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狭間の屋敷

 ( 小説投稿城 )
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猫月 ルア @nekotuki ★yI9QHMxixf_jG9

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 ― 此の屋敷は“キミ”の為に ―

 狭間の屋敷の門はいつでも開いている。
 拒むモノは無い。
 屋敷の主は常にまっている。
 其れは甘い誘い。

+++

猫月ルアと言います。
不定期更新ながら小説を書いて行こうと思います。
感想などありましたらじゃんじゃんよろしくです。
脱字誤字あるかと思いますがあしからず。

9日前 No.0
関連リンク: 遠慮はNGだよ! 罪と代償 
切替: メイン記事(8) サブ記事 (3) ページ: 1


 
 

猫月 ルア @nekotuki ★yI9QHMxixf_jG9

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 其れはとある少女の話。

 名は日埜 ルア(ひの るあ)、上記のとおり16歳の女子高生だ。そんな彼女は普通の日本人、とは言えなかった。母がアメリカ人、父が日本人のハーフで、髪は黒いロングヘアーだが肌は白く瞳は深い青い色をしていた。
 そんな彼女には悩みがあった。ハーフ独特の外見から学校では奇異の目で見られていたのだ。彼女自身は普通に過ごしているつもりだがあまり人は寄りつかない。元々おとなしい性格もあり自分から人に話しかけられない為でもあった。そして彼女の悩みの一つはよくある“いじめ”に合わないかだ。半ば無視されている様な状況だがそれはいいのだ。本を読んでればいいのだから、だが暴力とかに移らないかと内心ひやひやしている。

「(今日も何もなかった)」

 毎日が恐怖の日々だった。気にし過ぎなのかもしれないが彼女は怖いのだ。自身の外見にコンプレックスがあるからだろう。別に此の肌や瞳の色が嫌いなわけではない。人と違う事が気になって仕方が無いのだ。

「買い物、何頼まれてたっけかな」

 学校にもあまり居たくないが彼女は家にも問題があった。両親の喧嘩だ。いつからだろうか、きっかけはわからないが小さなことからぶつかる様になっていた。喧嘩の最中は彼女は部屋に引きこもり音楽を聞いている。
そんな彼女の毎日は辛い事ばかりであまり楽しい事が無かった。

「あ、黒にゃんこ」

 塀の上に金目の猫が欠伸をして香箱座りをしている。そしてスッと猫の視線がルアに向かった。彼女は一瞬驚くものの手を伸ばして触っていいかの確認する様に猫の前で手を止める。逃げる様な様子もないので顎の下などを撫でる。

「君みたいにのんびり自由に過せたらいいのにね」

 何にもとらわれない生活ができたら。なんてことを考えつつ彼女は猫にお別れを言ってその場を去る。猫は金色の瞳を彼女の背に向け、もう一つ欠伸を漏らす。

9日前 No.1

猫月 ルア @nekotuki ★yI9QHMxixf_jG9

+ 2 +


 また、喧嘩の絶えない夜はやってくる。

 一階ではルアの両親が飽きずに喧嘩をしている。罵倒や物が壊れる音、それらを聞くごとに彼女の心が張り裂けそうだった。必死にイヤホンで大きな音を出してその場をしのぐ。

「もう嫌だ……」

 こんなことならいっそ別れてしまえばいいんだ、なんて彼女は思ってしまう。だが両親ともども世間体を気にする性格らしく、中々そうはなってくれない。いっそ家出してしまおうかと考えるも行くあてなどなく、きっとすぐ連れ戻されて喧嘩の種になるだけだ。

「中途半端、だなぁ」

 学校でも居場所を見つけられず、家も居場所にはなっていなかった。安らぐ場所は無く、只日々が過ぎるのを待っている。

《カリカリ》

 その時だ。窓の外からカリカリとひっかく音が聞こえた。まるで猫や犬がひっかくように。ルアはイヤホンを外し、カーテンを開ける。其処には昼間見た金色の瞳が綺麗な黒猫がどうやってきたのか窓の外で彼女を見ていた。

『迷ってるんだね? 迷うなら屋敷においで、主もお待ちかねだよぅ』

 彼女は息をのんだ。猫が喋ったのだ。勘違いじゃないだろうかとあたりを見るが其処は日埜家の敷地、それに彼女の部屋は二階にある。そして考えられないが猫しかいない。

「き、君が喋ったの?」

『おいで、何も持たず、窓を開けて出ておいでぃ』

 何かわからないが心が躍る様な気分。彼女は自分が狂ったのかもしれない。そう思ったがパーカーに短パンと言うラフな格好のまま窓の鍵を開けた。

8日前 No.2

猫月 ルア @nekotuki ★yI9QHMxixf_jG9

+ 3 +

 其れは心赴くままに。

 窓の鍵を開け、窓を開ける。猫は少し屋根の上を自由に歩く。彼女は出る一瞬、両親のいる部屋に視線をやる。なんとなく、もう会えないんじゃないかと言う直感の様なモノが彼女の脳裏によぎったのだ。別に両親が嫌いなわけではないのだ。だが彼女の心は好奇心が勝った。喋る猫がおいでと言うままについて行ってみよう、そう思ったのだ。
 そして一瞬だった、その一瞬。窓をくぐった瞬間空気が変わった。

 寒い様な心地良い様な風、青空、夕暮れの空、夜空がすべてそろった空。地面は四季折々の花々が所構わず咲いている。そんな丘の向こうに大きな西洋風の屋敷が佇んでいる。この光景自体異様なのに、屋敷だけがぽつりとあるのがとても不思議だった。

「……」

 言葉がでなかった。そしてふと気づけば彼女は開きっぱなしの屋敷の門前に立っていたのだ。足元を見れば色とりどりの石畳が屋敷の入口まで続いている。ハッと我に帰り後ろを振り向くと先ほどまで居たはずの場所、家が無い。其処には闇が広がっていた。真っ黒で、どこか怖いという感情を引きだす様な闇。

「外は見ない方がいい、心を病むよぅ」

 開かれた門の上に先ほどの黒猫が香箱座りでニンマリと笑っているように見えた。彼女は口をパクパクさせながら猫を見て頭の中でごちゃごちゃする思考を整えやっと言葉を放った。

「君、何? 此処、何処?」

 彼女は色々聞きたいことはたくさんあるが一応絞って二つ質問する。すると猫は尻尾をゆらゆら揺らしながらゆっくりとした動作で立ち上がり答える。

「ワタシはノォラ、あ、発音が面倒なら簡単にノラ、でいいよぅ」

 そう言いピョンと門の上から中の石畳の上に飛び降りまるで案内するかのように尻尾を揺らしながら少し進んでルアを待つ。

「此処は狭間の屋敷と呼ばれる空間、ワタシは案内人ならぬ案内猫ぉ」

7日前 No.3

猫月 ルア @nekotuki ★yI9QHMxixf_jG9

+ 4 +

 其れは最初の警告

 そう言うノォラはおいでと言わんばかりに尻尾で招く。ルアはこの先は全く違う世界に感じ躊躇うも後ろに行く気もしなくて門の中に入る。すると花の香りがふわりと香り何処か安堵する。

「ノラって呼ばせてもらうね、ねぇノラは此の屋敷の猫なの?」
「ワタシは此の屋敷の野良猫さぁ」

 掴みどころのない返事にルアはちょっと肩をすくめる。ゆっくり石造りの道を進む。此処まで来たら屋敷に住んでいる人に挨拶しなければ失礼だろうなんて考える。内心屋敷には何があるのかちょっとワクワクしている。不思議な事が起こってるのに何となく受け入れている自分にも驚いてはいる。此れが夢ならば面白い夢だ。

「屋敷に住んでる人って、どんな人? 挨拶したいし」
「どんな人、そうさねぇ、掴みどころは無いね、怖くはない、優しいし、なにしろ心が広いぃ」

 イマイチ想像できなかったが優しいと聞いて彼女は安心した。怖い人だったらどうしようとちょっと不安だったのだ。勝手に敷地に入って怒っていないかと、謝れば許してくれるかなと考える。そして今度はノォラに質問をする。

「何で此処は狭間の屋敷って呼ばれてるの?」
「そりゃぁ世界の、心の、どこかの狭間にあるからだよぅ」

 これまたいまいち分からない説明だったが彼女は不思議な場所にあるからと勝手に納得する。まるで物語の世界にやって来たように感じワクワクが強くなる。現実の喧騒なんて今は頭から抜け出ていた。
 そうこうしているうちに扉の前まで来ていた。綺麗に細工の施された扉だ。ドアノッカーも犬の顔の形になっていて面白い。

「えっと、まずはノックかな」
『おや、お嬢さんは常識がある』

 ルアはいきなりドアノッカーが口を開き吃驚して固まる。

『おやおや、今からこれだったら此の先大変ですよ?』

6日前 No.4

猫月 ルア @nekotuki ★yI9QHMxixf_jG9

+ 5 +

 其れは迷宮の入口かもしれない。

 ルアは其れを聞き此の先に何があるんだろうと考える。変わった人達がいるのか、それとも怖い事があるのか、考えるが答えは出ない。けれど好奇心がチクチクと彼女の心をうきだたせる。

「……でも、挨拶しなきゃ」

 ルアはそう言い犬の銜える輪に手を伸ばす。其れはまるで何かに後押しされるかのように。

《カンカンカン》

 ノックオンが響くと《ガチャリ》と鍵が開く音がする。するとノォラが足元を歩き話しかける。

「主は許可された、君は招かれた客、思う存分楽しんでねぃ」
「……入って良いんだよね?」
『鍵は開かれた、開いたドアはくぐるのが常識じゃないのかい?』

 そう言われルアはドアノブに出を伸ばす。そしてふとドアノッカーに「君の名前は?」と聞く。なんとなく、聞いておきたかったのだ。

『俺はノッカー、そのままさ、さぁ、迷子にならないようにお気をつけ』

 ノッカーはそう言うとまたドアノッカーとしての形にスッと戻っていく。そして彼女はゆっくりドアを開ける。中をそっと覗いてみると中はとても広く、奥には二階へ続く階段があり途中で二股に分かれ二階へと繋がっていた。彫刻や綺麗な花々で飾られていてとても綺麗にされた屋敷だと印象に残る。

「……おじゃましまーす」

 そう言って中に入る。玄関にももれなく引かれたモノクロタイルの絨毯を素足で踏む。柔らかくさわり心地のいい感触だ。そして彼女はノォラが入るのを待ち少し隙間を開けている。

「此処からはキミの思うままに、お気をつけ、また飲み込まれぬよぅ」

 そう言って扉はゆっくりと、かつ力強く閉められた。

5日前 No.5

猫月 ルア @nekotuki ★yI9QHMxixf_jG9

+ 6 +

其処から先は未知の領域。

閉められた扉を見て彼女は息をのんだ。そして慌ててドアノブを回すも何故か開かない。

《ガチャガチャガチャガチャ》

「案内人じゃないの?! 私1人は嫌だよ!」

 どうしてもまるで鍵でも閉められているかのように開かない。彼女はドアノブを回すのを諦めしばし呆然とする。綺麗に彫刻された壁や階段の手すりなどを見る。此の屋敷の主はセンスがいいのかとても綺麗な造りをしている。

「そうだ……入っちゃったんだから挨拶しなきゃ」

 半ば惰性で行動に移す。一歩、中に入りキョロキョロと辺りを見渡し人がいないか探す。もしかしたら人じゃないかもしれない、そう思いつつ彼女は深呼吸して声を出す。

「すみませーん、誰かいませんかぁ」

 そう大きめの声で問いかけるが返ってくるのは沈黙ばかり。彼女はそれに困ったなぁと思いつつ仕方が無いので地道に探すしかないだろうとまずは一階を探索することにした。
 一回のフロアは広く取られ、右の奥には大きな扉がある。なんとなく其処はダンスフロアかな、と憶測を立てまず左手に在る中ぐらいの大きさの扉に手をかける。

「……開かない」

 まるでまだ入ってはいけないと言いたげに扉は開かなかった。彼女は他に扉は無いので二階に行くしかないか、と思い階段の方に足を向ける。

「外から見たより広いんだね」

 何となく、そう呟くと彼女は素足で階段を上っていく。

― みずぼらしいのが来たよ ―
   ― 綺麗にしたげなきゃ ―

3日前 No.6

猫月 ルア @nekotuki ★yI9QHMxixf_jG9

+ 7 +

 その世界に染まる。

 彼女は階段を上りきった瞬間《キィ》という扉が開く音に反応しそちらを向く。階段を上った右手の奥の部屋がゆっくり開いた。覗き見えるに衣裳部屋の様に見える。色とりどりの男女問わない服の数々が丁寧に飾られている。彼女は好奇心の赴くまま不審にも思ったがそちらに足を向けた。

「あの、誰かいます?」

 部屋に入った瞬間、《バタン》と扉がひとりでにしまる。ルアは心臓がとび跳ねた。吃驚しすぎて硬直している。ちらりと日向くと扉は閉じられていた。そして彼女は部屋を見渡す。広い衣裳部屋で奥の方は大きめの姿見の綺麗な鏡が置かれている。彼女は心を決め中のほうに歩くと鏡に目がいく。鏡の縁には精霊の様な妖精の様な人が二人鏡を包むように掘られてある。

「綺麗な鏡」

 彼女はそう言い鏡を見る。鏡に自身の姿は此の屋敷にはにつかわないパーカーに短パン、足は素足でみずぼらしかった。だがこの姿でいるしかない以上考える余地もない。此処には色々な魅力的な服がある。だが其れに手を出すのは泥棒と一緒である。

『みずぼらしいったらありゃしないわね』
『じゃあ綺麗にしてあげればいいじゃない』

 何処からともなく声が聞こえルアはあたりをきょろきょろと見渡すが声の主は見えない。もう一度鏡を見た時だ。縁にあった二人の妖精の彫刻が無くなっている。まるで抜け出たかのようにいなくなっていた。そして鏡に映るルアの後ろに綺麗な手の平サイズの妖精が二人フワフワと飛んでいるのが見え振り向く。

『どんなのがいいかしら、ラピスラズリの瞳に合った濃い青が似合うわね』
『髪は編み込みにして青い星のバレッタね、靴は黒いレースアップブーツがいいわ』

 ルアの周りをくるくると回る「え」とか「へ?」とか戸惑ってる彼女を余所に妖精等は部屋の至る所から靴やらアクセサリー等を出したり、ルアの髪を持ち上げで髪型を試したりいろいろしている。

『服は決まってラピスラズリのエプロンドレスね』
『さぁ目を瞑って、すぐに染めてあげる』

1日前 No.7

猫月 ルア @nekotuki ★yI9QHMxixf_jG9

+ 8 +

 其れは魔法の様に。

 『『さぁ目を開けて』』

 静かに耳元でささやかれルアは目を開ける。鏡に映る自分を見て息をのんだ。髪は綺麗に一部だけ編み込みにして青い星のバレッタで留められ先ほどよりつやが出てさらりと腰まで伸びている。そしてパーカー短パンだったはずの服が青いエプロンドレスを着用していて白と黒のニーハイに黒のレースアップブーツを履いている。首には青い水滴の形の綺麗な石の付いたチョーカー。よくよく見ると薄いが化粧もされている。

「いつの間に」
『此れで見れた形になったわね』
『此れで失礼のない姿になったわ』

 2人の妖精はくすくす笑いながらそう言う。ルアは「見れた形か……」と落胆する。確かにパーカー短パンは此の綺麗な屋敷には似合わなかったかもしれないが結構気に入っていた楽な格好だったのだ。確かにこの格好はとても可愛らしく自分にも似合っているとは思う。でも着慣れないせいかちょっと落ち付かない。

「此の服貰っちゃって良かったの?」
『安心して、此処は衣裳部屋よ?』
『安心して、此処は綺麗にするために在るの』

 イマイチ問いに答えられてるのか分からないがいいのだという事にしてルアは二人の妖精に礼を言う。すると2人は顔を見合わせくすくす笑う。

『どういたしまして、貴女は大事な大事なお客様』
『来客が喜ぶなら何でも致しましょう』

 クスクスと笑いつつ二人は鏡に戻っていく。

『この部屋の扉は開かれた』
『この部屋の役目はもう終わったわ』

13時間前 No.8
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