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明日のあかり

 ( 詩集つむぎ城 )
- アクセス(5664) - ●メイン記事(227) / サブ記事 (85) - いいね!(34)

山人 ★tuOnN6TpU5_OR0

夜明け前、そこは無垢で、滑空する飛行物体のようだ
未知なる朝への渇望、そこにはおだやかな時間が眠っている
私はその時間に触れる、夜の肌は寝返りを打つように私の頬を擦っていく
やがて夜は明ける
天文学的な数の生き物たちが、瞼をあける時がくる

遠い砂丘の向こう、乾いた爬虫類たちの瞼もかさりと目覚めたことだろう
また、夏が来る
するりと日替わりの皮を取り替える

6年前 No.0
メモ2019/06/06 06:50 : 山人 @ookumo13★bDJoqEzcCB_6Og

若干の性的な表現、露骨な言い回し等の作品もあります。

>>1一番星  >>2影を貪る >>3あしあと  >>4闇の獣(リメイク) >>5燃える島   >>6行方 >>7木 >>8秋風 >>9枯れた夢の子供 >>10蕎麦っ食い >>11あれから >>12漂っている >>13石・草・虫など、その概念と考察 >>14親戚のひと >>15スキーリゾート >>16ツララ  >>17野紺菊の咲く頃 >>18春になれば >>19ダム湖 >>20やがて山は >>21巨人  >>22雨の朝  >>23魚になりたい  >>24木の葉  >>25エノコログサの思い出 >>26包丁を研ぐ >>27カエルちゃん >>28蟹に食われたんだよ  >>29乾かそう >>30乾いた少女たち  >>31狐火の夜 >>32ひらひら >>33「3/15詩作」 >>34月光 >>35ほたる >>36校舎 >>37落ち葉かき >>39半月 >>40おもいの粒 >>41どしゃ降りの雨の中で  >>42詩人 >>43 緑が燃える  >>44あなたがいなくなってから >>45者共は森へ帰っていった >>46・・・ゆく >>47夜の山道  >>48バーミアン >>49温泉場のスキー場  >>50春になったら詩を書こう >>51男と冬 >>52村の種屋 >>53二月で文学極道の投稿やめましたww >>54木工場にて>>55海底  >>56沼  >>57峠 >>58発作 >>59確かなもの >>60amaoto  >>61誰も知らない枯葉の下で >>62自虐の歌(どうやら春のようですが・・・) >>63ジニア >>64老人 >>65記憶 >>66ヒラメ >>68モンシロチョウ>>69夏の横断歩道 >>70ふたり>>71帰郷 >>72秋の街>>74暇人でぃ、脳屁BOO>>75朝子>>77>>78オレンジ色のスキー靴>>79稜線のラクダ>>80白湯>>81種よ>>82家族>>83時が終わりまた生まれる>>84 旅人>>85培養室>>86>>87あたらしいひと>>88集会 >>89火と水>>90>>91朝(二篇)>>92山林に残された風>>93夏休み >>94>>95夏とJK >>96夢想〜朝へ >>97発芽 >>98晩夏>>99詩を書く人>>100金木犀の香るころ>>101一日(いちじつ)>>102十年 >>103青の眠り

>>104一日の終わりに>>105午前四時>>106初雪 >>107名もない朝>>108詩人四態>>109流木>>110味噌ラーメンを食べ終えて>>111沈黙>>112真実>>113冬の境目で>>114山林の昼休憩>>115三月>>116 棒 >>117 haru>>118静かな視界>>119農場>>120>>121>>122山林の詩五篇>>123雨の朝>>124>>125>>126この血の向こうに>>127秋それぞれ >>128月と犬と >>129空洞 >>130出稼ぎ人夫 >>131ラーメン道>>132>>133>>134田代平>>135 朝の棘 二篇>>136超、朝>>137秋のお品書き>>138 眠りから覚めるころ >>139mudai>>141shima

>>142 5/2 >>143 少女>>144蜘蛛>>145集会>>146秋の詩篇>>147あな 二篇>>148 峠の山道>>149無機質な詩 三篇 >>150作業日詩 >>151>>152三話>>153>>154六月

>>155〜157丸腰@〜B>>158七月>>159三つの失意>>160八月>>161 僕の船>>162>>九月>>163十月>>164シーサイドライン>>165十一月の山道>>166十二月>>167五月

>>168  20世紀少年 >>169同解説 >>170同解説 >>171同解説 >>172同解説 >>173同解説 >>174同解説 >>175一月>>176二月二日>>177野火>>178厨房>>179石・洗濯物・風・部屋>>180滑稽な日に>>181開拓村(実録) >>182五月の雨>>183>>184ふるえる外灯>>185>>186 蝉>>187さりげない朝>>188 8月1日>>189夏のどこかで>>190誰かが外で話している>>191除伐(横吹け地区にて) >>192できるものなら>>193さりげない空間>>194山岳作業>>195夜明けの時>>196労働>>197流れる>>198宴から帰って>>199初冬>>200冬を待つ一羽の小鳥>>201酩酊>>202そして、また雪>>203地獄の裏側>>204雪原の記憶>>205春の日に>>206寒い夜汽車>>207でも行かなくては>>208曇りのち、夕刻晴れ>>209ふたたび雪原へ>>210発狂>>211肉体労働者>>212どうしようもない夜に書いた二篇の詩のようなもの>>213中指追突き立てろ>>214まだ眠っている朝に>>215少し寒い>>216海へ>>217病棟>>218野鳥>>219トドみたいになったって別にいいかもね>>220あかり>>221gear>>222>>223>>224心は揺らいでいるけれど>>225ひとひらの雨

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山人 @ookumo13 ★bDJoqEzcCB_gUY

厨房


室内は昨日のなごりのあとと
うっすらとこぼした調味料のにおいが漂っている
少し染みのついた前掛を締め
ぼんやりと雑用から始める

グリルに魚を並べ遠火で焼き始めれば
冷え切った厨房は少し暖かくなる

雑用をその都度こなしながら
次の新しい調理を開始する

特に目安もなく
大まかな目分量だけの調味料を投下し
味に見切りをつけ完成させる

盆に並べ
納豆をつければ
一人前の朝食が出来上がる

このようなことを
微々たる労働を
1994から始めた

技術も比喩もなく
そのままを描き切る詩人のように
不器用で凡庸な日々を送り
生きてきたことに
後悔などしない

ふと
なんとなくだが
そう思おうと
感じた朝だった

このあいだまで暖かった朝は
少し寒い
そういえば衣服が一枚少ないのだった

1年前 No.178

山人 @ookumo13 ★bDJoqEzcCB_gUY

石・風・洗濯物・部屋


道端の石に夢があるのなら
もっと明るくひかるだろう
考えに考えた挙句
石はあんな風に黙り込んでいるのだ

風はいつも姿を見せない
あなたの心のように
風圧を押し付けては
ここにいるよと示すだけ

洗濯物は物憂げに
上空の曇り空を眺め
ついでに部屋の流れている
誰も見ていない
テレビを一瞥する

部屋は四角く区切られていて
そこに人が丸く住んでいる
隅には置き去りにされた思考が
埃となっている

1年前 No.179

山人 @ookumo13 ★bDJoqEzcCB_gUY

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1年前 No.180

山人 @ookumo13 ★bDJoqEzcCB_gUY

開拓村(実録)


 父は十代後半にO地に入植。昭和二十年前半だったと思われる。
三十三年に私が生まれ、開拓村で生まれたので隣人が拓也と名づけたと聞く。
妹は五年後、自宅で産婆のもと生まれたのを記憶している。
あまり幼いころは記憶に無いが、四歳くらいの頃私はマムシに噛まれたようだ。体が浮腫んでいる中、母の背中で祭りに連れて行ってもらった記憶がある。その後、その毒が原因なのかどうかわからないが半年の入院となった。病院は薄暗く、ただただ広く、いつまでも悪夢の中に出てきた負のイメージである。
小学校は開拓村から四`下方にあり、朝六時半に開拓村の子供たち数人で出発し一時間掛けて歩いて通った。文字通り、子供らばかりの通学は道草を食いながらであり、春にはスカンポ・ツツジの花・ウラジロウヨウラクの花弁などを食した。当然帰りも歩くわけで、少しでも歩きの負担を減らそうと砕石工場のダンプカーの後ろを追いかけ、つかまって飛び乗ったりした。当時はすべて砂利道で急坂が多く、走るとダンプに乗れた。
初夏には、おいしい果実が豊富だった。クワイチゴが一番糖度があったが、紫色の果汁で衣服を汚し、母に怒られていた。クワイチゴ>クマイチゴ>ナワシロイチゴ>イワナシと糖度が落ち、代わりに酸味が増した。
今では考えられないが、昔は土木工事も盛んに行われ、女性も働き背中に大きな石を背負い働いたものである。安全管理もずさんで、土木工事のみならず林業の伐採でも多くの人が事故死したり重傷をうけた人もいたのである。
ひとりで帰り道を歩いていると、突然河原から発破が鳴り響き、私に周辺にリンゴ大の岩石がバラバラと降ってきたことがあった。運良く当たることがなかったからこうして生きている。
良という三学年上の友達が居て、危険を栄養にするような子だった。橋の欄干わたり・砂防ダムの袖登り・急峻なゴルジュを登り八〇〇bの狭い水路トンネルを通ったこともあった。冬は屋根からバック中をしたりと、デンジャラスな少年期を過ごしていた。
冬はきちがいのように雪が降り、五〜六メートルはあたりまえに降った。そして今より寒かった。十二月初旬からすでに根雪となるため、私たち開拓部落の子供五人は小学校の近くの幼稚園と集会所と僻地診療所が兼用されている施設の二部屋を寮として提供されていた。そこに私達O地区とG地区の子供たちがそれぞれ一部屋づつに別れ入寮していた。
夜中の尿意が嫌だった。トイレは一階にあり、昔墓だったとされたところで、下はコンクリの冷ややかな場所だった。薄暗い白熱電球をそそくさと点け、パンツに残った尿を気にもせずダッシュで二階に駆け上がった。
土曜の午後になると開拓村の父たちが迎えに来る。父達の踏み跡は広く、カンジキの無い私たちはそこを踏み抜くと深い深雪に潜ってしまう。長靴の中には幾度となく雪が入り、泣きながら家にたどり着いたのである。
たらいに湯を入れたものを母が準備し、そこに足を入れるのだが軽い凍傷で足が痛んだ。痛みが引くと父の獲ってきた兎汁を食らう。特によく煮込んだ頭部は美味で、頬肉や歯茎の肉、最後に食べるのが脳みそであった。
一週間に一度だけ、家族で過ごし、日曜日の午後には再び寮に戻った。天気が悪くなければ子供たちだけで雪道のトレースを辿り下山するのである。私たちが見えなくなるまで母は外に立っていた。
クリスマスごろになると学校の先生がささやかなケーキなどを持ってきてくれた。初めてシュークリームを食べた時、こんなに美味いものがこの世にあったんだと思った。
開拓村は山地であり、孤立していたので子供の数は五人ほどだった。
父親がアル中で働けない家庭や、若くして一家の大黒柱が林業で大木の下敷きになった家庭もあった。
若かりし頃、夢を追い、頓挫し、まだその魂に熱を取り去ることもできなかった大人たちの夢の滓。それが私たちだった。
初雪が降ると、飼っていた家畜があたりまえに殺された。豚の頭をハンマーでかち割り、昏倒させ、頭を鉞で□ぐと血液が沸騰するように純白の雪の上にぶちまけられ、それを煮た。
寒い、凍るような雪の日に、山羊は断末魔の声を開拓村中響かせながら殺されていった。
傍若無人な荒ぶる父たちの悪魔のような所業、そして沸点を超え父たちは狂い水を飲んだ。
私は良という不思議な年上の少年に常に魅せられていた。
良は父を林業で亡くし、おそらくであろう、生保を受けていた家庭だったのかもしれない。
母が初老の男と交わる様を、冷酷な目で冷笑していた時があった。
まるで良は、感情を失い、冷徹な機械のようでもあり、いつも機械油のようなにおいをばらまいていた。
良の目は美しかった。遠くというよりも魔界を見つめるような獅子の目をしていた。彼は野生から生まれた生き物ではないか、とさえ思った。
良は、いつもいなかった。良の母が投げつけるように「婆サん方へ行ったろヤ!」そういうと、私は山道を駆け抜けるように進み、しかし、やはり良はいなかった。
今現在、良はこの世にはいない。それが当たり前すぎて笑えるほどの生き様ですらあった。


昭和47年にかつての開拓村はスキー場として生まれ変わった。
いくつかの経営者を経、一時は市営となり、今は再び得体のしれない民間業者が経営している。
寂れた、人影もまばらな山村奥のスキー場に、私は今日も従業員としてリフトの業務に出かける。
第二リフト乗り場付近に目をやると、杖を片手に持った父が、すでに物置と化した古い家屋に向かうところであった。

1年前 No.181

山人 @ookumo13 ★bDJoqEzcCB_6Og

五月の雨


草や木の葉が雨に濡れている
五月の雨は麓の村を包んでいた
蛙はつぶやくように、りりりと鳴き
アスファルトはつやつやと光っていた
そうまでして生き物たちは
生きなけばならない生きなければならないと
季節をむさぼる

雨は、
その深部にしみこみたくて
どこか、
スイッチが入れられて
次第に空気が湿り
その細かい霧粒が固まり
落下したいと願ったのだった

雨は平坦な記憶をさらに水平に伸ばし
過去を一枚とびらにしてしまう
その一点に思考が集中するとき
ふとコーヒーの苦みが気になるように
記憶の中に鉄球を落とす

少し、遠くまで歩こう
そう思いかけた時、雨は強くなった
隣人の柿の木が枝打ちされている
のを見ていた
雨はそこにだけ降り積む
誰かが誰かのために
何かが実行されたのだった

雨は降るのをやめなかった
緑も濃くなることをやめなかった
すべては何かのために変わり
なにかを生んでいく

うすれていく光源は
不確かにともされている
無造作に伝達士は言うかもしれない
あたりまえに普通のことばで
その語彙を受けなければならない
一度は解読しなければならないだろう

集落の朝のチャイムが鳴り始めた
今日も食事を摂り、排泄し
歯も磨くだろう
食後の投薬をすませ
背伸びをするかもしれない

1年前 No.182

山人 @ookumo13 ★bDJoqEzcCB_6Og





夜中に黒い虫が頭の中をはい回った
脳に熱を加え
すると私の額から汗が湧いた

虫の正体をうすうす知っていた
そういえば
ずっとずっとこの虫たちと生きてきた

時折、触角をゆるめ
くつろいでいるとと思えば
ふたたび針を突き刺しにやってくる

いつまで私を吸えばいいんだい
この、黒く汚れた体液が美味いのか
そう、問いただすと
汗は心なし引いている

夜が明け
虫は脳から離れ
心臓にいた

今日は彼らを
山に放牧しに行こう
薄桃色の雲が見えている

1年前 No.183

山人 @ookumo13 ★bDJoqEzcCB_6Og

ふるえる外灯

一瞬、体の中に水が通る
冷たく寒いはるか未来の恐怖の水が
熱していたものが
冷めていく

肉汁を吸い尽くした後
肉をかみしめると
そこに歯が失われた様で
すべて軟体動物のようになってしまう

無言の闇に立つ外灯
小池が流れ水の音がする
小さな蛾や大きな蛾が
光に促されて
たがいに追突し合い
光を求めて乱舞する

憑き物がまだ落ちない人骨のうめきが
小池に落ちていく
寒い夜だ
外灯すら震えている

11ヶ月前 No.184

山人 @ookumo13 ★bDJoqEzcCB_6Og



汗が出る、汗の起源を思う。どんなことも潜り抜けてきたその瞬間瞬間に汗は湧き、汗汗汗と濁音は止まらない。
夏は無言だ。夏の喧騒は喧騒の中に吸い込まれ、無色無音という形態を呈する。その中で汗だけが真実を伴い現実を描写する。
刈られた草は血だるまになり、在りし日の本体を思いながら強烈に草いきれを発する。
蝉は心を抜かれ、一つの固いコアとなって狂い鳴く。遠くの記憶の波紋の隙間に食い入るように、蝉は首を絞める。
老人は、汗をかくことにも疲れ、平穏な洗濯剤にあざとい香りに包まれている。
夏の吹き溜まりには嫌悪しかない。例えば一億個の重責があるとすればその粒子がのたうっているのだ。
怪物は排気音を奏で、熱波のような風を肛門から吐き出し、夏の田園で咆哮していた。

10ヶ月前 No.185

山人 @ookumo13 ★bDJoqEzcCB_6Og



蝉になりたくないね
そう、あなたが言うのを黙って聞いていた
七年も土の中にいて
やっと出てきたかと思えば
日長鳴き続けて
ポトリとある日木から転げ落ち
ビビッと一声鳴いて羽ばたいて
そのままカラカラと死んでいく

あなたは朝仕事を終わらせて
ぽつねんと椅子に座り
pc画面を見つめながら
誰もいない空間に話しかけるように
蝉を話をしていたのだった

お決まりの画面の順序を追いながら
ふとまた空間に話しかける
でも、考えてみれば
俺たちだって蝉なのかもしれないね
こんなに苦労して
一日中稼いでみたって
報われることはないし

第一、相手を見つけるために鳴き続けても
巡り合えない場合もあるし
自分の子供を見ることもない
それでも蝉は鳴く
鳴くようにできている
俺たちもこんな風に生きるようにできているんだろう
蝉だよ、俺たちも
鳴いて済むんなら泣きたいよ

そんなことないよ
今日、雨降るかな


10ヶ月前 No.186

山人 @ookumo13 ★bDJoqEzcCB_6Og

さりげない空間


目の中に入った汗を拭うタオルを忘れ
昨日の酷暑の作業は手袋で汗を拭った
夕方、近くの町のスーパーに行き、店内の涼風の中
目の炎症でなんだかとても疲労していた
行きかう車、その流れに沿った律動は何なんだろう
子の棲む棲み処へ、連れ合いの棲む根城へ
待つ者もない安アパートへ
それぞれが一日を脳内に保管し帰路に着く
そのメタリックに光る塗装の群れが、私を羨望させる
生暖かい風と、澄んだ夕闇が高い空に浮かび上がり
いったいこれ以上何を望むのだろうかと問う
眼球の炎症と、底知れぬ疲れからの眠気が帰宅後一気に押し寄せ
あまり何かを考えないようにしようとするが
ぼんやりとした脳のどこかで思考はしっかりと動いているのだな、と感じる
 床に入り、眠気を誘発させるためにテレビをつけ
つまらないと一言二言言ったと思ったら目が覚めていた
相変わらず、尿意で目が覚めたが、七時間近く寝たことになる

今日は多忙になる日だ
ただ、慌てる気配はまるでない
かつてのような、朝からの厳しい日差しはない
台風の影響か、時折強めの風が吹き、あたりは曇っている
各種、蝉たちは徒党を組み、事切れるまで希望を失うことはない
なにもかもだ
すべての生き物たちは、希望を失う術を持たない
解り切った終末を感じることもない、そこにあるのは、ただ、希望と生

朝、さりげない空間の中
不謹慎な飲み物を手に取り、私は酩酊する
蝉と虫が鳴いている
さりげない空間で、彼らには希望しか見えない

10ヶ月前 No.187

山人 @ookumo13 ★bDJoqEzcCB_6Og

8/1


えらい詩人たちはレスを返すこともない
自分が優れていると認識している
彼ら彼女らにとって夕焼けなど
取るに足らないもので
皮膚の呼吸や
脳の中の雨水の具合とか
そんなものの中で暮らし
吐いた息を食べ
気体しか出ない脱糞をし
日々、いそいそとカーテンの隙間の様子を伺い
生活という生々しさもなく
ただ、固形物のように、いや
脳の中身だけがオアシスのようで
そこに
何かをいつも
すまわせているのだろうか
わたしのように
毒を食べることなどしない
今日も蝉は詩人のように
ただ夏に浮かんでいる

10ヶ月前 No.188

山人 @ookumo13 ★bDJoqEzcCB_6Og

夏のどこかで

あおい希望の中で君の朝ははじまる
幾重にも重なったコンクリートの建物の一角の小路に
君が住む安いアパートがあって
眠くなるようなどうしようもない風が吹いて
君の頬を今日もかすめていくのだろうか

つまらない仕事をしながら僕は
君が幼かった頃口ずさんだ歌が
異様におかしくて
いつも仕事の途中で立ち止まってしまう

いくつもの数えきれない壁と言ってもいいくらいの
苦しみが君にやってくるだろう
ふわふわと泳ぎ疲れた青魚のように君は
硬いコンクリートの壁伝いに
どこに向かって歩いていくんだろう

僕は黙って立っている
いつか枯れるであろうこの体で
少しだけ雨よけのあるこの僕の体に
もたれかかるがいい

10ヶ月前 No.189

山人 @ookumo13 ★bDJoqEzcCB_6Og

誰かが外で話している


夜は漆黒の空に稲妻が光り
おびただしい量の水が土に注ぎ
たぶん多くの生き物は口を開けて
その水を体内に入れたことだろう
草も気孔を開けて
ざばざばと気持ちよく水を浴びたに違いない

朝になってみると虫は大地の底からうめくようにつぶやき
空は尖った希望のように澄んでいる
刈り取られたイタドリが
からからと道路に弾き飛ばされ
少しだけ揺れていた
朝風に気持ちよさそうに

ふとぼんやりとしていると
誰かが外で話しているように聞こえたが空耳ではなかった
間違いなく誰かが外で話している
他愛もないどうでもよいことを
深い闇に向けて話しているに違いなかった
耕されたての畑の土が
その話声を聞いていた
土はその声を吸い取り
そして、また、何事もなかったように
ふたたび、朝はよどみなく流れ
虫は崇高な祈りをつぶやくように
朝を敷き詰めていた。

9ヶ月前 No.190

山人 @ookumo13 ★bDJoqEzcCB_6Og

除伐(横吹け地区にて)

雨の中、私たちは山林の中で
斜面にへばりつき、雑木を刈り払っていた
一列刈り取り、再び戻り、それを繰り返す
雨具の袖をめくり腕時計を確認し
それぞれが気ままに休憩する
雨具が湿気で衣服を濡らし
地肌ももう汗と蒸気で濡れているのだろう
ザックから棒ヤスリを取り出し刃をあたる
燃料を給油し、しばらく木の葉の上に腰掛ける
疲れている、どこか別の国へ行きたい
そう思いかけた時、ケッケと枯れたミズナラの木にとまる鳥がいた
アカゲラは盛んにくちばしを木にこじ入れ
中の虫をついばみに来ていたのだろう
鳥は、雨をはじき返す羽をもっているから
この、一途に降る雨を気にも留めない

休憩時間は終わりを迎え
一人一人が離れてはいるものの
たぶん同じように溜息を吐き
誰ともなしにエンジンを始動する
ここに暗喩など無い
言葉すら置き忘れた、私たちの鼓動だけが
山林を蛞蝓のように這っているのだった
雨は終日降り続いた

9ヶ月前 No.191

山人 @ookumo13 ★bDJoqEzcCB_6Og

できるものなら




その日
僕の存在は失われていた
川は何もなかったかのように流れ
まわりの人々は息をし、笑い
変哲もないことを話していた

できるものなら僕は
思考さえ失われた
本能だけの野鳥になりたかった
まわりにある空気をとらえ
ほとばしる大胸筋で羽をひるがえし
撃墜されてもいいと空へと舞いあがりたかった

できるものなら僕は
引力に逆らう事のない
川の水になりたかった
命の存在すらもないただの水となり
母体のような海に還りたかった

できるものなら僕は
駐車場にたたずむ重機のように
寡黙で冷たく鉄のような頑なさを持ちたかった
なにものにも左右されず
たしかなものにしか反応しない無機物のように

できるものなら僕は
季節をもろともしない木になりたかった
ただ生きることのみをひたすら考え
何も考えないことを考え
自我を求めず
ひたすら立っていたかった

できるものなら僕は
人のように普通に反応し
怒り、激昂し、わめきたかった
狂い、憎み、破壊したかった

できることは
僕には
ただこうして
書くことしかできなかった

9ヶ月前 No.192

山人 @ookumo13 ★bDJoqEzcCB_6Og

さりげない空間

汗を拭うタオルを忘れ
昨日の酷暑作業は手袋で汗を拭った
夕方、近くの町のスーパーに行き、店内の涼風の中
汗の雑菌が入ったのか眼がぼやけた
そのせいかとても疲労していた
行きかう車、その流れに沿った律動は何なんだろう
わが子の居る家へ、連れ合いが待つ根城へ
待つ者もない安アパートへ
それぞれが一日を脳内に保管し帰路に着く
そのメタリックに光る塗装の群れが、硬い魚のようだ
生暖かい風と、澄んだ夕闇が高い空に浮かび上がり
いったいこれ以上何を望むのだろうかと問う
眼球の炎症と、底知れぬ疲れからの眠気が帰宅後一気に押し寄せ
あまり何かを考えないようにしようとするが
ぼんやりとした脳のどこかで思考はしっかりと動いているのだな、と感じる
 床に入り、眠気を誘発させるためにテレビをつけ
つまらないと一言二言言ったと思ったら目が覚めていた
相変わらず、尿意で目が覚めたが、七時間近く寝たことになる

今日は多忙になる日だ
ただ、慌てる気配はまるでない
かつてのような、朝からの厳しい日差しはない
台風の影響か、時折強めの風が吹き、あたりは曇っている
蝉たちは徒党を組み、事切れるまで希望を失うことはない
なにもかもだ
すべての生き物たちは、希望を失う術を持たない
解り切った終末を感じることもない、そこにあるのは、ただ、希望と生

朝、さりげない空間の中
不謹慎な飲み物を手に取り、私は酩酊する
蝉と虫が鳴いている
さりげない空間で、彼らには希望しか見えない

9ヶ月前 No.193

山人 @ookumo13 ★bDJoqEzcCB_6Og

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8ヶ月前 No.194

山人 @ookumo13 ★bDJoqEzcCB_6Og

夜明けの時

かすかな痛みを感じながら星々のいる空を見上げていた
黒い夜の空は私そのもののようで
しかし、その中で星はかすかに瞬いていた

ありふれた汗を流し続け
荒い呼気を土に埋め込み
九月は終わった
放心した蝉の歌は失せ
代わってそこにあるのは
あきらめのような渇き切ったかすかな風

夜明けの瞬間を見ていた
それは私の視界の中で生まれ
育まれ、あからさまな朝のために
存在した

8ヶ月前 No.195

山人 @ookumo13 ★bDJoqEzcCB_6Og

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7ヶ月前 No.196

山人 @ookumo13 ★bDJoqEzcCB_6Og

流れる


水は流れているのではない
石と石の間を泳いでいるのだ
石はその水の摩擦を感じながら
嗚咽する

記憶の残片
それが水面に流れる
落ち葉であるのなら
それは一部、冷ややかな感情として
水と、ふ・れ・る。

記憶の残片が水とともに
下方へ、下方へと流れ
広大な脳の海へと落ち着く

木片が泡とともに波となって動き
起源が解らない発泡スチロールのかけらが
いつまでも残る残滓のような悔恨のように漂う

水は
今日も流れている
明日へ、明後日へ
いつまでも限りなく
流れるに違いない

7ヶ月前 No.197

山人 @ookumo13 ★bDJoqEzcCB_6Og

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7ヶ月前 No.198

山人 @ookumo13 ★bDJoqEzcCB_6Og

初冬


浮遊する冬虫たちの
時間を刻む音が聞こえてくる気がした
すべての色が失われた初冬はまるで剥がれた皮膚
少しだけ血が滲み浮き出ている

すでに骨格すら失われた白い水平線の向こうには
優しみがほんのわずかに震えている

鼓膜に入り込むのは
先の見える、生まれたばかりの羽虫の声と
蓄えられた潤沢な餌を持つ生き物たち

彼らの存在は存在として命を持ち声を発している
私はその傍らで来る当てもない汽車を待ち続ける

6ヶ月前 No.199

山人 @ookumo13 ★bDJoqEzcCB_6Og

冬を待つ一羽の小鳥

葉が落ちた一本の木の梢である
小鳥はトリッキーな動きでせわしなく動いている
それぞれの木は葉が落ちて
痛いほどの残照がふりまかれ
すべてが黄金色と言ってもよかった

小鳥は群れと離れてしまったのだろうか
それでも口ばしを幹に突き立てて
ちいさな虫をついばんでいるようだ


正午を過ぎると日は傾き始め
鋭い逆反射の残照が降り注ぐ
影という巨大なものに身をささげるために
いたる木は裸になり瞑想をはじめた

私はひそかに木となって
隣の小鳥を眺めている
ときおり狂おしく可憐な声を発しては動き
何かに怯えるように細かくぐぜっている

木から離れた私は歩きだしていた
鋭い初冬の日差しに打たれながら
かすかな痛みを感じていた

6ヶ月前 No.200

山人 @ookumo13 ★bDJoqEzcCB_6Og

酩酊


近所のスーパーに立ち寄り、ワンカップを二個買って、公園のベンチに座りキャップを開けそれを飲む。
公園デビューしたらしい母子がひきつった笑顔で会話している。たがいの真意を探り合い、心の隅にナイフを突き立てて、それでも笑顔が冷たく継続されている。
俺はふっと笑った。なぜか笑える。血液が各所に鎮座し始めて、いちめん花畑のような安ど感に満たされて、少しだけ鼓動速度が増した息遣いを楽しむように、その高揚感を感じていた。
特にその液体に美味さを感じるわけではなく、アバウトな低温で中途半端な甘さと辛さを備えたその無色透明でありながらややもすると少し色づいた液体がカップを流れ落ち、喉元を通過していく時の断末魔のような動きに快感すら覚えてしまうのだ。
ベンチの鉄パイプは錆びていた。錆の匂いは血の匂い。俺の有り余った熱い血がベンチの鉄パイプの錆と同化してゆくのを感じる。
 あの公園デビューした母子の若妻の脇はきっと汗にまみれ、下着を濡らしているだろうと想像する。子は母の胸ですやすやと眠っている。
どうかあの母子を守ってほしい。俺はそのことだけを願い、二本目のワンカップの最後の一滴を胃腑に落下させた。

愛想笑いをし、他者と別れた母子は安堵の表情を浮かべ、息を吐きだすと不意に俺を見た。
一瞥したが、そこに不快な視線が落とされ、俺はそれを見逃すことは無かった。
これから苦行が続くのだろう、俺と同じような。
あたりまえのように、公園の木の葉が舞い始め、これからは冬になるのだと言い始めていた。

6ヶ月前 No.201

山人 @ookumo13 ★bDJoqEzcCB_6Og

そして、また雪

雪が降る
この小さな心臓の真ん中に
冷たい塊を落としに
またやってきた

臓腑の中に冷たい湖を作り
そこの洞窟に船を浮かべるのは私
血が滞り血流は途絶え
白蝋色の手足とともに
私は武骨に櫂を操る

たとえば雪の粒が
小さな羽虫の妖精だったのなら
そのはらはらとした動きに
笑みさえ浮かべることができるのに
今はこうして
ばらまかれる弾丸の破片のような雪が
私の頭上に降り積むだけだ

声帯すら凍り
ふさがれた唇は発話すらできない
身動きできない
浮遊する、あてのない隠喩が
私の脳片から出ることも許されずにいる

6ヶ月前 No.202

山人 @ookumo13 ★bDJoqEzcCB_6Og

地獄の裏側


地獄だ、と人は言う
でも、その裏側は誰も知らない
ふつふつと煮え立つ血の海の横で
痛い針の床に座らされ
舌を抜かれた人たちの発話はない
しかし、そのさらに裏側の世界があるという
そこに苦しみはなく
あるには虚無の水色の国であり
なにもかもとどまることが無い
流水のような世界
止まり木にとまる小鳥の思考は
すぐに流されておもいは常に流される
心臓だけが時を刻み
血液だけが静かに流れ
何も思うことができない
苦しむという感情も失われ
死んではいるが死んではいないという状態の現象
脳片は黴り粉が吹いている
すさまじい悔恨が風と共に荒れ渡り
頭蓋は散りかけている
はるか億光年の知らぬ天体の片隅で
地獄の裏側は名も知れぬ生き物に運営され
誰もがそこに救いを求めようと
今日も建物の片隅に
地獄の裏側の切符を求めて徘徊している

6ヶ月前 No.203

山人 @ookumo13 ★bDJoqEzcCB_6Og

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5ヶ月前 No.204

山人 @ookumo13 ★bDJoqEzcCB_6Og

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5ヶ月前 No.205

山人 @ookumo13 ★bDJoqEzcCB_6Og

寒い夜汽車


ホームにはたくさんの人が見送りに来ていたが、僕を見送る人は誰もいなかった
蒸気機関車の突き抜ける発車音がすると、刻み始めた心音のように蒸気の音がリズミカルにに鳴り始めていた
激励する声、半泣きの声、いくつもの声声声がホームをのたうち回っていた
病弱の母がこさえてくれた塩むすびの紐を解き、黒ゴマがたっぷり掛かったむすびを頬張る
母の手の中のあらゆる時間がむすびに振り分けられ、赤い大きな梅干しの果肉が口中に広がる
数時間経つと県境を超える長い漆黒のトンネルをくぐる
使いこなした詰襟の学生服と制帽が汽車の窓ガラスに映るのを僕は見ていた
僕は俺に、俺は私になれるのだろうか

どんよりと重い空間がする客車の中は冷え冷えと静まり返り
時折訪れる睡魔を受け入れつつ客は過ごしているかのようだった
それぞれの防寒具が動きことによって擦られる摩擦音が客車の空気を一層重くした

汽車は峠を越えたのであろうか
静かで平易な起動音が穏やかに持続していた
外はうす明るくなり乗客はそれぞれに新しい目を持ち始めていた


終点駅では駅員の声が響き渡り汽車から吐き出されたのは人の群落だった
改札口にはプラカードを持った中年の男があたりに散らばり愛想笑いをふりまいている
僕の行き先に、一枚のプラカードがあった
男のあとに従い、僕はずいぶん歩いた
歩いて歩いて、やがて足は棒になり、僕は俺になった

私は夜汽車に乗っている
蒸気が足元に湧き上がり、もう寒いことは無い
力強いあの蒸気音は少し遠くなったが
リズミカルに点滅するこの赤い信号音はいったい何なんだろう

5ヶ月前 No.206

山人 @ookumo13 ★bDJoqEzcCB_6Og

でも行かなくては


孤独に鳴り続ける温風ヒーターの音が明けない朝と同化している
昨晩の寝酒の痕跡があたりに散らばりどこか悲壮だ
それでも夜はよく眠れた
強い酒をあおったからか途中の用足しは無かった

これから夜明け前に朝食を摂り車を駆り出掛けなければならない
数十キロある道のりを走り目的地へと走っていくだろう
いつもの角を曲がり高速の入り口の信号を右折し国道へと入っていく
去年もずっとそうだった

その作業場で、おびただしい中高年の群れの中で俺は名もない一匹の犬となる
そして、ひたひたと迫る悪寒の中で俺は表情を変えないだろう
与えられる仕事は発話しなければならない
のどの痛みを覚えるほど声を張り上げ俺は働くだろう

群れの中の安寧と決別した俺はあらゆる事柄と戦うしかない
そして一日は必ず終わる
日銭を受け取り
俺は古い車の中のヒーターで暖まり
安堵の吐息を漏らすだろう
そして何かしらの言葉を自分に投げかけるだろう



4ヶ月前 No.207

山人 @ookumo13 ★bDJoqEzcCB_6Og

曇りのち、夕刻晴れ


生ぐさい寒い朝を迎え、午前は石のように過ごした
昼は軽く食物を胃に収めるという儀式を執り行う
昼はまるで双眼鏡で覗き込まれた、とある物体のようだ

午後、車を駆る
子供たちはひたひたと摺り足で雪上に居り立ち
私たちの前に立っていた

少し生暖かい空気があたりに徘徊し
たぶん、汗ばんでいたのであろうか

臓腑にしたたかさを供えた人々がいた
如何にも軽く生きているかのようにふるまい
しかし、はらわたはとても臭いのだろうと思った

まだ、中性のような子供たちの前で
講釈を打つのは私であった
すでに開き直りしかない私の中で物事はあっさり消化され
子供たちは私の内臓に収まっていた

しゃべる私の口から子供たちは吐き出され
晩秋の葉っぱのように散っていった

夕刻、無言の午後は滅亡し
青い空が現れている
夕刻、私はこの詩を書かなければならなかった

4ヶ月前 No.208

山人 @ookumo13 ★bDJoqEzcCB_6Og

ふたたび雪原へ


ストーブヒーターのファンの音がしていた
うねるように火を促し炎をちらつかせている
サッシの桟にはなくなりかけた軟膏のチューブと
その近くには飲み切ったウーロン茶のペットボトルがある

二月の半ばというのに冬の勢いは失われ
どこか萎れた春の舌なめずりがしているようだ
どろんとした朝の風景に、杉に付着し雪の塊が遠くに群れている
うっすらとシャドウのように媚びる空の青
名前すらも記憶から消えた凡庸な朝だった


雪原はすでにそこにある
白く、一点の曇りもないその透明な雪の結晶が
疑いもなく、そこに広がり迎えてくれるに違いない

火薬とオイルの匂いの染みついた冷たい銃器はもうない
何かを失うこと、やめることなど紙きれを燃やすように
味気なく、失意に沈んだ一つのため息の切れ端

雪原には、きっとおびただしい動物たちの足跡が続き
貪る生に向かって歩を進めている
苦い樹皮を齧りながら数千年の記憶をたどり続けている
シュッと威嚇音を発し逃げる獣がいるだろう

まだ、口をあき切れない冬がとどまってはいる
だらしなく排泄された雪の中に
村人たちは凍結することも忘れてしまっている

あと二週もすればどこからか欠片が解け始め
体の中に蓄積し始めるだろう
そうしたらまた記憶を失うような
白い雪原に踏み入ることだろう

4ヶ月前 No.209

山人 @ookumo13 ★bDJoqEzcCB_6Og

発狂


父は固まりかけた膿を溶かし
排出するために発狂している
脳の中に落とし込まれた不穏な一滴が
とぐろを巻き、痛みをともない
いたたまれなくなると腫れ物ができる
やけに透明で佳境の入り口の液体を
父は胃に落とし込む
体の中に次々と落とし込まれる液体のそれぞれが
燃えながらエンジンを稼働させ、父を発狂させる
そのすさまじい熱量が怨念となってさらに引火し
いくつもの数えきれない父の仔虫が
いたるところに蠢きながら断末魔の声を発している

真冬、季節は発狂していた
季節という代名詞は失せ、無造作な温暖が徘徊していた
爆裂のような衝動的な狂いではなく
ひたひたとあらゆる常識の礫が破壊され
あきらかに季節は発狂を迎えていた
腐敗した寒さは義理堅く時々痛みを加えるが
その心底に居座るのは穏やかな発狂であった

寝息が激しく不快な音となり
隣人の寝息に目が沙え眠れない夜
黒く闇は脳内に穿孔し
糜爛した生殖器から生み出される不安
それらは正常なものから逸脱した狂い
発狂はしずしずと執り行われ
負の同志を増殖させ穏やかに発狂している

目指すは美しい発狂ではないのか
汚い不衛生な病棟の鉄のにおいや
メチルアルコールのにおいではないだろう
リノニュームから逃れたところに田園はある
ところどころ雑草が生え、そこに
見たことのない美しい花が発狂しているではないか

3ヶ月前 No.210

山人 @ookumo13 ★bDJoqEzcCB_6Og

肉体労働者


鐘が鳴る
肉体労働者の後ろから、彼らを鉱山へ向かわせる鐘が鳴る
白い光線が木々にまとわりつき、見えない鞭が舞う中を
言葉もない、見えない命令が透明に空間に漂い
労働者たちは心に中指を突き立てる
柔軟な平和と日差しが残酷なほど彼らの背景となる

娯楽施設は閑散としていたが、それでも笑い声などがあって
それが労働者の皮膚に棘のように突き刺さっていた
眼球はすでに石化されて息をするだけの口元があり
見世物小屋のかたわような労働者がいた

重い用具を操り、しなびた肉にねじを巻き
労働者はゼンマイ仕掛けのようにとつとつと労働をはぐくんだ
汗が下着を濡らし、芋穴の軟体動物のように内臓は笑った
労働者たちの少年期、ほとばしる希望の中の屈託のない顔
それはどこに絶滅してしまったのだろうか

私は管理所から出る男を確認した
彼の内臓を揉みしだき膨らんだ腹の脂肪に穴をあけ
はらわたを引きずり出して
ずっとずっと果てしなく続く臓物を引き延ばしていた

3ヶ月前 No.211

山人 @ookumo13 ★bDJoqEzcCB_6Og

どうしようもない夜に書いた二篇の詩のようなもの



僕はかつて、荷台の無い一輪車を押し、整った畦道を走っていた
ところどころ草が生えていたけれど
そこは僕たちが走るにふさわしい硬く尖った土で出来ていて
坊ちゃん刈りした僕の前髪が開拓の風に吹かれてなびいていたに違いなかった
友達もスレンダーに施された一輪車を押しながら
たがいに何か大声で言い合いながら田の畦道を走っていたのだった

畦道は今はない
廃田には、弱い日差しが竦んで
何もかもだらしなくたたずんでいて
そこら辺の雑木は言葉を失い歪んだまま生きていた

隆起した丘を山というならば
そこには、今、いたるところが内臓で覆われ
脳漿が表面を埋めている
私はそこにある、うっすらと道のようなところを
歪んだフレームの一輪車を押しながら歩いている
ずっとずっとずっと
内臓の群れは陽炎を立ち上げながら頂きまで続いているのだろうか
その隙間を縫い
帰化植物がすべてを気にせず日を浴びていた






世界中が空っぽのような夜
なんだかすごく懐かしい音が聞きたくなって
こうして聴いている

街の喧騒やクラクションの音とか
女の吐息や鼓動
それらが渦となって塵とともに枯れたビル街に舞い上がって
それらが得体のしれない猛禽となって
世界に再び舞い上がる

誰か止めてほしい
この限りなく狂おしい走りざまを
疾走する死を


もう、次の日がやってきたのだ
去っていく時間はあらゆるものを駆逐して
一篇の詩を書くことも拒否してしまうだろう

3ヶ月前 No.212

山人 @ookumo13 ★bDJoqEzcCB_6Og

中指を突き立てろ



物と生き物のはざかいって?
まったく動かない生き物もいるよね
それは草とか、花とかじゃないの?
キノコとかwwww

もう、時代が終わり次の時代が始まるらしいけど
次の時代って無いんじゃないのかな
っていうか次とかっていう言い方なんかもないし
終わりのはじまりなんじゃない?

*

古い記憶をたどると、小さな駅舎があった
微風がなにかを揺らす音が聞こえていた
砂利の上に上屋が作られた渡り廊下の奥に
牛の餌場のような小便所があり
その下面は黄色くこびりついた汚物がおびただしく付着していた

狼になれなかった時代があったとするならば
それは僕たちの時代じゃなかったのか
野ブタのように山野をころがり駆けて行った頃
地肌が土に触れる冷たさが心地よくて
僕たちは安堵して眠った

時代は僕たちの牙を抜き
戦うという前頭葉を取り除かれて
目の前にミミズをぶら下げられて
ただ、走り続けていたに過ぎなかった


やせた野良犬の微かな夢が街に点在している
彼らの前にある灯台は光が薄れ
静かに明滅している
それでものら犬たちは進行をやめない
狼になれなかったのら犬たちの徘徊が始まろうとしている

骨の奥に潜むのは沸騰を始めた怒り
たとえ消えてしまうであろうこの屍に
遠いむかし狼だった血が燃えて
この実態が消滅する前に
中指を突き立てる


3ヶ月前 No.213

山人 @ookumo13 ★bDJoqEzcCB_6Og

まだ眠っている朝に


雨は冷たく点滴のように体中に染み入っている
吐瀉物のような数日の汚れを癒すように
まだ、三月の半ばにも満たない時期での雨
早すぎる春のむごさをやさしくあきらめを促すように
雨は私を揺り起こしていた

早朝に人道的な道を外れ、少しだけ狂ってしまったが
この冷たい雨が形作られた枠の中に私を戻してくれるだろう

明日からまた紙飛行機となって空を飛び
まばらな空間へと失墜し
私は私の中で潜り込んでいくのだろう

口も失い耳も失った私は
いつも宇宙人のようにたたずむことしか許されないから
また、かけ離れていくよ
あてもない空間に飛び出していく核ミサイルになるために

3ヶ月前 No.214

山人 @ookumo13 ★bDJoqEzcCB_6Og

少し寒い


たぶん、やるべきことはあるのだ
でも、こうして胡坐をかいていると
どんどん地蔵のように静まりかえり
物音だけがうるさく感じられるようになる

そして今日は寒い
寒いのではなく、今までが暖かすぎて
体がいろんな事柄に分別が利かなくなってきているのだ

先ほどまで、少し明るみ始めていた空も
次第に予報通りとなって濃い曇り空となっている
曇っている、いやくぐもっている

昨日まで逸る気持ちがあったのは今も認めているけれど
なにから手を付けていいものやらと
いろんな事柄が再び蓋をされたように
冷たく押し黙っているのだ

とにかく、今言えることは
寒いのだ
暖を取ってから動いても
そのくらいは許されるだろう

ただ、もう一つの可能性は
このまま暖まり
次第に解けていくことも想像できる

3ヶ月前 No.215

山人 @ookumo13 ★bDJoqEzcCB_6Og


海へ

海の中の貝が
すべて心を閉ざしているのなら
海水は汚れ
真実は海底へと潜っていくだろう
貝は静かに砂に身を置き
塩辛い海水の中の養分を
ぱくりぱくりとつぶやくように
食べている
貝は夢を食べ
砂とともに時を過ごし
塩辛い水に身を浸して
その夢ごと貝殻に閉じ込めて
なめらかに生涯を終える

テトラポットに打ちつける波が
なにかの爆裂音のようで
あなたの心音とともに
カモメの低空飛行を見ていた
きっと波の中の空気がわだかまり
雪のような泡となって
未だ冷たい春に怯えている

水平線のはざかいで
舩が浮かんでいる
いずれ視界から消えるであろう舩の上を
海の生ぐさいにおいに促されて
多くの海鳥が飛翔している

流れ着いた流氷物を眺めながら
僕たちの宝物の話をしに
君を誘う日が
来るかもしれない

3ヶ月前 No.216

山人 @ookumo13 ★bDJoqEzcCB_6Og

病棟

市立の古い病院には、古い建物中に古い器具が置かれ
古い看護士がいた
きつく巻かれたゴムチューブから採られた血液ですら古く
すべて、新しいものなど無かった
その中で新しい病棟には発狂した患者が締め
普通の患者は古い病棟にたたずんでいた
食事の時間になると、病状に合わせた食事がカートで運ばれ
ベッドから半身を起こし食べ始める
誰も急いで浮浪者のようにあさる食べ方などしない
誰もが、一様にもぐもぐもぐもぐと言いながら
食べている
食べるという行為をプレイとして受け入れ
そのプレイを真摯に特定のルールの中で執り行っているように見える
病棟特有の消毒臭いにおいが壁に染みつき
当たり前すぎるほど、古い病院は
古い病院であることを恥じることもなく
ダイレクトに明示している
 新しい病棟には、新しい看護士がいて
斬新な医師もいて、ガラスの花が咲き乱れていた
時折、嬌声は聞こえるが
それはふとした狂人のため息であったり
呼吸であったりもする
穏やかに狂いは病棟にはびこり、それはある種の的確な檻でもあった
裏を返すと、何一つおかしなことなど無く
狂人はまともに定石通り
狂っているように見せかけているだけに過ぎなかった

3ヶ月前 No.217

山人 @ookumo13 ★bDJoqEzcCB_6Og

野鳥


この声は確か
みずみずしい木々のどこからか
針の穴をとおすような高音で数秒啼く
聞いたことがある声
覚醒される薬物のように
私のどろどろの体内までその音が刺し込む

野鳥はいつの日も
空気を清め、脳を洗う
ぼやけた思考に穴をあけ
新しい空のために飛翔する

とても深い森の中で
両眼を閉じて眠る
鳥は羽をたたみ
梢で眠る
そして夜は深まる

野鳥のさえずりは朝をつくる
朝の造形が少しづつ鳥によって生まれて
光を取り入れながら
太陽を連れてくる




2ヶ月前 No.218

山人 @ookumo13 ★bDJoqEzcCB_6Og

トドみたいになったって別にいいかもね



このまま
この苦しみみたいなものを
「べつに」
って言ってしまうには勇気がいる
心の傷みたいなものから流れ出た
膿や血を
「まぁね」
とか言ってトイレに流すことも
できるけれど、体はどこへも流せない
嫌われ者のトドみたいに
テトラポットに寄りかかって
生きていければどんなにいいんだろうか
でも、おなかが減って
どうにもならなくて
食べた握り飯が美味すぎて
笑った


2ヶ月前 No.219

山人 @ookumo13 ★bDJoqEzcCB_6Og

あかり

ぼんやりとした明かりに飛び交うのは頭の大きな蛾や聞き耳を立てた青い蝙蝠
脆いジャングルジムのような世界の中でそれらは互いに息を吐き合い群れていた
明かりは昔からそこにあって、来る者は拒まず、めぐる世界の中でたたずんでいた
明かりには芳香があり、それに吸い寄せられて、数多くの生き物が集り、そして潰えた
死骸は徐々に粉となり捲き散らかされ、新たな明かりを呼んだ

今でもその明かりに寄せられて多くの生き物たちが集り、あおい唾液を垂らしている
道すがら、地蔵は頑なに眼を閉じ、草はただ、風に吹かれて越に浸り、石は眠っている

生き物は今日も脱糞を繰り返し、眠るために交わり、生きるために食う
何処かにあかりがあるという、その切ない光を求めて
生き物たちの夜は明け、空気に包まれた一日が始まる

2ヶ月前 No.220

山人 @ookumo13 ★bDJoqEzcCB_6Og

gear

整然とたたずむ物達の群れが一心不乱に存在していた
確固たる意志と使われるべく時に備え、静かに眠っている
発情した野良猫の奇怪な声や、地の底に落とし込むような梟の声
建物の背面を擦るように鳴く夜の風の音にも動ずることもない

朝、道具は静かに使い手によって所定の保管場所から取り出され、水を掛けられる
使い手の指先がその刃先をなで、静かに作業は執り行われる
材が鋭い刃によって左右に押し分けられ使い手の意思によって成形される

道具を使いこなす、というよりも、その道具はすでに生きているのだろう
使い手の細胞が道具に入り込んでいる
もとは、何の変哲もない器具や道具であった
しかし、使い手の思いや、日々の理念が道具に意思を送り込む
使い手にとっての道具はこどもであり、妻でもあり、兵でもある
道具を磨き、寝心地の良い寝室を用意し、静かなひと時を過ごさせる
それによって、道具はいつも満たされていると感じ、使い手に仕えていくのだろう

道具の飛翔は使い手の安堵だ
愚直に物として存在し使い手との出会いを待っている

2ヶ月前 No.221

山人 @ookumo13 ★bDJoqEzcCB_6Og




ある日、私は探し物を探していた
目新しいものを欲するように探っていたのだった
それは鋭角になったナイフでもなく光る石でもない
嫌気がさすほど凡庸な景色やありきたりな生き物の鳴き声でもなかった

使い古された鉛筆の芯のにおいやタオルを擦る続けた細くなった石鹸
もしかすると、そのようなものの中から生まれ出てくる
粘液に包まれた仔虫たちの卵が孵化するときの
体を震わすような、冷たく遠く果てしないものようなうめき

哀しみの父と美しい母によって生まれた活字の中で
生き続ける素描
探し物はどこにもあるのだった
でもそれで何かを創造することはできなかった

1ヶ月前 No.222

山人 @ookumo13 ★bDJoqEzcCB_6Og



吐瀉物と下痢便の様に、使われていないテニスコートの中には汚泥とともに何年もの堆積した落ち葉が敷き詰められ、私たちはそれを撤去するために荒い吐息と、鉛のような腰の痛みと、まとわりつく害虫に悩まされながら肉体労働に精を出していた。しきりに耳元で、狂ったバイクのアクセルの様にいやがらせの羽音を蹴散らす害虫には特別な感情はなく、神の声に従い飛んでいるに過ぎなかった。作業手袋と作業着の間の皮膚に吸血する虫たちの食餌痕の血液が皮膚に散らばっている。鉄分の混じった泥と落ち葉の黒く土化したものから発せられる特有の悪臭が、私たちを人間から獣へと生まれ変わらせ、ついには土とともにのたうち回る虫にまで失墜していた。しかし、私たちはすでに使われることのない、今後使われはずのない、テニスコートの声をずっとずっと聴いてきた。私たちが私たちのために施した、この鬼畜の作業の中でテニスコートは声を発していた。こそげ採った泥のあとを暑い日射と風が通り過ぎ、あたりは何事もなかったように平面をさらしていた。それが声だった、かつてテニスコートだったはずの平面の声だった。

26日前 No.223

山人 @ookumo13 ★bDJoqEzcCB_6Og

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18日前 No.224

山人 @ookumo13 ★bDJoqEzcCB_6Og

ひとひらの朝


こわれ物のように夜が明けて、大きめのグラスに水を注ぎ流し込む
肌寒くて、ヒーターのスイッチを入れて外を見る
体の奥で光る球を温めながら、車は疾走する

永遠はいつまでも受け取ることはできないからと言って
まだ、はらはらと死んでいく羽虫のように季節の風に吹かれたくない
サビが一音上がるようなひとときがまだ欲しい


季節が交わる時のだるさと、くすんだ森の色が飽和している
あらゆるものが変異しながら時間を繕う
変化の知らせを持ちながら
私はひとひらの朝のひと時が、あまりにも頑なで
五月蠅いヒーターの音と、不快な暑さが気になり始めていた

風の尾はまだある
吐息とブレスがたがいに音階を刻み
一つの音を作るように
私はただ
祈るしかないのだと悟る

13日前 No.225

山人 @ookumo13 ★bDJoqEzcCB_6Og

まったく、緑は濃すぎる




こわれ物のように夜が明けて、大きめのグラスに水を注ぎ流し込む
肌寒くて、ヒーターのスイッチを入れて外を見る
体の奥で光る球を温めながら、車は疾走する

永遠はいつまでも受け取ることはできないからと言って
まだ、はらはらと死んでいく羽虫のように季節の風に吹かれたくない
サビが一音上がるようなひとときがまだ欲しい


季節が交わる時のだるさと、くすんだ森の色が飽和している
あらゆるものが変異しながら時間を繕う
変化の知らせを持ちながら
私はひとひらの朝のひと時が、あまりにも頑なで
五月蠅いヒーターの音と、不快な暑さが気になり始めていた

風の尾はまだある
吐息とブレスがたがいに音階を刻み
一つの音を作るように
私はただ
祈るしかないのだと悟る

7日前 No.226

山人 @ookumo13 ★bDJoqEzcCB_6Og


まったく、緑は濃すぎる





なにもかも、文字にしたり
言葉にしてしまうと
失われるものがある

早朝のキッチンにたたずむ妻の指や
アバウトに折りたたまれた布巾のにおい
さしずめそれは語られることのない物語であり
はるかな時間を費やした生き様でもあった


早朝の曇天は尖った刃物だ
ヒヨドリは理由もなく
けたたましく空気を切り裂き
山間を覆いつく濃い緑は
曇り空に抱かれている


大きな葉の上の尺取虫を
何回で端まで行くことができるかと彼は言う
虫は思考しないのだと決めつけている
あたらしい希望のために
首を伸ばして
においをかぐ尺取虫を知らない

すべては言葉にできない
脳の中に宇宙があって
そこに宇宙塵のように膨大な言葉が
たがいに衝突し合い
さようならと手を振っている

7日前 No.227
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