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忌み子と鬼の子の物語

 ( 小説投稿城 )
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紀田臨海 @kidarinkai☆V7aNUNRHqr6 ★iPhone=8trKAR6fNg



「殺れ。あいつは使い物にならんゴミだ。」

「待ってください…!その子は私の子供なんです!」

「お前も使い物にならない。この畜生腹が_____!」



双子は忌み子と呼ばれていた時代。
風習や差別で苦しむ時代。
小さな神社で生まれた2人の子供は



”忌み子”


でした____。

メモ2017/08/21 00:12 : 紀田臨海☆V7aNUNRHqr6 @kidarinkai★iPhone-pXr7qk8ug5

▼登場人物▼


イチゴ(真理)

双子として生まれてきた女の子。

生きることを許されるもののあまり良いイメージを持たれていない。


イミゴ(至?)

双子として生まれてきた男の子。

生きることを許されなく、赤ん坊だったときに金棒で頭を叩かれ処分され、鬼が祀ってある「鬼神社」に祀られることになった。


ミツバ

イチゴ、イミゴの母親。

2人が生まれることを誰よりも楽しみにしており、生まれたときは喜びを隠せなかった。

が、生まれてきたのは双子だった為、「畜生腹」と呼ばれ差別される身となり、蔵に閉じ込められた。

だが、2人には「幸せを味あわせてあげたい」と語る。


夏目(なつめ)

イチゴ、イミゴの父親。

2人が生まれることを楽しみにしており、生まれる前から祝福していた。

が、生まれてきたのは双子だった為、2人を処分しようとする村人に立ち向かい、最終的には「俺を処刑しろ」と言い処刑された(自分を処刑することによって、自分の子供が助かるかと思った為)


村長、村人

双子は災いをもたらす生物という考えをしており、双子が生まれた場合はどちらかを処分する。

イミゴだけでなく、他の赤ん坊までも処分し、生かしている方は屋敷で雇って育てている。

関連リンク: 色々話そう(>ω<*) 
ページ: 1

 
 

紀田臨海 @kidarinkai☆V7aNUNRHqr6 ★iPhone=8trKAR6fNg

「私、子供を授かったんです。」

差別や風習で苦しむ時代。
子供をおめでたいと言えない時代。
そんな時代の中、一人の女性はおめでたく祝福してほしそうに笑っていた。

「おめでとうさん……」 「良かったですね」

祝福の声は上がるものの顔は冷めきった表情。
とても良いこととは思えないようだった。
もし、双子が生まれたら__?


この時代、双子が生まれたら”忌み子”として、どちらかが処刑されるのである。

1ヶ月前 No.1

紀田臨海 @kidarinkai☆V7aNUNRHqr6 ★iPhone=8trKAR6fNg

「貴方、もうすぐこの子たちが生まれるのですよ!楽しみですね!」

「ああ。村になんと言われようとこいつらの命は預かった」

「良かった。貴方ならきっとそう言ってくれると信じてたもの。安心したわ」

お腹を撫でながら満足そうに微笑む夫婦。
世に子供が生まれ、こうして愛を語り合えるのも今だけかもしれない___そんな不安を思うことなく2人は喜んだ。
こうして、一日目の一夜が明けた。

1ヶ月前 No.2

紀田臨海 @kidarinkai☆V7aNUNRHqr6 ★iPhone=8trKAR6fNg

「オギャアオギャ……うっ」

「…ん?う、生まれてる…!」

目を覚ますと既に赤ちゃんは保護されていた。
泣き止まんばかりに泣いては泣いて、それはさぞかしその夫婦にとっては天使の囀りのように聞こえた。

「貴方…!生まれています…痛みもなくて全然気付かなかった……け、ど」

言い終える前に妻のミツバは気付いた。
我が赤ん坊が村人たちに取り囲まれていることに。
それも険しい顔で睨むように。

「あの…何なんですか?」

「殺れ。あいつは使い物にならんゴミだ。」

1人が怒鳴るように言い放った。
その言葉を聞くと共に村人たちは「そうだそうだ」「だいたい縁起悪いんだよ」などと1人の村人の意見に賛成するかのように口を揃えてミツバに物申した。

「待ってください___!その子は私の子供なんです!」

やっとのことで口を開けたミツバ。
我が子を守ろうと我が子に手を伸ばそうとする___が

「お前も使い物にならん。この畜生腹が___!」

ミツバを蹴り飛ばし、2人の赤ん坊を抱いては村人たちは口を開けた。

「こいつは忌み子だ」「よくこんなやつ生まれてきたな」「災いが起こる、不幸の予感がする」

「そ、そんな…!どうして…!」

双子は忌み子と呼ばれていた時代。
風習や差別で苦しむ時代。
小さな神社で生まれた2人の子供は



”忌み子”


でした____。

1ヶ月前 No.3

紀田臨海 @kidarinkai☆V7aNUNRHqr6 ★iPhone=8trKAR6fNg

「ま、待て…!!」

「ん?お前はこの忌み子の父親か?」

「忌み子なんかじゃねぇ。こいつらは俺らが望んで生まれたきたんだ。命を預かるのはお前らじゃなくて俺とミツバだ!」

ミツバの夫、夏目は叫んだ。
夏目もミツバ同様、赤ん坊に手を伸ばそうとする。
だが、大人数に2人じゃ立ち向かえもしない。
案の定、2人は蹴られ叩かれと暴行を加えられた挙句、赤ん坊を守ることすらできなかった。

「こいつら、どちらかを処刑し、もう1人は生かせてやる。さあ、どうする?」

「そ、そんな…っ!やめてください!」

ミツバは泣き崩れ、絶望したようになっていた。
夏目も同様、ただただ涙を拭うだけだった。

「私たちにとっては、2人は大事な子供なんです。今はまだ赤ん坊だけど、まだこの手にある幸せを味あわせてあげたい…!」

「処刑するなら、俺を処刑しろ。ミツバと赤ん坊は生かせてやりてぇんだ…」

「2人揃って揃いにも程がある。まあ、構わん。おい、お前ら、ミツバは蔵の中に閉じ込めておけ、夏目はお望み通り処刑だ。村長命令だ、良いな?」

「あ、貴方…!嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ…!あああ!」

引きずられながらも足掻くミツバ。
だが、想いも手も届くはずがなく___蔵に入れられ、鍵をかけられ閉じ込められた。

「ミツバ…すまねぇ……っ!!!」

___守ることができなくて。
言い終える前に夏目は馬乗り状態にされ、そこから刀が心臓を貫き___処刑された。

1ヶ月前 No.4

紀田臨海 @kidarinkai☆V7aNUNRHqr6 ★iPhone=8trKAR6fNg

「村長、こいつ、どうします?」

「忌み子なんだ、そいつらは。気味が悪い……女の方は生かせておけ、最初に生まれたからな。男の方は鬼神社、鬼を祀ってある神社に置いておけ」

「村長、生かしておくのですか?こいつ」

村人は男の方を指さした。
男の赤ん坊はぐっすりと眠っている。
泣こうともしないのである。

「正気か。こいつも殺るに決まってんだろ。双子は災いをもたらす生物なんだぞ?」

「はい、分かりました。では、こちらで処分するとします」

そう言って村人は男の赤ん坊を抱き抱え鬼神社へと向かった。
鬼神社へ着くと、鬼と一緒に祀ってある金棒で赤ん坊の頭を叩いた。

「この忌み子が。死んじまえ…!」

その表情は凍りついており、嘲笑うかのように笑みを浮かべていた。
赤ん坊の額からは血が流れている。
死んだことを確かめてから鬼神社に赤ん坊を置いた。

1ヶ月前 No.5

紀田臨海 @kidarinkai☆V7aNUNRHqr6 ★iPhone=AYOj85Tkp7

____あの村はどうなったのだろう。


____2人の赤ん坊が殺されてから早10年は経つ。


「村長、これからどこかへお出かけですか?」

実の母親が蔵に閉じ込められていることも、実の父親が村長と村人によって殺されたことも、実の弟が生まれてすぐ金棒で殴られ殺されたことも何も知らない少女。

「イチゴ、お前はここで待っておけ。散歩しに行くだけだ」

「はい、村長」

村長のもとで働いている少女はイチゴ。
あのあと、イチゴは生きることを許され、村長は面倒を見ている。
その代わり、お前は私のもとで仕えろ___との”交換条件”だった。
何があったのかも知らずに育てられた少女には”イチゴ”という名前が付けられた。
もちろん、付けたのは村長である。

「暇だなぁ…私、生まれたときからずっと1人で村長に拾われたんだ…村長いなかったら私いなかったかもね」

もうイチゴは10歳である。
時の流れは早いものだ。

1ヶ月前 No.6

紀田臨海 @kidarinkai☆V7aNUNRHqr6 ★iPhone=AYOj85Tkp7

___その頃、村長は蔵に向かっていた。
閉じ込めてはいるものの水や食料をこうして調達しに来ているのである。

「ミツバ、生きちょるか?」

「村長___どうして私のこと、ここに閉じ込めておいたくせにこうして水や食料を分けてくれるんですか…?」

「勝手じゃ。お前もよく、10年もここで生きれるな」

「……」

「まあ構わん。お前、イミゴのことだが…」

「イミゴなんて言わないで…!!例え死んでしまった身だとしても、守れなかったとしても、あの子はイミゴなんかじゃない!私、名前はちゃんと考えてあるんです…」

「ほう…」

「真理と至、こう考えていたんです。けど、もう真理にはイチゴって名前が付いてたんですね…真理は幸せですか?」

「ああ…ちゃんと生きとるし笑っとる」

「そっか…せめて、私があの子たちの傍にいたかった___」

そう言いながらどこか寂しそうに笑うミツバ。
ミツバの目には一粒の涙があった。
だが、その一粒の涙はどんな涙よりも儚かった。

1ヶ月前 No.7

紀田臨海 @kidarinkai☆V7aNUNRHqr6 ★iPhone=AYOj85Tkp7

「村長!おかえりさーい!」

村長が帰ってくるとすぐに玄関の方まで出迎えるイチゴ。
そんなイチゴの表情を見ると村長は悲しそうな顔をする。
生かしておいたイチゴ、最初は単に生かせておけば良いと思っていたもののいつしか本当に生きてほしいと願うのだった。
イミゴを生かしていたらどうなってたのだろう___イチゴみたいな想いを持つようになっていたのだろうか。

「イチゴ、もう今日は休みなさい。疲れただろうに」

「村長…?私はまだ元気ですよ!」

「そうかい」

「あ、おつかい!おつかいに行きましょうか…?っていうか行かせてください!」

「あ、ああ、構わんが…くれぐれも気をつけて」

「はい!じゃあ、行ってきますね!」

笑顔で屋敷を飛び出たイチゴ。
そんなイチゴの背中を遠く感じる村長は一つ、ため息を漏らしどこか遠くをみていた。

1ヶ月前 No.8

紀田臨海 @kidarinkai☆V7aNUNRHqr6 ★iPhone=x9UUJzd6xY

「はぁ…やっぱりいくら村とは広いから歩くと疲れるなー」

イチゴは歩くことに慣れておらず、また外の環境にも慣れていない為、すぐに疲れ果ててしまうことが多い。

「けど!ずっと屋敷に籠ってても嫌だし!お店で色々なもの買っちゃうおうかな」

早足で売り場まで向かうイチゴ。
そんなイチゴを通る人たちは冷たい視線で見ている。
「忌み子の片割れだ」「村長は優しいねぇ」「気味が悪い、行くよ」などと村人たちはヒソヒソ声で話している。
その声はもちろん、イチゴには聞こえているもののイチゴは気にしてない様子。

「私のこと話してるのかな…?でも私、忌み子じゃないし…何も分からないや」

イチゴはまた早足で売り場を急ぐ。
夜遅くに帰ることは村長にとっても心配だろう。なんせまだイチゴは10歳。まだ幼い年齢と言っても加減ではない。
そう思っていると目的地が見えてくる。イチゴは走って行き、売り場の人に声をかける。

「すみません!あの、欲しいものがあります!」

「ん?いらっしゃい、お嬢ちゃん。で、欲しい品物は何かな?……の前に!!!」

店主は大きく声を上げた。
その声にイチゴは驚きを隠せず…

「な、何ですか?」

「お嬢ちゃん、聞いちゃ悪いが住んでるとこ、答えてくれない?」

「え、ええっと……村長の屋敷です…?」

「屋敷…?おっとこりゃ失礼した。村長の娘にあたる存在かな…?すまねぇな」

「はい…」

何でわざわざ住んでるところを聞かれなきゃいけないのだろう…?という疑問はイチゴの頭の片隅に残っている。
聞いてどうしたかったのだろう、誰も聞いて得はしない。
でも、店主も店主で何かしらの事情があるのかも!と納得したイチゴは聞くことをやめた。

「おい、若旦那の店主!そいつは、10年前に生まれた忌み子の片割れだ!不吉だ不吉!」

「えっ!?」

いきなり後ろから大きな声を上げられ着物を引っ張られる。
その衝撃で後ろに転び倒れてしまったイチゴを村人たちはニヤニヤしながらみていた。

1ヶ月前 No.9

紀田臨海 @kidarinkai☆V7aNUNRHqr6 ★iPhone=x9UUJzd6xY

「い、忌み子!?」

若旦那の店主と呼ばれた男は立ち上がるとイチゴに近づきイチゴの体を蹴り飛ばした。
一瞬の出来事だったが、イチゴにとっては怖いこと。
涙を堪えきれず、その場で涙を零す。

「泣いてんじゃねぇぞ!さっさとこの村から出てけ!いや、もうこの世から出てけ!」

「うわっ」

また他の客が来て、その客が泣いてるイチゴをみるなり声を上げた。

「うわっ、汚ぇ!」

「もうやめてよ!!!」

やっとのことで言葉を発することのできたイチゴ。
だが、イチゴと大人数の大人、イチゴが勝つわけがない。

「お前は忌み子の片割れなんだよ!要らねぇんだよ!」

「早くここから去りなさいよ。気味悪いのよ!」

「お前の父親は殺され、母親は閉じ込められ、弟も殺された。お前が生まれてこなければこんな騒ぎにはならなかったんだぞ?」

「村長の屋敷に住んでるなんて嘘なんでしょ、村長の娘気取りもやめたら?」

イチゴの頭に降りかかってくる言葉はイチゴ自身を貶した。
イチゴを傷つけ、何も知らないイチゴを否定した。

1ヶ月前 No.10

紀田臨海 @kidarinkai☆V7aNUNRHqr6 ★iPhone=x9UUJzd6xY

「ったく……ド派手に暴れ回ってんな、百々目鬼」

茂みからこちらを見ている狐の仮面を頭につけた少年と謎の仮面をつけて布を着物のようにしている百々目鬼と呼ばれた者がこちらを見ている。
だが、その2人は他とは違う。
____明らかに人間ではない。
この2人はこの騒ぎに加担しなかった。

「百々目鬼、助けに行こう」

コクリ、と頷く人物、百々目鬼。
その2人は早速騒ぎになっている現場へと向かった。

「何してんだよウラァァァァァ!!!」

狐の仮面を頭につけた少年が金棒を持ち、金棒を振りかざす。
すると、金棒からは風が吹き、地面はひび割れていく。

「お、お前は…!」

「お、鬼だァ!!!」

村人たちは一斉に声を上げ、木に火がついたものや棒を持って一斉に鬼に走っていく。

「ヒッ…」

イチゴはすぐに逃げた。
今しかない、今しか逃げることができない!
そう確信したイチゴは村人たちとは反対の方向へ走っていった。

「助けてくれたのかな……それとも……」

___さっき言ってた、私がいるから早速不吉なことが起きたってこと?

1ヶ月前 No.11

紀田臨海 @kidarinkai☆V7aNUNRHqr6 ★iPhone=x9UUJzd6xY

“ 不 吉 ”

私がいるだけで不吉になる、私は忌み子。
前に村長から聞いたことがある。
「双子は忌み子と言われ処分される。でも両方が死ぬわけじゃない。お前は生きることを普通だと思っていると思うじゃろ?だが、その普通は実は普通のようで普通じゃないんだ。今を生きろ、この村と共に」
そう言って村長は幼い私に大切なことを教えてくれたんだな、と思った。
けど、私は双子じゃない。
また、“汚れた子、不吉、望まれずに生まれた存在”という意味もあるみたい。
私はそんな人間…?

「本当は私は双子で、もう1人が私のせいで殺された……のかな?」

きっと村長に聞けば何かわかる、いや、教えてくれるはず…!
屋敷に戻って村長に聞こうかな。

「戻るな」

帰ろうとしたとき、後ろから声が聞こえた。
声の主の方を振り向くと、先ほどの少年と百々目鬼と呼ばれた人が立っていた。

「お前の居場所は、あんなとこにはないんだよ。お前のいべき居場所は、他にある」

とても冷たい声で言い放った。

1ヶ月前 No.12

削除済み @kidarinkai ★iPhone=x9UUJzd6xY

【記事主より削除】 ( 2017/08/04 00:13 )

1ヶ月前 No.13

紀田臨海 @kidarinkai☆V7aNUNRHqr6 ★iPhone=41ZAhnEW2N

「お前の居場所は、あんなとこにはないんだよ。お前のいべき居場所は、他にある」

「私の居場所は他にあるの……?けど、村長は私に「この村と共に生きろ」って言ったんだ。だから、その気持ちを裏切れないよ」

「私に居場所を提供してくれたのも村長、だから」と言うイチゴ。
イチゴにとって村長は善者なのだろうか……それは誰にもわからない。

「あなたはどこにいたの?この村の人?」

「……神社」

「ここの神社?珍しいね、神社にいるなんて」

「この村は俺を受け入れてくれはしない。ひどい村だ……お前もここを去るがよろし。お前にも合わないんじゃないか?」

「たしかに、さっきあんなとこされたけど!けど!私はこの村自体は嫌いじゃない。村の人たちが何か勘違いしてるんだよ!」

本当に村が好きなんだな、と少年は思った。少年はイチゴを心配しながらもこのことを受け入れたかのように言った。

「わかった、けど俺はこの件について見逃したりはしない。今度こんなことがあったら俺はこの村を……いや、この村人たちを殺す___!」

「やめんかい、脅すつもりはないかもしれんが、この言葉で怯えたら逆効果だぞ?」

「百々目鬼……けど俺は…!」

「分かってる。お嬢さん、こいつは心配しているだけなんだ。くれぐれも勘違いはしないでやってくれ、すまないね」

百々目鬼の顔は布で覆われていて見えない。けど、イチゴのことを心配して曇った顔をしているのだろう。

「ありがとう……貴方の名前は?」

イチゴは少年の方を見た。
少年は一瞬戸惑ったがすぐに「至…」と答えた。

「そっか!至くん…っていうんだね!」

「何も付けなくて良い。それと、あまり俺のことを村に言わないようにしてほしい。名前だけでバレたら厄介になるから_____今日のこと、村長に黙っておくんだぞ。変に話すなよ」

そう言うと、至と百々目鬼は歩いて帰っていった。
ふとイチゴはいくつか疑問に思ったことが多数ある。

「どうして言ったら駄目なんだろう……どうしてあの子は金棒を持っているの…?」

1ヶ月前 No.14

紀田臨海 @kidarinkai☆V7aNUNRHqr6 ★iPhone=41ZAhnEW2N

「俺のこと、警戒してないみたいだな、あいつ」

「純粋すぎたんだ。きっと」

「そうか…」

「至、お前は人間として生きるのか?それとも鬼として生きるのか?」

「…俺は最初から鬼として生きてるつもりだ。人間として生きる道を選んだ覚えはない。


















俺はこの村にとっての“イミゴ”だからだよ」

1ヶ月前 No.15

紀田臨海 @kidarinkai☆V7aNUNRHqr6 ★iPhone=41ZAhnEW2N

____その頃、イチゴは

「村長!ただいま帰ってきました!」

元気よく玄関のドアを開いてイチゴが顔を覗かせる。
村長は慌てて玄関へ向かった。

「おお、イチゴ。帰ったんか。で、何を買ってきたんだ?」

「…はっ!忘れた…」

忌み子の片割れと言われ、お買い物気分じゃなかったのだ。

「気にしとらん。村はどうじゃった?」

「えっと、すごく賑わっててみんな楽しそうでした!」

偽りを語る。
イチゴの前に見えた村は賑わっててみんな楽しそうでもない。
みんながみんな苦しそうで冷たくて酷く醜かった。
そして“差別”が起きている。
そんな村を目にしたイチゴ。
でも、真実を語ったら何か心配され、お手を煩わせるかもしれない。
何も知らないふりをしよう。

「そうか。それは良かった。村も悪いものじゃない」

「そうですね…でも今日は疲れちゃったから寝ます、おやすみなさい」

「ああ、おやすみ」

イチゴが屋敷の奥へ向かっていく。
イチゴがいなくなったことを確認すると再び机に戻り、村長はボソリと呟いた。

「イミゴが…この村にいる……死んでなかったということか…」

1ヶ月前 No.16

紀田臨海 @kidarinkai☆V7aNUNRHqr6 ★iPhone=41ZAhnEW2N

「イミゴは殺したんだよな?」

村長は夜遅く、村人たちを屋敷に招いて問いかける。
もちろん、この話はイチゴには内密である。

「はい、確かに鬼神社の金棒であいつの頭を叩きました。ちゃんと血も流しましたし意識を失っただけじゃなく、完全に死にましたよ」

「まさか…鬼になって生まれ変わったとか?」

「は、はぁ!?そんな訳ないだろ!?鳥肌立つほど気味悪いぞ!」

村人たちは話し合う。
本当は死んでなかった、生まれ変わった……などと意見を出し合っている。
もちろん、誰ひとりイミゴの行方を知らない。

「で!でも、イミゴによく似た少年が…!」

「怖いこと言うねぇ。これもイチゴちゃんの災いっていうやつかい?」

1人の村人は怪しそうに口角をあげる。
大抵の人間はイチゴのことを“イミゴの片割れ”と呼ぶかこの村人はどうやら違うようだ。

「本当にイミゴにそっくりなんだ。あの汚らわしい雰囲気は間違いねぇ!」

「イチゴちゃんやお母様とは似ていたのかい?本当にただの人間だったら?」

「うーん……けど!ってかお前さっきから何なんだ!?」

「誰だお前?イミゴとイチゴに興味無いように見えるが…?」

「当たり前だろう。子供の姉のことも、姉の弟のことも_________もう知り尽くしちゃってるからな。いて災いになるのはお前らの方だ」

被り物が落ち、着物を脱いだ人物。
その人物は真っ黒であり、手や足には無数の目がついている。
そして頭には立派に生えた角。

「お、鬼だ…!!!」

「に、逃げましょう!村長!」

「ヒィ…!だ、お前は…!」

「百々目鬼(トドメキ)です。村長、我のことを……なんだと思ってたのですか?」

1ヶ月前 No.17

紀田臨海 @kidarinkai☆V7aNUNRHqr6 ★iPhone=Nq1kd6ZtlX

百々目鬼_____
それは何年も前にこの村で差別を受けた。
もちろん、彼は世に伝えられていない頃からいた“鬼の子”であった。
鬼が世に知れ渡ってない時代(とき)、彼はそこに立っていた。

「みんな、目が二つある……僕は体中に目がたくさんある…」

布で全身を覆い、顔だけを出している。
他の鬼だって目が二つなのにどうして僕だけ____彼はそう思っていた。

「僕は鬼、そんな鬼と仲良くしてくれる人はいない。きっと、この先、僕の味方は誰もいないだろう…」

全身を隠すことしかできない。
だから、彼は隠した。
彼は時代が変わってもずっと体だけを隠し、ずっと1人で生きていた。



だが、ある日のこと。
その日は灼熱の太陽が燃えているように日差しが強く、暑く、布を覆っている人物は不審に思われた。

「ちょいとそこの方、暑くないのかね?」

「…ええ。暑くないですよ。こうしておかなくてはなりませんから」

「脱がないのか?」

「ええ。そんなにも気になります?」

「それは服として使ってるならまだしも何重にも気重ねてるように見えたのでね」

「そうですか。では、私はそろそろ…」

1ヶ月前 No.18

紀田臨海 @kidarinkai☆V7aNUNRHqr6 ★iPhone=pXr7qk8ug5

「はい、さようなら」

村人は何の疑いもなく百々目鬼を止めようとはしなかった。
この頃、村は平和だったのかもしれない。
まだ、差別は生まれてなかったのかもしれない。
そう、百々目鬼は確信してまた歩き出した。

「あーあ…またアイツ、死体処理してんぞ?」

「本当だ。可哀想だねぇ…生き物が死ぬなんて不吉だなぁ」

どこからともなく声が聞こえてきた。
辺りを見回すと、そこには少女…いや、女性が生き物の死体を処理していた。

「ごめんね…生きたかったよね。けど、清らかに浄土へ行けますように…!どうか、向こうでは幸せでいて!」

女性は手を合わせて目を瞑っていた。
周りは女性に同情するだけだったものの、百々目鬼は女性の方へ歩いて行き、話しかけた。

「処理大変ですね。手伝いましょうか?」

そこには無残な姿をしていた生き物、いや、動物がいた。
白目になっており、全身血まみれ。
そして何より足が無くなっていた。
その動物を囲むかのように蟻は群がっており、女性はただ手を合わせて立っていた。

「いいえ、大変も何もありませんよ。お気遣いありがとうございます。あっ……でも!強いて言うなら、この動物が向こうの世界で幸せになれるように祈ってくださらないでしょうか?」

「構いませんよ。同じ生き物なんですもの。貴方は当たり前のことを当たり前のようにできる、優しい方ですね」

この方なら、きっと僕を受け入れてくれる。
そんな気がした。

1ヶ月前 No.19

紀田臨海 @kidarinkai☆V7aNUNRHqr6 ★iPhone=pXr7qk8ug5

「優しい…なんて言われ慣れてない言葉。何だか嬉しい…!」

口元が微かに笑っている、そんな感じがした。
村人や通行人たちは彼女に同情するだけだが、百々目鬼だけは足を止めた。
そのことも、きっと嬉しかったのだろう。

「さてと、そろそろ私は行きますか……良い出会いをありがとう!」

「あっ…ねえ待って!」

百々目鬼が歩き出そうとすると女性がそれを止めた。
何かあったのか?と百々目鬼は恐る恐る振り向くと女性は笑顔だった。
すると笑顔で女性はこう言った。

「ここで出会えたのも何かの縁だと思いませんか?私、貴方のような方との出会いを広げたい…!会って早々の話かもしれない、けれど!ここで別れるのは惜しい気がする…」

その言葉に百々目鬼はびっくりした。
まさか、こんなことあるなんて……予想外であった。
でも、せっかくの機会。
こんな機会を無駄にしたくなかった。
それに、百々目鬼自身も悪い気はしなかったのだった。

「構いません、それはこちらも一緒です。貴方のような優しい方と出会えたこと、光栄に思いますし!」

「やった…!ありがとうございます!私は市(イチ)って言います。貴方は?」

「僕は、百々目鬼。名は汚らわしいものかもしれんが…」

1ヶ月前 No.20

紀田臨海 @kidarinkai☆V7aNUNRHqr6 ★iPhone=pXr7qk8ug5

「百々目鬼…さん?」

「ああ。百の目の鬼、と書いて百々目鬼と読むんだ…」

「へぇ…!百の目の鬼…鬼に百の目があったらすごいですね。強いんだろうな…!」

市はすっかり百々目鬼に興味を示していた。
だが、市は百々目鬼が本当の鬼と言うことも、百の目の鬼を持っているということも何も知らない。
それなのに本当に褒めていた。

「百々目鬼、さん!これから私たち、仲良くしましょうね?また、明日ここで会えますか?」

「構わない。市さんこそ僕で良ければまたここで会いましょう…いや、今度は水車が回っている場所で」

「はい…!明日が楽しみです…!」

2人は会う約束を共に交わし、“また明日”だけは誓った。




日が経ち____


2人はあれから何度も会っては話していた。
これで何日、いや、何週間、いや、何ヶ月経ったのだろうか。


「百々目鬼さん!こんにちは!」

「市さん。良かった、また会えて!」

「当然ですよ。あ、それより“さん”を付けなくて構いませんよ?私は自然と愛称になっちゃってますが…」

「じゃあ、市…で。あ、そうだ、市」

「はい?」

「誰かに秘密を共有したことはある…?」

「えっ!?秘密…!?」

「ああ、気になってしまってね」

もう何ヶ月も会っている仲なのだ。
そろそろ百々目鬼も自分のことを話さないと、と決心していた。
簡単に言えることでも簡単に信じてもらえることでもないかもしれないが、自分は鬼の子、百の目を持つ鬼であった。

「隠してることはないんです。何も……けど、百々目鬼さんになら話したい。私は“捨てられた子”なんです」

「捨て子…!?」

「はい。父親にも母親にも愛されずに生まれてきてずっと神社の宮司さんに育てられてきて神社の宮司さんに真実を教えられた。お前は捨てられた子、私はお前に本当の愛を注ぐことはできない……けれど必ず護るから、と」

唖然とした。
さぞかし辛い思いをして、それに耐えてきたのだろう。
そして宮司さんにその事実を言われたときは衝撃的だったはずだ。
だからだろうか、彼女が時より切なそうになるのは。
彼女が骸となった動物たちのことを放って置けず、何か言われても助けているのは。
きっと、自分と同じ気持ちの犠牲者を増やしたくないのだろう。
彼女の優しさが心に染みた今、自分の発言に後悔し、どう接していいのか分からなかった。

「その神社は今だって生きています。宮司さんがいなくなった今、跡継ぎはいなくなった。けれど、私はあの神社が好きだ…私を迎えてくれた神社と宮司さんが好き…!」

「神社だって宮司さんだって、市のような優しい子が生まれてきてくれて、市の存在に感謝している。我も、市がいてくれて良かった。市と出会えたことにも感謝している。だから、その気持ちを忘れないでくれ…!」

1ヶ月前 No.21

紀田臨海 @kidarinkai☆V7aNUNRHqr6 ★iPhone=pXr7qk8ug5

「!?百々目鬼さん…!」

「あ、いや!その、なんだ……すまない!けど、本当に思ったことだ…!」

目を丸くして唖然とする市。
だが、その後クスッと笑みを零して続けた。

「嬉しい。純粋に嬉しい!」

「良かった。本心を言ったまでだ。もっと自信を持って生きてほしい、ただそれだけだ」

「ありがとうございます!ただ、その一言だけで強くなれた気がした。百々目鬼さんに励まされた。百々目鬼さんに優しさと愛を教えてもらった。私、そのことが単純に純粋に嬉しいだけ…!」

「ありがとう、本当に…」

励まされたのはこっちだ、とは言わずただ見つめ合うだけだった。
人間から避け、自分から避け、鬼としてただただ隠れながら生きてきた百々目鬼。
そんな百々目鬼はやっと信用できる人間に出会えた。
それが“市”だったのだ。
市には感謝してもしきれないほど。
きっと市でもこの気持ちは分からないだろう。

1ヶ月前 No.22

紀田臨海 @kidarinkai☆V7aNUNRHqr6 ★iPhone=pXr7qk8ug5

今なら、きっと言える。
言わなくちゃいけない。

___心で確信した。
___自分も鬼であることを言わないと。

「市、あのさ突然で、すまないが実は隠してることがあるんだ」

「隠してる、こと?」

「私…いいや、我はそのことを市に話したいんだ!」

「構いませんよ。教えてください」

「ああ、我はずっと姿を隠して生きてきた。それは我が…“鬼”だからだ。鬼であることを恐怖に、恥を感じ、我はずっと自分の心の中の鳥籠に隠れていた…」

「お、鬼!?百々目鬼さん…!?」

目を丸くして声を上げる市。
驚きを隠せずにいる様子を気にすることなく百々目鬼は話を続けた。

「まだ、世に鬼は伝わってない時代だ。でも鬼が世に知れ渡れば、村は鬼を恐れやがて人間の方から逆襲される。だから、お願いだ_____お前と我が黄泉(よみ)の国に行くまでで良い、この秘密をお互いに隠しておかないか?」

1ヶ月前 No.23

紀田臨海 @kidarinkai☆V7aNUNRHqr6 ★iPhone=pXr7qk8ug5

「誰にも言いませんよ。言っても利益を得ることじゃないじゃないですか。得たとしても言いませんけどね!」

鬼を捕まえれば恐らく報酬はたくさん貰えるだろう。
世に伝わっていない為、さらに見世物にできるだろう。
それなのに市は何も気にしておらず、むしろ今まで通りだった。

「生まれついたときから、この体だった。誰が我らを作り出したのかも分からないまま生きてきたんだ。信用ならないかもしれないが事実だ」

「百々目鬼さんが影で苦労していたことも分かりますよ。だからこそ私たちは支え合うべきなんではないでしょうか?私はもちろん、最初から信じていましたよ!」

ああ、やっぱり市に話して良かった。
ただそう思うだけであった。

「ありがとう、市。信じてくれてありがとう…!」

29日前 No.24

紀田臨海 @kidarinkai☆V7aNUNRHqr6 ★iPhone=pXr7qk8ug5

「百々目鬼さんを信じない日なんてないですよ。でも、自分に囚われず、百々目鬼さんには百々目鬼さんらしく生きてほしい。鬼として生きてほしい。」

「市…だが我には行く宛など無いんだ!」

「だったら、私の神社に来てほしいんです。普通の神社とは違いますから。」

「……ああ、分かった…?」

普通の神社じゃないとでも言うのだろうか。
百々目鬼は言葉を理解できずだが、そのままついていくことにした。

「結構険しいですけどね、慣れたら大丈夫ですから。」

山の中にある階段を登っていく。段差が緩やかではないので足が疲れる。
それに木や根っ子が伸びきっており、かなり危ない。
___本当に険しいな、この道。
相当山奥にあるんだろう。よくこんな険しい道に慣れたもんだな。

「あ、見えてきましたよ。ここが私の我が家です!」

目の前には立派な鳥居が建てられており奥にはひっそりと神社が立っていた。

「一見普通の神社に見えるでしょ?けど、実はこの神社は“鬼神社”って言うんです。鬼が祀られているんですよ!」

「そうか…!鬼を祀っているのか…!確かに普通の神社は鬼を祀ってないから、何だか嬉しい。」

「そう言うと思ってました。どうですか?ここに住みませんか?」

26日前 No.25
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