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扉を開けてはいけません

 ( 小説投稿城2世(大人風味) )
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はな @satorin69 ★gcSxlLmFJp_9Bm


      ――その扉を開けてはいけません。






             はじめまして、はなです。
             よくある話、よくある展開ですが暇つぶしにでも読んでいただけたら幸いです。
             誤字、脱字、文章能力のなさは笑って許してください。
             それではよろしくお願いします。

3年前 No.0
切替: メイン記事(39) サブ記事 (8) ページ: 1


 
 

はな @satorin69 ★4qUgaLmW0L_9Bm

  【糸に抱かれて】


「仕事部屋には入らないでね」

 2階にある6畳の部屋に向かうとき、知子は必ず志郎にそう言うのだった。
 「用事がある時はこれで」と、これもお決まりのように紅いスマフォを見せる知子に、「わかってるよ。絶対に入らないって」と士郎も軽く返事をする。

「2時間ぐらいで切り上げるから」

 エクボのある可愛い笑顔を見せて、「待っててね」と知子は部屋を出ていった。
 知子がいなくなった部屋で志郎は冷めたコーヒーを一口啜った。苦味より酸味の増した味が口中に広がる。
 志郎は、ふぅ、と息をつくと身体をソファにごろりと横たえた。
 頭の下に手の平を敷き、膝を折るとぼんやりと天井を眺める。


3年前 No.1

はな @satorin69 ★4qUgaLmW0L_9Bm

 最近仕事が忙しく残業続きだったせいか、どうも身体が怠くて仕方がなかった。
 知子に知れるとひどく心配するので、二人でいる時はなるたけ態度に出さないようにしていたのだけれど。
 今はいいだろう。
 テレビはつけたままで、少しだけ、と志郎はゆっくりと目を閉じた。
 すぐに肉体がソファに沈み込んでいくような、浮遊感にも似た感覚を身体に覚えた。
 肉体と精神が離れていくような。

 ――そして志郎の意識は深い闇へと落ちていった。

3年前 No.2

はな @satorin69 ★4qUgaLmW0L_9Bm

  **


 知子と出会ったのは半年前。
 仕事帰りにふらりと立ち寄った小さなバーで偶然隣り合ったのが最初だった。
 お互い連れがいなかったせいか、なんとなく言葉を交わしていくうちに偶然にも趣味が同じだということがわかったのだ。すっかり意気投合してしまい、時間を忘れて話しをしているうちに閉店の時間となり、また会おうと約束してお互のアドレスを交換したのだった。
 よくある展開ではあるが、その後何回か二人で会っていくうちにお互いを意識しあうようになって――。
 『同棲』という今に至っていた。
 知子との生活は毎日がとても穏やかな時間に包まれていた。

 できるならばずっと一緒にいたい。

 そう思うほど、志郎にとって知子の存在はなくてはならない大切なものになっていたのだ。



3年前 No.3

はな @satorin69 ★nPEQl35YaO_9Bm

 そんなある日のことだった。
 生活の足しにしたいからと知子が自分の作ったものを売りたいのだと言いだしたのは。
 手先が器用でレース編みで色々なものが作れるのだと言う彼女に、そんなことをしなくてもいいと言っても、ほんの2、3時間だからと強く押し切られてしまい志郎は渋々とだが承諾をしたのだった。

「2階のひと部屋を借りるけど、絶対に入ってこないでね。もちろん覗くのもダメ」
「なんで?」
「なんでも」

3年前 No.4

はな @satorin69 ★SJoKfZ7Oep_9Bm

 問いかけに明確な答えはなかった。
 けれど困ったように眉尻を下げる彼女の顔を見た瞬間、志郎はそれ以上詮索することをやめた。
 きっと気が散るんだろう。気の優しい彼女のことだ。志郎のことを思って言えないのかもしれない。編み物なんてしたことはないが細かい作業だろうしと、あまり深く考えないまま、志郎はひとり納得をした。

「わかった。部屋には入らないから」
「……ごめんね」
「そのかわり、無理はするなよ」
「うん、ありがとう志郎」

 そう言った知子の顔には嬉しそうな笑が浮かんでいた。

3年前 No.5

はな @satorin69 ★4qUgaLmW0L_9Bm

 知子の作った商品は委託販売という形で、志郎の母親が経営する雑貨店の一角に置いてもらえることとなった。
 絹糸よりも更に細く、乳白色の優しい色合いで紡がれたベビーシューズやドイリー。
 実用的でもありインテリアとしても使える品物の数々は、その触り心地の良さも手伝ってか、すぐに店の中でも人気の商品となっていった。

3年前 No.6

はな @satorin69 ★4qUgaLmW0L_9Bm

 不思議な光沢のある品物を手に、志郎の母は何の糸を使っているのかしらと何度も知子に聞いたらしいのだが、

「特別なルートで仕入れをしているので、詳しいことは……」

 といつも口を濁されてしまい教えてくれないのだとよく言っていた。
 どうしても何の糸かを知りたいらしい母にしつこく頼まれて、志郎も何度か知子に聞いてはみたが、そんな時はいつも知子は眉尻を下げて、「ごめんなさい」と首を横に振るのだった。

3年前 No.7

はな @satorin69 ★SJoKfZ7Oep_9Bm

  **


 急に耳に飛び込んできた着信音に志郎はぱちりと目を開けた。
 中途半端に寝てしまったせいか頭が鉛でも乗せたように重たく感じられた。目を覚まそうと一度寝返りをうち、ぐりぐりとソファに顔を埋める。それから気だるげに身体を起こすと手を伸ばし、机に置かれたスマフォを掴んだ。

「……もしもし」
「志郎、知子さんいるかしら?」

 少し鼻にかかった甲高い特徴的な声を聞いた途端、志郎は相手が誰だかわかった。

「どうかしたのか? 母さん」

 そう聞くと、それがね、と母は口早に話しだした。

3年前 No.8

はな @satorin69 ★nPEQl35YaO_9Bm

「お客さんが作ってほしいものがあるみたいなの。馴染みの方でね。知子さんと、どうしても直接話がしたいっていうから……。呼んでくれないかしら」
「あ―、ごめん。知子今手が離せなくてさ。後で連絡させるよ」

 仕事部屋にいるんだよ、と付け加えるが、どうも客がその場にいるらしく母は引こうとはしなかった。

「志郎。いるのなら早く呼んできてちょうだい。少しぐらいなら大丈夫でしょ」

 寝起きで働かない頭に、トーンの増した母のキンキンとした矢のような声が突き刺さる。

3年前 No.9

はな @satorin69 ★nPEQl35YaO_9Bm

 顔を顰め、スマフォから耳を離した志郎は母の口を塞ごうと「わかったよ」と思わず言ってしまっていた。

「お願いね。すぐに話をしたいから携帯はこのままでいいわ」

 ……あっ。

 母の言葉に、志郎は自分が失敗をしてしまったことに気がついた。
 覆水盆に返らず。
 仕方がない。知子には後で謝ろう。
 大きなため息をつくと、2階に向かうべく志郎は重い腰を上げた。

3年前 No.10

はな @satorin69 ★1PN8EhnQPR_9Bm

 考えてみれば初めてのことだ、と志郎は思った。
 仕事部屋に知子がいる時は集中できるようにと、今まで極力2階には近づかないようにしていたのだ。もちろん、約束を守るため、ということもあるのだけれど。

 知子は約束を破った自分を怒るだろうか?

 階段を上がり終えると志郎は廊下の突き当りにある部屋に向かった。

3年前 No.11

はな @satorin69 ★Yt1SBrQIpI_9Bm

 廊下を何歩か進んだ時だった。
 志郎は「あれっ?」と小さな声を出すと同時に足を止めた。
 ほんの少しだけだがドアが開いていることに気がついたからだ。

3年前 No.12

はな @satorin69 ★Yt1SBrQIpI_9Bm

 古い家で立て付けが悪いせいか、たまに勝手にドアが開いてしまうことがあるのだが、これもきっとそうだろう。知子はちゃんと閉めたつもりだろうが、締め方が甘かったようだ。

 今度直さないとな。

 そう思いながら足を踏み出した途端、何かが視界を掠めたような気がして志郎は小さく首を傾げた。
 キョロキョロとあたりを見回す。

 なんだ?

 志郎の視線が一点に注がれる。

3年前 No.13

はな @satorin69 ★YX60wFE1kf_9Bm

 それはドアの隙間から空中を揺らめきながら漂い流れる数本の糸のようなものだった。
 透明に近かったが揺らぐ角度により、時折その姿が見て取れる。

 これは……?

 志郎はドアに近づくと手を伸ばし糸に触れてみた。

 …………。

3年前 No.14

はな @satorin69 ★zBbRoCdk5O_9Bm

 糸を。

 いや、糸ではあるが紡績(いと)ではないものを見つめ、志郎は顔を曇らせた。
 手に絡みついて離れない、少し粘り気のある独特なこの感触には覚えがあったからだ。

 なんでこんなものが?

 怪訝な顔をしながら、手から離れることを拒む糸をもう片方の指でつまむ。

3年前 No.15

はな @satorin69 ★zBbRoCdk5O_9Bm

 一瞬子供の頃、母が好きだといってよく読んでくれた昔語りが頭にうかんだ。
 良い行いをした男がひとときの幸せをつかむという――。

 ……馬鹿らしい。あれは物語の中の話だ。

 志郎は自嘲気味に笑うと自らの考えを直ぐさま否定した。

3年前 No.16

はな @satorin69 ★qIlyQLZbOF_9Bm

 ふと志郎は思った。
 どうして知子は部屋に入られることをあれほど嫌っているのだろう、と。
 確かに作業中に部屋に入られたら気が散るかもしれないが、今にして思えばあそこまで念を押すのはおかしいような気もする。

 何か見られたくない秘密でもあるのだろうか?

 心に植えられてしまった疑念が着実に志郎の中で大きく育っていく。

 答えはきっと。

 志郎は目の前のドアを見つめた。

3年前 No.17

はな @satorin69 ★CUrjBZZqAY_9Bm

 志郎は覚悟を決めるとドアノブに手をかけ静かに手前に引いた。
 途端、生暖かい空気とともに幾千もの糸が出口を求め部屋の中から溢れ出してくる。

「……開けてしまったのね」

 目を見開き、放心したように部屋の前で動きを止めた志郎の耳に知子の悲しげな声が聞こえてきた。

「あれほど部屋には入らないでと言ったのに」

3年前 No.18

はな @satorin69 ★lLCc7kCkBa_9Bm

 張り巡らされた糸のようなもので光が遮られた薄暗い部屋の中で、知子はぽつりと佇んでいた。知子の隣で、氷柱のように天井から垂れ下がる糸の先には編みあがったばかりのベビーシューズがぶら下がっていた。

「知子……君はいったい。それにこの部屋……」

 絞り出すように出した声は情けないほどかすれてしまっていた。
 知子は愛おしげにベビーシューズを糸から指で切り離すと、目を伏せ、やっと聞き取れるほどの小さな声で呟いた。

「これが最後の作品になってしまったわね」

 皮肉なものね、そう言うと知子は志郎の元へゆっくりと歩きだした。

3年前 No.19

はな @satorin69 ★OHZ4mJ9q3E_9Bm

 音も無く。

 静かに。

 空気さえも震わせず、滑るように糸で満たされた室内を進んでくる姿に、志郎は彼女の本当の姿を見てしまったような気がした。

「知子、君は……」
「ええ……そうよ。志郎」

 志郎の真向かいに来ると足を止め、もう一度、「そうよ」と言いながら知子は志郎の手を取った。

3年前 No.20

はな @satorin69 ★FfHyq9YYHe_9Bm

「ごめんね。残せるものが他にあればよかったんだけど」

 手の平を上向かせ、ベビーシューズをその上に置くと知子は両手で包み込むように志郎の手を握り締めた。

「知子……」
「なあに」
「君は人ではなかったのか?」
「そうよ、志郎」
「……人じゃ、ない?」
「ええ」

 子供のように同じ質問を何度も繰り返す志郎に、知子は微かな笑をうかべて言う。

3年前 No.21

はな @satorin69 ★3jIKT4boRH_9Bm

「志郎はきっと覚えていないわね。ううん、せめているわけじゃないのよ。あなたはそれでいいの。私さえ覚えていれば」
「人じゃない? なら……君は……」
「あなたはもうわかっているはずよ。私の正体を……、そして、この糸が何かを」

 腕を伸ばし揺らぐ糸を掴むと知子は一歩後ろへと下がった。

「私は……糸を紡ぐモノの眷属」

3年前 No.22

はな @satorin69 ★bfyVVnTQc2_9Bm

そう言うと、また一歩。
 知子は士郎との距離をあけていく。

「多くの人は私の存在を忌み嫌うわ。……そう……あの日もそうだった……」

 悲しげに視線を床に落とし、淡々と知子は言葉を口にした。

3年前 No.23

はな @satorin69 ★QnglLFCsTL_9Bm

「神社に遊びにきた子供達が椿に巣を張る私を見つけ、面白半分に巣を壊した雨上がりのあの日。恐ろしさのあまり私は葉の影に隠れたけれど、細い枝で追いやられ、そしてなすすべもなく水の中に落とされたわ。無邪気な子供の悪意のない行動。そういえば確かに聞こえはいいかもしれない。けれど私にとってそれは、……死を意味すること」

 部屋の中央まで行くと、そこで知子は足を止めた。

3年前 No.24

はな @satorin69 ★gX6GkiRDSA_9Bm

 告げられた言葉に志郎は呆けたように何も言うことができずにいた。
 頭で理解しようとするのだか、なぜだかうまく頭が働かず、どうすればいいのかがわからなかったのだ。
 部屋の中に入ることもできず、かといってその場を離れることもできず。
 立ち竦むままの志郎にやんわりと目を細めた知子が言う。

「でもあなたは違った」

 微笑みとともに発せられた声色には、その時を懐かしんでいるかのような穏やかな響きが含まれていた。

3年前 No.25

はな @satorin69 ★gX6GkiRDSA_9Bm

「他の子供達が行ってしまった後、あなたは一人戻ってきたわ。何も言わず枝を手に持つと私の方に近づけ……。あの時はもうダメだと思ったの。きっと殺されるって。でもね、あなたは私の目の前に枝を差し出しただけで何もしなかったわ。恐る恐る私が枝を登っている間も、枝を登り終えた後も、何もしなかった。折り重なる葉の間に隠すように私を入れ、「ごめんな」と言ってくれたあなた。……ほんとうに嬉しかったわ」

 嬉しかった。

 もう一度そう言うと、知子は志郎に背中を向けた。

3年前 No.26

はな @satorin69 ★XEV8TgCQkx_9Bm

「私が『人間』だったならあなたに子供を残してあげることもできたけれど……、それは叶わない夢」

 再び歩き出した知子の声が微かだが震えていることに志郎は気づいた。
 その足が向かう先に目をやり、糸でよく見えなくなってはいるがそこにあるものを思い出すと「あっ」と声をあげた。
 知子が何をしようとしているのか分かってしまったのだ。

「知子!」
「ダメよ!!」

 部屋の中に入ろうとした瞬間、今まで聞いたこともないような強い口調に制され志郎の足が止まる。

「志郎、入ってはダメなの。この部屋を見られ正体を知られた以上、私は人としての理性をもう保てないの。私は捕食者。この部屋に入るモノは全て私の糧。たとえそれが愛するものだとしても……」



3年前 No.27

はな @satorin69 ★1cMaFnQ0DX_9Bm

 知子は右手を上げるとゆっくりと下ろしていった。
 それにあわせるように壁に張り巡らされた糸が裂けていき、薄暗かった部屋に光が溢れていく。

「あなたの幸せを願っているわ。いつまでも……、いつまでも」
「知子、俺は……」

 糸の向こう側に現れた格子窓をあけ、桟に腰掛けた知子は涙に濡れた瞳で優しく微笑み志郎を見た。

3年前 No.28

はな @satorin69 ★rZnq8AS7Kw_9Bm

「さようなら」

 唇だけを動かして知子の口から音の無い別れの言葉が告られる。

3年前 No.29

はな @satorin69 ★umRxJLDnzS_9Bm

 知子は空を見上げ数秒間目をつぶった。
 その姿は諦めるしかない思いを愁いでいるかのように見え、志郎の胸に鋭い痛みが走った。

 このまま知子を行かせてしまっていいのか、志郎?

 淡々とした自問の声が頭の中に響きわたる。



2年前 No.30

はな @satorin69 ★75GE1Q5EvG_9Bm

 知子の左足が宙に浮き、窓枠をこえ、ゆっくりと窓の外に消えていった。
 少し遅れて残された右足も同じように志郎の視界から消えていく。

 俺は――。

 志郎は息を大きく吸い込んだ。
 身体を弛緩させるように息を吐き出すと一瞬の笑を浮かべる。
 出した答えは間違っているのかもしれない。……いや、きっと間違っているのだろう。
 しかしこれが自分の出した答えなのだ。

 たとえ人でなくても。

 知子、

 俺は君を――。




2年前 No.31

はな @satorin69 ★75GE1Q5EvG_9Bm

   **

「……馬鹿な人。この部屋に入ったらダメだと言ったのに」

 知子の生み出す糸は士郎の身体に幾重にも巻きつき、その姿を白い塊へと変化させていた。
 薄れゆく視界。
 消えゆく音の響き。
 それでも志郎は幸せだった。
 この暖かくも優しい糸に抱かれていることが――。

「志郎、愛しているわ」

 遠くなる意識の中、囁くような知子の声が聞こえた。

 俺もだよ。

 志郎は心の中で声を出した。
 君にもうこの声は届かないけれど。

 ――俺も君を愛してる、永遠に……


                  【糸に抱かれて】―完―








2年前 No.32

はな ★9NIjABVp80_9Bm


     ――その扉を開けてはいけません。

2年前 No.33

はな @satorin69 ★tvnojvS4HG_9Bm

【こっくりさん】



いつからだったんだろう。

夫が残業という言葉で自身をベールに包みだしたのは。
繋がらなくなった携帯。
返事のこないメール。
机に並ぶ冷めてしまった食事を憂い顔で見つめながら、私は孤独という深く重い溜息をついた。

2年前 No.34

削除済み @satorin69 ★fQJJYJHoRP_9Bm

【記事主より削除】 ( 2014/05/24 22:56 )

2年前 No.35

はな @satorin69 ★xoKqkQfCa2_9Bm

 カンッ、カッ、カララ……。

 静寂を砕くように。
 突然鼓膜を震わせた甲高く乾いた音に、ぴくりと夏菜の肩が揺れた。

 カンッ。

 深く暗い場所に潜りこもうとしていた意識は、無遠慮に訪れた覚醒に不快さを覚えながらもゆっくりと浮かび上がっていく。

2年前 No.36

はな @satorin69 ★fF0BN3ffS2_9Bm

 夏菜は机に俯いたままの姿勢で細く目を開けた。
 しかしすぐに視界に入った闇の濃さに落胆すると再び目を閉じる。

 ……また今日も。

 秘めた思いを吐き出すかのような長い溜息が口からもれる。

 ……孝之は帰ってこなかった。

2年前 No.37

はな ★9q6OtQII3r_9Bm

夏菜はのそりと顔を上げた。
頭を左右に傾け、コキっコキっと音を鳴らすと力を抜き、椅子の背に身体を預ける。
最初よりいくぶん闇に目が慣れてきたようだった。
うっすらと見える天井を一瞥してから夏菜は視線をテーブルに落とした。

2年前 No.38

はな ★R442a2ZPwm_9Bm

開かれたまま乱雑に置かれた雑誌。食べかけの林檎がのった皿。
直立しつつも花片をほとんど失ってしまったガーベラ。
テーブルの上はとても綺麗とはいえないような状態が広がっていた。
ふと夏菜は数本の缶ビールが倒れていることに気がついた。
暫く思案し、テーブルから床に目をうつすと、ああそうか、と一人納得をする。

2年前 No.39
切替: メイン記事(39) サブ記事 (8) ページ: 1

 
 
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