Google
    
<< TOPページ 掲示板TOP 記事データ お知らせメール ▼レス(9) >>

ガラスの銀貨

 ( 小説投稿城 )
- アクセス(242) - ●メイン記事(9) / サブ記事 (4) - いいね!(1)

カストル @zodiacone ★iPad=TVDZfMMVOu

「ねえ見てよこれ!すっごく綺麗じゃない?」
「うん!特にこの色好きだなあ」
「すいません、これくださーい!」
二人の少女が差し出したのは、風景を撮った写真だった。
「毎度。おつりです」
店の主人が差し出したおつり、現代の十円硬貨に当たる硬貨数枚は、透き通った銀色をしていた。
「またお越しください」
「ありがとうございましたー!」
「にしても、こんなんよく作ったよな…誰だろ?」
店主は受け取った代金を見ながらつぶやいた…

切替: メイン記事(9) サブ記事 (4) ページ: 1


 
 

カストル @zodiacone ★iPad=XfljrGqcc1

「結構綺麗だし、集めてる人もいるんだよね…いろんな国のやつとか、古銭とか…」
午後3時、ほとんどの店が閉店する時間だ。
店主、リートも店を閉め、奥のカウンターでゆっくりコーヒーを飲んでいた。
ピローン。
広い店内に電子音が響いた。
リートは急いで玄関に出て行く。
ドアを開けると、キャスター付きのワゴンが待っている。
荷物を受け取り、ドアの横に掛けてあるカードをワゴンの上のパネルにかざすと、ワゴンはころころとキャスターで走り去っていった。
ドアを閉め、鍵を掛けてから荷物を開ける。
「ああ、これか」
出てきたのは手のひらサイズの透明な板で、充電器に挿すと画面が光った。
「全く、これだってそろそろ形変えてもいいのに。ガラケーが透明になっただけだってのに…」
そうこうしているうちに辺りは真っ暗になってきた。
「こんばんは。ニュース4です。」
リートはニュース番組をつけた。画面の左上には「2089/7/7・16:00」と出ている。
「本日は7月7日、七夕の日です。」
(そういやそうだったか。…って言うか、七夕って何すんだっけ?ナナユウで七夕ぐらいしか思いつかない…)
「七夕は古代中国発祥とされていますが、詳しい内容は判明していません。」

(注:ここでいう「ガラケー」は今のスマートフォンのことです)

2ヶ月前 No.1

カストル @zodiacone ★iPad=s5wzX1PMNW

「では、次のニュースです。」
リートはテレビを消し、コーヒーを飲み始めた。
「冷めちゃったな…いっそのこと、アイスコーヒーでも」
立ち上がり、銀色の箱に入った氷を掴んでコーヒーに入れようとしたその時、リートは氷の中になにかを見た。
「んん?なんだこれ?」
浮かび上がってきたのは、とうに失われたはずの自然の木々だった。
窓枠に乗せてあるひょろひょろの草とは似ても似つかないその堂々とした姿に、リートは声を失った。
「…これって、溶かしちゃいけないとかそういうやつ?マジか…」
やっとの事で口を開き、出たのはそんな言葉だった…

2ヶ月前 No.2

カストル @zodiacone ★iPad=NvCFhmDQ42

けれども、氷の中の樹はどんどん大きくなり、ついに氷を割って飛び出してきた。
「?!ええ?ちょっこれ育ちすぎじゃね!?待って待って店壊すな落ち着けって#@%\…」
なおも樹の成長は止まらない…のではなく、なんと氷の中の世界自体が飛び出してきているのだった。
「いや、そもそもどうなってんだこれ??」
謎の樹は成長を続け、とうとう太い幹がリートに迫ってきた。
「待て待てやめろやめろ!止まれってば…」
リートが反射的に目をつぶり、恐る恐る開けてみると、
頭上には雲ひとつない青空が広がり、さっきまで氷の中にあった木々が風にそよいでいた。
「とうとう壊れたか、この店…じゃ、なんで木がここに?隣の店は?」
どこにもない。さっきまであった壁も、天井も、道路もない。ただただ自然ばかりが広がっていた。
「んじゃ、ここはどこ?絶対2089年じゃない…」
とにかく、少し歩いてみることにした。
相変わらず草が生い茂り、木々が所々に生え、鳥や虫がのんびりと辺りを飛び回っている。
しばらく歩くと、はるか遠くに人影が見えた。
「おーい、そこの人ー!すいませーん!」
「なんですかー?」
「ここはどこですかー?」
「田舎でーす!」
「あ、いや、そういうことではなくて、ここの名前を教えていただけますかー?」
「ここはアポロン合衆国のアリーズ州ですよー!」
(へ?え?なんすかそれ?)
「わかりましたー!ありがとうございまーす!」
(なんにもわかんないけど…)

1ヶ月前 No.3

カストル @zodiacone ★iPad=zDiZw4IROX

とにかく歩いてみるしかない。とりあえず当てずっぽうに歩いていると、いきなり声をかけられた。
「カレン!なんでここにいるの?」
(え?カレン?誰すかそれ?)
「散歩にでも行ってた?役場から勝手に出ちゃダメだよ!事務のライラが怒ってたんだからね!」
「えーっと…あなたは…」
「何言ってるの!同僚で友達のスピカじゃん!」
(スピカ…?)
「ごめんごめん、度忘れしちゃった…すぐ戻ろう!」
「やっとその気になった?今度抜け出したのが見つかったら、ライラだって黙ってちゃいないだろうから!」
(私はリートなんだけどな…カレンさんはどこ行ったんだろ?)

1ヶ月前 No.4

カストル @zodiacone ★iPad=40VwdWdx6V

「あんまり音立てないでね…ここのドア建て付け悪いんだから」
着いたのは「役場」らしき場所の裏口。
カレンという人物の席はそこからすぐの場所にあった。
「今度やったらただじゃおかないからね?」
「ごめんごめん、ライラだって来ればいいのに」
「やーだね、そんなんこっちから願い下げだ!」
「なんやと!?人がせっかく誘ってやったのに!!」
スピカとライラはまだ喋っている。
(あの二人、意外と仲良いんじゃないのかな…しかし、なぜ私がここにいるんだよ…)
いくら考えても分からない。
(ひょっとして転生したんじゃ?いやいや、まず私死んでないし。待てよ、あの木に押しつぶされて圧迫死って可能性も…)
だめだ。分からない。というか見当がつかないからどうしようもない。
ふと、テーブルの上のペーパーウェイトが目に入った。
よく見てみるとそれは、リートが元の世界で使っていた硬貨だった。
透き通った銀色といい、表面の細かな装飾といい、全く同じものだ。
(なんで、これがここに…?)
とりあえずスピカに聞いてみることにした。
「これ、何?綺麗だけど…」
「ああ、それ私が持ってきたの。なんか落ちてて、誰かの落し物かと思ったんだけど、交番でも取りに来る人なんか来なそうだからって返されちゃったんだよ」
「いや、いいの?」
「私使わないし、カレン使ってていいよ?」
「ありがと…」
これから何か分かるかもしれない。光に透かすと、キラキラと光って見えた。
(こんなの、お金に使うのがもったいないくらいだよなぁ)
その時、さっきまで輝いていた銀貨がみるみる輝きを失い、ガラスのように透き通ってきた。
そこに浮かんできたのは、さっきまでいた2089年の街だった。
「え?ん?嘘だろ?」
銀貨が光を反射し、ありえないほど輝いている。

1ヶ月前 No.5

カストル @zodiacone ★iPad=z8Qg7vkpp4

「どうなってんのかなこれ…」
その日はどうしても眠る気になれなかった。
「カレンとか言ったかな…あの人はどうなってるんだろ?」
銀貨の由来を検索してみても、どういうわけかほとんど出てこない。
向こうの世界じゃお金としては扱われていないようだったから、元々お金ではないのかもしれない。
唯一検索して出てきたのが、少し前に突然消えた「魔法使い」の存在だった。
魔法使いといっても本当に魔法を使う訳ではなく、特有の高度な錬金術を持った職人たちのことで、全ての作品に大樹の刻印が入れてある。彼らが作る合金はどれも見事なもので、耐久性の高い実用的なものから繊細な輝きを持つものまで、何でもあると言って良かった。
「『しかし2060年代に入って、彼らは突然全ての工場と店を閉鎖し、本人たちも蒸発したように消えてしまった。残された手掛かりは銀貨に刻まれた大樹の印だけ…』だってさ。…確かに言われてみればはっきり見えるもんだよね」
未だに輝き続けている銀貨の表面に、光の加減で縁取られた大樹の印が浮き出ている。
「あれ?これって光ってないと見えないんじゃ?」
他の銀貨を見ても、いつも通りのつるっとした表面があるだけだ。光っている印を触ってみても、手触りは他のものと変わらず、滑らかなままだ。
「てことは、中?これ中に入ってる模様なの?」

1ヶ月前 No.6

カストル @zodiacone ★iPad=R3rdjLj8rJ

ただ、これが分かったことでなにかが進むわけでもない。
リートが頭を抱えた、その時…
(カレン目線)
「ちょっとスピカ、何言ってんの?私は今表から帰ってきたところなのに…」
「さっきまでデスクにいたんでしょ?ライラだってあなたが出ていくのを見てないのに」
「そんな、ライラがちょっと居眠りしてる隙に抜け出せるじゃん!」
「だーれが寝ぼけたってぇ??」
「ひっ…ライラ、さん…」
「仕事中の居眠りなんて、アタシはまだそんなにもうろくしてないよ!あんたの同期だろうが!」
「あ、そういやそうか。でも、私だって居眠りぐらいするけど?」
「聞いたよ!町長に言いつけてやろうか?」
「や、やめて…」
「冗談、冗談だって!」

1ヶ月前 No.7

カストル @zodiacone ★iPad=PPrI6Aa7b3

なんとか仕事を終えてうちに戻ってきた。
寄り道した店で買ったのは、透き通った銀色のペーパーウェイトのようなものだった。
この店はガラスやその他の合金を使った雑貨を売っている店で、魔法のようなその腕前で人気が上がり続けている人気店だった。
ペーパーウェイトを眺めてみる。
透き通っているのに銀色という不思議な色合いに見とれていると、大樹の刻印に気がついた。どうやら気泡か何かで封じ込めてあるらしい。
と思っている間に、いきなりそれが光り出し、あっという間に吸い込まれてしまった。
光が収まり、やっと目を開けた。
目の前に、自分そっくりの人がぽかんとした顔で立っていた。

1ヶ月前 No.8

カストル @zodiacone ★iPad=PPrI6Aa7b3

「だっ、誰?どっから入ってきた?」
「君こそ誰?ここはどこ?」
「私は、カレンだけど…」
「え?マジ?カレンさん?いやー、そっくりやなー…」
「なんで私の名前を知ってるの?あなたは誰?」
「あ、リートって言います。よろしく」
「はあ、そうですか…」
「で?なんでカレンさんがここに?」
「いやいや、私はなんか光るやつに吸い込まれちゃっただけでして」
「それって銀色の透明なやつ?」
「はい」
「樹のマークがある?」
「はい」
「…それか。」
「へ?」
「それ、出してみて?」
「これですか?」
途端に人が飛び出てきた。後から後から、羊のようにぴょこぴょこ出てくる。
「こんちゃーす。」
「誰やねんお前?」
「あ、コインを作った人たちですー。いやー、お騒がせしてすみませんね。自分たちちょっと別世界に飛んじゃったもんですから、ええ、戻れるのを待ってたんですよ、はい。あなたたちがどっちもコインを発見してくださったので。どちらの世界でも発見されれば、出入り口が開く仕組みを作っておいたんですよ。安全装置みたいなもんです、はい。安全第一ですからね。いやー、ありがとうございました」
二人は、呆然と見守るしかなかった。
(ガラスの銀貨 完)

1ヶ月前 No.9
切替: メイン記事(9) サブ記事 (4) ページ: 1

 
 
<< TOPページ 掲示板TOP 記事データ お知らせメール ▲ページ上 >>
★必ず ローカルルールメビウスリングのルール をご覧ください。
 ▼スタンプ▲スタンプ
※スタンプはいちどに 3個 まで使えます  ×閉じる
注…感想・コメントはこの記事ではなく、サブ記事に書き込んでください。(小説カテゴリでは必須です)