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忘れていた ときめき、

 ( 短編集投稿城 )
- アクセス(815) - ●メイン記事(15) / サブ記事 (48) - いいね!(33)

しぐれ ★iefHbw3KoC_psr


 皆様、初めまして。

   《しぐれ》と申します、

 自分は中高年(老)にスレを3っ持っています。
 ハンドルは【フォーシーズン】【四季】【時雨】で
 参加者の時は【スコール】です。

 ここでも、「本(小説)の、、、」スレと同じく小説の板なので、
 【時雨】にしようかと思いましたが、、、、
 カテゴリーが違いますので、

 平仮名で、 《しぐれ》 とさせてもらいます。

 小生は、小説はまったくのビギナーですが、やってみようと思って来ました。

 大衆もの、青春もの、恋愛もの、ファンタジー、SF,etc
 ジャンル分けしないで行くつもりですので、よろしくです。
   ◆感想、コメントはサブ記事にお願いしますね◆

 述べたように素人ですので、
 起承転結も伏線も心理描写も台詞の応酬も小説の形になっていないのですが、
 よろしくお願い致します、、、。

 最初は、「トワイトゾーン」「世にも奇妙な物語」もどきの話から
 投稿いたします。

 駄作なのは、目を瞑って下さい(笑)

5年前 No.0
メモ2011/09/22 06:19 :    雨だれ ♂、★iefHbw3KoC_psr

 どなたかは判りませんが、拍手を有難う御座います。


 また、いずれ何か綴ろうかと思っています!


 ◎ひとつ訂正が、、、◎

 No0

 誤「トワイトゾーン」

 正「トワイライトゾーン」

 失礼しました。


 龍人さん、記事データーに応援コメント

      あ り が と う ご ざ い ま す。

切替: メイン記事(15) サブ記事 (48) ページ: 1


 
 

しぐれ ★iefHbw3KoC_psr

   《夢男》@

  プロローグ、
「よぉ、大きな契約が2件も取れて良かったなぁ、」ミナミが声をかけてきた。
「いやぁ、運が良かっただけさ、」
「今夜、一杯飲まないか、」
「今日、家内の誕生日だから早く帰らないといけないけど、一時間位ならいいよ、」
 −−−−夕刻ーーーー
「しかし、良かったなぁ、専務も歓んでたじゃないか 先ずはカンパ〜イ」
「ありがとう、カンパイ、」
 生ビールの泡がはじけてる。
「実は今朝、夢を見たんだよこれはひよっとしたら正夢になるんじゃないかと思ってな」
「正夢???」
「うん、普通はABC商事を先に訪問するだろ、でも夢の中ではイロハ商事を逆に行ったら2件とも契約になったってわけさ」
「なるほど、つまりイロハ商事がうちと契約したんで慌ててABC商事も契約したってことか、ラッキーだったな」
とミナミ、
居酒屋はさほど混んでいない友と語るにはいい空間である。
「ヘィ手羽先、豚バラ、ししゃも、お待ちぃ」
カウンター越しに注文の品が来た、彼とは入社以来の仲だ今夜は酒が上手い。
「子供の頃はよく正夢を見たもんさ、試験に出る所とか、進級の時夢のとおりに2組になったり5組になったり
勿論、こんな事は偶然と片づけられるがね」
「夢といえば、、俺、、、昔なぁ、、、」
生ビールのお代わりをした頃、ミナミが夢にまつわる摩訶不思議な話を始めた。
彼は嘘を言う人間ではない、まだ少しも酔ってもいない、、。
彼の夢の話を夢中で聞いた。時間の立つのも恋女房の誕生日のことも忘れて、、、、、、、。
世の中には説明のつかないことがあるものだが、いったい彼の夢のことは何だっただろう。
私のプロローグはここまでだが、

さぁ、ここから先は私がミナミから聞いた話をするのではなく、
彼自身の口から語ってもらうことにしよう、、、、、、、、、。



 ミナミのモノローグ、
俺の名前はタツヒコだ、友だちも周りの大人たちも;ター坊;と呼ぶ。
あの男が夢に現れ出したのは俺が幼稚園の年中か年長の頃だったと思う、
初めて登場した時の情景はよく憶えていないが、はっきりとした記憶の始りは運動会のようだ、
走るのが苦手だった俺はいつも運動会が憂鬱だった。でもその年のかけっこは一位こそなれなかったが
2位だった、「ター坊が二等だ」皆はびっくりした。「いつもビリのター坊が二等賞だ」周りの声が
弾んでる。
家に帰り外で一人で遊んでいると何処からか あの男 がやって来て「今度、僕と競争しようよ」と
言ってきた。一緒に遊ぼうとしていてら、その時「ご飯よぉ〜」と母の声がしたら、
そこで、目が覚めた、、夢だったんだ。
その日のかけっこはやっぱりビリだった。(あぁ運動会なんてなければいいのに)幼な心にそう思ったものだ。
それからも、ちょくちょく あの男は夢に現れる。

 《夢男》Aに続く、、、。

5年前 No.1

しぐれ、 ★iefHbw3KoC_psr

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5年前 No.2

しぐれ、 ★iefHbw3KoC_psr


 《夢男》B 完結編

 あれからどれ位の年月が流れたんだろうか、あの日以来あの男は夢には出てこない、
 そうあの日、

 あの日、俺はアーケード街を歩いていた。日曜日ということもあり、人数は多く、
 道行く人は、みんな笑顔で楽しそうに歩いている、
 その時だった、、ずっと向こうからこっちへ歩いてくる若い男が俺を見て ハッ と立ち止った。
 あの男だ、、、! 俺も言葉を失った、あの男も紙のように顔が白くなっている、
 俺も顔面蒼白になっていてに違いない、間隔は2メートル弱位だろうか、、。お互い黙ったままじっと
 立ち止った、どれ位の時間か、数分、いや10分位か、、俺には一時間位に感じた。
 周りの見ず知らずの人たちも、立ち止ったまま見つめあってる俺たちを不思議そうに見て通り過ぎて行く、
 やがて、我に帰りお互い振り向き振り向き、歩いて行った。
 何処をどうやって帰ったかもよく憶えている、この日のことは絶対夢じゃない、、、、。
 家に着き、夜になった。まだ中々落ち着かない、夢男の話を聞いてくれたオサムに電話して今日の事件を聞いて
 もらったら、友情とは有り難いもので彼はバイクで家にすぐ来てくれその日は泊まっていくことにしてくれた。
 「う〜ん、只似ている人物だったら、向こうもビックリしないだろうしなぁ最初にお前に気付いて驚いたのは
  あっちの方だろう」とオサム
 「そうそう、お前、その前に夢の中でその男の名前、訊いたか」
 「うん、訊いたけど、もう憶えていないんだよ」
 「そうか、解ればな、何とか探せ出せるんだけどな、その男を」

 それから、数日してオサムが学校の帰り道で興奮気味にこう言ってきた。
 「お前の、あの日の出来事な、見た人間がいるんだよ、ほら、A組の斉藤とうちのクラスのゆかりちゃんだ
  付き合っているのは知ってるだろ」
 「あぁあの二人が見たのか」
 「うん、あの日デート中だったんだって、お前が同じ年頃の男の子と立ち止ってジィ〜と見つめあって
  いるのをそこの斜め前のお好み焼き屋でな、お前とも行ったことあるじゃないか、あの店だ、」
 「あそこで、見たって言ってるのか、」
 「あぁ、窓際でぶた玉焼いてたらお前らが歩いてるので窓を叩いて手を振ろうかと思ったら、
  突然、立ち止ってピタッと、高校生位の男と何分も何分も見つめあっていたって」

  あの男は存在したのだった。

  俺の考えはこうである、
  今まで、俺が見ていた夢は あの男 も見ていたんじゃないかと、
  TVのチャンネルを合わせると同じ場面が全国で見れるように、、、ただ、見ているのは
  俺とあの男だけで、目線(アングル)は俺の夢は俺のアングル、彼の夢は彼のアングルで
  夢を同時に見てるんだと、、、、。

  オサムはこの考えに同意した、
  そして、自分の考えをあれから、5,6年たってこう付け加えた
  その後、何年も何年も あの男 の夢を見ないのは
  あれから、不幸な事故か病気で突然、亡くなったんじゃないか、と
  だから、もうシンクロして あの男 の夢を見ないんじゃないかと、、。



     エピローグ、

   私もミナミの考えと同じである、そして彼の同級生のオサム君の考えにも同意する。
   その考えが当っていると、確信したのは居酒屋で彼の夢の話を聞いた翌週の日曜日だった。
   仕事である古い新聞記事が必要になり、ミナミと図書館に行った時である。
   古い記事はすぐ見つかり、時間が余った私たちは、自分たちの若い頃の新聞を面白がって
   見た、その時、彼がアッと声を出したので何かと思ったら、
   我々の高校時代のある記事に目が止まったらしい、
   顔写真入りの記事である、それを見て息を飲んだ彼は、こう言った、
   「この男だよ、この前話した夢男は、」
   記事には、こう書いてあった、
   「高校2年の男性○○○○君(17歳)一人で釣りに行き、足を滑らせて川に溺れて死亡、
    ○○君は泳ぎが出来なかったため、溺れてしまった云々、、、、」と
   ミナミは、その記事を見て夢男の名前も一気に思い出した。
   「こここ、この名前だった、あの時夢の中で訊いたのは、、」
   彼は、大きな声でそう言った。
   そして、泳ぎが苦手だったことも、思い出したのだった。

   −−−完ーーーー

5年前 No.3

し ぐ れ、 ★iefHbw3KoC_psr

   『優しい十字架』@

井上藍子はレストランで人を待っていた。待ち人の名は斉藤雄介と彼の娘の愛子である。
「ご注文はお決まりですか」
「あ、連れが来てからでいいですか」「えぇいいですよ、ごゆっくりどうぞ」
ウェイトレスは忙しそうに他のテーブルにオーダーを聞きに行った。
藍子は今日の食事会の意味を当然察している、雄介が娘の愛子を引き合わせるということは求婚を意味しているのだ、
窓際で街の風景を眺めながら自分が初めて雄介と会った時のことを思い出していた、
仕事帰りのスーパーで籠から落ちた品を拾ってくれたのが雄介だった、
「玉子 落ちなくて良かったですね」「えぇホントに有難うございます」よくある出逢いである。
一度会うと2度3度と会うことが多くなることは決して不思議ではない、
もう一年半前である、いつのまにかお茶を飲む仲に お茶が食事に 食事がお酒に、、
気が付いた時は二人はかなり魅かれあっていた。
藍子はきっと雄介のプロポーズを受けるだろう、と思っている、
そんな事を考えたり思い出したりしていると、
「お冷 お取り換えしましょうか、グラスも汗をかいていますので」ウェイトレスが声をかけてきた。
「じゃあお願いします」
さっきは気が付かなかったが とても感じの好い女性だ、決して職業的な笑みではなく内面から滲みでる笑顔だ
きっとあの女性も今は幸せなのだろうと藍子は思った。

約束の時間を5分過ぎた頃 ドアが開き
「いらっしゃいませ 煙草はお吸いになりますか」
雄介たちが入って来て周りを見回している、小さく手を振る藍子、
「ゴメンゴメン、待ったかい」「うん10分位かな」嘘である、25,6分は待っていた。
時間の感覚は不思議である、今までも雄介と20分位しか会えないことはあった、
藍子の勤める会社と雄介の会社はそんなに離れていない、歩いて行ける距離だ
中間位にある喫茶店で昼休みに時々会っていた、同じ位の時間なのに待ってる時間はこんなにも長い
これが恋というものだろうか、
雄介と娘の愛子がテーブルに着くと同時に ウェイトレスがメニューを持って来た。
3人は注文を決め「初めまして愛子ちゃん、私もアイコっていうのよ井上藍子です」
「斉藤愛子です 小学3年生です」この子は藍子を初対面なのに親しげにじっと見つめた、
まるでずっと以前からの知り合いか近しい親戚の人のように、
愛子は雄介に「ねぇこの人お父さんの彼女?」とあっけらかんに尋ねた。
雄介は赤くなり、「ゴメンな男親だけなので躾が行き届かなくて」
藍子はこの雄介の娘にとても親しみを感じた 同じ名前だからでは当然違う、すぐ打ち解けたからでもない
それは何故か解らない、とても親しく何か懐かしいものを感じる、
「私は今、30歳です。愛子ちゃんは小3だから9歳かな」
「まだ誕生日が来てないから8歳です、10月で9歳になります」
「そう、10月で、9、、歳なの」
「もしお父さんのお嫁さんになったら斉藤アイコが家に二人になるね、面白いね」
それを聞いて藍子も雄介もゲラゲラと笑った、注文の料理が来た。

夜も更け雄介の住む賃貸マンションのベランダで予想した通り藍子はプロポーズを受けた、
愛子はもう眠っている、軽く抱擁してキスを交わす二人、
「俺も来年は40だ、中年かぁ こんなコブ付きのおじさんでもいいのかい?」
「えぇ」ゆっくりと頷く藍子、
雄介は嬉しかった、今までの自分の人生を掻い摘んで藍子に聞かせている、
前妻に去られた事もすべて、。
  ″ある封印した過去≠除いて、、、、、、、、。

 Aに続く、

5年前 No.4

し ぐ れ、 ★iefHbw3KoC_psr

    『優しい十字架』A

藍子の実家はこの結婚に最初は反対したが 藍子の熱意に負け折れた
親の幸せとは子供が幸せになる事だ、幸せそうな娘の顔を見ていると藍子の両親はそれで何も言えなくなる。
それに雄介の人柄もいい、
愛子もこの祖父母にすぐになついた。「人見知りしないお子さんですね」と雄介に言ったが
「そんなことはないですけど、ホントにすぐになつきましたね、不思議ですね」と雄介、
藍子の両親は「まるで藍子が産んだ本当の血の繋がった孫の様だ」と目の中に入れても痛くないほど
可愛がってくれた。

藍子は時々笑った後でふと寂しい顔をする時がある、あの明るい笑顔の後で、、、、
それが彼女の魅力のひとつでもあった。
藍子は今、自分は幸せになっていいのだろうかと自分に問いかける、
まだ誰にも言っていない十字架を又 思い出していた。
その十字架とは、

高校を卒業した藍子は平凡な人生を嫌って親元を出て東京に就職した。初めて見ることばかりだった。
毎日が輝いた、約1年後一人の男性と恋愛関係になる、藍子は楽しかった。
やがてその男性の子供を宿していることに気付く、藍子は産む決心をするが、
この事は故郷の親にも親しい友人にも言わなかった。お腹が目立つ前に勤めてる会社を退職し
恋人の住む郊外の家の近くのアパートに引っ越したが、出産する2ヵ月前に突然彼は死んでしまった。
事故だった、やがて密かに赤ん坊を産んだ藍子は出産届を出さずに育てていたが、
今更、親にも言えずに生活は困難を極めた。
大手のデパートでトイレに用を足す時赤ん坊を置くベッドに手紙を置き捨てる事を余儀なくする、
赤ん坊は秋に生まれたので秋代と名付けていたが、発覚を恐れて手紙には名前を書かなかった。
(この子は生後2ヵ月になります、どうしても育てる事が出来ません、申し訳ありません
 御免なさい、御免なさい、御免なさい、、、、、)御免なさいを何十回繰り返し書いたか分からない、
しかし、デパートを出る頃に自分のやった愚かさを思い直し
トイレに戻ったがもう秋代は居なかった。
辺りを必死で探したがクリスマスイブで客は多く、何処にいるのか分からなかったが
階段の長椅子に若夫婦が秋代を抱いていた、角で聞き耳を立てて聞いていると
「さぁこの子、早く届けましょう、」「しかし、届けたらこの子は自分は捨てられたことを一生背負うことになる
これは4年も5年も子供が出来ない俺たちに神様からのクリスマスプレゼントかも知れないよ」
「でも、あなたっ」
結局、細君は夫の説得に折れ取りあえず秋代をその日は連れて帰るようだった。
聞き耳を立てていた藍子は今更「私の赤ん坊です」と言えなかった、
若夫婦の顔は、はっきりと見なかった、全然憶えてもいない、
藍子はこの人生の十字架を背負った東京を離れ故郷へ帰って行く、
明るい藍子が時々淋しい顔をするのはこの十字架のせいである、
不幸や暗い過去は女を美しくするのだろうか、そして男をそこに釘付けにするのだろうか、
藍子はもてた、想いを寄せている男性は多い、雄介もその一人だった。
「私なんかが、幸せになっていいのかしら、、、秋代、お母さん幸せになっていい?」
藍子は何度も何度も問いかけた。

藍子と雄介の結婚式は極親しい人たちだけで行われ、 藍子は幸せだった、雄介も又幸せだった、
しかし、一番幸せを感じていたのは娘の愛子だった。
愛子は運動会や授業参観で母親が来る友だちが羨ましかった。母親が欲しくてたまらなかった、
その想いを雄介にぶつけたことはなかった、じっと我慢していたのだ、
そして、この新しい母親の藍子が大好きだった、、、。

やがて 二人が結婚して一年たった頃、
雄介はある日曜日に休日出勤と方便を使い住まいから約50キロ離れた教会へ出かけた。
 あの″封印した過去≠懺悔しに、、、、、。

  Bに続く。

5年前 No.5

し ぐ れ、 ★iefHbw3KoC_psr

  『優しい十字架』B

神父は雄介の話を静かに聞いてくれた。
「私は今から約10年位前に1年半東京に転勤で住んでいました。結婚して5年になる頃です、子供の出来ない私は
 とても子供が欲しかったのです、そんなあるクリスマスイブの日に夫婦でデパートに買い物に出かけた時、
 その時の家内がトイレから赤ん坊を抱いて出てきました。捨て子だったんです女の子です。手紙が備えて
 ありました、手紙にはどうしても育てる事が出来ません、と書いてあり、その後に
 御免なさい、御免なさい、を何十回も書いてありました。
 警察かデパートに届けるという家内を、もう子供が出来ないと思っていた私は自分たちの子供として育てたいという
 気持ちがかなり強く湧き上がりました。
 (中々子供が出来ない私たちに神様からのクリスマスプレゼントかも知れない)と言って家内を説得し
 とりあえず家に連れて帰りました。生後2ヵ月と手紙には書いてあり12月24日だったので、、、、
 約2ヵ月さかのぼり10月29日に家内が産んだ事にして出生届を出そうと又家内を必死で説得しました。
 幸いに私も家内もO型で赤ん坊もO型です、愛情いっぱいの娘に育ってほしいと願いから 愛子と
 名付けました。愛子は健やかに育って行く感じがしましたが、何故か家内は、、、あまり愛子には
 愛情を持てず度々私を詰りました、ある日置き手紙を置いて家を出て行ったんです。その時家内は
 子供を宿していたんですが やがて離婚届を送りました、元々愛があっての結婚ではなく上司の薦めで
 お見合いをお互い断り切れなかったんです。愛のない結婚でも何年も一緒に暮らしていると情も移りますが
 家内は結婚前から男性がいたようです、家内が宿した子供は私の子ではないようです、
 家内は家内で苦しんでいたようでなんです、私は離婚届けに判を押し送り返しました、、、、。
 それから何年かして今の女房に出逢い恋に落ちました。奇しくも字は違いますが、同じ名前の藍子と
 いいます、娘も実の母親のように慕っていますが、このままでいいのでしょうか、
 私は罪深い人間なのでしょうか」

 この懺悔を聞いて神父は、
 「大丈夫ですよ、神は貴方を見捨てませんし私は貴方を罪人とは思いません、こう考えたらどうですか
  あの時お子さんを引き取らなかったら、今頃その親子は幸福ではないのかも知れません、
  お子さんを捨てたその方も罪人とは思いません、その方もきっと苦しんだのです、
  今頃は何処かで幸せに暮らしているはずです。云々、」

  懺悔を終えた雄介は少しだけ気分が楽になり帰っていったが、
  神父は一年前に懺悔に来た女性を思い出していた。
  内容が同じなのだ、クリスマスイブに東京のデパートで女の赤子を捨てた事、
  結婚する男性の子の名前が愛子、自分の名前も藍子、
  神父は自信を持って必ず幸せになると答えた。

  人生は目の見えぬ何かの糸で動かされているのかも知れない、
  教会には西日が射していた。

  C最終章に続く、

5年前 No.6

し ぐ れ、 ★iefHbw3KoC_psr

    『優しい十字架』C
     最終章、

 約5年後思春期を迎えた愛子がある祝日の日に門限を3〜40分過ぎて帰った時、
 「心配するじゃないの、門限遅れちゃダメよ」
 「仕方ないわよ、友だちと話し込んで遅くなったんだから」
 「じゃあ連絡ぐらいしなさいよ〜」
 「わかったわよ」
 「何よ、親に向かってその言い方は」
  それを見ていた雄介はプッと吹き出した。
  「どうしたの、あなた」
  「お父さん、何が可笑しいの」
  「いや、お前たちまるで本当に血の繋がった親子喧嘩だな」
  「えっ、、、」
  「あっ、、、」
  3人は顔を見合わせて笑った。その頃藍子には雄介との子供も生まれていたが、愛子への情愛が薄れる
  ことはなかった、こんな光景が度々訪れる、二人のアイコは遠慮のいらない親子になって行く。
  そんな平凡だが穏やかな日々が待っていると知らずに、時折、十字架に苛まれながら上手くやっていける
  だろうかと不安を抱えながら生活する藍子、
  一度は平凡な人生を嫌って家を出た藍子だけど、
  平凡、、、幸せの正体は藍子の場合ここにあるのかも知れない、

  雄介が教会で懺悔をしてる頃、藍子たちは買い物に行っていた。
  「今日は玉ねぎ沢山買ったしオニオンスープにしようかしら」
  「お父さん、玉ねぎのてんぷらが大好きよビールにも合うし」
  「じゃあ それにしようかしら、でも愛子ちゃんニンジンも食べなきゃね、好き嫌いはダメよ」
  「はぁ〜いわかりました」
  「フフフフ」
  「ハハハハ」
  藍子たちの周りの人は「あの二人義理の親子なのに血の繋がった親子のようによく似ているね
  顔の輪郭や目元がそっくりだ、仲がいいと顔まで似るのだろう」と囁いた。
  こんな 暖かい陰口は何年も何年も続いた。
  このような 運命のひとひねり、は広い世界の何処かで今日も起こっているかも知れない、
  人によってはそれが不幸や破滅に追い込むこともあるのだろう、
  運命は雄介と藍子に罰を与えた、しかし与えたのは結局幸福だった。
  今、二人のアイコをロゼワインのような色した夕陽が染めている、、、。

  −−−−−完ーーーーーー

5年前 No.7

し ぐ れ、 ★iefHbw3KoC_psr

       因果の法則(お札のメッセージ)@

 真昼のこの町はかなり静かだった。明るくさえなければまるで夜中のようだ。
 一軒の家に忍び込んだ3人は息を殺した。「オォこれが金庫か、5,6百万は入ってそうだぞ、」野口が言った。
「錠前開けは任せておけ、」と言いながら、「これ位は高卒コースよ、、、」と金庫を開けだす猫背の男。
 しかし、、、すぐ開けたのはいいが、また扉があり二重になっていた。「さぁここからが一流大卒コースさ」
 とニヤリと笑う。(箱師は箱を選ぶ、簡単な金庫では箱師の腕が泣く)猫背の男は 飲んだ時そう言ったことが
 ある。3人が知り合ったのは安酒場で、最初の頃は顔を合わすと軽く会釈する程度だったが次第に会話を交わす
 ようになる。やがてサラ金業者に借金があるという共通点があり、だんだん意気投合するようになっていた。
「お前さんは、引き出しの中を探せよ、少しでも多い方がいいからな、」と野口が言ったので、伊藤は納得して
 あちらこちらの引き出しを開けだした。
「オーィ、ここに封筒があるよ〜、2,3十万はありそうだ、」隣の部屋から声をかけると「もう少し小さな声で
 話せよ、」と野口の声、「こっちはもう終わったぞ」 「えっ、もう終わったの、」
「あぁ、5百万入っていた」 二人はもう札束を目の前に出していた。
「こっちは30万あった。やっぱり金持ちなんですね、、千円札が1枚も無いよ、」
「よし、もう退散するか」 「そうだな、これ位でいいだろう」
 やがて、空き巣に入ったこのやや大きめの家を周りをよく確認しながら出て、眠たくなるような静かなこの町を
 3人は立ち去った。


「5百万を3で割るとえ〜と、きっぱり割り切れないな全部万札だし、、、」猫背が呟くと、、、。
「じゃあ伊藤君、お前さんが多く取れよ、俺たちがえ〜と、う〜ん166万でお前さんが168万でいいよ」と野口
「いいんですか、」 「あぁいいとも、引き出しから別に30万見つけたのは伊藤君だからな」と猫背が笑った。
「そうそう、少しばかりのボーナスだ」とまた野口、
「よし、それにその30万を割って足したら、一人200万近くになる」と猫背の男はまだ足りないというような
 顔をしながら「あと、100万は欲しいな」と付け加えた。
 伊藤は「もうこれっきりにしようよ、味を占めてやってると今にこれですよ」と手錠を掛けられるポーズを
 取りながら、「今までに捕まった犯罪者は皆そうじゃないすか」と言った。 「そうだ伊藤君の言うとおりだな」
「よし、俺たちは3人でもう会わない方がいい、あのやきとり屋にはもう行くまい」
「でも、3人とも来なくなれば不自然だ、誰かは行った方がいい」こんな作戦めいた会話はあと少し続いたが、
 結局、もう3人は会わないことを約束して別れることにした。
 ここは、山間部で隣の家まで300メートル近い、多少大きな声で話しても聞こえない。
「へぇ〜ここはイノシシがいつも出るのかい?」と野口が言うと「あぁ、あそこに立て掛けてある猟銃で今まで
 何匹も撃ったなぁ」と自慢げに話す猫背の男。
 この男は金庫やぶりの前科があることもよく自慢していた。絶対に金持ちしか金は盗まないと、
 所謂ねずみ小僧のような義賊を気取っていた。 「さて、そろそろ、帰るとするかな」と小さなバックに
 分け前の金を詰め込み伊藤が腰を上げると「もう帰るのかい」と野口が、、。
「ウン、何だか疲れがドッと出てきた〜!早く帰ってビールでも飲みたいし、」と返すと、
「それなら、今日は3人でここで飲んで、泊まっていけばいいじゃないか、明日の朝、帰ればいいし、」
 と猫背が笑う。 「そうも行かないんすよ、2日も休んだし明日は出勤は午後からにしてもらって、
 午前中は業者に直に返済しようかと、思って」車のキーを取り出しながら、続けて「野口さん、どうする?
 なんなら家の前まで乗っけて行こうか」言い終わると同時に「野口君は、ここで飲んでけよ、明日の朝は
 俺が送って行くから、軽トラックだけど、」と猫背、「じゃ、そうするかな、俺も疲れが出てきたぁ、
 今は飲みたいし」と野口も笑う、

 伊藤が帰って30分過ぎた頃、、ビールで赤ら顔にしながら、、、、、。
「フフフ、上手くいったなぁ〜、しかしまぁいいか」 「そうだな」
 そう、この二人は分け前をピンハネしていた。伊藤に500万と言ったが、本当は金庫には700万あったのだ。
 彼が2階や別の部屋で引き出しの中を物色している間に百万円札をお互いこっそり胸の内ポケットに入れていた。
「ン、またイノシシが出てきたか」  「えっ、何も聞こえないけど、、」
「いや、出てきたぞ、よし、あれで仕留めてやる!」猟銃を取って裏の畑に出るこの猫背の背中を見ながら
 そうか、こいつはよく猟銃を使うから、そして金庫やぶりをやっていたから猫背になったのか、と
 想像を膨らませながら、あとに続く野口、
「何処にいるんだい、的は」
「的は、、君さ、」
「オイ、冗談はよしてくれ」 「いや、本気だ、」ヒンヤリと汗が出る。
「本当は伊藤も殺るつもりだったがな、まぁあいつの取り分は諦める。銃声がしてもイノシシを撃ったと言えばいい
 外して逃げられたと言えば村の奴らは信じるさ、、、ホントにこの山はイノシシがよく出るからな、」
「し、し、し、しかし、俺の死体からは、た、た、た、弾が出て来て、す、すぐにばれるぞ、」
「それも計算の上さ、これは猟銃だぞ、この至近距離からでは弾は貫通する、そしてお前の遺体は身分の判る物は
 棄てて、人が絶対立ち入らない場所に埋めるのさ、」
 眼が血走ってる、野口はこの男が本気であることを悟った。恐怖で声が出ない。
「万が一、遺体が発見されても弾は貫通しているので、出所は判らないさ、ハッ、ハッ、ハッ、ハッ、」

  ズド〜〜〜〜〜ン!

 Aに続く

5年前 No.8

し ぐ れ、 ★iefHbw3KoC_psr

     因果の法則(お札のメッセージ)A

 「ヘィ、いらっしゃ〜い!  あっ伊藤ちゃんだ。随分久しぶりに来たね〜。」
 「うん、5年ぶりかな」
 「いやいや、6年位は来てないよまぁ座ってよ、ここ、ここ、、カウンター、カウウンター、まだ暑いから
  ビールでいいかな、伊藤ちゃんは冬でもビール派だったよね、」 やきとり屋のオヤジは5,6年顔を
  見ないけど少しも老けていない、周りを見渡すと懐かしい顔もある。
  汚い壁、その壁に貼ってある常連客たちが色紙に書く喜怒哀楽、飲んで笑ってる客たちのスナップ写真、
  すべてが昔通ってたままだ。  ここは時間が止まってる。
 「どうしてたんだい、」
 「ウン、いろいろ忙しくてね、」
 「彼女でも出来たの、それとも結婚でもしたの、」
 「近い、近い、その中間ってとこかな」
 「へぇ〜、なるほどねぇ〜」他愛もない会話が続く、
 「なっちゃんも極たまに来るけど、、」とオヤジが言うと、ビールを飲み干す手が止まった。
 「ここで、相変わらず背中丸めて飲んでるけど、何だか暗くなったねぇ〜」
 「野口さんは?」
 「いや、のぐっちゃんもパッタリ来ないネェ〜」 その時携帯電話が鳴った。
 「はい、俺、ウン、ウン、話って何?、ここじゃダメ?重大な話?うん分かった。じゃあ、一時間後に、、、、
  あの大きなチェーン店のカラオケBOXの前で、」確かにBOXの中は周りに話の内容は聞こえない。
 「ねぇ、40分後にタクシー呼んでよ、」
 「OK、いいよ!、、、、彼女から?」返事の代わりに、はにかむ伊藤、
 「今度、連れておいでよ、、、一緒に飲んでるとこを、スナップ写真を壁に貼ろうよ」とオヤジは言ってくれた。
  店はだんだん混み合ってきた。30分が過ぎようとしている、
  そんな時、壁際の付けっぱなしのTVが9時前のニュースで今日の出来事を伝えていた。
 (今日、○○町の山中でビニールシートに包まれた男性の腐乱した遺体が発見されました、遺体は全裸で
  ほぼ白骨化しており、身分を証明する物はなく、警察は殺人事件として捜査を開始しました。
  鑑識の結果、死亡時期は5,6年経っており、推定年齢30〜40歳、警察発表によると、あばら骨に銃で撃たれた痕跡が  あったということです、死体を発見したのは地質調査の作業員でこの場所は十年後に貫通道路が出来る予定の為の
  調査でボーリングで土を掘り上げてたところ、、云々、、)
 「いやな、ニュースが多いね最近は、、」隣の客が言った。そしたら、そのまた横の客が、
 「あの山道は、昔よく通いましたよ、山を越えた海辺の町に付き合ってた彼女がいましてね、もう20年近く前ですよ
  ホントにあまり車も通らない淋しい所で、、彼女に会いたいが為によく車を走らせましたよ。ちょっと顔を見て話を
  するだけで楽しかったナ〜。青春でしたね〜、まさしく行きは良い良い、帰りは怖いでしたね。」
  と過ぎ去った青春を懐かしんだ。

  そんな時、タクシーが来た。


   Bに続く、、、、。

5年前 No.9

し ぐ れ、 ★iefHbw3KoC_psr

       因果の法則(お札のメッセージ)B

やがて季節は秋を迎えていた。
山間部の夜は冷える、、、「今夜は熱燗で飲もうかな、イノシシ鍋でもつっつきながら、」人に語りかけるように呟やいた。
一人暮らしが長いとひとり言が多くなるというが、彼も例外ではなかった、夜中に目が覚めても周辺は怖いくらいに静まりかえった山の中だ、″農業を辞めて町の方に引っ越そうか≠ニ考え出していた。
田畑を売ればまたもや金が入ってくるし、そんなことを考えていると鍋が煮えてきた。
TVでは、随分前に録画した『刑事コロンボ』を流してる、酒を飲みながら鍋をつっついていると、コロンボは終盤戦になっていた、「この犯行は完全犯罪だと思ったんだが」と犯人が、、、そしたらコロンボが「完全犯罪??この世にそんなものありゃしない、それこそあんたの幻想ですよ」と突っ込む、そこで終わる、、。
自分に言われてる気がして、TVのチャンネルに変えた、
NHK9時のニュースが、、(それでは次のニュースです、2ヵ月前に○○町の山中で発見された男性の遺体は歯の治療の
後から○県にお住まいだった、野口、、、、さんであることが判明しました。野口さんは約6年前にいい仕事があると
言って家を出たまま行方不明になっており、御家族から捜索願いが出されていました。
警察は、その仕事仲間のドラブルとみて捜査を強化する模様です、、。失踪当時35歳でした。ラフな服装をして家を出たと
家族の方は証言されております、では次のニュースです消費税の、、、、、)
「やっぱり身元は判明したか、日本の警察は優秀だからな、」とリモコンでチャンネルを替えながら又ひとり言を呟いた。
″あの山中はこの山間部と逆方角にある、それに俺たちは飲み屋で会うだけの仲だった、携帯番号も交換していない、
 きっと迷宮入りになるはずだ。
しかし、何か不安がよぎる、その時、、、、、古い形の黒電話が、ジリリリリ〜ン!ジリリリリ〜ン!
ドキッとして受話器を取ると「あっ、夏目さん、俺です。伊藤です、」
「おい、俺たちはもう接点は持たないことにしたじゃないか」 夏目は伊藤が今のニュースを見ていて電話してきたのを
悟った、「今、ニュース見たけど、びっくりして何があったのだろうと思って、、」
「きっと俺たちと別れたあとでの金銭トラブルに違いないよ、あいつは闇金にも手を出してたみたいだし、まぁ本人の話
だけど、」  「そうですか、ただびっくりしたもので、そちらは元気にしていますか、」声はうわずってるが冷静を装い
「何とかな、元気だよ、、、もう、これっきりにしようぜ、その方がいい、」 「そうですね、、ではお元気で、、」
受話器を置いた後、夏目はやっぱりこの家は売ろうと決めた。田畑もみんな売ってしまおうと、、、。
″明日、裏の畑でも手入れするか、、、≠サう考えながら酒を飲み続けた。

 この夏目という男は、昨夜、随分深酒したので昼近くまでグッスリ眠った。
 朝食兼昼食を済ますと、
 ″さて、この家を売る時に畑を少しでも広くきれいに見せるには、あの柿の木は邪魔だな、もう枯れかかってるし
  切り倒すか=@夏目は思ったらすぐに身を動かすタイプである。
 あの空き巣を計画した時もそうだった、(そんなに急がなくても、来週だなんて、来月にでもしようよ、)
 と野口や伊藤が言っても、早い方がいいと言い張った。それに伸ばしていると二人の気が変わるのを感じていたの
 かも知れない。
 円形20cm位の低い柿の木を切り倒すと、4等分にしてまた、マキ割りで割った。
 「あぁ、汗をかいたな、昨夜の酒が今の汗で抜けたし、ビールでも飲んで、そのあとで燃やすか、、」とまたひとり言、
 冷蔵庫を開け缶ビールを取る、あの金が入った頃から発泡酒や第3ビールがエビスビールに代わっている。
 お金に苦労したわりには、無頓着な男である、、、。
 飲み干すと、割った柿の木に灯油をたっぷりしみ込ませて裏の畑で燃やし始めた。勢いよく燃える柿の木、
 やがて、、、
 ド〜〜〜〜ン!

 「うっ、いったい何なんだ。」脇腹に血が、血、 血、 血、、、、。「誰だ、俺を撃ったのは、、、ン、」
  薄れていく意識の中でうずくまりながら、夏目は悟った。
  (そうか、あのとき野口を撃った弾は、この柿の木に喰い込んでいたのか、それが今、炎の威力で暴発したのか、、)
  今、助けを呼べば助かるかも知れない、、でも、誰も来ない、、。あの時のように、、
  野口を撃った時、銃声がしても誰ひとり不審に思わなかった。またイノシシを撃ったとしか村の者は思わなかった。
  今度も誰も来ない、、、もう遅い、、
  夏目は野口を撃った弾が今自分にはね返ってきたのである。
  その因果を自分では感じていない、あんな所に野口が立っていたからだと恨んでうずくまっている。

  憎しみがある、疑惑がある、悲しみがある、孤独がある。
  愛だけがない、、。

  Cに続く、、、、、。

5年前 No.10

し ぐ れ、 ★iefHbw3KoC_psr

    因果の法則(お札のメッセージ)C

 (今日やっぱり結婚を申し込もう、)と伊藤は決断していた。
  でも、あの過去の過ちは言ってはいけない、、、。もし白状したら自分はスッキリするだろうが、
  その分彼女は傷つき生涯苦しむことになる。
  これは、刑務所に入るのが嫌だからでもない、、彼女のためなのだ、
  そして、彼女を絶対失いたくない。

  夏目の遺体は一週間以上経って村の者に発見されたと報道では伝えていた。
  彼のことを良くいう者は村の者では誰ひとりとして居なかった。
  運命は密かに段取りをつけて動いているのか、 夏目と野口の死も因果なのだろうか?
  伊藤はそう考えていた。  そして、3ヵ月前のカラオケBOXでの、あの会話を思い出していた。

  「伊藤さんの気持ちは嬉しいわ、ホントよ、でもお受けできないわ」 「どうしてもかい」
  「私には大変な借金があるのよ、、」 「借金はどの家にもあるさ、俺も5,6年前は大変な借金があったよ」
  「でも、返したんでしょ、私はまだまだそれを、返すまでは、」と左右に首を振る、「返し終わる頃はおばあちゃんよ、
   そんなに貴方を、、男の人を待たせる訳にはいかないわ」
  「よかったら話してくれないか、役に立つことがあるかも知れないよ」
  「じゃあ、話すわね、今から6年位前よ△△町っていう静かな町がでしょう、あそこの一角に、あるお金持ちの
   家があるの、ほらあの赤い煉瓦の大きめなお家、」一瞬ドキッとしたが彼女は気付かずに話続ける。
  「あそこで、父は管理人を任されていたの、ちょっと留守した時に空き巣が入ってね、金庫からお金を盗まれた
   のよ、金庫は厳重だからそこら辺の泥棒に開けられるはずがないと、鍵を預かってる父が疑われたの、
   警察に届けようとするけどその金持ちの人は拒んだわ,きっと脱税か何かの知られては困るお金だったのね、
   結局、父はそのお金を弁償するはめになったのよ」 隣の部屋ではカラオケが盛り上がってる、
  聞きたくもない下手糞な歌が聞こえてくる。
  「そのお金を支払う為にも町金融からも、借りまっくたわ、大体うちは、裕福ではないので今も利息を払うのが
   精一杯なのよ、」 彼女はため息が出て、涙があふれ出していた。
  父は無理が祟って入院中である、
  「あとで、警察にも届けたけど、もう借りた後だしどうにもならないわ」 自己破産はどうしても出来ないと
  言った。 彼女の話では、盗まれ金は700万と引き出しから30万で計730万である。
  「ゴメンネ、こんな暗い話をして、、大丈夫? 顔色が悪いわよ、、」

  その夜は、そのまま別れたが、 今、はっきりと伊藤は確信している。彼女を愛していると、、。
  彼女はひとり娘で婿が必要であったが、婿に入ってもいいと、そして、その借金を返して行こうと、、、、。
  父親の入院費もすべて、、、、、、、。
  あの日、野口と夏目は彼が他の部屋で現金を物色してる時に200万をピンハネしたことも、彼女の話から
  判断できる。伊藤には500万と言ったが、本当は700万あったことが、
  二人よりも七つも八つも若い伊藤はなめられているのだろう、 伊藤より多めに取った分、因果が大きく返って来たのだ
  のだろうか、、、。

  伊藤はこう解釈した。
  そうか、あの時千円札が一枚も無かったのは、この犯行は 無 になるというお札からのメッセージなんだと、、、。
  何故なら自分たちは、千円札の肖像人物たちと同じ名字なのだ。
  伊藤、そして夏目、野口、
  そう、伊藤博文、夏目漱石、野口英世、、、、、。

  結果には必ず原因がある、元を辿っていけばそこには今ある結果の原因が、、、。
  人生は良い行いも悪い行いも、いつかそれが原因となって、絶対に自分に返ってくる。
  伊藤は、あの時盗んだ金を形を変えて返していくことになる。
  自分のこれからの人生で、もうほんのささやかな贅沢も出来ないだろう、それでも彼女と結婚しようと、、、、。
  そして、一生愛して守って行こうと、いつでもそばにいて手を差しのべてやろうと、
  そんな気持ちのこもった安物だが誕生月の指輪をポケットの中で握りしめていた。

 −−−−−−−−−−END−−−−−−−−−−−


5年前 No.11

しぐれ、 ★4P7XD2RRXb_Id2


    甦るときめき  第1章

  美弥子の兄、幸生が他界して49日が過ぎた。
 「まったく、親より先に死ぬなんて親不孝者だよ」
  母は遺影に呟いた。母親はまだ健在である。
 美弥子の賃貸マンションは自宅から数キロ先にある。いっそここに引っ越して来ようかと主人とも相談していた。
 子供たちも母親によくなついてるし、寂しさもかなり紛れるだろう。
 「ユキオ兄さん、私たちここに引っ越してきていい?」美弥子は遺影に語りかける。
 母もそれを望んだし、話はすぐに決まった。

 幸生は50歳を前に突然逝ってしまった。死因は心臓麻痺、朝いつまでも起きて来ないので部屋まで行ったら
 もう亡くなっていたらしい。
 遺品を整理していると、パソコンに眼が止まる。「これは、このまま私が貰おうかな、いいでしょ兄貴、」
 美弥子は呟く、「大事に使うから、私のパソコンは型が古いし立ちあがりが遅いしネッ、」
 パソコンを操作してると、兄が誰かと粋なハンドルネームを使って掲示板で会話してる気配があった。
 その内容は、、、死の直前まで恋をしていたことが判明する。
 恋の相手は会社の女性か?他の場所で出逢った女性か、詳しくは語られてないが、
 狂おしいほど切ない内容だった。分かっているのはイニシャルが K ということだけである。
 掲示板の呟きを読んでるだけで、美弥子も少女の頃のような気持ちになって、切なさが込み上げてくる。

 Kさんってどんな女性だろうか?美弥子は会ってみたくなり自分なりに捜査に乗り出し、
 そして、大体3人の女性に的が絞られる。3人とも素敵な女性だった。
 ただ、兄が少年のように胸がときめき幸せだった。そのときめきの真っ最中で死んだので
 ある意味では幸福なのだと、美弥子は解釈する。

 ・・・・・   ・・・・・・

 「兄貴、あんた恋してたんだね、この3年間兄貴は幸せだったんだね。」
 美弥子は缶ビールのプルトップを開け、胡坐をかいた。
 胡坐をかくにはちょうどジーパンだから都合がいい、
 「兄貴の好きな麦100%だよ、発泡酒じゃないよ、カンパ〜イ」
 他の墓参りの人々は墓前でひとり言を言ってる美弥子を変な顔で見るが、美弥子は気にしなかった。
 「しかし、昨日までピンピンしていたのに朝は冷たくなってるなんて、、あんまり突然なんで、みんな
  涙も出なかったよ、」
 周りの墓石の枯れかけた花が静かにこっちを見つめてるようだ。
 「兄貴、私たち引っ越したよ同居したんだ。子供たちも母さんには随分なついているし、そしたら母さんも
  寂しさも紛れるし、兄貴の部屋は子供部屋に使わせて貰うよ、フフフ、」
 美弥子は墓石を見つめてそっと微笑んだ。
 「母さんの面倒は私が見るからネ、どうぞ御心配なく、、しかし兄貴のパソコンを見てびっくりしたよ、
  あんな事を見ず知らずの人と語り合ってたなんて、kさんって実はこっそり捜索したんだ、
  Kというイニシャルだけを頼りに、」
 太陽がジリジリ照りつけるが、美弥子は話を止めない、、。

  第2章に続く、、、。

4年前 No.14

しぐれ、 ★4P7XD2RRXb_Id2



    甦るときめき (第2章)

 「兄貴もう一度かんぱ〜い!どう美味しい、やっぱり夏はビールだね。」
  美弥子は、さらにグイとビールを飲む。
 「Kさんって女性は兄貴の会社の人、兄貴が仕事帰りに行ってた音楽会の人かよく通ってたスナック喫茶の常連客の
  誰かに違いないんだぁ、でも、、もう誰かはどうでもよくなったよ、3人ともショートカットだったりポニーテール
  だったり、容姿はそれぞれ違うけれど共通点はあるね、笑顔がすっごくいいネ。皆とても優しい人でうんと上品だし、
  兄貴が惚れるのもわかるなぁ〜。」
  美弥子はふぅ〜、とため息をついた。
 「まるで、少年のように胸がときめいて、、いいなぁ〜〜!年を取るにつれて人間は感動もしなくなるし、ときめかなく
  なるけど、もし兄貴がKさんに恋しなかったらそのまま平凡で退屈な日常の中で死んだ事になるもんね、」
  美弥子はもう兄を失った悲しみよりも幸生を羨ましく思う気持ちに変わっていた。
 「この事は子供の頃から照れ屋のあんたのことだから、あんたの友だちにも母さんにも黙っててあげるよ、私と兄貴との
  秘密だよ約束する、だって二人っきりの兄妹だもんネ、」
  美弥子は350oの缶ビールが2本目になっている。それももう少なくなってきた。人生には時として胸がときめくことが
  あってもいいものだ。
  この3年間、周りの人たちは誰ひとりとして兄の心情を知らないけれど美弥子は、きっと兄は幸せだったんだと確信している。
  それはたしかに大人になっても、ときめくことはあるだろうが、少年のような気持ちになることは極めて少ない、
 「私こう思うんだぁ、きっと神様が兄貴の寿命を知ってキューピットを差し向けたんだとね、最後に恋のときめきを
  味あわせてやろうってネ、50近くになっても少年のようにときめかせてやろうって、だって兄貴イイ奴だからね。
  えっそれじゃ、何故寿命を延ばせてくれなかったかって、向こうにもいろいろ都合があるんだよ、だったら何故
  両想いにしてくれなかったのかって、だってそれじゃぁkさんが恋人を失くす悲しみを味あうことになるからね、
  それに、フフフ、、恋は片想いの方が幸せだっていうじゃない、その方が相手を強く想うことが出来るし、」
  線香の火はもう燃え尽きてる、
 「それにしても、兄貴の好きな焼きちくわに辛しマヨネーズつけてビールでやりたかったよ、」
  その時、何処からか懐かしい声がした。
 「オイ美弥子、女だてらにあんまり飲むなよ、周りの人が変に思うぞ、」
 「あっ、兄貴、兄さん、兄さん、」
 「あぁ俺だよ、あんまり飲むなって云うの、」、
 「ウン、分かったでも缶ビール350を2本だよ、」
 「ありがとよ、美弥子、麦100%のビール美味しいよ、」
 「兄貴、ありがとう、」
 「何だ?ありがとうって、」
 「だって子供の時から兄貴はイイ奴だからね、ありがとうって言いたかったんだぁ、」
 「よせよ、俺はもう行くぞ、」
 「兄貴、ホントにありがとう、」
  でも、それからどんなに呼んでも幸生の声は聞こえてはこなかった。
  どれ、そろそろ帰るとするかな=@コンビニ袋に飲み干した空き缶を入れ立ち上り帰ろうとして、また振り返り
  墓石に語りかけた。
 「兄貴、恋してたんだね この3年間あんた幸せだったんだね、」
  それを言い終わるとまるでそれが合図のように、つくつくほうしが鳴きだした。
  長く猛暑と言われる日本の夏にも、秋が静かに忍び寄っている。

  ---------END----------

 よく働き充実した一日は心地よい眠りをもたらすが、よくときめいた日々の中のお迎えは、幸せな死をもたらすのだろうか、

4年前 No.15
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