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パラサイト・ワールド2 コード・B:レボリューション

 ( 小説投稿城 )
- アクセス(386) - ●メイン記事(150) / サブ記事 (10) - いいね!(0)

MK マッチー @11777 ★i04XIsqV4q_VXf

「…どうしてこうなったのかは、分からない。」

上半身が裸で包帯を巻いた、ボロボロの男が言った。


「気がつけばあっという間に自分の世界は、音を立てて破壊された。」

男は自分の隣りを見た。


「だが全てを失って尚、それでも失いたくないものが出来た。絶望の中に明日を生きる、覚悟を見つけた。」

自分の手元にあるボイスレコーダーに目線を落とす。


「何が起きて森羅万象の理が覆ったのか、それを話す前に3日前の出来事を、話さなければならない。 ………俺は生存者、山田太郎。」

そう名乗った男はヘリの窓の外を見た。赤々とした景色を眺める。
口を開き___この世の絶望を語り出した___



『どうも皆さん、初めましての方もそうじゃない方もクリック陳謝!
察しのいい方はもうお分かりでしょう、そう!続編なんです!
人生初の小説を書くのが楽しくなり続編を作ってしまいました〜。まだまだ粗が目立つかもしれませんが、どうぞご容赦を(笑)
初めての方にストーリーを説明しますと「寄生虫研究の第一人者となった近未来の日本」という設定で、前作の3日後の話になります。
そういうことでグロ系サスペンスな小説になります。苦手な方はお勧めしません。

記事メモにはキャラ紹介と話数を、サブ記事には感想、質問、アドバイスや提案等がありましたら載せますのでよろしくお願いします。
後モンスターやクリーチャー等の分かりづらい描写は絵を載せたいと思っているんですが、そういう機能を使いこなせていない状況です。
何とか頑張ってみますが、文章で分かりづらくならないように勤めていきたいと思います!
では最後にコレを言って終わりましょう。
※この作品はフィクションです。実在の人物、団体、事件などには関係ありません。』

1年前 No.0
メモ2018/07/09 00:53 : 完結 @11777★i04XIsqV4q_iBP

第1話『再びの悪夢』(>>1-8)   第2話『アマゾネスの集団』(>>9-22) 第3話『動物達の革命』(>>23-48

第4話『人間達の反逆』(>>49-62) 第5話『暗躍する者』(>>63-74)    第6話『狂気の山脈』(>>75-94

第7話『悪魔の証明』(>>95-111) 第8話『黒田次郎』(>>112-131)    第9話『最後の戦い』(>>132-140

最終話『脱出』(>>141-150


・登場人物

主人公:山田 太郎(やまだ たろう) 身長170cm、23歳。目辺りまで下ろした黒髪、中肉中背の体型。

 流れるように不遇な状況に流される。いわゆる巻き込まれ体質。

 ビビリな男だったが、様々な事を得て変わりつつある。とっさの反射神経は一般人を超える。

 正義感が強く曲がった事が嫌い。意識せずに歯の浮いた言葉を言える天然のたらし野郎。


ヒロイン:宮部 雅(みやべ みやび) 身長168cm、20歳。髪をポニーテールにした金髪碧眼の美少女。

 ピンクが好きでその系統のものを着用するお洒落な人。迷彩柄の作業服を改造、ピンクのプリーツに黒ハイソックスのスタイル。

 助けられた山田と良好な関係を築く。行動力も低くはなく助けたりする程の剛胆さも垣間見せる。

 詩編のダンテの知識が豊富。因にスタイルはいい方である。


準主役:落合 統治(おちあい とうじ) 身長176cm、24歳。容姿が優れたモデル並みのイケメン。

 整えられた短髪の黒髪、スラッとした長身。狩矢崎市から脱出し生還した一人。

 銃器マニアで銃器等の無線機器に詳しく、専門用語混じりに詳しい解説を披露したがる残念なイケメン。

 余裕が無くなると言動が荒々しくなり攻撃的に。本性は野蛮なのかもしれない。しかしツッコミ役である。

 色ボケ体質で伍長に一目惚れし言い寄る。


大佐:三木 秀一(みき しゅういち) 身長175cm、33歳。前髪を中分けにした中肉中背、スタイルのいい迷彩服を着た男。

 滅びゆく狩矢崎市から生還した数少ない人物の一人。

 元KS社 私設特殊部隊 BCSK(バスク)の隊長。軍や政府にも顔が利くらしい。階級至上主義で上下関係に厳しい。

 そのため独自のルールを敷いていた女性用キャンプの人達と衝突。特に伍長を快く思っていない。

 冷静沈着な性格で、冷酷非情で冷淡なリアリスト。射撃の腕前はプロ並みで、愛銃はコルトパイソン。


ジェシー・ハミルトン・上田(うえだ) 身長165cm、28歳。

 腰にまで伸びた青みがかった黒髪、キツ目なつり目、涼やかな鼻筋、柔らかそうなピンク色の唇、特有の色気を持ったハーフの女性。

…続きを読む(114行)

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MK マッチー @11777 ★i04XIsqV4q_iBP

大佐は懐からコルトを取り出し、寸分の狂いもなくヘットショットを決める。
血液とも体液とも形容し難い、気味の悪い色の液体が床に落ちると、煙を上げ何かを焦がした様な音を発する。
頭部を半壊されても尚ファシネイターは歩みを止める事無く、山田達の元へと向かって来る。


ファシネイター:「ジュルルルル〜……」

三木大佐:
「気をつけろ! 奴らの血液は酸で出来ているぞ!」

栗山:
「こんな化け物ばっかり!」

銃を取り出した山田と女性兵達も加わり、ぼやく栗山に続いて連射。
迫って来るファシネイター達を蜂の巣にしていくが、少なからず知性が宿っているようで、自らの血の使い方を知っているのか、傷ついた腕を振り回す。
飛び散った酸の血液は山田達の足下に落ち、床を異臭を放ちながら溶かしていく。

急いで後ずさる山田達を余所に、さらに慌てたのか谷村が悲鳴を上げながら走って逃げようとした。
周囲を確認せず疾走したため、重々しい機材に突っ込み共に倒れる。倒れた拍子にスイッチが入ったのか、雑音混じり無線会話が入って来る。


無線:『ザザザ……繰り返す作戦実行まで一時間を切った、依然作戦に変更は無いか?』

無線2:『こちら本部、変更は無し。午前六時に赤城山山脈周辺を焼却する。ザザザ…………これは決定事項だ。』

無線:『………本部、納得出来ない。そこは自分の故郷だ、なぜ森林を焼尽さなければならないのか、理由を乞う。』

無線2:『ザザザ……納得する必要は無い、ただ従え。これは上層部からの命令だ。通信を終える。』

混線していたのか物騒な単語が飛び交う通信を傍受した。頭を抑えながら起き上がった谷村は通信を聞いて青ざめる。


山田:
「あ、赤城山山脈って今俺達がいるここですよね。それを焼尽すって一体……。」

三木大佐:
「今は目の前の敵に集中しろ!」

ソフィア:
「被害がこれ以上拡散するのを防ぐ為に、政府が焼夷弾を使用しての焼却作戦を決めたようです。ここで死ぬであろう貴方方には関係のない話です。」

栗山:
「お気遣いどうも痛み入ります!!」

一瞥する事も無く栗山はソフィアに苦々しく嫌味を言い放ちながら、ショットガンに持ち替え迎撃していく。

6ヶ月前 No.101

MK マッチー @11777 ★i04XIsqV4q_iBP

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6ヶ月前 No.102

MK マッチー @11777 ★i04XIsqV4q_iBP

・偽装天文台研究所 通路

5:15

大佐を先頭に真ん中を山田と女性兵、最後尾に負傷した女性兵を支え両側を陣取る栗山と谷村。
先ほどまでいた部屋とは違い手が行き届いており、綺麗なタイル張りの床、お洒落な間接照明が通路を彩る。
大佐達は周囲を注意深く警戒しながら進んでいく。


山田:
「……自分が安易なばっかりに同僚さんに、被害が出てしまいました。本当に申し訳ありません。」

女性兵3:「そんなに謝らないでください、覚悟のうちです。それに遅かれ早かれあの扉を開けて、この通路に来なければならなかったようですし、
どっちにしろ誰かが犠牲になってたかも知れません。一般人を守るのが私達の仕事、それが上司を守って負傷しただけです。」

頭を下げ謝罪する山田に、両手を振りながら彼を気遣う女性兵。

「職務を全う出来るのは何よりの喜びです、一般人の貴方方が無事で何より。……特に山田さんには傷ついてほしくありません。」

山田:
「どうしてそこまで俺を……。」

目を見据えて見つめて来る女性兵を、真面目な顔で見つめ返す。


女性兵3:「貴方が宮部さんの想い人だからですよ。」

山田:
「お、俺がですか? 宮部さんの?」

あっけにとられた山田は大きく目を見開き、声をうわずらせながら女性兵に聞き返す。


女性兵3:「え? 宮部さんの好意に気付いてないんですか?」

栗山:
「鈍感にも程がありますよ……。」

後ろから飽きれた口調で割って入る栗山は、ジト目で山田を見る。


山田:
「ですが、好意を抱かれる事はしてませんけど……。」

谷村:
「本気で言ってるんですか?」

ため息混じりに首を突っ込む。


「聞くところによれば命を助けたそうじゃないですか、それだけで充分好意を抱かれるに足ると思いますよ。
まぁ山田さんが身を引くというならそれはそれでいいですけど、思わせぶりな事をしておいて女性を傷つける事だけは、してはいけない事だと思います。」

「身に覚えはあるのでは?」という問いに山田は、冷や汗をかいて押し黙る事だけしか出来ない。


女性兵:「……宮部さんは貴方の話をする時、いつも幸せそうに語るんですよ……。私達はどんないい人なのか会ってみたいなって、……ずっと思ってました。
……実際に会って想像以上に素晴らしい人だなって。どうなるにしても、宮部さんを悲しませないように善処………してほしいです……。」

脂汗をかき青ざめた顔をし途切れ途切れに喋りながらも、女性兵の口調は諭すかのように強い思いが混じっていた。
山田が口を開きかけたその時、大佐が飽きれる様な荒っぽい声のトーンで割って入る。


三木大佐:
「恋バナをしているところ悪いが、道が分かれてるぞ。」

見ると通路が分岐していて右へと行ける通路と、そのまま進むと『書庫』と書かれたプレートが掲げられた部屋に別れている。
話合った結果右へ行くよりも『書庫』の部屋へ入った方が、何か分かるかもしれないからという事で、先に進む事に決定した。


山田:
「……………。」

自分の気持ちはどっちだろう。皆が先に進む中、山田は下唇を少し噛み締め考えあぐねる。
宮部を救ったのは善意でした行為の筈で、決して好意からではない。
自分が一番それを分かっている。しかし思い当たる節があるのも確かで、女性に真に受けさせたとしたら男として、責任を取らなければならない。

宮部は自分にとってどういう存在なのだろう。その答えを導き出す未来はきっとそう遠くはない。それまで自分の脳内で自問自答を繰り返すだけだ。
山田は顔を上げ、皆の後を追った。

5ヶ月前 No.103

MK マッチー @11777 ★i04XIsqV4q_iBP

・書庫

書庫の名に相応しくまるで図書館の様な、本棚が等間隔に陳列している。
並べられている本の題名には、人体や植物や血液に関するものや動物の骨格に適した本だけでなく、七つの大罪等の宗教や黒魔術関係の書物まである。
本棚の列の一つにクックロビンのタイトルを模した本を見つけた大佐は、何の気無しにその本を手に取った。

本と本の間に挟まっていたのか、見覚えのある形のレリーフが床に落ちた。近くにいた谷村がわざわざ屈み込み拾い上げた。
月とフクロウが掘られていて裏には『墓守 フクロウ』の文字が施されている。


三木大佐:
「やはりここにもあったか、一体いくつあるんだ。」

谷村:
「ん? なんでしょうコレ……。」

屈み込んだ事により下段の本に気付いたのか、一冊の資料を引っ張り出す。

《“合成獣(キメラ)”の研究レポート:
・人間と融合したハイブリット実験体ついての記述
 自然界にいる有り余る動物達を使って何か有意義な実験が出来ないか、と思案したのが事の始まり。
 植物での実験は成功に成功を重ねた結果ある種の倦怠期に突入した。その為新鮮な実験課題が必要であったためその対象を探していた。
 敷地内に迷い込んだ狼を捕縛し駆逐する代わりに実験材料とする事に迷い無く決定する。決定を下したのは次郎所長だ。

 少なからず動物達に多少の同情があった職員達とは大きく違い所長は、哀れむ心情の欠片も見せず材料とする事を即決。
 その時に見た狂気に満ちた笑顔はまるで、悪魔を目の前にしているのかのように錯覚するほどに、恐ろしかった事を覚えている。

 とにもかくにも動物と人間によるハイブリット実験が行われた。

 実験は成功。また新たな実験体が誕生した。
 ハイブリット実験体と長ったらしいので“合成獣(キメラ)”と通り名を付ける。
 何種か造られたキメラの中でも優秀だったのが狼との融合で名付けられた、クレイジーウルフがとりわけ贔屓にされた。

 言う事を聞かない他と違って簡単な命令なら制御出来る点が評価されたのだろう。(他に造られたキメラは使えないため殺処分)
 それに加え両手足を駆使した攻撃は、他の実験体には見られない現象だ。(材料となった人間の運動能力を受け継いだ可能性あり)

 この結果には所長ももちろんの事我々職員も多いに満足する出来である。》

レポートの最後にはキメラと思われる実験体の写真があり、宮部が連れ去られる際襲って来た動物と同じであったため、思い出した谷村は殴られた頬を触りながら青ざめた。
「何てひどい」と苦虫を噛み潰した様な顔でそう呟く栗山、彼女の横で山田は罵りの短い言葉を吐いた。


山田:
「あの男も止めないと……。」

5ヶ月前 No.104

MK マッチー @11777 ★i04XIsqV4q_iBP

三木大佐:
「こんなものも見つけたぞ。」

本棚の上に無造作に放られていた資料の一つを手に取り、山田達の方に見えるようにページを開く。

《変異寄生体と植物とのハイブリット実験についての記述:
 変異寄生体であるヒューミンαについての詳細は別紙とするとして、植物とのハイブリット実験の材料としてαの案が上がった。
 制御が難しい数体のαを有効活用出来ないかと模索。この実験に成功すれば目の上のタンコブでしかなかったαを生物兵器として流用出来る事ととなる。
 制御の利かない兵器は兵器ではない為処分する他ないが、処分するにもコストが掛かる。

 使用する事となった植物はクワ科の常緑高木であるガジュマル。別名絞め殺しの木と呼ばれ宿主植物に絡み付いて絞め殺す特徴を備えている。
 宿主に寄生するという点に置いてノーミンと似ていた為に選考された。

 ノーミンの血を注入した後捕縛したαの体内に埋め込みどうなるかを観察した。

 すると数分で変化が起きる。勢い良く仰け反り人間がブリッジしている状態となった。
 頭頂部から顎まで裂けていた口がさらに腹部の中心にまで裂け、無数の歯が出現。両腕両足が数十本の植物の様な触手に変化。
 とどまる事無く膨張し続けた為『実験室1−P』の封鎖を余儀なくされた。この実験の結果数人の研究員が犠牲となる。

 生き残った者達からの証言で、この触手に絡め捕られればものの数秒で体液を吸われ、ミイラの様な状態にされるという。
 まさに締め殺しの木という名に相応しいだろう。この生物は“α-プラント”と名付けられた。

 しかしαを有効活用するという点においては失敗と言える為、植物とのハイブリット実験は白紙に戻ると共に、数体のαは焼却処分が決定した。
 今後の課題は『不確かな寄生と変異』を『安定させる』のに時間を費やす事になるだろう。》

谷村:
「ま、まだ変な化け物がいるんですか。」

三木大佐:
「コレを読む限りそのようだな、ぜひとも出会いたくないところだが。」

青ざめ声をうわずらせながら喋る谷村を見ながら、大佐は肩をすくめ頭を振るオーバーリアクションをする。


栗山:
「しかし生物兵器として流用って……、それらを造って一体何をしようとしているんでしょう? ……テロとか。」

三木大佐:
「それは考えられるな。街にされた事と同じように他でするつもりかもしれん。」

栗山:
「……なら止めないと。テロをまた起こさせる訳にはいきません。」

左手を腰に置き右手を口に当て、深刻そうな顔をして呟く。
するとさっきまで静かだった山田が声を張り上げる。


山田:
「皆さん、コレを見てください! 今さっき見つけました。」

聞き覚えのある単語を目にして、本棚から引っ張り出したのか折り目のついた、資料を掲げる。
その資料のタイトルにある単語は、『Bーウィルスについて』と書かれていた。

5ヶ月前 No.105

MK マッチー @11777 ★i04XIsqV4q_iBP

《B(ビースト)-ウィルスについての報告書:

・始めは偶然の産物(悲劇)に過ぎなかった。

生物兵器として成り立たせる為にワクチンの開発が急がれ、特殊液を使っての人体実験が繰り返された。
しかし何度繰り返しても死人が出るばかり。処理に困る積もる屍(しかばね)共。
兄に気に入れられようと成果を急ぐあまり所員達は、死のウィルスを造り出している事に気付いていない。

生物兵器ではないがある種の兵器である事に変わりはない。なのに出来上がったものを廃棄する。兄が求めた結果ではないという理由だけで。
兄に心酔している所員達には辟易(へきえき)している為、自分だけで失敗作の研究を継続する。

失敗例の一つに動物のように発狂し、暴れ回りながら死んだ例がある。被害を拡散させるという点において、兵器なら申し分の無い出来だ。
そのヒントを元に研究を継続した結果、人間の動物的本能中枢を刺激さえすれば、動物のように下等に行動し周りを巻き込んで破滅する。
兄とは別の新たな兵器を造り出す事が出来るのだ。

しかしここで問題となるのは造り方だ。必要なのはノーミンに寄生された動物の血だ。複数体の血との合成である事が望ましい。
そうすれば本能中枢を確実に刺激出来る。

だが『不確かな寄生と変異』を『安定させる』という課題が壁となる。安定したウィルスでなければ、投与し死ぬのであれば兵器として意味が無い。

結論、ノーミンは兄の実子を混ぜ造られたのだから同じ黒田の血であれば、『不安定な寄生』は『安定する』という考えに至った。
そして同じ黒田の血でも、汚れの無い若い血液でなければならない。自分には思い当たるアテがある。調達はすぐにでも可能だ。

しかしこの研究所にはノーミンがいないため、動物に寄生させ血液を採取する事は出来ない。

チャンスは必ず来る。来るべき時期を待つのみだ。     報告書記載:黒田 次郎》

山田:
「……だから、黒田も次郎も執拗に宮部さんを求めたのか。」

報告書を閉じ複雑そうな表情で目を細める。


三木大佐:
「拉致の目的はウィルスの完成、このままでは奴の想い通りになるぞ!」

栗山:
「ええ、急ぎましょう! 宮部さんを救出しウィルスの完成を阻止します。」

栗山達は急いで書庫の出入り口へと向かう。山田はふと中庭へと出るガラス戸に目をやり立ち止まる。
バイクらしきものにシーツが掛けられているが、どこか見覚えがある。黒塗りにピンク色の花の様な模様が施されている。


山田:
「あれは確か……。」

三木大佐:
「何をしている、さっさと来い!」

急かされ「そんな訳無いか」と呟き大佐達を追い、書庫を後にする。

5ヶ月前 No.106

MK マッチー @11777 ★i04XIsqV4q_iBP

・偽装天文台研究所 通路

5:20

谷村:
「この通路で合ってるんですか?」

三木大佐:
「合ってるも何も、この通路しか無いからな。」

先ほど曲がらなかった通路へと戻り、そのまま曲がって通路進む。警戒して進んでいるが今のところ、何かが出てくる訳でもない。
「拍子抜けだ」と大佐が呆れ気味にため息をついた。
さらに進むと通路が左右に分かれた突き当たりに出る。どちらに進むかを考えようとしたその時。左側の通路のシャッターが勢い良く下りた。


栗山:
「な、なんですか? いきなりシャッターが……。」

谷村:
「びっくりしたぁ〜! 潰されるかと思ったぁ〜!」

三木大佐:
「故障かもしれんな。やむを得ん、右側をゆくぞ。」

いきなり下りたシャッターに山田達は、首を傾げながら歩みを進める。その途中報告書にあった『実験室1−P』を見かけたが、案の定素通り。
その直後目の前にシャッターが下り、道を塞がれた。


栗山:
「こ、これは……。」

三木大佐:
「……故障ではなくソフィアの仕業だな。我々を誘導しているんだ。」

山田:
「誘導? でも、どこに……?」

大佐は静かに指を指した。『実験室1−P』を。


谷村:
「ま、まままさか……。入るって言うんじゃ、ないでしょうね………?」

顔を真っ青にしながら、谷村は違う答えが出るようにすがるかのように聞いた。


三木大佐:
「入るしかあるまい、我々は罠にハマり行き止まりに陥っている。」

悲鳴にならない悲鳴で叫び、谷村は両手で顔を覆ったかと思えば、髪を掻き毟る。山田達を始め現役兵の栗山でさえも、絶望的な表情だ。
『実験室1−P』の扉の前に立ち、大佐は振り返り「覚悟を決めろ」と全員を叱責する。
深呼吸をする山田、両手で頬を叩く栗山、見つめ合い頷く女性兵二人、右往左往する谷村。それぞれ覚悟を決めたのを見た大佐は開閉スイッチを押す。

5ヶ月前 No.107

MK マッチー @11777 ★i04XIsqV4q_iBP

・実験室1−P

室内は木の根の様な太い触手で覆われていた。壁を這い天井にまで触手を覆い尽くした室内は、とても暗く森林かと錯覚する程。
こもった腐敗臭が鼻についた。床をよく見ると、触手の隙間からいくつかの人間の頭蓋骨が確認出来る。
資料にあった通り、ここで犠牲になった研究員達であることは、容易に想像出来た。

刹那、何かが蠢く物音を聞き顔を上げる。部屋の中央、渦を巻く触手の中心、花のつぼみのような大きな膨らみがあった。
そのつぼみが花が朝日を浴びるように、花弁を広げる。花としての役割であるめしべであるはずの、子房は無く代わりに、巨大な口が姿を現す。


谷村:
「あ、あれがαなんとかですか? 食虫植物に出会った虫になった気分ですよ……。」

三木大佐:
「さすれば食人植物の、α-プラントと言ったところか……。来るぞ、避けろ!!」

床を巡らせていた触手が手のように五本持ち上がり、山田達目掛けて植物の蔓を勢いよく伸ばして来た。
山田、大佐、栗山、女性兵二人は左右に分かれ避けるが、取り残された谷村はあたふたするだけで避ける暇もなく、蔓の触手に串刺しになる。
かと思われたが、触手は全て壁に突き刺さり、谷村は不思議な格好で身動きが取れなくなっていた。少し半泣きで「もうイヤだ」と涙声で呟く。

山田と大佐はショットガンで別の方向から、襲ってくる触手を撃ち落とす。栗山はさらに太い触手を、デザートイーグル二丁持ち走りながら撃っていく。
怪我をしていない方の女性兵はアサルトショットガンを、怪我をした方の女性兵はサブマシンガンを持ち、お互いを守りながら襲って来る触手を迎撃する。
順調に触手を捌(さば)いていたかと思われたその直後、女性兵二人の方に谷村が降って来た。振り飛ばされたのだろう。

なし崩しに倒れた三人、、谷村に気を使い彼の背中に手を回し体勢を立て直そうと、女性兵が立ち上がろうとした。
その瞬間、蔓の触手が彼女の胴体を貫いた。


女性兵3:「あ、ッがぁ……!!」

みるみるうちに乾涸びていき逞しかった体は、ミイラのようにしわくちゃに成り果て、痙攣した後パサリと乾いた音を発しながら床に倒れる。
目の前で女性兵が変わり果てる様を見た谷村は、声にならない声で叫び恐怖に戦(おのの)いた。


栗山:
「そんなッ……!!」

下唇を噛み締め怒りの咆哮を上げ、α-プラント本体にデザートイーグルを向け連射した。
しかし本体である口には届かず、黒ずんだ緑色の花弁が邪魔をする。マグナム弾がビー玉かのように弾かれる。栗山は地団駄を踏んだ。
太い木の根の様な触手が山田を、薙ぎ払おうと横から迫って来る。それに気付いた彼は間一髪で屈み込み避けた。屈み込んで胸辺りに違和感を感じ、ポケットをまさぐる。

ポケットから取り出したのは地下坑道の、鉱夫宿舎で見つけた除草剤だ。
これなら何とか倒せるかもしれない。そう思った直後、隣りにいた大佐が目の端から消えた。
山田は顔を上げると大佐は宙に浮いている。いや、正確には触手に首を絡め捕られ浮いていた。


三木大佐:
「ッぐぐ!!」

もがき苦しみ足をジタバタとばたつかせる。その拍子にポケットに入っていたのであろう、ボイスレコーダーが床に落ちる。
除草剤をα-プラント本体の口に入れる為に、投げるフォームを作った。その直後山田は後頭部を床に打ち付けながら倒れた。
彼の足に蔓の触手が絡み付き引っ張っていたのだ。

倒れた拍子に手から除草剤を落とす。
拾おうと手を伸ばしたが、掴む前にα-プラント本体の方へと引っ張られる。

栗山:
「山田さん! ……ぐあッ!!」

山田に一瞬気を取られたその瞬間、背中から触手に貫かれ貫通。口から吐血する。
「よせ!!」と谷村は叫んで、触手を掴んで引き抜こうとする。
宙に浮いた山田はα-プラント本体の、頭上に掲げられた。α-プラントはさらに大きく口を開き無数の歯を露にする。彼を食おうという魂胆なのは明白だ。

5ヶ月前 No.108

MK マッチー @11777 ★i04XIsqV4q_iBP

女性兵:「山田さん、受け取って!」

襲って来る木の根のような触手を、スライディングで避け除草剤を拾い投げた。弧を描きながら投げられた除草剤を、必死の想いで掴む。
そのままα-プラントの口へと落とす。数秒の咀嚼音を鳴らした後、α-プラントの動きが完全に止まる。
するとみるみる内にα-プラント本体を軸に、枯れていくのか白い模様が触手へと広がっていく。


山田:
「水の代わりに、銃弾をやるよ。」

まだ持っていたショットガンを、動かなくなった口に銃口を向け、躊躇なく引き金を引く。
α-プラントはひび割れたかと思ったら、粉々に霧散した。本体の死により命が宿らなくなった触手から力が抜ける。
山田は頭から粉々になったα-プラントの本体の上に落下した。肋骨と頭の痛みに悶絶し床をのたうち回る。


三木大佐:
「ゴホッゴホ……! ハァ、命拾いした。二人共感謝するぞ。」

触手から解放され尻餅をついていた大差は、片手で喉を触りながら女性兵と山田の方に、片手を上げ感謝の言葉を口にする。


女性兵:「いえ、そりよりも栗山さんが……。」

谷村:
「栗山さん! しっかりしてください、栗山さん!」

枯れた触手を栗山の体から引き抜き、青ざめた顔で彼女の両肩を抱き心配する。


栗山:
「……ワクチン、のお陰ですかね? あまり出血しないのは……。出血多量にならないのは幸いですけど、……痛覚が緩和されないのは、応えますね……。」

途切れ途切れに答え、ウェストポーチからアドレナリン作動薬を取り出し、自ら打っていく。
数秒経った後、谷無に肩を貸してもらいながら、フラフラと立ち上がる。乾涸びた女性兵を一瞥し、悲しそうに頭を垂れる。
喉をさすりながら大佐は、気を使っているのか少し優しい口調で尋ねる。


三木大佐:
「満身創痍だが、まだ行けるかね?」

栗山:
「ええ勿論ですよ、……宮部さんを救うまでこの命、繋ぎ止めます。」

顔を上げ大佐を見る。大量の脂汗が頬から伝っているが、強い信念が瞳に宿っている。それを見た大佐は頷いた。
フラフラと歩きながらも、栗山達に合流する山田。彼は肩越しにα-プラントの方を指差す。


山田:
「蔦で気付きませんでしたが、向こうに扉があるようです。」

三木大佐:
「つまりそこしか進む道がないという訳か、では行こうか……。」

大きなため息を吐いた後、先陣を切るように大佐が歩き出す。谷村と女性兵が重症になった栗山に、肩を貸しながら大佐の後を追う。
山田は乾涸びた女性兵の方を向き頭を下げた後、ボイスレコーダーが落ちている事に気付き拾った。
大佐の方を向いたが既に声を掛けづらい距離にいた為、後で渡す事にし自らのポケットに仕舞う。

α-プラントの死骸を通り過ぎようとした大佐は、足下で何か光った事に気付きその物体を拾う。
やはりレリーフで錆びているのか表に、何が掘られているのかが分からない。裏はかろうじて『祭司 コウモリ』の文字が読める。
呆れと怒りが混ざった様な顔をしながら、胸ポケットに仕舞い込み再び歩き出した。奥の部屋へと通じる開閉スイッチへと手を伸ばす。

5ヶ月前 No.109

MK マッチー @11777 ★i04XIsqV4q_iBP

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5ヶ月前 No.110

MK マッチー @11777 ★i04XIsqV4q_iBP

・実験室1−A

通路の行き止まりは研究室で、室内に入ると培養液を満たしたカプセルが数十個、研究室中央に並べられている。
中にはオルトロス、フェンリル、クレイジーウルフ、ファシネイターが培養液に浸されていた。


谷村:
「またパソコン……。」

中に並べられたカプセルに不気味がる山田達を余所に、谷村は室内の隅の方に合った複数のパソコンが気になり、ディスプレイを起動し弄り始める。
大佐は天井についている監視カメラに気付き、即座に銃で撃ち抜く。
血塗れの手術台のようなものの上に、無造作に置いてあるファイルを見つけた山田はそれを手に取った。


《職員の手記:
はっきり言って次郎所長は異常だ。

兄を超える事への執着、実験に対する倫理観の欠如、同僚や部下に対する非情な対応の数々。
我々職員への振る舞いは確かに堪え難いものがあるが、友好的ではない所長なので仕方ないという話で済む。

しかし自らの奥さんに対する仕打ちは、到底理解出来るものではない。
総一郎氏から盗んだとされる二匹のノーミンを事もあろうに、実験体として利用したのだ。
裂いた腹の中にノーミン二匹入れるという悪魔の様な実験を決行した。麻酔を使っての実験はせめてもの良心なのだろうか。

その結果。
腹を引き裂く形でノーミン達が触手と共に体外に流出。かさの広いキノコ、アカヤマドリのような風貌となる。
所長は“H-IN 03(えいちーあいえぬぜろさん)”と名付けた。

「妻なら夫を支え仕事を手助けするものだ」という理由だけで。

この男は冷酷なまでに異常者だ。この事に気付いた時にはもう手遅れ。
何人かの職員が相次いで行方不明について大体察しがつく。

私はこの場所から逃げる準備をしなければ。

___(後は血で汚れて読めない)___》


栗山:
「………宮部さんの、お母様が……。何て酷い。」

ただでさえ青白い顔が、手記を読んでさらに顔色が悪くなる。山田は怒りに任せて手記を叩き付けた。


山田:
「必ず止める!!」

ソフィア:
「そうはさせませんよ、実験体放出。」

どこからともなくスピーカーからソフィアの声が聞こえ、実験体を放出しようとするアナウンスが流れる。


三木大佐:
「しまった、先手を取られた!」

全員が室内の中央にある培養液入りのカプセルの方を向いた。実験体達が襲って来る覚悟を決める。
しかし何も起こらず無音が数秒感続いた。


谷村:
「ふぅ〜、何とか間に合いました。」

パソコンに向き直っていた谷村が、額にあった汗を拭きながら全員に向き直る。


三木大佐:
「……貴様の仕業なのか?」

谷村:
「ええ、電気機器には詳しいんでこの研究室だけオフラインにしてみました。」

山田:
「すごい……。まるでハッカーですね。」

谷村:
「いいえ僕はハッカーじゃありませんよ、電子の砂漠を操る旅人ですよ。」

両肩をすくめながらウィンクをする。
さらに持っていた地図によるとこの研究室のダクトから、『次郎の研究室』へ行けるとの事。「では行きましょうか」と言って谷村は、ダクトの蓋を開けた。

                          ___7完___

5ヶ月前 No.111

MK マッチー @11777 ★i04XIsqV4q_iBP

___西方宗教研究 七つの大罪___

人間が持つ「罪」そのものというよりかは、人間を罪に導く「可能性」のある感情や欲望の事で、七つの罪源(ざいげん)とも。

もともとは八つあるとされ、「暴食」「色欲」「強欲」「憂鬱」「憤怒」「怠惰」「虚飾」「傲慢」だったのものが、
6世紀後半以降に「虚飾」は「傲慢」と「憂鬱」は「怠惰」と統一され。「嫉妬」が追加。
「暴食」「色欲」「強欲」「憤怒」「怠惰」「傲慢」「嫉妬」として七つに修正された。

兄が愛読しているダンテ・アリギエーリの叙事詩、『神曲』は中世の宗教としての世界観が最も顕著に現れている。

そしてその中世では、七つの冠を模した七つの大罪とそれに比肩する動物達が関連付けられている。

_____(以下がその関連比肩表である。)_____

傲慢ー獅子
憤怒ー狼
嫉妬ー犬
怠惰ー熊
強欲ー狐・猫
暴食ー虎・蠅
色欲ー山羊


寄生した動物達の血液の合成をするにあたり、いくつの血液が必要になるか研究した結果。七滴必要であると結論に至った。

超越した科学力によって神の領域へと踏み込まんとする、己に相応しい数字と言えるだろう。

神にも似た力を使い、兄を越え、己という存在を世に知らしめる。

この数字は罪ではなく力だ。                 ___愚者の手記___

5ヶ月前 No.112

MK マッチー @11777 ★i04XIsqV4q_iBP

第8話

5:36

・実験準備室

谷村:
「イタタタ、どうしてこんな事に……。」

ダクト内を移動中に女性兵が何かに反応し、悲鳴を上げながら暴れ出した為古かったダクトは壊れ、そのまま全員がダクト外へと投げ出され落下した。
固い床に体を打ち付ける形となる。


三木大佐:
「この女が怪我人のくせに、ネズミ如きで騒ぐからだ。」

女性兵:「だってだって〜、怖かったんですもん。害虫は女の子の敵ですよ!」

山田:
「……俺も重傷の怪我人なんだよ、この腕立て伏せ状態キツいから、……早く、どけぇ………。」

自分に乗っている女性兵と大佐に退くように口調を少し荒げる。さらに重傷の栗山に覆い被さる形になっているのも相まって、彼は焦りを禁じ得なかった。
押し倒されている栗山は気恥ずかしいのか、山田から目を逸らし冷や汗をかきながら、少し頬を染める。
謝罪をして退く女性兵と大佐。手を差し出し栗山が立ち上がるのを手伝いながら、山田はやっと起き上がる。


三木大佐:
「しかし、ここは一体どこなんだ?」

谷村:
「え〜と待ってください、地図によると……採血室の隣りにある実験準備室のようですね。」

「ダクトを進んで感じた体感が確かなら」と準備室を見渡す。理科の実験で使う様なフラスコやら器具やらが散乱している。
大佐は使えそうなガスバーナーを見つけ懐に仕舞う。
山田は後ろを振り返る。薄暗くて良く見えないが大きな機材の様なものがあり、中から何かが赤く点滅している。


山田:
「あれは……?」

近づこうと一歩踏み出そうとしたその時、女性兵が声を張って呼び止めた。


女性兵:「皆さん、静かに! 話し声が聞こえます。」

光が漏れていたドアの隙間を覗き込んでいた女性兵が、全員を手招きをする。隙間に顔を付け覗き込む。


宮部:
「お父さん、お願いだからこんな事もうやめて……。」

次郎:
「親のする事にいちいち歯向かうな、もう口答えは許さんぞ。」

椅子に縛り付けられた宮部がいた。その彼女の目の前には薄汚い白衣を着た、白髪混じりのボサボサの髪と無精髭を生やした不健康そうな顔の男がいる。

5ヶ月前 No.113

MK マッチー @11777 ★i04XIsqV4q_iBP

山田:
「雅さん……ッ!」

三木大佐:
「待て、周りの安全を確認しろ。あのガスマスクはいないか? 今飛び出しても先ほどの二の舞になる、万全だった時と違い手負いが多い。」

肩を掴まれ静止された山田は一瞬大佐を睨んだが、一理あるので少し冷静になって周囲を見渡す。
宮部と次郎以外にはいないようで、採血室には採血する道具しかなく、次郎の右手には血を満たした注射器が握られていた。宮部のである事は想像に難くない。
周囲に安全を確認した山田は、大佐の方を向き頷いた。いつでも突撃出来る合図だ。


宮部:
「どうして、そこまで叔父さんにこだわるの? お父さんは偏屈で意地っ張りだったけど、そこまでじゃなかった! 実験実験で家族をないがしろにする人じゃなかった!
頑固だったけど話が通じない程じゃなかったじゃん! お母さんに愛想を尽かされて離婚されても、何も感じなくなったなんておかしいよ。
ただのぶっきらぼうなぶきっちょなお父さんに戻って! お願い!」

次郎:
「人は変わるんだよ、変化を望む生き物だ。変革を志して生きるんだよ。
前の俺は家族を望んでたかもれんが、今俺は望むものは兄を超えた先に辿り着く境地! 兄にすげ変わる世界からの評価だ!
娘なら親の成功を喜びこそすれ、反抗されるいわれはないぞ!」

山田:
「自分自身の成功に目がくらんだあんたには、彼女の苦しみが分からないんだ!!」

思わず飛び出し叫んだ。引き止めようとした大佐の手が空を掴む。


宮部:
「太郎さんッ!!」

次郎:
「小僧、ここまで来るとはな。大したものだ褒めてやろう。だが俺は止められん、この血でやっと大成できる! 変革を……うッ!」

手に持っていた注射器を撃たれ床に落とす。割れた注射器から血液が床に流れていく。撃ったのは大佐だ。


三木大佐:
「妻を娶(めと)り、子を成し、愛を知って腑抜けていれば良かったものを……。
身を弁えず無能の分際で、高嶺の花を高望みしすぎたな。」

次郎:
「おのれぇ、おのれぇ! 二足のわらじを履いた子飼いの犬のくせに! よくも、よくもぉー!!」

山田:
「いい加減にしろ! 自分の家族を壊しただけじゃなく、色んな人や動物を犠牲にしてその上、宮部さんまで犠牲にしようというのか!?」

刀で宮部を縛っていた紐を斬り、拘束を解く。自由になった宮部は涙目で山田に抱きついた。
彼女の肩を抱きながら彼は次郎を叱責する。


次郎:
「娘を渡せ、貴様には無用な女だ。最も必要である俺の元にいるべきだ。」

山田:
「あんたの言う必要ってのは物として利用する事として、宮部さんが必要なだけだ。
俺はいなくなって分かった。損得勘定無しで、雅さんが必要なんだ!」

宮部はきょとんとした顔で山田を見つめ、大佐はため息をつき、栗山は少しかを伏せ、女性兵と谷村は口笛を吹いた。


次郎:
「小僧ぉ〜………。こうなったら仕方ない、ソフィア! 今ある血液だけで合成を開始しろ!」

ソフィア:
「了解しました。」

次郎:
「それと、H-IN 03を解き放て!」

後方から轟音が轟いた。実験準備室を壊しながら黄ばんだ触手塗れの化け物が出現する。
宿院の手記に合ったようにかさの広いキノコ、アカヤマドリのような姿形をしている。胴体の真ん中が目なのか、赤く丸い点が触手から見え隠れする。


宮部:
「太郎さん、銃を!」

山田の懐から勝手に銃を取り出し、迫って来るH-IN 03を向けた。


栗山:
「宮部さん、貴女だけは駄目!!」

引き金を引く寸前、宮部を制し撃つのを妨害。その直後触手で形成された鉤爪を振り下ろされ、栗山は真正面から引っ掻かれた。

5ヶ月前 No.114

MK マッチー @11777 ★i04XIsqV4q_iBP

栗山:
「ガハァッ……!!」

六メートルはあろうかという怪物に、吹っ飛ばされ倒れた栗山に駆け寄る宮部。引き裂かれた胴体から出血し始める。


宮部:
「栗山さん、どうして……。」

栗山:
「……もう、嫌なんです。親子で争うところを………見るのは……。」

さらに何かを言うとするが、激しく咳き込み喀血(かっけつ)する。栗山の名を呼び叫ぶ宮部にH-IN03が近づく。
触手で形成された鉤爪を振り上げた直後、サブマシンガンを持った山田に鉤爪を蜂の巣にされる。
「銃、借りますよ!」と叫びながら、谷村は栗山のデザートイーグルを一丁持ち、胴体を撃っていく。


谷村:
「うわぁ〜、反動が強い〜!」

踏ん張りきれなかった彼は撃ちながら尻餅をついた。撃たれ千切れた触手は、空中に霧散する。
鉤爪を撃たれた事で標的を山田に変えたH-IN03は、向きを変え鉤爪を振り下ろした。後ろへ飛んだ山田は間一髪で避ける。
大佐は攻撃態勢になった直後持っていた火炎放射器の、シリンダーを大きく抉られ炎を放出出来なくなった。


三木大佐:
「ぬぐッ!」

一瞬の隙を付かれ振り回した鉤爪に弾き飛ばされる。壁に激突するが受け身を取った大佐は怪我をせずに済んだが、火炎放射器に穴が空き中から燃料が漏れる。
尻餅をつきながらも撃っていた谷村は弾切れを起こした。何度トリガーを引いても乾いた音しかせず、焦っていると目の前にH-IN03が迫った。


谷村:
「うわぁあああーーー!!」

逃げる暇も成す術も無く彼は触手に絡め捕られる。宙ぶらりんの状態で必死に抵抗するが、徐々に体が触手に覆われ始める。
彼を逃がそうと山田は渾身の力で、触手で形成された腕に刀を突き刺した。
しかし突き刺した箇所からさらに触手が出現し、山田の方にも伸び、山田も絡め捕ろうとする。


山田:
「うッ、ぐお……。」

宮部:
「太郎さん!」

重傷を負った栗山の傍にいながらも、触手の中に引っ張られようとしている山田を心配する。


次郎:
「ヒャッハハハハ、飲み込め! 全てを覆い尽くせ! 気に入らないもの反抗するもの従わない奴は、全て自分の栄養になるように染め上げろ!!」

両手を広げ天を仰ぎ見て、下劣に嗤いながら歓喜する。

4ヶ月前 No.115

MK マッチー @11777 ★i04XIsqV4q_iBP

三木大佐:
「いいようにはさせん!」

穴の空いた火炎放射器を振り回し、中身の重油をH-IN03にぶっかける。
足下の床にも重油が広がり始めた直後、H-IN03は触手で形成された足を滑らせた。
屈み込むように倒れたお陰で、触手から解放された谷村は急いでH-IN03から離れた。それを見た山田も刀を抜き、体に付いた触手を斬り取りながら急いで下がった。


谷村:
「どうすんですか、どうするんですか? どうやって倒すんですか? 銃じゃ倒せません!」

山田:
「すぐに起き上がって来ます、何か倒せる作を考えないと!」

三木大佐:
「アレを使う。」

傍の壁を指差す。そこには可搬式液体窒素容器、つまり液体窒素のラベルが貼られたボンベが三本備え付けてあった。


山田:
「そうか! 液化ガスの冷熱を利用するんですね。」

谷村:
「つまり?!」

三木大佐:
「濡れた体に液体窒素をぶっかければ、低温脆化(ぜいか)が起き体を脆くさせる事が出来る。そうすれば倒せる筈だ。」

そういうやいなやコルト二丁に持ち替え、液体窒素の入ったボンベを撃っていく。大佐に続いて山田と谷村が銃で撃ち抜く。
液化ガスが大量に吹き出しH-IN03に吹きかける。直後、当たった箇所から凍っていく。
余程苦しいのか藻掻き苦しみ、離れようと触手で出来た足を動かした。

しかし床と凍り付いていて身動きが取れない。無理矢理にでも動かそうとしたその瞬間、足が砕け散った。
跪く形になり液体窒素入りの液化ガスを全身に浴びる。

4ヶ月前 No.116

MK マッチー @11777 ★i04XIsqV4q_iBP

H-IN03:「ギャァァアアーーーーー!!」

宮部:
「……ぅッ………?」

一瞬ひどい耳鳴りと頭痛がした。目を瞑っていた宮部は片目を開けH-IN03の方を見た。
直後自分の頬に触れられる感触を感じた。顔を戻すと震える手で栗山が宮部の頬を、やさしく撫で力なく悲しく微笑む。
その行為を受け、宮部は全てを悟った。H-IN03の方を振り向いた。

H-IN03は大量に吹き出す液化ガスの中で動かなかった。全て凍ったのだろう。その場にいる全員がそう思い安堵した。
直後、最後の力を振り絞り触手の鉤爪を山田に伸ばした。反応が遅れ立ち尽くす。
山田の目の前で鉤爪が伸び、止まった。ガスの噴射が終わり晴れると、H-IN03は凍っていた。


山田:
「……安らかに眠れ。」

目であろう赤く丸い点がある胴体に銃口を向け、引き金を引く。H-IN03は木っ端微塵に砕け散った。
宮部墓を伏せ、栗山は頭を撫でる。


次郎:
「そんな、馬鹿な。こんな事って………。」

三木大佐:
「終わりだ次郎、諦めろ。ここも焼却されるという通達が来た。武装解除をし、我々と一緒に来てもらおうか。」

次郎:
「お前等の捕虜になどなるものか、逃げる手だてはまだある。屋上にヘリを用意してる、研究データーを持ってここからおさらばだ!」

そう言って次郎は白衣を翻して、走って採血室から逃走。


三木大佐:
「逃がすか!」

谷村:
「ま、待てー!」

山田:
「雅さんはここにいて、栗山さんを看ていて!」

宮部の方を向き余裕の無い口調で伝え、大佐と谷村と一緒に次郎を追う為に部屋を後にする。
彼女は山田を一瞥した後、力無くうなだれた。

4ヶ月前 No.117

MK マッチー @11777 ★i04XIsqV4q_iBP

・偽装天文台研究所 通路

5:46

銃声が轟いた。
次郎の足下に銃痕が残る。立ち止まり振り向いたその顔は、憎々しげに睨んでいた。


三木大佐:
「一緒に来てもらおうか、今までの狼藉(ろうぜき)を償わせてやる。もっとも、自分の罪を償う気があればの話だが……。」

次郎:
「……無いと言ったらどうする。」

三木大佐:
「ここで殺すまで。」

次郎:
「正義の執行人気取りか? 貴様が? 嗤わせるな!」

三木大佐:
「貴様の笑い声等聞くに値しない。聞きたくもないし、耳が腐るだけだ。声を発する事も無く死んでゆけ……。」

谷村:
「待って!」

引き金を絞ろうとした瞬間、谷村に肩を掴まれる。
肩越しに谷村を見るが、谷村は息があがっていてやっと追い付いたという表情で、空気を吸いながら必死に喋る。


谷村:
「こ、殺しちゃダメ……です。彼のやった事は、公にして……裁判で裁かれるべき、です……。」

三木大佐:
「何を甘い事を……。」

山田:
「甘くないですよ、もう自由の無い牢獄にぶち込むんですから。……甘い訳が無い。」

苦しげに胸を抑え、片目を閉じ酸素を貪りながら合流する。
これ見よがしに大佐は大きくため息をつく。銃口を次郎に向けたまま捕らえる為、一歩前に足を出した。
その直後窓ガラスが割れ、外から何かが大佐達と次郎の間に割って入って来る。


三木大佐:
「こ、こいつは………!?」

血塗れの灰色の鹿、パラクレートスがそこにいた。ぎこちない動作で首を動かし、憎悪の赤色(せきしょく)の眼光を山田達に注ぐ。


次郎:
「何だこの汚い動物は……、ぐはぁぁあああーーー!!」

パラクレートスは傍にいた次郎が目障りだったのか、ツノで次郎を突き飛ばした。
どこか怪我をしたのか次郎は、血を周囲に散らし半回転しながら床に体を打ち付ける。
パラクレートスは再び山田達に視線を戻す。


パラクレートス:「ヴヴゥォォォオオーーー!!!」

鼓膜が破れん勢いの奇声を発し空間を揺らす。通路にある窓ガラスが全て割れる。
あまりの騒音に全員が耳を塞いだ。その隙を付いて山田に体当たりを食らわせ、床に倒れさせツノで突き刺そうと伸し掛る。


山田:
「うぐッ!」

肺が燃えるように痛む。先ほどの体当たりで折れた肋骨の一つが、肺に突き刺さった可能性がある。
しかしだからと言って抵抗をやめるつもりは無い。やめれば即、死につながるからだ。
必死の抵抗で山田は両手でツノを掴み、押し返す。しかしパラクレートスも本気なのか、押されても全身に力を入れ突き刺そうとする。


谷村:
「山田さん! 三木さん、早く撃ってください!」

パラクレートスに銃口を向けていながら、未だに撃たない大佐にしびれを切らして、焦りながらもそれでいて少し怒りがこもった口調で言う。


三木大佐:
「無理だ、この距離では山田君に当たってしまう……。」

駄目押しと言わんばかりにパラクレートスは前脚で、山田の胸を踏みつける。折れた肋骨が再び悲鳴を上げた。
息を詰まらせ顔をしかめる。ツノを押し返していた手に力が一瞬緩み、眼前にツノの先端が迫った。

4ヶ月前 No.118

MK マッチー @11777 ★i04XIsqV4q_iBP

直後、パラクレートスが真横へ吹っ飛んだ。何が起きたのか事態を把握しようとしたら、目の前に心配そうな顔の宮部がいた。渾身の力でタックルをしたようだ。


山田:
「み、雅さん……。どうして、無茶を。」

宮部:
「失いたくないんです! 目の前で大切な人を失うのは、もう嫌なんです!!」

涙ながらに悲痛な叫びを上げる宮部に、山田は愛おしいそうに頬を撫でる。直後後ろから物音が聞こえ、急いで立ち上がりながら振り返る。
宮部にタックルされ壁に激突していたであろうパラクレートスは、頭を振りながら体制を立て直す。
怒りの眼光を宮部に向けながらも、ツノは山田に狙いを定めている。再び突進しようとした直後、前脚の両足を大佐に撃たれ前のめりに倒れた。


三木大佐:
「受け取れ!」

パラクレートスの後脚を撃ち始めながら、大佐は片手に持ったガスバーナーを山田に投げる。
受け取った山田はガスバーナーを、無理矢理にでも立とうとするパラクレートスに向け、栓を開けた。
改造が施されていたのか、勢い良く炎が噴出し、パラクレートスを包む。

パラクレートス:「ヴゥォォオオオ………。」

ぎこちないながらも一歩ずつ一歩ずつ前進するパラクレートス。
全身を焦がす炎に焼かれながらものたうち回る事をせず、人間に対する恨み節を語るが如く、憎悪がこもった鳴き声を発する。
その立ち振る舞いは、狂気に満ちた山脈の支配者の名に相応しかった。パラクレートスは立ったまま息を引き取った。山田を睨みながら。

山田は尻餅をついた。因縁を断ち切ったのに冷や汗が止まらない。勝利の余韻に浸る気にはなれなかった。
それは何故か。やっとの思いで倒したから?ギリギリで勝ったから? きっとそのどちらでもないだろう。
山田はパラクレートスの目に憎悪以外の物を感じていた。台風や地震、人間がどうする事も出来ない自然の現象。自然の猛威をその目の中に感じていた。

偶然の産物で生まれたに過ぎないその鹿は、人間である山田に自分の存在を掛けて、警告をしていたのかもしれないと錯覚をした。
もしまた次に人間が自然に敬意を払わず、不遜な歩みをし続けたら、再び自然は人間に牙を剥き猛威を振るうだろうと。

4ヶ月前 No.119

MK マッチー @11777 ★i04XIsqV4q_iBP

女の子座りで事の顛末を見て呆けていた宮部は、無言で戦慄している山田に気づき、心配したのか肩に手をかける。


山田:
「……雅さん。助かりました、ありがとうございます。それで、栗山さんは………?」

宮部;
「女性兵さんが看てくれています。」

栗山:
「噂をされれば、なんとやら……ですか。」

女性兵に肩を貸してもらいながら栗山が合流する。


女性兵:「看病しながらですけど、無線を直しときました。ここの通信機器を拝借して、さらに強化しときました。」

宮部:
「ありがとうございます。お互い怪我をしてるのに、何から何までやってもらって……。」

女性兵:「いいえ、兵士としての任務ですので。」

山田:
「それより動いて大丈夫なんですか?」

栗山:
「今、悠長な事……言ってられません。………あのロクデナシを、捕まえないと。」

谷村:
「そう言えばあのおっさんは……?!」

三木大佐:
「そこに倒れて………どこへ行った。」

振り返ると倒れてた筈の次郎はいなかった。「あそこ!」と谷村が指を指す。数メートル先の通路をよろめきながら、次郎は進んでいた。
大佐は次郎が倒れていた場所に落ちている物を見つける。レリーフの様に装飾が施されているが、それとは名ばかりのUSBメモリーのようだった。
裏には「付き人 ヒバリ」と書かれている。七つ目のクックロビンのレリーフを懐に仕舞い、大佐は「追うぞ!」と言って走り出す。山田達も後に続いた。

4ヶ月前 No.120

MK マッチー @11777 ★i04XIsqV4q_iBP

5:50

左肩を庇い、右足を引きずりながら通路を進む次郎。


次郎:
「……ソフィア、この通路に属する研究室から、全ての実験体を解き放て。」

ソフィア:
「了解しました。」

次郎を追って先頭に大佐と谷村、宮部と女性兵の両名の肩を借りながらぎこちなく歩く栗山、彼女達を守るようにして前を歩く山田。
栗山を置いていく事は出来ず、走る事は止めたものの出来る限り急ぎながら通路を進む。すると後方から物音がして振り返る。
研究室から解き放たれたのか、数十体のマンティス、マーシャール・ベアー、オルトロス、フェンリル、ファシネイター達が出現する。

マンティス:「キシェェエエエーー!!」
マーシャール・ベアー:「グオオオオ!!」
オルトロス:「キャァアアアーー!!」
フェンリル:「ガァァアア!!」
クレイジーウルフ:「ウガウッ!ウガウッ!!」
ファシネイター:「ジュルルル〜!!」

三木大佐:
「あの数は無理だ、構わず進め!」

谷村:
「大変です、前が!!」

次郎が通路から消えた直後、通路と通路の境目にある鉄製の扉が、左右にスライドしながら閉まろうとしていた。
山田達は急いで走り、大佐と谷村は左側の扉を、山田は右側の扉に入り込み、閉まらないよう押し始める。
「手伝います!」と言って走って来た女性兵は、山田と一緒に左側の扉を押し始める。


三木大佐:
「二人とも急げ! そんなに保たん、閉まるぞ!」

走る事の出来ない栗山に肩を貸しながら進む宮部。このままでは閉じ込められてしまうと感じたのか、急いでいるもののさらに彼女達を急かす。
彼女達と扉との距離は十メートル、怪物達が追い付く距離は二十メートル。


谷村:
「この、剥き出しになっている電線を……引き抜ければ……。」

扉と壁の部分の間に赤やら白やらの配線が見える。その電線を抜ければソフィアからの命令を、シャットダウン出来ると考えたのだろう。


宮部:
「もう少し、あともう少し……。」

栗山:
「…………。」

汗まみれになりながら自分を助けようとする宮部を見る。そして前を向き山田達の方を見る。


山田:
「うぐ……、急いで………。」

女性兵:「もう、ダメェ……。」

谷村:
「ぅぅう、ぐぐおお……。」

三木大佐:
「むぅ………。」

徐々に閉まりつつある鉄製の扉。左右後退していき、ついに四人共背中合わせのような形になるまで追い込まれる。
それでも尚押し続ける山田達。そんな彼らを見た後、止めなく出血する自分の体に視線を戻す。
栗山は目を瞑った。

4ヶ月前 No.121

MK マッチー @11777 ★i04XIsqV4q_iBP

栗山:
「ごめんね、宮ちゃん。」

宮部:
「え? ……きゃッ!!」

残る最後の力を振り絞り、栗山は宮部を突き飛ばす。
突き飛ばされた宮部は山田と衝突し、彼は「ぎゃふッ!」と情けない声を上げながら一緒に倒れる。
受け身をしてなかった為もろに背中を打ち付け苦しそうに咳をした。


女性兵:「栗山さん、何を!」

体勢を立て直した宮部の目に映ったのは、敬礼をする栗山だった。


栗山:
「兵士として貴方方を守れたのは最上の喜びにして、誇りです! 軍人としての矜持を保てたのは、何よりの至福です!」

凛々しい軍人口調で引き締まっていた顔が、ふっ、といたずらっ子のような笑みに変わる。


「友人としてなら、もう少し一緒にいたかった。こそばゆい感情をもう少し味わってみたかったけど、やっぱり私にはその運がなかったみたい。」

目を閉じて深呼吸をする。


「あなた達に幸あらん事を……。そして願わくば、ジェシーさんを支えてあげてください。私の友達は支えてあげなきゃいけない娘が多くて。
いつでもあなたの心の中にいるよって、言っておいて。」

三木大佐:
「伝えておこう、気高かったと……。」

「行くぞ」と聞こえるか聞こえない音量で言ったかと思えば、谷村と女性兵を扉から引き離す。


宮部:
「ダメ、待って! いやぁ!!」

扉が閉まる瞬間宮部が見たのは、真後ろに迫り来る怪物達とは対照的に、その場に似つかわしくない、栗山の屈託のない笑顔だった。

4ヶ月前 No.122

MK マッチー @11777 ★i04XIsqV4q_iBP

扉が閉まった直後、剥き出しの電線を数本引き千切る。バチバチとショートしながら、電気が少々放電する。


三木大佐:
「これでこの扉は開かないんだな?」

谷村:
「そのはずです。電気系統を掌握しているのなら、遮断すれば命令も何も出来ませんからね。
これで向こうから襲ってくる事は無いです。けど、僕達も向こうへ行けなくなりました……。」

徐々に口調に落ち込みの色が濃くなっていく。
それを見た大佐は舌打ちをして、泣きながら抱き合っている宮部と女性兵の方を向いた。


三木大佐:
「何をしている? 打ち拉がれるている場合か? さっさと立て!」

女性兵:「……あなたに、あなたに心は無いんですか!?」

苦虫を潰した表情で立ち上がり、声を荒げながら大佐を睨め上げる。


山田:
「今回は大佐に同意です。」

大佐と女性兵の間に割って入る。


宮部:
「太郎、さん……?」

訳が分からないと言った表情で顔を上げ、涙目の上目遣いで見上げる。


山田:
「立ってください雅さん。栗山さんの遺言を、決意を無駄にする気ですか? もたもたしていたら俺達は、確実に死にます。
そうなったら栗山さんは無駄死にです。彼女は望まないでしょうそんな事。ジェシーさんに伝言を頼まれたでしょう、だったら行きましょう。」

手を差し出す。


「立って伝えに行きましょうよ、栗山さんの志を。」

数秒構っていた宮部は、片手で涙を拭き頷く。山田の手を取りながら立ち上がる。


宮部:
「そうですよね、うじうじしてたら叱咤激励してくるのが栗山さんでした。立ち止まってる姿なんて、見たくないでしょう。」

「行きましょう」と女性兵の方を向き、頷き合う。

4ヶ月前 No.123

MK マッチー @11777 ★i04XIsqV4q_iBP

三木大佐:
「それで、奴はどっちへ行った。」

T字路のように通路が分岐していて、右側の通路はさらに通路が続き、左側の通路には階段が見える。


谷村:
「確か右側へ曲がったと思います。地図によると彼の研究室も、その先にあるみたいです。」

三木大佐:
「そして左側は屋上へと続く階段があるわけか……。」

谷村の地図を横から覗いて呟く。


山田:
「時間がありません、二手に分かれて脱出路を確保しましょう。ヘリの操縦は出来ますか?」

女性兵の腕の怪我に気を使いながら聞く。


女性兵:「ええ、なんとかできます。」

山田:
「雅さん、彼女のフォローをお願います。谷村さんも付き添いをお願います。屋上にて危害内とも限らないので。」

谷村:
「心もとないでしょうけど、精一杯守りますよ。」

胸に手を当て紳士的にお辞儀をする谷村。微妙な愛想笑いをする女性二人。
大佐と山田が歩き出す。宮部が呼び止める。


宮部:
「ちょっと気になる事があるんです。私が拘束されてた時なんですけど、彼らはきっと来るっていた後父は、
『来ても無意味だ、バルドルの扉が俺を守る。』って言ったんです。どういう意味かは分かりません。」

三木大佐:
「何……?」

山田:
「分かりました、注意をして追います。」

宮部:
「それと……。」

山田:
「?」

顔を伏せた宮部に、きょとんとする山田。
宮部は胸に手を当てながら心配そうな表情で顔を上げる。


宮部:
「戻って来てくださいね、屋上で待ってますから。」

「きっと来てください、きっと」と不安そうな口調で言う宮部を見て、山田は心配を振り払おうとするかのように、晴れやかな笑顔で頷いた。


山田:
「ええ! 屋上で合流しましょう。きっと。」

「気をつけて」と言い残し、山田達は二手に分かれ、階段を上る宮部達を山田と大佐が見送った。

4ヶ月前 No.124

MK マッチー @11777 ★i04XIsqV4q_iBP

無線:
『ザザ……CQCQ、こちらハーレム部隊。誰かいますか? 応答願います。CQCQ……。』

保っていた無線から突如雑音がして、応答を乞う声が聞こえる。女性兵が無線を直したと言っていたので、繋がるようになったのだろう。


山田:
「その声は落合さんですね? 山田です、そちらの状況はどうなってますか?」

無線(落合):
『こっちの状況ですか、大佐が言っていた通り動物達の第三波が来ました。まぁ数は少ないんで、なんとか迎撃は出来てますよ。ザザザ……
静かそうですけど、そっちはどこですか?』

山田:
「天文台にいます。」

無線(落合):
『……楽しそうで何よりですね、ってか何遊んでるんですか。』

三木大佐:
「次郎が所長として所持していた研究所が、天文台にカモフラージュされていたのだよ。」

落合のバカなツッコミに嫌気がさし、イラつきながら説明する。


無線(落合):
『あ、じゃあ宮部さんを助け出せたんですね!』

山田:
「……ええ、まぁ。多少の犠牲を出しながら、なんとか……。」

無線(落合):
『多少の犠牲?』

煮え切らない口調で話す山田を、不思議がったのか復唱する。


山田:
「ですが、後はバカを追い詰めてぶん殴って、首根っこをふん捕まえるだけです。数分もすればこちらのヘリで、そちらへ戻れるでしょう。」

無線(落合):
『そうですか。じゃあこっちの掃除を終えときます。戻る頃にはキレイに、あ……ザザザザー……。』

山田:
「もしもし? 落合さん、もしもし。」

突然通信が途絶えた事に首を傾げる。
その直後外が明るく光ったかと思えば、爆発音が轟いた。近くの森林が燃えていて、何事かと見ているとさらに爆発音がして、森林が燃え窓が揺れる。
窓にへばりついて空を見上げると、数十機の戦闘機の様な影が見えたと思ったら、次々と焼夷弾が降って来る。雨あられと降り落ち、緑を赤色に変える。


三木大佐:
「焼却作戦がもう始まったのか。五分前行動とは日本人らしいが、どうやら向こうはやられたらしいな。」

山田:
「落合さん達が?! そんな………ッ!」

三木大佐:
「他人の心配をしている場合ではないぞ、我々に出来る事は今やるべき事だけだ。」

建物全体が揺れ始め、危機感を募らせる。「急ぐぞ」と大佐はそう言って水を向ける。
山田は大佐と頷き、走り出し通路を進む。

4ヶ月前 No.125

MK マッチー @11777 ★i04XIsqV4q_iBP

・次郎の研究室前 バルドルの扉

五メートルもの高さのある剛鉄の扉が、二人の前に立ち塞がった。
扉には写本のような彫刻が施されており、美術館に展示されているなら芸術と言えるだろう。
ロダンが造った地獄の門の、巨大なブロンズ像を彷彿させる。だがこの扉の中央には何かを嵌め込む為の窪みがある。山田妙な既視感を覚えた。


山田:
「窪みが一つだけ……。この七つのレリーフのどれか一つを選んで、嵌め込むみたいですね。でもどれでしょう?」

三木大佐:
「宮部君はバルドルの扉だと言ったんだったな………?」

山田:
「ええ、それが?」

三木大佐:
「バルドルとは、北欧神話に出て来る神々の一人の事だ。不死身でどんな武器でも、傷つけられない力を持っていたが、
唯一の弱点だったヤドリギで貫かれて死んだという。そしてこの神話に由来しているとするのが、このコックロビンだと言われている。」

山田:
「はい先生、ヤドリギって何ですか? 理科は苦手でした。」

飄々とした態度で手を挙げて、のほほんと質問をする。大佐は頭を抱えながら、わざとらしくため息をつく。


三木大佐:
「ヤドリギは漢字で書くと、寄生木とも。その生体は漢字の通りで、半寄生の灌木で、他の樹木の枝の上で自生する 植物の事だ。
話を戻すぞ。バルドルは一度死んだが、再び生き返ったとされている。」

山田:
「へぇ〜やっぱり不死身だったんですね。殺され損ですね。あれ? でもこの話どっかで………?」

三木大佐:
「そう、イエス・キリストの復活だ。それというのも、この神話はキリスト教の影響を、強く受けたものだと考えられているからだ。」

山田:
「どいつもこいつも宗教を絡めたがる、物好きな人達だって言うのは分かりましたけど、この扉とそのレリーフどう繋がるんです?」

お手上げなのか頭をかき、首を傾げながら扉を指差す。


三木大佐:
「キリスト教ではキリストは大祭司。つまりこの七つのレリーフの中で唯一、祭司の文字が施された『祭司 カラス』。このレリーフを嵌め込むんだ。」

山田:
「あれ? コウモリって施されてますけど。」

三木大佐:
「混乱させる為の偽装だろうな。狡猾な奴のやりそうな手だ。時間がない嵌め込むぞ。」

窪みに祭司カラスのレリーフを嵌める。
するとガチンという解錠音が鳴り響き、重々しい音を響かせながら、剛鉄の扉が開かれていく。
つまり大佐の推理は当たっていたのだ。二人は顔を見合わせ頷き合い、扉の奥へと入っていった。

4ヶ月前 No.126

MK マッチー @11777 ★i04XIsqV4q_iBP

・偽装天文台研究所 最深部 次郎の研究室

5:55

ソフィア:
「申し訳ありませんマスター、侵入を許してしまいました。」

次郎:
「構わん、どっちにしろ手遅れだ。」

波打つ線を映す大型モニター、学校の理科室にあるような黒い天板を使った実験台、その上に散乱している資料や試験管やビーカーの数々。
実験室の名に応しい装いだ。その実験台の前に佇む次郎、その隣りにはガスマスクの人物が立っていた。


三木大佐:
「追い詰めたぞ、もう逃げ場はない観念するんだな。」

次郎:
「遅かったな、今しがた完成したところだ。このB-ウィルスがな!」

血で汚れた白衣を翻しながら振り返り、紫檀色(したんいろ)の液体を満たした容器をチラつかせる。
戸口に並んで立っていた二人に、見せつけるかのように、勝ち誇った笑みを浮かべた。


三木大佐:
「すぐに廃品だ。」

即座に銃に持ち替え容器を狙い、二発撃った。が、ガスマスクの人物が片手に持ったサバイバルナイフで、銃弾を捌いた。
山田はその神業に驚愕し、大佐はこれ以上撃っても無駄と判断し、銃を下げる。


次郎:
「ヒャッハッハッハ〜、お前等は俺に触れる事すら出来ないんだよぉ〜。指一本触れられませぇ〜ん。ここまで来たのは無駄足でしたぁ〜、残念〜。
なぁ教えてくれよ、努力が徒労に終わる気持ちをよぉ〜? このウィルスと研究データーで大成した後で教えてくれよ。お前等の墓参りしてやるからさぁ〜。」

山田:
「まだあんたはそんなことを言っているのかッ!!」

次郎:
「ひぃッ……!」

次郎の挑発するかの様な言動が我慢ならなかったのか、室内が反響する程の怒声を次郎に浴びせ、次郎は怯んでガスマスクの人物の後ろに隠れる。

4ヶ月前 No.127

MK マッチー @11777 ★i04XIsqV4q_iBP

山田:
「あんたそれでも親なのか?! 娘に顧みず、妻を手にかけ、あまつさえ実験動物のようにしやがった!
女性を愛した男のする事じゃねぇ! 子を産んだ父親のする事じゃねぇ! 本能的に子に対する慈しみがあるだけ、野生動物の方がマシってもんだ!
いつも自分本位な自己中野郎、あんたは外道だ! そして世間に評価をしてもらわなきゃ気が済まない、哀れで愚かな存在だ!!」

次郎:
「黙れ!! 貴様に何が分かる小僧! 物心がついた時から兄という存在がいて、その存在と比べられ生きて来た! ずっと影の存在だった!
自分が自分である為に、自己として成立する為の条件として何が必要だと思う? 周りからの客観的視点による評価だ!
人は一人では生きていけない。人の人生は周りの誰かがいる前提でこそ成立する。己の存在を己として評価されるから自己として成立するんだ。
人は人との関わりで自己を作る。友や恋人や仲間といなければ己を保てないのと同じように。」

山田に指を指し、怒りに震えながら積年の念いを吐露する。


「俺も、俺も黒田総一郎の弟としてじゃなく、個人として! 黒田次郎として評価してもらいたかった!!
黒田総一郎の付属品としてじゃなく、おまけとしてじゃなく! 一人の人間として評価してほしかった!!
比べられるとしても、自分自身を比べてそこで初めて、自分を、自己を見つけたかった……!!」

何度も手で胸を叩き、自分の存在をアピールしながら、悲嘆の表情で語る。


山田:
「……それこそ、家族がいただろ。心の底から支えてくれる、家族がいた筈だろうがッ!
自分を保ててくれた筈の家族を、あんたは手にかけたんだ!!」

次郎:
「客観的な視点が必要だと言った筈だ! 家族ではもう客観的な評価にはならん、他人でなければその評価は意味が無い! 価値すら見出せない!」

両手の握り拳を握り、腕を震わせる山田。


山田:
「愚かすぎて言葉も出ねぇよ、やっぱ哀れだよ。この短絡的な思考を持った単細胞生物が………。」

最後の一言で次郎はキレた。黒田の言葉である事は知っていたのだろう。
殺意と憎悪をみなぎらせた目で、山田を睨み、ガスマスクの人物からサバイバルナイフを奪い取り、山田目掛けて投げた。
投げられたナイフは一直線上に山田に向かっていたが、大佐が撃った銃弾により弾かれる。


三木大佐:
「自白は済んだか? 申し訳ないが、これ以上貴様の下らんトラウマ話の告白は、時間もないので聞いてられん。投降してもらおうか。」

建物全体が揺れ、天井からホコリが舞っているのを、気にしながら陰鬱な口調で言う。
次郎は片手で頭を掻き毟った。髪を乱し歯ぎしりをしながら喋り続ける。


次郎:
「投降も何も、お前等はここで死ぬんだよ。お前等を殺した後、B-ウィルスと研究データーを持って屋上へ行く、残るのは死に損ないの女兵士と
だたの一般人。俺でも殺せる。そうしたら娘とヘリに乗って、採血出来る場所まで行けば後はどうとでもなる……。」

山田:
「あんたまだウィルスを……。」

次郎:
「話は終わりだ。………エージェント・E、殺せ!」

気怠そうに片手を降り、ガスマスクの人物に二人の殺害を命令する。
山田と大佐は銃を構え、身構える。

4ヶ月前 No.128

MK マッチー @11777 ★i04XIsqV4q_iBP

エージェント・E:
「……その命令には従わない。」

次郎:
「何ぃ……?」

ぎこちない動きで首をガスマスクの人物に向け、鬼の形相で睨み付ける。


エージェント:E:
「特定の人物、目標指定人の暗殺および応戦は、契約の範囲外だ。任務を命令したければ再契約をしろ。」

次郎:
「分かった。再契約をするから、さっさとあの二人を殺せ!」

エージェント・E:
「駄目だ。契約手順に従ってもらおう。指定した振込先に、金を振り込め。それから契約だ。」

次郎:
「この状況が見えないのか!? そんな悠長な事してる場合じゃないだろ! 臨機応変に対応しろよ!!」

焦った口調で唾を飛ばしながら怒鳴り、その場で地団駄を踏む。


エージェント・E:
「では当該雇用契約はこれにて終了、我々の関係もここまでだ。
はした金ではあったが、暇つぶしの金儲けにしては充実していて、楽しめたぞ。……では、さらば。」

次郎:
「待て、まだ話は………ぐはぁぁああ!!」

突如、閃光が走った。あまりの眩しさに山田と、大佐が一瞬目を瞑った。
閃光弾を使用したのだろう。元軍施設の跡地での事もあり、二人は即座に身構え警戒した。
しかし何も起こらない。それどころか次郎を残し、ガスマスクの人物はいなくなっていた。


山田:
「消えた………?」

辺りを探してもどこにもいない。ガスマスの人物はこつ然と姿を消した。
光に弱いのか、次郎は両手で顔を覆い「眩しい、眩しい」と呻いている。
そして駄々っ子のようにまた地団駄を踏んだ。


次郎:
「クソッ! クソォッ!! どいつもこいつも馬鹿にしやがって……。下等動物にも舐められる始末。俺を馬鹿にしやがって、……俺を下に見やがって……。
………どいつも、こいつもぉ〜! 許さない………馬鹿にはさせない! 殺してやる!! ソフィア! お前に永遠の暇(いとま)を与える!」

大型モニターに映し出されている線が波打った。

4ヶ月前 No.129

MK マッチー @11777 ★i04XIsqV4q_iBP

ソフィア:
「マスターと過ごした時間は有意義で、とても幸福でした。私を造ってくださり感謝します。さようなら。」

そういうやいなや、モニター画面がコンピューターウイルスに感染したパソコンのように、複数のサイトが開いたり閉じたりを、高速で展開した。
と思えばモニターがブラックアウトし、室内の、いや建物中の電気が消える。停電の影響からなのか、非常灯として赤色灯が点滅する。


三木大佐:
「貴様、何をした!?」

次郎:
「ッハハハ……ソフィアをネットの海に逃がしたのさ、B-ウィルスのデーターと一緒になぁ。」

山田:
「何だって? ウィルスのデーターが流失……。」

三木大佐:
「次郎、貴様ぁ……。」

次郎:
「ネットの世界でソフィは成長続けるだろう、そしていつか俺の意志を受け継いだ人間が、彼女を見つける。そして俺の研究は後世に語られる事になるだろう。
優れた人間は死んでから名を馳せる、俺は巨匠になるのさ! 俺の名は世界の高みへと登るんだ!」

両手を広げ恍惚の表情で天を仰ぐ。まるで神を仰ぎ見るかのように。
しかし信仰ではなく、ただ自分自身に酔っているだけの、ナルシスト的行為に過ぎない。


「だがただでは死なん、お前等を殺した後で死んでも遅くないだろう。この研究の成果を、俺の力を……お前等の命をもって味わうがいい!!」

B-ウィルスを満たした容器を両手で持ち、自分の胴体に打ち込む。

4ヶ月前 No.130

MK マッチー @11777 ★i04XIsqV4q_iBP

山田:
「ウィルスを、自分に……。」

三木大佐:
「ヤケが回ったか。」

次郎:
「う、ぐぅッ! がぁ………ぐぎぎぎぎぃ〜、………ぐッ、あああああーーーーーー!!!」

ウィルスを投与した直後、打ち込んだ箇所から肉が膨れ上がる。次に右腕、左足、首へと続き、全身が醜く肥大化していく。
膨張が止まり二人の目の前には、巨大な肉塊が佇んでいた。


三木大佐:
「最期まで哀れな男だ。己の繁栄という高みを目指した結果、文字通り地に堕ちゆく自分に気付かなったか……。無能な出来損ないには相応しい顛末だ。」

見下した目で見ながら大差がため息をついた直後、肉塊からさらに肉の塊が膨張し、二人目掛けて伸びて来た。
すんでの所で左右に分かれて回避する。二人がいた場所の床に亀裂が入る。


山田:
「な、なな何すか今の? まさか襲って来た?!」

三木大佐:
「侮っていた、あの肉団子にはまだ自我があるようだ……。」

元次郎だった肉塊からさらに、肉の塊が膨張し続ける。大型モニターを破壊し、実験台を倒し、全方位の室内に肉の塊を伸ばす。
さらに大きくなる肉塊を見上げ、驚愕に顔を引きつらせる。


アナウンス:「警告、警告、汚染レベルが限界点に達しました。これより数分後に機密保持のため焼却処分します。
       所員は速やかに避難してください。繰り返します___」

山田:
「ま、まずいんじゃないんですか? この状況………。」

三木大佐:
「走れ!! 屋上まで! ここから逃げるぞ!」

急いで元来た通路へと引き返す。
次郎の研究室から溢れた肉塊が、通路へと溢れる音を背にしながら、肉塊との不気味な鬼ごっこが始まる。

                             ___8完___

4ヶ月前 No.131

MK マッチー @11777 ★i04XIsqV4q_iBP

___西方宗教研究 七つの大罪2___


身ごもっていた一人の女が、子を産む傷みと苦しみのため叫んでいた。

見よ、火のように赤い大きな竜である。
七つの頭と十本のツノがあって、その頭には七つの冠をかぶっていた。

そして竜は子を産もうとしている女の前に立ちはだかり、産んだら、その子を食べてしまおうとしていた。

女は荒れ野へ逃げ込んだ。

天で戦いが起こった。

竜とその使いたちは勝てなかった。

この巨大な竜、年を経た蛇、悪魔とか呼ばれるもの、全人類を惑わす者は、地上に投げ落とされた。使いたち諸共落とされた。

彼らは、死に至るまで命を惜しまなかった。
                         ___ヨハネの黙示録 12___

4ヶ月前 No.132

MK マッチー @11777 ★i04XIsqV4q_iBP

第9話

5:57

・偽装天文台研究所屋上 (ヘリポート)

通路を走り長い階段を駆け上がり、屋上へ繋がる階段室の扉を勢いよく開け放つ。
直後、額から汗が吹き出る程の熱波に襲われた。
辺りを見渡すと、山脈地帯一帯は炎の海と化していた。火の粉が舞い、黒煙が空を覆う。


谷村:
「お二人とも、こっちですこっち。」

黒塗りのヘリがローターを回し、離陸準備を始めている。
そのヘリの前で、宮部と谷村が手を振る。山田の無事を確認して、宮部は安堵した。
駆け寄って来た二人に合流する。


三木大佐:
「ヘリは? すぐに飛び立てるか?」

谷村:
「ええ、いつでも飛べますけど………そんなに慌ててどうかしたんですか?」

三木大佐:
「説明は後だ、すぐに乗れ!」

ヘリの方に指を指し、焦った口調で指図する。


宮部:
「あの、太郎さん………父は?」

山田:
「すみません、手遅れでした………。」

自分の背中を押してくる山田に、肩越しから話しかける。
彼からの返答に一瞬無言になり、「そう、ですか……」と少し寂しげに返答した。

その直後、建物全体が激しく揺れ、ヘリポートに亀裂が入る。
ヘリの下からヘリを押しのけ、瓦礫をバラまきながら何かが出現する。
乗っていた女性兵ごとヘリは、燃え盛る森林に墜落。炎の一部と同化した。


宮部:
「そんな、女性兵さんが……。」

谷村:
「な、なん……何ですかあれぇ。」

現れたのは上半身だけで三十メートルを超す、不出来な巨大クジラのような生物だった。
体は川底の泥のような茶みがかった黒色で、点々と目の様なものが点在する。
巨大な口から鋭い歯が無数に生え、犬や熊といった動物のような頭部が、コブのように周りに付いている。

狂った山脈の主、古(いにしえ)の怪物“ショゴス”がそこに佇んでいた。
餌を待つ犬が、口を開け、今から食事にありつこうとするように。


ショゴス:「ヤ、ヤー、ヤーーーー!」

4ヶ月前 No.133

MK マッチー @11777 ★i04XIsqV4q_iBP

コルトに持ち替えた大佐は、即座に連射した。ショゴスの体中にある複数の目を撃って潰す。
目を撃たれやはり痛覚があるのか、巨体を震わせながら奇声を発した。そして所々から肉の塊を伸ばして、山田達を襲う。
山田、宮部、大佐は華麗な身のこなしで避けたが、谷村だけが逃げ遅れた。


谷村:
「ぅう〜、もう勘弁してよぉ………。」

肉の塊は階段室の壁に突き刺さる。またしても谷村は不思議な格好で、泣きながら身動きが取れなくなっていた。
山田はサブマシンガンに持ち替え、巨体に乱射。しかし目以外の部分に当たって血らしき体液が噴き出すが、何ともないのか、ショゴスは平然としている。


宮部:
「太郎さん、銃をください! 私も援護します!」

山田:
「……すみません、この距離じゃ届きません!」

嘘だった。投げれば届く程の距離ではあるものの、山田は宮部に気を使い武器を渡す事を拒否。
その時だった、ショゴスが伸し掛ってくるように倒れて来る。悲鳴を上げる谷村を強引に引っ張り、救出する大佐。間一髪のところで巻き込まれるところだ。
そのまま倒れたショゴスは階段室に突撃、階段室は木っ端微塵に破壊される。


三木大佐:
「ぐッ……!!」

破壊された階段室の瓦礫が、大佐の頭部に直撃する。頭から出血し、重傷を負った大佐はその場で片膝を付く。


谷村:
「ちょッ、三木さん大丈夫ですか?!」

宮部:
「谷村さん、よけて!!」

起き上がりがけにショゴスが、肉の塊をムチのように撓らせて、谷村目掛けてふるったのを見た宮部は、背中を押して突き飛ばす。
しかし代わりに宮部が、その肉のムチに当たり突き飛ばされ、悲鳴を上げながら屋上の外へ落ちていった。

4ヶ月前 No.134

MK マッチー @11777 ★i04XIsqV4q_iBP


山田:
「……み、雅さん? 雅さんッ………!!」

落ちるところを目撃した山田は一瞬凍り付き、宮部が落ちた場所まで駆け寄ろうとした。


三木大佐:
「待てッ!! 今貴様がするべき事は何だ?! 優先順位を違(たが)うな!」

はやる気持ちを抑えられ、大佐を睨み付ける。大佐は臆する事無く山田の目を見据えて言った。


「敵討ちと準じようではないか。」

大佐はゆっくりと立ち上がり、山田は憎しみのこもった目付きでショゴスを睨む。


谷村:
「ぼ、僕のせいだ………ごめんなさい、僕がぼ〜としてなければ……。」

三木大佐:
「責められたければいくらでも責めてやる、だがそれは後だ。あの怪物を殺した後、まだ生きていたら説教してやろう。」

マグナム銃を押し付けながら谷村を立たせる。鼓舞されたのか谷村は、涙目で大佐を見ながら大きく頭を縦に振る。
山田はサブマシンガン、大佐はコルト、谷村はマグナム。三人は銃口を向け、ショゴスに一斉射撃した。


ショゴス:「ヤァァアアーーーハァアアッーーーー!!」

奇声を上げ口から肉塊を吐き出す。山田達目掛けてその肉塊は降り注ぐ。山田達も一斉に散開する。
今度ばかりは谷村は、避け方のコツが掴めて来たのか、ウマく躱した。好調な状態のままショゴスの目を撃抜いていく。

降って来る肉塊をサブマシンガンで、撃ちながら対応していた山田は、上空ばかりに気を取られ、地面に落ちていた肉塊に気がつかず、足下を掬われ前のめりに倒れた。
案の定折れた肋骨が悲鳴を上げ、再び燃える様な激痛が襲った。目の前が暗くなる、意識が遠のく、視界の光が弱くなっていく。力なく目を閉じる。

気絶しそうになったとき、宮部がまぶたの裏に見えた。

遅い来る絶望と闇を必死に戦った。光が戻り目を開ける。腕に力を込め、銃を杖代わりにしてフラフラと立ち上がる。
肩で荒く息をしながら、ショゴスを睨み付ける。ここで倒れるわけにはいかない。宮部の無念を晴らさなければならない。
彼女だけじゃなく、散っていった人達のためにも、犠牲になった罪の無い人や、動物達のためにも。今、ここで、死ぬわけにはいかない。


山田:
「うおおおおおああああーーーーー!!!」

ありったけの指の力で、引き金を絞り続けた。

4ヶ月前 No.135

MK マッチー @11777 ★i04XIsqV4q_iBP

大佐はコルトを二丁撃ちし、ショゴスの複数ある目を撃ち抜いていく。
激痛なのかショゴスは悲痛な雄叫びを上げ、肉の塊を口から出し、ムチのようにしならせ大佐に叩き付けた。
しかし大佐は軽やかなバックステップと、身のこなしで避けた。肉の塊はヘリポートの地面を抉り、さらに破壊する。


三木大佐:
「一か八か、丁か半か……。」

腰に付けていた最後の手榴弾を抜き、空中に投げた。銃弾を無駄にする事無く、そのまま撃ち抜き、ショゴスを巻き込む形で爆発させる。
炎に包まれ大きく仰け反ったが、巨体を左右に振り鎮火させた。大佐は銃槍が空になったコルトを捨てる。


山田:
「大佐! 次はどうするんですか、武器が無くなって来てます!」

弾切れになったサブマシンガンを投げ捨て、合流して来る。


三木大佐:
「分からん、今のが最後の手段だった。万策尽きた……。」

ライフル銃を取り出し、銃弾を補填しながらそう言う。


山田:
「策は尽きたけど覚悟は、尽きてませんよね?」

ショットガンを取り出し、ポンプアクションをする。


三木大佐:
「当たり前だ、諦めると思ったか? 最後の一発が尽きるまで、諦めんよ。」

谷村:
「僕の銃は残り一発ですけどね……。」

三人とも顔を見合わせる。武器は底を尽きかけ、背水の陣。持ち合わせるは折れぬ心のみ。もの言わずとも目で語り合い、察した。
最後の弾が尽きるその時まで、攻撃の手を緩める気などまるでないようだ。

ショゴスは大きく口を開き、舌の代わりに肉の塊を五本、手のように出現させる。
山田達はそれぞれの武器を持ち上げ、銃口を向ける。

ショゴスはゆっくりと頭(こうべ)を垂れ、山田達を飲み込もうと、肉の塊が近づいた。

4ヶ月前 No.136

MK マッチー @11777 ★i04XIsqV4q_iBP

その直後、強烈な光に照らされ、轟音が轟いた。
屋上の淵から迷彩柄のヘリが現れる。搭載されているチェーンガンで、手の様な形状をした肉の塊を蜂の巣にした。
ボトボトと肉の塊を落とし、ショゴスは悲鳴とも奇声とも言えない声で、藻掻き苦しみ仰け反る。


?:
「皆さ〜ん、ご無事ですかーーー?」

ヘリのキャビンから身を乗り出し、見知った顔の男が手を振る。山田はその男を見て、驚愕しその名を口にする。


山田:
「落合さん!」

落合:
「どうも〜、皆のアイドル落合で〜す。」

三木大佐:
「あの死に損ないは、何を言ってるんだ………。」

「僕達も死に損ないみたいなものですけどね」という言葉を飲み込む谷村。
おちゃらける落合の横には、宮部の姿もあった。間一髪助かったようだ。
宮部の生存を確認した山田は、ホッと胸を撫で下ろす。


宮部:
「太郎さ〜ん、ここから援護しますねーー!」

落合:
「あの気持ち悪い目を、全て撃っちゃっていいんですね?」

三木大佐:
「そうしてくれ! 目以外の体は堅くて、ダメージを与えられん!」

再びチェーンガンがショゴスに狙いを定める。山田は顎に手を置き、考えを巡らしブツブツと独り言を言い始める。


山田:
「目を全て撃つ………体は堅い、ダメージ無し。………目つぶしをした後………。」

はっと何かに気付いた彼は、顔を上げ落合に叫ぶ。


「落合さん、撃っちゃ駄目です!! 目を全て潰したら、もう攻撃出来るところが無くなります! そうなれば奴は不死身なる!」

落合:
「えぇッ!? じゃあどうするんですか!」

落合の問いに言葉を詰まらせる山田。
彼の隣りにいた大佐が、口を挟む。


三木大佐:
「奴は光に弱かった、弱点は……光か。」

山田:
「___!__。閃光だーーーん!!」

山田は渾身の力で、ショゴスを倒しうる可能性のある、唯一の武器を叫んだ。

4ヶ月前 No.137

MK マッチー @11777 ★i04XIsqV4q_iBP

落合:
「せ、閃光弾? いきなり何ですか……?」

宮部:
「いいから、閃光弾!」

三木大佐:
「閃光弾を撃てーーー!!」

落合:
「分かりました、分かりました! 撃てばいいでしょ、撃てば。」

しぶしぶながら閃光弾を上空にぶっ放す。周囲が朝と見間違う程明るくなる。
するとショゴスは、叫び声を上げながら苦しんだ。体中が煮えたぎる溶岩のように、ボコボコと蠢く。
再びチェーンガンが火を吹き、蜂の巣にしようとするが、目以外はやはり堅く銃弾が弾かれる。

しかし何発か口の中に命中。血の様な液体を撒き散らしながら、苦しそうにのたうち回る。ダメージを負っている証拠だ。
それにめざとく察知した大佐は、ライフルで狙いを定め口内を撃っていく。
ショゴスは大佐からの銃撃から逃れようと、大佐とは反対方向へ首を伸ばす。

しかし先回りしていた山田が待っていた。
大きな的に引き金を引く。広範囲にバラまかれた銃弾は、口の肉を確実に抉り、血の様な液体を大量に吹き出させる。

4ヶ月前 No.138

MK マッチー @11777 ★i04XIsqV4q_iBP

液体を吐き出しながらショゴスは、空を仰ぎ見た。そして気付く、閃光弾の光が徐々に弱くなっていく事に。
それに気付いた山田が無線に向け叫んだ。


山田:
「もう一度、閃光弾!!」

再び暗闇が戻り、ショゴスが体勢を整え、山田の方に口を大きく開ける。


宮部:
「早く閃光弾!」

落合:
「僕の名前は閃光弾じゃありません! そんな先生トイレみたいに言わないで!」

闇夜に再び強烈な光がまたたく。


ショゴス:「ヤァァアアーー!!」

眩しそうに体をくねらし、体中から泡立ち始める。ショゴスの体は小刻みに痙攣している。
チェーンガンで再び体を撃っていくが、効いているのか効いていないのか、それほどダメージを負っているようには見えない。
しびれを切らした大佐が、持っていた無線で呼びかける。


三木大佐:
「口だ、口を撃て! 奴の弱点はそこだ!」

無線を聞いたヘリは軌道を変え、口の中に弾丸の豪雨をお見舞いする。
大量に吐血し、周囲に撒き散らす。
その血液にはどんな毒か、成分があるか分からないため、ヘリは一旦離れ距離を置く。

4ヶ月前 No.139

MK マッチー @11777 ★i04XIsqV4q_iBP

ヘリポートにいた山田達は、ショゴスの血を浴びないよう避けた。
口の周辺の肉塊をボトボトと落としながら、恨みのこもった唸り声を発した。
血塗れの口を閉じ、山田達を潰そうと伸し掛る。

危うく押し潰されそうになったが、間一髪全員が避けた。
山田が倒れて来たショゴスの体に付いている目に、銃口を向けショットガンで蜂の巣にしていく。あまりの傷みに少し口を開いた。
その隙を逃さなかった谷村が、「最後の一発!」と叫びながら、マグナムをぶっ放す。

大きく仰け反り体をくねらせ、不気味な喘ぎ声を発し、ガクンと頭(こうべ)を垂れ力尽きたように動かなくなる。


山田:
「はぁはぁ、何だ、やったのか?」

汗まみれの額を拳で拭き、肩で荒く息をしながら呟く。


谷村:
「やった………やっと倒したーーッ!!」

喜びのあまりガッツポーズをする。


三木大佐:
「ここから脱出する、ヘリをまわせ……。」

大佐は感情を表す事無く淡々と無線に命令する。


落合:
『はい、ヘリを下ろします。ですので少し離れていてください。』

無線から嬉しそうに弾む口調が聞こえ、ヘリ内でもこの状況を喜んでいるようだ。無線が切れた数秒後、ヘリがホバリングしながら下降して来る。

                            ___9完___

4ヶ月前 No.140

MK マッチー @11777 ★i04XIsqV4q_iBP

___西方宗教研究 代弁の書___

兄妹は私を失われた者とし 同じ母の子らは私を異邦人とします。

嘲る者の嘲りが 私の上に降り掛かります。

嘲りに心を打ち砕かれ 私は無力になりました。

望んでいた同情は得られず 慰めてくれる人も見出せません。

彼らの宿営は荒れ果て 天幕には住む者もなくなりますように。

                      ___詩編 69:9,10,21,26___

4ヶ月前 No.141

MK マッチー @11777 ★i04XIsqV4q_iBP

最終話

6:00

ヘリが着陸し三人は急いで乗り込む。落合と宮部が出迎える。
宮部と落合の他に女性兵二人しかいない事に、気付いた谷村は疑問を口にする。


谷村:
「あの、他の人達は………?」

落合:
「助けられたのは二人だけで、後は爆撃で………。」

顔をしかめながら答えた。重い沈黙が包み込んだ。
その沈黙を破って話しかけたのは、操縦席に座っていた伍長だった。


ジェシー伍長:
「あの、他の皆さんと梢は……?」

心配そうで尋ねてくる伍長を見るのが忍びなくなり、宮部を始め山田、谷村が顔を伏せる。


三木大佐:
「彼女達は兵士として、立派だったと言っておこう。」

ジェシー伍長:
「そんな………ッ!!」

目を見開き驚愕の表情で顔を引きつらせる。


宮部:
「ごめんなさい、私の所為です………私の………。私が、もっとしっかりしてれば………。」

細かく体を震わせ、涙ながらに申し訳ない思いを吐露する。
山田はそんなことないというような表情で、宮部の肩に優しく手を置き、伍長に向き直る。


山田:
「栗山さんからの伝言です。友人としてずっと傍にいると、あなたの心の中に生き続けると。……そう言ってました。」

優しい口調で、寂しそうに少し微笑む山田。


ジェシー伍長:
「梢………梢ぇ………。」

頭を左右にゆっくりと振り、胸を両手で押さえ栗山の名を呼び、大粒の涙を流す。
慰めようとしたのか、落合が伍長の肩に手を置きかけたが、大佐が遮った。


三木大佐:
「傷心中のところ悪いが、どうやら奴(やっこ)さん、まだやる気のようだ。」

肩越しに外を指を指す。
頭を垂れていたショゴスが息を吹き返し、唸りを発しながら起き上がり始める。


ショゴス:「ヤァ〜ハァ……。」

落合:
「クソッ! まだ生きてんのか?!」

涙を腕で拭き、歯を食いしばり、操縦桿を握った伍長は、荒々しくヘリを離陸させる。

4ヶ月前 No.142

MK マッチー @11777 ★i04XIsqV4q_iBP

ジェシー伍長:
「う、くッ………ぁぁあああーーー!!!」

雄叫びを上げチェーンガンが火を吹く。
ショゴスの口の中に、集中砲火を浴びせようとしたが、知能を付けたのか戻ったのか、口を堅く閉ざし銃弾を弾く。


三木大佐:
「何だ……?」

破壊された階段室の瓦礫をどかしながら、マーシャール・ベアーを先頭にオルトロス、フェンリル、ファシネイターが出現。
屋上にワラワラと集まって来る。どうやら生き残りの残党達がまだいたようだ。
さらにショゴスは数十本の肉の塊を、体中から出現させファシネイター達を覆い尽くした。


谷村:
「の、飲み込んだ……ッ!」

悲鳴の様な断末魔を上げながら、吸収されていくファシネイター達とは裏腹に、ショゴスは生気を取り戻していく。動物達の頭部の様なコブが増える。
欠損部分だった目は再生し、口からの出血が止まる。今までに負ったダメージが嘘だったかのように、活き活きと活発的になった。
山田達はショゴスが復活するという悪夢を、目の前で目撃し血の気が引いていく。


三木大佐:
「吸収と自己再生、そして増幅還元の能力か……。だからこれほどの大きさに。」


全てを覆い尽くし自分の栄養になるように、染め上げたショゴス。狂った山脈の主は勝ち誇ったような声で、口を真上に向け吼えた。
そして再び口を堅く閉ざし、数十本ある肉の塊と共に顔をヘリに向ける。
さぁ絶望をゆっくり味わえ。と、言っているかのように、数秒の間が空き時が止まったように感じた。

ショゴスが動いた。
数十本の肉の塊がヘリに向かって伸びていく。
銃器はとっくに弾切れ、すでに対抗できる武器は手元に無い。成す術の無くなった彼らは歯ぎしりをした。山田は舌打ちをした。

4ヶ月前 No.143

MK マッチー @11777 ★i04XIsqV4q_iBP

しかしその直後、向かって来た肉の塊が爆発する。
炎上した肉の塊はボロボロと崩れ落ちた。
何が起きたのだろう。あっけにとられ事態を把握しようとしたその瞬間、怒声が操縦席から聞こえて来る。


ジェシー伍長:
「許さない、許さない許さない!! お前だけはッ……仇を討つ!!!」

AGM-114 ヘルファイア。通称、空対地ミサイルを発射していた。
数十本あった肉の塊は、次々とミサイルを撃ち込まれ、爆発炎上し崩れ落ちていく。
肉の塊を素通りしたミサイルは、ショゴスの巨体に直撃し炎に包まれる。


「地獄の業火に、焼かれろ! この化け物ぉぉおおおーーー!!!」

ショゴス:「ビャァァアアーーーーハァアアアーー!!」

苦痛の断末魔を上げクネクネと巨体をよじる。口を開けた隙を逃さす伍長は、チェーンガンの弾丸をありったけ撃ち込んだ。
再び口から大量に血を噴き出す。
苦痛から逃れようとショゴスは、ヘリとは反対方向に顔を向けようとするが、巨体に別のミサイルを撃ち込まれる。

空対地ミサイルを撃ち尽くした伍長は、次に折り畳み式ロケット弾のハイドラ70を使用。
業火に身を焼かれ、苦痛に口を歪ませるショゴスは、苦し紛れに数本の肉の塊を出現させる。
撃ってくるヘリを叩き落とそうと、再びムチのようにしならせ、勢いよくふるった。

しかしヘリには当たらず、虚しく空中をきる。
伍長は卓越した操縦技術で、襲い来る肉の塊を避ける。
上へ下へと避けながら、攻撃の手を緩める事をしない。ミサイルで目を潰し、チェーンガンで口内を抉る。的確にダメージを蓄積させる。


山田:
「大佐……今までの事、後でジェシーさんに謝った方がいいですよ……?」

三木大佐:
「……そうだな、そうするとしよう。」

4ヶ月前 No.144

MK マッチー @11777 ★i04XIsqV4q_iBP

しかし突如、銃声と爆発音が鳴り止む。
体中から生えていた肉の塊は全て落としたものの、ショゴスは憔悴しただけで、倒されてはいない。
何事かと操縦席に顔を向けた直後、伍長の声が轟いた。


ジェシー伍長:
「チェーンガン、オーバーヒート! これ以上は撃てません! ミサイルも尽きました!」

三木大佐:
「クールダウンさせるのに、掛かる時間は?」

ジェシー伍長:
「五分です!」

三木大佐:
「それじゃ間に合わん、避け続けるにも限界がある!」

多大なるダメージを負い、憔悴しきりながらも、口からさらに四本の肉の塊を出すショゴスを、睨み舌打ちをする。
谷村はハッとした表情で谷村の方を向く。


谷村:
「閃光弾を!」

宮部:
「そうです! ありったけの閃光弾を!」

ジェシー伍長:
「撃ってください、閃光弾!」

山田:
「早く閃光弾!」

落合:
「だから、僕の名前は………だぁーーもう!! こうなったら破れかぶれだ! 全部食らいやがれ、このターーーーコッ!!」

宮部:
「タコなの?」

名前を呼ばれない事に憤慨する落合は、八つ当たりで閃光弾を全弾上空にぶっ放す。
備え付けてあった閃光弾を全て使用した事により、かつて無い程の閃光が山脈一帯を照らす。

4ヶ月前 No.145

MK マッチー @11777 ★i04XIsqV4q_iBP

ショゴス:「グハァァアアアーーー!!」

苦しみの叫び声を上げ、激しく痙攣する。肉体的でないにしても精神的なダメージは与えられているようだ。
しかしこの行為の効果は一時的でその場しのぎに過ぎず、閃光がまたたくのをやめたら、ショゴスは再び襲って来るだろう。
五分も持たない策だ。どうすればいいのか次の案が急を要した。

誰もが沈黙し、山田も考えあぐねていると、宮部が肩を叩いた。
積んであったのか、携帯式防空ミサイルシステム。スティンガーミサイルを手渡す。


宮部:
「これで、トドメを。楽にしてやってください……。」

「雅さん……。」と呟く山田。彼女とミサイルを交互に見た後、頷き肩に担ぐ。
ショゴスの口内に狙いを定める。


山田:
「無い物ねだりをするべきじゃなかったんだ……。あんたの目の前には、幸せがあった筈だ。ちゃんと目を向けていればな……。」

山田は引き金を引いた。


ミサイルは真っすぐ進み、口の中へ。
直後大爆発が起こり、上あごを始め頭部全てを吹っ飛ばす。
ショゴスは寄生も断末魔も上げる事無く力尽き、煙を上げながら、元来た研究所内へズルズルと落ちていった。

ショゴスの亡骸が確認出来なくなった直後、研究所が大爆発を起こす。
アナウンスが流した通り、証拠滅却のための自爆が起きたのだろう。


三木大佐:
「早急に離れろ! 爆発に巻き込まれるぞ!」

さらにもっと大きな爆発が起こる前に、ヘリは高度を上げながら急いで離れた。
直後、連鎖爆発が起こりもっと大きな炎が上がり、燃える山脈の一部と化す。
宮部は身を乗り出し、燃える研究所を寂しそうに見つめた。


宮部:
「さよなら……。」

4ヶ月前 No.146

MK マッチー @11777 ★i04XIsqV4q_iBP

6:06

憔悴しきり虚ろな目でヘリを操縦する伍長。
そんな彼女を心配した落合は、隣りの射撃手のコクピットに座る。


落合:
「………ジェシーさん、僕じゃ駄目ですか?」

ジェシー伍長:
「え?」

落合:
「分かってるんです、僕じゃ心の傷を癒せない事くらい。分かってます、僕じゃ栗山さんの代わりにはなれないって事くらい。
でも、それでも僕はあなたの心を支えたいから。」

伍長の目を真っすぐ見据えて、操縦桿を握る彼女の手の上に、自分の手を重ねる。


「駄目ですか?」

ジェシー伍長:
「あなたでは………役不足、ですよ……。」

涙が溜まった目で彼を見つめ、艶やかに微笑む。
落合は一瞬の間を置いた後、震える肩に手を回し、彼女の額にキスをした。


その一部始終を見ていた谷村は、気恥ずかしくなったのか顔を逸らす。
逸らした先にやつれた顔の宮部と目が合う。


谷村:
「あの、大丈夫ですか?」

宮部:
「ええ、平気です。」

谷村:
「本当に……?」

宮部は目を逸らす。物憂げで口も利きたくなさそうに、重々しく口を開く。


宮部:
「罪悪感でいっぱいいっぱいで………三日前は叔父さんが日常を太郎さんから奪い、今度は父が肋骨を折る程の怪我を、太郎さんに負わせました………。
どう謝ればいいのか、どう償えばいいのか………分からないんです。顔向け出来ない私なんて、受け止めてくれませんよ………。」

自虐的で自暴自棄な薄ら笑みを浮かべる。
谷村はぴょこんと人差し指を立てた。


谷村:
「彼なら、きっとこう言うでしょうね。『あなたの所為じゃない』って………大丈夫、受け入れてくれますよ。」

宮部は隣りに座っている山田を見た。寝ているのか俯いている。
そう、少しのんきな彼ならそう言って受け入れてくれるだろう。なぜかそれが心の底から分かった。
泣き笑いに似た表情を頬に浮かべた彼女は、少し満足そうにゆっくりと目を閉じる。

4ヶ月前 No.147

MK マッチー @11777 ★i04XIsqV4q_iBP


山田は頭を悩ませていた。
宮部になんて声を掛けたらいいのか、分からない。
彼女は艱難辛苦(かんなんしんく)な人生を歩んで来たのは明白。そんな彼女に一体どんな言葉を、掛ければいいのか。

どんな言葉もきっと彼女の慰めにはならないだろう。
気休めにすらならないのではないだろうか。思い悩み居たたまれない気持ちになった。
悩みのために心をよそに失っていた山田に、目の前から声が掛かる。


三木大佐:
「心ここにあらず、といった感じだな。」

対面に座る大佐に顔を上げる。


山田:
「………もう少し、もう少しだけうまく立ち回っていれば、被害を少なく出来たと思うんです。現場を見極めていれば、怪我をしなくて済んだかもれない。
要領よく立ち向かってれば、これから罪悪感で苦しむ人は、出なかったかもしれないんです………。」

煩悩に苛まれている山田の話を、静かに聞いていた大佐が口を開く。


三木大佐:
「……聖書にこういう言葉がある。『私達の地上の住処である幕屋が滅びても、神によって建物が備えられている事を、私達は知っています。
人の手で造られたものではない天にある永遠の住処です。』とな。」

山田:
「………死んで逝った人達は、天国に行けるという救いがあるだけ、まだマシだって事ですか………?」

三木大佐:
「『我々の救いは死である。しかし《この》死ではない』。」

山田:
「カフカ……。」

三木大佐:
「ほぉ、君が知っているとは驚きだ。」

山田は重いため息をついた。


山田:
「前に妹が読んでいた事があって。」

三木大佐:
「君の妹とは話が合いそうだ。……話を戻そう。言いたい事はたった一言、ああすればよかった等という話は、するだけ時間の無駄だ。
起きた事の結果しかないのが現実だ。死者という過去を気にするよりも、これからの生者を気にかけるべきだろう。そして試行錯誤するんだ。
自らに負った後悔を、過ちを、どうすれば他の者が同じ境遇になった時に、負わさずに済むのか。繰り返さずにすればいいのか……。」

「これからの課題だな」と締めくくり、大佐はため息をついて窓の方を向く。

山田は一瞬沈黙した後、覚悟を決めポケットに手を突っ込み、ボイスレコーダーを出す。
一瞬、大佐が目を見開いてボイスレコーダーを見たが、諦めた様な表情で窓に視線を戻した。
スイッチを押し、山田が口を開く。


山田:
「…どうしてこうなったのかは、分からない。気がつけばあっという間に自分の世界は、音を立てて破壊された。」

山田は自分の隣りを見た。
自分の肩に身を委ね、寝息をたてている宮部を見つめる。
安らかに眠る彼女の頬を、愛おしそうに撫でた。


「だが全てを失って尚、それでも失いたくないものが出来た。絶望の中に明日を生きる、覚悟を見つけた。」

自分の手元にあるボイスレコーダーに目線を落とす。
全てを語る覚悟が出来た。
再び人間が過ちを繰り返さぬよう。人間によって招かれた災いを、つくりだした地獄がどういうものかを、教えるために。


「何が起きて森羅万象の理が覆ったのか、それを話す前に三日前の出来事を、話さなければならない。 ………俺は生存者、山田太郎。」

そう名乗ってヘリの窓の外を見た。朝日が昇る。明けない夜はないのだ。
朝日に照らされ燃える山脈と相まって、赤々とした景色を眺める。
口を開き、この世の絶望を語り出した。
                            ___結___

4ヶ月前 No.148

MK マッチー @11777 ★i04XIsqV4q_iBP

終章 __暗躍するエピローグ__

・とある教会

鐘の音が鳴り響き、荘厳な雰囲気を醸し出すヨーロッパ風の教会。
そんな教会内の信者席に座る、頭に包帯が巻かれた大佐。お洒落なトレンチコートを羽織っている。
そんな彼に近づき、斜め後ろの席にダークスーツに、黒のロングコートを羽織った全身黒ずくめの男が座る。


?:
「首尾は?」

黒の中折れハットを目深にかぶり、顔の見えない男が話しかける。


三木大佐:
「上々………と、言えればよかったんですが、不測の事態が続き結果は芳しくないです。」

?:
「簡単な任務に君の様な男が、まさか手こずるとはな。」

三木大佐:
「申し訳ありません。有能な部下も多くを失いました。これは痛手です。」

?:
「確かにな、こちら側の被害はあってはならない事だ。………しかし革命には犠牲はつきものという、仕方ないで済ませたくないが、そういう事だろうな。」

大佐が少しため息をつく。
そして肩越しに注射器に似た容器を手渡す。
容器の中身は、培養液に浸されたノーミンだ。

三木大佐:
「犠牲を無駄にしないでください。こいつを手に入れる為に散っていった部下達の為に。」

?:
「無論だ。彼らは新たな世界の礎となるだろう。偉大な国日本を取り戻した暁には、英雄として祭る。
日本に永遠の繁栄を手にするその時まで。世界に下克上を果たすその日まで。国々の脳髄に日本という名の楔を打ち放つ。
その為にもノーミンの力は必要なんだ。」

三木大佐:
「はい。仰せのままにあなたに従います。………総理。」

総理:
「本当の革命はこれからだ。」

総理は手に握るノーミンを見つめた。ノーミンも総理を見つめ返した。
しかしノーミンの視線には見下すかの様な、完全に冷めた軽蔑の感情を宿していた。

___まるで愚かな人間が再び過ちを繰り返す事を、哀れむかのように___

4ヶ月前 No.149

完結 @11777 ★i04XIsqV4q_iBP

                                事件報告書
                           (赤城山脈寄生虫事件と仮名称)

■発生
 4月4日
■場所
 群馬県南部の赤城山を軸とした山脈地帯
■概要
 狩矢崎市の封じ込め作戦決行後の、寄生虫によるバイオハザードの発生
■対応
 内閣総理大臣を始めとした、数名の閣僚の閣議会議の決定につき、ステルス機による焼夷弾を使用しての山脈一帯の焼却作戦

■報告概要
 事件は4月4日の真夜中に発生したと思われる。(正確な時間帯は不明)
数日前の4月1日に核を使用しての狩矢崎市の封じ込め作戦を決行し、寄生虫の封じ込めは成功したと思われた。
しかし山脈一帯の動物達が寄生されたという報告が上がり、狩矢崎市封じ込め作戦及び滅菌作戦は失敗という結論に達した。

 犠牲者の数は救助された一般人と救助部隊を含め、200名以上だと思われる。(正確な数字は不明。)
生き残ったのは一般人と軍人関係人を含めると8名のみ。(内一人は狩矢崎市のバイオテロを引き起こした、黒田の身内だと判明。処遇は審議中。)
ステルス機による焼夷弾を使用しての焼却作戦を目撃した者と思われる為、慎重な対応を要する。(黒田の身内についての処遇を取引される可能性あり。)

 尚、赤城山山脈一帯の動植物達が寄生(汚染)された事について、生存した目撃者達の証言によれば、黒田次郎なる者のテロである事が判明。
当該容疑者は狩矢崎市のバイオテロを引き起こした、黒田の実弟であるとの事。よって被疑者死亡で書類送検。
同時に副犯格であるガスマスクの男なる人物の行方を追っている。(テロの動機であるB-ウィルスなるデーターも、サイバー部門が探索中である。)

 因に、狩矢崎市のバイオテロの副犯格で逃走中と思われていた、薬師灰之介は生存した目撃者達の証言により、狩矢崎市のバイオテロ同日に死亡を証言。
(薬師灰之介も被疑者死亡で書類送検。)

 目撃者の証言により軍主体で何かの実験が行われたと、思わしき軍施設の存在をほのめかす。(後日捜索するが、焼却作戦により痕跡は何もなし。)
軍を統率する鬼塚防衛大臣に確認、把握していないと解答。(何者かが証拠隠滅を図った可能性あり。)

追記:
謎の軍施設の存在を随時捜査する。※目撃者の虚偽申告の可能性もある為、慎重を要する。
動植物を使ってのバイオテロの副犯格と思われる、ガスマスクの男なる人物の行方は、軍と独立した捜査部門に依頼する事を推薦する。

此度の事件も謎が多いため為、引き続き調査を続ける。
                                                         記載者:  森  総理補佐

4ヶ月前 No.150
切替: メイン記事(150) サブ記事 (10) ページ: 1 2

 
 
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