Google
    
<< TOPページ 掲示板TOP 記事データ お知らせメール ▼レス(76) >>
★この記事にはショッキングな内容が含まれます。もし記事に問題がある場合は違反報告してください。

パラサイト・ワールド2 コード・B:レボリューション

 ( 小説投稿城 )
- アクセス(166) - ●メイン記事(76) / サブ記事 (7) - いいね!(0)

MK マッチー @11777 ★i04XIsqV4q_VXf

「…どうしてこうなったのかは、分からない。」

上半身が裸で包帯を巻いた、ボロボロの男が言った。


「気がつけばあっという間に自分の世界は、音を立てて破壊された。」

男は自分の隣りを見た。


「だが全てを失って尚、それでも失いたくないものが出来た。絶望の中に明日を生きる、覚悟を見つけた。」

自分の手元にあるボイスレコーダーに目線を落とす。


「何が起きて森羅万象の理が覆ったのか、それを話す前に3日前の出来事を、話さなければならない。 ………俺は生存者、山田太郎。」

そう名乗った男はヘリの窓の外を見た。赤々とした景色を眺める。
口を開き___この世の絶望を語り出した___



『どうも皆さん、初めましての方もそうじゃない方もクリック陳謝!
察しのいい方はもうお分かりでしょう、そう!続編なんです!
人生初の小説を書くのが楽しくなり続編を作ってしまいました〜。まだまだ粗が目立つかもしれませんが、どうぞご容赦を(笑)
初めての方にストーリーを説明しますと「寄生虫研究の第一人者となった近未来の日本」という設定で、前作の3日後の話になります。
そういうことでグロ系サスペンスな小説になります。苦手な方はお勧めしません。

記事メモにはキャラ紹介と話数を、サブ記事には感想、質問、アドバイスや提案等がありましたら載せますのでよろしくお願いします。
後モンスターやクリーチャー等の分かりづらい描写は絵を載せたいと思っているんですが、そういう機能を使いこなせていない状況です。
何とか頑張ってみますが、文章で分かりづらくならないように勤めていきたいと思います!
では最後にコレを言って終わりましょう。
※この作品はフィクションです。実在の人物、団体、事件などには関係ありません。』

メモ2018/01/15 00:27 : MK マッチー @11777★i04XIsqV4q_iBP

第1話『再びの悪夢』(>>1-8)   第2話『アマゾネスの集団』(>>9-22) 第3話『動物達の革命』(>>23-48

第4話『人間達の反逆』(>>49-62) 第5話『暗躍する者』(>>63-74)    第6話『狂気の山脈』(>>75-76)←途中


・登場人物

主人公:山田 太郎(やまだ たろう)

 身長170cm、23歳。目辺りまで下ろした黒髪、中肉中背の体型。秀で所は特になくスペックも軒並みな一般人で、顔も冴えない顔と言われる。

 文字通り主人公。平日の自宅でくつろいでいた所に事件に遭遇、そのまま流れるように不遇な状況に身を置かれる。いわゆる巻き込まれ体質である。

 最初はうだつの上がらないビビリな男だったが、様々な出来事を得て徐々に変わりつつある。体力も運動神経も普通だがとっさの判断と反射神経は一般人を超える。

 名字共に名前が古いためそれを気にしている節があるが、開き直っているのか時折ネタにしている。

 正義感が強いのか曲がった事が嫌いなようで、外道を見過せない行動を取る。うだつが上がらない割に歯の浮いた言葉を意識せずに言える為、天然のたらし野郎である模様。

 就職に就かず高層マンションに住居を構える程の財力が、どこにあるのかは不明。


ヒロイン:宮部 雅(みやべ みやび)

 身長168cm、20歳。髪をポニーテールにした金髪碧眼の美少女。ピンクが好きなのかピンク色のあるものを着用する程のお洒落な人。

 迷彩柄の作業服を改造、ピンクのプリーツに黒ハイソックスのスタイル。

 文字通りヒロイン。ヒューミンに襲われている所を山田に助けられ、そこから良好な関係を築く。

 行動力も低くはなく山田の手を引っ張ったり、逆に助けたりする程の剛胆さも垣間見せる。

 行動を共にした山田と落合を除いて過去に何かあったのか、男性に対する不信感と嫌悪感を時折表したりする。才色兼備で知的、特に詩編のダンテへの知識が豊富である。

 何度も助けられた山田に特別な思いを寄せている模様。因にスタイルはいい方である。


準主役:落合 統治(おちあい とうじ)

 身長176cm、24歳。容姿が優れたモデル並みのイケメン、清潔そうに整えられた短髪の黒髪、スラッとした長身。狩矢崎市から山田達と脱出し、生還した一人。

 銃器マニアなのか銃器等の無線機器に詳しく、専門用語混じりに詳しい解説を披露したがる。銃器を前にすると興奮し、楽しそうに語る。つまりは残念なイケメンである。

 いい人であるが、余裕が無くなり追い詰められると豹変し、言動が荒々しくなり攻撃的になる。彼の本性は野蛮なのかもしれない。しかしツッコミ役である。

 色ボケ体質なのかジェシー伍長に一目惚れし、猛アピールをし猛アタックをしている。何故宮部に言いよらなかったのか謎である。元ベルボーイ。


大佐:三木 秀一(みき しゅういち)

 身長175cm、33歳。前髪を中分けにした中肉中背、スタイルのいい迷彩服を着た男。

 滅びゆく狩矢崎市から山田達と脱出をし、生還した数少ない人物の一人。

 元KS社 私設特殊部隊 BCSK(バスク)の隊長。所謂雇われの専属傭兵だが、他者から指摘されると不愉快なのか睨みつける傾向がある。

…続きを読む(95行)

切替: メイン記事(76) サブ記事 (7) ページ: 1 2

 
 
↑前のページ (26件) | 最新ページ

MK マッチー @11777 ★i04XIsqV4q_VXf

鹿?:「ヴォーーー!!」

大蛇の出現が合図かのように崖の上にいる鹿が吼えた。それは出撃開始を告げる古代のラッパのよう。
その場から一歩も動かなかった怪物達が一斉に動き出し、四方八方から人間達を襲い始める。


女性兵士:「いやーいやー!」

女性兵士2:「嫌だー!まだ死にたくな……。」

女性兵士3:「助け、誰か……。」

ライオンくらいの大きさで太い尻尾のある獣、オルトロスが次々と近くにいた標的に狙いを定め、頭を噛み砕いていく。
一つの体に二つの頭が生えたオオカミ、フェンリルは巨大な四肢の鉤爪で、女性兵達を引き裂いていく。
イーヴィルワームは近くにいた女性達を次々と丸ごと飲み込み、マンティスは素早い動きであっという間に10人の首を落とした。


ジェシー伍長:
「た、体勢を整えて!反撃を、開始……初めて!」

次々と死んで逝く仲間達を見て悲しみを押し殺した様な声で、目に涙を溜め若干パニックを抑えながら、兵士としての命令を発する。
宮部も悲痛な声を上げながら冷たくなった手から、ショットガンを取り上げ、向かって来るフェンリルとオルトロス達を撃ち殺していく。
銃声や爆発音が聞こえ始めたが、それよりも女性達の悲鳴や断末魔の方が遥かに多かった。


沢村:
「たーくん!こっちに来たーー!!」

山田:
「……すいません、借ります!」

血塗れで瀕死の女性に近づき握っていたライフルを取り上げ、女性達を潰しながら自分達に向かって来たマーシャール・ベアーに銃口を向け、引き金を絞り続けた。
体中に穴が空いたマーシャール・ベアーは体を痙攣させ地面に倒れた。血反吐を吐いた後息絶える。


沢村:
「たーくんすごい!あんたなら出来るって信じてたわ!」

腰が抜け女の子座りをしていた沢村が、山田の腰にしがみ付いて喜びの歓喜を上げる。

4ヶ月前 No.27

MK マッチー @11777 ★i04XIsqV4q_VXf

直後背後から物音がして山田が振り向いた。フェンリルが瀕死だった女性を貪り食っていた。もう一体の頭と目が合う。


山田:
「よせ!やめろーー!!」

フェンリル:「きゃうん!」

ライフルの弾丸を何発もフェンリルに撃ち込む。子犬の様な泣き声を発したかと思えばフェンリルは、前脚を空に上げた情けない格好で果てる。
山田は無惨な遺体となった女性に視線を戻した。息絶えた女性を数秒沈痛な面持ちで見た後、女性達を襲っている怪物達に向け連射する。
連射出来る様な武器ではないため、一発一発必死に引き金に指を掛け続ける。


山田:
「うわぁあああーーー!!!」

次々と怪物達を殺し、ありったけの銃弾を撃った結果ライフルの弾が無くなり、ライフルが空になる。
地面に倒れても尚生きている瀕死のオルトロスを、空になったライフルの銃床で頭を潰す。何度も腕を振りオルトロスの頭を潰し続ける。

4ヶ月前 No.28

MK マッチー @11777 ★i04XIsqV4q_VXf

その行為を栗山は悲しそうな表情で山田を見つめた。そのよそ見をした一瞬の隙を付き栗山にケルベロスが伸し掛った。
ケルベロスは栗山に唸り声を聞かせた後、口を大きく開け顔面を噛み砕こうとした。だが伍長にそれを阻まれた。
サブマシンガンによって蜂の巣にされたケルベロスの亡骸を、押しのけながら栗山がやっとの想いで立ち上がり伍長に感謝を伝える。そんな伍長に大佐が近づく。


三木大佐:
「伍長!俺の手錠を外せ。」

ジェシー伍長:
「何をこんな時に!」

三木大佐:
「こんな時だからだ! このままじゃ皆殺しだぞ!? 俺も戦力になれる、何もせずに大佐になった訳じゃない!」

悩んでいる暇はないとさらに付け足し伍長を煽った。少し戸惑った伍長だがポケットから手錠の鍵を取り出し、大佐の手錠を外していく。
それを見た落合が二人に近づく。


落合:
「僕も!僕も僕も!手錠を外して……。ぎゃああ!!」

落合の目の前にマンティスが威嚇しながら降り立った。大きく鎌を上げ振り下ろした。運良く手錠の繋がれている部分を切った。
両手が自由になった事を喜んだが、マンティスから連撃を受ける。


ジェシー伍長:
「ヤマタノオロチさん、今助け……うっ!」

目の前にオルトロスが立ち塞がった。だが大佐は伍長のサブマシンガを奪い取り、躊躇無くオルトロスに弾丸をぶち込んだ。


落合:
「いーやーだー!こっち来ないでぇええーーー!!」

マンティス:「キシェエエーー!」

両手の鎌を交互左右に振り回しながら逃げる落合の後を追いかける。
足をもたつかせながら落合は泣きそうな顔で近くのテントに、スライディングしながら入っていった。
マンティスもテントに入っていき、瞬時にそのテントはボロボロになっていく。その直後マンティスが弧を描きながら吹っ飛んで来た。
ボロボロのテントからショットガンを持った落合が出て来る。


落合:
「よっしゃオラー!!落合様の完全復活だ!昆虫如きが調子乗んなよ!!」

落合に再び襲いかかろうと体勢を整えようとしたマンティスに、落合はショットガンの弾をありったけ撃ち込んだ。

4ヶ月前 No.29

MK マッチー @11777 ★i04XIsqV4q_VXf

大佐は次々と怪物達を撃ち殺していく。
迫って来る獣だけでなく、女性兵達を貪り食っている最中の獣達も標的から外れなかった。
怪物達を処理している片手間で、瀕死の女性兵達を撃ち殺す。その目には戸惑いなど微塵もない。
すると大佐はふと立ち止まり自らが射殺した遺体に、コルトパイソンが握られているのに気付き、遺体の手からそれを抜き取った。


三木大佐:
「……ふむ、やはり俺のか。武器は手になじんだ物の方が良い……。」

自分の銃を見つめるそんな大佐に、伍長が鬼の様な形相で詰寄り、大佐の胸ぐらを掴み睨め上げる。


ジェシー伍長:
「……あなたは何を……っ! 一体何をしているんですかッ!! まだ生きている人達を殺す何て! よくもそんな残酷な事をッ!!」

三木大佐:
「残酷?何を言っている? 見ただろう彼女達の状態を、話すのがやっと息を吸うのも苦しむ。そんな状態で生き長らえたとして何になる?」

ジェシー伍長:
「それでも生きてるんです! 助かる命を、助けられる命を奪う権利何て誰にも無いんですよ!!」

三木大佐:
「それは貴様のエゴだ伍長。苦しみ悶える様が生きていると言えるのか? 更なる苦痛を与え続けて生かす事こそが、残酷だと思うがね。」

ジェシー伍長:
「……そ、それは………。」

胸ぐらを掴んでいた手を離し後ずさる伍長に、大佐は冷めた目で見下ろし詰寄る。


三木大佐:
「伍長、今の貴様に必要なのは覚悟だ。上司に言われた筈だ、戻らない覚悟を決めろと。なら、部下を失う覚悟も決めろ。」

ジェシー伍長:
「そ、んなの………。」

三木大佐:
「我々は兵士だ。兵士は所詮消耗品に過ぎない。失う命にいちいち振り返っていたら、隣りの命まで失う。振り返っても失ったものは取り戻せない。
ないものはないんだ。振り返っている間にさらに多くのものを失うぞ。振り返らない覚悟を持て、覚悟無き者に部隊を指揮出ると思うな。」

伍長はこれ以上言葉が出なかった。至極真っ当な正論で返す言葉が見当たらないと、いう表現が正しいか。
苦虫を噛み潰した様な悲痛な表情で、伍長は只々押し黙るしかなかった。怪物達を迎撃する大佐を睨み、両手を強く握り締めながら。

4ヶ月前 No.30

MK マッチー @11777 ★i04XIsqV4q_VXf

沢村:
「たーくん、もう手遅れだって。探さなくていいって!」

山田:
「いいから!出血してる部分を強く抑えてろ!」

マンティスによって肩から胸にかけて掻っ切られ、息も絶え絶えの血塗れの女性兵。
そんな女性に近くに落ちていた布を傷口に当て、「血で汚れたくないんだけど……」とブツブツ言う沢村を残して、山田は救護用具を探しに医療用テントへ走る。
医療用テントに到着しようとした瞬間、血で足を取られ滑って前のめりに倒れた。顔を上げた山田の目の前に何かが落ちているのに気がつき、それを拾う。


《誰かの手記:
1ページ目
あの方からの話によれば、黒田総一郎は見限られたようだ。
必要なのは彼の力つまり寄生虫であって彼自身ではないということだ。
例の計画に彼は不要、寄生虫だけ奪取せよとのお達しが来た。新たな任務を遂行するとしよう。

2ページ目
KS社に潜り込ませた同志から連絡が入りノーミン奪取に成功したとの事。
こちらもグズグズはしてられない。この街の状況は芳しくなく事態は一刻を争う。
早く例の細胞の奪取をせねば・・・

3ページ目
全てのミッションをこなしてそこで初めて任務遂行と言える。
だからこんな所で足止めを食っている時間はないのだ。
早くあの方にコレを届けねばならないというのに・・・》

医療用テントの傍に落ちていた手記を呼んでいると、背中に衝撃が走った。慌てて振り返った山田の目に映ったのは、顔を青白くさせた沢村だった。


山田:
「……何で来た、抑えておけって言った筈だ。」

沢村:
「死んだの!そんなことより来た、来た!!」

沢村は慌てて後ろを指差した。沢村の頭越しに山田は顔を出した。見えた光景は二匹のフェンリルと一匹のマーシャール・ベアーが吼えながら迫って来る光景だった。

4ヶ月前 No.31

MK マッチー @11777 ★i04XIsqV4q_VXf

山田:
「クソッ……!」

迫り来る脅威を目にした山田は落ちているショットガンを拾い、沢村の手を掴み強引に、医療用テントの中へ引っ張りながら入っていった。
山田達を追いかけるようにマーシャール・ベアーが入って来た。入って来た瞬間山田は支柱を撃ち、テントを崩壊させる。
崩壊寸前に山田達は脱出したが、マーシャール・ベアーはテント布が絡み身動きが取れない。
その間に走ろうとした二人に、テントを飛び越えたフェンリルが目の前に着地した。


フェンリル:「ガァアア!!」

吼えたフェンリルの一体の頭にショットガンを食らわせる。体が仰け反り倒れた、かと思うとおもむろに再び立ち上がった。
無傷だったもう一体の頭が山田を睨み、大きく口を開けて襲いかかる。
山田は沢村の肩を押し、自分の身も翻した。すんでの所で教われずに済む。地面に倒れながら山田は着地したフェンリルに数発撃った。
蜂の巣になり痙攣し死亡したフェンリルを見て、山田ホッと胸を撫で下ろす。束の間もう一匹のフェンリルが口を開け山田に襲いかかる。


山田:
「うぉおおわああーー!」

沢村:
「た、たーくん!」

必死で両足を開きフェンリルの口の間に入れ、かまれないように必死に抗う。股の間にショットガンを伸ばし、フェンリルの口にありったけの銃弾を食らわせる。
前脚を上にして地面に倒れたフェンリルに、そのままショットガンを連射する。フェンリルはそのまま動かなくなった。

4ヶ月前 No.32

MK マッチー @11777 ★i04XIsqV4q_VXf

山田:
「ど、どうだ! 男は狼ってことだ、まいったか!」

肩で息をしながらやっとの思いで立ち上がる。


沢村:
「使い方おかしくない?」

山田:
「いいんだよ、乱暴になるのには変わらないんだから。」

沢村:
「私の前では一度も狼になった事無いくせに。」

山田:
「俺は理性的だからねしようがないね。……ん?」

話ている最中に気がついた。フェンリルの体に血を満たした注射器が刺さっている事に。山田は近づきそれを掴もうと手を伸ばした。
しかし目を疑う光景が展開された。注射器がひとりでに宙を舞ったかと思えば、空中を旋回し薄暗い森の中へと消えた。まるで見えない糸に引っ張られるかのように。
山田と沢村は唖然とした表情で視線を交わし合った。今目の前で一体何が起こったのか理解が追い付かない。
しかし後ろから聞こえて来た咆哮で、二人は現実に引き戻される。絡まったテントを引き千切りながら、マーシャール・ベアーが二人に向かって来る。
即座に山田は引き金を引いたが、銃口からは何も出ず引き金の音が虚しく響いた。ショットガンの弾が尽きたのだ。


マーシャール・ベアー:「グォオオーー!」

山田&沢村:
「「あああああーーーー!!」」

迫ってくるマーシャール・ベアーに対して、対抗する手段が無くなった二人は、恐怖と絶望の顔で抱き合い叫んだ。
マーシャール・ベアーが二人を引き裂こうと腕を上げたその瞬間、銃声が数発轟いた。数秒の沈黙の後、口から大量に吐血し倒れたマーシャール・ベアーは事切れる。
二人は顔を上げ視線を戻すと、そこにいたのはマグナムを両手に持った宮部だった。


宮部:
「デートのお邪魔をしましたか?」

4ヶ月前 No.33

MK マッチー @11777 ★i04XIsqV4q_VXf


サブマシンガンで躊躇無く怪物達を撃ち殺していく大佐をよそに、伍長は悲痛な表情で怪物達をサブマシンガンで殺していく。
怪物達を殺しても殺された仲間達は戻ってくる訳は無く、救われる訳でもない。この行為は弔い合戦にしかなら無い事を心のどこかで分かっていた。
それでも伍長は胸が締め付けられる思いを抱きながらも、銃を握り撃ち続けた。
そんな彼女の後ろからケルベロスが三体近寄る。それに気がついた伍長が振り返りながら乱射した。


ジェシー伍長:
「近づかないで!」

しかしケルベロスに銃弾が当たる事は無く、うまく避けられ銃弾を地面に数個の穴を穿つ。避けたケルベロスに再び銃口を向け引き金を引いた。
しかし銃口から銃弾が発射される事は無くサブマシンガンが空になる。成す術の無くなった伍長は引きつった顔で後ずさる。
一匹のケルベロスがジャンプし、彼女に襲いかかった。
身を恐ばらせ目を閉める。だが数秒待っても襲われる事は無く、目を瞑った彼女が目を開けると、テントポールでケルベロスを串刺しにした落合の姿があった。


落合:
「この人に手を出すな。」


そう言って落合はてきぱきとした動作で、次々とケルベロスを撃ち殺していく。

「ジェシーさん、大丈夫ですか? どこか怪我は?」

ジェシー伍長:
「ど、どうして……。」

身を挺してまで助けたのか、その疑問を口にする前に顔に出た。理解出来ないという表情をした伍長を、落合は微笑んで口を開いた。


落合:
「言ったじゃないですか、僕はあなたを守る為の力になりたいって。」

ジェシー伍長:
「落合、さん………。」

これ以上言葉を発する事は無く二人は見つめ合う。


栗山:
「二人だけの世界に浸ってるとこ悪いんですけど、こっちも手伝ってもらえます?!」

怪物達を撃ちながら肩越しで叫ぶ。


落合:
「どうやら周りはまだ僕達を、ほうっておいてはくれないようですね。」

ジェシー伍長:
「……そのようですね、まずは終わらせましょう。男性に守られてばかりでは何なので、後ろをお願いします。死なないでくださいね?」

落合:
「もちろんですよ、生き抜きましょう。」


背中合わせになり、伍長はライフルを掴み、怪物達に銃口を向ける。

4ヶ月前 No.34

MK マッチー @11777 ★i04XIsqV4q_VXf

山田:
「雅さん、助かりましたありがとうございます。追撃をお願い出来ますか?」

命からがら自分達を助けてくれた宮部に、駆け寄る山田と沢村。


宮部:
「太郎さん、それが……。数発残ってたんですけど、今ので撃ち尽くしちゃいまして……。」

沢村:
「何よ、無計画にバンバン撃つからでしょ。要領が悪いわね。」

山田:
「そうですか、それは残念です。マグナムは頼もしい武器になってくれそうだったんですけどね。」

文句を言う沢村を静止しながら山田は、手を顎に当て残念がる。


宮部:
「でも皆の所にまだ武器がいっぱいありました。」

沢村:
「だったらそれを早く言いなさいよ。」

宮部:
「それが……。持ち主が握ったままで………。」

山田:
「……戻りましょう。彼女達の意志を受け継いだ武器で、敵を討つ為に。」

うつむいた宮部の肩に手を置き、優しく声を掛ける。宮部と一緒に頷くと踵を返して騒動の中心へと戻る。
沢村はぶつぶつと何か文句を言いながら後から付いていく。

3ヶ月前 No.35

MK マッチー @11777 ★i04XIsqV4q_VXf


「手榴弾とマシンガン、貰いますね……。」

未だ尚混乱する現場に戻って来た三人は武器を探し、山田は遺体の手から武器を抜き取る。


沢村:
「でもその程度の装備だけじゃ、この事態は変わらないでしょ?」

遺体達を見て悲しむ宮部の横で、沢村は「もっと探すべきよ」と口うるさく言う。大して山田は飽きれた口調で反論する。


山田:
「こういう事態だから今ある装備で、どうにかしなきゃいけないんだ。探す間に殺される人が増える、それだけじゃなく俺達も襲われるリスクが上がる。」

沢村:
「そんな事言っても弾だって無限じゃないのよ? 弾切れしたら次の武器探さなきゃじゃない! 二度手間よ二度手間!」

腕を組んで山田を説教する様な体勢で、少しヒステリック気味に叫ぶ。


山田:
「……確かに一理ある。起死回生、一か八かの勝負に出て状況を変えるしか無い……。」

宮部:
「どうする気ですか?」

山田:
「あの巨大蛇を倒すんです。あの化け物が現れてからこうなったんですから、倒せば状況が好転するかもしれません。」

口に手を当て間を置いてから自分の考えを口にした。


沢村:
「はぁ?! 正気なの? そんな装備で倒せる訳無いでしょ!反撃にあって殺されるのがオチよ!」

山田:
「やってみなければ分からないだろ、殺されるのも覚悟のうちだ。一緒に死んでくれるか?」

沢村:
「もちろん嫌よ!!」

宮部:
「私は構いません。あなたに救われたこの命、あなたの為に使えるのなら死んでも構いません。」

沢村:
「二人で死にたいなら勝手にして! 私は安全圏まで逃げ………って話を聞きなさいよーー!!」

頷き合う二人に歯向かって沢村は怒りを露にするが、イーヴィルワームに向かってマグナムを投げる山田の行為で徒労に終わる。

3ヶ月前 No.36

MK マッチー @11777 ★i04XIsqV4q_VXf

山田:
「こっちを向けアナコンダ!」

後頭部にマグナムを当てられたイーヴィルワームは振り返り、山田に怒りの咆哮を上げた。
口を大きく広げ三人に狙いを定め、地面を掘りながら進んで来る。そのあまりの迫力に沢村は腰が抜け、尻餅をつく。


「雅さん、投げて!」

山田の合図で宮部は手榴弾をイーヴィルワームに向けて投げた。投げられた手榴弾を目で追うイーヴィルワームを余所に、山田はサブマシンガンの引き金を引いた。
何十発か空振ったが、何発か手榴弾に辺り、イーヴィルワームの顔を巻き込みながら大爆発を起こす。


イーヴィルワーム:「グシャァァアアアーーー!!!」

顔の右半分が炎に包まれ苦しみの雄叫びを上げる。頭を左右に激しく振り、炎を沈静化させる。苦痛の唸りを上げた後、地面に穴をあけ潜り姿が消える。


鹿?:「ヴォヴォーーー!!」

イーヴィルワームが消えた事を崖の上から見ていた鹿の化け物、パラクレートスは天を仰ぎ見て吼えた。
その瞬間全ての怪物達が人間を襲うのを止め、パラクレートスを一瞬見つめ、方向転換をして薄暗い森へと消えていく。


落合:
「はぁはぁ、……何だ?」

ジェシー伍長:
「動物達が……。」

栗山:
「帰っていく。」

肩で息をしながら背中合わせの二人の横で、栗山は安堵したのかその場にへたり込む。


三木大佐:
「撃退に成功したのか?」

慎重に銃を下ろし辺りを見渡しながらながら、誰に言うのでもなく呟いた。


宮部:
「や、やりました!太郎さんやりました!」

沢村:
「やった……、やったーー! たーくん、あんたなら出来るって信じてたわ!」

山田:
「……現金な奴。」

嬉しさのあまり抱きついて来る沢村に、うんざりした表情と冷めたツッコミをした後、宮部と目が合い頷き微笑む。

3ヶ月前 No.37

削除済み @hacrei ★C7NqJqvTG8_zRM

【記事主より削除】 ( 2017/10/17 20:04 )

3ヶ月前 No.38

MK マッチー @11777 ★i04XIsqV4q_VXf

山田、宮部、沢村の三人は全員と合流する。
ボロボロになったテント群、散乱した銃等の武器類、火薬に混ざり果てた怪物達の死臭に顔をしかめた。
しかし何より胸を痛めたのは、変わり果てた女性隊員達を悲しげに見つめる伍長、それに寄り添う落合。その光景を見てさらに山田は顔をしかめた。


ジェシー伍長:
「……彼女達の弔いをしましょう。」

三木大佐:
「何を馬鹿なことを言っている? そんな余裕があるわけないだろう。」

伍長は落合に同意を求めたようだが、大佐が答えた。
彼の方に目をやると、彼は銃に弾を補充したり拾った重機の点検をしていた。


ジェシー伍長:
「弔う余裕すらないと?」

三木大佐:
「見ただろうあの統率の取れた襲撃を。不利と見るや撤退する戦略性。動物じゃないまるで軍隊だ、第二波が来るぞ。」

山田は辺りを見渡した。数多くいた女性隊員は半分以下に減り、三十人以下。その顔には悲しみと疲労が見て取れた。
ただでさえやっとの想いで生き延びたのに、さらに来るとなるとこのままでは全滅するかもしれない。
全滅の二文字に脳裏に恐怖を覚えた山田は生唾を飲み込む。


落合:
「じゃあ、どうするんですか。」

三木大佐:
「使える武器を集めここから立ち去る。……しかし闇雲に移動しても体力を消耗するだけだ。ここの正確な位置が分かれば動きようがあるんだが……。
誰か地図を持っていないか?」

?:
「……ボロボロでいいならここにあるよ。」

森林の薄暗い茂みから声がした。
自分のポケットをまさぐっていたり、地面に地図が落ちていないか下を見ていた全員が、その方向を注視する。
現れたのは血塗れの迷彩服を着たボロボロの女性だった。

2ヶ月前 No.39

MK マッチー @11777 ★i04XIsqV4q_VXf

ジェシー伍長:
「……あ、姉子さん……!」

栗山:
「生きていたんですね!」

姉子:
「やぁジェシー、梢。 お互い死に損なったらしいな。」

姉子と呼ばれは女性は栗色の前髪を、中分けをしたセミロング。顔が血で汚れていなければかなりの美貌の持ち主だ。
伍長と栗山、面識があるのか数人の女性隊員達が彼女に駆け寄る。姉子は血で汚れボロボロになった地図を伍長に手渡す。


ジェシー伍長:
「……よかった……ッ! 無事で良かった……。」

姉子:
「いいや、このザマさ。」

弱々しく嘲笑し、横っ腹を抑えていた手を離す。
腹部は大きく抉られ血が垂れ流れる。気力で歩いて来たのか生きているのが不思議なくらいだが、そう長くは持たないと誰もが悟った。
無言で悲しみに暮れる中、空気も読まずに大佐が近寄る。


三木大佐:
「連隊本部の姉子 稔(みのり)中佐とお見受けする。」

姉子中佐:
「いかにも私だよ。そういうあんたは三木秀一大佐だね? KS社の私設部隊の隊長なのに、軍にも権限が及び政府にも顔が広いと聞くよ。」

三木大佐:
「統合幕僚長のご息女に知られているとは光栄だな。地図を借りるぞ。」

詳しい現在地を地図内で教えてもらう。
大佐は指し示された現在地とは違う方向を指差す。地図上には何も無い。


「地図には載っていないがここに、昔軍が使っていた施設がある。距離にして、そうだな大体五キロ先だ。そこに向かう。」

宮部:
「そこに武器はあるんですか?」

三木大佐:
「ほとんど手付かずで放置されたらしい、武器が補えるかもしれん。では行くぞ。」

そう言って大佐は地図を仕舞い、武器を集め出発する準備を始める。


ジェシー伍長:
「姉子さん一緒に行きましょう、そこでなら治療が出来る筈です!」

姉子中佐:
「ジェシー言っただろ、私はもう手遅れだ。今はまだ自我を保っているが、皆を襲いたくない。捨て置いてくれ、弔いは私がしておく。」

ジェシー伍長:
「姉子さん………。」

姉子中佐:
「そんな顔をするな、折角のべっぴんが台無しだ。………だけどそうだな、忘れないでくれればそれで良い。お前の思い出の中で生き続けよう。」

泣きそうになる伍長の頬を撫で、優しく微笑む。
出発の支度が終わり大佐を先頭にして歩き始める。大佐は振り返り中佐に敬礼をする。伍長と栗山、それに宮部と女性兵達もそれに続いて敬礼する。

2ヶ月前 No.40

MK マッチー @11777 ★i04XIsqV4q_VXf

再び歩き始めた大佐達に、手をひらひらと振る中佐に山田が話しかける。


山田:
「あの、中佐……。」

姉子中佐:
「姉子で良いよ、何だい青年。」

山田:
「姉子さん、その刀は?」

姉子が握っている刀を指差す。


姉子中佐:
「ああこれかい? 男性用キャンプで拾ったんだよ、コレがあっていくらか助かったよ。」

山田:
「それ、俺のなんですよね。返して頂けると有り難いです。」

姉子中佐:
「無論本来の持ち主に返すさ、だけどその代わりお願いを頼めるかな? 宮部をよろしく頼むよ、あんないい子を手放すんじゃないよ。」

「もちろんですよ」と力強く頷く山田に満足したのか、中佐は山田の肩を軽く叩き、行く事を促す。
山田は大佐達の後を追い薄暗い森林の奥へと消える。
中佐は力尽き木を背にして座り込む。ポケットから拳銃を取り出す。


「………私にも、あんな風な白馬の王子様がいれば、何か変われたのかねぇ……。……いや、変わらないか。」

自虐的な笑みを浮かべ、闇夜に浮かぶ月を見上げる。
その数分後暗い森に銃声が轟いた。

2ヶ月前 No.41

MK マッチー @11777 ★i04XIsqV4q_VXf

暗い森を3キロ進んだ途中で、山田は大きくため息をついた。
大勢の仲間を失い心が廃れ、休み無く歩き続ける事は、心身ともに負担が大きい。
周りを見渡す。彼と同じように宮部を始め、全員に疲労が顔に蓄積していた。


山田:
「……あの、大佐。もうそろそろ休みましょ? もうこれ以上は歩けません。」

三木大佐:
「何を言ってる、もう少しで着くんだぞ。」

振り返って怪訝な表情で山田を睨む。


ジェシー伍長:
「ちょうど川があります、私達はここで休みます。あなたは進みたければ、どうぞご勝手に。」

伍長は山田に賛同し、部下に休むように指示を出す。
少し開けた場所に川があり、そこに全員が移動し腰を下ろす。
大佐はしぶしぶながら皆についていった。


落合:
「……ジェシーさん、大丈夫ですか?」

川の水を手持ちの水筒に入れ、飲んでいた伍長に気を使って話しかける。


「さっきの人、憧れの上司だったんでしょ。」

ジェシー伍長:
「……私の所属部隊の直接の上司じゃなかったんですけど、素晴らしい人でした……。」

落合:
「上司さんの為にも、生き抜かなきゃですね。」

「はい」と答える伍長を横目に見た落合は、両手をすくい川の水を飲もうとした。
それを見た伍長は水筒を使うかどうかを聞いた。


「間接キスになりますけど、いいんですか?」

ジェシー伍長:
「この状況でそれを気にしますか。」

二人とも吹き出し笑い合う。

2ヶ月前 No.42

MK マッチー @11777 ★i04XIsqV4q_VXf

宮部:
「ん〜、気持ちいい〜。」

バシャバシャと川の水で顔を洗う。そこに山田が隣りに腰を下ろす。


山田:
「雅さん、ここにも汚れが……。」

宮部:
「……太郎さん。」

持っていた布の切れ端を水に濡らし、宮部の頬に着いた汚れを拭き取る。
その途中山田に誰かが覆い被さった。


沢村:
「ねぇ!私も顔汚れてるの、拭いて!」

山田:
「……いつも持ち歩いている手鏡はどうしたんだよ? 自分で出来るだろ。」

沢村:
「持ってるけど自分の手を使いたくないの、男のあんたにやってもらいたいの!」

山田:
「いつも通りわがままか!」

山田の服の襟を引っ張る沢村、山田は少し飽きれた表情で対応する。
そんな二人のやり取りを見て宮部は、複雑な表情をしながら二人を見た。


宮部:
「………お二人って解り合っているんですね……。」

沢村:
「ええそうよ、あんた以上に彼の事知ってるの。残念ね、初めての女があんたじゃなくて。」

山田:
「何の挑発だ、やめろ。」

苛立たしげに山田は沢村を黙らせ、その場は嫌な無音に支配された。

2ヶ月前 No.43

MK マッチー @11777 ★i04XIsqV4q_VXf

すると近くの川で水の跳ねる音で、無音な空気がかき消された。
誰もが武器を持ち臨時体勢になる。張りつめた空気が流れた。


栗山:
「誰?!」

男性:
「た、助けて……。」

向こう岸から来たのか、ボロボロのスーツ姿の男が近寄って来た。
こちら側の岸にたどり着いたかと思えば、そのまま前のめりに倒れ、急いで駆けつけた人達で仰向けにした。


栗山:
「私の声が聞こえますか? どこから来たか答えられますか?」

男性:
「……ぅ、男性キャンプ……。」

衰弱して弱々しく答えながらも、男は意識はハッキリしているようだ。


落合:
「男性キャンプ? こんな人いなかった気がするけど……。」

三木大佐:
「救助された一般人用の軍キャンプの方だろうな。」

落合:
「ああそういえば、僕達は一般人扱いされてなかったっけ……。って事は向こうも襲われたって事か、なんてこった……。」

沢村:
「あら、誰かと思えばあんたなの? 生きてたんだ。」

重い空気が流れる中、沢村が近寄って来て呟いた
全員が沢村の方を向いた。


ジェシー伍長:
「この方をご存知なんですか?」

沢村:
「谷村 一樹(たにむら かずき)役立たずで使えない、私のマネージャーよ。」

谷村:
「………あ、エリーさんご無事で良かった……。」

沢村:
「後お人好しって紹介しとくわ。」

沢村の紹介の仕方にその場にいる誰もが、怪訝そうな目で沢村を睨んだ。


宮部:
「あなたを心配してくれる人を、そんな風に言わなくてもいいんじゃないですか?」

沢村:
「うるさいわね、部外者は黙ってなさいよ。ほら、あんたもさっさと立ちなさい。体が丈夫だけが取り柄なんだから!」

栗山:
「ちょ、無理に立たせては……。」

強引に谷村を立たせようとする沢村を、必死で静止しようとする栗山。
しかし谷村は片手を上げて栗山を止める。


谷村:
「………いえ、いいんです……。エリーさんの言う通り、僕の取り柄は体が丈夫なだけですから……。」


フラフラと立ち上がった谷村は、ボロボロのネクタイを締め直し、申し訳なさそうな顔で全員に向き直った。


「改めまして、谷村です。エリーさんがお世話になりましたようで、頭が上がりません。」

深々と一礼をする。それに連れられて皆も一礼をする。

2ヶ月前 No.44

MK マッチー @11777 ★i04XIsqV4q_VXf

ジェシー伍長:
「谷村さん、そのボロボロの姿から察するに、救助用軍キャンプが襲われた。で合ってますか?」

谷村:
「……はい、その通りです。変な動物達が襲って来たかと思えば、襲われた人達も襲われてキャンプはめちゃくちゃになって……。
僕は近くにいた隊員さんと、必死に走って逃げて来ました……。」

栗山:
「その隊員とははぐれたんですか?」

一人で現れた事に対する問いを投げかけたが、谷村はその答えを持ち合わせていなかったのか、無言で俯いた。


?:「そいつは多分、俺だな。」

全員が振り返った。川の方からこちら側にボロボロの迷彩服を着た、隊員が疲労しきった顔で向かって来る。


山田:
「山口さん!」

山口:「おうあんたらか、お互い悪運だけは強いみたいだな。また生き延びた。」

山口は狩矢崎市から脱出する時、ヘリを操縦していたパイロット。数少ない生存者の一人だ。
そんな山口は山田達を見て、照れくさそうに短く切った茶髪の頭をかいた。


三木大佐:
「山口、生きていたとは驚きだ。逞しくなったな。」

山口:「また大佐に会えて嬉しいです。……そうだ、このボイスレコーダーお渡しします。重要な証拠品でしょう?」

黒田総一郎のボイスレコーダー。犯行声明とも取れる文脈で構成された、事件の黒幕の肉声。
「貰おう」と一言を済まし、大佐はボイスレコーダーを受け取り、懐に仕舞う。


落合:
「よ〜し!仲間も増えた所ですし、もう少し休んだらまた歩きましょう!」

ジェシー伍長:
「そうですね、生き残りをかけたサバイバル、誰も欠ける事無く生きて帰りましょう!」

意気揚々と明るいテンションで希望を語る落合と伍長。そんな二人を大佐は手を掲げ静止する。


三木大佐:
「静かに! ………何かが来る……。」

2ヶ月前 No.45

MK マッチー @11777 ★i04XIsqV4q_VXf

この投稿はフィルタされています。表示するにはアカウントにログインして下さい。

2ヶ月前 No.46

MK マッチー @11777 ★i04XIsqV4q_VXf

この投稿はフィルタされています。表示するにはアカウントにログインして下さい。

2ヶ月前 No.47

MK マッチー @11777 ★i04XIsqV4q_VXf

途方に暮れる山田を見て勝機を悟ったのか、イーヴィルワームは大きく口を開け毒々しい色をした液体を散布した。
宮部は悲鳴を上げながら間一髪で避け、山田は足をもたつかせ尻餅をつく。


女性兵士2:「きゃあああーー!」
女性兵士3:「あ、熱い、あついあつい……。」

見るからに毒であろうその液体は、掛かった者を苦しめた。強酸を掛けたのか次々と女性兵が溶けていく。
強酸は当たらなかったが尻餅をついた山田に止めを刺そうと、イーヴィルワームが大きく口を開け彼に襲いかかった。
噛み殺すその寸前、身を横によじり間一髪でかわした。口を閉じたその隙を付いて、上唇を足場にして鼻の上に乗った。

自分自身を睨んで来るその眼球に、刀を思いっきり振り上げ下ろした。
少し血しぶきが跳んだ直後、イーヴィルワームが顔を反り上げ悲鳴を上げた。顔を反り上げた所為で山田はバランスを崩し、再び地面に尻餅をついた。
「ざまぁみろ!」と叫んだがそれが致命的だった。最後の力を振り絞らんとしたイーヴィルワームが、尻尾を振り下ろした。


山田:
「クソ……ッ!!」

早すぎて避けられず、尻尾は山田を直撃した。空中に投げ出され地面に叩き付けられた山田は、必死に気を失うまいとした。
今の一撃は実に効果的だ。止めを刺そうと追撃を食らえば、止めるすべは無く殺されるだろう。それだけは何としても防げねばならない。
だが腕が動いてくれない。ヒドく目眩がする。駆けつけた宮部が何かを叫んでいるが、何も聞こえない。
それから間もなく、山田は意識を失った。     ___3完(みかん)___

2ヶ月前 No.48

MK マッチー @11777 ★i04XIsqV4q_VXf

___誰かの詩2___


Who saw him die?
I, said the Fly,
with my little eye,
I saw him die.


誰が見つけた 死んだのを見つけた
それは私よ ハエがそう言った
私の眼で 小さな眼で
私が見つけた その死骸を見つけた     ___「駒鳥のお葬式」クックロビン___

2ヶ月前 No.49

MK マッチー @11777 ★i04XIsqV4q_VXf

第4話

ふと山田は目を開ける。
見慣れない照明に照らされ、眩しさで目を細めた。細めて気付いた。照明の逆光で顔が見えないが、男が覗き込んでいる。
だが山田は覗き込まれている事よりも、男が持っている注射器の方が気になった。

心臓に刺すつもりなのか、その男は山田の胸へと注射器を下ろして来る。
とっさに体が動き、男の手首を掴み、後数センチの所で注射器を止めた。


男:
「安楽死はお嫌いかね?」

淡々とした冷たい口調で男が言った。
注射器から垂れる透明の液体を眺めていた山田は、聞き慣れた声だが恐怖を覚え、ぱっと上体を起こした。
起き上がって突如咳の発作に襲われ、山田は体を二つに折った。力が抜け、意識が遠のく、視界を閉ざしまいと山田は闇と必死に戦った。


三木大佐:
「急に動かない方が良い、肋骨が折れてる。固定しなければならん。」

山田:
「……一体何が………?」

息を吐くたびに肺が燃えるように痛む。その激痛を味わい顔をしかめながら、山田は隣りに立つ大佐に訪ねた。


三木大佐:
「覚えていないのかね? 君は大蛇の尻尾に吹っ飛ばされたんだよ。それこそまさにホームランを狙った、野球選手が打ったボールのようにね。
生きているのが奇跡なくらいだ、打ち所が悪ければ死んでいた。」

説明し終えると大佐は、担架の隣りに置いてある、銀色のトレイに注射器を置いた。
代わりに透明な粘着テープを掴み、痣だらけの上半身をあらわにした、山田の胸に巻き付けていく。


「折れた肋骨を固定するのは、医学的には正しくない治療だ。固定をしてしまうと患者の呼吸が浅くなり、肺炎や肺の感染症のリスクが高くなる。
よって本来の治療は、肋骨を折った直後に氷で冷やし、消炎剤を飲む事。上半身を出来るだけ動かさないように養生する事。そうする事で二カ月くらいで骨はくっつく。」

山田:
「……でも、数ヶ月休んでられる余裕は無いし、氷や医療薬剤も無い………。」

三木大佐:
「見ての通りだ。」

山田は部屋を見渡した。お世辞にも手術室とは呼べない様な、医療機材が乱雑に置かれた粗末な医療部屋だった。無菌かどうかにこだわらなければ治療出来るだろう。

2ヶ月前 No.50

MK マッチー @11777 ★i04XIsqV4q_VXf

「ここがどこだか知りたいという顔だな。軍が放棄した施設の一室だ。」

話しながら大佐は、次に包帯を巻き始めた。


山田:
「着いたんですね……。」

三木大佐:
「女達をさらに失いながら、やっとの思いでね。君を運びながらの移動は骨が折れたよ。あぁ、折れたのは君だったな。……終わったぞ。」

治療の終了を告げられ山田は、「ありがとうございます」と言いながら担架からやっとの思いで下りる。

山田:
「俺を見捨てずに運んでくれたんですね?」

三木大佐:
「その選択肢もあったが、君の彼女に殺される勢いだったのでね。宮部君に感謝するんだな。」

そう言って彼はアルコール容器に手を伸ばすと、脱脂綿に濡らし山田の肘の内側に消毒した。銀色のトレイに置いてある別の注射器に手を伸ばす。
山田は不信の目を大佐に向けた。大佐は視線に気付いたのか、口元を少し緩ませ言った。

「覚醒剤の一種さ。痛みが和らぎ、じきに動けるようになる。」

注射器が刺さり体内に、中身が注がれる。ただの妄想かもしれないが、効果が効き始めたかもしれない。


山田:
「さっきは心臓に刺そうとしましたね?」

三木大佐:
「アドレナリンだ。君はそろそろ起きても良い頃だと思ってね。」

山田:
「……殺そうとした訳ではなく?」

三木大佐:
「足手まといとして殺すなら、とっくに君は死んでいる。」

鼻で笑いながら、使った注射器をゴミ箱に捨てる。出入り口に向かいながら、彼は振り向かずに山田に話しかけた。


「人手不足は否めん、怪我人でも生き残る為に働いてもらうぞ。服を着終えたら廊下に出ろ、屋上へ案内する。そこに皆がいる。」

大佐はそう言って出入り口の向こう側へと消えていった。

2ヶ月前 No.51

MK マッチー @11777 ★i04XIsqV4q_VXf

山田はため息を付いた後、畳んであったOD作業服を着た。ふと山田は担架と壁の間に、カルテの様なものが、挟まっているのに気がついた。
それを取り出し読み始めた。

《事後報告書:
※患者用記載済カルテ同封
・患者名  (文字がかすれて読めない)
・性別   女性
・生年月日 (文字がかすれて読めない)
・健康状態 母子ともに並 良好とは程遠い

見知らぬ女性の顔写真と、医学用語だらけのカルテの横に丁重に扱えという文字

___以下共に添付されていた報告書___

◯事後概要:
1ページ目
出産後の健康状態は芳しくなく元より体が弱かったため、さらに衰弱状態が増す。
博士も覚悟の上だったとの事だが心境は察して呵るべきだろう。

2ページ目
来る日も来る日も病室に来る博士は一途の一言に尽きる。
奥方への愛による行動だと言わざるを得ない。
愛の力を借りて研究にいそしむ姿はまさに研究者として鏡だ。己も参考にしたい。

3ページ目
事故発生。一部区画が汚染。除染は可能か?

4ページ目
最悪の結果となる。博士の心中は計り知れないだろう。
事故を引き起こした張本人である(文字がかすれて読めない)氏は当然学界追放だという意見が多数。
当然の結果だろう。命があるだけマシというものだ。


___数ページ破れた後殴り書き___

除染は不可能という結論に達した。
ここはじきに捨てられるだろう。そうなる前に実験サンプルを持ち出さなければならない。
無論機密データーも移動しなければならない。この施設に思入れがあった分離れるのは仕方ないとはいえ悲しみがある。
それというのも全てアイツの所為だ。》


全て読み終わった山田はカルテを置き、少し思考を巡らした。
大佐はこの施設は軍の管轄だと言った。それならばこのカルテに書かれている実験というのは、軍主体で行われた実験で何かしらの事故が起こったのだろうか?
しかしこの群馬の山奥で行われるという事を鑑みると、曰く付きの実験に違いない。自分達はこんな所にいていいのだろうか?

と考え危ぶんでいた山田は頭を左右に振った。考えても答えは見つかりそうにない。
考えても分からないなら行動するまで。今最優先されるべきは生き残る事。疑問の答えを探すのは後で構わない。
屋上にいる仲間達と合流して生き延びる。話はそれからだ。彼は踵を返して出入り口から廊下へ出た。

2ヶ月前 No.52

MK マッチー @11777 ★i04XIsqV4q_VXf

宮部:
「太郎さん!」

山田が廊下に出るなり宮部は歓喜の声を上げ、駆け寄り抱きついた。


山田:
「グッ! ……イッタイ……。」

宮部:
「あ、ごめんなさい。」

衝撃で胸が痛んだが、肋骨を固定され薬を打たれる前よりはずっとマシになった。
おずおずと山田から離れる宮部に向き直る。


山田:
「いえ、雅さんも……無事で何よりです……。」

宮部:
「太郎さんがもう起きないんじゃないかと、心配で……。」

山田:
「申し訳ないです、眠り姫を起こす立場なのに、逆に起きるかどうか心配されるなんて。
でも心配しないでください、次からは俺があなたを起こしますから。」

宮部:
「太郎さん……。」

涙目になった宮部の頬を優しく撫で、微笑む山田。二人は薄暗い廊下で見つめ合う。


三木大佐:
「話は歩きながらで構わないか? 屋上で皆が待っていると言っただろう、さっさと歩け。」

嫌気がさしたのか、大佐は少しイラついた口調で進む事を促した。


宮部:
「あ、そうだ。太郎さんコレ、太郎さんが寝ていた部屋の、薬品棚で見つけたものです。……コレってアレですよね?」

山田:
「コレは、ワクチン……。」

歩きながら宮部はポケットから、薄紅色の液体の入った注射器の様なものを、三本山田に見せる。

宮部:
「ですよね? 私達が打った物と同じなのでしょうか?」

山田:
「多分そうでしょう、これでここがただの軍施設じゃない事がはっきりしました。……大佐、ワクチンです。」

山田は大佐の隣りに来て、ワクチンを一本差し出そうとする。


三木大佐:
「俺はいい、特殊部隊にいた時に接種してる。」

山田:
「……KS社の私設部隊ですよね? ただのお抱えの傭兵なのに、ワクチンを貰ったんですか?」

山田のお抱えの傭兵という発言に反応したのか、大佐は一瞬彼を睨んだがすぐに無表情となった。


三木大佐:
「……一度健康診断をしてな、似た色の注射をされた。不信に思ったが何ぶん雇用主だ、文句は言わなかったよ。
三日前の君達の証言と、今の物証を合わせて初めて、今日騙されていた事に気付いたのだよ。」

山田:
「………怒らないんですか? 騙されていた事……。」

三木大佐:
「雇い先が滅びたんだ、怒っていても仕方あるまい? それに海外支社を訴えるのも滑稽だ。」

大佐も被害者なのだろう、という考えが山田に浮かび、宮部と一緒に握られているワクチンを、複雑な表情で見つめる。

1ヶ月前 No.53

MK マッチー @11777 ★i04XIsqV4q_VXf

・元軍施設 屋上

階段室から出ると何個かの備え付け用の電柱灯が、心細く屋上を細々と照らしていた。
薄暗いためよく見なければ分からないが、屋上にいる女性兵達は二十人にも満たないようにも見える。川での惨劇でさらに犠牲になったと推測出来る。
そんな中女性兵の群れから、山田達に気がついて誰かが近寄って来た。


落合:
「山田さん!いや〜よかった起きたんですね。そのまま朝まで起きないんじゃ無いかと思いましたよ。」

山田は近くに置いてあった、備え付けの時計をチラ見した。四時を回っていて深夜とも早朝とも言えない微妙な時間だ。
視線を時計から疲労が蓄積した顔の落合に戻す。


山田:
「ご心配をかけしました。これ以上足手まといにならない為にも、もう眠りませんのでご安心を。」

落合:
「まったくとんだ眠り姫ですよ。」

山田:
「……落合さんはエスパーかなんかですか?」

落合:
「はい?」

引きつった顔で落合が首を傾げた。

宮部:
「フェアリータイプのエスパーかもしれませんよ?」

山田:
「いや〜フェアリーは似つかわしくないでしょう、どちらかというとあくタイプかと。」

落合:
「何でいきなりポケモンの話?!」

山田:
「ところで皆さんは、何をそんなに忙しそうにしてるんです?」

落合:
「話を聞いて!ねぇ!」

落合の質問を無視し、宮部に「よかったですね」と言っている伍長に、質問を投げかける。


ジェシー伍長:
「えっと、それがですね…………。」

栗山:
「私がお答えします。」

山田の質問に言いよどむ伍長の代わりに、タブレットの様な物を小脇に挟んだ栗山が話に割って入る。


「コレをご覧ください、数刻前に私達が飛ばしたドローンによる映像です。私達が来た道、ここから6キロ先の映像です。」

タブレットを覗き込む山田、そこに映し出される映像を見て驚愕した。
何百という大群の動物がそこには映し出されていた。

1ヶ月前 No.54

MK マッチー @11777 ★i04XIsqV4q_iBP

山田:
「な、なな何ですかっ!……コレ!」

ジェシー伍長:
「見ての通りです。何百、いえ何千という怪物達が群れを為し、ここに向かって来てます。」

山田:
「何千も? たった数時間でこれほどの数が寄生されるなんて……。」

栗山:
「おそらくですが、この山脈一帯の動物達が全て、寄生されたものと思われます。」

山田:
「全て………。これらを全部倒すのは?」

見ていたタブレットから顔を上げ、伍長と栗山を交互に見た。しかし彼女達は目をそらした。


三木大佐:
「無理だな。」

彼の疑問を切り捨てるかのように、大佐は迷いの無い口調で話に入って来る。


「あの圧倒的な数を相手に対処が出来る程、こちら側の武器が著しく乏しい。」

山田:
「足りないんですか? ……あの大砲みたいな物は?」

彼が指を指す先には、砲身が森側に向いたコンクリート造の、台座に置かれたカノン砲があった。


三木大佐:
「あの固定砲台は見ての通り三基しかなく、火薬庫から持って来た十五発の砲弾しか無い。……武器についても語っておこう。
武器庫からはライフル銃が十丁、マシンガンが六丁、アサルトショットガンが三丁、デザートイーグルを含めたマグナム銃が三丁。
元々我々が持っていた銃が五丁、ショットガンが十丁、サブマシンガンが三丁、手榴弾が十個。
それぞれの残弾がライフル弾が十二発、マシンガンの弾が百二十発、ショットガンの弾が二十発、マグナム弾が十発、銃弾が三十五発
……足りない、あの数を相手にするには圧倒的に足りないんだ。」

山田:
「……じゃあ、一体どうするんですか?」

谷村:
「逃げるんです。」

座っていたのか谷村が階段室の段差から腰を上げながら、ズボンに付いたホコリを払っていた。

1ヶ月前 No.55

MK マッチー @11777 ★i04XIsqV4q_iBP

山田:
「谷村さん……。」

谷村:
「すみません、エリーさんのマネージャーなのにおめおめ生き残って……。助けられなかったばかりか、これから逃げようとしている……。」

山田:
「助けられなかったとか気にしないでください。それを言うなら俺だって、好きだった人を救えなかった……。」

そう言った山田はふと宮部の方を見た、彼女は複雑そうな表情で山田を見つめた。山田は視線を逸らし、再び谷村に向き直る。


「………でも、逃げるってどうやって……?」

三木大佐:
「こっちへ来い。」

顎をクイッと動かし、付いてくるように促す。山田は大佐の後を付いていき階段室の後ろへ移動する。
ちょっとした階段を上り終えるとそこはヘリポートで、迷彩柄に塗装された戦闘ヘリがあった。


落合:
「AH-64 アパッチ。チェーンガンで1,200発は撃てます、コレでいくらか数は減らせるでしょう。補給も完了してます。」

山田:
「わざわざ解説どうも、……これで逃げると?」

三木大佐:
「そうする他ないだろう、我々にはもう打つ手が無い。全てを倒しきれない以上、戦略的撤退に準じるしかないのだよ。」

宮部:
「全員乗れるんですか?」

三木大佐:
「何とも言えんな、ギュウギュウに詰めれば何とかなるかもしれん。」

大佐達がヘリの方を見ながら話し込んでいる最中山田は、納得していない様な顔で呟いた。


山田:
「……本当に、それでいいんでしょうか?」

落合:
「何がです?」

宮部:
「太郎さん……?」

顔を上げ大佐達に向き直り、疑問を投げかける。


山田:
「本当に逃げていいんですか?」

三木大佐:
「……どういう意味だ?」

大佐の疑問返しに山田は返答する事無く踵を返し、「おい!」という投げかけにも答える事無く階段を下りていき、伍長達が集まる屋上へと戻っていった。

1ヶ月前 No.56

MK マッチー @11777 ★i04XIsqV4q_iBP

山田:
「皆さん、聞いてください!」

伍長達の集まる屋上に付くやいなや彼は声を張り上げる。伍長を始めとした女性兵達が、何事かと彼の方に注目を向けた。


「知っての通り後ろにはヘリがあり、それでいつでも逃げられます。でも、それで本当に逃げていいんですか?」

ジェシー伍長:
「……何が言いたいんですか?」

訝しげな表情で伍長は山田を見つめる。駆け足で彼を追って来た宮部達が、山田の後ろで合流する。
一体何が始まったのかと疑問の表情をした落合と大佐、不安に駆られた表情で山田の背中を見つめる宮部。


山田:
「どうしてあの動物達はここを目指して来てると思いますか?」

栗山:
「どうしてって、私達を狙っているからに決まってるでしょう!」

既に分かりきっている質問を投げかける山田に、少し苛立ちげに答える。


山田:
「そうです、俺達を狙って集まっているんです。じゃあ俺達が逃げればどうなります?」

栗山:
「どうなるって……。バラバラに散ってどこかに行くんじゃ………?」

山田:
「どこへ?」

ジェシー伍長:
「どこへなんて分かる訳が……。」

三木大佐:
「……まさか、他県へ?」

手を口に当て考えていた大佐が口にした言葉で、その場にいる誰もがハッとした。緊迫した空気が張りつめる。


山田:
「そうです、俺達を狙っていた動物達は獲物を変え、他の県の人達に狙いを定める。被害がさらに広がり罪の無い人達が、次々と死んでいくでしょう!」

彼の発言に周りの女性兵達から戸惑う声が聞こえ、ザワザワと騒がしくなる。


「俺達の背に罪無き人達の命がかかっています。この戦いは背水の陣なんです! 逃げる訳にはいきません!兵士なら立ち向かわないと!」

ジェシー伍長:
「そ、そんな簡単に言わないでください!」

栗山:
「そうですよ!あなたは兵士ですら無いじゃないですか!」

二人は苛立ちげにわめいた。目には怒りがギラ付いている。
兵士としての規律、任務、誇りがあって部外者の筈の山田にそれを言われるのは、侮辱に等しくプライドを傷つかれるのだろう。
火山が噴火する前のエネルギーがじわじわと蓄積されるように、三人の間に緊張感が高まった。山田は彼女等の目を見据えて答えた。


山田:
「ここの女性達も兵士じゃなかった筈でしょう?」

ジェシー伍長:
「でも、それは………。」

痛い所を突かれたのか伍長は狼狽し、チラッと女性兵達の方を見た。栗山も図星なのか視線を逸らす。

山田:
「兵士じゃないのに怪物達を倒した圧倒的な強さ、統率の取れた協調性、……そんなあなた達を見て俺は感動したんです!」

宮部:
「感動………?」

山田は一瞬宮部の方を振り返り力強く頷いた。


山田:
「この目で見たたものは、怯えきった小動物? 違う。立ち向かってくる敵を薙ぎ倒す、気迫を持った乙女達!
男の後ろを歩き男を立てる健気な女の子? 違う。優しさと同時に勇ましさを兼ね備えた女性達!
自由を奪われ色々なしがらみに捕われたお姫様? 違う。何者にも束縛されない反骨心を持った、誇り高い兵士達!
運命に抗う女神のような勇姿を見て、俺は感動したんです!」

目に力の入った顔でさらに数歩進んで、皆の前に立つ。


「その勇姿をもっと見せてほしい! 男に耐えきれない出産の忍耐力を、俺達に見せつけてほしい! 民衆を導く女神のように俺達男を導いてほしい!
あなた達の導きで勝利を手にする! 自由を得る! 戦の女神と見紛う程の狂気をもっと俺に見せてくれ!」

宮部の方を向き、力強く言った。


「俺達男を導く準備はできたか?」

宮部:
「準備は、…………できた!」

そう言って宮部は伍長の方を向き、「準備は?」と聞いた。


ジェシー伍長:
「……準備は、……できてる。」

次に隣りにいた栗山が答えた。


栗山:
「……できてます。ええ、やりましょう!」

次から次へと女性兵達から「やろう」と歓喜の声が上がり始める。それを見た山田は拳を握り空に掲げる。


山田;
「もっと雄叫びを上げろ! 反逆の軍旗(のろし)を掲(あ)げろ!!」

女性兵達がさらに大きく声を張り上げ、決起の声が高まる。誰かが照明弾を空に放ち、闇夜を照らした。
大歓声の中宮部、落合、大佐、伍長、栗山が山田の両隣に移動する。山田は誰に言うともなく言った。


「反撃開始だ!」


1ヶ月前 No.57

MK マッチー @11777 ★i04XIsqV4q_iBP

・元軍施設 敷地外

山田達がいる施設から数メートル離れた森林の、暗闇に潜む者がいた。
暗闇に潜む者は闇夜に上がった光を見上げ、スマホの様な端末を操作して話しかけた。


闇に潜む者:
「アレは何だ?」

?:
「照明弾だと思われます。」

闇に潜む者:
「何故上げた、まさか我々の存在がバレたのか?」

?:
「いいえ、私達の存在を感知した訳ではないようです。どうやら寄生動物達を迎え撃つ腹づもりのようです。」

闇に潜む者:
「何だと? 迎撃する武器も人数も足りない筈だ、奴ら恐怖で気でも触れたのか。」

?:
「彼らの熱気は最高潮に達しています。一種の狂信的集団行動によるカタルシスに陥っている状態だと思われます。」


屋上を見つめ一瞬だけ思考を巡らせた。


闇に潜む者:
「……寄せ集めの有象無象共の中に、大人数を動かせる程のオーラを纏った人間がいたのか?」

?:
「推測するまでのデーターが不足しています。」

闇に潜む者:
「まぁいい、血液の採取を終えれば撤退だ。死にゆく他人等知った事ではない。引き続き脱出経路の表示を頼む。」

?:
「了解しました。」

端末から光が消えポケットに仕舞う。一瞬だけチラッと山田達のいる屋上に顔を向けたが、鼻で笑った。
そして再び無駄の無い動作で闇に溶け込んだ。

1ヶ月前 No.58

MK マッチー @11777 ★i04XIsqV4q_iBP

・元軍施設 屋上

ジェシー伍長:
「これを私達に?」

女性兵達が忙しなく動いている中、山田達は邪魔にならないよう一カ所に集まっている。
伍長と栗山の手元にはワクチンが握られていた。


山田:
「一応念のためです、今更感はありますが打たないよりはマシかと。」

栗山:
「心配りありがとうございます。しかしこんなものが存在したとは……。」

ジェシー伍長:
「あの子の言っていた通りですね……。」

山田:
「あの子?」

伏し目がちに悲しそうな表情でワクチンを見つめる伍長を見て、山田は首を傾げながら尋ねる。


ジェシー伍長:
「……三日前の救護活動の時に知り合った女の子なんですけどね、皮肉をな事を言ってたけど筋が通った強い子でした。
何故か分かりませんけど、ワクチンのことを言っていました………。」

栗山:
「思うんですけど、傍にいた傭兵っぽい男が知っていたんじゃないですか?」

山田:
「傭兵?」

ジェシー伍長:
「……でも、救えませんでした………。」

重苦しい雰囲気がその場を包んだ。山田は気を使って伍長に話しかけようとしたが、栗山に先を越される。


栗山:
「コレを打って生きましょう、助けられなかったあの子の為にも……。」

自分の肩に手を置いた栗山を見つめ頷く。


宮部:
「谷村さんもどうぞ。」

谷村:
「いいんですか?こんなの貰って……。」

宮部:
「何言っているんですか、一緒に生き残ろうとする仲間のようなものじゃないですか。」

宮部から手渡されたワクチンを受け取り、深々と頭を下げ何度もお礼を言う。その度に宮部はあたふたとする。

1ヶ月前 No.59

MK マッチー @11777 ★i04XIsqV4q_iBP

落合:
「あの〜山田さん、本当に砲身を山に向けたままでいいんですか?」

山田は固定砲台の砲身は山に向けるよう指示し、砲口は近くの小高い山に向けられている。その事に関して落合は腑に落ちず、疑問を口にする。


山田:
「ええ、あれでいいんです。俺に考えがあります。」

落合:
「山肌に風穴を開ける考えが、いい考えだとは思えないんですけど……。」

三木大佐:
「同感だな。軍隊の群れと化した獣共を全て滅ぼすというなら、固定砲台で一発も無駄にする事無く、全力で立ち向かうべきだ。
それなのに一基も向けないとはどういう事だ? 納得出来る説明を乞おうか。」

女性兵:「山田さん、ドローン全基に手榴弾を付け終えました!」

落合と大佐の質問に答える事無く山田は「話は後で」と言って、自分を呼んだ女性兵の元へと駆けつけていった。その背中を二人は疑問符の付いた顔で見送る。
呼んだ女性兵のところへ着くと、五基のドローンに手榴弾が巻き付けられていた。山田の指示に寄る為、確認のために呼んだようだ。
頷いた彼はドローンを起動させ空に飛ばさせた。


女性兵2:「山田さん、前方を!」

山田:
「来たか。」

女性兵から望遠鏡を手渡され屋上の淵へと移動する。望遠鏡を目に当て、女性兵が指し示した方角を見る。
前方の僅か数キロメートルの距離を、木々を覆い倒し土埃を上げる塊があった。徐々に徐々に近づいて来る。
ヒューミンαを先頭に寄生された動物達が、目視出来る程までに近づいて来た。無数の群れの中にはウサギとリスに似た怪物も混ざっている。


「……ヘリの離陸準備は終わっていますか?」

栗山:
「はい。いつでも飛び立てます。」

山田は「よし」と呟いた。ヘリの操縦が出来るという伍長に準備を急がせていた。
彼の計画が失敗した時、すぐに逃げられるようにと、念のために。

1ヶ月前 No.60

MK マッチー @11777 ★i04XIsqV4q_iBP

山田:
「ドローン、爆破!」

合図と共に怪物達の先頭に飛ばさせていた、五基のドローンが爆破した。それにより先頭を走っていた数十匹の、怪物達の死骸が宙を舞った。
それでも怪物達は死骸をものともせず、踏みつけ咆哮をしながら尚も行軍する。


宮部:
「い、今の攻撃で怒ったのでは………。」

山田:
「計画通りです。怒りで我を忘れさせ、周りが見えないようにするんです。」

落合:
「そ、そんなことをする意味は?」

山田:
「マシンガン部隊の皆さん、武器の準備を!スナイパー部隊の皆さんも、マシンガン部隊の撃ち漏れに備えを!」

落合の質問に答えず山田は女性兵達に命令を下す。彼の両隣に落合と宮部が混ざった、マシンガンとライフルの部隊が交互に、屋上の淵に並ぶ。
群れに銃口を向ける。しかし撃つ気配のない部隊に、しびれを切らした大佐が怒鳴る。


三木大佐:
「何をしている!さっさと撃たないか!」

山田:
「まだです!もう少し引きつけてから。」

徐々に施設への距離が近くなる。


落合:
「や、山田さん?!」

山田:
「まだだ、もう少し……。」

目に人間達への憎悪を宿らせた怒り狂った軍団が、数メートルまでに迫る。


宮部:
「太郎さん!」

山田:
「固定砲台撃て!!」

1ヶ月前 No.61

MK マッチー @11777 ★i04XIsqV4q_iBP

爆音を轟かせ砲身から砲弾を山に降り注げる。休む事無く撃ち続け固定砲台の砲弾が空になった直後、山の方から轟音が轟いた。
地表を覆う岩屑層の一部が断裂して崩れ落ちる。つまり山崩れが起きたのだ。木々や岩石を含んだ土砂が、怪物達に向かって滑り落ちた。
次々と山崩れの被害という名の攻撃を受け、潰されたり埋まっていく怪物達。


三木大佐:
「……マス・ムーブメント、斜面崩壊の現象………。これを狙っていたというか……。」

先頭と中間にいた怪物達が埋まったが、最後尾にいた数百の怪物達が、流れて来た土砂を通過して来る。
マシンガン部隊が生き残った怪物達を駆逐していく。悲鳴を上げながら倒れていく同胞の死骸を避けながら、迫って来る怪物達をスナイパー部隊が狙撃する。
僅かながらに数匹に残った怪物が施設にたどり着き、壁伝いによじ登って来た。数匹が壁を登って来たのでショットガンを持った女性兵も参加。
壁を登って来たうちの一匹であるフェンリルが、屋上の淵に鉤爪を引っ掛け顔を出す。

近くにいた兵士に噛み付こうと顔を上げた瞬間、自分にマグナムの銃口を向ける大佐が目に入った。
大佐は躊躇無く引き金を引き続け、フェンリルを蜂の巣にした。蜂の巣にされたフェンリルは鳴き声一つ発する事無く、そのまま真下へ落ちる。
マシンガン部隊とスナイパー部隊とショットガンを、持った女性兵達は引き金を絞るのを止めた。目視出来うる範囲で、動く怪物達がいない。


宮部:
「…………もう一匹もいない? ………これって、もしかして……。」

谷村:
「……僕達の……。」

山田:
「完全勝利だーーー!!」

大声で叫んだ。それを聞いた女性兵達はお互いに顔を見合わせ、武器を空へ投げ捨て喜んだ。


ジェシー伍長:
「やった、やったーー! 私達やったのよ!生き残ったの!」

栗山:
「やりましたねジェシーさん! 生還しました、生きてるんです!」

お互いの喜びを確認し合うかのようにハグをする。二人の歓声は周りの歓喜の声にかき消された。


三木大佐:
「……まったく、無茶ぶりをするバカには敵わん。」

落合:
「いや〜同感ですよ大佐、振り回される身にもなってほしいもんですよ……。」

お互いに疲れ切った顔を確認すると、微笑んでいるのかニヤけているのか判別出来ない様な笑みで、グータッチを交わした。
しかしこの時の彼らは知る由もなかった。
この出来事はこれから起こる惨劇の、ひとときの安らぎであった事を。   ___4完___

1ヶ月前 No.62

MK マッチー @11777 ★i04XIsqV4q_iBP

___暗躍する会議___

・首相官邸

十畳半程の小振りな部屋。小降りという割には煌びやかな装飾品が飾られ、荘厳な壁画が壁を彩っている。国の中枢を担う建物としては、贅沢が尽くされている。
高級そうなソファーには不釣り合いな、不機嫌そうな顔をしたスーツ姿の初老。片手で腕時計を気にしながら、もう一方の手で肘置きをリズムよく叩く。
同時にイラついているのか、激しい貧乏ゆすりをする。大人としては子供っぽい態度だが、真夜中とも早朝とも言えない時間帯に、呼び出されたとあったら仕方ないのだろう。


熊川環境大臣:
「一体なんなんですかねぇ、こんな時間に呼び出して……。勤務時間にはまだ早いのでは?」

森総理補佐官:
「申し訳ありません、緊急の案件がありまして……。」

向かい側のソファーに座る森補佐官、申し訳なさそうに頭を垂れる。それを見て熊川大臣は少し舌打ちをした。


熊川環境大臣:
「緊急って言ったって、世界がすぐに滅びる訳じゃあるまいに。叩き起こされて不機嫌な妻のご機嫌を直すのが、今の私の緊急の案件ですよ。」

総理:
「……それが、本当に世界が滅ぶかもしれないのです。」

熊川環境大臣:
「はい?」

首を横に振った。大理石の机を挟んで真横のソファーに腰掛け、難しそうな顔をしている総理大臣。熊川大臣は呆けた声を出した。


森総理補佐官:
「こちらの資料をご覧下さい。」

手渡された資料を一瞬訝しげに見て、総理と補佐官を交互に見た後、手に取りパラパラとページをめくる。読んで数秒で顔が曇る。


熊川環境大臣:
「………何なんですかこの不快な資料は? 寄生虫による軍事研究に生物兵器の利用?」

総理:
「それに伴い研究所からの流失、その原因のバイオハザード、核を使用しての消去………。」

熊川環境大臣:
「……重大な機密を共有するのなら少人数が理想です、閣議議会で既に決まった事を何故私に?」

森総理補佐官:
「狩矢崎市を封鎖し寄生を封じ込める作戦でした、しかし今日未明に郊外の赤城山周辺の山脈で、寄生の報告が上がっています。」

熊川環境大臣:
「……つまり、封じ込め作戦は失敗したという事ですね? どうするおつもりですか?」

鬼塚防衛大臣:
「焼夷弾を使用して山脈地帯を焼き払います。」

腕を組み暖炉の横に佇む鬼塚大臣を、睥睨(へいげい)する熊川大臣。いかにも偉そうな態度が気に入らないのだろう。
飽きれる様な口調で熊川大臣は口を開いた。


熊川環境大臣:
「そんな事をすれば生態系が崩れる事はお分かりでしょうに………。」

総理:
「お呼びしたのはその事についてです、焼却作戦を実行すればどのように生態系が崩れ、どのような弊害が起こりうるのでしょう?」

総理はソファーから身を乗り出し、食い気味に質問した。

1ヶ月前 No.63

MK マッチー @11777 ★i04XIsqV4q_iBP

熊川環境大臣:
「まずレッドデータブックに載っている絶滅危惧種が、死滅する可能性があります。希少な植物であるミズバショウなどの植物も消滅。
生物多様性の劣化が進むのみならず、作物への影響も考えられ、コンニャクやヤマトイモ等の名産品への影響もあり得るかと。」

森総理補佐官:
「実害が起こるのは群馬県だけなのですか?」

熊川環境大臣:
「いいえ、川への影響も考えますと群馬県に源を発した、利根川の流域は茨城県、栃木県、埼玉県、千葉県、東京都に広がりますので
下流域には、数多くのダム等の横断工作物が設置されています。それを踏まえ実害だけで考えると、群馬県内だけに留まりません………。
総理、焼却作戦はお考え直しください。これはれっきとした環境破壊です。」

鬼塚防衛大臣:
「もう決まっている事です、早朝6時にステルス機による焼夷弾投下が始まります。」

熊川環境大臣:
「動植物を殺す権利なんて、誰にも無い筈ですよ?!」

肘置きから少し乗り上げ、声を張った。鬼塚大臣は気にする事無く、熊川大臣を冷めた目で見下ろす。


総理:
「少なくともこちらにも被害を受けるという事ですか………。仕方がありません、人命優先です。」

熊川環境大臣:
「また、人間達のエゴで動物達が被害を受けるんですか……。」

落胆の混ざった口調で呟き、肩を落とす。それを見て総理はソファーから腰を上げた。


森総理補佐官:
「問題は焼夷弾で寄生生物を殲滅出来なければ、さらに被害が広がるという事です。」

鬼塚防衛大臣:
「それに関してですが、情報によるとどういう訳か寄生された動物達は、一カ所に集まっているようです。その周辺を転回すれば殲滅は容易いかと。」

森総理補佐官:
「……その情報はどこから?」

鬼塚防衛大臣:
「明かす事は出来ませんが、確かな情報筋からです。」

静寂がその場を支配した。
森補佐官は不振な目を鬼塚大臣に向け、熊川大臣は失望の表情で机の一点を見つめる。
大臣達を背にして総理は窓から外を眺め、ため息をついた。


総理:
「………どうやら今日の夜明けは、死を連れてやって来るようですね。」

呟いた言葉は吐いたため息と混ざり、空中に消えていった。静寂を破る事無く。
総理の言う通り今日という日は ___動物達の死を持って朝を迎えるだろう。___

1ヶ月前 No.64

MK マッチー @11777 ★i04XIsqV4q_iBP

この投稿はフィルタされています。表示するにはアカウントにログインして下さい。

1ヶ月前 No.65

MK マッチー @11777 ★i04XIsqV4q_iBP

あまりにも唐突な出来事だった。異質な存在の突然な出現に脳が理解するよりも早く、ガスマスクの人物が動いた。
山田の注射器を持つ手目掛けて、上段蹴りで蹴り上げた。
宙に舞った注射器を追い、華麗なアクロバットで後ろへ下がり、後ろ手で注射器を受け止める。


落合:
「山田さーん! 大丈夫ですか?」

山田:
「ええ、一応……。」

蹴られた傷みで手を抑える山田に、落合達が騒動に気付き、集まって来る。人に気付かれ集まって来てもガスマスクの人物は、慌てる事無く体勢を立て直す。
スマホの様な端末を取り出しその上に注射器を置く。少し操作をした直後、注射器がピクセル化して消えていった。


宮部:
「……あの人知り合いですか?」

山田:
「俺の知り合いに、顔を隠す恥ずかしがり屋さんはいませんよ……。」

三木大佐:
「……さっきの動き、只者ではない。軍に在籍もしくは軍にいた男の兵士、それも特殊訓練を要する部署だと見受けるが?」

ガスマスク:
「……………。」

敵意のこもった目付きで大佐は、ガスマスクの人物に銃口を向ける。それでも尚ガスマスクの人物は慌てず、全員を睨み返す。
ただしマスクをしているため睨んでいるのか、そうじゃないかの表情は読み取れない。ただの沈黙を貫く。


落合:
「おい!どうなんだよ? 合ってるのか合ってないのかどっちなんだ?」

ガスマスク:
「…………。」

ガスマスクの人物は答えない。


落合:
「どうなんだよ!答えろよ! てか、無線機壊したのもお前だろ!」

ガスマスク:
「……………。」

落合が再び質問しても、ガスマスクの人物は答えようとしない。


落合:
「無視かよおい! 耳聞こえてんのか? カッコつけてマスク付けてるから塞がってんじゃねぇのか?! 舌抜き取られたのか?」

ガスマスク:
「………………。」

落合の挑発にも乗らずガスマスクの人物は巍然と沈黙を貫く。その態度を見て落合のイライラが募る。身を乗り出して、指を指しながらまた叫んだ。


落合:
「分かったぞお前の正体! ロボットだな? ご主人様の質問以外に反応しないように設定された、だから答えないんだろ? そうだろう?!」

ガスマスク:
「……人間だ。」

落合:
「そこは答えるんかい!?」

29日前 No.66

MK マッチー @11777 ★i04XIsqV4q_iBP

落合のバカなやり取りに嫌気がさしたのか、うんざりした表情で山田は割って入る。


山田:
「ガスマスクの男! あんたの目的は何だ? 俺達が寝静まったのを狙って動物達に襲わせたり、通信機を壊して連絡手段を断ったり、血を採取したり、
まるで何かの実験のよう……。そろそろ種明かしをしてもらってもいいか?」

ガスマスク:
「貴様等モルモット如きに語る言葉は持たん、冥土の土産というのも好かんのでな。大いなる疑問を胸に抱いたまま死ぬがいい。
ただし、貴様等を殺すのはここに住む畜生共だ。ここで死んでいるのとは他にまだいるぞ、つまりは第三波ということだ。
武器の蓄えの効かん貴様等なぞチリ同然。我々の計画の真相や名前を知る事も無く、そのまま散っていけ。」

落合:
「ロボットって指摘したのが気に入らなかったのかな? めちゃくちゃ喋るんだけど………。」


ひそひそ声で喋る落合、宮部は困った様な表情で両肩をすくめ、愛想笑いをした。
その時だったガスマスクの人物から、くぐもった声とは別の声が聞こえる。
何が起こったのか分からないという表情をした、伍長と栗山がお互いを見合う。


?:
「…………応答しろ、エージェント・E(いー)。どうした? エージェント・E、応答しろ。」

静寂を破るその声は、時折雑音が混ざっているのか、少し聞き取りづらい。つまりガスマスクの人物は無線機をもっているのか、誰かがコンタクトを取ろうとしているのだ。
エージェント・Eと名指しされたガスマスクの人物は、頭を少し左右に振らしながらため息をついた。片手に持っていたスマホの様な端末を操作する。
空中に映像が映し出され、野暮ったい男の声が森林に響いた。


「………やっと出たか、そろそろ“B-ウィルス”の完成が間近だ。動物共の血液採取はご苦労、だが定時報告を忘れたな? 言い訳を聞いてやる。」

エージェント・E:
「……問題が発生した、我々の存在がバレた。こちらの不手際だ………。」

?:
「ああ? 問題だぁ?……何だそいつらは?」

山田達を睨む様な仕草をし、ヤンキーの様な凄みを利かせる。山田、宮部、落合、大佐らは映像に移った男を見て言葉を失い、驚愕した。
映像に映し出されていたのは、黒田総一郎の顔だった。

29日前 No.67

MK マッチー @11777 ★i04XIsqV4q_iBP

山田:
「……黒田、総一郎………。」

呟くのがやっとだった。額に脂汗を浮かせ、呆然とした表情のまま黒田総一郎の顔をした、映像の向こうの男を眺める。
しかし男は山田の呟いた言葉に、不快感を示したのか、顔を歪ませた。


?:
「……兄の名を口にするな、忌々しい!!」

落合:
「兄………?」

三木大佐:
「……そうか貴様、黒田 次郎(じろう)だな? もう一人の黒田、無能の方の。」

次郎:
「立場を弁えろよ? 子飼いの犬のくせに、言葉に気をつけやがれ!」

黒田次郎と指摘されたその男は、白髪混じりのボサボサの髪、ヨレヨレのYシャツ、ボロボロの白衣、という汚らしい格好も相まって言動も荒々しい。
無能という言葉が気に障ったのか、語尾をキツくし大佐に怒鳴る。彼も負けじと睨み返す。


山田:
「………黒田に弟がいた何て、全然知らなかった……。」

落合:
「今度は弟かよ、黒田さんちはどれだけ迷惑かければ、気が済む訳?」

三木大佐:
「そう迷惑ばかりかける存在だった、総一郎さんと違い無能で無力。それなのにプライドだけは高い、だからその存在を公にはして来なかった。」

大佐の説明に終始鋭い眼光で睨み、不快感な表情を示していたが、フッと一瞬だけ顔をほころばせた。


次郎:
「そう、だから今度こそ俺は世間に、世界に実力を知らしめる! 兄とは違う力を使い、兄より優れていると認めさせるんだ!」

話に付いていけない伍長と栗山は、首を傾げながらまたお互いを見合う。
山田は地面を一歩踏みしめ、身を乗り出す。


山田:
「黒田とは違う力………? そういえばあんた、B-ウィルスがどうとか言っていたな、どういう意味だ?」

次郎:
「教えるか馬鹿め! これは俺に取っての秘密兵器、切り札となるんだ。敵にみすみす情報を渡す馬鹿がどこいるっているんだ?
何も分からずに悩んで苦しんでろ、バァ〜カ! ヒャッハハハハ!! 」

品のない笑いを周辺にこだまさせ、山田達をあざ笑う。
すると今まで黙っていた宮部が、顔を上げ悲痛そうな表情で声を絞り出した。


宮部:
「……もう、もうやめて!! お父さん……。」

19日前 No.68

MK マッチー @11777 ★i04XIsqV4q_iBP

この投稿はフィルタされています。表示するにはアカウントにログインして下さい。

19日前 No.69

MK マッチー @11777 ★i04XIsqV4q_iBP

その時、閃光が走った。
突如として激しい光が辺り一帯を覆い、夜から朝に変わったのかと見紛う程に、明るくなる。
ガスマスクの人物によって閃光弾を使われ、あまりの眩しさに全員が一瞬目を瞑った。視界を完全に奪われては何も出来ない。そうなれば宮部は誘拐される。

そうならないよう前方を確認し、対処をするための行動をとらなければならない。迎撃する為の体勢が必要だ。
山田は顔の前に手をかざし影を作り、目を細め前方を確認する。しかし時既に遅く、一瞬の隙を付かれガスマスクの人物の、接近を許してしまった。
間合いに入っていて目の前にいる事を、脳が認識する所までは良かった。しかしどうする事もできず、胸に掌底を食らう。

掌底を胸に食らった彼は吹っ飛び、後ろにいた大佐を巻き込む形で後方へと滑り落ちる。山田に掌底を食らわせたその手を、裏拳として右隣りにいた落合の頬を叩いた。
ガスマスクの人物は落合が倒れたのか確認する事も無く、瞬時に次の行動を実行した。身を屈め左隣りにいた栗山の両足を、己の足でさばいた。
軸足がブレて倒れた栗山の胸ぐらを掴み、その後ろにいた伍長を巻き込む形で引っぱり倒す。全員成す術も無く一瞬にして地に伏した。

山田は息を詰まらせ体を丸め、何秒かそのまま横たわっていた。折れた肋骨が悲鳴を上げ、胸に焼ける様な激しい痛みが襲う。
そのままじっとして、痛みが治まるまで寝ていたい衝動に駆られた。だが、そんな贅沢を言ってられない状況なのは、百も承知だ。
激痛にひるむ体と、屈しそうになる自分に、ムチ打って片手に地面に置いて、体を支えながら立とうとした。


三木大佐:
「手を貸そう……。」

一緒に倒れた筈の大佐に、体を支えてもらいながら立ち上がる。傷みに顔をしかめていた彼は、状況を確認してさらに顔をしかめた。
ガスマスクの人物に俵担ぎされた宮部が、視界に入り山田は、悔しそうに歯ぎしりする。


山田:
「……宮部さん……。」

ジェシー伍長:
「そんな、こんな事って……。」

「クソ」と呟いている落合と栗山の手助けをしながら、伍長は絶望の表情で、意識を失った宮部を見つめた。


次郎:
「……クッ! エージェント・E、閃光弾を使うときは前もって知らせろ! 眩しいじゃないか!」

エージェント・E:
「………サングラスを渡しておいた筈だが?」

次郎:
「何だ?その態度………。まぁいい、ペットを送り込む。さっさと来い。」

通信を終えたのか、空間に出ていた映像を消し、スマホの様な端末を仕舞い込む。建物の方に体を向けた直後、山田がその背に叫んだ。


山田:
「待て! 連れて行かせる訳には……………ッ!」

エージェント・E:
「……敗北者には何かを語る権利も、何かを選ぶ選択肢も無い。ただ敗北の屈辱を噛み締め、己の無力に嘆くがいい。」

栗山:
「……まだ、終わってない……! 私達が相手です!」

サブマシンガンを握り締め、銃口を向ける。それを見たガスマスクの人物は、重鈍な動きで振り返った。
山田達がいた元軍施設を背にして、慌てる事無くガスマスクの人物は、後ずさりながら口を開く。


エージェント・E:
「貴様等敗北者を相手にするのは、哀れな実験動物共が相応しい。………行け、“クレイジーウルフ”。」

ガスマスクの両隣にある施設の窓が壊れ、施設内から人間何も大きさを誇る、歪な形をした狼が出現する。


クレイジーウルフ:「ウガウッ!ウガウ!」

吼えたかと思えばクレイジーウルフは、山田達に向かってジャンプし襲って来る。
体勢を整えた大佐と伍長がショットガンの引き金を引き、銃声が轟いた。その混乱に乗じて宮部を担いだガスマスクの人物は、施設内へと消えていく。


山田:
「雅さーーーん! きっと必ず助けに向かいますから、きっと! 必ず行くからーー!!」

彼の悲痛な言葉は、騒音轟く闇夜の森に、虚しく溶けていった。

19日前 No.70

MK マッチー @11777 ★i04XIsqV4q_iBP

人間くらいの大きさをした狼、クレイジーウルフは大きく口を開け、大佐に狙いを定め飛びかかった。
しかし大佐は物怖じせず、バク転で避けながら狼の腹のど真ん中に蹴りを入れ、後方へと蹴り飛ばす。
蹴り飛ばされた狼は地面を滑り、傍にあった木に激突。傷みに悶え奇声を上げる。

もう一匹のクレイジーウルフは山田に狙いを定め、噛み付こうと大きな口を開け襲いかかる。
噛まれまいとした山田は、マシンガンを楯にして防いだ。クレイジーウルフは荒々しくマシンガンに噛み付く。
マシンガンからはミシミシと異音が発せられ、今にも噛み壊されそうだと彼は焦った。

楯にしているマシンガンが壊れれば、成す術の無くなった山田は簡単に、食い殺されるだろう。そうなればまた一人仲間を失ってしまう。
そんな事態はもうあってはならない。そう感じた谷村は力を振り絞り、渾身の一撃でクレイジーウルフの顔面を殴った。
殴られたクレイジーウルフは殴った谷村を一瞬睨んだ後、体勢を変えずに自らの前脚で、谷村を殴り飛ばした。


谷村:
「イタタ……。コイツ本当に狼なんですか? 動物の反応じゃないですよ……。」

地面に倒れそう発言する谷村。間髪入れずに伍長がクレイジーウルフの背中に、銃弾を浴びせる。
マシンガンに噛み付くのを止め、伍長に向きを変え、飛びかかった。その素早さにあっけにとられ、瞬時に動けなかった。
だが間一髪落合に庇われる形で、助けられ一緒に地面に倒れる。


ジェシー伍長:
「あ、落合さん。ありがとうございます。」

落合:
「感謝はまだ早いです、また来ます!」

背中を撃たれたのが余程気に入らなかったのか、ジェシーを標的に変える事無く再び、襲いかかって来る。
栗山はサブマシンガンでクレイジーウルフの前脚を撃ち、転倒させる。そのチャンスを見逃さなかった山田は、倒れたクレイジーウルフにありったけの弾丸を撃ち込んだ。
蜂の巣になったクレイジーウルフはピクリとも動かない。それを見て彼らは安堵した。

11日前 No.71

MK マッチー @11777 ★i04XIsqV4q_iBP

大佐に蹴り飛ばされた方のクレイジーウルフは、距離を計りながら大佐との間合いを詰める。
コルトを取り出し何発か撃つが、クレイジーウルフは走って避け、また飛びかかる。撃つには間に合わない。そう感じた彼は身を翻し避けた。
着地したかと思えば再び大佐の方を向き、鋭い牙をむき出して、飛びかかった。大佐はいとも簡単に裏拳で頬を叩き、地面にたたき落とす。

トドメを刺そうと銃口を向けた直後、刺付いた尻尾で銃を弾かれた。その一瞬の隙を付きクレイジーウルフは、大佐に飛びかかり地面に倒させる。
顔面に噛み付こうとするが、大佐に腕を首に回され身動きを制御された。さらに首を伸ばし近づこうとした瞬間、首の骨が折れる鈍い音が鳴り、事切れる。


三木大佐:
「しつこいのは元カノだけで充分だ……。」

立ち上がり地面に付いたホコリを叩きながら、冷めた目で殺したばかりの死骸を見つめ、ボソリと呟く。同じく狼を対処した山田達が、大佐の元に集まる。


落合:
「大佐、大丈夫ですか?」

三木大佐:
「誰に物を言っている? 動物如きに遅れは取らんよ。」

山田:
「怪我が無いなら、あのガスマスクの男を追いましょう、宮部さんを助けないと。また大蛇とかの援軍が来る前に……。」

栗山:
「あ、言い忘れてましたけどあの大蛇、両目が潰れ、あなたを吹っ飛ばした時、酸性の血を撒き散らしながら、川の中に入って逃げましたよ?」

ジェシー伍長:
「二度の戦意喪失による逃亡を顧み、あの大蛇による敵襲は無いと判断しました。ですので報告が遅れました。」

山田:
「来ないならそれに超した事はありません。じゃあ室内で二人の捜索をしましょう。」

彼の発言に誰も答える事は無かったが、全員が頷いた事で答えは火を見るより明らかだった。


11日前 No.72

MK マッチー @11777 ★i04XIsqV4q_iBP

・元軍施設内 一階

コンクリート製の長い廊下。懐中電灯に照らされているものの薄暗いその空間は、寒々としていて不気味さが漂っている。それと同時にどこか寂しげで凄寥感も感じる。
放置され無人であった事が長かったのか、人の気配のない廊下は、割れた窓の外から来る月明かりで、さらに物寂しさが増しているようにさえ思う。
立ち入り禁止のテープが貼られ、多くのガラクタが散乱しているドアの前に、一人寂しく立っていた山田は、感慨に更けていた。


落合:
「山田さ〜ん! 屋上を見回り終えました。」

廊下の向こう側から落合と伍長が、懐中電灯の光を揺らしながらやって来る。


ジェシー伍長:
「人影はありませんでした。ヘリも疲れた形跡もありません。」

山田:
「そうですか、じゃあ他の人達の報告を待ちましょう。」

そう言った直後、廊下の反対側から栗山と数人の女性兵がやって来た。


栗山:
「四階の捜索終わりました、宮部さんはおろか人影も無しです。」

山田:
「分かりました、ありがとうございます。」

さらに階段から谷村と女性兵が下りて来た。


谷村:
「三階の捜索しましたけど、人っ子一人いません。」

さらに谷村の後ろから大佐が一人で下りて来る。


三木大佐:
「二階には異常無しだ。」

栗山達が来た廊下から、さらに数人の女性兵が駆けつけて来る。


女性兵:「一階の見回り終わりました〜。」
女性兵2:「特に報告する様な事はありません。」
女性兵3:「率直に言いますと、怪しい所も不審人物も誰もいません。」

山田:
「……となると、残るはここだけか……。」

立ち入り禁止のテープが貼られたドアを、睨みつける山田。全員がその視線に合わせるように、そのドアを凝視した。
ネームプレートには『上層部及び関係者以外立ち入り禁止』と書かれている。全ての階を探して誰もいないのだとすれば、ここだと彼は思った。
ドアの前にあるガラクタを除き、ドアノブに手を賭け用とした瞬間、肩に手を置かれる。


三木大佐:
「……この先にはどんな罠があるかも、どんな危険があるかも分からんぞ? それでも行くのか?」

山田:
「当たり前です。行かなきゃいけないんです、何としても必ず。助け出してみせる、もう後悔なんてしたくない。」

覚悟を宿した眼差しで、大佐を見る。大佐は目を瞑り、少し考えた後口を開いた。

11日前 No.73

MK マッチー @11777 ★i04XIsqV4q_iBP

三木大佐:
「ならば俺も行こう、君一人で行ってもまかり通らん。重火器のプロが必要だろう。」

落合:
「よし! 僕も一緒に……。」

三木大佐:
「何人かはここに残れ、動物共の第三波が来ないとも限らない。ヘリを守る者が必要だ。」

「え〜」と納得のいかない落合。彼の方に伍長が触れる。


ジェシー伍長:
「私もここに残ります。男手が必要な時に傍にいてくれれば、助かるんですけど。」

落合:
「……あなたが残るなら、ん〜仕方ないですねぇ……。」

しぶしぶながら落合は残る事を選択する。二人のやり取りを見ていた栗山は、胸の前で両手を叩いた。


栗山:
「決めました! 私は山田さん達と一緒に行きます。衛生のプロだって必要でしょう?」

女性兵:「あ、私も栗山さんにさんせ〜い。」
女性兵2:「右に同じく。」
女性兵3:「宮部さんは私達の仲間ですし、なにより山田さんの力になりたいです。」

別行動を志願する声が次々と上がる。それを見た山田は深々と頭を下げる。別行動となる栗山に伍長は手を差し出す。


ジェシー伍長:
「くれぐれも気をつけて。」

栗山:
「そちらも、イチャ付くのは程々に。」

ウィンクをしながら手を握り返す。伍長は「もう〜」と頬を赤らめ、微笑する。


落合:
「あの毒親の馬鹿親父をぶん殴って、必ず宮部さん連れて来てくださいよ!」

山田:
「落合さんに殴る顔面が、残らないのが残念。」

山田は両肩をすくめ、オーバーリアクションをしながら、落合と固い握手を交わす。


「……では、行きましょう。」

ドアの前に立ち、覚悟を決めドアノブを捻る。不快な音を鳴らしドアは開け放たれる。
どんな悪夢が待っているのか、この時の山田達はまだ知らなかった。 ___5完___

11日前 No.74

MK マッチー @11777 ★i04XIsqV4q_iBP

___悪意込めし決意のビデオレター___


次郎:
「撮れているか?」

?:
「はい、マスター。録画中です。」

次郎:
「よし。……今日より自らの決意表明を残す形として、この映像を記録する……。刮目して聞くがいい。
俺の名は黒田次郎、正当な評価を望む者。迫害を受ける者。
昔から兄達と比べられて来た。優秀と評価される彼らと違い、俺は無能のレッテルを貼られ続けて来た……。

愚かな馬鹿共は俺も優秀である事を理解しない。
どんなにいい結果を残しても、歯牙にも掛けない。兄の方に尻尾を振りゴマを擦る。
無理やりにでも俺の方に向かせ、評価を得ようと実力を示した。その結果がこの仕打ちだ。

この森に追放され幽閉された。
何とも愚かな他人共は俺への評価を見誤った。だが寛大な俺が、再びチャンスをやろう。正当な評価が出来るよう、お膳立てをしてやろう。
舞台は整った、世間は再び俺という存在を再認識するだろう。俺が黒田総一郎を超える存在だという事を、認める事になる!

寄生虫に取って代わる新たな力である、ウィルスは近い日に完成するだろう!
その来るべき日が来れば、自ずと世間は評価を改めざるを得ない! 世間よ、準備しておくがいい!
俺に跪く準備を! 新たな天才を迎える準備を!! その日はもうすぐだ!!!」

3日前 No.75

MK マッチー @11777 ★i04XIsqV4q_iBP

第6話

十二帖程の広さがあるコンクリート製の部屋。清潔感は無く荒れ放題。壁中のコンクリートが剥がれ床に散乱、
実験器具なのかフラスコの様な物が、複数壊れ散らばっている。ファイルや書類も散らばり、椅子や机乃足が壊れひっくり返っている惨状。
そんな部屋で何故か拳銃や、マシンガンと言った使われていない銃弾の、箱が無造作に捨てられていた。腐っても軍関係の施設だからだろうか? 大佐は銃弾を補給する。


山田:
「……いや〜、それにしてもまさかあなたも来るとは、思いませんでした。」

銃創に弾を込めている大佐を横目に見ながら、自分の隣りにいた谷村に話しかける。


谷村:
「罪滅ぼしって奴ですかねぇ……。エリーさんを救えなかった、不甲斐ない自分なりの贖罪。」

山田:
「まだ、そんなことを……。」

谷村:
「行かせてください、何が出来るか分かりませんが……。エリーさんの様な思いはしたくないんです、助けられるなら助けたい。」

覚悟の決まった顔で頷く谷村を見て、山田はそれ以上語る事は無かった。
山田の肩を栗山が叩いた。


栗山:
「男同士で見つめ合ってるとこ悪いんですけど、こんな物を見つけました。」

山田:
「言い方なんとかなりませんかねぇ……? それは?」

栗山:
「壊れたロッカーの中にありました、何かの報告書のようです。」

ホッチキスで留めただけの、簡易な書類を手渡す。

《(汚れて読めない)体 年別記載表
◯1ページ目:
大・・・15人
子・・・6人
老・・・8人

(汚れて読めない)を投与後拒否反応を示し宿主共に死滅を確認。
投与量を検討するよう推薦されたし。

◯2ページ目:
抗体が作られる事無く死するが投与量を変えても変わらず死する。
そのため投与実験は文字通り失敗。

ワクチン製造による研究は座礁。
作られるのは意志に反する悪魔の薬、死のウィルスと呼ばれるに相応しい物ばかり。
上層部は少なからず満足しているようだが、研究結果的には失敗である為、さらなる試行錯誤が必須だろう。》


山田:
「………何だ、これは?」

報告書を持つ手に力がこもる。

3日前 No.76
切替: メイン記事(76) サブ記事 (7) ページ: 1 2

 
 
<< TOPページ 掲示板TOP 記事データ お知らせメール ▲ページ上 >>
★必ず ローカルルールメビウスリングのルール をご覧ください。
 ▼スタンプ▲スタンプ
※スタンプはいちどに 3個 まで使えます  ×閉じる
注…感想・コメントはこの記事ではなく、サブ記事に書き込んでください。(小説カテゴリでは必須です)