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それだけ

 ( 小説投稿城 )
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天邪鬼侑李 ★5UVe1a72QG_mgE

 世界中に住む誰もが、「才能」を持っている。
 僕が突然そんなことを言ったら、大抵の人は一笑に付すだろう。「そんなわけがない」、「夢想家のたわ言だ」だなんて言いながら。

 でも、それが否定する余地のない現実だとしたら?
 常人をはるかに超える記憶力や身体能力、さらには芸術的な素質さえも、本当は生まれたころから100%決められているものだとしたら?
 それはある人にとっては希望になるだろうけれど、ある人にとっては人生そのものの意味を見いだせなくなるほどのひどい現実にしかならない。
 僕にとってはどちらだっただろう、とたまに考えることがある。

 あるいは――僕が敬愛してやまなかった、素晴らしくかつ恐ろしい「才能」を持つ人たちにとっては。

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天邪鬼侑李 ★5UVe1a72QG_mgE

 僕の一日は、ひかえめに聞こえてくるニュースの音声で始まる。
 寝室で寝ている僕を起こさないように、けれどリビングでは聞こえる程度の音量で、彼女がつけているテレビの音。
 遠慮なくテレビの音量を上げることくらいで僕が怒ったりしないことは、彼女も知っているはずなのに、このちょっとした気づかいを彼女がやめることはない。
 パジャマから軽く着替えて寝室のドアを開けると、リビングのソファーに座っていた彼女と目が合った。

「おはよう」
「…おはよう」

 朝の挨拶でさえ、彼女はためらいがちに返してくる。そして、ゆっくりとソファーから起き上がって、二人分の朝食の準備をする。この前、スーパーで僕が買ってきた適当なパンと、バターと、イチゴジャム、それから牛乳。いつもと変わり映えのしない、ありふれたメニュー。
 彼女が準備のためにせっせと動いているのを食卓からぼうっとながめながら、僕は今日の仕事について考えていた。社会人の誰もが思うように、僕も仕事など定時でさっさと終わらせて帰りたいが、現実はそううまくいかない。

「今日はちょっと遅くなるかもしれないから、先に寝てて」
「うん」

 大して寂しそうでもない彼女の返事はいつものことだけど、早く帰ってくることを本当に全く期待されていないような気がして、少しだけ落ち込む。かと言って、「早く帰ってきて」と言われても困るのだが。
 そんな僕の些細な憂鬱に気づくこともなく、彼女は僕の目の前にパンの乗った皿を置いた。オーブンで少し温めたのか、ほんのりといい香りがただよってくる。

「ありがとう」
「うん」
「いただきます」
「いただきます」

 大の大人が二人でかしこまって手を合わせる様子は、傍から見たら滑稽かもしれない。でも、僕からすれば、これが日常なのだ。

1ヶ月前 No.1
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