Google
    
<< TOPページ 掲示板TOP 記事データ お知らせメール ▼レス(5) >>

君の手のその温もりは。

 ( 小説投稿城 )
- アクセス(122) - ●メイン記事(5) / サブ記事 - いいね!(2)

バームクーヘン ★JQFhhXi9W5_xSr

これは、ある少女の恋のお話。
少年と繋いだこの手。暖かかった少年のあの手。
二人は必死に手を伸ばし、お互いの手を掴もうとする。
・・・届かない。
少し切ない恋のストーリー、ぜひ読んでください!
始まり、始まりー。

ページ: 1


 
 

バームクーヘン ★JQFhhXi9W5_xSr

「ねぇ、手繋ごうよ」
  私がそういって差し伸べた手を、あなたは優しく包んでくれた。
   「手、暖かいね」
    あなたは私の手をギュッと握ってそう言った。
     ねぇ、あなたは覚えてる?私たちが初めて手を繋いだあの日のこと。



あれは確か、3年前のこと。私が高校生だったころ。
私は授業に遅れそうになり、1人で必死に廊下を走っていた。そのときだった。
ガシャン。
近くで音がしたのでチラッとそちらに目をやった。・・・自動販売機。
誰かがココアを買い、ココアが自動販売機から出てきたときの「ガシャン」だった。
買った人の顔を見てみると・・・目が合ってしまった。なんとなく先輩っぽい。
私は走っていたがゆっくりと歩き、そして止まった。沈黙が訪れる。
プシッ。
ココアを買った男の人は、缶を開けて、ごくごくとココアを飲み始めた。その間もずっと目が合っていた。
「あの、どこの中学校出身ですか?」
頭の中で何か考える前に、言葉が口をついて出た。
その男の人はココアを飲み干して、缶をゴミ箱に投げ入れた。そして首をかしげる。
細くて鋭い目だったが、逸らしたら負けだと思い、じっと目を見つめていた。すると、しばらくしてこういった。
「紅葉第三中学校だよ。・・・何で?」
私は少しがっかりした。すごく見たことのある顔で、絶対にどこかであったことあると思ったのに。紅葉第三中学校なんて聞いたこともない。
「ううん・・・すごく見たことのある顔だから、聞いてみただけですけど。私たちどこかで会ったことありませんか?」
その人は困ったように首をかしげる。それからゆっくりと口を開いた。
「・・・私はあなたのこと知らないね。気のせいじゃない?・・・それより授業は?」
私はハッとした。すっかり授業のことを忘れていた。時計を見ると、10分過ぎている。
私が時計を見て焦っていると、男の人はフンッと鼻で笑った。
「えっと、どうしよう。そ、それじゃあ、授業行って来ます!」
「はい、いってらっしゃい」
私は男の人に背を向けて走り出そうとした。が、すぐにブレーキをかけた。
そしてパッと振り返る。男の人は私を見て、また首をかしげた。
「私、雨宮 紫咲っていいます。好きなものはバームクーヘンです」
私はそれだけ言うと、教室まで全力で走った。

7日前 No.1

バームクーヘン ★JQFhhXi9W5_xSr

この投稿はフィルタされています。表示するにはアカウントにログインして下さい。

6日前 No.2

バームクーヘン @applepie10 ★JQFhhXi9W5_xSr

みんなでわいわい騒いでいたときだ。
「あの、1年4組の渡邊です、よろしくお願いします・・・」
消え入りそうな声がした。そしてまた沈黙。
「あ、ごめんね!すっかり忘れてたね、ごめんごめん、よろしく」
部長がそういうと、ほかの先輩も謝りだした。私も謝る。
一緒に来たのにこの子の存在を忘れていた。
「い、いえ、全然気にしてないですよ、大丈夫です」
渡邊さんは顔を赤くしてそういった。
その時、
「下校時刻です。顧問のいない生徒の活動は終わりです」
放送が校内に流れた。先輩たちが顔を見合わせる。
「・・・よっしゃあ!ってことで、私はゲームしたいから早く家に帰るよ」
富岡先輩はそういって、走って部屋を出て行った。
部長がため息をつく。
「はぁ、あいつなんだし。ごめんね、1年生ちゃん、頼りない先輩ばかりで」
その日の帰り、私は鼻歌を歌って帰った。
・・・青春の高校生活、期待してもいいかな。

5日前 No.3

バームクーヘン @applepie10 ★JQFhhXi9W5_xSr

それから毎日部活に行くようになった。部活のために学校へ行ったといっても過言じゃない。
4組の渡邊 華と一緒に、今日も部活へ向かっていた。
「紫咲、テスト2週間前だけど部活行くの?帰らない?」
「うん、部活動停止ってテスト1週間前じゃん」
華は腑に落ちない感じだったが、私はそんな華を無視した。行きたくないなら行かなければいいのに、華は来た。
7階の部屋には富岡先輩しかいなかった。ドアを開けると富岡先輩はパッと顔を上げ、嬉しそうに笑った。
その不意の笑顔にドキッとしてしまった。富岡先輩ってすごく可愛い。
この前も華と、部活の先輩が可愛いという話で盛り上がっていた。
「いやぁ、よく来たね、テスト前なのに。今日は2年生、おれだけだよ」
「・・・そうなんですか」
華が富岡先輩にボソッと返し、富岡先輩は歌い始めてしまった。
「星空の下で咲く花は」という切ないラブソング。私が大好きな歌だ。
「君の隣で、星空の下で、君の笑顔を見ていたいんだよ♪」
富岡先輩がそう歌った。
すると、華も急に歌いだし、2人の声はきれいにハーモニーを奏でた。サビの切なく盛り上がるところで少し音程をはずしていたが、とてもきれいだった。
最後の「君色に染まった青春の1ページ」という歌詞の2人の生み出す音に、鳥肌が立った。
歌い終わると、富岡先輩と華は顔を見合わせた。2人とも目がきらきらしている。
華は恥ずかしそうに顔を赤くして笑った。
「・・・すごいねぇ!すごい歌うまいね、どうやって練習してるの?」
感心した富岡先輩は興奮気味に、華にいろいろと質問した。
華はその質問一つ一つに丁寧に答えていく。
「頬を膨らませずに風船を膨らませるっていう方法を中学校の合唱部で教わりました。えっと、なるべく温かい息を入れることを意識します。そのときに、腹式呼吸が出来ているかどうかも確認します。そうすることで、声の響きもよくなるし、安定した声も出るようになるらしいです」
ハキハキとわかりやすく要点をまとめて話していく華を見て、憧れの気持ちを抱いた。私もこういう風になりたい。
そのために練習は不可欠だ。
私は1人でボイストレーニングを始めた。

5日前 No.4

バームクーヘン @applepie10 ★JQFhhXi9W5_xSr

その日からちょうど1週間後だった。テスト前で部活動停止になるので、この日がテスト前最後の部活だった。
忘れもしない、5月20日のことだ。
学級委員を務める華は部活に遅れるらしく、私は1人で部屋に向かった。部屋には、いつも通り、富岡先輩しかいなかった。
「あ、来たー。ねぇねぇ、バームクーヘン食べない?」
富岡先輩は私が部屋に入ったとたん私のほうへ走ってきて、バームクーヘンを差し出した。
「あ、ありがとうございます!私、バームクーヘン大好きなんですよ」
「うん、知ってる」
私はバームクーヘンから目を離し、富岡先輩の目をじっと見た。
・・・もしかして私が先輩に自動販売機で言ったことを覚えていてくれたのかな。そうだったら嬉しい。
先輩は私から目を逸らそうとせず、2人とも長い間見つめ合っていた。
細くて鋭い目。強い目力。まっすぐな視線。・・・さすがに見つめ合って沈黙は気まずい。
「・・・えへへ。バームクーヘン、いただきます」
結局、私が目を逸らしてしまった。
「え、今食べるの?」
「はい、今日私、お昼ごはん食べてないんですよ」
私がそういいながらバームクーヘンを口に含むと、富岡先輩は自分のバッグから大量のお菓子を取り出した。やっぱりこの先輩、変人だ。
お菓子だけでなく、パンやおにぎりも大量に出てきた。その中から1箱、おいしそうなクッキーを取り出した。
「いやぁ、このクッキーおいしいんだよね。おすすめだよ、食べて」
私は先輩にお礼を言ってクッキーを受け取る。その時、先輩の手が私の手に触れた。
ドキッ
全身に電流を流された気がした。心臓が急にバクバクし始める。先輩の目を見ると、さっきと同じようにじっと見つめ返された。
あ、熱い。顔が熱い。熱が出たみたいになってる。どうしたんだろう、私。
私はパッと先輩から目を逸らし、クッキーをバッグに入れた。
「ごめんなさい、そういえば今日バイトでした。先に帰りますね」
本当はバイトが休みの日だったが、嘘をついた。
「はいはーい」
私は返事をした先輩をチラッと見て、ドアに向かった。
すると、
「この学校アルバイト禁止だけど、がんばってね」
ニコニコして私がドアを開けるのを待つ先輩が、そこにいた。
「はい、お先に失礼します」
「お疲れ様ー」
私はゆっくりドアを閉め、急いで階段を駆け下りた。
ドキドキする。手が触れただけで。先輩が。頭から離れない。頭から。先輩の声が。聞こえる。聞こえる気がする。先輩の目が。思い出される。先輩の声が。目が。言った言葉が。また富岡先輩の声を聞きたい。目を見たい。次は何はなそうかな。次はなんていうかな。先輩ってちょっとだけ変人だからなんていうか想像できないや。
・・・ドキドキして、思い出すと口元が緩んでしまうのに、なぜかモヤモヤする。この気持ちは何、何、なに――――
――――これが「恋」なのか。
5月20日、この日私は初めて恋をした。

5日前 No.5
ページ: 1

 
 
<< TOPページ 掲示板TOP 記事データ お知らせメール ▲ページ上 >>
★必ず ローカルルールメビウスリングのルール をご覧ください。
 ▼スタンプ▲スタンプ
※スタンプはいちどに 3個 まで使えます  ×閉じる
注…感想・コメントはこの記事ではなく、サブ記事に書き込んでください。(小説カテゴリでは必須です)