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オン・ザ・ロック、そして酩酊。

 ( SS投稿城 )
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激流朱雀 @suzaku1☆92ueQETlAOJB ★nbkWjzid98_cBi


 ゲインは最大。プリアンプをひねる、どうせ誰も聞いてくれないならば大声で歌ってしまおうか。

 真夏が嫌いだったから、そうマイクの前で口にする。どうせ僕の歌など聞いてはくれないから。

 電気の通わないアンプに繋げていた、残りのバッテリーも尽きている。そんなのは承知だった。

 世界が終わって七日間目。地殻変動という四字熟語を、自分の口から使うとは思ってもいなかった。

 昔見たテレビアニメのように陸地のほとんどが海に沈む。拡張した海へは大量の氷が浮かんでいる、季節は八月の真夏なのに。

 僕が生きていた街が沈む。それはもうダム湖のように。地球そのものがダム湖に沈んだソレである。

「――未来のアトランティスと言えば聞こえがいいさ」

 思いのたけを歌っている。

 ギターの弦だって潮風で錆付き始めていた。錆びついたテレキャスター、言葉尻だけ聞いていればエモいと言われるだろうか。

 残念ながら環境に適応できないタイプは死んでいく。自然の摂理を忘れていた人類にはキツい話。

 僕がライブ会場にしている屋上だって、ご察しである。――そもそも、東京都庁の半分だって浸水していた。

 食糧が昨日の夜で尽きたのだ。ヤケクソと定義しよう。

「もしもカミサマがいるとしたら」

 明日のことも分からない世界にしてくれるな、――なんて。

 考えてみれば、世界が浸水しなくたって明日のことなど分からなかった。

 当たり前を当たり前と受け入れるほうがどうかしている。これが奇跡の軌跡であることを忘れていたのが問題だ。

 ピックが割れてはじけた。だいぶ荒い演奏をしていたからだろう。

 アルコールの酩酊に近い。何度も同じことをしゃべる、千鳥足で欠けたソレを集める。

 脱水症状もあいまって前のめりに倒れる。思えば愛する彼女なんていない人生でした。童貞こじらせ歌手なんて、面白いよな。僕のことだけど。

 肢体を投げ出しコンクリートへ倒れ込む。

 見上げた空はクソ青い。

 海陸がひっくり返っても変わりのない天上にあきれ返ってしまえるよ。

 風が地球をステアする。まるで地球がひとつの酒だった。




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