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たくましき人

 ( SS投稿城 )
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游月 昭☆qHTUEH4Y5X. ★iPhone=xa8D6y2lby

『たくましき人』

 宅間志貴人は物心ついた時からこの名前である。当たり前だが、気づいた時には皆、自分に名前がついていることに気づき、更にもっと後になって、その名前に親の願いが込められている事を知る。しかし、だからこそ自分の名前が嫌いというのもよくある。志貴人の場合、読みを繋げると、「たくましきひと」となるが、志貴人は華奢で短足だった。学校に行き始めると、始業式の日、担任は決まって、「おお、いい名前だ。」はまだ良い、「名前のように鍛えような。」などと親父ギャグ的ウケ狙いに突っ走り、教室の皆がスコンとハマって爆笑などという流れが毎年予想されて、三月の末になると学校を爆破したくなるのだ。

 だから爆破することにした。勿論小学生には現実的に無理なので、思考の中で爆破する。時限爆弾を持って職員室に行き、
「おはようございます。たくましいたくまきひとです。」
 と言えば教師の誰もが笑う事が分かっている。教師の全員が笑ったのを確認した後、一筋涙を流しながら、
「可笑しいでしょう、笑えるでしょう、僕の名前。でも僕はカッコいいって褒められたいんだ。志貴人くん大好き、って女の子に言われたいんだ。でももう終わりだ。お前らみんな死ね。」
 と言って担任の机に時限爆弾の入ったランドセルを置く。
泣きながら走って校庭に出る。志貴人を追いかけ、
「さっきは笑って済まなかった。」
 と謝りに来た教師だけ、職員室が爆発するのを校庭で目撃するのだ。しかし、志貴人は鈴木幸枝先生が好きだった。あの先生は一年生の時から優しい。彼が友達にイジメられているのを素早く察知して解決に導いてくれた事を覚えている。だから、鈴木先生は許す。しかし、笑わせたのは志貴人本人である。
「結局僕が悪いんじゃないかぁ!」
 と職員室に戻り、ランドセルを背負って再び校庭に出る。そしてセットしたチャイムが鳴る時間に、
「ん……、あれっ?」
 何故かランドセルが爆発しない。すると廊下から担任の教師と生徒達、更には志貴人の両親が涙を流しながら教室に入って来る。
「ごめんよ志貴人くん、これからみんなで仲良くしよう。」
 そして皆円陣を組んで〈僕らはみんな生きている〉を歌う。
 学習発表会に来ていた保護者達は涙を流しながら拍手をしている。そして志貴人が一人前に出て、
「僕こそ、ごめんよ。これからみんなを笑わせる事を生きがいにするよ。」
 と言って劇は終わる。

 そうして今、志貴人は始業式の朝、家の玄関を勢いよく開けて登校して行った。

関連リンク: 高知脳カラス 
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