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アイドル部

 ( 小説投稿城 )
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asahi @banana2 ★SKhHm1cSFv_PHR

2010年代から始まった、芸能界アイドル戦国時代。

たくさんのアイドルが生まれ、彼女たちはその胸に大きな夢を抱き、
そしてたくさんの夢が儚く散っていった。

群雄割拠のアイドル戦国時代を勝ち抜いた1つの大きなグループにより、その芸能界アイドル戦国時代は終息を迎えた。


そして、2020年。
日本に『新しいアイドル戦国時代』が生まれた。

芸能界アイドル戦国時代の影響を受け、たくさんの女子高に『アイドル部』なるものが生まれた。
アイドル部にはたくさんのファンがつき、多くの経済効果をもたらした。

普通の女子高生がCDを発売し、握手会をし、ライブをする。


御山 楓(みやま かえで)もそんなアイドル戦国時代に参加するために、
女子高に入学したのだった。

関連リンク: 邪道アイドル 
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asahi @banana2 ★SKhHm1cSFv_PHR

4月某日。

私、御山 楓は今日から何年前も憧れていた、立修(りっしゅう)女子高等学校に入学することになった。

この日を迎えることができて、私のテンションの高さは過去1を記録していた。
小学生の給食の時にジャンケンして大好物のもやしナムルをおかわりできた時以来のテンションの上りようだ。

「なんか入学式って緊張するねー!」

「ほんとそれ! 『なんか』緊張する!」

立修に向かう通学路で、私の右隣と左隣にいる女子2人がそう言った。
この2人は中学からの友達。正直いつも一緒にいたレベルの友達ではないし、高校生活に慣れていくにつれて一緒に登校することなんてなくなるんだろうけど、
不安だから一応最初の方は一緒に行く、って感じだ。

「てか今日入学式の後、体育館で部活案内やるらしいよ!」

右隣の友達、優香が家に郵送で送られてきた1か月の予定表を確認している。
左隣の友達、朋美は「らしいねー」と言っている。

「えっ!? いきなり部活案内!?」

しかし私は優香のその一言に激しく驚いた。
いきなりクライマックスじゃん……!

「うわっ、ビックリした。そうだよ、予定表見てないの?」

「予定表……なんか送られてきたのは知ってたけど全然見てない」

「まじで! 楓立修めっちゃ憧れてたのに若干雑だね」

5ヶ月前 No.1

asahi @banana2 ★SKhHm1cSFv_PHR

確かに私は雑だ。
部屋の中も気を抜いたらすぐに散らかって……って、そんなことはどうでもいいか。

「楓はなんか入る部活とか決めてるの?」

朋美が今日部活案内をあると聞いて異常な反応を示した私に質問をした。

「決まってるじゃん!」

フフフ、と笑って両隣の優香と朋美を交互に見る。
彼女たちは『え?』という反応をして半笑いで若干引きながら私のことを見ている。

「アイドル部だよ!」

思ったより大きめの声で言ってしまったようで、すぐ近くを歩いていた立修生が私たちのことを見て、クスクスと笑う。
あ、やっちゃった。

少し血が上って赤くなっているだろう顔を隠すように下を向いて、照れ隠しでコホン、と咳ばらいをする。

「あー。アイドル部かぁ、納得」

「うん。楓、可愛いもんね」

「いやいや、そんなことないよー」

優香と朋美が褒めてくれるのを一応謙虚に否定してみる。

だけど本音を言うと私自身は自分のことを可愛いと思っている。
いや、私がナルシストなんじゃなくて、アイドル部に入ろうとしてる女なんてほとんどがそう思ってる。

「でも立修のアイドル部って超有名なんでしょ? 厳しそー。この前テレビ出てたし」

「見た見た! 超かわいかったよね〜」

朋美がそういうように立修のアイドル部は全国的にもかなり有名。

全国の女子高にはアイドル部があるけど、そのアイドル部の売りは色々ある。
たとえばダンスが上手とか、歌がうまいとか、個性が強いとか、色々。

けど立修の売りはそういうところじゃない。
立修の売りは、『ルックスが良い』こと。

王道中の王道。

小学生のころにそんな立修のアイドル活動を見て以来、私は立修のアイドル部に絶対入る! と心に決めていた。

5ヶ月前 No.2

asahi @banana2 ★SKhHm1cSFv_PHR

そしてその立修アイドル部の説明会がある。
私にとってこれ以上の幸せが今まであっただろうか? いや、確実にない。

長ったらしい校長先生の話があった入学式を終え、ようやく部活案内の時間になった。
1年生が1組から順番に体育館へ移動していく。

あ、ちなみに私は3組。そしてちなみに3組になったのは中学から合わせて4連続。どうでもいいことなんだけど。

「部活案内楽しみだねー!」

最初のHRで前の席にいた女子が、体育館に向かいながら私に話しかける。
一応、前後の席のどちらかに話しかけて仲良くなっておく。入学式あるある。

「うん、だね!」

私も印象が悪くならないように、一応笑みを浮かべてその子に対応をする。

「御山さんは何の部活入るか決めてるのー?」

あぁ、またこの質問か。
繰り返しになるなぁ。ちょっとめんどくさい。

「えっとね、私はアイドル部だよー」

しかしそんな感情は全く表に出さず、登校中に2人に言ったようなことと同じようなことをまた口にする。


体育館に着き、名前順に並んでパイプイスに座る。
御山楓。「み」から始まるから結構後ろの席なんだよなぁ。最前列で見たいのに。
背の順なら結構前の方なんだろうな。……ってそれはそれで悔しいけど。

「みなさん、お待たせしました。ではこれより、新入生へ向けた部活案内をはじめます」

体育館の舞台を降りて左側にいるメガネをかけたいかにもな生徒会長さんがマイクを持って静かに話す。

きたきたきた!!

自分は舞台に立つこともないのに、楽しみすぎて心臓がドクドクドクと激しく音を立てる。
手のひらにはジワリと汗がにじんでいるのを感じた。

5ヶ月前 No.3

asahi @banana2 ★SKhHm1cSFv_PHR

「立修女子高等学校、ソフトボール部です! 私たちは今年こそ全国大会を目指して……」

期待に胸を膨らませて、体育館の舞台を眺めていたものの、20分ほど経ってもまだアイドル部は出てこない。
ちなみに今まで紹介された部活は、バスケ部、吹奏楽部、バレー部、そして今絶賛新入部員勧誘中のソフトボール部。

「ありがとうございました。ソフトボール部でした」

生徒会長が冷静にそう言い、拍手をすると、私たち新入生もそれに続いて拍手をする。
私も一応拍手をするけれど、本当はソフトボール部の話は聞いていなかった。
ただなんとなくソフトボール部の方々はやけに背が高くて日焼けして真っ黒で体がガッシリしていた。
たぶん遠目から見たら男子柔道部……、それは言わないでおこう。

「それでは、次はアイドル部です」

生徒会長がそういうと、体育館にいた新入生が一斉にザワザワとし始める。
どこかから『キャー』と黄色い声も聞こえてくる。アイドル部の期待のたかさ、有名さがヒシヒシよ伝わってきた。

やっとアイドル部だ! 嬉しすぎる……!

私も固唾をのんで体育館の舞台を眺める。

新入生が生徒会長の言葉を聞いてザワザワとしてから、3分ほど経って、少しその様子も落ち着いてきたころ。

いきなり体育館の照明が落ちる。
いつの間にか日を遮るようにカーテンも閉められていて、体育館は真っ暗になった。

え、なになになに!? 停電!? 怖すぎる……!

「なにこれ?」「停電!?」「こわいんだけど!」
私と同じような気持ちの声があちこちから聞こえてくる。

しかしその数秒後。

バンッ! と大きな音が鳴り、前方の体育館の舞台が眩しいほどに光る。

いつの間にかそこには20人ほどの女の子が、白を基調としたワンピースの制服を着て立っていた。

「新入生のみなさーん!! 盛り上がっていきましょう!!」

センターに立つ女の子がマイクを握って大声でそういう。

ワーーーーーー! と一気に盛り上がる体育館。
およそ高校の体育館とは思えないほどの大きな歓声が体育館を包んだ。

5ヶ月前 No.4

asahi @banana2 ★SKhHm1cSFv_PHR

その割れんばかりの大きな歓声とともに、明るい曲調の音楽が流れる。
この曲を私は知っている。

この曲の名前は『幸せな日々を』。
明るくてキャッチーな曲調だけど、よく歌詞を聞いてみると、叶わぬ恋をした女の子のやるせない気持ちを歌っている。


小学生のころから、漠然とアイドルが好きだった。
よく通学路ですれ違う女子高生のお姉さんを見ていて、『あの人もアイドルなのかな?』なんて勝手に思って憧れていた。

高校生になったら私も絶対女子高に入ってアイドルになる! そう思っていた。

その時は特に立修のアイドル部に入りたいなんて具体的な目標はなくて、ただただ『アイドルになりたい』それだけの気持ち。

だけど忘れもしない。
あの日……。中学2年生の夏休み。ボーッと音楽番組を眺めていたら、偶然目に入ってきたアイドル。
それが立修のアイドル部だった。

言葉を失った。

どこのポジションを見ても綺麗な顔立ちをしている人しかいない。
振付は、すごく難しそう。
それなのに自然な笑顔でサラッとこなしている。
そして極めつけは『幸せな日々を』という曲。明るい曲と儚い歌詞のギャップ。

体全体に鳥肌が立つのが分かった。

センターはまだ当時1年生だった、黛 エリカ(まゆずみ)。
1年生なのにセンター。だけど納得の存在感、納得のルックス、納得の歌唱力、パフォーマンス力。

『この人と一緒に踊りたい……!』

そのころから私の夢は立修のアイドル部に入ることになった。

5ヶ月前 No.5

asahi @banana2 ★SKhHm1cSFv_PHR

私はただただ、立修女子高等学校のアイドル部のパフォーマンスを眺めているだけだった。

それはガッカリしたとか、盛り上がるのが恥ずかしかったからとか、そんなことじゃない。
中学2年生のあのころに戻って、ただただテレビにかじりついてそのパフォーマンスを見ていた時のように、
私は体育館の舞台に釘付けになっていた。

センターで踊るのは、私の憧れ。私の目標のあの人。

「黛エリカだ……」

私の隣に座っていた女子がボソッと声をもらした。

中学生の時にテレビで見たときとは全く違う。
2年の時を経て、大人っぽくなって、本当に綺麗な人。私はこんなに綺麗な人を見たことがない。

私、立修に入って本当に良かった……!


その後アイドル部は2曲を披露した後、「アイドル部志望の方はこの後部室までお越しください」という一言を残してその場を去った。
一瞬の出来事だった。

アイドル部が舞台を去ってから、私は放心状態でその後も続く部活案内を眺めていた。
アイドル部の後ではやはりどの部活も霞んでしまっていることだけは分かった。

「……ねー!」

放心状態の私の右耳にかすかに声が聞こえてくる。

「ねーねー! あなた! ねぇ、聞いてる!?」

体を揺さぶられてビクッとする。
右隣を見ると、可愛い顔立ちをしてるけど真面目そうな目をしてる女の子が頬を膨らませて怒ったような表情で私を見ている。

「あ、はい。すいません、なんですか?」

「さっきからずっと話しかけてるのにやっぱり聞こえてなかったんだ!」

はぁー、やっぱりか。とため息をついてその女子は私の肩から手を離す。
スリッパの色は緑。ってことは私と同じ1年か。敬語使っちゃったよ。ちなみに2年は青、3年は赤。

5ヶ月前 No.6

asahi @banana2 ★SKhHm1cSFv_PHR

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5ヶ月前 No.7

asahi @banana2 ★SKhHm1cSFv_PHR

退屈なHRを上の空で聞き、放課後になった。
明日から普通に授業が始まるらしい、ということだけは分かった。

立修はアイドル部強豪校なだけではなく、偏差値の高い学校、いわゆる進学校でもある。
高校生の大学進学率はいまの時代50%を超えるというし、進学校なら当然っちゃ当然なのかも。

「ほのかー。一緒に帰ろ」

入学式なのにスクールバッグにパンパンに荷物が入っているほのかの席にかけよる。
入学式で友達ができたのは結構デカい。しかも同じ部活。

「え、なにいってんの楓」

「え?」

『何をバカなことを言ってらっしゃるんですか?』とでも言いたげな表情をしてほのかが私のことを見る。
私はなぜそんな顔をしているのか全く分からず、キョトンとしてしまう。

「アイドル部志望の人はこの後部室まで来てくださいって言ってたじゃん!」

「え!? そうだっけ!?」

「そうだよ! ……もー、全然話聞いてないじゃん」

「ごめんごめん」

やばい。これで私が話を聞いてないのは、ほのかにとっては2度目だ。知り合って間もないのにすぐに短所をさらしてしまう、私はバカだ……。

「あ、じゃあアイドル部の部室いこっか。どこだっけ?」

「えーとね、確か3階だね」

ほのかがポケットから折りたたまれた学校の地図を見ながら私にそう言う。
あれ、こんな地図配られたっけ。……配られてないはずだぞ。

「そんな地図配られてたっけー?」

「あぁ、これは今日入学式前に学校の中を歩き回って自分で作った。『自作校内地図』だよ」

「……私はあなたのその用意周到さが怖い」

5ヶ月前 No.8

asahi @banana2 ★SKhHm1cSFv_PHR

3階に着いた。
ただ、3階に着いただけだ。

なのに私はすごく驚いている。
なぜなら、3階の中のある一室がアイドル部の部室だと思っていたから。

アイドル部強豪校を私は舐めていた。

3階がすべてアイドル部の部室なのだ。
こんなこと全く想像することができない。

私たちのほかに3階に着いた新入生と思われる女子生徒は全員、着いた瞬間に目を丸くして私と同じような驚愕の表情を浮かべている。
唯一驚いていないのは、事前にリサーチ済のほのかだけだ。

『アイドル部入部希望者の方はこちら』
そう書かれている3階のひときわ広い部屋の近くに立てられた看板を目指して歩く。

ゆうに100人は入るであろうその大きな部屋には、入り口のある壁以外、すべて鏡張りだ。
恐らくここで私の憧れである立修アイドル部は練習をしているんだろう。

そう思うと、胸が高鳴り、背筋がピンと伸びて、表情が強張った。つまり、めちゃくちゃ緊張した。

「す、すごいね……」

「う、うん」

やっとの思いで隣にいるほのかに話しかけると、さすがにほのかも部屋の内部まではリサーチできていなかったらしく、
私と同じ、緊張した面持ちで頷いた。

この大きな鏡張りの部屋に入る前に、学校指定のスリッパを脱ぎ、靴箱にいれる。
入り口で学年とクラス、名前を書いて部屋に入る。

私とほのかは結構早めに着いた方らしく、先に着いていたのはわずか10人ほど。
2人組、3人組、という感じで集まっていて、それぞれが少しだけ距離をあけて座っている。
私とほのかも例にならい少しだけ彼女たちと距離をあけて座る。
しかし、この行為はのちに何の意味もなさないことが分かる。


10分ほど緊張しながら待っていると、続々と女子生徒がこの部屋に流れこんできて、
100人は余裕で入れるほどの広い部屋がすでにパンパンになっていた。

最初は少しずつ距離あけて座っていた私たちも、結果的には隣の人と肩がぶつかるかぶつからないかくらいの距離で座っていた。

『キーンコーンカーンコーン……』

チャイムが鳴る。
それと同時に室内のみんなの顔が一気に強張るのを感じた。

入室前に渡された紙には、チャイムが鳴ってから入部希望者に対する説明会が行われる、と書いてあった。

「緊張するね」

私の方を見て何気なく話しかけたほのかはビックリしただろう。
隣で体をガクガクと震わせて明らかに緊張しすぎな女子がいたんだから……。私のことだけど。

5ヶ月前 No.9

asahi @banana2 ★SKhHm1cSFv_PHR

ガチャッ。

私たちが座って向いている方向とは真逆にある入り口の扉が開く音がする。
中でギュウギュウになって座っている私たちは、一斉にその扉の方を振り向く。

「黛エリカだ……!」

私の近くにいた女子がボソッと声を漏らす。

そう、入ってきたのは私の永遠の憧れ、黛エリカ。そしてアイドル部、部長の八神 琉璃(やかみ るり)。
最後に入ってきたのは背の高いモデル体型の恐らく40代くらいの美人な女性。

黛エリカたちは部屋の中を進んでいき、私たちが元向いてた方向の一番前までくる。
私と黛エリカたちの距離はもう3mもない。

間近で見る黛エリカ。よくテレビで黛エリカは『異次元の可愛さ』とか、『奇跡的な美少女』と言われている。
その通りだ。本当に目を奪われる。

真っ白な肌。身長は160p代後半だろう。顔も小さくて手足も長い。そして完璧なバランスの顔のパーツの配置。
何よりもすごいのはこんな間近で見ることによる、彼女のオーラだ。
近くで見ているだけで圧倒される。

約100人ほどの女子生徒が見つめる中、黛エリカがその綺麗な表情を全く崩さずことなく、ただ前だけを見つめている。

「こんにちは。今日は集まってきてくれてありがとうございます」

黛エリカに見惚れていると、部長の八神琉璃が声を発した。芯のある、よく通る声だった。
私は声は発さず、八神琉璃に向かって頭を下げる。一応挨拶されたわけだし。

「こんなにも多くの方に集まっていただき、すごく嬉しいです。ありがとうございます」

八神琉璃が頭を下げる。続いて黛エリカと隣の美人なおばさんも頭を下げた。
品が良すぎる……。この品の良さも立修の強みだ。

「今日ここに集まってくれたということは、皆さんは私たちアイドル部の一員になりたいということだと思います。
……いきなりこんな話をするのは心苦しいのですが、皆さんもお分かりの通り、ここにいる全員がアイドル部に入部することはできません」

えっ!? ま、まって。どういうこと!?
隣のほのかを見ると、ほのかは私みたいにキョドった様子は見せず、八神琉璃の顔をジーッと見つめている。
その視線は何か憧れめいたものを感じる。

5ヶ月前 No.10

asahi @banana2 ★SKhHm1cSFv_PHR

まさか、また何か見落としてる? 慌てて入り口で渡された紙に書かれた文字に目を落とす。
『オーディション選考を行います』。

そういうことだったのか!
オーディションをしてこの100人くらいいる中から選ぶんだ……! 確かに立修みたいなアイドル部強豪校が、何のハードルもなしで
入部させるはずがない。考えればわかることだった。

八神琉璃はそれからオーディションの内容を言い始めた。

オーディションには1次審査と2次審査がある。
1次審査は簡単な面接なようなもの。そして2次審査は歌唱審査などの特技披露。
しかし1次審査で全体の約3分の1にまで人数は絞られるらしい。

「それでは1次審査は今から行います。係りの者が今から番号札を順に渡していきますので、少々お待ちください」

八神琉璃が綺麗にお辞儀をする。そして黛エリカと美人なおばさん2人も続いてお辞儀をすると、3人はすぐに部屋から去っていってしまった。

「え、今から1次審査? 知ってた?」

隣にいるほのかに聞く。

「知らなかった……。さすがに来週からかな、って勝手に思ってた……」

ほのかも予想外らしく、目を大きく開いて驚愕の表情を浮かべていた。


すぐに私たちは八神琉璃が言ったように、クリップのついた丸い番号札を渡された。
ほのかがそれを制服の胸ポケットにつけたので、私も真似した。

私の番号は5。隣り合って座っているのにほのかの番号は38。番号札はランダムに渡されているみたいだ。

「えー、では、1番から10番までの方、隣の部屋にお越しください」

早い番号ってことは、そりゃそうだよな。

私は一番最初のグループの番号を引き当ててしまったようだ。最後らへんのグループでありますように、とずっと願っていたのに、
こんなところで私の運は悪い……。

頑張って! と言うほのかの不安そうな顔に返事をして、私は別室に移動した。

5ヶ月前 No.11

asahi @banana2 ★SKhHm1cSFv_PHR

廊下で1番から順番に並ぶ。

1番から10番まで呼ばれたグループの人たちと顔を合わせる。
ビックリした。

本当にビックリした。

全員可愛すぎる。なんだこれ。これが立修アイドル部を目指す女子の平均的なレベルなのか?

特に……。

あの1番の背の高い子は可愛すぎる。やばすぎる。
さっき近くで見た黛エリカと同じくらいの雰囲気、綺麗さ。

「?」

その1番の子が私の熱視線を感じてか、頭の上にはてなマークを浮かべて振り返る。
一瞬目が合った。
その吸い込まれそうなほど綺麗な瞳に耐え切れなくなって、目を反らす。

いやいやいや、あれはやばすぎる……。

1番の子は気のせいか、と言ったように真顔のまま前を向きなおす。
背筋がピンと伸びている。たぶん、万に一つも自分がこのオーディションで落選するなんて思っていないんだろうな……。

あの1番の子だけじゃない。みんなレベルが高すぎる。なんなんだ、本当に。


「お入りください」

そんな負の感情全開で俯いていると、オーディション会場である部屋の扉のドアが開いた。

一気に体に緊張感が走った。
私だけじゃない。このグループの女子全員が体をこわばらた。

1番の子から順番に部屋に入っていく。

「失礼します!」

1番の子がそう言って軽くお辞儀をして部屋に入っていくのが見えた。
なんだ、あの子声もめっちゃ綺麗じゃん……。

順に部屋に入っていく。当然私は5番目に前の人と同じようにして部屋に入った。

入ると、中には10個のイスが並べられていて、正面には少し距離をあけて長机。
その向こう側に私の大好きな黛エリカ、部長の八神琉璃。そして例の美人なおばさん。

「……はい。それではオーディションを開始します」

さきほどのように八神琉璃が現場を仕切るのではなく、一番に口を開いたのは、真ん中に座るあの美人なおばさんだった。

5ヶ月前 No.12

asahi @banana2 ★SKhHm1cSFv_PHR

ハキハキとした、威圧感のある喋り方だ。
さきほどの八神琉璃も強豪のアイドル部を引っ張る頼もしさがあった。
だけどこの人の喋り方は有無を言わさぬような力がある。

「申し遅れました、立修アイドル部の監督をさせて頂いています。茨田(いばらだ)です」

えっ、この人が立修の監督……!
心の中で『おばさん』とか言っちゃってすみません。
さすが立修は、監督も美人なんだ……。すごい。

私たちはその言葉に軽くお辞儀をして答える。

「へー。誰かと思ってました」

え?

右のほうから声がおおよそこの場にそぐわない言葉を発した人物がいる。
その人は『そうだったんだー』とでも言いたげに、腕を組んで大きくうなずいていた。
番号札を見ると、8番。

部屋の中に『え? なんだ?』という雰囲気が充満する。

「……あ、ごめんなさい。続けてください。へへ」

その女子は少しだけ立ち上がって、両手をどうぞどうぞ、と茨田監督に向ける。

その様子を見て黛エリカと八神琉璃が何やらひそひそと話す。
『なんなのこの子?』とでも言っているんだろうか、と思って2人の表情を見ると、2人は楽しそうに笑っていた。

黛エリカの笑った顔、初めて見た。可愛すぎる……。

「ゴホン。では、1番の方からお名前と出身地をお願いします」

しかし茨田監督は全く表情を緩めていなかった。
私は思った。多分あの子、受かったとしても茨田監督にめっちゃしごかれる。

「はい」

美形すぎる1番の子は返事をして立ち上がる。

スラッとした長い手足、小さな顔、透き通るような白い肌、大きなクリクリとした目に鼻筋の通った綺麗な鼻、高めの身長。
当然黛エリカと顔は違うが、黛エリカを彷彿とさせるような完璧なルックスだった。

「三科 桜(みしな さくら)です。山口県出身です。よろしくお願いします」

なんて可愛い名前。でもあのルックスだから名前負けしてない。っていうかむしろピッタリだ。
山口県……そうか、強豪校である立修には色々な地方から人がくるって言ってたな。

山口がどうとかいうわけじゃないけど、その出身地を聞いて驚いた。
この人なら当然東京だと思っていた。というか、ロンドンとかパリとか言われても多分驚かない。
そんなギャップに何故か私が引き込まれていた。

三科さんが自己紹介をして、次々と自己紹介をしていく。
あっという間に私の番になった。

「はい、では次、5番の方」

茨田監督、八神琉璃、そして黛エリカの視線が私に向く。

憧れの人たちの目に今、私だけが写っていると考えたら、今にも倒れそうだ。
だけどこんなところで倒れてなんかいられない。
私は、絶対立修でアイドル部として活動したい……!

「み、みゃ……すみません、御山楓です。えと、東京都出身です。よろしくお願いします」

一発目から盛大に噛んでしまう。
顔を赤くして3人を見ると、3人はピクリとも表情を動かさず、真剣に私のことを見つめている。

やばい、と思って自己紹介を終えた後に精いっぱいの笑顔を作る。
お辞儀をすると、黛エリカと八神琉璃が軽く会釈した。

そして次に6番の子に視線が写っていく……。

その後の自己紹介は全く頭に入ってこなかった。

やばいやばい、絶対噛んだのとか、つたない喋り方とか減点だよね……。
こんなことならちゃんと家で毎日練習しとけばよかった。

「はい、えーっと、三本菅 麻紀(さんぼんすげ まき)です! 出身はこう見えて東京です!
好きなことは食べることです! よろしくお願いしますー!」

暗い気持ちになっている私の耳に、8番の子だけの大声だけがハッキリと聞こえてきた。

5ヶ月前 No.13

asahi @banana2 ★SKhHm1cSFv_PHR

「ありがとうございました」

10番の子が自己紹介を終えると、茨田監督が私たちの顔を一周見回して会釈した。

そして両隣にいる黛エリカと八神琉璃と何やら私たちに聞こえないようにヒソヒソと話す。
黛エリカはクールに『うん、うん』と相槌を打って、時折何か茨田監督に意見をしている。
八神琉璃は笑顔で『そうですね、はい』と言って黛エリカと茨田監督の言っていることを肯定していた。

話が一段落ついたのか、3人が私たちに向き直り、そして目を見る。
その時黛エリカと視線が一度会うが、すぐに反らされてしまった。

「これで1次試験は終わります。お疲れさまでした」

茨田監督がそう言ってもう一度私たちに会釈する。

えっ、という驚きの雰囲気を私たちが出してしまう。
それもそのはずだ。だって、まだ自己紹介しかしてない。こんな簡単なことで分かるんだろうか?

「そして、オーディションの結果を発表します」

真剣な表情で淡々と話す茨田監督。
しかし私たちはそのスピードに誰一人としてついていけてない。
だって、2次審査まであるはずだったはず……。

「へっ? 2次審査まであるんじゃないんですかー?」

ナイス、8番の子!
私たちが感じている疑問を自然に口にだす。この短時間で分かったこと、あの8番の子……三本菅麻紀はバカだ。
だけどそのバカが役に立った。

「その予定でしたが、あなたたち10人に関しては2次審査を行う必要がないと判断したため、今から結果を言い渡します」

「あなたたちは全員……」

茨田監督がスウッ、と息を吸って少し間をためる。

その0コンマ何秒かの時間が私にはすごく感じた。
だって今からあの憧れ続けた立修アイドル部への合否が言い渡されるんだから。

「合格です。これからよろしく」

5ヶ月前 No.14
ページ: 1

 
 
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