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その記憶、買います

 ( 小説投稿城2世(大人風味) )
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まさ ★Android=4Q731htrjW

私には忘れたい過去があった
その記憶を思い出すたび、心に傷がふえてゆく

そんなある日−

「きみ、忘れたい記憶があるね?」

突然話しかけてきた老人は薄く微笑む

「その記憶...500万円で買おう」


私はその日、記憶を失った

2年前 No.0
メモ2014/06/30 22:46 : まさ @7793★Android-4Q731htrjW

失ってはじめて気づくものがある

どんなときもどんなときもどんなときも

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まさ ★Android=4Q731htrjW

売買契約の概要は以下のようなものだった

『忘れたい記憶と引き換えに500万円を支払う。
記憶そのものは消えるが、その記憶が消えたという記憶は残る。
もし記憶を思い出したくなった際は500万円の返納により思い出すことができる...』

記憶を思い出したくなったとき...
そんなときがくるのだろうか?

腕についた傷と、手のひらの上の500万円を見ながら思う

この傷が、思い出と関係してるのかな...

分からない
ただ、思い出さないほうがいいのだけは確かなのだろう

2年前 No.1

まさ ★Android=4Q731htrjW

大学の学食でお昼をとっていた
友人の梨佳も一緒だ

「そう言えば由美子、最近割りと元気になってきたね。前まで調子悪そうだったけど」

梨佳が紙パックのコーヒーを手に言う

「そうかな? 前と変わらない気するけど... 」

私は言いながらサンドイッチに手を伸ばす

「そうだよー、去年の秋ごろから...あの男の子が居なくなった頃から調子悪そうだったもん」と梨佳は寂しげな顔をする

「男の子...?」

「一時期ずっと一緒に居たじゃない。とぼけないでよー」

手首に目をおとし、長袖の下の傷のことを考える
傷とその男の子は関係あるのだろうかー

思い出してはいけない、
頭の中に赤ランプが点る

一体私は何を忘れたのだろう
思い出してはならないと思うほど、思いを巡らせてしまう自分が居た

2年前 No.2

まさ ★Android=4Q731htrjW

スーパーに寄り自宅アパートに帰る
私は独り暮らしなので誰もいないのだが、「ただいまー」と言いながら自宅に入る
勿論返事はない

「いただきまーす」

またひとりごちながら惣菜を食べる

ふと、視界の片隅にうずたかく積み上がった物の山が目に入る

一番下になっているのは日記帳だった
引き抜きぱらぱらめくる

「最近書いてなかったな...。あ、」

一年ほど前のページ、そこに一枚の写真を見つける
私よりも二、三才若い

さっき言ってたのってこの男の子なのかな...

写真の挟まっていたページに栞を挟み、写真を壁に貼る

予感がした、
この男の子が忘れた記憶の正体なのだろう

2年前 No.3

まさ ★Android=4Q731htrjW

その夜夢を見た
写真の男の子の夢

寂しげに笑う彼の瞳に私が映り、

(由美子さん...)

私の名前を呼び彼は消えた


朝、歯を磨きながら思う
夢の中に彼が出てきたのは写真を見たからだろう
記憶がよみがえったわけではない
声だって、テレビでよくみる俳優の声だった

けして思い出していい記憶ではない
それだけは分かる

でもー
彼のことを思い出したいと思う自分がいた




2年前 No.4

まさ ★Android=4Q731htrjW

喫茶店にいた

テーブルに置いた日記帳を見てため息をつく

読みたくないな...

男の子についての記述を探す、
恐らくこの日記帳に書いたのだろう
しかしそれを読むことは、つらい記憶を思い出してしまう可能性がある
その記憶は私を苦しめ傷つける、
間違いなくそうなるはずだ

だが...
私は開いた、
その日記帳を

やはり知りたくなってしまうのだ
しかも...私は私自身を傷つけたいという衝動にも駆られていた

なんと愚かなのだろう

2年前 No.5

まさ ★Android=4Q731htrjW

『5月14日。◯◯くんと浅草へ。◯◯くんは趣味が渋い。仲見世で揚げ饅頭を買い二人で食べる。◯◯くんが笑顔でおいしいですねと言い私も笑顔でおいしいねと言う。雷門でお賽銭を投げ祈願する、◯◯くんといつまでも一緒にいられますように...』

まだ日記の先は続いていた
しかしこれ以上読むことはできなかった
瞳に涙が滲む

私は誰かも思い出せない◯◯くんとの逢瀬を読み、泣いた

2年前 No.6

まさ ★Android=4Q731htrjW

日記帳はバッグにつめこみ見ないようにしていた

それから5日後、私はおもいだしたように日記帳を開いた

ぱらぱらとページをめくっていると、

「あ...」

濡れたような後があった

そのページには、

『◯◯くんが死んじゃった...私のせいで』

とだけあった

「◯◯くんが死んじゃった...」

私はつぶやく

からだが震えた
足が冷たくなる

◯◯くんが死んじゃった...
◯◯くんが死んじゃった...

私は考えたくもないのに心の中で何度もつぶやいた

2年前 No.7

まさ ★Android=4Q731htrjW

気付くと外にいた
記憶を買った老人のいた場所

呆然と立ち尽くしていると、

「やぁ、調子はどうかね」

後ろから朗らかな老人の声

「記憶を...返して下さい」

声を振り絞り言った

「返す? そんなことしたらキミが辛くなるだけだよ?」

「それでも...私は思い出したいんです」

「そうか、分かった。では500万円の返納と同時に記憶を返そう」

「はい...」

バッグから500万円の束を取り出す
少し躊躇い...
でも意を決し老人の手にそれを渡す

その瞬間、私は倒れた

2年前 No.8

まさ ★Android=4Q731htrjW

去年、3月17日、日曜日。

私は都内の美術展の列に並んでいた
ほんとうは大学の友達の梨佳も来るはずだったのが、急用でこられなくなったのだ
美術展は今日で終わる
チケットが一枚余ってしまったが仕方ない

私はスマホを見ながら順番を待つ
すると...

(あれ? ないな...)

誰かのつぶやきが聞こえる

後ろをちらりと見ると、私より二、三歳年下の男の子だった

(あれれれ、チケットが...)

何を今さら...

そこでふと、いたずら心に魔が差した

「これじゃないですか?」

わざわざしゃがんで見せてから立ち上がりチケットを渡す

すると、
「いや...あなたのでしょう。さっき財布から取り出したの見えましたし」

カーッと顔中が暑くなる
みんなの視線が集まる
逃げ出したい気分になった

「わ、私はね、親切心で言ってるのよ! 要らなければ捨てたら!?」

「いや、ありがたくちょうだいします」

ずこっ
なんじゃそりゃ...

「次お並びのかたー!」

「ほら、呼ばれてますよ、行きましょう」

「ちょっと、なんであんたと...!」

手を握り引きずられる

何でこんなやつと美術展に入んなきゃなんないのよーっ!


2年前 No.9

まさ ★Android=4Q731htrjW

「どうしたんですか? 機嫌わるそうですけど」

「...あんたが私に付きまとってくるからよ」

「僕には◯◯という名前があるんですけどね」

「あんたの名前なんて知らないわよ...これからは別行動よ。そう、別行動」

「あ、」

◯◯がなにか言う前に私は何とか振り切って目的の場所を目指す

会場地図を見ながら、

「あ、あそこね」

私は絵が飾ってある場所に向かって歩く
...ってちょっと!

「奇遇ですね」

◯◯がいた
私の方が先に歩いていたのに...

怒りを通り越してあきれた

「...あんたもこれ見に来たの?」

「はい、僕この画家のファンなんですよ」

私たちの回りにはほとんど人の姿はない
そう、この画家の知名度は本当に低く、この画家の作品が出展されていることを知ったときは驚いたものだ

「以前、四つ葉の蜜蜂という画集を見て、是非本物を見たいと思っていたんですよ」

「ふーん...」

「この画家の絵は余白を感じさせるというか、無限に広がる世界を見せてくれますね」

私は意外だった
こいつにこの画家の良さが分かることが

別にわるいやつじゃないかも...
そう思う自分がいた

2年前 No.10

まさ ★Android=4Q731htrjW

美術展の日以来、私たちは頻繁に会っていた


◯◯くんの趣味は渋い
人のことは言えないけどね
例の画家もそうだけど、お寺とか相撲とかが好きらしい
私もお線香の匂いなどがすきだったし、彼自身に惹かれていってたのだろう

七月のそんなある日

「もう会うのはやめた方がいいと思う」

「え...」

私の家での突然の告白
でもそれは私が望んでいたものではなかった

「どうしてっ...?」

「僕は遠いところ...海外に留学するんです。だからもう会えない」

「そん...なっ」

「それじゃ」

「待って! 連絡先くらい教えてよ...!」

「それも無理」

ガチャン
扉が閉じる

私は外に駆け出していた

「◯◯くん!」

姿は見えない
でも無我夢中で走る

青信号を走って抜けようとしたとき...

「あっ!」

トラックが私めがけて走って来ていた
居眠り運転

はねられる...!

そう思った瞬間。

からだがなにかにはじかれる
トラックじゃない

それは...

◯◯くんだった


◯◯くんは私をはじきとばし...



そのまま...




トラックにはねられた。




「い、」






いやあぁああぁあああああぁっ!!!

2年前 No.11

まさ ★Android=4Q731htrjW

気付くと私は家にいた

全部思い出してしまった
みずから望んで思い出したとはいえ、やはり思い出さないほうがよかった...

手首の傷を見る
◯◯くんが死んだあと、風呂場で手首を切り自殺を図ったのだ
しかし死ねなかった

私は◯◯くんのお通夜などには行ってない
辛くて行けなかった

◯◯くんのことを思い出すたび私は傷付き、やつれた

そんなある日、あの記憶を消してくれる老人に出会ったのだ

記憶を消したい...
記憶を消してもらった直後に戻って、普通に暮らしたい...

私は泣いた

2年前 No.12

まさ ★Android=4Q731htrjW

ピンポーン...

チャイムの音で目が覚める
寝てしまってたらしい

ドアスコープをのぞく
女性がいた
風に靡く髪。見覚えのある顔
この人、もしかして...

扉を開ける

「はじめまして、突然押し掛けてすみません。私、◯◯の姉の□□と申します」

やっぱりそうだ...
◯◯くんの家族だ
顔がよく似ている

「どうぞお上がりください」

家のなかにお姉さんを案内する

◯◯くんの事故の話をしに来たのかな...
あの事故は私に全責任がある
もし八つ裂きにされたとしても、私の罪が消えるわけではない
どんなことでも甘んじて受ける覚悟はある

テーブルに対面で座り、お茶を出す
お姉さんがひとくちそれを飲み言った

2年前 No.13

まさ ★Android=4Q731htrjW

「来るのが遅くなって申し訳ありません。私も弟のことで気持ちに整理をつける時間が必要だったもので」

「いえ...私もなんと言ってお詫び申し上げたらよいやら...本当に申し訳ありませんでした」

椅子から降り、土下座する
私には謝ることしかできない

「顔をあげてください、私はあなたに感謝しているんです」

「かん...しゃ?」

「ええ。あの子...弟は事故にあった時、すでに余命半年の身だったのです」

「えっ!? だって留学するって...」

私は驚いた
余命半年だった...?

「そう言ってたんですか...でもそれは真実ではありません。本当は黙っていなくなるつもりだったのを、私が、別れの挨拶をしに行くように強く進めたんです」

そんな...
そういう理由があったなんて...

「だから謝らなければいけないのは私の方です。あなたを事故に巻き込みそうになった上に、心を傷付ける結果になってしまって...本当に申し訳ありません」

一息つき、

「◯◯ね、あなたのこといつも楽しそうに話してた。あなたが居てくれたお陰で楽しい人生だったって最後に言えるって、そう言ってたのよ」

お姉さんが涙ぐみながら言う

「最後...あなたを守れてよかったと思ってるわよ、絶対にね」

私も泣いた
泣くことしかできないのだ

2年前 No.14

まさ ★Android=4Q731htrjW

気付くとまたここに来ていた
老人と出会った場所

「元気かね? 調子は」と老人が現れ言う

「お陰さまで」

私はぺこりとお辞儀をした

「そうだ、君にこれをあげよう」

老人は鞄からなにかを取り出す
...お札の束だ

「受け取りなさい」

「もう頂く資格はありません」

目を伏せる

「いや、それがあるんじゃよ。君のこれまでの話を一冊にまとめてな、その本の印税の一部なんじゃ」

老人の目を見る
嘘かどうかはわからなかった

でもー

「わかりました、ありがたく頂戴します」

「うん、それがいい」

老人は目尻を下げ喜んだ


さて、このお金はどうしよう

まずはあの画家の絵を買おうか

二人の好きなあの絵を...

2年前 No.15
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