Google
    
<< TOPページ 掲示板TOP 記事データ お知らせメール ▼レス(3) >>

Incident longevity.

 ( SS投稿城 )
- アクセス(125) - いいね!(3)

激流朱雀 @suzaku1☆92ueQETlAOJB ★xUk9TgrSTY_tIn

Incident longevity.

 八月のうだるような暑さ。蝉の鳴く声。遮光カーテンの向こうにはカゲロウのうねる街。
 ぽたりぽたりと水道水が蛇口から零れる。熱に浮かされた部屋で一人と一体。
 白魚のような白い指に、まるで弦楽器のような歌声。流れる美しい茶髪に、冷たい海のような青い瞳。生前の君の話、それも今じゃ床に転がるオブジェ。
 ありふれた今日の僕には少しおかしな点がある。類を見ない、ありふれていないのは彼女の死体。

「このままでは腐ってしまう」

 ポツリと語るが返事はない。息をする事を諦めちゃった彼女は、そこで朽ちるのを待っている。
 しょうがないのでコンビニへ。大量の氷を買いに向かう。アルバイトらしい店員は、奇怪な目をして僕を見るから「今日は暑いからね」と笑ってしまった。やっと店員は得てして普通のリアクション。まぁ、さすがに五キロは買いすぎであろう。僕だってこんなに気温が高くなければ彼女のために氷など買っていない。嘘などついてはいなかった。

「ただいま、愛しのマーメイド」

 帰宅して彼女に呼びかけたが、亡骸になった君からは返事はない。昔あったゲームのよう。返事がないから、ただの屍であった。
 仕方がないので水の張った浴槽に氷をぶちまける。一キロは確実に溶けてしまった。これは買い足すべきか、なんて思ったけれど気がつかなかったことにする。氷はそれなりに質量があって重たいからだ。このおんぼろアパートに運ぶだけでも億劫だったのに、また買いに外に出るのは遠慮したい。ただでさえこの暑さ。こんどは僕が一体になってしまう。
 閉め切った浴室は湿度が酷い。ゲロ吐くような蒸し暑さ。白いワンピースと水色の下着を脱がせた彼女をドボンと水の中に落とした。これで二キロの氷は溶けたことだろう。彼女を沈めて少し時間を置いた。左手をつっこみ水加減をみると、まぁそれなりに冷たい。ないよりマシな氷だが時期に溶けて消えてしまう。物理的に僕の苦労は水の泡だ。
 ぷっかり浮いた小島のような背を見て思い返す。これでは彼女の顔が見えない。
 ため息一つ吐いてひっくり返す。正直な話、顔じゃなくて折りたたんでしまった足の方が気になったから、生きてるときみたいに浸かるような体勢へ動かした。

「ふむ、まるで僕は殺人犯みたいじゃないか」

 一糸纏わぬ彼女を沈め、なんともよろしくない気分になってきた。人の血抜きの仕方は知識になかったから、最初に水に沈めただけなのに、どうして僕はこんな思いをしている。
 いささかおかしな話であろう。僕は人など殺していないのに。

「まぁ、ヒトのアイダと言うなれば」

 殺したこととなるだろう。
 僕はまだ生物学の権威とまでは言われたことはない。若い故に仕方がない。もう二十年もすれば、僕の説を認めてくれなかった学会の老人達も抗えない老い≠ニ言う、時の弾丸に一斉掃射される。それまで辛抱強く待たなきゃいけない。僕自身の時の流れが変われば、体感的にはもうしばらくの辛抱だろう。
 沈んだ彼女をしばらく見ていたが、そろそろ次の行動に移ろうか。くだらない僕の話などどうでもいいのだ。
 氷の入っていた袋を見る。約五キロを浴槽の水の数値にプラスする。軽く電卓を叩いて追加するミネラルと差し引く塩分を計算した。微量金属の比率は誤差の範囲と仮定して、考えないものとした。
 バケツ一杯の分の粉になった特製薬を、氷を足した分の大匙摺り切り一杯を差し引いた。引いた方は前もって包丁を浸けていたタライの中に突っ込む。タライのほうは臨界溶液だったが気にしない。
やっとこさっとこバケツの中身を彼女の浸かる浴槽に注ぎ込む。ざらざらと水の中に尾を引いて溶けていく粒を見て、思わず笑みがこぼれてしまう。

「たとえて言うなら羊水か」

 ストレートに言えば海水だ。なんて、自問自答。相手のいない会話はつまらない。
 溶け残りを左手で大きく二回かき混ぜると、計算通りすべて溶けきった。理論上、人工的につくられた海水に彼女の二本の脚には爛れたように皮膚が剥ける。ふやけた皮膚がでろりと剥けて、鱗と鰭が現れる。魚類特融の生臭い香りが、風呂水からするのか彼女からするのかはわからなかった。そんなのにかまってられないほど僕は興奮していた。

「はろぅ、愛しのマーメイド」

 死して生まれた姿に戻るなんて、生命の元である海水じゃないとできない芸当だよね。それとも羊水のおかげで生まれ変わったのかい? まぁそれは追々、論文として発表しよう。データは献体があればいくらでも採取できる。それに伝承によれば人魚の肉を食らえば長寿を授かるそうじゃないか。研究するに時間など腐るほどあるという事さ。

 僕はそっと彼女の唇にキスをした。ぬるりとする魚特有の粘液を舌で拭う。確かにこれは生魚の味だった。


ページ: 1

 
 

激流朱雀 @suzaku1☆92ueQETlAOJB ★xUk9TgrSTY_tIn

*/あとがき

生足魅惑のマーメイド↑↑
ということで、ブリ大根たべてるときに思いついた話です。
そして八月とかいいながら、書き始めて三日後に大雪降って雪かきに見舞われる事件です。
インシデント雪かきです。俺だって不老の肉体で雪かきしたら最高に働けれるのに(ギリッ)っと思ったけど、
不老なだけで、老けないというわけではないという事に気が付いたので、
闇の組織に消されます。ちょうど某小さくなっても頭脳は同じタイプの不老なら若いままを保てるのに!
という事をほざいてやはり黒ずくめの連中に消されます。←お前何回消されてるんだよ。

ところでプロビューでR15通知が付きましたが一環として魚の話なのでエロでもグロでもありません。
生足魅惑のマーメイド↑↑のお話です。

ノリノリで書いてロクに推敲していないので誤字脱字指摘や批評、批判。
そっと囁いて教えてください。(土下座)
感想ありましたら、とてつもなく嬉しいです。
読んでいただきありがとうございました。

では。

8ヶ月前 No.1

光心 @kousinn ★jrmvKxEjwb_mgE

どうも、光心です!

感想を書きに参ったで御座る
という冗談はおいておいて、さっそく感想書かせていただきます。

読み始めて最初の数行でビビリ、うまくオチたとこでちょっと安心したりしましたw

激流朱雀さんは、なんというか人間としてのクセをよく見てるなぁ、と思ったりしていて、

しょうがないのでコンビニへ。大量の氷を買いに向かう。アルバイトらしい店員は、奇怪な目をして僕を見るから「今日は暑いからね」と笑ってしまった。やっと店員は得てして普通のリアクション。まぁ、さすがに五キロは買いすぎであろう。僕だってこんなに気温が高くなければ彼女のために氷など買っていない。嘘などついてはいなかった。

このあたりが個人的にそう感じたりしました。
『笑ってしまった』という無意識を意識下に引き上げているような感じは確かに自分もよくやるなぁと思います。
笑ってから笑ったことに気づいた感じですかね。
こういうとこがうまいなぁと感じたりしています。
幻想的な書き方も激流朱雀さんの持ち味なのですが、改めて読むとこういう“小さなクセ”をしっかりと書いていることも持ち味なのでは、と思ったりしてます。

人魚ちゃん、食べられてしまうのん?
とちょっと悲しくもありますが、食べる以外の選択肢がないのも事実だったりw
塩味の人魚って美味しいのかな……と調理に苦戦する主人公の姿を思い浮かべるとなんかちょっと微笑ましくもありますね。
カニバリズム全開か、俺は! というセルフツッコミまでしたところで、
以上感想でした!

寒さもますます増して、クリスマスに街に出れば精神攻撃を食らうことが分かってますので、
今日も今日とて引きこもりながら感想書かせて頂きました。
ではまたどこかで!

7ヶ月前 No.2

激流朱雀 @suzaku1☆92ueQETlAOJB ★xUk9TgrSTY_tIn

光心さん!おせわさまですっ

猟奇的なプチホラーからスタートして、冬なのに背筋が凍るタイプの話を書いてしまい(汗)というこっちが冷や汗でした(爆)
自然に違和感のある話ばっかり書いてて申し訳ないです。
しぐさやクセにそのキャラクターの個性が出ると思っているのでそう言っていただけて幸いです。

人魚ってどんな味がするんでしょうね!
俺は生魚が苦手なので刺身とか全然食べられないタイプなので、主人公はどうやって人魚を食べるのか興味津々ですね!
ブリ大根みたいに生姜で煮ると、案外臭みがとれるかもしれませんねw
なんたって偉大なる香辛料は様々な素材のいやな匂いや臭みを消すために一役買っていますし!
人魚のイメージが半分人間で半分魚だから脂身が乗ってるブタとマグロな感じなので、やっぱり全身大トロみたいな感じなんでしょうかね?
あ、でも俺、寿司も食べられないので大トロも食べられないから、味がホントにイメージなんです!←
経験に勝る資料は無いとは言うけれど、どうしても(汗)
話が脱線に脱線を重ねていくので閑話休題致します!

このたびはコメントいただきありがとうございました。
楽しんでいただけたのなら幸いです。

7ヶ月前 No.3
ページ: 1

 
 
<< TOPページ 掲示板TOP 記事データ お知らせメール ▲ページ上 >>
★必ず ローカルルールメビウスリングのルール をご覧ください。
 ▼スタンプ▲スタンプ
※スタンプはいちどに 3個 まで使えます  ×閉じる