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ステージに立つ

 ( 小説投稿城 )
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あさひ @water0 ★SKhHm1cSFv_8gk

あれはいつだったかな……。

うーん……。

詳しくは思い出せない。

だけど、とにかくすごく幼いころ。
まだ私の中の世界はとても狭くて、虫も平気で触れて、危ないことをしようとしてはお母さんに叱られていた、幼いころ。

そんな昔の記憶。

多分、平日の昼。

台所で料理を作っているお母さん。1人っ子だった私は、遊び相手がいなくてすごく退屈していた。
お父さんはもちろん仕事に行っていたし、友達もいなかった。

普段は四六時中教育番組が流れていたリビングのテレビ。
その時はたまたま普通のバラエティ番組が流れていた。お母さんがチャンネルを替え忘れていたんだろう。

テレビに映っている大人たちが、手を叩いて笑っている姿や、お父さんと同じくらいの年齢の男の人たちがふざけている姿を見て、
不思議だなー、なんて漠然と思っていたのを覚えている。

少しそのテレビ番組を眺めていた。
司会者らしき中年の男性が何かを言うと、それまでソファで座ってふざけたりしていた大人たちの画面からパッと切り替わり、

スポットライトを浴びた女性複数人が映っている画面に切り替わった。

その女の人たちは、音楽が流れ始めると、満面の笑みで歌を歌いだした。


私にはその姿が衝撃的だった。

知らない女の人たちが、踊って、笑顔で、歌をうたっている。

ただそれだけのことなのに、引き込まれた。


……うん。

多分それが、私が『アイドルになりたい』という夢を持った時なんだろうな。

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あさひ @water0 ★SKhHm1cSFv_8gk

ピピピピピピ。

無機質で嫌に高い音が、静まり返っていた私の部屋に響き渡った。
頭まで被った布団の中から手を出し、その音を発している携帯を手に取る。

モゾモゾと顔を出し、携帯のロック画面を外し、音を消した。

そしてそのまま30秒数える。

私はこの30秒の間に起きると決めている。

25秒を数えたところで、ようやく起きる決心がついて、起き上がった。

髪は寝ぐせでボサボサ。
目も全く開いていないし、たぶん目ヤニだってついている。
絶対他人には見せたくない瞬間。

眠気眼でまだピカピカの真新しい制服に着替える。
白いブラウスに、紺のジャンパースカート。ありきたりだけど上品で清楚な雰囲気があるこの制服を私はとても気に入っている。

歯磨きをして、顔を洗って、リビングに行って、台所に立つお母さんと、朝から難しい顔で新聞を読むお父さん、
今年から中学生になった弟の涼太に『おはよう』とテンション低めで挨拶をする。

朝は苦手だ。

目玉焼きと焼いた食パンを食べて、朝のニュース番組でテレビの左上に表示されている時刻を確認する。
8時。

「じゃあ、行ってくるねー」

玄関に置いてあった学校指定のスクールバッグを肩にかけて、リビングにいる家族に声をかける。

「おーう」

お父さんの低い声が返ってくる。涼太は最近返事をしてくれない。まぁ年頃の男子だしね。しょうがない。

「あ、リカ! ちょっと待ってー」

バタバタと少し大きめの音を立てながら、お母さんが私を引き留めた。

「お弁当忘れてるよ」

お母さんがお弁当箱を『まったく』といったような呆れた笑顔で差し出す。
私は少し忘れっぽいところがある。

「あ、ごめん。ありがとー」

「今日から部活あるんでしょ? お弁当ないと倒れちゃうよ」

「厳密には『部活の仮入部開始』ね」

「はいはい。じゃあ『部活の仮入部』頑張ってね。いってらっしゃい」

「いってきまーす」

2ヶ月前 No.1

あさひ @water0 ★SKhHm1cSFv_8gk

私、田中 リカは今年の春から高校1年生になった。
そして入学してから、もう1週間。不安だった友達もできた。

入学した高校は、私立 白百合女子高等学校。

お金持ちやお嬢様が多そうな名前の学校だけど、至って普通の学校。
私みたいな絵に書いたような平凡な生徒もたくさんいる。

少し偏差値は高めだったから、『白百合に通ってます』っていうと、『すごいね!』と大抵の人は褒めてくれる。
……まぁ私は元がバカだからギリギリの合格だっただろうけど。

「リカー! おはよう!」

通学路を歩いていると、後ろから背中をポンッと叩かれた。

「あ、森田。おはよー」

この子は同じクラスの森田 優希。『優希』って呼ばれるのは男の子っぽくて嫌だから、苗字で呼ばれたいらしい。
たしか初めて会話したときそんなことを言ってた。変なヤツ。

「ねーねー。今日から部活始まるね!」

森田がウキウキとした顔で言う。

「厳密には『仮入部が始まる』ね」

「そうそう。『仮入部』!」

あれ? このやりとりつい数分前もしたな。細かいこと言うのはやめよう。

「森田はもう入る部活決めてるの? 相撲部とか?」

「相撲部!? いや、入らないよ! てか相撲部なんかないでしょ!」

「ごめん、見た目で判断しちゃった」

「ちょっと待って、知り合って1週間なのに失礼すぎ!」

あはは、と笑う森田。ちなみに森田は別に太ってない。むしろ痩せてる方。
森田はツッコミが面白いからついついいじってしまうのだ。

「相撲部じゃなくて、ソフト部かなー! 中学からやってるし。え、リカはー?」

「あー、私は普通に『芸能部』だな」

「……えぇ!? まって、『芸能部』?!」

一瞬間を空けて、大きい声で驚く森田。
近くを歩いていた白百合の生徒が森田の声に驚いて振り向く。

2ヶ月前 No.2

あさひ @water0 ★SKhHm1cSFv_8gk

『芸能部』とは、数年前から爆発的に流行りだした部活動だ。

その名の通り、芸能人っぽいことをする部活だ。

例えば昔は『演劇部』と呼ばれていたことをしたり、『合唱部』または『軽音楽部』と呼ばれていた、人前で歌を歌ったりすることをしたり。
それらを総合的にあわせたのが『芸能部』。

まぁ要は、『歌って踊る』。そして必要に応じて『演技もする』。まさに芸能人っぽいことをする部活。


それだけ聞くとただ『芸能人ごっこ』をしてるだけかと思われるかもしれないが、これがなんと、本格的なことをするのだ。
今芸能界で大活躍している女優さんや歌手、アイドルはほとんど『芸能部』出身。

そして私が入学した 白百合女子高等学校は、その『芸能部』の名門とも言える学校なのだ。


……はい。まぁだから森田は驚いたのだろう。

「え、こんな身近に芸能部に入ろうとする子がいたとは……」

「結構多いでしょ。白百合って芸能部めっちゃ有名だし」

「そうなのかなぁ。今朝もママとその話したから、ビックリしちゃって。ごめんね。
でも確かにリカは神様恨みたくなるくらい可愛いもんね……」

「嬉しいけどそんなしみじみ言わないでよ。怖いよ」


森田とくだらない話をしていると、白百合に着いた。
私の家から白百合は大体徒歩で15分。近くもなく、遠くもない距離だ。
自転車で向かったら5分くらいで着くし、本音を言うとそうしたいんだけど、白百合の生徒は自転車に乗らない。
1人だけ自転車は恥ずかしいしね。

2ヶ月前 No.3

あさひ @water0 ★SKhHm1cSFv_8gk

私にとっては若干難易度高めな白百合の授業をようやく終えて、とうとう放課後になった。
昨日担任の先生に言われたけど、白百合の部活の仮入部は、その部活の部室まで行って仮入部届を出すらしい。

私立というだけあって、白百合の校舎はかなり広い。
グラウンドも広いし教室も広いし。その分生徒の人数も多いんだけど。

早々に第二グラウンド場へ駆け出していった森田に置き去りをくらった私は、学校の地図を1人教室で広げる。

芸能部の部室……。芸能部、芸能部は……。あった、ここだ。
……え? これ本当?

私が発見した芸能部の部室は、もはや部室ではない。
旧校舎丸々1つ。確か白百合は10年前くらいに敷地を拡げて、今私たちが使っている新校舎を建てた。
それまで使っていた旧校舎丸々1つを使っているなんて。

……恐るべし。


地図を片手に旧校舎へ向かう。

少しだけさまよいながら、ようやく着いた。
無駄に広いから。本当に。

旧校舎の入り口に立っている先輩らしき風格の女子生徒。
綺麗な顔をしている。この人は芸能部の人だろうか。

「あ、すみません。芸能部ってここですか?」

恐る恐る話しかける。

「そうですよ。入部希望者?」

「あ、はい」

緊張すると『あ、』って言っちゃうのが私の悪いクセ。ハッキリしろよ。ってね。

「ここの階段を上がって左手にレッスン室があるから、そこで待機しててー」

「あ、わかりました。ありがとうございます」

ペコリと頭を下げて、すこし早歩きで階段を上る。

レッスン室に入れる。それを聞いただけで緊張と期待で胸が高鳴った。

2ヶ月前 No.4

あさひ @water0 ★SKhHm1cSFv_8gk

「失礼しますー」

さっきの先輩に教えてもらったレッスン室の扉を開く。

驚愕した。
そのレッスン室の広さに。縦長のその部屋は、恐らく人が100人くらい入るほどの大規模。
そして壁一面に綺麗な鏡が張り付けられてある。
多分ここでダンスのレッスンをするんだろう。

すごい、すごすぎる!


私は来るのが遅かったみたいで、もうレッスン室にはあふれんばかりの人がいた。
これが全員芸能部入部希望者かぁ。友達できるかなぁ。不安だ。
とりあえず隅っこの方で目立たないようにヒッソリいよう。

一番後ろの左端のパイプ椅子に座り、様子を伺う。
かわいい子がやっぱり多いなー。

「みなさん、お待たせしましたー!」

レッスン室の扉が開き、大きな女子生徒の声がレッスン室に響き渡す。それまでザワザワとしていた室内が、その声を聞いて静まる。

「ではこれから白百合女子高校芸能部の入部希望者説明会をします!」

女子生徒がそういうと、背の高い大人の女の人が入ってくる。
とても綺麗な顔立ち。意志のこもった強い瞳。醸し出す雰囲気は只者じゃない。こんな人を間近で見たことは一度もない。

その女の人は速足で私たちの目の前に立つと、コホン、と咳払いをして軽く会釈する。
つられて私も頭を下げた。

「こんにちは。今日は集まってくれてありがとう。芸能部の顧問をしている冴島です」

あ、聞いたことある。白百合芸能部の顧問、冴島さん。確か元女優で、テレビにも出ていたことがあるはず。
今は白百合芸能部の顧問をしてるんだ。
そりゃ普通の人とは違うわけだ。

「ウチの芸能部は、3年生15人、2年生15人の計30名で構成されています。
……パッと見て、今ここに集まってくれている1年生は100人ほどですね」

冴島さんがグルリと私たちの顔を見渡す。一瞬だけど冴島さんと目が合う。その目力に引き込まれる。

「申し訳ないですが、ここに集まってくださった皆さんが全員ウチの芸能部に入れることはありません」

え、どういうこと?

周りがざわつく。

「今からここでオーディションを開催します。そこで受かった人だけが、芸能部に入ることができます」

2ヶ月前 No.5

あさひ @water0 ★SKhHm1cSFv_8gk

「では、呼ばれた方から順番に隣の部屋に移動してください。混乱しているかもしれませんが、よろしくお願いします」

冴島さんはそういうと軽くお辞儀をして、そそくさとレッスン室から出て行った。

周りはすごくザワザワしている。
私も森田と一緒にここにいたら、めちゃくちゃザワついていただろう。ザワつく相手がいないから、バカみたいな顔をしてただただ茫然としている。

「えー。それでは、田中リカさん、春木 くるみさん、……」

え!? まって、いきなり私の名前呼ばれた!? てかなんで私の名前バレてるの?
……そういえばレッスン室入る前、名前とクラス書いたんだった!

恐る恐る立ち上がって、周りを見渡す。私を含めて呼ばれたのは5人。しかも呼ばれているのは席順とかじゃなくて完全なランダム。

レッスン室を出て、先輩に誘導されるがままに隣の部屋に移動する。

オーディションって言ってたよね?! 全然準備してない。しかも緊張して何も思い浮かばない。
……やばい、泣きそう。

「失礼します」

先頭の女の子が挨拶をして頭を下げて部屋に入っていく。オーディション会場に。
最後尾の私も前の4人にならって、失礼しますと言って、頭を下げて、入室する。



オーディション会場はレッスン室ほど広くなく、無理して入っても20人ほど。
さっきまでいたレッスン室がすごく広かったから、ここは狭く感じる。

そして長机があって、その中心に冴島先生。両脇には白百合の生徒。芸能部の人だろう。

私たち5人は、その長机から2mほど離れた場所に置かれていた椅子に座った。

2ヶ月前 No.6
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