Google
    
<< TOPページ 掲示板TOP 記事データ お知らせメール ▼レス(1) >>
ページ: 1


 
 
14回目の告白とその結果No.0 だけを表示しています。

光心 @kousinn ★ctiuiY2CEm_mgE

「14回目!」

「え?」

「だーかーらー、14回目だよ」

 学友であるところの風見さんは僕にふくれっ面を向けた。
 その理由はなんとなくわかってはいるけれど。

「君が私の告白断った回数ですぅ! 14回だよ? ありえないよ」

「世間一般で言えば14回も告白する方が『ありえない』というやつな気がするけど……」

「あー、なんで私この人好きになっちゃったんだろう……」

 恨めしい目で僕を見つめる風見さんにこそ僕は言いたい。
 なんで僕なんかを好きになったのだろう?

 狭くもなく、広くもない。
 実験室の一室で僕ら二人は白衣に身を包み、経過を観察する。
 小さな透明な箱の中にあるのは真っ黒な塊。
 俗に言う『宇宙』というやつだった。

「……風見さんがそこの中に入って理想の相手を探した方が手っ取り早いと思うんだけど?」

「えー、『宇宙』だっけ? そんな中入ってどうすんの? きっとつまらないよ?」

 そらまあ観測する側にとって観測される側に回るのは面白くないだろうけど。
 僕の微妙な表情の変化に気づいた風見さんはその長い赤髪を揺らしながら僕に近づく。

「地葉くんはどうして私の告白を断るの?」

「うーん……今はこの実験に集中したいからかなぁ」

 僕の炭酸が抜けたコーラのような声に風見さんはまたもやふくれっ面を作った。
 風見さんは綺麗な人だ。
 少し気の強いところはあるだろうけど、それも愛嬌と言えるレベルのものだ。
 長い赤髪も入念に手入れされているようで、光沢が美しい。
 食い意地がすごいところだけは欠点と言っても良いかもだけど。

「そーやって、ずーっとずーっと『宇宙』なんか眺めてもなんにもならないと思うけどね」

「まあ、そうかも……実際、これも14回目だし」

 13回目までの結果は見るまでもない。
 エントロピーの増大により、宇宙は限りなく広がるわけだが、どうしてかある一定数値を超えると急速に縮み、消えてしまう。
 まるで、膨らみすぎた風船に穴が空いて空気が抜けるように。
 始まって、そして終わっていく。

「それなら、私と一緒に遊園地にでも行かない? もう、ずっと実験室に篭ってるじゃない?」

「あー、たまにはいいかも」

「ほんと!?」

 喜色満面の笑みに僕はささやかな笑みを返した。
 約束だよ! と力強い言葉で僕の言質を取った風見さんはさっそくスマホで都合のいい日を探し始める。

 僕はきっとこの人を好きになる。
 風見さんは綺麗な人だ。
 少し気が強いところがあるけど、それは愛嬌と言える。
 長い赤髪は綺麗だし、とてもいい匂いがする。
 食い意地がすごいところはたまに傷だけど。

「でも、僕は今はこの実験を見守りたいんだ」

「……私と『宇宙』、どっちが大事なの?」

「……今日のところは『宇宙』かな」

「ばか!」

 つかつかと歩み寄った風見さんは罵声と共に僕の右脇腹に一撃を加えて、実験室を飛び出していった。
 怒ってるかと思えば、ドアはしっかり閉めていったのでそれほどでもないかもしれない。

 ぼんやりと僕は殴られた箇所の痛みを知覚していく。
 視線は『宇宙』から離さずに。

「今度は、どんなモノが生まれるんだろう?」

 僕は『宇宙』を見つめる。
 その黒い塊は無数の何かで構成されている。
 ダークマターという物質であるとは知っているけど、このダークマターが何なのかは誰も知らない。
 『宇宙』は黒い何かで出来ている。
 それは、物語がインクの染みで出来ているのに似ている。

「さて、今度はどう手を加えようかな」

 僕は考える。
 『宇宙』の始まりと終わりを。
 いつかきっと風見さんを選ぶことになるにしても。
 今、僕にとって夢中になれるのは『宇宙』だけなのだ。




2018/10/11 22:21 No.0

14回目の告白とその結果No.0 だけを表示しています。
ページ: 1

 
 
<< TOPページ 掲示板TOP 記事データ お知らせメール ▲ページ上 >>
★必ず ローカルルールメビウスリングのルール をご覧ください。
 ▼スタンプ▲スタンプ
※スタンプはいちどに 3個 まで使えます  ×閉じる