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パラサイト・ワールド  side.S

 ( 小説投稿城 )
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MK マッチー @11777 ★i04XIsqV4q_iBP

___これは、私の物語。

「ふぅ、危機一髪だったな」

助手席の男が、安堵した表情で呟いた。

「そうね。でも何とか乗り越えられたのは、あんたのおかげよ」

私の言葉に分かりやすく口を緩ませ、ニヤける。ちょろい男だ。

「それで、これからどうする?」

私はハンドルをさらに握り、アクセルを強く踏む。

「決まってるでしょ、探し出すわ。例え地の果てまで行こうとも」

そう、これは私の物語。

兄を捜す物語___




『どうも皆さん、初めましての方もそうじゃない方もクリック陳謝!
察しのいい方、お分かりでしょう、そう!また続編です!
いや〜楽しくなってしまいました〜。小説作り。まだまだまだ粗が目立つかもしれませんが、どうぞご容赦を(笑)
初めての方にストーリーを説明しますと「寄生虫研究の第一人者となった近未来の日本」という設定です。
一作目の裏側の話になります。もう一つの物語、と言っても過言じゃないかもしれません。
そういうことでグロ系サスペンスな小説になります。苦手な方はお勧めしません。

記事メモにはキャラ紹介と話数を、サブ記事には感想、質問、アドバイスや提案等がありましたら
お載せますのでよろしくお願いします。
後モンスターやクリーチャー等の分かりづらい描写は絵を載せたいと思ってるんですが、
全然機能を使いこなせない状況です。
何とか頑張って文章で分かりづらくならないように勤めていきたいと思います!
では最後にまたコレを言って終わりましょう。
※この作品はフィクションです。実在の人物、団体、事件などには関係ありません。』

メモ2018/09/03 18:33 : MK マッチー @11777★i04XIsqV4q_iBP

第1話『もう一人の山田』(>>1-10


・登場人物

主人公:山田 桃花(やまだ ももか)

準主役:ディーン 及川(おいかわ)


・政府

鬼塚 防衛大臣


・クリーチャー

ノーミン:

 ノミとダニ(顔ダニ)を合成した寄生生物。寄生虫の研究過程により造り出された生物兵器。

 容姿は普通のノミと似ているが、頭と目が肥大化し目は赤く光り、口は蚊の注射器の様な口に。

  前脚はそれぞれ2本となり、人間のように5本の指が出来、後脚は大きく発達し歪曲し、背中は蝉のような甲羅。とても長い尻尾まで生えた、

 人間の握り拳くらいの大きさのある灰色の寄生虫。寄生菌なるもので寄生した対象に細胞レベルで変異を促す。

ヒューミン:

 ノーミンに寄生された人間の成れの果て。

 丸い大きな赤い目に、蚊の口ようなを針を鼻の付け根から生やし、鋭い鉤爪を持つ灰色模様で、ノミの足を持ったこの世のものとは思えない容姿をした、

 人の形をした何か。ピョンピョン飛び跳ね呻きながら人を襲う。

切替: メイン記事(14) サブ記事 (1) ページ: 1

 
 

MK マッチー @11777 ★i04XIsqV4q_iBP

序章 __あの日のプロローグ__

携帯が鳴っている。

ベッドの傍にあるナイトテーブルに手を伸ばし、目覚まし時計を持ち上げて時刻を確認。午前四時を少し過ぎていた。
こんな真夜中に、いや早朝と言うべきだろうか。とにかくこんな中途半端な時間に電話をして来る、非常識な愚か者は一体誰かしら。
セールスではない事は明らかね。クレイジーな商法で電話勧誘をしているのではない限り。もしそんな会社があるなら逆に褒めてあげたい所よ。

取りあえず私は文句の一つでも言う為、即座に起きて携帯を無造作に掴む。
即起きられたのは私の脳髄が、既に冴え渡っていたからだ。
それというのも昨日の九時にはベットに入っていたから、充分な睡眠はあらかたとれている。

いつからかは分からないがテレビ番組が、等しく退屈だと感じるようになった。内容がではない。
打算と媚びが入り交じった、こすっからい根性が透けて見える笑顔を、見るのが耐えられないのだ。
その場限りで一時的な偽りの笑顔の仮面。目の奥に光が無いにも関わらず、相反する笑い声を上げるタレント達が不気味で仕方ない。

笑い声は雑音にしか聞こえない。雑音など耳障りなだけだ。耳を塞ぎたくなる衝動に駆られる。
人々の歓笑(かんしょう)に嫌悪感を抱くと、私は寝ることにしている。寝る事でしか私の心は癒されない。
そんな至福な時間を邪魔をするのは誰か、携帯のディスプレイを見る。

見てギョッとする。

表示されているのは、半年前に別れた彼氏の名。
今更なんなのかしら、まだ未練があるというの? どこまでも女々しい男ね。
しかし、女々しくはあったけれど、非常識な男ではなかった事だけは知っている。

彼のいいところを上げるとしたら、常識的な人間であるという点だけ。そこだけは褒めてあげてもいい。
ただし、枠にハマった常識的な男で面白みも欠片もない、退屈な男だった。
そんな彼からの電話。余程の事が起きたのかしら? 胸に一抹の不安がよぎる。

通話ボタンを押し耳に当てる。

「・・・何?」

心配しているのを悟られないよう、不機嫌なふりをする。天邪鬼な心。
二律背反な言動をする私は、テレビの向こうの嫌いなタレント達と大差ないわね。
自虐気味に口元を歪ませる。

「た、助けて!」

予期出来た筈の唐突な第一声に、面を食らう。
間抜けにも声がうわずる。

「え? きゅ、急にどうしたのよ?」

焦りと恐怖が混ざった様な口調が、電話口から聞こえて来る。

「お、俺・・・ぁぁあ、もう駄目だ。死ぬかもしれない」

『死』という言葉が鼓膜を揺らす。さすがにこれはただ事ではない。
うっすらとだが、電話の向こうからかすかに、サイレンに混ざり悲鳴の様な雑音が聞こえる。
一体何が起きているのか。

「ねぇ、落ち着いて。ゆっくりと説明して、何事なの?」

相手に見える筈のない、制止を促す手のジェスチャー。

「最後に・・・君と話せてよかった。ごめんね、さよなら」

「ちょ、待ってよ!」

ブツンッと切れる着信。

一体全体なんなのよ! 勝手に電話してきて言いたい事言うだけ言って、勝手に切るなんて。そんな男らしさはいらないわよ。
通話の終わった携帯を睨み付ける。もし可能なら電話越しで殴ってやりたい気分に駆られている。
腹立たしいから二度寝してしまおうかしら。

「・・・・・・目が覚めちゃったじゃない」

ベットから重い腰を上げ、パジャマ代わりの黒のネグリジェを脱ぎ捨て、クローゼットにあるYシャツに手を伸ばす。
気がかりだからあの街に戻る訳じゃないわ。久しぶりに兄に会いに行くだけなんだからね。
私は誰に言い訳をしているんだろう・・・ 寝ぼけているに違いない。

バカバカしくなった私はため息をつきながら、ブリックカラーのパンツを履く。
大きなあくびをしながら、部屋を出て行く。

___この時ののんきな私は、これから起こる運命を知る由もなかった___

4ヶ月前 No.1

MK マッチー @11777 ★i04XIsqV4q_iBP

第1話

・狩矢崎市 超高層マンションビル(駐車場)

ラジオ:『先月から相次いで狩矢崎市内で起こっている、女性連続失踪事件についてですが、
     昨日未明また新たに女性が失踪したとの事です。これで被害は12人に上る模様です。』

この街も物騒になったものね。

『続いては芸能ニュースです。なんと、今話題のあの女優に元カレ発覚です! そのことについて徹底討論・・・』

騒がれるのは一時的な期間だけ。犯人が捕まったというニュースが流れれば、次のニュースで話題がうつる。
そうして数日もすれば起きた事件など、誰もが忘れさる。そういうものだ。
当事者でない他人の集まりである世間は、一時的に同情こそすれど、その憐れみは永続的には続かない。

その場しのぎの同情なんぞに意味はない。ラジオを消す。
ため息をつきながら、私は兄の住む高層マンションを見上げる。

「いつ見ても摩天楼みたいな高さね・・・」

そしていつみても首が痛くなる。
黒のライダースジャケットをひるがえしながら、バイクから降りる。
兄はこのマンションの上階に住んでいる。我が兄ながら優雅なものだわ。

兄は直情的で少し子供じみていて、理想を語る青くささがあり、それでいて正義感が強く融通が利かない堅物。
そして極めつきがお人好しである事。この世の中じゃお人好しという印象が、プラスになるとは限らない。
困ったことに、兄にはそれが理解出来ないようだ。ほとほと呆れるしかない。

それでもなぜか兄には、女をたらしこむ話術があるようで、それなりに女達からの印象はいい。
そして恐ろしいことに、兄は無自覚なのである。モテているのかいないのかよく分からない。
ただの優男にしか見えないから余計に、不思議でならない。妹の私は複雑な心境だ。

腕時計を確認する。午前七時を過ぎている。この時間兄は、まだ寝ている頃ね。
兄の寝顔を見てもいいが、寝起きが悪い時があるため、うかつに起こす事も出来ない。
子供のように不機嫌になる兄は、いささか面倒だ。少し可愛いけど・・・

「時間を潰すしかないか」

この街には何の思入れもないが、帰省がてら散策でもしよう。
駐車場から出て、狭い裏路地を歩き、大通りへと向かう。

4ヶ月前 No.2

MK マッチー @11777 ★i04XIsqV4q_iBP

・大通り

丁寧に舗装された道路へと出る。
この時間は交通量が少ないため、東京の歩行者天国のように歩くことも可能だ。
もちろん、そんな事はしないわ。いつ暴走車が現れ、事故の被害者になりえるのか分からないのだから。

そう言ったそばから黒塗りの数台のワゴン車が、ぼ〜っとしてた私の横をすごい速度で走り抜いた。

「あっぶないわねぇ、何キロで走ってんのよ・・・事故るわよ」

案の定、事故が起きた。
最後尾に並んで走っていたワゴン車が、横からトラックに追突され横転した。
言わんこっちゃない。信号無視をすればどうなるかくらい分かるでしょうに。

なぜすごいスピードで走り、信号無視をしたのか、その答えがすぐに分かった。
横転したワゴン車の側面にKS社のロゴマークがある。
救急車のように他の車が、避けてくれるとでも思ったのかしら。大企業としての過信だわ。

一般男性:「おいおい、一体何事だ?」
一般女性:「事故よ! 誰か救急車を呼んで」
一般男性2:「警察にも連絡した方がいいんじゃねぇか?」
一般女性2:「すっごい事故・・・写真撮らないと。事故なう」

野次馬が集まってきた。

皆がスマホに手にしたりかかげる中、私は見た。
事故ったワゴン車の反対側から、子供が這いずって出て来た。
気付いたのは私だけなのか、誰も子供について言及しない。

そうこうしている内に、子供が走り去った。

「あ、ちょっと・・・・・・」

呼び止めようとするも、野次馬達が邪魔だ。
まともに人ごみの波をかき分ける事が出来ない。
そう思った直後。

ワゴン車が目の前で大爆発を起こした。

一般男性3:「た、大変だ! まだ中に運転手がいるんだろ!?」
一般女性3:「早く消化器を持って来て、火を消して!」
一般女性2:「リアル炎上なう」

野次馬達が消火活動を始めるけど、こうなった以上手遅れね。
子供だけでも助かっただけマシってものだわ。
まぁ、子供がいたという事実を知らない野次馬達には、気の毒だけど。

消火活動を野次馬達に任せて、私は事故現場を後にする。
行かなければならないところがあるからだ。
気が進まないけど・・・

元カレの職場へ

4ヶ月前 No.3

MK マッチー @11777 ★i04XIsqV4q_iBP

・KSコーポレーション 玄関前

歩いて30分ほどで、KS社の前に着いた。

その間、街を見渡してみてみたが、特段さほど変わった様子もなければ、目新しさも何もない。
進歩するでもく退化するでもなく、面白みも何もないただの街が存在するだけだ。
私が出ていったその日から、何の代わり映えのしない普通の日常がそこにはあった。

とにかく三本の大きな煙突の様な特徴を持った建物が、私を出迎える。
正式名称はKSコーポレーションで、寄生虫の研究で名を馳せ、世界中に支社を持つ大企業だ。
昔はさびれていたこの街も、この会社のおかげで飛躍的復興を遂げた。

だからなのだろう、その社長である黒田総一郎は、この街では神格化されつつある。
大恩ある恩人、偉業を成し遂げた研究者、成功の魔術師、街の救世主。
などのあだ名や異名を、この街ではよく聞く。もはや崇拝の域だ。

かくいう私の兄も、崇拝に近い感情を黒田に持ち合わせている。
このKS社に就職しようとするほどに、入れ込んでいて不安になる。
だが結局就職することは叶わず、兄は落ち込んでいたが、私は安堵した。

黒田は確かに礼儀正しく、とてもオシャレを気にする、渋い人だとは思う。
しかし、なぜかは分からないけど、目の奥に言い知れない狂気を孕んでいる気がする。
ただの杞憂であればそれでいいのだけども。

とにかく、兄が働こうとした会社の前にいて、この会社に勤めているのが私の元カレなのだ。

兄がKS社に就職しようとしていた時期、気まぐれに行ったバーでナンパをされた。
最初はシカトしていたけど、後でKS社の社員だと分かり、これは好都合だと思いナンパに引っかかってやった。

いつもなら常識的な彼とは思えない行動力だと思ったけど、その日だけたった一度だけの安易な男らしさ。
酔ってハメを外したのだろう。
酔いたい気分というのは誰にでもある。

私と付き合っていい思いをさせる代わりに、兄を会社に勤められるよう口添えをしてもらおうと、利害の一致で恋人関係になる。
兄を想って私なりの妹としてしたことだが、今思えばただの社員にそんな権限がないことくらい、考えればすぐ分かった筈だ。
たぶん、その時の私も酔っていた。だから短絡的な行動をしてしまったのね。

だからといって後悔はしていない。
それなりに貢がせ、それなりに潤ったから。損得勘定で判断するなら、メリットがあった。文字通り大儲けね。
世の中は金、とまでは言わないけど、無一文じゃ何も出来ない。

金が世界の一部よ。

4ヶ月前 No.4

MK マッチー @11777 ★i04XIsqV4q_iBP

「どうしてここにいるんだろ・・・」

冷静になってみると、どうして私はここに来ているのか。
私がここに来たからといって、何が出来るという訳でもないはずよ。
アポ無しでは上層部や、幹部クラスの人達とは会えなかったはずだが、社員はどうだったかしら。

受付けに行き、彼女ということで取り次いでもらう?
どんな顔して会えばいい? どんな言葉をかければいい?
心配したから来ちゃった?

現在進行形の彼女じゃあるまいし。
まるで私の方が未練があるみたいじゃない。
そんな恋する乙女みたいなセリフ、言える訳がない。

私のプライドが許さない。

そもそもあの電話は、酔った彼からのイタズラの可能性も捨てきれない。
よりを戻そうとした彼を周りがはやし立て、酒の力を借り電話してきた、とも考えられる。
そう考えると辻褄があう。

閑散としたKS社を見上げていると、それが真実なのではという、気持ちが強まる。
何かが起きていれば、警察や救急が来ているはずだ。
だが、どれだけ周囲を見渡してみても、それ関係の車は見当たらない。何かが起きた痕跡もない。

「みごと、釣られたってわけね」

自分に対する呆れのため息を吐く。
兄のマンションへ戻ろうと、踵を返し歩き始めた。

その直後、真後ろから爆発音がした。

振り返ると、KS社が黒煙を上げ燃えている。
そう思うのも束の間、次々とKS社の各所から爆発し、炎上する。
降り注ぐ細かい瓦礫から身を庇おうと、片手をかざす。

「な、何?・・・・・・一体何が」

4ヶ月前 No.5

MK マッチー @11777 ★i04XIsqV4q_iBP

その時、誰かが叫んだ。

一般男性4:「見ろ! 人が落ちて来るぞーー!」

野次馬が指差す方向に目をやる。

ガラスを割りながら、人が落ちてきた。
それも一人じゃない。
次々と燃え盛る室内から、何もない室内のガラスを割りながら、各所で人が落ちてくる。

2001年のアメリカ同時多発テロの時、火の熱さに耐えきれなくたなった人達が、ワールドトレードセンターから身を投げた。
そういう現象が起きていたと聞くが、今のコレもそういうことなのだろうか。
とにかく今、目の前で次々と人が落下していき、死んでいく。

いや、正確に言えば死んではいない。

まだ生きている。
すごい高さから落ちたはずなのに、すごい格好で地面に叩き付けられたはずなのに。
まるで痛覚を持ち合わせていないかのように、悠々と立ち上がり歩き出す。

一般男性5:「大丈夫ですか? 救急車を呼びましょうか? ・・・え」

心配した男性が落ちてきた人に近づいて声をかける。
しかし、その異様な姿に気付き凍りつく。

私も気付き、戦慄した。

ヒューミン:「・・・ぁ、ああ。ぉおお・・・・・・」

落ちてきたのは人ではなく、異形と化した何か。

目が大きく肥大化し赤色に光り、大きな鉤爪、折れ曲がった前脚、
蚊の注射器のような口に、口回りに生えた細かいヒゲの様なもの。
全身の体が灰色のまだら模様をした何か。

この世のものではない人外に、私は言葉を失う。

一般女性4:「え、何コレ。撮影かなんかなの?」

のんきなセリフが近くの野次馬からあがる。
一瞬だけ思考がブレる。撮影なのかもしれない、と。
もしそうならメイク技術がとても素晴らしい、と言わざるをえないが、何かが引っかかる。

一抹の胸騒ぎを感じたその瞬間。

一般男性5:「ぎゃぁああーーー!!」

異形のソレは男性に飛びかかり、地面に倒れさせ、注射器の様なものを首に突き刺し、男性を血塗れにした。
違う、コレは撮影なんかじゃないわ。
正真正銘本物の化け物!

一般女性4:「きゃぁぁあああーー!!」

落ちてきていた異形の化け物が、近くにいた女性を襲う。

一般男性4:「ち、近づくな! や、やめろ。来るなぁああー! ぐわぁああーー!!」

野次馬達が次々と襲われ、悲鳴がそこかしこから聞こえる。
私は走り出していた。この場から逃げなければ死ぬと、本能がそうさせるのだろう。
今回ばかりは私は本能に同調する。

見ると、私と同じように現場を目撃した野次馬達が、同じ方向に逃げている。
多数の人間が一方向に逃げれば、あの化け物達は追ってくるのではないだろうか?
そう思ったが、考えるのを止めた。考えている暇があったら足を動かした方が懸命だわ。

一分一秒でも早く、あの場から逃げなければ。
より遠くへ、もっと遠くへ逃げないと。

そして何より、この事態に気付かず今ものんきに寝ているに違いない、兄の元へ急がないと。
危機が迫っていることを、早く伝えないと!
兄のいるマンションへと、全速力へと向かう。

4ヶ月前 No.6

MK マッチー @11777 ★i04XIsqV4q_iBP

・大通り

兄のマンションの前の、事故現場へと戻ってきた。

「はぁはぁ、ぜぇぜぇ・・・ぅう、もう無理」

本来私はそんなに体は強い方じゃない。
走ればすぐに体がバテる。運動は嫌いだわ。ここまで来れば、すこし休んでもいいだろう。
肩で息をしながら、呼吸を整えるために立ち止まって、必死に酸素を貪り呼吸をする。

いくらか楽になってきた。

楽になってふと、思い出したことがある。
KS社から立ち去る際、三階辺りの窓際に私をジッと見つめる、人影を見た気がした。
ちゃんと確認したわけではないから、分からないがアレは一体なんだったのかしら?

考えにふけていると、後ろから肩を叩かれる。

「きゃぁ!」

驚いて勢い良く振り返って、肩に置かれた手を払いのける。

警官:「あ、驚かせて済まない」

目の前にいたのは恰幅の良い警官。ドーナッツが好きそうだなと勝手なイメージ。

「あ、いえ・・・・・・」

驚いた私に驚いたようで、少し申し訳なさそうに頭をかく。

警官:「しかしねお嬢さん、ここは立ち入り禁止なんだよ。事故処理が出来ないから、出て行ってくれないかね」

周りをよく見渡すと、事故現場には非常線が張られていて、数台のパトカーが停まっている。
数人の警官が事故車両に集まり、事故検分をしているようだ。燃えていたワゴン車は、すでに消火されている。
気付かなかったが、私の足下に非常線が落ちていた。

非常線を踏んでいるのもそうだが、事故現場に一般人の私がいては、仕事の邪魔なのだろう。
警官は威圧的こそではないものの、うむを言わさないような口調で、この場から立ち去るよう命令してくる。
普通ならこういう警官には、文句の一つや二つ言ってやるところだけど、そんな場合じゃない。

ぐっと堪えて、警官に向き直る。

「お、お巡りさん大変です! KS社が爆発して、化け物が襲って来たんです!」

自分で言って失敗した、と気付いた。
まだ私はパニクっているようね。
こんなトンチキな説明では信じてくれるはずがないわ。

警官:「分かった分かった、後で相手をしてやるから退いた退いた。」

案の定相手にされない。
訝しげな目で睨まれた後、邪魔な犬を払いのけるかのように、シッシと手を振られた。
もう一度落ち着いて説明をしようと、話しかけようとした。

その直後。

真横から突っ込んできた車に、警官が轢かれた。

「___!!__」

目の前で起きた衝撃的な出来事に、口を両手で押さえ、声にならない声で悲鳴を上げるしかなかった。
今、何が起こったの? どうして車が? 私も轢かれるところだったの?
警官を轢いた車が建物に突っ込んだ様を見て、疑問と恐怖が一気にこみ上げる。体が震える。

突如、別の車がパトカーに突っ込んだ。
そばで事故検分をしていた何人かの警官が、宙を舞った。
道路の地面に叩き付けられる瞬間を見る間もなく、パトカーもろとも突っ込んだ車が爆発炎上。

何が起きたのかを理解するための、脳が追いつかない。

さらに強烈な音がして我に返り、後ろを振り返る。
なんておかしな光景を見ているのかしら、車が空を飛んでいる。
まるで重力なんてなんのその。自分は鳥だと勘違いしているのかのように、自由に、そうとても自由に飛んでいる。

そう思ったのも束の間、空を飛んだ車近くの建物に突っ込み爆発した。

一般男性6:「誰か手を貸してくれ、人が車の下敷きになってるだ!」
一般女性5:「燃えてる車の中に、人がいるのよ助けて!」
一般男性7:「あああーーー!! 足が、俺の足がぁぁああ〜!」
一般女性6:「熱い、あつい・・・・・・たすけて・・・・・・」
一般男性8:「誰か、誰か妻を知りませんか? どこに、一体どこに・・・」
一般女性2:「世界の終わりなう」

次々と車同士が衝突しあい、人を轢き、建物に突っ込み破壊し、業火の炎を燃え上がらせる。
まさに地獄絵図。
いまこの瞬間、目の前にしている光景を表現するのに、これ以上の適した言葉が見当たらない。

間一髪爆破を逃れた車からは、例の化け物が這い出てくる。
近くにいた人を襲っていく。
迫り来る車から、化け物から、逃げ惑う人々。

「う、くッ! ちょ・・・・・・待って」

恐怖に駆られパニックに陥った人々の群れが押し迫り、私は人混みに流され始める。
集団の波に逆らおうと逆行を試みたけど、どんどん兄のマンションから遠ざっていく。
兄にこの事態を伝えないといけないのに! 会わないといけないのに!
進めない! 進むことが出来ない! 何も出来ないの?

兄のマンションの方向に手を伸ばす。

「に、兄さん・・・・・・兄さーーーーーん!!!」

私の叫びと思いは届かない。

4ヶ月前 No.7

MK マッチー @11777 ★i04XIsqV4q_iBP

・街の境目(狩矢崎市封鎖線現場)

この街は赤城山山脈の森林に囲まれた街だ。

この街へ入るには山脈の獣道、とまでは言わないが舗装されていない砂利道を、通らなければならない。
他の道を使って入ろうとするなら、一日以上の時間を費やすだけでなく、熊や山犬などの野生動物たちと出くわすリスクを負うことになる。

狩矢崎市へと続く街道はこの一本だけだ。
舗装道路と砂利道の境目のこの場所は、通称、街境と呼ばれる。
この街と外とを結ぶ唯一のライフラインだ。

私はこの街への始まりと終わりの果てまで流され、大勢の人波の中に私はいる。
とてもじゃないけど、人波をわけて逆戻りはできそうにないわね。

アナウンス:「こちら市役所です、非常事態が発生。非常事態宣言を発令中。市民の皆さんはお近くの、自治体、警察、KS社の指示に従ってください」

事の重大さを把握したのか、耳をつんざかん程のけたたましいサイレンが鳴り響き、繰り返しアナウンスが流される。

警官2:「皆さんゆっくりと移動してください。慌てずに指示に従ってください」
自治体:「ほらソコ、列を乱さない! ちゃんと並んで、避難訓練通りにやりなさい!」

避難指示を的確にこなす警察と市の自治体。
そしていつのまにやら巨大なバリケードが設けられている。出入り口を塞ぐ形でまるで検問のよう。
バリケードの壁の周りには金網の足場が設置され、銃などの武器を持った兵士の様な人達が見張っている。

「ん・・・・・・?」

迷彩柄のボディアーマーを着た兵士達の中に、場違いなスーツの男がいた。
注視すると、その顔には見覚えがある。テレビとかでよく見かける顔だわ。
防衛省の鬼塚大臣。ぴっちりとスーツを着こなし、白髪混じりの髪をオールバックにし、一本分の髪の束をおでこに出している。政界きってのオシャレ番長。

現役の閣僚がどうしてこんなところにいるの? 事故を聞きつけ駆けつけた? さっき起きたばかりなのに?
疑問が尽きず疑問符ばかりを頭の上に乗せていると、鬼塚は見られていることに気付いたのか、私と目が合い見下ろす。

どうにも彼を好きにはなれないのよね。
別段政治家に対して好き嫌いで判断している訳ではなければ、好感を持っている訳でもないけど。
だが鬼塚はとくに他の政治家とは一線を画して、信用が出来ない。あえて理由を述べるなら、目だ。

常日頃から感じていたことだけど、鬼塚が人を見る目は、まるでモルモットを見るのかような、蔑視の念を感じる。

一瞬の間を置いて、私から目を逸らした鬼塚は、近くにいた兵士に何かの指示を出す。
私も辺りを見渡す。この群衆から出なければならない。

4ヶ月前 No.8

MK マッチー @11777 ★i04XIsqV4q_iBP


どうにか出られないかと、四苦八苦していると、近くの男性が苦しみ出した。

青年:「た、助けてください! 父には心臓の持病が!!」

心臓の持病? 息子らしき青年が助けを求めているが、うめきを発する男性が抑えているのは、胸ではなく首よね。
心臓の発作なら押さえるのは胸であるはず。青年と父親との言動が一致しないことに、私は違和感を覚える。
そうこうしているうちにうずくまって苦しむ男性に、警官が駆け寄ってきた。

警官3:「大丈夫ですか? ゆっくりと息を・・・え?」

男性の肩に手を触れた警官が青ざめる。
顔を上げた男性は異形の化け物と化していた。

ヒューミン2:「ぉぉ、あああ〜」
警官3:「うわぁあああーー!!」

成す術もなく、警官はそのまま化け物に襲われる。

青年:「何をしているんだ! 父さん、やめてく・・・うぎゃぁああーー!!」

警官から引き離そうと男性を羽交い締めにした青年は、振り返り様に化け物の餌食になった。

一般女性7:「いや、いやよ! やめてぇー!」

襲われた警官は起き上がり、傍にいた女性を襲い始める。
警官は錯乱しているの? 目が血走っている。
いや、違う。赤色(せきしょく)に光っている。つまり警官も化け物になったのよ!

戦慄していると、襲われた青年は父親と同じ化け物になり、近くの人を襲い始めた。
青年の父親だった化け物も傍にいた人達を次々と襲っていく。

呆然としていると、突如近くから悲鳴が上がる。

一般女性8:「な、何よコレッ! いやぁああーー!!」

化け物に襲われたわけでもないのに、悲鳴を上げながらのたうちまわる。
何事かと女性の安否を気にした周りの人が、助けようと近づいた。
刹那、女性も化け物に変わり、人々を襲う。

私は見た。
化け物になった女性は、排水溝から出てきた手の平サイズの、ノミみたいな生物にくっ付かれた場面を。
その生物にくっ付かれた途端、女性は悲鳴を上げ変異した。つまりあのノミみたいなのが元凶?

ノーミン:「ギキー!」

考えていると、排水溝から次々と灰色模様の、ノミみたいな生物が這い出てきて近くにいた人々にくっ付つ。
案の定くっ付かれた人達は、悲鳴を上げた後化け物に変異。周囲の人々を襲う。
確定! あのちっこい生物がこの騒動の発端。そうとわかれば退治すれば何とかなる。

と思ったけど、衝撃的な跳躍力をみて断念。
悲鳴を上げ、逃げ惑う人々の群れからの脱出に、行動をシフトする。
しようとした直後、目の前の化け物と目が合う。

「ぇ・・・ぁ、ああ・・・」

あまりの恐怖に体が震え、足がすくむ。金縛りにあったかのように、一歩も動けない。
化け物が近づいて来る。恐怖におののく私は、成す術もなく殺されるのかな。
悲鳴を上げようと口を開きかけたその時、頭部を中心に化け物が蜂の巣にされた。

化け物は小さな悲鳴を上げた後、なさけない格好で倒れる。

何が起こったのか理解するのに数秒要したけど、銃撃されたのね。
金網の足場にいる兵士の方を向く。何人かの兵士が市民を守るべく、化け物達に銃弾を浴びせている。
助かったのね。安堵してホッと胸を撫で下ろす。

直後、足下の地面に銃弾がめり込んだ。

え? 何で? 化け物じゃないのに私が撃たれた?
銃が暴発したのだと考え、私を撃った兵士に顔を向ける。兵士は真っすぐ銃口を私に向け、引き金を指にかけている。
銃の動作は正常、ただ私を見る目だけが異常だった。となりにいた兵士が制止する。

兵士:「おい、何をしている! 一般人に当たるだろ!」
兵士2:「ううるさい、撃たないと撃たないと。怪物を殺さないと・・・・・・」

勘弁してよ! こんな時に錯乱なんて冗談じゃないわ。20歳にもならずに死ぬのは、さすがにごめんよ。
どうにかこの場から立ち去ろうと、言い争う兵士達とは反対側へ、体を傾けた。
そのとき、銃弾が頭をかすめ近くの壁に被弾する。銃弾が飛び込んだコンクリの穴はめくれ返っていた。

兵士:「いい加減にしろ、正気に戻れ! 一般人は怪物じゃない!」
兵士2:「放せ、放せぇええーー!! おま、お前も怪物の仲間か、敵かぁぁああ!!」

激しく掴み合いの取っ組み合いをする兵士達。
そのせいで兵士達は足場から足を滑らせ落下。錯乱した兵士はパトカーの、パトライトを壊す。
もう一人の兵士はボンネットにバウンドして、地面に叩き付けられる。その際拳銃が私の足下に滑って来た。

兵士:「ぅ、うう・・・」

安否確認をするまでもなく、幸いなことに兵士は生きている。私を助けようとした手前、見捨てるわけにはいかない。
倒れている彼のところまで駆け寄り、体を揺さぶる。そして私はすこし驚く。
切れ長な目、透き通った肌、立派な鼻筋、整った銀髪。俳優かモデルかと見紛うような、端正な美貌をもった男が目の前にいる。

えらいイケメンが空から降ってきた。

4ヶ月前 No.9

MK マッチー @11777 ★i04XIsqV4q_iBP

親方! 空からイケメンが!

なんて馬鹿なボケを、脳内に留めて、倒れた兵士に向き直る。
見たところ目立った外傷はない。ホッとして胸をなで下ろす。

いや、安心している場合じゃない。
三体の化け物が私達に気付き、近づいて来る。彼はまだ目覚めそうにない。
足下に落ちていた拳銃を握り、化け物に銃口を向ける。

彼は私を助けようとしてくれた。一応恩人ってことになるのなら、死なせるわけにはいかないわ。
目覚めるまで守らなくちゃ。
でも銃なんて、ゲーセンのシューティングゲームでしか触ったことがない。撃ち方なんて分からないわ。

映画やドラマとかで、狙って撃つだけだって言われてるけど、そういう事なのかしら?
でもどこを狙って撃てばいいの?
化け物はどんどん、私との距離を詰めて来る。

ふと、倒れたまま動かなくなった化け物に視線を移す。
さっき兵士が頭を撃ち、そのまま動かなくなった化け物だ。
つまり、そういうことなのね。もう考えている余裕はない。撃つしかない!

両手で拳銃を支え、引き金を絞る。
撃った反動で肩に衝撃が走り、体が一瞬仰け反る。倒れそうになりながら、体を立て直す。
そのわりにはあっけないような、乾いた音が鼓膜を揺らした。

銃を撃つって行為は、こんなに簡単なものなの? こんな安易でいいものなの? もっと衝撃がくるものじゃないの?
引き金を引くことで誰かの人生を、決定的に変えるかもしれないのに。花火が軽く弾けたような、こんな軽い音が銃声だなんて。
もし相手が生身の人間だったなら、私は罪悪感に苛まれていただろう。だが相手は化け物、悠長なことはしてられない。

撃った化け物に視線を戻す。

胸に穴が空いた化け物は、一瞬たじろいだ。
しかしもう一度化け物は、私に向かって来る。
しっかりと銃を握り、頭を狙いを定め、もう一度引き金を引く。

ヒューミン:「ぉ、ぁぁ・・・・・・」

思いっきり頭を仰け反らした化け物は、地面に倒れ、そのまま動かなくなった。
やった、倒した! これでいいのね。この方法で残り二匹を倒していけばいいんだわ。
体の向きを変え、向かって来る化け物達の頭を狙い、どんどん撃っていく。

数発当たってやっと倒せてる実力しかないけど、これは順調と言えるだろう。
そう思っていると、隣りで倒れていた兵士がうめき声を上げ、片手で頭を抑えながら上体を起こす。

「あ、大丈夫ですか? 起き上がれます? どこか痛いところはないですか?」

兵士:「う〜ん・・・俺は、生きてんのか? いや、可愛い子がいるから、天国か?」

何コイツ、チャラい。
兵士の割には軽薄そうで、浅はかな印象を受けた。
こういう軽佻浮薄(けいちょうふはく)な輩には、それ相応の言動で対応していいだろう。

「馬鹿言ってないでさっさと起きなさいよ、可愛い子どころかブス以下の化け物に囲まれてんのよ。ホントのあの世へいくつもり?」

兵士:「強烈なモーニングコールだな・・・あんた、どっかで会ったか?」

「生憎ね、その手のナンパには慣れてるの。答えを言うなら、はじめましてよ」

兵士:「だよな? いや、結構。初対面でこの返しなら、よっぽど肝が座ってる女のようだ。助けたかいがあるってもんだぜ」

「それに関しては感謝するわ、ありがとう。え〜と・・・・・・」

兵士:「ディーン・及川(おいかわ)だ。よろしく」

ハーフなのかしら。そういう独特な色気を醸し出しているわね。
彼は立ち上がり際に、私に手を差し出す。
私も立ち上がるが、手は握らない。まっすぐ彼を見上げる。

「ごめんなさい。私ちょっと潔癖なの、悪く思わないでね」

及川:
「そうか、なら仕方ない。だがずっとお嬢さんって呼び続けるのも、どうかとも思うけどな」

私の自己紹介を待っているんだと、察した。
右手で胸を押さえ、すこし首を傾げる。コレが私なりの自己紹介の仕方よ。

「私? 私は桃花(ももか)、山田 桃花よ。よろしく」

一応愛嬌を振りまいてやろう。
口角の端を上げ、私は微笑んだ。                     ___1終___

3ヶ月前 No.10

MK マッチー @11777 ★i04XIsqV4q_iBP

第2話

鬼塚:
「・・・封鎖しろ」

兵士3:「え? しかし、救助がまだ・・・」

鬼塚:
「いいから封鎖だ! これ以上の汚染拡大は防げねばならん!」

物音がして後ろを振り返る。
鉄製のシャッターが閉まり、狩矢崎市から出られる唯一の道が塞がれる。
まだ生きていた人達は、閉まったシャッターに群がった。

一般男性9:「開けろ! 開けてくれーー!」
一般女性9:「まだ私達が中にいるのよ! 助けてーー!」
一般男性10:「嫌だぁああーー! まだ死にたくない、ここから出してくれぇええーーー!!」
一般女性10:「お願いよ、見殺しにしないで。実家の家族に会いたいの!」

どれだけ懇願し、慈悲を乞うてもシャッターが開く様子はない。
救助は阻まれた。私達は見捨てられたとみていいだろう。

及川:
「っと、悠長に自己紹介している場合じゃないな・・・・・・どこか安全な場所へ避難だ」

桃花:
「ええ、賛成よ」

兵士2:「待て・・・・・・」

走ろうとして呼び止められ振り返る。
パトカーの天井にいた兵士が、目覚めたのか、銃口を私達に向けている。
一体なんなのよ、まだ錯乱しているの? それとも頭を打ってさらに悪化した?

及川:
「よせッ!!」

私と兵士との間に割って入る。
楯のようにして、まるで私を守るかのように。

兵士2:「にが、逃がさない。か、かかか怪物は殺すッ!」

及川:
「駄目だな、完全にイッちまってる。・・・あんただけでも逃げろ」

桃花:
「そういうわけにもいかないのよ」

最低な大人達のように、見捨てる事はしない。そんな人達に、私はなりたくない。
その場から立ち去ろうとせず、頑として動こうとしない私に、及川から小さな舌打ちが聞こえた。
それでも構わない。恩を仇で返すのは、私の信念に反する。

兵士2:「死ね。ここで死ね、・・・・・・うわぁあああーーー!!」

マジで銃殺される五秒前。
パトカーの影から二体の化け物が現れ、兵士を引きづり下ろし、襲った。
「やめろーー!! 放せーーー!!」と泣き叫んだが、化け物達が従うはずもなく。そのまま兵士はミンチになった。

及川:
「今のうちに逃げるぞ」

桃花:
「でも、囲まれたわ・・・・・・!」

私達を取り囲むようにして、気付けば化け物達が迫って来る。
こうなったら逃げ場所なんて、どこにもない。私は、ここで死ぬの? 兄にも会えずに? そんなの、嫌よ。
気付けば私は、及川の服の裾を掴んでいた。恐怖と悔しさで無意識にやったのかしら。

この情けない行為とは裏腹に、私の気持ちを知ってか知らずか及川は、大げさな銃を取り出す。
コレは・・・何ていうだったっけ。こういう種類の銃は、機関銃って言うんだったかしら。
そう思っていると、空間を引き裂く様なすさまじい機関銃声が鳴った。豪雨と錯覚する程の音を余所に、前方にいた化け物達が次々とドミノ倒しに倒れた。

及川:
「前を開ける、そのまま走れッ!!」

何かを考えるまでもなく、私はダッと駆け出していた。
隣りに及川も、走りながら銃を放つ。おかげで道が出来た。歩みを止めれば即、死に繋がる。安全なところまで走り続けなくちゃ。
・・・今日、私は走ってばかりだわ。

3ヶ月前 No.11

MK マッチー @11777 ★i04XIsqV4q_iBP

・大通り

大通りへと戻った私は、走り疲れて立ち止まって膝を曲げ、両手をついて肩で息をする。
私の前を走っていた及川が、振り返って怒鳴った。

及川:
「何してる、奴らに追い付かれるぞ!」

桃花:
「はぁはぁ、ぜぇぜぇ・・・・・・待ってよ。す、少し休ませてよ・・・」

及川:
「体力がないのか?」

呆れる様な目で私を見てくる。
上目遣いで言い返す。

桃花:
「朝から、走りっぱなしなのよ・・・陸上選手になって、オリンピック目指すつもりなかったし」

及川:
「それにしたって体力無さ過ぎだろ。若いように見えるが、もしかして見た目以上の年齢なのか?」

女に年の話を持ち出すなんて、いい度胸だわ。
疲れていてなおかつ、助けてくれた恩がなければ殴ってるところよ。
失礼な男を殴るのはずいぶん久々だけど、殴りたい気持ちをぐっと堪える。

桃花:
「ギリギリJKよ。」

及川:
「ギリギリ? どういうこった」

訝しげな顔で眉根をひそめる。

桃花:
「あと数日で大学生になるのよ」

及川:
「そう言う事か」

深々とため息を吐き出す。
そのため息はどういう意味よ。

桃花:
「・・・三分だけ待って、そしたら走れるようになるから。それぐらいの慈悲はくれてもいいでしょ・・・・・・?」

及川:
「あの大佐以上の非情にはなりたくはねぇが、あんたにその猶予を与えたら確実に死ぬな」

どういう意味かと思い、顔を上げて気付いた。
及川が見つめる遥か前方、大群の化け物がこっちに向かって来ている。
このままでは三分後には挟み撃ちにされ、即刻お陀仏。この状況では確かに休んではいられない。

桃花:
「に、逃げ場が無くなる前にどこかに隠れられない? あのマンホールなんかどう?」

近くのマンホールを指差す。
蓋を外して下へ下りれば、化け物の大群をやり過ごせるかもしれない。
ネックになるのは下水道である事。臭いは女の敵だが、背に腹はかえられない。

及川:
「男一人でマンホールの蓋は開けられねぇな。あんたが怪力なら話は別だが」

どこまでも失礼な男ね。
引きつった笑顔で答える。

桃花:
「・・・男を殴って気絶させられる程度よ」

及川:
「上等な腕力だがまだ足りねぇ、一発殴って複雑骨折させられるレベルじゃなきゃ駄目だな」

それは、女と言えるのかしら。

桃花:
「ごめんなさいね、非力で」

及川:
「そんなに自分を卑下するな。あんたの腕力は、ゴリラレベルだから安心しろ」

その突き立てた親指へし折ってやろうか。
それともマジで殴ってやろうか。
どうしようかと頭を悩ませていると、どこからか声が聞こえた。私達を呼び止める声が。

男性:
「お〜い君達、こっちだこっち。避難するならここだ」

見覚えがあるような顔の男性が、扉を開け屈み込みながら私達を手招きする。
私と及川はお互いを見合う。
怪物達をやり過ごす為の避難場所が決まった。

私達は辺りを気にしながら、手招きをする男性の元へ駆け寄った。

2ヶ月前 No.12

MK マッチー @11777 ★i04XIsqV4q_iBP

・バー(エデン)

駆け込んだ先は、見覚えのある佇まいの酒場。
私がときどき飲みに来ていたバーだ。
バーカウンターに手をつき、屈み込む形で荒い息を整えながら、避難場所を提供してくれた事に感謝する。

桃花:
「あ、ありがとうマスター。助かりました」

やっとの思いで顔を上げると、バーのマスターはきょとんとした表情で私をみる。

マスター:
「よく、私がここの支配人だと分かりましたね? 常連さんでしたか」

常連と言えば常連。そうでないにしても服装で分かる。
高級店でしか扱わなそうなグレーのチョッキ、整えられたオールバックの頭髪、渋いちょびヒゲ。いかにもな風貌をした酒場のマスター。

バーへ来てこの格好をみて、誰がマスターなのか分からない人間は、文字通り目が節穴だろう。

私は年上の男性が好きだ。ダンディーなおじさんが。
どんな大きなトラブルでも動揺しない落ち着きのある態度に、余裕で全てを包み込む様な包容力。独特な哀愁を漂わせる背中。
流行などに流されない、ちゃんとした自分を持ち合わせるダンディズム。私はいわゆる枯れ専というやつね。

だから顔を覚えられていない事に、ほんの僅かばかりだがショックだった。結構頻繁に飲みに来ていたはずなんだけどな・・・。
まぁ仕方ないと言えば仕方ない、酒場には色々な人がやって来る。様々な人生を背負いながら。

酔った勢いで愚痴を言う人もいるだろう。客相手の商売なのだからその愚痴に付き合う事もあるかもしれない。
それが毎日の出来事なら私なら身が持たない。だがこのマスターである酒井さんは何年も適応出来ている。
なら彼なりの処世術を持ち合わせていると、考えるしかない。それが話を聞くだけで顔を見ない事なのなら、納得がいく。

未成年であるにもかかわらず、私を追い出さなかったのはそういうことなのかもしれない。

桃花:
「ええ、そのようなものです」

体勢を整えマスターに向き直る。

及川:
「い〜けないんだ、いけないんだ、せ〜んせいに言っちゃおう」

ニヤけたツラで私にしか聞こえないひそひそ声で耳打ちしてくる。横目で彼を睨む。
まるで子供のよう。男が見せる幼稚な態度に私は飽き飽きしていたのよ。
コミュニケーションを見誤った今時の若者には、心底うんざりさせられる。

まぁ、私も今時の若者の部類に入るけど。

客の顔を忘れた事に対してなのか、すまなそうな顔をしたマスターが口を開きかけたその直後。
店の奥から野暮ったい口調で、男性の声が聞こえてきた。

男性客:
「ほっとけばいいものを、助ける為にわざわざ扉を開けるなんて・・・化け物共が入って来てたら一巻の終わりだったんだぞ。」

ヨレヨレのYシャツ、乱れた髪、朝剃るはずだったであろう無精髭、すこし脂気味な顔。
くたびれたスーツを着た小太りのサラリーマンが、訝しげな表情で私達を睨んでいた。

1ヶ月前 No.13

MK マッチー @11777 ★i04XIsqV4q_iBP

このサラリーマンには見覚えがある。
白須(しらす)と言って私の学校の教師で生活指導部の先生だった男だ。
専門科目が違ったため直接授業は受けなかったが、生活指導の注意は何度も受けていた。

スカートが短いだの髪留めに色がついてるだとか、とにかく口やかましい先生だった為、私を含め生徒からは嫌われていた。
それだけじゃなく生徒の間では、彼はある噂で有名だった。

白須の息子はニートであると。

偉そうに生徒を指導しておいて、自分の息子は指導出来ていない、失敗している。と陰で噂になり嘲笑われていた。
噂が真実かは分からなかったけど、学校内での指導活動は事実なので、私は外見を含め白須を嫌っていた。
脂ぎった顔で小太りの年上は、流石に私の趣味の範囲外だわ。

そんな白須は私をみても、とくに反応を示さない。
それもそのはずで、中学卒業からすでに三年も経っているのだから私の外見も変わる。髪型も違えば着てる服も違う。
女の成長は目を見張る物があるから、気付かなくても無理はない。逆に白須の変わらなさに私がびっくりしている。

とくに反応を示さない白須だが、私をずっと凝視している。うっすらとだが、私を思い出しているのかもしれない。
そう思ったとき白須の肩に手が置かれた。

男性客2:
「まぁまぁ、そういいなさんな。同じ生存者同士仲良く助け合おうや」

薄汚れた工事の作業着を着て、熊の様な恰幅のいい体型をした男が白須を戒める。
その熊の様な男性にも見覚えがあった。
外見の通り工事現場を指揮する監督で、確か名前は秀善(しゅうぜん)と言ったはずだ。

私が使っていた通学路のそばの工事現場で、いつも顔を合わせ挨拶を交わしていた。
安全確認の為だったのか、昼頃は分からないけど朝と夕方はいつも同じ場所に立ち、通り過ぎる人に声をかける。
外見は薄汚くぶっきらぼうな職人気質のように見えるけど、好感が持てる人だ。

1ヶ月前 No.14
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