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名も無き蜘蛛の話

 ( SS投稿城 )
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ばでほり @17854 ★Android=1LdIuPUifH

するする、するする、と。
音もなく、僕はチホちゃんの机の上に降り立つ。

「毎日毎日、ご苦労なことだね。」

仕事にとりかかろうとする僕に、声がかかる。亀のペプシだ。彼はこうして、ときたま僕を茶化してくる。

「うるせい。」とだけ答えると、僕はそれ以上とりあわず、目的地に向かう。

目的地とは、一見何の変徹もない壁だ。しかし、よくよく近づいてみると、わずかに穴が、そう、僕達のようなサイズの生物が通るのにちょうどよいくらいの穴が開いているのが分かる。ここが、僕の仕事場だ。

「いや実際、君のやってることは立派だと思うよ。今のところ誰も気づいてはいないようだけど。」

ペプシが声をかける。僕は手と足と口とを忙しなく動かしながら短く答える。

「べつに、気づいてもらいたくてやってるわけじゃない。」

「嘘だな。君はチホちゃんに好かれたいんだろう。」

僕はジロリ、とペプシに複眼を向ける。

「そうかもしれない。でも、だったら何だって言うんだ?」

「そう睨むなって。悪かったよ」と言いつつ、ペプシは五体を甲羅にしまう。おそらく、もう一眠りするつもりだろう。

ようやく静かになったことに満足し、僕はひたすらに仕事を続けていく。と言っても、毎日やっていることなので、一度集中したらあっという間に終わってしまった。

僕はチホちゃんが起き出す前に姿を消そうとするが、その前に一度だけ、自分の仕事のあとを確認する。

来る前には確かに空いていた壁の穴が、白い糸を何重にも編み込んだ網できちんと隙間なく塞がれているのを確認する。

そう、これが僕の仕事だ。この穴から悪い虫が入り込まないように僕の糸を使い塞いでやるのが。



一仕事終え、天井裏でうとうとしていると、ブゥンという不吉な羽音で目が覚めた。
それも一匹ではなく、もっと大勢の。
僕は緊張した様子で例の壁に向かうと、網の隙間から外を覗いてみた。すると、そこにはギラギラと輝く針を持つスズメバチの大群が飛び交っていた。

「よぉよぉ、そこの薄汚ぇクモちゃん、このクソ邪魔な巣をどかしちゃくれねぇか?」

群れのなかの一匹がそう話しかける。空を飛ぶ虫というのは、たいがいガラが悪いから困る。

「お断りだね。」

僕は気丈に言い放ったつもりだったが、声が裏返ってしまった。

「なぁんだってぇ?聞こえねぇーーよ!いいからさっさとどかせっつってんだろうが。オイ。」

話を聞いていた他の蜂たちも、同意するように速度を上げ、今にも飛び込みそうな勢いで壁まで近寄ってくる。

「お断りだって言っているんだ。」

今度は裏返らずに言えた。

「残念だけどここは通行止めだ。お帰りいただこう。」

蜂たちの笑い声がやみ、しばらく羽音だけが響いていたが、やがて最初に声を掛けてきた蜂が口を開く。

「オメェ正気か?それともコーヒーでも飲んで酔っぱらってんのか?この虫数相手にやり合ったら確実に死ぬぞ。」

その口調には、もはや先ほどまでの軽い調子は無くなっていた。

僕が何も言わず静かに身構えていると、一匹の蜂が突然こちらに突撃してきた。

こちらの巣に正面からぶつかると、身をとられながらも力ずくで抜け出そうともがき始めた。僕はやむを得ずその一匹に飛び付くと、内心ふるえながらも、首筋に牙を立てる。

蜂たちは、一連の動作を黙って見ていたが、自分の仲間がやられたのだと分かると、怒り狂った何匹かが思い切り飛び込んできた。

僕はさっきよりだいぶ落ち着いてその蜂たちを仕留める。さすがに巣がぼろぼろになったので、すぐさま糸を出し補強することも忘れない。

「どいてろ」

蜂たちの後ろから一際でかい一匹が姿を表す。おそらく群れのボスなのだろう。

「クソ蜘蛛の巣を突破するときは、こうやるんだ。お前ら見ておけ。」

そう言うが早いか、ボス蜂はこちらに飛び込んで来た。何か策があるのかと思ったが、真っ直ぐ飛んでくるので、僕はほっとした。

そして、それが致命的なミスになった。

ボス蜂は突然方向転換すると、僕の身体に直接針をぶっ刺してきた。

ドシュッという物凄い音のあと、僕のお腹から、おそらく体液であろう熱い液体が流れ出すのが感じられた。

これは、もう助からないな。

僕は、どこか他人事のようにそう思いながら、まだ僕の身体に針を刺したままのボス蜂に噛みつき、仕留めた。

ボスを失った蜂たちの動揺は大きかった。

彼らは僕の腹に空いた穴と、絶命したボス蜂とを交互に見ながら、なおも悩んでいたようだったが、やがて決心したかのように、僕目掛けて飛んでくる。

僕は、自分でも不思議なほど感情が昂り、不敵に笑うと、こう言った。

「掛かってこいよ、ブンブン蜂ども!」

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ばでほり @17854 ★Android=1LdIuPUifH

昔の夢を見た。

あれはたしか、私がまだ小学生だったときの話だから、3年前くらいだろうか。

家のなかに一匹の蜘蛛が紛れ込み、それで母が大騒ぎを始めたのだ。(私はそれほどでもないが、母は当時も今も昆虫の類いは見るのもムリという人だ)

さんざん騒いだすえ結局私が捕まえたのだが、殺すのもなんとなく可哀想に思い、母の目を盗んでそっと外に放してやった。

「もう入ってきちゃダメだよ。」

そう声を掛けたところまでは記憶と変わらないが、夢の中の蜘蛛はこちらに向き直ると、礼儀正しく頭を下げた。少なくとも、そう見える仕草をした。

そしてさらに驚くことに、私に向けて突然喋りだしたのだ。

「ありがとう。君は命の恩人だ。そして僕に生きる目的をくれた。だから、うん、悔いはない。」

私が呆気にとられていると、いつの間にか蜘蛛は消えていた。

頭では夢だと分かっていたが、なんだか無性に悲しくなって、私は目が覚めるまで一人で泣き続けた。

3ヶ月前 No.1

ばでほり @17854 ★Android=1LdIuPUifH

あほがき

今回は弟からテーマをもらって書いてみました。

〜ある日曜のランチにて〜
僕「なんか書き物でもしたい気分なんよ。」
弟「例えばどんなん?」
僕「やっぱり男らしいやつがいいかな。女の子を守って悪と戦う的な。」
弟「じゃあ蜘蛛の話でも書いてよ。」
僕「???」

という冗談のようなやりとりの末、この話が生まれました。笑

ちなみに初期の構想では目が覚めたチホちゃんが虫の死骸に気づいて、気持ち悪がりながらも掃除機で片付けるというものを考えていました。
なんか筆を進めていくうちにこうなったのですが、どっちが良かったとか感想もらえたらとても嬉しいです。

ここまで読んでくださった方、ありがとうございます!

3ヶ月前 No.2

ゴン @gorurugonn ★ANOBAXQECN_Vx8

うるせい。
超かわいいです。ほんとに文字にされたとき、聞いた限りでは汚らしい言葉は、なんとなく愛嬌がありますよね。むしろ文字媒体においては標準語で敬語が何よりも冷たく感じられたり。そんなわけで登場人物がみんなかわいいのにお話はメリーバッドエンドですごく良かったです。
投稿された時からかっこかわいいクモ君いいねだったんですけど今更ようやくコメントを残します。
我恥をみせつ! 御行!

2ヶ月前 No.3

ばでほり @17854 ★QVGfmBKBH9_PHR

ゴンさん


遅くなりましたが、コメントありがとうございます。

蜘蛛という敬遠されがちな虫を主人公にした時点で受け入れてもらうのは諦めていたので、愛嬌があると言ってもらえてとても嬉しいです。

書いている本人としてはハードボイルドだと思ってますので、どうしてもバッドエンドにしてしまうんですよね。
そこに関しても人によって感じ方は変わると思いますが、ほめていただいてありがとうございます。

また機会がありましたらよろしくお願いします!!

2ヶ月前 No.4
ページ: 1

 
 
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