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天が歌いし鎮魂歌

 ( 小説投稿城 )
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白兎 紡 ★Android=nAzaus8m3z

──あら、こんにちは。貴方がこの図書館に来るなんて珍しい事もある物ですね。
──この前渡した本はもう読み終わったのですか?
──そうでしたか。では、新しい本が入ったんです。
──どんな話かって?とある双子の話ですよ。
──運命を彷徨う天と海の娘。
──二人は、どうなって行くのでしょうか?

切替: メイン記事(24) サブ記事 (33) ページ: 1


 
 

白兎 紡 ★Android=nAzaus8m3z

──ええ。二冊、あるんですよ。
──天の娘を望むならば、まずはこちらからご覧なさい。

21日前 No.1

白兎 紡 ★Android=nAzaus8m3z

序章 時を流れ行く双子の片割れ

「天音ー、まだなの?」
「ちょっと待ってってば!」

急かして来る双子の妹に返事をしつつ、私──篠乃芽天音(しののめ あまね)は髪を結い上げる。
今日4月4日は私の叔母であり憧れの作家先生、時原綾芽(ときはら あやめ)の誕生日。
パーティーにお呼ばれされ、なおかつ関係者も来るのだからそれなりに髪にも貴を使わなければならない……のだけれど。

「だいたいなんで海香はいつものツインテなのさ!もう少しオシャレに気を使おうとか思わんの?」
「え、いいじゃん別に。天音こそ気を使わずにいつものポニテでかわいいのに」
「……………ほんっとそういう所だからね?」

この妹は気を抜くとすぐにイケメン発言が沸きだしてくる。そんなんだから「みたらし」(多分みんなをたらしてゆく、の略)とか言われるのだ。
が、悲しきかな本人は無自覚なので別の意味に取ったらしい。
「……よし、終わった。行こう海香」
「ん。分かったよ天音」
こうして私達は家を出た。
───それが哀しき【運命】の始まりだと知らずに。

20日前 No.2

白兎 紡 ★Android=nAzaus8m3z

栃木県の郊外。
そこに叔母さまの経営するカフェ<白兎の住処>がある。そこそこ大きく叔母さまの管理下にあり、郊外なので落ち着きもある。まさに誕生日パーティーにぴったりの場であると言えよう。

「まあまあよく来てくれたわねぇ、双子ちゃん」
綾芽叔母さまはぬばたまと言っても過言ではない長い黒髪を俗にいうフィッシュボーンにしていた。元々かわいらしい系の顔なのでよく似合っている。
「本日はお呼び頂き有り難うございます、綾芽叔母さま」
「そんなにかしこまらなくていいのよ天音ちゃん。せっかくだもの、少し早いけど初めましょうか」
「はい。……海香?」

今まで一度も発言していない海香を見やると、海香はじっと、近くの森を見ていた。
「海香?何してるの」
「へ?あ、分かりました」

………?
海香を不審に思いつつも、私達は中に入っていった。

19日前 No.3

白兎 紡 ★Android=nAzaus8m3z

叔母さま主催のパーティーは13時から始まるらしい。
因みに今は10時……うん、大分早く来てしまった様だ。
「今日はゆっくりしてってちょうだいね」
「あの、叔母さま」
海香がおずおずといった体で声を掛ける。
「どうしたのかしら?」
「少し、森の方を見に行ってもいいですか?」
「ええ、いいわよ。どうせなら天音ちゃんも見に行かない?」
「あ、いいんですか?」
さっきから森を気にしている海香も気になるが、あっさり許す叔母さまも叔母さまである。
「大丈夫よ。かなり時間もあるし」
「んー、分かりました。海香、行こうか」
「! 分かった」
…………本当に、海香はどうしたのだろうか?

17日前 No.4

白兎 紡 ★Android=nAzaus8m3z

「綺麗…………」
思わずそんな声が出てしまった。
目の前にあるのは、神聖と言っても過言ではない程美しい森だった。
少しばかり背の低い木々が立ち並ぶ森の奥、なぜだか霧に包まれている所には泉があった。

「……やっぱり、か」
不意に、そんな声が聞こえる。海香でも、勿論私でもない第三者の声が。
「…誰なの「海香!」──え?」
ほぼ直感で海香の体を突き飛ばす。
それと同時に大地が揺れる──地震か!
そう思った時には、既に私の体は水の中だった。

17日前 No.5

白兎 紡 ★Android=nAzaus8m3z

「──ま」
ああ、誰かの声がする。
───ごめんなさい。ごめんなさい、■■。

「──様」
さっきのは、夢?
───様子が変なの、気付けば良かったのに。

「──セア」
もしかして──
───ごめんね、■■。

「マルセア!」
「ぅみ、か……ごめんね…」
これが、【わたくし】の目覚めだった。

16日前 No.6

白兎 紡 ★Android=nAzaus8m3z

第一章 青薔薇姫の胎動

「マルセアお嬢様!ああ、良かった……」
「………ふぇ?」
思わずといった体で抱きしめてくるメイド服の少女に戸惑い、変な声が出てしまった。
「4日もうなされていたのですよ?私共がどれだけ心配したか……!」
「……そう、なの?……ターニャ」
ターニャに問いかける。──そういえば、あれは?
「……ウミカって誰?」
「お嬢様?」
いやまて。思い出せ私。私の名前はマルセア・ペリド・アルローズ。10歳の双子の姉。…………ん?違う。
篠乃芽天音、15歳の公爵令嬢……うん?
「お体に召されましたか?もう一度お眠りになっては?」
「……そうするわ」
一回寝て整理しよう。そう思い、私は再びベッドに入った。

15日前 No.7

白兎 紡 ★Android=nAzaus8m3z

「…………はぁ………」
ベッドから半身を起こして20秒後。
混乱した状態から何とか抜け出した。…ものの、それと同じくらい分からない事が出てきた。
整理しよう。
今の「わたくし」の名前はマルセア・ペリド・アルローズ。10歳の公爵令嬢だ。
で、前の「私」──前世では篠乃芽天音という名前。15歳の双子の姉だった。
海香を庇い泉に落ちて溺死というのが死因。
……それにしても享年15歳って中々にヤバくないか?栃木県一早く死んだと思う。
「……とまあ冗談はおいといて、やることは…」
身体確認である。
そう、前世Aカップだった私は思ったのだった──。

14日前 No.8

白兎 紡 ★Android=nAzaus8m3z

身体確認して分かった事がひとつ。
「CよりのB……かな……」
自分で言ってて悲しくなってきた。
ま、まあ?前世よりかは育ってるし?
…………………………………自分で言ってて悲しくなってきた。
「……うん、それよりもこの髪と眼だよね」
蒼い髪と金色の眼。前世ではこんな色あり得ない。
つまり……
「ここは間違いなく異世界、それも漫画みたいなファンタジー世界なのかな?」
否、断定している。窓の向こうに見える世界がそもそも異常なのだ。
広大な農地とそれなりの住宅街、市場。少し目を凝らせばそこに見えるのは御伽噺の中の様な城。
西側には海があり、その向こうには大陸の影。
間違いない。わたくしがいるこの世界は全体に、前世やっていた乙女ゲーム『翡翠色に恋して』の世界なのだ。

13日前 No.9

白兎 紡 ★Android=nAzaus8m3z

乙女ゲーム『翡翠色に恋して』。
主人公である子爵令嬢エルメラはとある事件から伯爵の養子になり、パーティーに出席する。
そこで出会った3人の貴族令息、第二王子と恋を繰り広げる──という、内容自体はよくあるゲーム、なのだが。
翡翠色に恋して──略してエル恋──の中にも悪役ポジションの人物はいる。
それが第二王子の婚約者、マルセア・ペリド・アルローズ。愛称マリー。蒼薔薇姫と迄呼ばれる彼女は自身の婚約者を取られた嫉妬心からエルメラをいじめ、挙げ句の果てに卒業パーティーで王子アルバントにその事を叫弾され王族不敬罪で処刑、というルートを辿る。
まあつまり、私は俗に言う悪役令嬢に転生したのです。
(確かマリーがアル様と婚約するのが12歳……)
だとすれば後2年。……かなりギリギリだな。
「……うし、頑張れ私!」
後の未来にかけて、処刑ルートは回避しないと!

12日前 No.10

白兎 紡 ★Android=nAzaus8m3z

処刑ルートを回避するために、まずは周りから固める事にした。このアルローズ領内の視察である。
現領主──私のお父様、ドルトムント・ペリド・アルローズ公爵が経営する領は王都の近くという事もあいまってか比較的平和だ。だがそれは私の主観の話。
何か諍いが起きているかもしれない。それを解決してしまえば処刑の可能性も少し減る………かも。
だが……
「……現実はそう甘くないんだよね………」
よく言えば果敢に、悪く言えば何も考えずに行きかけた所で我に返った。
それはそうである。10歳の小娘がだだっ広い公爵領内を視察した所で何が出来ようか。
元から打算と下心たっぷりの案だったが更に駄目な気がしてきた。
「はぁ……ターニャ!紅茶を持って来てくれない?」
「かしこまりました」
その時私は考えもしなかった。実の父が宰相の仕事のせいで私を見るだけで「何でも言って」というのを──

11日前 No.11

白兎 紡 ★Android=nAzaus8m3z

わたくし──マリーには、2人の兄がいる。
長兄は近衛騎士。このペリドット王国の中でも5本……否、2本の指に入る強さを誇る。
次兄は魔法師団の副団長。池の水を一瞬で蒸発させる火力の魔法から自動戦闘人形(オートマタ)を創造する魔法等、何でもありとしか言えない人。まあ極大魔法をぶっぱなす方が好きらしいけど。
そしてお母様──クロニカ・ルシア・アルローズは『北東の壁』と迄呼ばれるアルケミス侯爵家の令嬢である。因みに北東は『北東』ではなく『北(と)東』という意味だ。
で、お父様は宰相。何が言いたいかというと………
(………権力ありすぎじゃないっすか、うち)
ターニャが淹れてくれたレモンティーを飲みつつ考える。美味しい。
現在宰相仕事中のお父様をお待ちしてますマリーです。
お父様は毎日帰っては来るものの、いつも帰りが遅い。前世でいうならようやく単身赴任から帰って来る父親を待つ娘、という感じだろう。
「…!お嬢様、旦那様がお帰りに」
「あら本当に?ありがとう」
そして私はお父様を迎えに行った──。

11日前 No.12

白兎 紡 ★Android=nAzaus8m3z

「お帰りなさいませ、お父様」
「………ああ、マルセアか。ただいま」
お父様は前言ったように宰相の職に就いている。
大陸で2番目の国土を誇るこの国、ペリドット王国の宰相なので当然忙しい。
だがお父様も公爵位。いい意味で時間と御給金に見合わぬ仕事をしているそうな。
「お疲れでしょう?最近ハーブが取れたのでハーブティーでも淹れますよ」

因みにハーブティーは記憶が戻る前からマリーが淹れている。レモンティーとかフルーツ系は苦手だけど。
「………」
「…お父様?」
「そういえば、マルセアはもう少しで誕生日だったな」
「へ?あ、はい」
確かにマリーは後一週間程度で誕生日だ。暦の上で言えばまだ9歳なのだが、ずっと10歳と言っていたのもこのためだった。
「クロニカとも話し合ったのだがいいものが見つからなくてな。何でも言っていいんだぞ」
「ま、……!?」
危ない危ない。思わず「マジで!?」と言いかけた。
……ん?これはもしかすると………
「……お父様、何でもいいんですね?」
「ああ、何かあったか?」
「では、」

「わたくしと遠乗り(デート)に行ってください」
…………おかしいな?今変な注釈が……?

11日前 No.13

白兎 紡 ★Android=nAzaus8m3z

「…………そんな事でいいのか?」
お父様の第一声がそれだった。幸いにも注釈は聞こえなかったらしい。
「ええ。わたくしの上にお兄様がいるとしても自分の住む領地です。領民が不満を持つ、とまではいいませんが見ておきたい物なのです」
そしてあわよくば諍いの解決を…!
と思いながら(多分)曇りなき眼でお父様を見る。
もともと大して主張する事のなき娘からの上目遣い!これで落ちない父親がいるものか!
「……それに、お父様が遠乗りで少しでも疲れを癒してくれればと………」
やったーー!やりましたマリー選手!懸命に父親を気遣う娘アピールです!
「……わかった、行こう」
「!本当ですか!ありがとうございますお父様!」
案の定お父様は許してくれた。やったね!

11日前 No.14

白兎 紡 ★Android=nAzaus8m3z

さて。
いくらお父様がチョロインだとしても遠乗りに行くのは5日後。それまでに色々と準備をしなくてはならない。
夕食を食べ終えて自室に戻った私は、日記……代わりのノートを持ってきた。因みにこの世界にも普通に紙はある。だが結構高い。
「んえーと、タイトルどうしよ?『蒼薔薇の』……」


◆□◆□◆

結局タイトルは『蒼薔薇の蕾について』になった。これなら見つかっても趣味の研究ノート程度にしか思えないだろう。
私はそこに前世の記憶、エル恋についての内容等を書き記した。
エル恋が始まるのが貴族学園3年生──マルセアが17歳の頃。7年間で前世の記憶がくっきりと残っているはずがない。
もしかするとエルメラが転生者、という可能性もあるかもしれない。だがそれはごく僅かの可能性。
「………とりあえずその事を念頭に置くか?」
──その後、日記に書いていた文字だけは、「私」の心に入れておこう。

10日前 No.15

白兎 紡 @tumugi17 ★Android=nAzaus8m3z

「んー、ふえらっしょ……」
背筋を伸ばしたら変な声が出た。周囲に人が居なくて良かった。
こんにちは。午後2時(因みにこの世界では2時間周期で鐘が鳴り、それで時間を計る)にハーブを取りに来ていますマルセアです。
まあ取りに来たと言っても公爵邸の裏にある薬草園に、なんだけどね。
公爵邸から少し離れてはいるが近くに村があるので大して心配はない。お父様はかなり心配していたが。
「お父様も心配症が過ぎるよねー、と。ローズマリーローズマリー」
薬草園には様々な種類の薬草がある。これ自身はお母様の趣味だ。
ローズマリー、レモングラス、ジャーマンカモミール。
今日はこの3種類を使ってポプリを作ろうと思う。
それぞれわかるように布の色分けをして、ジャーマンカモミールは余ったらお風呂に入れる。
「えーと、作り方は覚えてるよね?これも蕾に書いとこ」
3つ並べたら可愛いかも、と思いながら薬草園を後にした。

10日前 No.16

白兎 紡 @tumugi17 ★Android=nAzaus8m3z

「ふー……おっしゃやるか!」
作り方をおさらいしながらやっていきます。
その1、乾燥させる。これは風魔法で時短する。
「つーかこの世界にも魔法あるのか……ウェントゥス!」
因みに今使った魔法は風の初級魔法。貴族学園ではここら辺も学んで行く。
閑話休題。乾ききったな!
その2。瓶や袋に材料とエッセンシャルオイルを入れる。
今回はお裁縫の勉強で習った小袋に刺繍した物を使う。そしてエッセンシャルオイルは……
「………んー、ハッカ水で代用しよ」
ハッカ水はハッカから出た水分の事。今回はそれを代用しよ。
その3。密閉して熟成。これは本来4週間かかるが、熱魔法で時短。壺の中に入れて熱する。
で、
「完成〜!」
なんということでしょう。1ヶ月以上かかるポプリ作りが僅か3時間でできてしまいました!

8日前 No.17

白兎 紡 @tumugi17 ★Android=nAzaus8m3z

作ったのは4種類5個。
ローズマリーのポプリ、レモングラスのポプリ、ジャーマンカモミールのポプリ。あと香りの相性がいいローズマリーとレモングラスのポプリを作ってみた。
で、だ。
「作ったのはいいけど……飾るだけはもったいないよなー」
可愛いけどもったいない気がする。
(でもだからといってお兄様にわたすのも……あ、)
「リシーにわたすのも手、かな」

◆□◆□◆
リシェラ・ウィーン・ライブラリアン。
先祖代々王宮司書の役目を果たし、【神を視る眼】を持つと迄言われるライブラリアン侯爵家の令嬢である。
私の親友でありその白銀の髪から『白百合姫』と呼ばれている。まあ知り合い以外には冷たいので『ゼンマイ仕掛けの銀百合姫』とも呼ばれるが。
そんな彼女はかわいらしい物を大層気にいっている。このポプリがリシーのお眼鏡にかなうかが問題だが、まあ大丈夫だろう。
「ターニャ。明日リシーの家に行くわ。準備してくれる?」
「かしこまりました、お嬢様」

7日前 No.18

白兎 紡 @tumugi17 ★Android=nAzaus8m3z

と、言うわけで時は過ぎ。
「久しぶり、リシー」
「…………………はぁ……」
リシーの家に行けば盛大なため息をつかれた。解せぬ。
「どうしたのリシー。北の山より高いため息なんか出して」
「…………そこで海じゃなく山に行く貴女のセンス、私は好きよ」
「そんなに誉めないでよ照れる〜!」
「お世辞って言葉を学びなさい」
大体いつもこんなノリだ。R-1ならぬ令嬢-1グランプリ行けるだろう。
「……で?用件は?」
「あ、忘れてた。実はね!」
忘れて、の辺りで目からハイライトが消えてたが、根気強く事情を説明した。
「──で!これがそのポプリなんですが」
「ふーん……ん、いい香り。ローズマリー?」
「ローズマリーとレモングラス!」
そこまで言うとリシェラはふっ、と頬を緩ませた。
「………ま、いいんじゃない?……可愛くて」
「………ふふ、ありがとう」

6日前 No.19

白兎 紡 @tumugi17 ★Android=nAzaus8m3z

リシーの家を尋ねてから早数日。
今日は遠乗りの日です!
「わざわざありがとうございます、お兄様」
「なーに!大切な妹の頼みだからな!」
…………そう、お兄様、なんだよね。遠乗りするの。
お父様は急な仕事が入ったそうな。すんごく申し訳なさそうだった。
今回同行してくれるのは次兄のウルタリアお兄様。魔法師団の副団長であり、かなり色々ぶっ飛んでる人。この前池の水全部抜く(物理)ができると言った方だ。
極大魔法を打っ放す方が好きな男子だけど信頼はできる。信頼は。
「でも魔法師団の仕事は……」
「ん?今日は休みだったからな」
「……そう………ですか………」
なら何故長兄は仕事なのか。
「……ふぅ。では行きましょう、お兄様」
「ああ、私のマリー」

5日前 No.20

白兎 紡 @tumugi17 ★Android=nAzaus8m3z

まず向かった先はアルローズ領内にある小さな村、通称クルエラ村。田園地帯が多く、領の食糧庫の様な役割を果たしている。……所の郊外だ。
「一度ここに来てみたかったのです!」
「そうか?まあここには森や泉があるからな」
「ええ。特にその泉はとても綺麗、だ、と……」

ついたとたんに言葉を失った。
陽光が入り煌めく足元の草花。
絶妙なバランスで針葉樹と広葉樹が共存し、さぁ……と時々散りゆく──桜や梅の様な──花が美しい。
その桜吹雪の中に、泉はあった。
見事なエメラルドグリーンの水の中、底になにか光るモノがあった。
「あれは……」
「水の中でしか出来ない鉱物だ。見てみるか?」
「──………いえ、大丈夫です」
美しい、と思う気持ちはあれど、見てみる気にはなれなかった。
そう思うのは多分───

『私』と海香の【運命】のその日に、そっくりだったから。

4日前 No.21

白兎 紡 @tumugi17 ★Android=nAzaus8m3z

『くす……』
『クスクス………』
『クスクスクスクス……』
──ふいに、そんな声が聞こえた。少女の様に無邪気なのに、どこか残酷さを感じる、そんな笑い声が。
「──誰?」
私は思わず、声を出してしまった。
『ここにヒトの子が来るなんて』
『珍しい事もある物ね』
『しかも魂が混ざってる!霊力たっくさん!』
「っ!」
魂が混ざってる。
その一言から連想してしまった。『私(天音)』を。
「お兄様、──え?」
周りを見渡す。が、辺りにはお兄様どころか人影すらなかった。
(いつの間にっ……!)
『まあまあ』
『そんな警戒しないでよ』
『取って食べたりしないからぁ!』
声の数からするに、三人いるらしい。
「誰なの、と聞いています。姿を表してください」
声のする方を睨み付ける。すると、三人の少女が──少女?
『呼ばれて来ました!』
『あら、間抜けな顔』
『どーだ!驚いたか!?』

next:聖別なる第三の地平線

3日前 No.22

白兎 紡 @tumugi17 ★Android=nAzaus8m3z

第二章 聖別なる第三の地平線

そこにいたのは、三人の少女だった。……蜻蛉の様な羽を生やした。
「………………は?」
『ふふ、驚いてるよ、モーデ!』
『間抜けな顔だと思わない?イアル』
『あっはは!綺麗な子だね、プライ』

上から順に、朱色の髪をお団子にまとめた緑色の羽の少女、群青色の髪をポニーテールにした藤色の羽の少女、金髪をおさげにした栗色の羽の少女だ。
「…………あの、あなた達は?」
『あ、ごめんなさい!私はプライ!で』
『私がモーデよ』
『イアルでーっす!妖精さんだよ〜!』
「妖精…!」
一応エル恋にも【妖精】という種族の事は描写されていた。
神聖な【精霊】と違い、森や泉、鉱山などにいる、いわば付喪神の様な存在。
ある者には永遠の富を与え、しかしある者には不滅な災厄を呼び覚ませる──気紛れな『なにか』。
どうやらこの──朱髪がプライ、ポニテ少女がモーデ、おさげがイアル──三人の妖精は、そんな舌先三寸な者達らしい。

3日前 No.23

白兎 紡 @tumugi17 ★Android=nAzaus8m3z

「──………とりあえず!お兄様の所へ返してください」
我に返り願う。だが三人はそれを許可しなかった。
『え、無理』
『私達も妖精だし』
『女王(めおう)の命には逆らえないのー』
「………女王?」

*◆*◆*
(主にモーデから)話を聞くに、女王とはこの世界にいる全ての妖精の長らしい。
『……で、女王に目を付けられたのがあなた』
「ええ……」
…………いや、そもそもなんでだよ。

2日前 No.24
切替: メイン記事(24) サブ記事 (33) ページ: 1

 
 
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