暗闇の中で、彼が微かに笑うのが伝わる。
「日々の感謝も込めてって意味です」
わたしが笑うと、彼はしばらく黙った。
「記念日なんだけどさ、」
記念日、という言葉に心臓が高鳴る。
と同時に、期待するな、とどこかで思う自分もいる。
「俺さ、正確にいつ付き合ったとか、
覚えてないんだけどさ」
悪い、と彼ががしがし頭を掻く。
いつものことだし、とわたしは素っ気なく言う。
「でも、なんとなく一年記念がそろそろだなって
思ったから、作ってきた」
手出せ、と言われるがままに出すと、彼が何かを巻き始めた。
「…ミサンガ?」
街灯に照らされたそれは、少し不恰好で、少し長くて、
時間がかなりかかったことがよくわかる代物だった。
「…ごめんね」
「できれば礼を言って欲しかったな」
彼の顔が、見えた。
白い息を吐きながら、静かに笑っている。
その笑顔が、好きだ。
忘れっぽくて、不器用で、鈍感で、空気読めなくて、
それでも笑った顔を見るとなんでも許せる気がするのだ。
これまでも、これからも。
「ありがとね」
涙で視界がぼやける。顔がぐしゃぐしゃになるのが自分でもわかった。
不甲斐無くてごめんなさい。
頼りなくて、自分勝手でごめんなさい。
絶対忘れてるとか決めつけて、本当にごめん。

2ヶ月前 No.13

@nekozuki13 ★P5OM3y56Vz_SH7

「おーおー、泣くなし」
彼が笑う。大きな影がかぶさる。
余裕ぶった態度がどうにも腹立たしくて、
でも抱きしめる彼の体温が心地よくて。
わたしはしばらく、その場に身を委ねた。
「そろそろ、大丈夫か?」
背中をさすりながら、彼が少し離れるので、
大丈夫だよって微笑む。
「あのさ、」
わたしも、用意したものがあるの。
そういうと、彼は一瞬瞳を大きくして、
本当に悪い。とそっぽを向いた。
照れてるんだろうか、と、少し嬉しくなる。
彼は、ほんとうにわかりやすい。
「これ、、、寒いかなって、、、」
「手作りじゃないのかー残念」
「うるっさいなー、不器用なの知ってるくせに」
「冗談だって…ありがとう」
渡されたマフラーをその場で巻いた彼は、
あったかい、と口角を緩めた。
わたしも、頬が火照ったのが自分でわかった。
「一年おめでと、これからもよろしく?」
「うんうん、よろしく」
「ねぇ、」
「ん?」
「好きだよ」
「…俺も」


新鮮さも初々しさももうないかもしれないけど。
それでも、こんなふうに。
当たり前の日々の中で、彼と笑っているのも、
きっと、悪くないのかもしれない。




(季節外れだー!!!って自分でなりました。
いや、ほんとに書きづらい。。。()
ほんとは別れる直前になりかけて〜みたいに
書きたかったのに、二人があまりに気だるげすぎました。。。)

1ヶ月前 No.14

@nekozuki13 ★P5OM3y56Vz_SH7

この投稿はフィルタされています。表示するにはアカウントにログインして下さい。

1ヶ月前 No.15
ページ: 1

 
 
<< TOPページ 掲示板TOP 記事データ お知らせメール ▲ページ上 >>
★必ず ローカルルールメビウスリングのルール をご覧ください。
 ▼スタンプ▲スタンプ
※スタンプはいちどに 3個 まで使えます  ×閉じる
注…感想・コメントはこの記事ではなく、サブ記事に書き込んでください。(小説カテゴリでは必須です)