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世界の果て

 ( SS投稿城 )
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光心 @kousinn ★2ygXqa1xRm_mgE

「今日の1秒より明日の1秒の方が短いって言ったら信じる?」

 そこはいわゆる世界の果てだった。
 世界の果てにして、成れの果て。
 全てが全て、還元されてしまう終わりの砂浜。
 そこに俺は大の字になって倒れていたのだが、そんな僕を見下ろして声をかけてきたのは不思議な見た目の人だった。
 中性的な顔立ち、ほっそりとした体躯、女の子らしくかつ男の子らしい体つき。
 上は学ランのくせに、下はプリーツスカートというアンバランスな出で立ち。
 均等にして不可分な人間の形をした何かがいた。

「信じるも何も、俺の時間はもう止まってしまったんだぜ?」

 最期の風景は覚えちゃいない。
 確か、どっかのコンビニで買い食いをして、明日のテストのことを考えて憂鬱になって、そして巨大な質量が俺の命をすりつぶした。
 グシャ、ってなんかのゲームみたいに俺という命は粉々になったけど、魂とかいう目にも見えないなにかだけが残った。
 そして、気づけば、ここにいて、俺はここが世界の果てだと知っていた。
 正確には、思い出した、なのだが。

「確かに、そうだね。でも、君はまたここから旅立つことになる」

「……それで?」

「次の人生へ1個だけアイテムを持ち越させてあげよう、っていう僕の優しさ」

「ああ、エゴね」

「エゴじゃないよ。愛だよ」

 奇妙な存在に愛されていることが果たしてどれだけ嬉しいことなのか判別はつかない。
 命は終わって、魂だけの俺を愛するというのは果たして本当の愛なのだろうか?

「だから、君に1つだけ良いことを教えてあげようと思ったのさ」

 静寂の音にまぎれて、謡うような声がするりと世界を微かに揺らす。
 制服を着たままの俺を波は追い返したいのか、それとも引きずり込みたいのか。
 そんなの、波に聞かないとわからないけど、聞いたところで解答が返ってくるとは思えない。

「そんなことより、あんたはなんだ?」

「あの世界は時間という概念が支配している」

「ちょっと話聞いてる? ねえ?」

「そして、今日の1秒が明日の1秒よりも短いという事実に気づいているものはごく少ない」

「もしもーし?」

「いつだって気づいた者にしか時間は手を差し伸ばさない。魂は経験のみを蓄積し、そこに時間は蓄積されない」

 話したいだけ話そうとするそいつはゆっくりと俺の隣に腰掛けた。
 しゃり、という砂を噛む音がこの成れの果てで唯一優しげな音色となって俺の意識を揺さぶった。
 中性的な顔をこちらに向け、泣いているような笑っているような怒っているような何も考えていないような顔で人の言葉に似たもので語りかける。

「時間は平等に見える。けれど、そんなことはない。今日の1秒と明日の1秒の間には目に見えないほどの誤差がある」

「…………」

「ジャネの法則、ってやつさ。そして、魂が何度でも世界を感じてここへ帰ってくる理由もそこにある」

「………………」

「経験は時間ではない。経験は主観だ。そして、主観は時間を跳躍する唯一の武器だ」

 俺はわけのわからない外国語を聞かされている気分で、顔をそいつからそむけた。
 そんなことをしても無駄だと分かっていたが、それでもそうしないではいられなかった。
 そいつの手向けを受け取るということは、俺の旅が再び始まるというだからだ。

「時間は常に減少していく。けれど、主観はそうではない。決して時間に囚われるな。時間は主観を測る尺度でしかない」

「……あのさ」

「ん? なんだい?」

「もちっと分かる言葉で話してくれね?」

「……君は本当に馬鹿だなぁ」

「バカにも分かるように話すことが出来るのが、賢人の条件だと思うが?」

「ふふふ、それは違うね。賢人の条件は、どんな相手に対してもわからないままにわからせることが出来る存在なのさ」

「?」

「つまり、バカに分かる言葉に翻訳出来てしまう時点で、そいつは賢人ではなく賢人のふりをしたバカなんだよ」

「……じゃ、意味わかんね―言葉を垂れ流すお前は俺から見れば馬鹿と同じだ」

 俺の言葉にそいつはくくくと喉を鳴らした。
 何がそんなに面白いのかは知らないが、こいつはどうやら俺の理解の及ばないやつらしい。

「確かにそうだ。君の言う通りだ。サバンナで暮らす者にとって、どれだけ知識をつけた者であっても、サバンナのルールを知らなければ愚者でしかない」

 俺はなにかを言い返そうと思ったが、止めた。
 光の欠片が視界の端を埋め始めたからだ。
 次の人生への合図。

「もう、行ってしまうのかい?」

 今まで聞いたことがないほど寂しげな旋律が響いた。
 その旋律の奏者の方へちらりと目を向けると、両の瞳からダイヤモンドの輝きを持つ雫が静かに世界を濡らしていた。

「……悪いな」

「…………次も君がそうそうに死ぬのを祈ってる」

「物騒な祈りはやめてくれ」

「他にやることもないからね」

「あるだろやるこ

 光の欠片が溢れて、還元されていく。
 見送ったそいつの頬を伝う一筋の宝石は砂浜へと落ちて、世界の果てに小さな染みを作っただけだった。



了。

関連リンク: 叶わない夢を君とみる 
ページ: 1

 
 

光心 @kousinn ★2ygXqa1xRm_mgE

<あとがき>

 どうも。光心です。

 色々と脳内にあってものをどうにか出力して、形にしたけど、わけのわかんねーものをわけのかんねーまま形に出来たかなと思っています。
 このわけのわかんねーのをちゃんと物語にするべきではあるけれど、
 たまにはわけのわかんねーのをわけのかんねーまま形にしてみたい衝動に駆られたりするので、
 今回はそのまま形にしました。

 きっとわけのかんねーのですが、わけのかんねーのを出力することで、
 自分の中のわけのかんねーを再認識したり、観察したり、解釈したりして、
 次へとつなげるようにします。

 つーか、次書きたいものは決まってるけど設定が決まってねーからかけない。
 けど、なにかを書きたい欲だけが余った結果の予熱というか微熱というか、まあ、そんな勢いに任せた何かなので、
 どうせ明日には後悔したりしてそう……いや、まじで後悔するだろ、これ。

 次書きたいものを書くには、まあ、色々と必要ではあるんだけど、
 最近気づいたこととして、
 まず、自分の感覚がないと意味ねーな、ってことだったりする。
 なんつーか、結局のところ、この文章もそうだけど、俺の中にあるものを形として外に出力しているんだけども、
 そも、何かしら外部から得た知識なんかをそのまま出力しても意味がない。
 本当に必要なのは、俺が世界をどう見ていて、それをどう形として出力するのか、
 ってことの方が、何万倍も大事なことなんじゃねーの? って最近思ったから、
 今回とりあえず出力するだけしてみたわけで……。

 なんにせよ、次書く時はちゃんと物語にする予定なので、
 ま、また、その時にでも。

 つわけで、以上です。

2ヶ月前 No.1

激流朱雀 @suzaku1☆92ueQETlAOJB ★nbkWjzid98_Twa

おもしろかったです!
エゴね、愛だよ!のくだりが一番好きです!
あと賢者とバカのパラドックスにクスッときました。

2ヶ月前 No.2

光心 @kousinn ★2ygXqa1xRm_mgE

激流朱雀さん>
ども、お久しぶりです!
感想あざす!

あのへんのくだり、書いてて「これは面白いのだろうか? もしかしたらくどいか……」なんて悩んでいた部分なので、
感想頂けて安心しました。

現在、中編くらいの小説の案を考えているのですが、
なかなかしっくりくるアイデアも出ないし、そもそも書く時間ねーし、って感じで、
「小説を書く意義とは……うごごごご」ってなります。
働き始めて、昔は「お金にならないからやらない」って言う漫画とかのキャラクターの気持ちがわからなかったのですが、
今になってわかりはじめて来まして、
失うまで大切なものには気づけないんだよなぁ、とか思い始めております……。

というわけで、感想ありがとうございました!
またどこかで。
ではではー。

1ヶ月前 No.3
ページ: 1

 
 
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