Google
    
<< TOPページ 掲示板TOP 記事データ お知らせメール ▼ページ下 >>

三人目の容疑者

 ( 小説投稿城 )
- アクセス(116) - ●メイン記事(0) / サブ記事 - いいね!(0)

呉羽 ★KaNgl9P5Zs_keJ

「・・・ここは、どこだよ。」

右に広がるのは、茶に色づきつつある稲の植えてある棚田。
左は住宅。民家といったほうがしっくりくるくらいの古そうなつくり。
そう思ってしまうのも、先ほどまで設備の整った室内にいたせいだろう。
そう、先ほどまでは設備の整った高校内にいたはずなのに。

「何があった。俺は、何をしてた・・・?」

柱にぶつかったな。それだけだ。
もし、ここが俺の知らないどこかであったり、俺がいた高校の昔の場所だったりしたら。
タイムスリップしたということになったり、するのだろう。
だとしたら、その仕方が安直すぎる。
幼いころからもう一つのヴァーチャルという世界を見てきた俺にとって、こういった状況に若干の高揚感を覚えないでもないが、何せそのやり方というものが安直すぎて。

「佐々木 香矢。十七歳。好物シチュー。」

唐突だとも思ったが、こういう時は自分がどれほどの記憶を持った状態なのかを確認するのが一般的な行動だろう。
あくまで持論ではあるのだが。
しかし、異世界にしては田舎すぎるし現実味がありすぎる。
涼しくなってきた秋の風が吹く。
稲が掠れあい音を立てる。
暑くも寒くもないのが有難い。どうやったら帰れるのか見当もつかない。こともない。
何か柱にぶつかったとして此処に来てしまったのならまたぶつかればいいのでは、とこれこそ一般論を自分に持ち掛ける。
近くに電柱は山ほどある。やろうと思えばいつでもやれる。
しかし、そんな傍から見ると不審な動きであることを解っている行動を起こすのには思ったより勇気がいる。
よくアニメなんかである効果音やらが出てくれるのなら弱化やりやすくなると思うが、なさそうだ。
いや、もしそこで効果音が出てくればここが異世界であることが証明できる。
出てこなければ現実世界。
原始的な方法だと思うが、若干パニックを起こしている俺の頭ではそれよりいい案が思いつかない。
やってみるしかない。

「・・・誰も、いねぇよな。・・・っ!」

大分、痛い。
全力でやったら頭が割れる。
流石にそこまで俺も馬鹿じゃない力を抜いてやってみたが、痛い。
ただ、効果音やらhpゲージやらが出なかったということは、ここが現実世界と思ってもいいのだろう。
だとしたら次の問題が出てくる。
俺が今いる此処が秋だということしかわからない。棚田もあるから日本だろう。田舎の。
どこかに何かあればいいのだが。
そうだな、地図とか。
俺がまだ若干痛む頭を棚田のほうにむけると、上から三段目くらいのところに女の人が立っていた。
顔は良く見えない。ただ、こちらを見て佇んでいるところからして、先ほどの奇怪な行動を見られたのだろう。
これがゲームで俺が主人公だとしたらあの女性はヒロインだろう。
最悪な出会いだな。その場合。

「あのー、大丈夫ですかー?」
「え、え、あ。大丈夫ですー!」

いきなり叫ぶとは。新手のヒロインだ。
俺の声を聴いてからすごい勢いで登ってくる。
その迫力に物怖じしてしまうが、とりあえずその場で待つことにした。
肩までの茶色の髪をひとくくりにした女性だった。
特別美人というわけでもないが、整っている、とは思う。

「びっくりしましたよ。いきなり頭打つんですもん。腫れたりしてたら困るんで、家にいらしてください。」
「え、いや。いいですよ、そんな。」
「見ない顔ですね。旅ですか?こんな田舎で。」

俺の言葉は綺麗に無視され、女性は軽やかに歩き出した。
旅、というわけでもないし、自分でもわからない状態でここにいるために説明のしようがない。
女性には申し訳ないが、黙っておくことしかできない。
そのまま無言が続いた。
女性は俺の言葉を催促したりしなかった。有難いが申し訳ないとも思う。
すると、いきなり後ろを振り返った。
坂の真ん中で止まったため、俺は女性を見上げる形になった。

「貴方、もしかしなくても。境繰にあったの?あ、答えたくなかったらいいのよ。私がそう思っただけ。」

境繰?
聞いたことないワードに首をかしげるが、女性は先を言ってしまう。
黙っていてもいいのだが、何か行動を起こさなくてはイベントは起こらない。

「境繰って、何ですか。」
「境繰って言うのは、昔から伝わる伝説みたいなものでね。時空の境がたまに、繰神様によって曲げられてしまうの。それで、全く知らないところに連れてこられる。」
「神隠し、みたい。」
「神隠し?私はそっちのほうが知らないわ。貴方やっぱり境繰にあったのよ。」

俺は、とてもやばいところに来てしまったらしい。

ページ: 1

 
 
<< TOPページ 掲示板TOP 記事データ お知らせメール ▲ページ上 >>
★必ず ローカルルールメビウスリングのルール をご覧ください。
 ▼スタンプ▲スタンプ
※スタンプはいちどに 3個 まで使えます  ×閉じる
注…感想・コメントはこの記事ではなく、サブ記事に書き込んでください。(小説カテゴリでは必須です)