Google
    
<< TOPページ 掲示板TOP 記事データ お知らせメール ▼レス(52) >>

一瞬の輝き

 ( 小説投稿城2世(大人風味) )
- アクセス(213) - ●メイン記事(52) / サブ記事 (2) - いいね!(4)

三鈴 ★HSBFgjXg7O_WCf

本当の私は

どこにいるんですか?


本当の私は

なんの為に

生きているのかな…



もしも願いが

叶うなら

私を消して下さい


わたしに生きる必要なんてあるのですか―――…?


5年前 No.0
メモ2013/05/05 18:40 : 三鈴★HSBFgjXg7O_WCf

★一言


こんにちわ!お久しぶりです!


はじめましての方も要るかな?


「一瞬の輝き」クリックありがとうございます!


まだまだ未熟ですが、よろしくお願いします。


のんびり更新して行こうとおもいます。


★その他の作品


最期の唄         http://mb2.jp/_ss/8599.html


そして、私の大好きな   http://mb2.jp/_rs/26057.html


地味子の本性*・。    http://mb2.jp/_rs/26005.html


。・*約束*・。     http://mb2.jp/_rs/25904.html


ト ド ケ タ イ    http://mb2.jp/_css/1218.html#S2


*幼なじみ*        http://mb2.jp/_shousetu/30044.html

切替: メイン記事(52) サブ記事 (2) ページ: 1 2


 
 
↑前のページ (2件) | 最新ページ

三鈴 ★HSBFgjXg7O_WCf

秋山 早苗。

私の親友。

保育園から、ずっと仲良しの幼なじみ。

「おはよう!」

片手を上げて、彼女は駆けてきた。

「おはよう!」

私は落ち込んだ顔を無理やり笑顔に変えて、手を振って応えた。

わざと、明るい自分を演出している。

親友。

…そう言いながら、私は友にウソをつく。

5年前 No.3

三鈴 ★HSBFgjXg7O_WCf


私は誰にも、心を開くことができない。

この世の中は、全て偽物。本当に確かなモノなんて、ありはしない。

友情なんて、信じない。

そんなものを信じたら、裏切られて泣きを見るのは自分だけ、…なんだから。

だから私は演じてみせる。どんな女優にも負けないくらいの、最高の笑顔で。

「今日は、私の方が早かったね!」

5年前 No.4

三鈴 ★HSBFgjXg7O_WCf

いつも先に来ている彼女は、遅れてきた私を見るなり、開口一番、『遅い!』とぼやく。

それが毎日のこと。

『ごめん。ごめん』と、おどけた口調で謝ると、それ以上は何も言わないけれど


不機嫌そうな雰囲気は、その場に漂わせたまま、気まずい空気が流れる。

同じ歳なのに、なぜこんなにも気を使わないといけないのかと、疑問に思うこともあるけれど。

彼女は一応、親友だから。

へらへら笑って、気にしないようにしていた。

5年前 No.5

三鈴 ★HSBFgjXg7O_WCf

この投稿はフィルタされています。表示するにはアカウントにログインして下さい。

5年前 No.6

三鈴 ★HSBFgjXg7O_WCf

ウソにまみれた生活をしていると、『本当の私』が分からなくなる。

友達の前では、『明るくて元気なナギ』を演じて。

先生の前では、『優等生の三船さん』を演じる。

家に帰れば、母親の代わりに家事をこなす、『しっかり者の娘』。

いくつものを顔を演じ分けている自分に、拍手を贈りたいくらいだ。

でも、ひとりでいる時の自分は、無口で暗いヤツ。

それを否定するつもりは、これっぽっちもない。

犯罪に手を染める者の多くが、決まって言われる言葉。

『あの人が、そんなことをするとは思わなかった』

『いい子なのに…』


『本当の自分』を、誰にもさらけ出すことができないのは、不幸なことなのかもしれない。


自分の殻を破ることができない人は、できない理由を作りたがる。

たいていの人は、それを『親のせい』にしてしまうんだ。

こんな自分に育てたことを、『親のせい』にしても。

犯罪を犯していいことの、理由にはならないから。

私は誰のことも傷つけたくないという、理性はあるから。

その理性が残っているうちに。

『消えてしまいたい!』

ずっと、そう思って生きていた。

5年前 No.7

三鈴 ★xWbgY3bL81_yGD

「三船、進路調査票、今日は書いてきたんだろうな?」

私の顔を見るなり、進路指導の石井センセイが、『おはよう』も言わずに、睨みを利かせて聞いてきた。

「すいません。忘れてきました…」

またひとつ、ウソをついた。

「またあ!?
お前、家のことも大変だろうけど…。

もう少し…」

「明日は必ず、持ってきますから」

石井センセイの言葉を遮って、そう答えると、教室に向かってスタスタと歩き出した。

他の生徒が行き来する玄関先で、家のことをとやかく言われたくない。

「明日忘れたら、家に取りに行くからな!!」

石井センセイの言葉を背中に受けて、私は、

『忘れてきたんじゃないよ。

書けないんだよ!』

と、心の中でつぶやいていた。

私には…。

夢を見る資格がないの。

夢を叶えては、いけないの。

そう。

私は…

『幸せになってはいけない』

人間なのだから…。


「ナギ、まだ出してなかったの!?」

進路調査票の提出は、とっくの昔に提出期限を過ぎていた。

「うん。行きたい高校も特にないから、決められなくて」

ひとつのウソを隠す為に、また新しいウソをつく。

そうして、『本当の私』は、ウソに塗り固められていくんだ。

「だったら、アタシ達と同じ高校にしときなよ!?

結花も那智も一緒だよ!」

気を使ってか、早苗はそう言ってくれる。


「ありがと。
でも私、私立には行けないから」

そういう答えが返ってくることを、本当は知っているくせに。

「…そっか…。
ナギもいたら、楽しいのにね、って。三人で話してたんだ」

早苗は本当に残念そうな表情で、そう言うけれど。

私は、本当の気持ち、知ってるよ?

私がいなくなれば、からかう人もいなくなるし。

都合よく、パシリに使える人もいなくなるし。

…だから、残念なんでしょ!?



5年前 No.8

三鈴 ★xWbgY3bL81_yGD

私は冷え切った心の中で、そう毒づいていた。

退屈な授業はすごく長く感じるのに、放課後になるのは、なぜか早く感じられて。

私は机の中の教科書をカバンにしまっていた。

「ねぇ、早苗。
アタシ、カラオケ無料券持ってるんだけど、一緒に行かない!?」

那智がわざと聞こえるような大声で、早苗を誘っていた。

「行く、行く!」


「結花!
早苗も行く、って」

と、那智はテンション高めに、離れた席で帰り支度を始めていた結花を、手を振って呼び寄せた。

私はその横を、すっと通り過ぎる。

すれ違い様、

『ナギも一緒に行かない!?』

誘われたけれど。

『ごめん。私、夕飯作らないといけないから…』

そう言って断ると、逃げるように学校を後にした。

『ナギ、おばさんくさーい!?』

アハハハハ…。

という、甲高い笑い声を背中に受けて。

『仕方ないよね。
お母さんいないんだから』

そんな声も聞こえたような気がして。

私はカバンを胸に抱えて、泣き出しそうになる瞳をこらえて、走り始めた。

『消えてしまいたい!』

いつもの私が、顔を出す。

『消えちゃいなよ!』

5年前 No.9

三鈴 ★xWbgY3bL81_yGD


アンタがいなくなっても、悲しむ人なんて、どこにもいないんだから…』

心の中、もうひとりの私が叫んでいた。

そう。

私は、生きていても、死んでしまっても、誰も何とも思わない。

私の存在は、空気のように透明で、いてもいなくてもわからない。

空気なら…。

無くなって初めて、その大切さに気がついてもらえるけれど。

きっと私がいなくなったって、悲しむ人なんているはずない。

日常は変わらずに過ぎていくはず…。


『お父さんと、お母さん、心配するよ!?』

幼い私に、そう声をかけてくれた男の子。

『心配なんて、するわけないよ。

だって私、いらない子供だもん!』

『そんなことあるわけないだろ!?』

私と同じ子供のくせして、妙に大人っぽいことを言う子だった。

そんな彼の、一生懸命な言葉が私の心の支えだったりもした。

でも。

やっぱり…。

5年前 No.10

三鈴 ★xWbgY3bL81_yGD


私は、あの頃と一緒。何も変わらない。

『私はいらない、子供』

『いなくてもいい、友達』

『誰も私を、必要とはしていない…』

そのことを認めたくないから、その言葉にすがっていただけ、なのかもしれない。

『私だって、誰かに愛されている』

そう、実感したかった。

『私だって、誰かに必要とされている』

どこかで、そう思っていたかった。


『具合が悪くて…。
だから今日、学校休むから』

朝一番に、そう電話をして。

私は学校を休んだ。

具合が悪いなんて、ウソだった。

なぜか今日は、彼女に会いたくなかった。

ひとりで、いたかった。

ひとりに、なりたかった。

『やっぱり私は、ひとりなんだ』

そう実感することで、全てを受け入れることができる。

…そんな気分になっていた。

『なあ、三船』

突然名前を呼ばれて、驚いた。

なぜなら。

そこにいたのは、私が思いを寄せている、片想いの彼だったから。

そこにいたのは、同級生の『遠藤慎一』くん。

彼はなぜか、私に白い歯を見せつけるくらい大口を開けて。

爽やかな笑顔を、向けてくれる人だった。

『三船は暗い』

そう言われ、敬遠する男子が多い中で。

彼は私に唯一話しかけてくれる、貴重な存在。

5年前 No.11

三鈴 ★xWbgY3bL81_yGD


恋に落ちるのは、必然だった。

彼に呼び出されて。

私は緊張と、興奮で、今までにないような胸の高鳴りを感じていた。

それなのに…。

『三船、秋山さんと仲いいんだな!?』

なんで!?

どうしてココで、早苗の名前が出てくるの!?

その先の言葉が、容易に想像できたから。

私は返事をすることができなかった。

『秋山さんって、カワイイよね!?』

なのに彼は、勝手に話し出す。

『三船、秋山さんと仲良くて、うらやましいよ…』

やめて。

それ以上は、言わないで…。

手で耳をふさいで、何も聞きたくなかったのに。

『俺、秋山さんのこと、好きなんだよね』

決定的な一言を、私に投げかけた。

それは、残酷な言葉でしかなかった。

彼の笑顔も優しさも、全てが『偽物』だったんだから…。

5年前 No.12

三鈴 ★xWbgY3bL81_yGD

この投稿はフィルタされています。表示するにはアカウントにログインして下さい。

5年前 No.13

+。・*三鈴*・。+ ★xWbgY3bL81_yGD


お腹の痛みは、薬を飲んでも、なかなか治まってはくれなかった。

ズンズンするような鈍い痛みは、今までに経験したことのないもので。

脂汗が額ににじむ。

お腹を抱えて、ベッドから這い出た。

机の上の携帯から、電話をかけようと腕を伸ばす。

後、もう少し。

というぐらいの距離まで近づいた時に、絶妙なタイミングで携帯が着信を知らせてくれた。

かけてきた相手が誰だったのかわからないまま…。

私の記憶は、そこで途切れた。


5年前 No.14

+。・*三鈴*・。+ ★xWbgY3bL81_yGD


気がつくと。

「ここ…」

自然と流れる景色。

私は車の中だった。

「気がついた!?」

横には早苗。

助手席には慎一くん。

「大丈夫か!?」

いつもの爽やかな笑顔ではなく。

憂いを帯びた表情で、私を見つめていた。

「三船。もうすぐ病院に着くからな!!」

運転しているのは、教育実習で私達のクラスを担当している、百川センセイ。

みんなに、『モモちゃん』と呼ばれている、社会科のセンセイだ。

5年前 No.15

+。・*三鈴*・。+ ★xWbgY3bL81_yGD

「病院!?」

と言う私に、

「ナギに電話したら、『助けて…』って言ったきり、返事がないんだもん!!

本当にビックリしたよ」

と、早苗。

「病院には行かなくてもいいです。

寝てたら治りますから」

「ナギ!?」

「このお腹の痛みは、病気じゃないから。大丈夫です!!」

モモちゃんに向かって
、そう言うけど。

「病気かそうじゃないかは、医者が決めることだ!」

と、短い言葉が、返ってきただけだった。

5年前 No.16

+。・*三鈴*・。+ ★xWbgY3bL81_yGD


ベッドに横になりながら、薄暗い部屋の天井を、ただ黙って見つめていた。

これからのことを思うと、考えただけでため息が出る。

退屈な日々。

明日はお兄ちゃんにお願いして、『少女コミック』でも買ってもらおうか。

それとも、『ファッション雑誌』にしようか…。

いずれにしても、女の子が読むものを、真っ赤な顔をしてレジに持っていく、お兄ちゃんの姿を想像したら。

思わず笑いがこぼれた。

5年前 No.17

+。・*三鈴*・。+ ★xWbgY3bL81_yGD

私は明日、手術を受けることになった。

病名!?

病気って言えるほど、大したものじゃないけど。
診察した結果、私は『虫垂炎』。いわゆる『盲腸』と診断された。

それが、私の腹痛の原因。

なんだよ…。
たかが盲腸だったのかよ。

『心配して損した』

と言われてしまいそうな、病気だけど。

『手術』

その響きが、初体験の私にしたら、恐怖以外の何者でもなくて…。

5年前 No.18

このはβ.+・。* ★xWbgY3bL81_yGD

『薬で散らして下さい!』

往生際の悪い私は、そう先生に懇願する。

すると先生は、

『散らす時期は、もう過ぎちゃったね…。切るしかないんだよ?』

優しい笑顔と言葉で、残酷なことを言う。

『三船さん。ずっと、お腹痛いの我慢してたんでしょ!?

薬で散らしても、痛いのは治らないから。

ちゃんと切って、治そうね!?』

聞き分けのない子供をあやすような口ぶりで、
先生は私に同意を求めた。

『はい…』

5年前 No.19

このはβ.+・。* ★xWbgY3bL81_yGD

渋々、というか、了承するしかなかった私は、コクンとうなずいた。

そして、今に至る。

付き添ってくれた、早苗と慎一くんとモモちゃんの三人は、帰り。

入れ違いに、お兄ちゃんが病室に飛び込んで来た。

『大丈夫か!?』

たったその一言に、泣けてくる。

病院のベッドは、私を涙もろくさせる。


母もこうして…。
泣いていたのだろうか!?

自分の姿が、母の姿と重なって見えるようだった。

5年前 No.20

このはβ.+・。* ★xWbgY3bL81_yGD

その後を、両手に紙袋を抱えた、スラリとした長身の女性が入ってきた。

「渚ちゃん、大変だったわね?、 大丈夫!?」

「はい。大丈夫です!」

いつもの、朗らかな笑顔だけど。

私は、その笑顔が苦手だ。

よく言えば、『天使の笑顔』。

でも悪く言えば、『作り笑い』。

彼女の笑顔は、どうしても私の目には偽物としか映らなくて。

彼女の本心が読めないから、どうしても警戒してしまう。

5年前 No.21

このはβ.+・。* ★xWbgY3bL81_yGD

「本当に参ったよ…。
さすがに俺が、渚の下着あさるわけにもいかないしな!?」

と、冗談まじりか本音か。頭をかきながら言う、お兄ちゃん。

その言葉に、笑えない私がいた。

「渚ちゃんのサイズとか、よくわからなかったから…。

気にいらなかったら、ゴメンね!?」

と言って、紙袋から色々取り出す彼女。

この人は、お兄ちゃんの彼女。

『下村 悠里』さん。

5年前 No.22

このはβ.+・。* ★xWbgY3bL81_yGD

お兄ちゃんと彼女の悠里さんの付き合いは、結構長い。

そろそろ、結婚も考えてるとか。

私より、5歳年上のお兄ちゃんは、もう社会人。

花屋さんで働くお兄ちゃんは、エプロン姿がよく似合う。

なぜ、花の仕事をしているのか、前に聞いた時。
『母さんの病室には、いつも花が飾ってあったから…。

花を見ると、母さんを思い出すんだよ』

と、儚げな花のように笑ってたっけ。

5年前 No.23

このはβ.+・。* ★xWbgY3bL81_yGD

大好きなお母さんを、お兄ちゃんから奪ったのは、この私。

『ゴメン』

と言わずには、いられなかった。

病院も、病室も、病気も、この空気そのものも、私は嫌いだ。

退屈な日々は、いやなことばかり思い出す。

「気にいらなった!?」

という声で、ハッと我に返った。

悠里さんは、真新しいパジャマや、下着とか、入院に必要なものを色々買ってきてくれたようだ。

5年前 No.24

苺β.+・。* ★xWbgY3bL81_yGD

「あっ。いえ…。
ありがとうございます」

一応、お礼はきちんとしなくちゃね。

「じゃあ、そろそろ帰るか!?」

もうすぐ7時。面会時間が終わる。

「私。明日、渚ちゃんに付き添うから、何も心配いらないからね!?」

「ありがとうございます」

付き添いなんて、必要ないのに。

でも、いざという時のことを考えると、一人は不安だったりもして。

その申し出を、受け入れるしかなかった。



5年前 No.25

美遥β.+・。* ★xWbgY3bL81_fBq

ふたりが帰った後の病室は、静かすぎるくらいに静かだった。

盲腸は、局部麻酔が一般的で、手術している様子が分かると、よく聞く。
だが、手術を嫌がる私を見かねて、先生が全身麻酔を提案してくれた。

年齢が高くなると、局部では手術中に麻酔が切れる可能性もある、という理由もあるらしいけど。

だから私には、一人部屋が用意された。

一人は気楽。

だけど、こんな時には話し相手も欲しい。

嫌なことばかりを考えるから。

5年前 No.26

美遥β.+・。* ★xWbgY3bL81_fBq

この投稿はフィルタされています。表示するにはアカウントにログインして下さい。

5年前 No.27

このはβ.+・。* ★xWbgY3bL81_3uf

そうこうしている内に、お父さんと、お兄ちゃんと、悠里さんが病室を訪れた。

「大丈夫か!?」

そう言うお父さんは、やっぱり昨日のお兄ちゃんのように、オロオロしている。

「そんなに心配しなくても、大丈夫だよ。

たかが盲腸なんだから…」

笑いながら、そう答えた。

でも本当は、初めての手術に内心ビクビクで、ドキドキしていて落ち着かなかったんだ。

弱さを、見せることができない。

5年前 No.28

このはβ.+・。* ★xWbgY3bL81_7Ea


強がったまま、手術室に運ばれて、意識はすぐになくなった。

次に目を覚ますと、病室の白い天井が飛び込んで来た。

手術終わったんだ…。

目を開けた私に、真っ先に気がついたのは悠里さんで。

「渚ちゃん、大丈夫!?」
と、言われた。

でも、何に対しての『大丈夫』なのか、返事に困る。

無言の私に、

「お腹、痛くない!?」

優しく問いかけて来た。

5年前 No.29

このはβ.+・。* ★xWbgY3bL81_7Ea

「少し、痛いです」

と、答える。

意識がはっきりしてくる程に、傷口が痛む。

「渚、お前の盲腸、真っ黒だったぞ!!

なんでそんなになるまで、我慢してたんだ!!」

普段は物静かな、お父さんにキツく言われた。

「それは…」

昔、お腹が痛いと大騒ぎして、診察を受けた時、『便秘』と診断された。

以来、お腹が痛いと言う度に、『また、それじゃないの!?』と言われて、真剣に取り合ってもらえないから。

それから、『お腹が痛い』とは言えなくなった。

とは。

口が裂けても言えない、事実。

「我慢するほど痛いと、感じてなかったんだけどね!?」

とぼけたフリをして、そう答えた。

「渚は、神経が鈍いんだよ!!」

暗い雰囲気を払拭するような、お兄ちゃんの笑い声が響く病室。

「お兄ちゃん、うるさいよ!!」

私も笑いながら、明るく答えた。

「…まったく…」

お父さんはつぶやくと、小さなため息をつく。

私が入院なんてしたから、お父さんのこと、困らせちゃったのかな!?

そのため息に、心臓がドキドキした。

少し不機嫌そうにも見える、お父さんに、目を合わせられない。

途端に静かになった病室で、

「あまり、心配させるな。携帯電話に病院から電話があった時は、何があったんだ!?、 って、本当に心配したぞ!!」

4年前 No.30

このはβ.+・。* ★xWbgY3bL81_7Ea

「そうそう。

その後、すぐに俺に電話かけて来てさ。

『仕事はいいから、すぐ病院に行け!』

だもんな。

こっちの方がびっくりしたよ!」

と、お兄ちゃんが言葉をつけ加える。

その言葉に対して、

「あたり前だろう!?
私には、渚を守る義務があるんだから!」

強い口調で、そう言った。

それは。

本当なら、泣いて喜ぶような言葉なのかもしれない。


でも私は、

『そんな気持ち、いらないよ!!』

そう。

叫びたかった。

『義務』で、育てていると言われるのなら。

私は、ひとりででも、生きていく。

………。

違うか。

私は、消えてしまいたいんだ。

お父さんに、私という『義務』を背負わせているなら。

これ以上、荷物にならないように。

消えてしまいたい。

お父さんから降りて、肩の荷をなくして、楽にしてあげたい。

4年前 No.31

このはβ.+・。* ★xWbgY3bL81_7Ea


『あんなコを、産うんだりなんてしなければ…』

私を、冷たい視線で睨みつけながら。

ヒソヒソと話し合っていた、親戚のおじさん、おばさん。

「どうして、反対しなかったの!!

ヒートアップしてきたおばさんに、お父さんは、ただただ平謝り。

思い出さないようにと、心の奥に鍵をかけたつもりなのに。

時々こうして、過去の記憶が蘇ってくる

本当は、きれいさっぱり、忘れてしまいたかた。

すっかり気分が落ち込んでしまった、あたしに。
「無事に終わって、ホッとしたよ」

と、お兄ちゃん。

安堵の表情を浮かべた、お兄ちゃんの笑顔は、いつも私の心を癒やしてくれる。

気が緩んだ私は、泣きそうになった。

「欲しいものとかあったら、私に教えてね!?」

と、悠里さん。

「悠里さんにまで、ご迷惑をおかけしますね」

と、頭を下げてる、お父さん。

やっぱり…。

お父さんにとって、私は『迷惑』な存在なんだ。

4年前 No.32

このはβ.+・。* @harusaki ★xWbgY3bL81_hBy


お父さんに、迷惑をかけないように。

そう、生きてきたつもりでも。

お父さんにとって私は、生きているだけで、『迷惑』な存在なのかもしれない。

そのことを再認識させられた私は、ベッドの上で泣くしかなかった。

点滴を受けている腕は、思うように動かせない。

入院生活が、こんなにも窮屈だなんて、思いもしなかった。

何も考えずに、寝ていたいのに。

目を閉じると考えるのは、嫌なことばかり。


手術から一夜が明けると、ひとり部屋は本当に静かで。

静か過ぎる部屋に居心地の悪さを感じた私は、朝からTVを見る。

それに飽きたら、教科書に目を通してみたりする。

…そういえば。
進路調査票、家に取りに来るって言ってたな。

受験しない、って言ったら、先生なんて言うかな!?

そんなことを考えながら、ベッドに横になった。

今は何も、考えたくないから。

ただ目を閉じる。


………。

4年前 No.33

このはβ.+・。* @harusaki ★xWbgY3bL81_hBy

いつの間にか、私は眠ってしまっていたようだった。

人の気配を感じて、ゆっくり目を開けると、

「ごめん。
起こしちゃった!?」

そこにいたのは、悠里さんではなくて。

早苗だった。

「ひとりで来たの?」

その問いに、深い意味はなかった。

ひとりだったから、そう聞いただけ。

なのに。

「手術したばっかりだから、みんなで押しかけるのも、どうかと思って。

今日はアタシだけ、ナギの様子を見に来たの」

少しだけ、言い訳がましく聞こえてしまうのは、私の性格がひねくれているから、だろうか!?

「じゃなくて!」

ここ数日の間に、溜まりに溜まったイライラを、つい早苗にぶつけてしまう。

「慎一くんと、一緒じゃないの!?」

どうせ。

私のいない所で、仲良くやってんでしょ!?

私の気持ち、知ってるくせして。

お見舞いに来たのも、結局の所、その罪悪感からくるものだと、推測された。



「そのことなんだけどね…」

と、口を開く早苗。

そっか。

報告に来たんだね?

私は早苗の次の言葉を予想して、喉の奥に、ゴクリと唾を飲み込んだ。

「まだ返事してないんだけどね…。

断ろうかと思って…」

うつむき加減に、早苗は答えた。

それは、私の想像とは全然別のものだったから。

「なんで!?」

素直に聞き返す、私がいた。

「だって、イヤでしょ!?
アタシが、慎一くんと付き合ったりしたら?」


「はあ!?
何ソレ!?」

今日の私は、気持ちが沈んでいたから。

いつものような冷たい言葉を、冷静に受け止めることができなかった。

頭では、『ダメ!』。

そう叫んでいるのに。

一度開いてしまった唇は、なかなか閉じてくれない。

「何!?
私のせいで、慎一くんと付き合えないとでも、言うつもり!?」

怒り口調で攻撃する私に、

「そんなんじゃないけど…」

と、口ごもる早苗。

4年前 No.34

このはβ.+・。* @harusaki ★xWbgY3bL81_hBy


「けど、って何よ!?『そうだ』って、言ってるようなもんじゃない!!」

一度あふれ出た感情は、簡単には止まってくれない。

早苗に対しての、積もりに積もった不満は、今まさに発散されようとしていた。

「何なのよ!!その言い方!!誰のおかげで、手遅れにならずに済んだと思ってるの!?」

早苗も、ヒートアップしてきた。

「ナギには、感謝されることはあっても。

文句言われる筋合いないよ!!」


「ああ、そうですね!!早苗のおかげで、死なずに済みました!

どうもありがとうございます!!」

イヤミをたっぷり込めて、そう言ってやった。

もう、偽りの友情ごっこも、今日でおしまい。

悲しいなんて、思わない。
だって、友達だなんて、お互いに思ってないんだから。

早苗に気を使う必要がなくなった分、せいせいする。

もとより、ひとりには慣れてる。

悲しいなんて、思うわけがない。

4年前 No.35

このはβ.+・。* @harusaki ★xWbgY3bL81_hBy


あれ!?

じゃあ、私の頬を濡らす、この雫はなんなの!?

指先で感じたものに、びっくりしたのは私自身だった。

それでも。

活火山のように長年にわたって、沸々と煮えたぎったマグマは、ある日突然噴火する。

ドロドロとあふれ出たマグマは、そんな小さな水滴さえも、『火に油を注ぐ』ような状態で。

あたしの思考回路は、完全にショートしてしまっていた。

「恩着せがましく、そんな風に言われるなら…」

真っ直ぐに、早苗の目を見た。

早苗の瞳は、怒りでメラメラと燃えていた。

こんな風に向き合ったのは、初めてかもしれない。

先に目を逸らしたのは、私の方だった。

フイッっと横を向いて、

「帰ってよ」

とだけ短く言う。

そのまま、ベッドに潜り込もうとした私の肩を、つかんだ早苗。

ゆっくりと振り向いた私の目に、早苗の手の平が飛び込んで来た。

バシン。

左頬に、ありえない激痛が走る。

4年前 No.36

このはβ.+・。* @harusaki ★xWbgY3bL81_hBy


「ちょっとぉ!!
何すんのよ!!」

痛む頬を両手で押さえて、反論した。

早苗の瞳は怒りから、だんだんと悲しい色を帯びてきて、震える声でつぶやいた。

「グーじゃなかっただけ、良かったと思いなさいよ」

と。

「何、グーで殴ろうとしてたわけ!?」

『サイテー』

吐き捨てるように、そう言っていた。

私はとことん、早苗を傷つけたいと思っている。

そんな自分が、一番最低なんだってことも、頭では理解しながら。


それを、抑えることができなかった。

「サイテーなのは、どっちの方よ!?」

感情的になった早苗は、ここ一番の大声を張り上げた。

扉が閉まっているとはいえ、外に声が漏れてるんじゃないかと、急に心配になる。

そんな私をよそに、早苗は収まりのつかない怒りを、そのままぶつけてきた。

「ナギは、アタシの気持ち、全然分かってない!

分かろうともしてないじゃない!!」

「アタシが、ナギから『助けて』って電話もらった時、どんだけ心配したか。

どんな気持ちで…ナギの家に行ったのか。

知りもしないくせに、勝手なこと言わないでよ!!」

そう叫んだ早苗は、ポロポロ涙をこぼしていた。

「ナギが、ただの盲腸だって知って、どんなにホッとしたか。

『良かった』って、思ったのか。全然知りもしないくせに、勝手なこと…。言わないでよぉ」

4年前 No.37

このはβ.+・。* @harusaki ★xWbgY3bL81_hBy


早苗は私の肩をゆすりながら、そう言った。

私も、早苗の肩を抱いて、一緒に泣くことができたなら。

もしかしたら、関係は修復されたのかもしれない。

お互いに、『言い過ぎたね』『ごめんね』と、言い合えたら。

お互いに、許し合うことが出来たのだと思う。

でも私は、それを拒絶した。

『生きてて良かった』

そう思えることが、この先、いくつあるだろう?

いや。そう思えることは、多分ない。


今までだって、生きてて良かったなんて思ったこと。

ただの一度も、ないんだから。

この先に、明るい未来を思い描くことが、私にはできなくて。

だから。

自分の言葉を、引っ込めることができなかった。

「もう。いいよ…」

これ以上、話したくない。

「何がもういいのよ…」

涙目の早苗が、私を見つめている。

早苗のそんな顔は、見ていられない。

「早苗とは、話したくない」

短く、返答した。

4年前 No.38

このはβ.+・。* @harusaki ★xWbgY3bL81_hBy


「信じらんない!!人が心配して…」

「心配なんて、しなくていい。しなくたっていいよ!!」

たまらずに、そう私は叫んでいた。

「なんなのよ!!ナギおかしいよ!?さっきから、変なことばっかり言ってるよ?」

涙目を通り越した早苗は、心配そうな顔で、私の顔を覗き込んだ。

「変なことじゃないよ。私が言ってることは、全部本心だから」

そんな目で、私を見ないで…。

偽りの、見せかけの友情ごっこは、もううんざり。

私はもう。
ひとりになりたいの…。

「ナギ!!今、何て言ったの!?」

早苗の目が、みるみるつり上がっていくのがわかる。

「何度でも言うよ!

ナギ、もう一回言ってみなさいよ!!」

感情をむき出しにした早苗から、目を離すことができない。

私も、早苗を睨み返した。

4年前 No.39

このはβ.+・。* @harusaki ★xWbgY3bL81_hBy


そして言った。

『私なんて、死んじゃえば良かったのよ!』

さっき、そう叫んだ瞬間、飛んできた早苗の張り手。

その痛みは、まだ頬に残されている。

「何回だって言うよ?私なんて、生きていても何の価値もない。私が死んだって、悲しむ人なんて、誰もいないんだから…」

一気にそう言って、深呼吸をした。

荒い息を整える。


絶句してしまった早苗に、さらに言葉を続けた。

「私には、生きてる意味なんてないんだよ!

早苗みたいに、誰からも愛されている人には、私の気持ちなんて、絶対にわからないんだから!」


『早苗には、説教なんてされたくないよ!』

決定的な一言だった。

早苗の表情はみるみるうちに、心配とも、怒りとも違う。

口では表現できないような、なんとも言えない顔に変化していった。

4年前 No.40

このはβ.+・。* @harusaki ★xWbgY3bL81_hBy

「もう!知らない!!そんな風に言われるなら、勝手にすればいいわ!!」

キッと睨んで、ドカドカと病室の入り口へと、向かう早苗。

「言われなくても、勝手にするよ!

だから早苗だって、勝手に慎一くんと付き合うなり、なんなり、好きにすればいい!!」

早苗の背中に向かって、そう叫んだ。

「こっちだって、勝手にするわよ!
ナギのバカ!!」

一瞬だけ振り向いた早苗は、泣いていた。

泣きながら、病室を出て行った。

4年前 No.41

このはβ.+・。* @harusaki ★xWbgY3bL81_hBy


早苗が出て行った後の病室には、後味の悪さだけが残った。

こんな風に誰かに、自分の気持ちをさらけ出したのは、初めてだと思う。

それが早苗だということが、なぜか気に入らなくて。

彼女の香水の匂いが、微かに残る病室の空気が、よどんで見えて。

私はあわてて、窓を全開にした。

新緑の季節。

緑の深い、清々しい空気が、嫌な私の心を洗い流してくれるようだった。


言い過ぎた。

そう思うけど、謝ったりなんかしない。

どんなに心は洗い流せても、私の気持ちはまた黒に染まる。

これからもずっと、変わらずに。

私の心の空が、晴れる日は来ない。

これからもずっと、永遠に。

私の心は、重く垂れ込めた雲が、空を覆うように。

そして、白く煙る霧が、視界を遮るように。

いつも、モヤモヤした中にいるのだから。

4年前 No.42

このはβ.+・。* @harusaki ★xWbgY3bL81_hBy


『勝手にする』

そう言って病室を出て行った早苗は、次の日、姿を見せることはなかった。

…それでいいんだ。

あんなに派手に、言い合ったんだから。

顔を見ても、気まずいだけ。

いまさら笑って、話しなんて出来るはずがないんだから。

そう、自分に言い聞かせた。

私の言葉が、早苗を傷つけたとしても、それで良かった。

我慢していたら、いつかもっと大きく、爆発していたのかもしれないのだから。

4年前 No.43

このはβ.+・。* @harusaki ★xWbgY3bL81_hBy


「元気か?」

ベッドに横になり、ウトウトと、まどろんでいた私の眠気を吹き飛ばしたのは。

そう言いながら、部屋に入ってきた慎一くんの声だった。

ぎこちなく笑って、『うん』。短く答える。

「秋山さんと、派手にケンカしたんだってな!?」

私の顔を見るなり、単刀直入に話を切り出した。

「ケンカじゃなくて、決別したの」

私は短く、そう答えた。

「悪かったよ」

突然の言葉に、あ然とする。

「お前の気持ち、知らなかったとはいえ、あんなこと、頼んだりして」

その言葉の意味を理解した私は、また、フツフツと煮えたぎる血を感じた。

怒りがこみ上げる。

「早苗が言ったの!?

私が、慎一くんのこと好きだってこと?」

勢いで、告白してしまったようなものだった。

今度は、恥ずかしさから全身赤くなったのを感じた。

4年前 No.44

このはβ.+・。* @harusaki ★xWbgY3bL81_hBy

許せない。

そう思った。

「早苗の勝手にする、って、こういうことだったんだね。

私の気持ち、慎一くんに話すなんて…。

やっぱり早苗は、サイテーなヤツだったんだ。

友達じゃなくなって、せいせいしたよ!」

慎一くんに対しての、言葉ではなかった。

私自身の、独り言。

『早苗はサイテー』

そう思えれば、昨日けんかしたことも全部、良かったんだと納得できるから。


「三船。それは違う」

いつもよりワントーン低い声で、そう否定する慎一くん。

「なにが違うの!?」

早苗をかばう慎一くんのことも、嫌い!

嫌い、嫌い、嫌い…!!

みんなみんな、大嫌い!!

「俺が無理やり、秋山さんから聞き出したんだよ!」

『三船から聞くから、って言ったら教えてくれた』

ぼそっとつぶやいた慎一くんの言葉に、私は燃え上がっていた感情が急速に冷めていくのを感じた。

4年前 No.45

このはβ.+・。* @harusaki ★xWbgY3bL81_hBy

「病院のそばの橋の上で、川を見つめてる秋山さんを見かけたんだ。

俺ん家すぐ近くで、犬の散歩の途中だったんだけど、気になって近づいたら…」

『秋山さん、泣いてたんだよ…』

泣いてた!?

あの、早苗が!?

あたしと、けんかして!?

それは、信じられない言葉だった。

「うそ!」

野球部に入部している慎一くんが、犬の散歩をするといえば、結構遅い時間のはず。


私達がけんかをして病室を飛び出してからでも、結構時間が経つ。

それでも、病院の近くの橋に、ずっといたっていうの?

泣きながら!?

「それで!?」

でも私には、それが本当のこととは思えなくて、慎一くんに冷たい言葉を投げかけてしまう。

「慎一くんは、何しにここに来たわけ?」

「何しに来たと思う?」

そう言って、意味ありげに笑う慎一くんに、私はムカつきを覚えた。

4年前 No.46

このはβ.+・。* @harusaki ★xWbgY3bL81_hBy


「説教なら、聞きたくない!」

それが私の答えだった。

それを聞いた慎一くんは、鼻でフフンと笑って、
「違うよ」

とだけ言う。

じゃあ一体、慎一くんは何しに来たっていうの?

早苗を泣かせるなんて、って、代わりに怒りに来たんじゃないの?

「泣いてると…、思ったんだよ…」

ぼそっと、小さな声で。

だけど聞き間違いなんかじゃなく、そう言った。

「誰が!?」

慎一くんは、何が言いたいんだろう?


「三船。お前だよ!

俺は、お前も泣いてるんじゃないかと思って、それで、来た」

淡々と話す、慎一くん。

「そんなことのために?」

「大事なことだ」

そう言う慎一くんは、真剣な目で私を見ている。

「優しくしないでよ!」

泣き出したくなる気持ちを抑えて、私はそう言っていた。

「私が泣くわけないじゃん!」

泣いたって、どうにもならない。

それを、一番よく知っているのは、私なんだから。

精一杯の強がりで、そう答えた。

4年前 No.47

このはβ.+・。* @harusaki ★xWbgY3bL81_hBy

「何言ってんだよ!?本当は仲直りしたい、って思ってんだろ!?」

心の中を、見透かされている気がした。

「誰が。早苗となんか…」

ぷいっと横を向いたのは、慎一にそれを悟られたくなかったから。

「俺は知ってるよ。お前が本当に好きなのは、俺じゃない。

…だろ?」

イジワルく笑った、慎一くんに、とっさに言葉が出て来なかった。

心臓が飛び出しそうなくらい、ドキドキしている。

「違う!?」

改めて確認する慎一くんに、

「やめてよね。レズじゃあるまいし」

心の動揺を隠すように、そう答えた。

あたしの言葉に、すごくうれしそうに笑うと、

「ほらな!俺は絶対そうだと、確信してたんだよ!!」

と言う。

「何が!?」

尋ねる私に、

「お前の好きな人が、秋山さんだってこと!」

そう言って、慎一くんはまた笑った。

「だから、やめてよ。私は早苗のことなんて、好きじゃないんだから!」

4年前 No.48

このはβ.+・。* @harusaki ★xWbgY3bL81_hBy

否定しようとすればする程、胸が苦しい。

「嫌い、嫌い、も。
好きのうち、ってね!」

「だからぁ…」

あわてて否定しようとする。

「知ってるよ。
『そういう』好きじゃない、ってことくらい!」

「はっ!?」

首を傾げた私を見て、慎一くんは声を上げて笑った。

慎一くんの『そういう』とは、恋心のこと。

それを必死で、否定しようとしていた自分が、すごくバカみたいに思えて、私も笑ってしまった。

「けど、好きなんだろ!俺に取られるんじゃないかって、心配になるくらい」

ひと通り笑った後で、まっすぐな瞳で見つめられた。

「仲直りしたいんだろ!?」

その問いかけに、今度は素直にうなずいた。

「親友、だもんな!?」

確認するようなその言葉に、自然と涙がこぼれていた。

早苗が慎一くんと付き合ったら、もう前みたいに一緒にいられなくなる。

それが本当に寂しくて、イライラしていた。



4年前 No.49

このはβ.+・。* @harusaki ★xWbgY3bL81_hBy

八つ当たり、だったのかもしれない。

私を見捨てて、慎一くんの所へ行こうとしている早苗を、許せなかったのかもしれなくて…。

そんな自分の醜い心を、早苗に悟られたくなくて、結局早苗を傷つけてしまった。

「サイテーなのは、私の方だった…」

泣いたって、悔やんだって、仕方ないのに。

今までため込んでいたモヤモヤを晴らすかのように、私はずっと泣き続けていた。

それを、慎一くんがずっと見守ってくれていた。


「秋山さんだって、同じだよ」

「え?」

「同じように、三船のことが好きなんだよ!」

『あーあ』と言って、わざとらしくため息をつくと、

「俺より、三船のことが好きなんだってさ!!」

「は!?」

「秋山さんから、はっきりと断らわれたんだよ。つまり…。俺は秋山さんに、ふられたってこと!」

サバサバした口調で、そう言った慎一くんは、時折笑顔も見せながら続けて言った。


「所詮、俺には手の届かない『高嶺の花』だったってことだよな?」

あっけらかんとして、そう言って、諦めにも似た感情でさえ見え隠れするけど。

「本当にそう思ってるの?」

つい、そんな言葉が出てしまった。

「どういう意味だよ!?」

私の考えが図星だったのか、一瞬で不機嫌そうに眉をしかめた慎一くんに、睨まれた。

「簡単に諦められちゃうような恋だったなら、私のことダシに使わないでよね!?」

4年前 No.50

このはβ.+・。* @harusaki ★xWbgY3bL81_hBy


そうだよ。

私がどんな思いで、早苗を呼んで来たと思ってるのよ!?

泣きたいのをこらえて、笑って『いいよ』って言って、早苗を呼びに行った私の気持ち、慎一くんは全然わかってない!

「一回ふられたぐらい、何だっていうのよ!

早苗のこと、本当に『手の届かない存在だ』って思ってるなら、初めから好きになんてならなきゃ良かったんじゃない!!」

目の前にいる慎一くんは、慎一くんだけど。

うじうじ、うじうじ。

『どうせ』とか。
『俺なんて…』とか。

すっかり自信をなくして落ち込む慎一くんは、いつもの輝きが全然なくて。

それは、私自身を見ているようで、イライラした。

私の好きな慎一くんは、そんな人じゃない。

目の前に、無理に作った笑顔を浮かべた慎一くんが立っているのに。

優しい言葉のひとつもかけてあげられない私は、やっぱりサイテーなヤツだと、思った。

病室を静寂が包んだ。

4年前 No.51

このはβ.+・。* @harusaki ★xWbgY3bL81_hBy


翌日。

私はようやく点滴が外れて、食事ができるようになった。

食事といっても、出てきたのは、お粥をさらに煮てドロドロした液体のようなもの。

米粒の原形さえも留めていないそれに、私はしばし見入ってしまった。

『なにコレ?』

あ然とする私を見て、食事を届けてくれた看護士さんが、『ごめんね』と言う。

「だんだん固くなっていくから、今はこれで我慢してね?」

赤ちゃんになった気分だった。

点滴をしなくても良くなって、ヒマを持て余した私はブラブラと院内を散策してみる。

こうして自由を手に入れると、何もやることのない退屈を思い知る。

売店でファッションやパズルの雑誌やコミックを書うことしか思いつかない自分は、

なんてつまらない人間なんだろうと思った。

ナイロン袋を片手にエレベーターに乗り込む。

外科は4階だったから、4のボタンを押そうとして右手の人差し指を伸ばした。


しばし、躊躇した。

目の前に並ぶボタンの、屋上を示す『R』の文字から目が離せなくなったんだ。

なぜか無性に屋上に行ってみたい衝動にかられて、ボタンを押そうとして指先を伸ばした。

と、入口からスッと人が入って来て、素早く2のボタンを押した。

光る2のボタンに、ドキッとして我に返ると、あわてて4のボタンを押す。

と同時に扉が閉まり、エレベーターは動き出した。



4年前 No.52
切替: メイン記事(52) サブ記事 (2) ページ: 1 2

 
 
<< TOPページ 掲示板TOP 記事データ お知らせメール ▲ページ上 >>
★必ず ローカルルールメビウスリングのルール をご覧ください。
 ▼スタンプ▲スタンプ
※スタンプはいちどに 3個 まで使えます  ×閉じる
注…感想・コメントはこの記事ではなく、サブ記事に書き込んでください。(小説カテゴリでは必須です)