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掌編・残痕

 ( SS投稿城 )
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光心 @kousinn ★2ygXqa1xRm_mgE

「もしも時間を戻せたらどうする?」

 問いかけるカノジョの言葉に僕は笑みで返す。
 それでようやく、何も言わず察してくれるカノジョの聡明さにはいつも助けられているなぁ、という自分の気持ちに気づいた。

「じゃあ、もしも時間を戻してもっと幸せになれたらどうする?」

 その問いかけに僕はふと考えた。
 もしも、もっと時間があればカノジョともっと濃密な時間を過ごせたかもしれない。
 そう思うと時間を巻き戻せれば、と思わなくもない。

「でも、さ」

「ん?」

「これ以上幸せになっちゃうのは、ちょっと……」

 ぎこちない笑みを浮かべる僕にカノジョは不思議そうに首を傾げた。
 さすがに言葉がたりなさすぎたかな、と反省はするが後悔はしない僕。

「どうして?」

 カノジョも同じように思ったのだろう。
 問いを重ねるカノジョに僕はどうしようもない気持ちを言葉に変えて伝える。

「今より幸せになっちゃったら、死ぬのが怖くなるから」

「あー、なるほど」

 納得できるカノジョもカノジョだけど、そんな考えに至る僕も大概小心者であると思った。
 たぶん、今が分水嶺なんだろう。
 これ以上先の幸せは余分な幸せなのだと思う。
 幸せすぎたら人は怖くて死ねなくなってしまうのだろう。

「でも、死にたくないって思うのは普通のことだと思うよ?」

「まあね。でも、それはみっともないじゃないか」

 神様に命乞いをする僕を想像。
 相当に見苦しい存在だろう。
 もしもそんな存在を生かしてくれる神様がいたとしても、僕はそんな世界で生きていける気がしない。
 そんな優しい世界にいたら、ずーっと生き続けたくなってしまうだろうから。

「みっともなくてもね、私は、生きて、欲しいよ……生きて、欲しいの……」

 涙の成分は血と同じだとかなんとか。
 ならば、それは心という器官が流す血なのだろう。

「死んじゃうけど、さ」

「うん?」

「君の心に何か残せれば、僕に生きた価値はあるさ」

 もしも、死ぬ時に同じ笑みを浮かべられるなら僕は時間を巻き戻すかもしれない。
 そう、思えた。

ページ: 1


 
 

□□ ★YLu4IGFHQQ_uKh

散文詩のような文体が個人的に好きです。

9ヶ月前 No.1

光心 @kousinn ★2ygXqa1xRm_mgE

□□さん>

感想ありがとうございます!!!
なぜか毎回掌編はそんな書き方になっちゃいますので、気に入っていただければ幸いです。

文字数を制限すると、案外行間が生まれて詩のようになるのかも……?

ともあれ、お読み頂きありがとうございました!
ではでは、またどこか別の小説で。

9ヶ月前 No.2
ページ: 1

 
 
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