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回収屋とパンダ

 ( 小説投稿城 )
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無口鳥☆pPLl3rrZrEE ★zmzlCWJ3Nb_giC


 ぼくの街には不思議な回収屋がいる。
 不定期的にやってきてはみんなを癒していく、とてもやさしい人。
 そうだ、そんな回収屋――パンダさん≠フお話を聞かせてあげようか。

 ああ、聞いたらきっと、きみもパンダさんが好きになるよ。




 (無口鳥と申します。初投稿となります。
  読みにくい書き方とストーリーかと思いますが、よろしければぜひ)

メモ2017/08/19 01:31 : 無口鳥☆pPLl3rrZrEE★zmzlCWJ3Nb_FWA

いいね二つ ありがとうございます

(2017/06/03,2017/08/19)


読みやすさのため、わざと空白多めにしています

なにかありましたらお気軽にどうぞ

※誤字等を見つけた場合は、そっと脳内補正していただけたら助かります

関連リンク: 胃袋16:24 
ページ: 1


 
 

無口鳥☆pPLl3rrZrEE ★zmzlCWJ3Nb_giC




 ( 01/ぼくとパンダさん )




 ぼくの街には不思議な回収屋がいる。透けるような金髪を押さえるためか、いつも、茶色いタオルを額に巻いては不定期に町を練り歩いている。その名も通称パンダさん。なぜかって、彼の目にはパンダと思えるくらいのクマがあるんだ。まあ、本人が言うには、クマが濃いのを隠すためにわざとああいうメイクをしているらしい。木を隠すには森に? それにしても大袈裟だ。目の周りいっぱい真っ黒じゃあ、この街の住民以外怖がって近寄らないだろうに。それだと仕事にならないんじゃないか? 瞳は青くきれいだというのに。

 ガラ、ガラガラ、ガラ。

 パンダさんの回収車を引きずる音がする。パンダさんは、四角くできた木製の手押し車を回収車として使っている。大人一人は余裕で入る大きなものだ。いつもそれを人力車のような要領で引きずっている。

 ガラガラ、ガラ、ガガ、ガ――ガコッ。

 回収車がなにかに引っかかったみたいだ。パンダさんは抜けているから、回収車を道路のくぼみに引っかけたり、どこかにぶつけたりするのは日常茶飯事である。たまに年甲斐もなく迷子になっているときすらある。そのときはみんながパンダさんに道案内するのだが、回収屋が回収されるというのはいかがなものか……いや、まあ、パンダさんだからな……。

 ガ、ガガガ、ガッ、ガゴゴゴゴ。

 ずっと道路を削る音がしている。中々抜けだせていないようだ。ぼくが前に進むたび、その音が大きく近くなってきていたから、もうそろそろパンダさんと出くわす気がして少しワクワクした。

「あ、パンダさん」

 会える気がしてから一分くらいで本当に出会った。ぼくの予想通り、回収車のタイヤが道路のくぼみにハマっている。しかもちょうどそこは坂道になっていて、さらには彼にとって上り坂だったせいで中々進めないでいたようだ。

 ぼくが声をかけると、パンダさんは前に進もうとする足を止め、振り返る。回収車には大きな廃棄物。あ、と思った。転がり落ちる、と思った。実際パンダさんは転がり落ちてきた。ズルッと長い足がすべり、ガラガラガラと回収車とパンダさんが後退してくる。あ、受け止めなければ。




3ヶ月前 No.1

無口鳥☆pPLl3rrZrEE ★zmzlCWJ3Nb_giC





「ごめんね、ありがとう」

 結果としてはぼくだけが怪我をした。受け止めようとがんばって、まあがんばった甲斐があって回収車とパンダさんは怪我しなかったのだが、お陰でぼくの腹部と足に盛大な衝撃がやってきた。いたい。盛大にいたい。パンダさんが申し訳なさそうにぼくの頭を撫でる。大きい掌(てのひら)だった。片手でバスケットボール掴めるのでは? いや手の大きさは関係ないか。と場違いにそう考えた。

 高校生にもなって大の男に撫でられることになるとは。でも思ったより嫌な気分にはならなかった。おそらく、相手がパンダさんだからだろう。

「君のところもある?」

「回収物ですか? や、ないっす」

 ある日突然現れたこの回収屋が、みんな大好きだ。ぼくも例外じゃない。みんな、彼が困れば手を貸すし、悩んでいれば助けたくなる。ぼくにはない、きっと誰にもない魅力があるんだろう。もしかしたら、パンダメイク(クマメイクと呼ぶ人もいる)が人を惹きつける元なのかもしれない。

 それからまだ回収物があるらしく、パンダさんがあの坂を上りたいと言うので、ぼくも出来る限り手伝った。パンダさんの背中を押したり、直接ぼくも回収車を押したり色々してみた。でも非力なぼくじゃ何の足しにもならない。くぼみにハマらなくとも回収物が多すぎて前に進めない。こんなことになるなら筋力をつけておけばよかった。

 そこで別の策をと目的地を聞くと、想像以上にぼくの家の近くだったので、遠回りでもいいなら平坦な道を行こうと提案してみた。すると無表情の顔でそうしたいと喜ばれた。パンダさんは表情筋を使うのが苦手だ。だからいつも無表情である。でも雰囲気や言動でどんな感情なのかよくわかるのだ。

 パンダさんと歩く帰り道。こうして並んで歩いてみると、改めてパンダさんの長身が身にしみる。ぼくが173センチであるから、そうだな……180は超えていそうだ。本当に、なぜ彼が回収屋なんかしているのか謎でしかない。頭の良さはわからないが、それでも、違う職でもじゅうぶんに、今以上にやっていけるだろうに。

「そういえば、パンダさんは、なんで回収屋になろうと思ったんですか?」



3ヶ月前 No.2

無口鳥☆pPLl3rrZrEE ★zmzlCWJ3Nb_giC




 ガラガラガラ。

 回収車の音がぼくらを繋いでいる。パンダさんはぼうっと考える素振りを見せて、それから、そうだなあ……と遠くを眺めた。そして口を閉ざした。

 ガラガラ、ガラ、ガラガラガラ、ガ――ガッ、バキッ。

 背後で二度目の引き止めに遭う。ぼくもパンダさんも足を止めた。そしてぼくだけが苦笑した。

 今回はくぼみにハマったわけではなく、単純に回収車のタイヤが壊れたようだ。タイヤに目を凝らすと、木製のそれに見事にヒビが入っている。こうして改めて見るとだいぶ年季のある回収車だなあ。これじゃあ進むのに時間がかかりそうだ。それよりも、そもそも直るのか?

「どうしますか」

 ぼくが話しかけると、パンダさんはどこか寂しそうに「しかたないね」と言った。そして、知り合いにもってってもらうよ、と携帯を取り出してなにやら打ち始める。メールだろうか。

 と、思った途端、発信音が鳴り出した。電話か!

 それよりもぼくは今、ふたつのことに驚いている。ひとつは、パンダさんに友人らしき人がいるんだということ。こう言ったら失礼だが、パンダさんはいつ見ても一人だし、そもそもパンダさんから友人話を聞いたことがないし、「パンダさんの友人だ」と名乗る人すらいたことがなかった。だから消去法でパンダさんには友人がいないものだと思っていた。さらにはそれが真実であるというところまできていた。そうじゃなかった。

「あ。ウオバチ君、実はさ、車が壊れちゃった。直してもらえないかな」

 パンダさんにはちゃんと友人がいる、それを感じて、どことなく嬉しくなった。

「うん。わかった。ありがとう、ウオバチ君」

 そしてふたつめは、パンダさんは携帯を持っているんだということ。てっきりぼくは、パンダさんはアナログ人間だと思っていた。それから、今の今まで友人がいないと思っていたこともあり、連絡する人がいないのであれば、同様に電子機器なるものも持っていないだろうと安直にそう結びつけていたのだ。

 パンダさんを視界に入れながらそんなことを考えていると、気づいたころにはもう連絡は終わったようで――そして、同時にそれはさよならを意味していた。だって回収車がないのであれば、回収物を取りにはいけない。そして回収物を取りにいかないなら、目的地に行く必要もない。つまりは、ぼくとこうして歩くことも、もう必要ない。

 ああ、もう少し話していたかったな。謎ばかりなパンダさんのこと、もっと知りたかったな。



3ヶ月前 No.3

無口鳥☆pPLl3rrZrEE ★zmzlCWJ3Nb_OzI




「パンダさん、じゃあぼく、行くね」

 ぼくが小さく笑うと、パンダさんは「あ」と間抜けた声をあげる。

「パダはね、やさしいからね」

「え?」

 唐突に、しかもなんの関連性もなく、自分の優しさを暴露される。こればかりはいきなりすぎて「え?」と言ってしまったが、それくらい不意なものだったし、なにより理解ができなかった。


「どういうことですか」

 青い瞳と黒い目が合う。そしてそのきれいな青にぼくの顔が映っている事実が嬉しく思えた。うん、しがない学生でも、こんな自分のことをきれいだと勘違いできてしまうな。

 そんなきれいな目をはためかせ、パンダさんは「なんて言ったらいいのかな」と逆にぼくに問いかけてくる。ぼくに聞かれてもなあ……。パンダさんはやさしい、から、それで、別れることとなんの関係があるんだろう。やさしいからぼくの家まで一緒に帰ってくれる? やさしいから回収物を取りに行く? やさしいから、やさしいから……。

 パンダさんは考えを上手に言葉にできずにいて、ぼくはパンダさんの考えてることがもっとわからず、二人で静寂を迎えた。たまに鳴くカラスの声が鮮明に聞こえてくる。こんなにうるさいBGM、未だかつてあっただろうか。

「……あ、そう、だからパダは回収屋してるんだよ」

「最初からそう言ってよ」

「そう言ってたつもりだよ」

 なんだ。難しく考えすぎていた。パンダさんは、さっきぼくが質問したことに答えてくれただけだった。全く伝わらなかったけど。

 しかし、パンダさんは本当に抜けている。いや、それよりもテンポが遅れているといったほうが正しいかもしれない。まあ、回収屋になった理由が聞けたからぼくとしては満足だが、その理由さえ動機という動機になっているのかどうか。ふつう、やさしいから回収屋、なんて思いつかないだろう。というか、面接でそんなこと言ったら即・不採用だ。

 ははは、とぼくは小さく笑う。夕焼け空とパンダさんとぼく。なんだか、時間がゆっくり進むようでとても落ち着いた。やっぱりパンダさんは好きだ。その謎の雰囲気が皆を癒している。生かしている。現にぼくも今日癒された。

 あ、次いつ会えるかわからないのが余計に良いんだろうな。不定期的なパワースポットだからこそ、そのぶん、楽しみがある。

1ヶ月前 No.4

無口鳥☆pPLl3rrZrEE ★zmzlCWJ3Nb_FWA




 ああ、いつかの楽しみのために、ぼくも家に帰らなければ。

 それじゃあそろそろ帰ろうかと、再度別れを告げるべくパンダさんをちゃんと見上げる。そのときふと視界に入り込んだ黒いビニール。そういえば、今日の回収物は大きなごみ袋ひとつだけのようだった。回収車がいっぱいになるほどのごみ袋からは、ほんのり腐敗臭がする。パンダさんと関わることに夢中で気づかなかった。生ごみだろうか。

「パンダさん、たまに生ごみみたいなのも回収してるよね」

「うん。ごみも回収してるよ」

 ごみはごみ用の収集車に渡すものじゃないのだろうか。でも、パンダさんがあまりに当たり前に回収していると答えるので、どうしても今捨てたい人のために回収しているんだろうという結論に至った。パンダさんはやさしいから。うん、まあ、それもパンダさんっぽいな。

 まあ、パンダさんだからな。そんな自答にすとんと納得して、ようやく、ひらひらと手を振って帰路につく。そうするとパンダさんも大きな手で振り返してくれた。ぼくの中では二十代のイメージなパンダさんが手を振る姿(しかも無表情)が、不思議にも可愛らしく思えた。そういうふうだから街の人皆に好かれるのだろう。

「じゃあ、パンダさんまたね」

「またね」

 パンダさんを背にし、それなりにおいしい夕飯が待っている我が家へ。歩きながら何となく見上げると、夕焼け空がいつもより高く、そして澄んで見えた。きれいだ。

 ああ、ぼくも就職活動がんばらなければな。



1ヶ月前 No.5
ページ: 1

 
 
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