Google
    
<< TOPページ 掲示板TOP 記事データ お知らせメール ▼レス(28) >>
★この記事にはショッキングな内容が含まれます。もし記事に問題がある場合は違反報告してください。

紡ぐ少年少女たち

 ( 小説投稿城 )
- アクセス(153) - ●メイン記事(28) / サブ記事 - いいね!(1)

千里 @matunogirl ★bmcMf8SVlV_yFt

とある県の一角にある高校にみんながお世話になっているお仕事をしている一人の少女がいました。その高校は県でも有名な進学校でした。

そんな少女はとある事件で変わってしまい、昔からあまり女の子からは好かれるタイプではありませんでした。それでもある程度はお友達もいた少女ですが、その事件をきっかけに、すっかり変わってしまい、今ではほとんど一人ぼっちでした。しかし、そんな少女には二人の幼なじみと個性溢れる女の子が集まりました。男の子みたいな口調で変なところイケメンな男の子のような子だったり、誰もが、遠巻きにしてしまう程の美貌を持ち合わせながらもほんの少し口調が男の子で、昔ヤンキーだった歴があるような子だったり、超弩級な天然な癖に男勝りみたいな子だったり。

そんな彼女たちの輪からさらに少女は縁で、様々な仲間と知り合いました。
その中には少女が、心惹かれる一人の少年がいました。
その少年とどうなったかって?それは読んでからのお楽しみというやつです。

これはそんな少年少女が紡ぐ一つの物語────。



クッソみたいなプロローグにお付き合い頂き、ありがとうございました。
この物語は、恋愛投稿板にあった「輪廻転生した僕らは」のリメイク版となっています。
あまりにも恋愛描写が少ないなと思いこちらに立て直させていただきました。
一部、登場人物の変更、設定の変更がありますがご了承ください。
そして、主人公が変わります。

では、お楽しみください。1人の少女が紡ぐ一つの物語を。

なお、この小説には暴力表現、流血、過激な表現があります。苦手な方はブラウザバックを推奨いたします

メモ2017/04/23 01:15 : 千里☆JygYpuYd4vU @matunogirl★HBceeKwFWA_yFt

(注)この物語には多少の流血、いじめ、殺人等の残酷な描写が含まれます。苦手な方はブラウザバックをお願いします。また犯罪行為を助長する意図はございませんのでご理解いただきますようお願い申しあげます

ページ: 1

 
 

千里 @matunogirl ★Android=W1VemU3zJF

この投稿はフィルタされています。表示するにはアカウントにログインして下さい。

3ヶ月前 No.1

千里 @matunogirl ★Android=W1VemU3zJF

2話

千里が蒼や翔太の横に並ぶと、さらにあたりは賑やかになる。『やっぱり地雷さんは太田君なのかなぁ……。』『なぁんかさ、美男美女って感じでお似合いだよなぁ……』『つか太田や吉良津羨ましくね?あいつの周りモテるやつばかりじゃん。』『地雷っさぁ、調子乗ってるよねぇ、ちょっと男にもてて、蒼君や和斗君と幼馴染で、縁くんや翔太くんと仲がいいからって。イケメンお前が独占するなっての』『分かるわー、ぜってぇあいつビッチだろ』『てかみんなあいつかわいーとか言うけど、どこが?ただの無愛想な奴じゃん。あれじゃない?男の前だけいい顔するやつ。』『うわー、無いわー』
千里はこのような話には慣れたが、両隣からただならぬ殺気を感じ、「まぁまぁ、落ち着けって」と宥めながらあるく。千里が無愛想なのは信用の置いてないものの前では誰でもなので、そんなのではないのだが、女子の目からはそうは見えてないらしい。めんどくさい。

千里は内心そう思いながら、歩き続ける。
「ちーさとっ!」
「うわっ!!……危ないよ、秋良……。秋良みたいに身長でかい人に飛びつかれたら俺倒れちゃう。今は蒼が、助けてくれたから転ばなかったけど。蒼、ありがとね。」
「ごめんなさーい……」
「秋良ちゃん、気をつけてよ?」
「ちょ、蒼顔怖いから。秋良だってわざとじゃないんだからそんな顔するな。」

後ろから名前を呼びながら飛びつかれ、千里はくんっと前のめりになるが、倒れる前に隣に立っていた蒼が千里のことを助けた。千里は蒼にありがとね、と言いながら、後ろから飛びついた女子生徒────、先輩である舶来秋良の名を呼んだ。
「オハヨ、蒼くん、翔太くん。」
「おはようございます、先輩。ほんと先輩って千里のこと好きですよね」
「千里は剣道強いからね!今年も全国制覇目指せるなぁ、今年の1年生、蒼くんに、翔太くんに、和斗くんに、千里でしょ!こんなかで誰が優勝するかなぁ。」
「んー、長期戦に持ってこられるとやっぱり蒼じゃないですか?何気に蒼、強いんですよ。」
「今年はみんな結構強い子ばかりだからな、楽しみ!」

秋良は珍しく御機嫌気味に大会の話をした。
春の都大会が近いからだ。うちの学校は有名な進学校なのとともに、武道に関しては得にずば抜けて、強豪校なのだ。というのも、学校自体が勉強も運動もできる人間を作ろうというカリキュラムの元作られていて、さらに武道に関しては特に力を入れてる。

なので道場はとても大きい。
その中でも一番大きいのは────
「あ、伊織!なんだよ、薙刀部、休憩中か?」

薙刀部だ。珍しい武道ということで入る人は多いが、練習量がほかの部活と比べると、ずば抜けて多い。大抵耐えられなくなった生徒の多くが、あまり厳しくないと言われている柔道に入る。剣道も同様だった。親しみやすい分、入る人は多いのだが、やめてしまう人もいる。千里はその背中を既に何人か見送っている。
「……まぁ。」
「疲れてんなぁ、また馬鹿如一のせいか?」
「わかってるなら聞かないでくださいよ……。あの人なんとかならないですか?」
「物覚え悪好きだよなぁー」

千里はケラケラと笑いながら、目を細めて笑う。
冬木如一────。千里にとって大切な友人のひとりで、助けてもらったことが何度かある人だ。それに先輩でもある。そんな彼女はとても強かった。けれど、この目の前にいる、橘伊織という千里の同期である女に負けた。
余りにもの屈辱で今は薙刀部にて日々、練習に取り組んでいる。……試合を申し込んでは負けているのだが。

「そろそろ、終わるんで、戻ります。……みなさんは教室に行きますか?」
「そっか。んー、戻ることにしよっかな。今度薙刀部見せてもらうわー」
「そうしてください。……別に来てもいいですけど……、剣道部はどうするんですか?」
「あー?そうだなぁ、休憩中にでも見に来ることにするよ。」
「そうですか。」

千里は軽く手を振ってから、校舎へと歩く
「千里ちゃんだいぶ変わったよね、お友達が沢山増えたようで僕は嬉しいよ。」
「ほんと蒼お父さん。」
「えぇ……。」

3ヶ月前 No.2

千里 @matunogirl ★Android=W1VemU3zJF

第3話

千里が1人で教室の端の席────、窓際で窓の外を見下ろしながら ぼんやりとする。
窓の下はいつも通りの朝の風景が流れている。

部活動に勤しむもの、風紀委員の仕事に勤しむもの、友達と和気藹々としながら登校してくる風景を眺める。
ぼんやりとしていると、何かで頭を軽く叩かれるような振動があり、上を見あげるとニヤニヤと含み笑いを浮かべた悠太が立っていた。
「……なんだよ、悠太。」
「お前、HR始まってんだよ、それと、先生、な。」
「あ?……あー、わりぃわりぃ。」

千里はそう言いながら、再び窓の外へと目線を戻す。
「はぁ……ほんっと地雷は自由人だな……。お前、早めに提出しろよ、部活動どこに入るか」
「あー、悠太、俺剣道部入るから書いておいてよ、俺親いないし、サイン書いてくれる親も……居るに入るけど、近づきたくないから、お前親、よろしく……。」
「ふざっけんな!そいつに頼めよ!」
「あーもうめんどくせぇな、蒼の親に頼も。」
「ったく……保護者に頼め。」
「その保護者は……」
「ちょっと、遊原せんせ?千里ちゃんいじめないでよね。」

そんなふうにいいながら入ってきたのは蒼。千里を庇うようにすりすりと寄ってきて頭を撫でながら、きっと睨みつける。
「……。いじめてはねぇよ、部活のサインを保護者に頼めって……」
「あれ、担任の癖に知らないんですか?
千里ちゃんの両親、一応、いない事になってますよ?……大丈夫だよ、千里ちゃん。僕の親に頼んでおいてあげる。」
「ほんとっ?!わぁい!ありがとう、蒼!すき!」
「うんうん、千里ちゃんそれは本当に好きな人だけに言おうね?」

蒼の視線に少し物怖じを感じつつも悠太は、問い掛けに対し、答える。その後に頭を撫でながら、僕の親に頼んでおくよ、といいながら、微笑んだ。その後に千里がわざとらしくわぁいといいながら、好き、と言うと蒼は困ったように笑いながら、頭をわしゃわしゃと撫でる。
「え?俺蒼好きだよ、お父さんみたいだし」
「うん、知ってる、そういうふうに軽々しく好きとか言わないでね。」
「……はぁい。」
「いいこいいこ」
「……なんかすげぇバカにしてねぇ?」
「ん?してないよやだなぁ。」
千里はちぇーと言いながら再び窓の外に目を向けたのだった────。

3ヶ月前 No.3

千里 @matunogirl ★Android=W1VemU3zJF

4話

一時間目は片桐の古文の授業だった。一時間目からこれまた眠くなる授業だなぁ、と思いながら机の上に古文の用意をしようと鞄を開くと、
「げっ……」
千里はげっと、小さく言葉を零す。
隣のヤツに見せてもらえればいいが、あいにく隣は女子だ。それに男だとしても信用してない奴と机をくっつけて見せてもらうぐらいなら、死んだ方がましだ、と思ってしまっている説があるので、千里は立ち上がると、隣のクラスに移動をする。
「蒼ー!」
「……?千里ちゃん、どうしたの?」
「古文の教科書、忘れちった、貸して?」
「千里ちゃんが忘れるなんて、珍しいね、寝落ちした?」
「あはは……、んな事ねぇんだけど……。古文ってことすっかり忘れててよ、入れ忘れてた。」
「うん、いいよ。貸してあげる。」
「ありがと、蒼お父さん」
「ほんといつから僕は千里ちゃんのお父さんなのさ……。まぁ、僕も千里ちゃんは娘とか妹みたいなものだけどね……」

千里が苦笑しながら、受け取り、お父さん、と言うと蒼は苦笑しながらも千里の事を娘とか妹みたいなものだと
答える。「ならいーじゃん、」と千里がケラケラと笑いながら談笑していると。

「ちーさとちゃん!おはよぉ、今日も可愛いねえ、」
のらりくらりとした話し方をしながら、千里に対し、話しかける男がいた。
「げっ……縁……、悪い、蒼!俺教室に戻る!」
そう言いながら千里は顔を歪めながら、教室を慌ただしく出ていく。

縁楔。
中学の頃、諸事情で私立から公立に転校した時、知り合った────、いや。同じクラスの隣の席になったことがある男だ。千里はどうもこの男が苦手だ。
なにか裏表がありそうな、と言うより、とても恐ろしい一面を隠している────。そんな気がしてならない。中学の頃はそんなことは思わなかったが、高校から始めたバイトという名の本業を始めた途端、そんな気がしてきた。
そして最近は、千里の中でのブラックリスト(危険人物)の1人だ。そして彼はどうもやけに蒼と仲が悪い。蒼は俺の友達、伊織のことが好きだ。肝心の伊織には、どうやら勘違いをされていて、困っているようだが。

それはともかく。
縁楔────。千里は何やら彼が隠してる気がしてならず、距離を置こうと、決めていたのだった────

2ヶ月前 No.4

千里 @matunogirl ★Android=W1VemU3zJF

5話

古文の授業が始まり、蒼の教科書を開いた。開くまでは良かった。しかし、千里は蒼の教科書を借りようとか思った自分を怨みたくなる思いでいっぱいだった。それぐらい蒼の古文の教科書は落書きまみれだった。
「かの夏目漱石はI LOVE YOUをなんと訳した?…………。
じゃあ、そこで、蒼の教科書を見て笑いを堪えるのに一生懸命な、地雷」

そう言いながら黒板の文字をこんこんと叩く。
「ふぁい?!夏目漱石が、I LOVE YOUをなんと略したか、ですか。……いや、"月が綺麗ですね"ですよね、それ普通に考えて。簡単すぎて反吐が出るんですけど、質問するならもっと難しいのよ越してくださいよ。」
「……いや、正解なんだが……ううん……もう少し真面目に授業受けろ。」

珍しく授業に出てることもあり、あまり強く言えない片桐の態度に千里はクスクスと小さく笑いながら、また席につく。その後も変わらず授業が進められていく。

しかし、数分後千里は船を漕ぎ始めていた。理由は心地のよいそよ風と、暖かな太陽。黒板を鳴らすチョークの音、それからなんとも言えない片桐の上手い朗読。寝るなという方が無理な話だ。
「おい、地雷。起きろ。」
「……あれ、俺寝てました?」
「ガッツリな。……珍しく授業に出たと思えばこれか?ん?地雷。」
「いやぁ、連日捜査が……って何言わせんだよ、あー、片桐の声眠気さそう……」
「お前なぁ……いい加減にしろよ……」

千里が一瞬で周りを見ると、どうやら授業は、とっくのとうに終わったようで、周りは騒がしい。
「授業終わりましたー?てか終わってますよねー、じゃあ、俺屋上行きます!」
「いい加減にしろっていってんだろ……、」
「やだなぁ、片桐せんせ、俺の中学の頃からの授業サボリ癖なんて、知ってて推薦したんじゃないですかぁ、それでもいいから来てくれって頭下げたのそっちじゃないですか!まぁ断りましたけど!!」

ケラケラと可笑しそうに笑っているが、その瞳の奥にあるはずの光は宿らない。断りましたけど、のところでは、何処ぞの蒼だと言いたくなるほどうざったらしく言葉を並べた。
「ホントだよなぁ、お前の断り方、"あ、俺高校自力で入るつもりなんで。だって面倒じゃないですか。推薦で入ったら、授業気軽にサボったり、学校抜け出したり、出来ないじゃないですか。内申点キープとか、成績常に上位とか面倒くさくて禿げますよ、俺。ふざけんなってやつですよおっさん"……だもんなぁ?」
「アハハ!!俺そんなこと言いましたっけ?」
「言ってたよ!!バッチリな!!」
「やだなぁオッサン、俺が片桐せんせにおっさんとか言うわけないじゃないですかー末恐ろしいなぁ、ねぇ、おっさん。それにいいじゃないですかー、一般入試で隣のクラスの縁と並んで1位で合格したんですから!」
「今2回言ったよな?!まぁ、合格したからいいが……」

千里がこうしてケラケラと笑いながら話す相手は数少ない。そもそもの話、クラスメイトの名前すらまだ覚えていないし、覚えるつもりもない。教師だってちゃんと話すのはクラス担任の悠太、それからいま目の前にいる片桐だけだ。ほかの教師に話しかけられようとなんだろうとあまり話さない。しかし、成績がいいので下手に逆らえない教師だ。なのできちんと千里に物申すのは片桐のみ。
「やだなぁ聞き間違いですよ、ねぇ、蒼。」
「そうだよ片桐せんせ。千里ちゃんがおっさんなんて言うわけないじゃない」
「おまっ……いつから……っはぁ……お前らに突っ込んでたらこっちの体力がなくなるだけだな……、怒る気力も無くなったわ……。、はぁ疲れた……」
「僕ですか?!そうですね、推薦の話ぐらいからだと思いますよ!それなら良かったです!次の授業のお迎えに来たんですが、疲れたならどうぞ職員室で休んでてください!そのまま一生休んでてもいいんですよ!」
「ふざけるな!」
片桐は蒼まで入ってきたことに、疲れてしまい、深いため息を吐いてから、職員室に戻ろうとした片桐の背中に蒼が、声をかけると、ふざけるな、と言う返事が来た。蒼は「酷いなぁ、体をいたわってあげてるのにー」と言いながらむくれる。本当に小さい頃からこのふたりは変わらなかった。

ずっとこのまま毎日が平穏だったらいいのに────。そう思いながら、千里はその様子を眺める。

この平音が長くは続かないことを彼女はまだ、知らない。

2ヶ月前 No.5

千里 @matunogirl☆JygYpuYd4vU ★bmcMf8SVlV_yFt

6話

「千里ってさ……楔のこと嫌い?」

千里が蒼と共に昼休みに伊織とお昼を食べようということで、教室を尋ねると、開口一番、伊織にそう聞かれた。千里は若干悩みながら手作りのたこさんウィンナーを口に運びながら、答えを出す。も、聞かれる理由がわからず、思わず聞き返した。

「……なんで?」
「なんというか……楔だけ縁って読んでるし……、あと雰囲気?」
「うーん、……縁自体は嫌いじゃないよ。けどなんか……苦手、なのかな……アイツ裏がありそうでさ……。なんか……苦手。」
「嫌いではないんだ……。」
「おぅ……。でもまぁそのうち慣れるよ。……多分」

千里は雰囲気、と言われ、そこまで表面に出てたかと思うと苦笑がこぼれそうになる。それでも千里はその後に、なれるよ、多分。と言うと、伊織は「多分なんだ……」

と呟くように千里の言葉に突っ込む。
「楔いい子だし、すぐに千里も馴染めると思うな。」
「……いい子、ねぇ。」
それ以来千里は縁楔の危険性があるかないかについて考え始める。もとより蒼の事は期待はしていない。恐らく縁という男もこの目の前にいる橘伊織之ことを好いている。となれば、仲が悪くなるのも頷ける。お互いに引くことを覚えない。余計に中も悪くなる。

そして伊織も同じこと。人を疑うことを知らない純新無垢だ。千里からすれば、伊織という女の子は、将来悪い人に騙されるんではないかとひやひやしている。……まぁそれはこの場にいない秋良も同じ話なのだが……。
それはともかく、とてもどうでもいい。
「まぁ……いいか。にしても姉妹校に転校生来たらしいな。確か、四月一日徹守……ってやつだっけ?」
「あ、僕今朝あったよ。何かねー、僕の家の周りで迷ってた。駅に行きたかったんだって。」
「へー……じゃあこの周辺に住んでんだ。その割なんで遠い高校通ってんだろ……。」
「うんー、何かねー、推薦らしいよー。それでここに来たんだって。美術と水泳。」

そう言うと、千里はこの学園の部活を思い出すと、余計にわからなくなった。
「この学校でも通えたんだけどな。美術部も水泳も推薦生徒を受け付けてるだろ?……学力か?……あ、でも向こうも同じぐらいか……ううん、余計に分からん……」
「うん、僕はちさとの呟いてる事の方が頭良すぎてよく分からないけどね」
「……え?俺一応このしゅ……学園の部活と姉妹校の偏差値と部活ぐらいなら把握してるから。」
「え、それちょっと怖いかも」
「千里ちゃんって変なところ、頭いいよねー、元ヤンのくせに」
「うるせぇなぁ、それは関係ねぇだろー。つか、ふざっけんなよ、俺は昔の名残で文武両道なんですぅー。」

一度、この周辺の高校、と言いかけて姉妹校、自分の高校の部活と学力は把握してる、と口にすると伊織は怖い、というと蒼が、変なところ頭いいよね、といった。
その事をほんの少し不快に思ったちさとは、お弁当箱に残っていた最後の唐揚げを口に突っ込むと手早く片付けた。千里は顔を露骨に顰めながらふざっけんな、と口をひらく。その顔を見て蒼はニヤニヤと笑いながら、幼馴染みだからこそ知っている、そして家が近所にあるからこそ知っている特権を話し始めた。
「うん、知ってる。夜中の3時ぐらいまで勉強してる事もあったよね」
「なっ……!!そればらすなアホ蒼!!蒼のバカ!!」
「それでたまに寝落ちて風邪ひいて死にかけてたり、寝坊してたら意味無いけどね。」
「ほんっと何でそればらすの?!てかなんで知ってんの?!」
「だって千里ちゃんの部屋、僕のいる部屋から丸見えなんだもん。カーテンは閉めてあるけど、電気ついてる時は大抵勉強でしょ?」
「う……うるさい。そこまでしなくても分かるけど……」

勉強などしていないがこの場には千里の大きな秘密を知らない彼女がいる。下手なことをいえずにいると蒼は相変わらずにやにやとしながらこっちを見ていた。
――――――こいつ、後で覚えとけよ。
千里はそう思いながらあの書類を今日中に片付けなくちゃ。そう思いながら、ふたたび会話を開始するのだった。

2ヶ月前 No.6

千里 @matunogirl☆JygYpuYd4vU ★Android=W1VemU3zJF

この投稿はフィルタされています。表示するにはアカウントにログインして下さい。

1ヶ月前 No.7

千里 @matunogirl☆JygYpuYd4vU ★bmcMf8SVlV_yFt

8話

その後伊織は休憩は終わりと言わんばかりにほかの部員に声をかけてから如一には個別に声をかける。おそらく練習メニューの変更なのだろう。
「それから冬木先輩ですがまぁ、まずは冬木先輩は足さばきの練習してください。まずはそこからですよ。足腰しっかりしてください。基本がなってなさすぎるんです」

伊織が呆れ交じりにそう言うと如一はたじたじになりながらも足さばきの練習に取り組み始める。伊織はその様子を見ながらやはり素質だけはあるし、スピードとしては申し分はない。しかし問題点として挙げるなら普段動かないような動きのせいか、たまに自分の足に引っかかって転んだり、足音が立つことぐらいだろう。
「伊織!これ転ぶぞ」
「転びませんよ!あなた重心動かしすぎなんですよ!重心は常に動かさないでください」
「えぇ……なんでそれ言わねぇんだよ」
「毎日言ってます」
「えぇ……」
ますますたじたじになる如一に千里は苦笑を浮かべる。
「薙刀では足腰は本当に大切ですから!まずはそこから鍛えてください。スクワット1000回以上はやったほうがいいです。それから水泳とランニングを吐くまで」
「別にいいけどさぁ、それぐらいどうってことないし」
いいのかよ、とだれもが心の中で突っ込みつつも千里はおずおずといった様子で伊織に質問を投げる。
「ねぇ、伊織。薙刀はやらないけど、薙刀やるうえでやっぱその足と腰の二つって必要なの?あとはそれ以外に必要な場所ってやっぱりあったりする?」
「そうですね、あとは左側ってのは剣道でも必要だと思います。それは薙刀でも同じですね。やはり心臓がある場所ですし。あとは冬木先輩がよくぶっ叩かれてる脛も結構大切ですね……」
千里の問いに対して大して悩んだそぶりも見せずにさらりと答えると、千里はふんふんと頷くと最後には歯を見せながら笑い「ありがとな」と告げる。
「いえ、例には及びませんよ。そうですね、その代わりと言っては何ですが、またうちに来てください。父様も千里に会いたがってました」
「あー、そうだよなぁ、射水さんにも悪いことしたなぁ。わかった、今度……、近いうちに泊まり込みで修行してもらおうかな」
「じゃぁ父様にも伝えておきます」
「了解」
千里はぐっと親指を立てると下手嘘なうウィンクをする。伊織はそれを見ながら苦笑をこぼすと練習風景に目を戻してその様子を眺める。やはりさすが強豪校だな、とは思うが伊織にとってはまずまずの練習相手だ。千里はふっと時計に目をやると結構時間がたっていた。そろそろ休憩も終わるころだろう。
「おっと……、そろそろ俺は戻るよ。ほら、秋良も戻るぞ」
「あぁ、もうそんな時間?じゃあ如一、俺ら部活に戻んねー!」
千里と秋良は薙刀の道場から離れ、剣道部の道場に戻っていく。

日常が壊れるまで、あと少し。

1ヶ月前 No.8

千里 @matunogirl☆JygYpuYd4vU ★bmcMf8SVlV_yFt

9話

次の日のホームルームのこと。担任の遊原が教壇に上がり、出席の確認を取った後に黒板に体育祭実行委員、と書くと一度こちらに振り返ってから口を開いた。
「……ということで今日は間もなく近づいている合同体育祭について話し合いたいのだが……、まずは実行委員を決めたいと思う。誰かやりたい人はいるか?」

当然だれも手を上げるようなもの好きはいない。少し困った顔をしながら、遊原は声をかけ続ける。そんな様子を見ていた千里はため息を一つついてから、ゆるりと手を上げるのだった。
「俺、やりますよ。誰もやらないみたいなんで……。用事が入らない限りはこれますし」
遊原はその言葉に安堵したような顔をしてから「じゃあ悪いけど頼んだよ、地雷」といわれ千里は適当に返事をすると、男子がもう一人いるらしいが特に興味がなかった千里は適当に挨拶をした後にかかり決めという話になり、救護に手を上げ、再びぼんやりとしていた。

その頃、伊織たちのクラスでは――――。
「はいはーい、伊織ちゃんと僕が実行委員やりまぁす」
「そうか、じゃあ縁と橘、任せたぞー」
「ガンバローね、楔」
もとから二人でやるつもりだったのか、片桐から実行委員の話が出ると間髪入れずに伊織と楔が手を上げる。蒼はそれが気に食わなかった。二人は係も一緒のようで救護を選択していた。蒼は若干いらいらしながら得点に手を上げる。¨伊織ちゃん、なんで……¨そう思いながらも口にできないもどかしさや、楔に対する苛つきだけが募る場からだった。そんな時だった。ふと目が合った楔に勝ち誇ったような、人を見下したかのような顔をした楔と目が合う。ほんの一瞬のことだったので見間違いなのではないかと疑いたくなるぐらいには、信じられなかった。
「じゃあ、この後会議あるからな、さぼらずに行けよ」
片桐はそう言って教室を出ていくとみんなそれぞれ自由に動き始める。伊織のほうを見るとすでに楔と話し込んでいて、楽しそうにしていた。そこで諦めるような男ではない蒼はそこに話しかけに向かう。
「いーおりちゃんっ。何の話してるの?僕もまーぜて」
「あ、蒼。んっとね、救護他に誰いるかなーっていうのと、お仕事がんばろーねって話―」
「へぇ、千里ちゃんあたりは実行委員と救護やってそうだよね。僕のところ、ほかに誰がいるかな」
「あ、蒼もそう思うー?僕ら気が合うねーやった」
蒼が話しかけると伊織はにへらと笑いながら蒼のことを向かい入れると蒼も自然な流れで
話に混ざる。

次の時間。
「あ、縁と伊織じゃん。んだよおまらも実行委員なのか?きぐうだなぁ」
伊織たちが集合場所と指定されていた場所に向かうとすでに千里はそこにいてプリントを手にしていた。千里は伊織たちに気が付くとヘラりと軽くわらながら声をかけると伊織と楔も千里の近くに駆け寄る。席はどうやら自由らしく各々が好きなところに座っていた。
「なぁなぁ、伊織は係何にした?」
「うんとねー、救護だよ。千里は?」

近くの席に座ると千里は体ごとこちらに向けながら話しかけてきた。係は何にしたのかと聞かれ、伊織は素直に救護だと答えた後に千里に聞き返すと千里は一度目を丸くした後に小さく吹き出して「俺も救護だよ」と答える。伊織は蒼すげぇ、と思いながらも自分もすごいな、と思っていた。二人の予想は当たっていたのだから。

「そういや、縁。お前って体育祭の種目何かでんの?」
「え?僕……?うーん今のところ悩んでるけどぉ……、多分借り物競争に出る予定だよぉ。そういう千里ちゃんは?」
「えっ……?おれぇ?うーん、俺も多分借り物に出ると思うけど」
「そしたら僕たちライバルだねぇ、千里ちゃん足早いからなぁ、負けちゃうかも」
千里が伊織と話している割に楔と話していないことに気が付いた千里は、普通になるように心がけながらも楔に問いを投げると案外普通に応答があったことに驚きつつも楔からの問いに対する答えも返すと、負けちゃうかもな、なんていう言葉を聞いた。たしかに伊織の言う通りそこまで悪いやつなわけでもなさそうなのだが、やはりどこか怪しいと思ってしまうのは高校に入ってから始めた副業という名の本職のせいだろう。その考えを振り切る。千里のこの時の違和感を蔑ろにしてしまった事に後に公開することになるのだが、それはまだまだ先のお話。ともかくその考えを振り切ると口を開いた。
「うん、勝っちゃおうかな」
「んもお、千里ちゃんの意地悪」

そう言いながら楔は頬を膨らませる。こいつあざといな、とか思いながら千里は「だった勝負事では手ぇ抜きたくねぇし」とくすくすと笑いながら答えると楔も納得したようだった。あんがいあっさりと手を引いたことにも驚きつつも視線を黒板に戻すといつの間にか担当の飛山健介と遊原が立っていた。
「そこの三人とも。お話は終わりましたか?」
「あーうん。終わりました。いつでもどうぞ」

飛山と目が合うと諭すようにそう言われた千里はいつでもどうぞ、というとにっこりと笑いながら飛山は説明を始める。悪いことをしたなぁなんて思いながらメモをしながら話を聞き続けるのだった

1ヶ月前 No.9

千里 @matunogirl☆JygYpuYd4vU ★HBceeKwFWA_yFt

10話

縁楔―――。
前と比べれば仲良くなったし、それほどまで悪いやつだとは思わないが、千里にはなぜだかわからないが、彼が隠していることはばれたらそれこそ裁判になれば確実に負けてしまうようなものを隠している気がしていた。席で難しい顔をしながらそんなことを考えていると、ふと影がかかり上を見上げると驚いたような顔をした伊織の姿が目に入る。
「何ハトが豆鉄砲食らったような顔してんだよ……。伊織?」
「あ……。ねぇ、千里、今日って空いてる?」
「空いてるよー。伊織どうしたの?」
「あー、今日識が帰ってくるんだけど、折角だし、千里と識と僕で父様に稽古つけてもらったらどうかなって思ったんだけど、ダメかな?」
「別に俺はいつでもよかったから大丈夫だよ。じゃあ放課後伊織のクラス行くわ」
伊織はわかった、と言いながら教室から出ていく。これを伝えるためだけにここに来てくれたのかと思うと、伊織の気遣いがわかり苦笑をこぼす。如一だったら問答無用で放課後に無理やり連れていかれるだろう。それにすっかり慣れてしまっていた千里は伊織のその心遣いはうれしくもあり、如一の無神経さが痛いほどに伝わってきて、正直な話如一にも見習ってほしいところがあるのだがそんなことを言えば恐らく自分が痛い目に合うのは目に見えていたので、あえては言わないが、ひそかに思うのは勝手だろうし、口にしなきゃいいだけの話だ。蒼に声をかけられたのは、そんなことを考えていた時のことだった。
「千里ちゃん、今日も一緒に帰る?」
「あー、今日は伊織の家に稽古しに行くから一緒には帰れないなぁ。多分泊りがけになると思うから……。今度蒼も伊織に頼んでみたら?多分快く引き受けてくれると思うよ。それに蒼は剣道部のエースだからね。伊織も喜ぶと思うんだ」
「そうかな、じゃあ今度相談してみるよ。ありがと、千里ちゃん」
「いえいえ。大切な幼馴染兼過保護な幼馴染の恋路ですからね、応援しますよ、娘として」
からかうようにそう口にすると少し恥ずかしそうにほほを染めながら「ちょっと千里ちゃんっ!」と声を出す。普通にこうしていれば何分問題はないのだが、この男を怒らせると後がめんどくさいのを知っている。なのでとりあえず千里は話をすり替えるかのように、口を開く。
「まぁともかく、俺はお前を応援今のところはしてやるから、がんばれよ」
「今のところなの!?……娘が可愛くない」
「待て俺はいつからお前の娘になった」
「いつものことでしょ。というか千里ちゃんが言い始めたことでしょうよ……」
話のすり替えには成功したようで、いつの間にかいつもの話の戻っていた。授業開始を知らせるチャイムが鳴ると蒼は自分のクラスへと戻っていき、千里も黒板へと目を向けて一応授業を受けているふりを続ける。
先ほどの休み時間は思わぬ来客で思考の邪魔をされたのでこの時間は心置きなく考え事に没頭できるといっても過言ではない。やはり千里からすると縁楔はやばそうな雰囲気を漂わせていた。蒼と少し似ているが、それよりもはるかに危なそうだった。本人に聞いたところではぐらかせるのが関の山だろう。やはりあいつの本性を暴くなら追跡しかなさそうだ。
「さすがに警察とはいえ、こういうことするのは気が引けるんだけどなぁ……」
千里はそんな風にぽつりと呟いてから、深い溜息を吐くのだった

1ヶ月前 No.10

千里 @matunogirl☆JygYpuYd4vU ★HBceeKwFWA_yFt

11話
「お邪魔しまーす……。」
「ただいまー、父様。千里連れてきたよ」
その日の放課後。千里は伊織とともに橘家の訪ねていた。千里にとっては久々に橘家に訪ねるので、罪悪感やら後ろめたさがあったのもあり、橘家になかなかこれなかったのだが、伊織から誘われたのもあり、千里は後ろめたさを隠しながら伊織の後に橘家の敷居跨ぎながら久々に訪れた
「お帰り、伊織。識はもう帰ってきてるよ。……。千歳さん所の娘さんだね?大きくなったね」
「お久しぶりです。すいません、いきなり来なくなったりして……」
「伊織ねぇちゃんお帰りー!……あ、千里さんも来てたんだね」

橘識―――。橘伊織の弟で結構重度なシスコンな子だ。いち早く伊織が帰ってきたことに気が付くと飛びつきながら出迎えてくる。因みに伊織の後についでかのように千里にあいさつをする。それも懐かしいと思いながらも相変わらず仲の良い兄弟だ、と思う反面、羨ましい限りだった。千里にはもう家族がいない。なので騒がしくとも仲のいい家族を見るのは羨ましかった。
「ほら識。僕は母様に挨拶しないとだから一回離れよ」
「むー……。じゃぁ俺も母様に挨拶する」
「もー、仕方がないなぁ」

ドタバタとしながら玄関から家の中へと入っていく。その様子に呆然としていると射水が苦笑交じりに千里に声をかける。
「恥ずかしいところをお見せしたね……。あぁ、どうぞ上がってこちらに」
「いえ、大丈夫ですよ。あ、お邪魔します」

千里が橘家に上がり、居間に通されると、ほんの少しの違和感が生じた。詩織が見えない。おさいないころの記憶の片隅に残っている優しくしてくれた、あの人の姿が。しかし、この時間なら主婦特有の面倒なものに付き合せれているのだと考えるのが妥当だ。千里も何度かそういうのに付き合わされたことがある。もちろん愛想笑いですべてをやり過ごしている。詩織はもういないのではないかという最悪のことを考えてしまった千里は自分が嫌いになる。¨最低だ、俺¨そう思いながら居間で待っていると不意に目のまえにお茶が差し出される。
「ちょっと識!」
「だって千里さんずっと難しい顔してるんだもん。考え事しててもいいけど、難しそうな顔しないでよ。伝染するでしょ」
目のまえに差し出されたお茶を受け取りながら、伊織たちの話に耳を傾ける。
「そうだ、夕飯どうしようか。識、何食べたい?」
「うーん、カレーかなぁ。千里さんもいるしね」
「あー、別に俺に気を使わなくても……」
「父様の稽古は食べないと倒れちゃうからね。じゃあ買い物に行こうか」

そういうと二人は射水のもとへと歩いていく。千里もそれについていきながら、羨望の思いは膨らんでいった。今でも千里の父と母を殺した運転手の再調査は行われていない。そのせいもあってか、余計に羨ましかった。如一みたいに親に嫌われているのはあまりうれしくはないが家族がいるのはとても羨ましかった。
しかし、そんな千里の思いが消えるような踏み滲まれるような思いをするまであと二時間。

夕飯の時間になっても詩織は一向に姿を現さなかった。千里がそれに疑問に思いつつも口に出せないでいた。出してしまったら知りたくないような事実を知ってしまうような気がしたからだ。夕食後、織と二人きりになった千里は沈黙が辛かった。こういう時話題の引き出しが少ないことを嘆くことしかできないのが心の奥底から悔やんだ。それでも振り絞るように出した話題は──────────、やはりもっぱら武道の話だった。
「識君は……さ、何が得意なの?ほら、伊織は何でもできるけど、特化してるのは薙刀だろ?だから識君は何やってるのかなぁって」
「俺は弓道だよ。その次に薙刀で、三番目ぐらいに剣道」
「さすがだね、すごいや……。俺は逆に剣道しかできないからなぁ」
「へー……」

しかしその会話もすぐに尽きてしまう。こんな時の頼りの綱である伊織はなぜかその場にはいなくて再び居間には重たい沈黙が広がっていた。沈黙に耐えきれなかった千里は、何か話題を探すもまったく浮かばない。
出してはいけない話題はわかっていた。恐らくこの子も、基本家き伊織比金にいる男の名前だけは出さないのが正しいだろう。
「あー……」
「どうかしたの」

苦し紛れに出した声はしっかりと識の耳の届いていたらしくその続きをせかされる。まったくこの先なんて考えていなかった千里は少し困りながらも口を開く。
「ええっと、その……なんつか、うーんと……そう、織君は将来とか決まってんのかなーって思って」
苦しすぎるにもほどがあり、千里は冷や汗が止まらなかった。本当に自分の人と会話が苦手なのかと疑いたくなる程度には、本当に会話に脈略もなかった。
「……。別に何でもいいけど、警察だけはなりたくない」
千里はその言葉に息をのんだ。千里は警視総監だったが、そのことを知る人だって行内では限られていて、それこそ伊織は知らないはずなので、どこから情報が漏れたのかと不安に駆られる。そもそもの話、自分の部下が悪く言われているのを聞くと、なぜ?という疑問が浮かんでくる。その疑問はつい口からこぼれる。その言葉を聞いてか、聞かずか識は立ち上がると千里についてくるように言うと、居間から出ていき、千里に現実というものを見せつけた。
「二年前の大きな事件、多分千里さんも覚えてると思う。その事件の最終被害者だったんだ。遺体の一部はまだ見つかってない。警察に再捜査のお願いもしたよ。だけど偉い人がいないからって、俺が子供だからって、断られたんだ」
「そんな……」

悔しそうに識は唇を噛み締めながらそう言っている式の姿を見て、自分の部下に、そして母がいないと何もできない無能に腹が立った。なんで、という感情よりも、助けたい。そんな感情が先に生まれていた。────俺がやらなきゃ。ほかに誰がやるというのだろうか。そんな感情を持ち合わせながらしっかりと前を見据えると、小さくつぶやくように口を開く。「大丈夫、必ず見つけて事件を終わらせる」と。

まずは目の前にあること、目前に迫った体育祭のことを片付けなくちゃ。そう決意したところで伊織が千里と識のことを迎えに来た。そして稽古が始まったのだった

1ヶ月前 No.11

千里 @matunogirl☆JygYpuYd4vU ★HBceeKwFWA_yFt

12話
千里の今回の成果としては散々だった。そもそもほかのことを考えていたので当たり前と言ったら当たり前だ。伊織には千里らしくないといわれる始末で、明日は集中して取り組もうと決意をする。湯あみも終わりあとは寝るだけ、という時に千里と伊織は少しだけ話をしていた。話がひと段落ついて静寂に包まれたとき。ふいに千里は口が開く。いや、ぽつりとこぼした、のほうが正しいのかもしれない。その声は広すぎる部屋では寂し気で、静かな広間では寂し気に響いた。
「詩織さんのこと……。識君から……全部聞いたよ」
「そっか……」
「……もし、さ。今からその事件について納得に行かない警察のお偉いさんがその操作をするって言ったら、伊織はうれしい?」

千里のその声は震えていた。伊織には聞かれる理由がわからなかったが、それでも千里の震え交じりの声に真剣に答えるべきだと思った伊織はほんの少し悩んでから、間をあけて口を開く。寂しげに笑いながら。

「……うん、嬉しいよ、でも、そんなのは無理だよね……。だって警察は無能だし、高額な給料もらうだけもらって楽してるような人だもん。それにこの町のお偉いさんがいないしね……」
千里は伊織の言葉に唇を噛み締めながら耳を傾ける。自分が、許せなかった。こんな部下がいたことに気が付けなかったことに、こんな風に警察に傷つけ、荒れた市民がいたことに。
「もう昔のことだから話すけど、実はね僕、死のうとしてたんだあの頃」
「は……?」

伊織の言うあの頃とはつまり、伊織の秘密、知ってる人のほうが少ないとされている秘密の一つで、伊織は少し前、荒んでいた時期があった。別名『巴』と言われた彼女は周辺のヤンキーの中でも一番強かった。千里は彼女のことを知っていた、というのも千里もほんのちょっと前まではこの辺の地域の中でも強いほうのヤンキーだったので、直接対決をしたことはないが、二人とも一匹狼だったのでそれなりに有名だった。
千里のなんで、という顔に伊織は苦笑をこぼしながら、口を開く。
「いろいろ動機が重なりすぎちゃって。まぁ、なんでか知らないけど翔太と楔にバレてさ、すげぇ泣きながら怒られた。あそこまでマジ泣きしながら怒られたし、何よりもその時の楔は怖くて、こんなに心配かけたなら、もう死ねないなって思ってさ」

千里はその話を聞いて絶句をしていた。なにも、言えなかった。思うことはたくさんあったが、それを言葉にすることはないまま時間だけが過ぎていく。沈黙に耐えられなくなった伊織は慌てて口を開く。
「ほら、明日も早いんだから早く寝よ。お休み、千里」
「あ……、おう」

伊織はごまかすように部屋を出ていくと広間に千里は一人残されていた。死のうとしていた、その事実を聞いた千里は唇を噛み締める。悔しかった。少なくとも原因の一つは警察だろうし、自己嫌悪もあるだろう。
「とりあえず……下調べだけでもしておこうかな……」
広間に千里の小さなつぶやきは吸い込まれるように消えていくのだった。

四日後。千里はひとり家でぼんやりとしながら昨日の出来事について思考を巡らせながらメールを打ち始める。それは昨日のこと。千里は二年前の事件の連続殺人事件のあらましを調べた、その捜査に煮詰まっていたので散歩もかねての遠めのコンビニを訪れていた。その帰りだったのだ。楔も楔で予想だにしていなかったのだ。あの時はあの頃の伊織のことを考えていた。死のうとしていた時のこと。少なくとも止められててよかったと思っている。千里だって信じたくはなかった。あの楔があんな一面を隠しているとは思わなかった

『あーくっそ、本当太田邪魔なんだよなぁ……。何なの、あいつ。四肢引きちぎって町内一周でもしてやりたいわ……』
『へー……。なんか隠してると思ったらこんな一面を隠していたとは、ね。俺様びっくりー。……さて縁楔、一体どういうことなのか説明してもらおうか』
『な、何のことか僕わからないなぁ……。ち、千里ちゃん、何言ってるのかわかんないよ。ひ、人違いじゃないかなぁ。そ、それにぃ千里ちゃんのほうこそど、どうしたの??その格好……』
『ふん、俺はこの目と耳でちゃんと聞いたからね。それに橘伊織のストーカーねぇ?ははっ、これがばれたらお前はどうなるだろうね?俺のことは説明は長くなるし、あとでメールをするよ』
『っち……、おまえ、これ一言でもこのことを他言してみろよ。お前に明日の太陽はないからな。……で、いつから気が付いていた?』
『おーおー、怖い怖い。お前が言うとシャレにならなさそうだな。わかった、このことはお互いに他言無用だ。それも順を追って連絡を入れるよ。君は少し急ぎすぎだ』
『っち……。それでいい。てか、お前そのしゃべり方、うざい……』
『仕方ないだろう?仕事モードがまだ抜けなくてね、まぁ、メールはいつも通りにするから安心してくれたまえ』
それがつい昨日、起こったことだった。まさか自分の秘密まであの男にバレることになるとは思わなかったが……。それでも、心のどこか、楔のことを見過ごしてしまう自分がいることに一番驚いていたのだった。

「はー……、俺なんであんな奴のこと見過ごしてんのかな……」

千里は一度楔の質問に答えるためにメールの文章を確認をする。先ほどから打っていたのはこのメールの内容だった。千里は打ち間違いや、変換ミス、脱字がないかの念入りな確認を終わらせてから、スマホをベッドへと投げる。投げられたスマホは枕に落ちると、少しづつ沈んでいくのだった。

1ヶ月前 No.12

千里 @matunogirl☆JygYpuYd4vU ★HBceeKwFWA_yFt

13話
あれから一週間。千里の中での怒涛の日々は駆け抜けていった。この一週間千里は体育祭の準備、警察庁へ通って二年前の事件の詳しい資料探しに、考察、実行委員の仕事、といった具合だ。
千里は一つ溜息を吐くと一つの荷物を持ち上げる。その荷物は持てない、というほどではないにせよずっしりとしていて徹夜明けである千里の体には聊かきついものがあった。ぶつぶつと悪態をつきながら荷物をもって少しふらふらと覚束ない足取りで校庭を突っ切ろうとしていた時のこと。
「だぁああ……、死ぬ……。この野郎重いんだよ……、マジ徹夜明けの体にはくっそきつい……。」
「千里ちゃん元気ないねぇ、大丈夫?顔色も悪いし……あ、そうだその荷物、重そうだし僕持ってあげるよぉ」
「うわああ?!……て、なんだよ、縁君か。別に持てるから気にするなし」
「もぉ、無理しなくてもいいのっ!ふらふらしてるしぃ、顔色も割るから、僕がやってあげる!いいから貸して」

不意に楔に声をかけられ、千里は声を上げながら肩を揺らした。声をかけられた方へ振りかえると、楔が立っていた。楔はどうやら荷物を持とうと提案をしてくれていた。こいつが普通に自分なんかのためにわざわざ手伝いを申し出ることはないだろうと考え軽くあたりを見渡すと、その予想は的中だとでも言いたげにやや前方に伊織の姿を見つけていた。千里が大丈夫だ、というと楔は無理をするな、と言いながら千里の荷物を反対側から持つ。
「どうせおめぇ伊織にいいとこ見せてぇだけだろこのクソストーカー」
「ちょっと地雷おまえそれ伊織ちゃんにばらしてみろよ、ぶっ殺す。いいから貸せって。ふらふらしてんのも本当だし、顔色悪いのも本当だから。無理しすぎんのも俺はよくないと思うけど?とりあえず、これ、どこ置けばいいのか分かんねえから、地雷、案内頼むわ」

千里クソストーカー、と言うと楔も若干にらみながら半場無理矢理荷物を奪い取りながら、ぶっ殺す、というとすたすたと歩き始める。千里はその背中を見ながら、かすかに驚いていた。楔相手に、ドキッとしたことに。楔が思っていたよりも周りのことを見ていたことに。しかし頬が先ほどのことを思い出すと少しづつ赤くなっていくのが自分でもわかり、まさかの展開が頭をよぎった。
「まさか……なぁ?」

熱くなりつつある頬を抑えながら千里は先ほどの考えを吹き飛ばしながら楔の後を追って校舎に入ると、持っている荷物を置く場所まで案内をするのだった。
「っと、ありがとな、楔」
「……は?」
「え?」
「あ、いや、お前、前まで縁とか嫌がらせで縁君とか言ってたじゃねえか……。それが何で楔呼び?」
「何となく……」

千里がお礼を告げると、楔は目を見開きながら驚いていた。何のことで驚いているのかと思えば、名前の呼び方だったらしく、今までは縁予備だったくせに、というと千里は誤魔化すように「なんとなく」と告げた後に不意、と目をそらすのだった
「ほら、次姉妹校との連絡会議だろ?行くぞ」

千里はその思いに気が付きたくない、とでも言いたげにその場から逃げるように走って会議室までの行くのだった

1ヶ月前 No.13

千里 @matunogirl☆JygYpuYd4vU ★HBceeKwFWA_yFt

14話
千里が楔よりも一足先に会議室に入ると、姉妹校である桜庭高校の体育祭実行委員の生徒とわが校、桜才高校の体育祭実行委員も生徒は数人集まっており、それぞれに会話を交わしていた。伊織の姿を見かける。特に見知った顔もなかった千里はそのまま伊織のところに話しかけに行くことを決め、そちらの方向に足を向ける。
「よ、伊織。そっちは……、桜庭の人?」

千里が話かけると伊織は見知らぬ男子と仲良さげに話をしていて伊織のコミュ力の高さに驚きつつもチラリと彼のことを見やる。彼の眼はこちらに合わせることもなく、ずっと伊織に視線を向けたままだった。『なんだこいつ、失礼な奴だな』と思いながら、じっと見つめる。
「あ、ほらあれだよ。この間話した、四月一日徹守君。体育祭の実行委員なんだって」
「へー……、あー、俺は地雷千里。よろしくな、四月一日」
「うん、よろしゅう」

伊織に説明を受け、ようやく納得がいきながらもそこまで興味がなかった千里は適当に相槌を打ってから千里が名前を名乗ると。向こうもこっちに興味はないのか適当によろしく、と言われると、再び伊織と談笑をし始める。特に用があったわけでもない千里は二人から少し離れたところに腰を下ろす。何となくだがあそこにいたら確実に楔と徹守の険悪な雰囲気に巻き込まれるのも目に見えていたし、巻き込まれるのもめんどくさかった。
「地雷」
「んだよ、楔。伊織のところ行かなくてもいいのか?」
「べっつにー。伊織ちゃんに『千里が一人でいるから僕のところより千里のところにいてあげて?』って言われたから来てあげただけですが?」
「気ぃ使わなくていいのに」

ぼそりと小さな声で名前を呼ばれ顔を上げると少し不機嫌そうに声をかけてきた人物を確認すると楔だった。みんなの前、というのもあるのか顔こそはふてくされてはいるがおそらく腹の中ではとても人には言えないようなえげつないことを考えているのだろう。すでに口調だって怪しいのだ。とりあえずここはなだめておこうと思った千里は呆れ交じりに口を開いた。
「まぁ、楔のほうが有利だと思うよ、同じクラスの同じ学校なんだし。だろ?」
「そう、だよねぇ」
千里の言葉を聞いた楔は小さく笑いながら安堵したかのように小さく微笑む。その顔に少なくとも千里の心は高鳴るのだが、そんなことは微塵にも感じさせずに「がんばれよー」なんて応援の言葉を贈ると楔は
「お前って案外いい奴だったんだな。もっと冷たいやつかと思ってたわ」
「んだと……?失礼な奴だな……。まぁ、いつも無表情だし、仕方がないのかもだけどさ、いくらなんでもひどくね??まぁおれもお前の最初の印象は『何故意湯、人にこびへつらってバカじゃねぇの?』だし、高校入ってからは、『こいつ裏隠してそう、やばいやつ』だったからな。人のこと言えねえか。でもお前、思ってたよりもいい奴でよかったよ」
「お前も大概だよ……。……は?それどういうことだよ」
「そのまんまだわドアホ」

楔の第一印象は周りからよく言われることで慣れてはいたので特に思うことはなかったが、少し冷たい人だ、と言われるのはつらかったりする。それを考えたら恐らく千里の第一印象のほうが、ひどいだろう。千里の思っていたよりもいい奴、の発言には楔も不思議そうに首をかしげながら聞くと、千里から真顔で突っ込まれるのだった。

1ヶ月前 No.14

千里 @matunogirl☆JygYpuYd4vU ★HBceeKwFWA_yFt

15話
その後、飛山、遊原が会議室に現れ、会議は特に何事もなく終わらせることができた。
それから一週間後。体育祭当日を迎えていた。

救護テントに向かうといがみ合っている楔と徹守を千里は見つけると、面倒ごとに巻き込まれたくない一心でその二人を見なかったことにしながら素通りをしてテント中で作業をしてると肩をたたかれ、そちらを振り替えるといつの間にか伊織が立っていた。
「ちさと……、あれ、止めなくてもいいの?」
「あー、めんどくせぇし、そのままでもいいかなって」
「そっか……。千里が言うなら僕も放置した方がいいかな?」
「そうだねぇ、そのうちこっちに気が付けば二人ともこっちに来るだろうしそれまではここにいようよ」

千里はあの二人のいがみ合ってる理由も仲が悪い理由もわかっているので今は伊織を向こうに連れて行くのは余計に悪化するのもわかっていたので、軽く引き留めておく。そのあとに千里は口を開く。
「ところで伊織は借り物以外には出れねぇんだっけ?」
「そーなんだよねー……。千里は?借り物以外」
「俺はねー騎馬戦の上。なんか悠太が『お前が借り物以外でも活躍しそうだが、なんなら、騎馬戦に出れば楽しそうだな』という話になったからさ?」
「それで引き受けたのか……。そういえば、借り物競争の借りもの、蒼や冬木先輩が書いてるんだって。ほかにも舶来先輩とか、和斗君が書いたみたいですよ」
「うわっ……秋良とか和斗のお題はまだいいとして、蒼とか如一の当たったら最悪だな……。ぜってぇ無理難題だろ……」

伊織から借り物を書いた人の名前を聞いた千里は顔を露骨にしかめると蒼と如一のだけは当たりたくない、と口にする。その後も当たり障りない会話を続けていると話がちょうど話の区切りがついたところで楔と徹守がこちらに気が付いたのか、話しかけてきた
「おはちゃうやね、橘しゃん、地雷」
「あ、伊織ちゃん!それから千里ちゃんもおはよぉ」
「うん、楔おはよー。今日の体育祭、がんばろーね。徹守君もおはよう」
「おー、やっと楔こっちに気が付いたんか。お前らしくねぇなぁ。10分前からいたぞ?伊織。後二人ともおはよ」

千里と伊織が二人に挨拶をすると、徹守は楔のことを邪魔だなあという目で見ていて苦笑がこぼれる。ちなみに千里が挨拶を後回しにすると、「挨拶後回しかちゃ、雑な人だなぁ」と言っていたが特に千里はそれに何も反応せずに無視を貫いていた。そんな時だった。よく通る秋良の声で放送が入る。
『まもなく、桜庭高校、桜才高校合同体育祭が開会式が始まります。生徒の皆さんは校庭の真ん中に各学校のクラスごとに集まってください』
その放送を聞くと千里は楔と、伊織に声をかける。
「あー、ほら、体育祭の開会式始まるから伊織、楔、四月一日行くぞ」

そう声をかけてからテントから出ていくと、そのあとに続いて伊織たちもぞろぞろと校庭の真ん中へと向かう。途中で徹守は同じ学校のやつに連行されて行っていたが、「またあとでね、橘さん」と声を上げていた。その言葉を聞いた楔は千里にしか聞こえないぐらい小さな声で「あのクソ野郎……俺の伊織ちゃんなんだから気安く声かけてんじゃねぇよ……。てか来なくていいよ、伊織ちゃんは優しいからな……」とブツブツ呟いており、少しづつ顔も険しくなっていく。いち早く気が付いた千里は身長の関係から頭にチョップは落とせないので背中をどつくと、裏が出ていたことに気が付いたのか頬をくにくにとマッサージしてからヘラりとした笑いを千里に向けると千里は静かに親指を立てる。

千里たちが列に並んでから数分後、ようやく開会式が始まり先生の言葉やら、何やらが終わる。開会式は何事もなく平和に終わり解散、ということで自分のテントや応援席に各々が戻っていく中、借り物に出る女子生徒は桜花門に集まっていた。むろんそれは千里や伊織も例外ではない。ただそこにいた一人の存在に千里は驚きを隠せなかった。
「なんだよ、如一も借り物?」
「そっ、借り物以外には出ない予定。去年あれもこれもそれ持って出たら忙しくて死ぬかと思ったから今年は一つに絞ろうかなって」
「なーるほどねぇ」
如一は去年、様々な種目に出たはいいが去年疲れはてて、千里に迷惑をかけていた。それを学習してか、今年は一つだけに出ることにしたらしい。
「まぁ、お題は俺と蒼ちゃんで考えたのはかなり鬼畜になってるから頑張れよ、ちーさとちゃん」
「ほんとお前予想してた通りだわ……むしろ呆れを通り越して哀れに思えてきたよ」
「ちょ、千里それひどい」
千里が少し見直したのもつかの間、如一はからかうように口元をゆがめながら詰め寄ってきた。千里はその態度とかに冷めた目を向けながら口を開くと、その言葉を聞いた如一はひどい、と言いながらもニヨニヨと笑ったままだった。

アナウンスに従い、入場すると、レースが始まった。第一走は伊織だった。スタートのピストルが鳴ると同時に駆け出すと、周りをぐんぐんと追い越してお題へとたどり着く。お題の内容は『片桐先生の八句集』だった。字をよく見ると蒼の字で伊織は相変わらずだなぁ、なんて考えながら、片桐のところへ向かい、説明をしてから片桐に八句集を借りて無事に一番で何の面白みもなくゴールを迎えてしまったのであえてここでは何も語らないでおきたいと思う。
さて、問題はこの二人、地雷千里と冬木如一だったのだ。二人はものの見事に『好きな異性』を引き当てていた。
千里の滑り出しは好調だったもののお題を見た途端、硬直をした後に楔のもとへ向かうと『仲の良い異性』とうそをついて」ともにゴール、如一に至っては棄権、という形で幕を閉じた。自分で書いたお題に自爆するとは思っていなかったのか引き当てた瞬間の顔は面白かったと、千里は後々語っていた。

その後も特に大した唐突もなく平和に体育祭を終え、それぞれが帰路に就く中、一つの事件が起ころうとしているのをまだ、彼女たちは知らない、いや、知る由もなかったのだった。

1ヶ月前 No.15

千里 @matunogirl☆JygYpuYd4vU ★HBceeKwFWA_yFt

16話
体育祭終了後、千里はまっすぐ警察庁に向かっていた。本格的に伊織の母、詩織の事件について調べようと思ったからだ。千里は挨拶もそこそこに資料室に入ると、二年前の’’あの’’事件について調べていた時のこと。ふいに資料室の戸がたたかれた。千里が「どうした?」と問いかけると、切羽詰まったような声で信じがたいことを告げられる。

「警視総監!例の二年前の事件が再度発生しました!現場は西城駅西口西城市5番地です!」
「……は?」

かしゃん、と何かが落ちる音、それと同時に千里は資料室から飛び出して事件現場へと向かっていく。用意されていたパトカーに体を滑り込ませ、パトカーの中で軽く現場の状況を聞いた。千里が現場に着くとすでに到着していた軽く挨拶をした後に遺体の状態を確認する。被害者はどうやら千里と同じ高校生のようだった。しかし制服を見る限りは他校の櫻井高校の生徒のようだった。
「左腕が切り取られている以外に特に目立った外傷はなし、か……」
そう呟きながらまじまじと遺体を見つめる。被害者の近くに落ちていた生徒手帳をしろいハンカチで拾って名前を確認する。"七島 篠"と書かれていた。
「被害者の家族に連絡は?」
「今のところとれていません」
「そう引き続き連絡してみて」
「はい、了解しました、警視総監はどうなさりますか?」
「うん、しばらく現場を調べようかなっておもっているところだよ」
千里は隣に立っている佐々木に遺族との連絡の有無を確認したが、とれていないとのことだった。引き続き連絡を取るように千里は軽く命令を下した後に再び遺体へと視線を落とす。千里は小学生のとある事件をきっかけに千里は他人の血を見るだけでも過呼吸を起こしたものだが、今では知り合いでなければ過呼吸を起こさなくなった。それでもやはり血というのは見ていて気分のいいものではなかった。こみあげてくるものを若干こらえながら
「はぁ……にしても……、なんで左腕だけ……?ううん……、いまいちわからん……。二年前の事件との関連性があるのかもつかめない……。そもそも今回のターゲットは高校生……?」
千里はぶつぶつと小さくつぶやきながら事件について考える。もしこれが二年前の事件と関連しているのなら、対象は主婦とか働き盛りの人だったと、記憶していた千里は首をひねらせる。一筋縄では解決に至らなさそうだったので大きなため息を一つ吐くと学園に連絡を入れるべく一度現場から離れる。
慣れた手つきでスマホを開くと桜才高校に連絡を入れる。数回の無機質な呼び出し音の後に事務委員の声が聞こえる。千里は軽く自己紹介をしてから担任の遊原につないでくれ、と頼むとしばらく何かのクラシックが流れた後によく聞きなれた声が聞こえる。
「遊原だが……。地雷、どうかしたか?」
「そうですね、用件としたらしばらく学校に来れなくなる、というお知らせと、事件発生のお知らせですよ、事件。なのでほら、入学の時にお願いしたあの件、お願いできますか?」
「……。ということは結構大きめの事件か?どんな感じの?」
「そうですね、大きいといえば大きそうです。悠太は覚えてますか?ほら、あの二年前、この町を騒がさせていた猟奇的連続殺人事件……、ターゲットは働き盛りの男性や女性だったあの事件」
「あー……あの事件か。あぁ、覚えているよ。あの事件も胸糞悪かったが……、その事件がどうかしたか?」
「もしかしたら似たような事件が起きるかもしれないんですよね……。それも今度のターゲットは高校生」

千里が静かにそういうと電話の向こうで息をのむのがわかった。千里はあくまでも予想だ、と告げても遊原の険しそうな顔が浮かんでいた。千里はそのあとに申し訳なさそうに
「とりあえずしばらく学校には行けないです。それから伊織とか、俺の事情を知らない人に俺のこと聞かれても適当にごまかしておいてほしいんです。時機が来たら知り合いには話そうと思うので……」
「わかった。お前はこのまま捜査に入るのか?」
「当たり前じゃないですか……とりあえず早めに解決できるようにはしますので」

千里はそう言うと静かに電話を切って近くの壁にもたれかかってから一度深くため息をついてから、仕事に切り替え、すぐに先ほどの現場へと向かうのだった

1ヶ月前 No.16

千里 @matunogirl☆JygYpuYd4vU ★HBceeKwFWA_yFt

17話
「地雷さん!別のところでまた似たような手口で事件が起こりました!現場は桜庭市3丁目の裏路地です!」
「!!」

人間のいやな予感というのは実によく当たるらしい。当たって欲しくない予感が当たったものだ、と千里は思いながら、第一の事件現場に残す人員と第二の現場に向かうものの二手に分かれさせた。千里はもちろん、新たな現場に向かっていた。
「被害者の名前は笹原幸人(17)、的場学園の生徒のようです」
「……情報が早いな。さすが俺の片腕なだけあるね。期待しているよ、佐々木さん」

車を走らせてから数分後、千里のとなりに座った佐々木宗二朗がおもむろに口を開くと、被害者の情報を話していた。千里はその情報の速さに驚きながらニッと笑いながら感心していた。その顔を見ると宗二朗は満足げにほほ笑む。この男、佐々木宗二朗は千里が赴任した直後に千里の教育係兼補佐としてやってきたのだが、佐々木は正直な話、この数か月でメキメキと力をつけていった彼女には今のところ何も教えることはない、と思っていた。最近では逆に教わるようなことばかりで隣に座るこの小さな警視総監には頭が上がらなかった。それでも彼女のことが気に入った宗二朗は自分がもともと得意だった情報収集の技を少し前の事件の時に披露するとものすごく驚いた顔をして、「ありがとう、助かった」そう言いながらニッと笑った後に佐々木の提供した情報とともに千里が的確に指示を出したこともあった。それらはすべて小規模な事件で、こんな大きな事件は千里にとっては初めてだった。その初めての事件でまさか知り合いの命が狙われている、それに気が付くまであと数時間。

千里たち警察が現場に着くとすでに野次馬が集まっていたので関係者以外に引き払ってもらい、被害者遺族に至ってはパトカーの中でほかの刑事の人に聞いてもらっていた。その間に千里は遺体の状態を確認する。
切り取られていたのは腰で上半身と下半身は真っ二つに分かれていた。千里はその様子を見て顔を青ざめさせながらまじまじと見つつも胸につっかえている気がしていた。その答えはすお越し前に聞いた覚えがあって、のどまではでできているのに出で来ないのだ。
「なんだっけ、そう、伊織……伊織に聞いたんだよ……この間……あぁ、くそっ……ここまで出かかってるのに……。何だっけ」
悔しそうに顔を歪めながら頭を掻きむしる。二年前と同じところは体の特定の一部が切り取られている、というところで違うところは二年前は伊織の母親であった詩織さんの同じぐらいの年代の人……、専業主婦やサラリーマンといった働き盛りの年代だった。今回は伊織や千里といった高校生がターゲットになっていた。
「あと少し、あと少しで何かつかめそうなのに……」
左腕、腰、二年前は左腕、腰、足────。どこかで聞いたことがあるような気がしてならなかった。そうだ、あの時だ。千里は不意に思い出す。この間見学をしに出かけたときに“薙刀を行う上でとても大切なところだ”と伊織が話していたことに。あの頃の詩織さんの薙刀の腕前はうっすらとしか覚えていないが、弱いと言われていたが、それでも初心者に比べたら強いほうだろう。それから、特に気に留めていなかったのもあり、しっかりとは覚えていないが一時期、如一の母親と、伊織の母親は“今の如一たちのように戦っていたいたのだ。
「まさか……。いやいや……」

そこまで考えると、千里は一つの嫌な予感に至っていた。できることなら当たって欲しくはない予想なのだが、それを肯定づけるかのように無残にも橘詞織は殺されていた。千里は一度苦虫をかみつぶしたかの様な顔をした後に二人の人に協力を求むメールを送るのだった────。

1ヶ月前 No.17

千里 @matunogirl☆JygYpuYd4vU ★HBceeKwFWA_yFt

18話

あれから3日が経った。毎日2人ずつ殺害され、被害者は増える一方で犯人像は依然としてつかめずにいた。事件についてだが、進展という進展はあまりなく、唯一の進展としては、冬木家のメンバーの中で化学に詳しく、強力な助っ人で頭の回転の速い六合亜留斗の介入で判明したことは、“切り取られた遺体の一部は溶かされているかもしれない“ということのみだった。亜留斗は同い年にして、天才科学者兼探偵と、多忙な生活をしている。因みに亜留斗の通う高校は桜才高校の姉妹校である櫻井高校に在籍している。この間開かれた合同体育祭には事件の調査という名目で参加していなかったが。

「久しぶりだね、伊織。ごめんな、いきなり押しかけちまって。楔から聞いたんだよね、“伊織ちゃんの家のアジサイがきれいだよぉ”って」

千里は珍しく伊織の家を訪ねていた。その理由は伊織の家にあるアジサイの花に違和感を感じる、という楔の連絡で気になったからだ。なので捜査、という名目で訪ねていた。もちろん伊織には千里が警察ということは秘密なので普段着で、だが。伊織には「庭のアジサイがきれいだから見たい」と言って見せてもらっていた。

「あれ、地雷さん……?」
「あ……射水さん。稽古の日以来ですね」
「最近学校休んでる、と伊織から聞いたが大丈夫かい?」
「えぇ……今のところまだ戻れる目途は立ってないですが近いうちに戻れるといいかなとは思ってます」
「時期が時期なせいで、千里のひどい噂、流れてて……。聞いてる?」
「ん―、蒼から何となく。気にすんなって。ところでさ、アジサイ。わぁ……本当にきれいだな」

千里と伊織が軽く談笑をしていると顔を出した射水に声をかけられ千里は少し困ったように笑いながら稽古の日以来、と言って軽く挨拶をした。伊織の言う噂、というのは蒼から軽く聞いた話によると千里がこの事件の犯人でみんなのことを狙っているという千里からすればくだらない、で終わるような内容だった。
千里はその話はそこまでだとでも言いたげにアジサイへと目を向ける。庭に咲き誇っているアジサイはとても目を奪われた。その中でも特に目が奪われたのは、“赤いアジサイ”だった。
「赤いアジサイ……?」
「そう……。詩織が死んでからこの辺に咲き始めてね。綺麗だろう?」
「そう……ですね」
千里がつぶやくように発した言葉に射水が答えた。
アジサイの花は土の成分によって花の色を変える。酸性であればあるほど花の色は青くなるし、アルカリ性であれば花の色は赤くなるといわれていた。そのことを知識として蓄えていた千里は一つの予想と最悪の結末に背筋が冷える思いでいた。考えたくもない一つの予感。
一つは、橘詞織の遺体はここにある、という事と、それからもう一つは前から考えてはいたが、できることなら当たって欲しくない、正解であるなと願っていた事実である今回のターゲットは伊織だという事だった。この間から思っていたが当たって欲しくないものほど現実になるらしい。

ある程度アジサイを眺めた後に千里は礼を告げてから、橘家を離れる。深い溜息を落とした後にふっと前を向く。いつから見ていたのか隣には亜留斗が立っていて、「やっと気が付いたのか」とでも言いたげに気だるげにしていた。どうやら自分よりも先にこの家を見て遺体のありかについて察していたのだろう。千里は隣を歩く亜留斗のことを軽く睨みつけながら口を開く。
「わかってたのかよ」
「まぁね。君ら少し遅いんじゃないかい?」

その言葉には少しとげが含まれていた。しかし千里としてもそれは思っていたことなので、あえてそこには何も言わずに話をすり替えるように口を開く。
「にしてもあの場所じゃ……あんなのひどすぎる」
「そこまで橘に恨みのある人間なのだろうね。犯人は」

千里の悲痛な声を聞くなり亜留斗は呟くように、それでもしっかりと意思を持った声でそう口にする。それっきり千里も黙りこくり、口を開かないでただひたすらに警察庁までの道を歩き続けた。

1ヶ月前 No.18

千里 @matunogirl☆JygYpuYd4vU ★HBceeKwFWA_yFt

19話

この事件が始まって間もなく一週間がたとうとしていたが千里は捜査に詰まっていて、一人捜査室で頭を抱えていた。
そんな時に捜査室に一人の人物が入ってくる。
「ああ、そうだ。僕はもう犯人が分かった」
「はぁ?!」

その人物は亜留斗で、彼女は捜査室に入るなり、そう言い放った。千里はその言葉を聞いて驚きの声を上げる。亜留斗はその声を聴いてさも迷惑そうな顔をしながら口を開く。
「うるさいなぁ……、少しは静かにできないのか……!?
……というよりもまだ解決できていないのかい?さすがに遅すぎやしないかい?」
「はっ……?!いやいや……、誰のせいだと……!てかほんと、お前失礼だよな……!」
「事実を言ったまでだよ……。今回の最終被害者は「橘伊織」ってのはわかってるんだよ」

千里は亜留斗の言葉に重ねるようにイラついた口調で声を出すと、それを聞いた亜留斗は「なんだ、そこまでわかっているのに犯人はわからないのか」と少しおどけたかのように口を開く。千里はその言葉に怪訝そうに顔をしかめる。
「よくよく考えてくれたまえよ。詩織さんは“冬木家とかかわりを持っていて、冬木の母親と試合をして負けていた”さて、誰かさんと似ていないかい?」
「……?!」
「あまりにも近しい人物だから盲目になることもあるだろうね。何しろあいつは、忠義心だけは天下一品だ」
「……っ」

亜留斗の言葉に千里は息をのんだ。理由としては、一人の人物像が浮かんできたからだ。もし、やるとしたらあいつしかいなかったからだ。
千里はしばし言葉に悩んだ挙句、重々しい様子で口を開いた。
「……どうなると思う?」
「動くだろうね、近いうち。少なくとも今週中には動くと思う」
「こそこそと、何の話してんの?」
声を潜めて話をしていると、ふいに声をかけられる。後ろを振り返ると、噂をすればなんとやら冬木如一が立っていた。
「まぁ……犯人についてかな?」
「そうだね。まず如一は土下座の準備と練習をすることをお勧めするよ。俺が神に誓って言ってあげるよ。お前は本気で伊織に土下座をすることになる。冗談でもなんでもなくすることになるよ」
「は?」
如一は千里の言葉を聞いて少し顔をしかめる。冗談だと思いたいようだった。如一は救いを求めるかのように亜留斗に目を向けてもやれやれといった顔をしているだけで否定はおろか肯定もしてくれない。はあぁ、と深い溜息を落としてから、零に顔を向けながら、零に声をかける。厳しい目つきを向けながら。
「とりあえず、零。君は先に家に帰ってくれるかな?これから俺らは話し合わないといけない」
「え……。わかりました。では、如一様終わりましたらいつでもお呼びください」

零はそう言いながら捜査室から出ていく。亜留斗はその背中を厳しい目で見つめながら零が見えなくなったのを確認してからそっと口を開いた。
「地雷とともに話し合った結果、僕たちは犯人が分かった。その結果から言わせてもらうと、冬木、お前は地雷の言う通り、必ず橘伊織に頭を下げることになるだろう」
亜留斗がそういうと、頬を膨らませながら口を開く。
「そうは言うけどさ、俺があいつに頭下げるようなことしてねぇもん……」
「はぁ、なんつーか、こういう時の如一って……、普通に馬鹿だよなぁ……」
「同感だね。冬木如一、お前は大バカ者だよ。君は少し人を疑う、という事を覚えた方がいい。信用できるのは少ないと思った方がいい。わかったね」
「えぇ……」

亜留斗の言葉に千里も小さく頷きながら、口を開く。
「とりあえず、犯人は早くても明日、一番のターゲットを殺しに来るだろうね。こっちもあまり人員は避けないから、桜才高校から一人、助っ人を頼まないとなぁ……」
「あまり乗り気じゃないようだね?」
「そりゃあね。あくまでも俺は警察だし、市民をわざわざ危険にさらしたくはないね」
「その依頼は俺が頼む。千里、任せて、和斗でいいかな?」
「まぁ一番妥当かな。とりあえず、如一、君にはもう一つ頼みたいことがある」

会議は淡々と進んでいき、如一も最初は乗り気ではなかった頼みも一つの言葉で面白いぐらいに頼みを聞いてくれるようになり、同時に吹き出してしまった。
因みに和斗には如一から『和斗、お前に頼みたいことあるんだけど、聞いてくれる?そしたらねー千里の家の近くの警察庁きてくれると助かるな』と呼びだして事のあらましを説明。
快諾し、大いに乗り気で頼みを聞いてくれることになった。
「まぁ、とりあえず明日はさっき決めた作戦通りでよろしくお願いします。じゃぁ、明日、作戦決行時間は、如一の連絡から、という事で。和斗には悪いけど、作戦に協力するに当たって、怪我とかするかもしれないけど、その時はごめんな。なるべく和斗には手出しさせないようにするから……。じゃあ解散」
千里は話がまとまったことを確認し、解散、と号令を出した。
その後に和斗に声をかける。
「あ……、和斗。こんな無茶な作戦、乗ってくれてありがとうな。あと、この作戦なんだけど、蒼には秘密にしてほしいんだ。俺また怒られる……。それから、かなり遅い時間だが家まで送らなくても大丈夫か?如一家の使いの者に車出せる人が他にもいるからそいつに出してもらうように頼むけど……」
「そうか……。お前は相変わらず蒼に怒られてるのか?変わらないな……。まぁ、わかった。このことは秘密にしよう。いや、送らなくて大丈夫だ。ここから桜才駅の行き方さえ教えてくれればあとは帰れる。俺の家は意外と人通りが多いところにあるからな……」
千里はそれを聞くと、よかった、とふっと微笑む。

作戦決行まであと少し。

1ヶ月前 No.19

千里 @matunogirl☆JygYpuYd4vU ★HBceeKwFWA_yFt

20話

作戦決行当日。
その頃学校では相変わらず千里の悪い噂は途絶えなかった。
「ねー、秋良もさぁ騙されてたんだって!目ぇ覚ましなよ!殺されちゃうよ?」
「千里はそんなことしない……朋ちゃんは千里のこと何も知らないじゃん……、なにも……何も知らないのに勝手なこと言わないでよ!」
「ご、ごめん……」
秋良は気分が悪かった。千里のことを何も知らない癖に勝手なことを言われているのは。もちろんそれは秋良以外も例外ではなかった。蒼なんかはイライラしているし、真実を知る楔としては、胸糞悪い、と思うしかできなかった。伊織もあまりいい気分ではなかった。
「千里ちゃんの悪い噂、絶えないな……」
「蒼……。うん、昨日ね、千里がうちに紫陽花見に来たんだ。綺麗だねって。疲れたような顔してたけど、人を殺すような人がそんなこと言うことないと思う……」

蒼は伊織のその悲しげな横顔を見ながら、苦し気に顔をしかめる。
────ねぇ、千里ちゃん。まだ伊織ちゃんや、秋良ちゃんには秘密にしていないとかな……?僕、つらそうな顔見るのつらいよ……。
そんな風に思いながら、蒼は千里から許可を下ろされていないのもあり、下手に話せないのもあって、余計につらかった。伊織から聞いた紫陽花の花については蒼も楔から聞いていたので、千里が忙しい合間を縫って伊織のもとを訪ねたのかと思うと、苦笑がこぼれた。また無理して睡眠時間を削ってまで捜査をしてるのだと思うと今度はため息がこぼれる。それを見た伊織は「蒼ちゃん忙しそうだねぇ」なんてけらりと笑いながら言うもんだから自然と口元がほころぶ。蒼はまだ知らない。今回千里が受け持っている事件の全容を、伊織が狙われていることも、その護衛に和斗が付くことも何も知らない。知らされていなかった。それは楔も同じ事で、楔に頼まれていたことは“何かおかしなことがあれば、連絡が欲しい”ただそれだけだった。
二人は知らなくていいことだから、千里はあえて教えていない。それから、この事件の全容を知れば、この二人は危険だ、という千里の判断で教えていないというのもあった。
「伊織」
「あ、和斗君。なんで竹刀……持ってきてるの?」
「あっ……、蒼。ついいつもの癖でな……。たまたまだ」
そこに和斗が竹刀を持って現れる。和斗は蒼に竹刀を持っていることを突っ込まれると、少し戸惑いながらも一生懸命考えた言い訳を言葉にする。蒼は乗っとくしてなさそうにしながらも「ふぅん……」と相槌を返していた。蒼と和斗のじゃなしにひと段落が付くと伊織が和斗に声をかける。
「そういえば和斗君は僕に用があったんだよね?どうかしたの?」
「今日伊織の家の方にたまたま用事があるのだが、あそこら辺の地理はよくわからなくてな……」
「そういう事だったら、僕に任せてください!」

伊織は用事を聞くと任せてください、と言いながら笑った。和斗もその笑顔を見ながらふっと微笑みながら「あぁ、任せた」そう言って伊織を守るのは任せてくれ、そう思いながら、今日の放課後を待つのだった。

────事件が起こるまであと三時間にまで迫っていた。

事件が起こる20分前のこと。六合亜留斗は零と話をしていた。
「おい、六合。あれはいったいどういうつもりだ」
「どういうつもり……とは?一体どういうことだ?」
「しらばっくれるな」
「生憎、あれが僕の仕事であり、やらなきゃいけないことだ。たしかに本業は科学者だけどね。見損なったよzero、僕の化学をあんなことに使われるなんて不快極まりないね。見損なったよ」
「お前も変わらないだろう?結局はお前も共犯者になる」
「そういわれると元も子もないんだがね。まぁその時はその時だ。しかし……、君も冬木に見捨てられて臓器がなくなるのも時間の問題じゃないか?にしてもなぜ、そんなに橘に固執をする?」
「あいつらは冬木の名を侮辱した!それだけじゃない、橘伊織!あいつのせいで俺の組はつぶれた!あぁ、本当害悪極まりない……。でもそれも時期に終わる。橘を殺害した後に遺体は燃やしてその灰を庭に撒いた後でも自首をしておくよ。骨は適当なところに捨てておけばいい」
「……それはどうだろうね」

その会話が終わるころには伊織たちは下校時刻になっていた。如一は後ろから張り込んで伊織の様子を絶えず報告をするのだった
「じゃぁ和斗君、行きましょうか」

駅までは蒼や翔太も一緒にいたが翔太は自転車で駅まで来ているし蒼は家が駅に近いのもあり、歩いて駅まで来ている。そもそもの話蒼の家は伊織の家とは真逆だ。伊織は西口で蒼は東口だった。よって伊織と和斗は自然と二人きりになれる。和斗はあまり違和感を感じさせぬように気を配りながらあたりを警戒していると、
「和斗君!」

不意に後ろから声が聞こえ、伊織を庇うように和斗は立ちふさがった。ZEROは和斗の姿を認めると苦虫をかみつぶした様な顔をしながらこう、口にした
「……君さぁそこ、どいてくれない?邪魔なんだよ」
「お前がこの連続殺人事件の犯人か……」

1ヶ月前 No.20

千里 @matunogirl☆JygYpuYd4vU ★HBceeKwFWA_yFt

21話

千里はその頃電柱の陰に隠れていた。如一の連絡を受け、千里が襲われるとしたら、人通りが少なく、逃げやすいポイントを狙うだろう、とのことで、先回りをしていたのだ。千里は今日伊織に警察をしていることを、それもトップに立っていることを話すのだ。先のことを思うと胸が苦しいし、この後のことを考えると、緊張なんてもんじゃなく、若干手が震えていた。千里は隣に立っている亜留斗にふと声をかける。
「にしても……。緊張してきたわ……。いろんな意味も込めて。大丈夫?俺生きてる?」
「……馬鹿なのか?安心してくれたまえ、お前はいつも通りだ」
「え、なんかそれすげぇ馬鹿にされてる気分」

そんな風に話をしていると、やや後方から如一と、零、それから和斗の声が聞こえる。
『和斗君!』『……君さぁそこ、どいてくれない?邪魔なんだよ』『お前が子の連続殺人事件の犯人か……』
それを聞くなり千里と亜留斗は静かに頷き合う。千里が動き出したとほぼ同時に零は地をけった。それとほぼ同時だった。

「そこまでだ!ゼロ」
「如一様っ……?!」
「はぁ……?!」
如一の声が飛んできたのは。伊織は何が起こっているのか、まったくわかっていない、とでも言いたげに困惑していた。それもそうだろう。まさか自分が狙われているなんて微塵にも思っていないのだから。亜留斗はいつの間にか伊織の後ろに回っていたのか、伊織の腕をひてその場から離れさせる。そこにも困惑えお見せる。何が起こっているのか理解が追い付いていなかった。そんな伊織の目に映ったのは駆けつけた如一がそのまま零を拘束するところのみ。
「おいっ千里!」
「わかってるっちゅーの!」
「え……」
そして、警察の格好をした千里の姿だった。伊織は信じられなくて後ずさりをした。それを千里はしり目に見ながら、押さえつけられていた零の手首に手錠をかけた。
「藤塚零、4時50分銃刀法違反及び殺人の容疑で逮捕する」
そう静かに告げた後に千里は静かに伊織に振り返る。伊織はじりっと一歩後ろに下がった。こうなるとはわかってはいたがやはり少し心に傷ができる。如一は慌てたかのように伊織に声をかける。
「待て待て、少し千里の話を聞いてやってよ」
「は……?」
如一の言葉と、亜留斗に腕をがっしりとつかまれているのもあり、身動きが取れなくなった伊織はおとなしく千里の言葉を聞くことを決めると、千里は小さく笑いながら「ごめんな」と謝罪を入れた後に小さく咳払いをしてから軽く背筋を伸ばしてから伊織の見たことがないような顔をしながら改めて自己紹介を受けた
「改めて、自己紹介をさせていただきます。今年からこの県の警視総監に配属しました、地雷千里です。紹介が遅れてすまなかった」
「……何?千里、馬鹿なの?僕が警察嫌いなの知ってるよね。わざわざ嫌われに来たの?」
「いずれ、ちゃんと話そうって思ったから。この事件が始まったときから嫌われたらそこまでだなって。それから……」

千里は伊織の瞳が厳しいものだ、という事はわかっていた。それでも目をそらすことなくまっすぐと伊織のことを見つめる。嫌われたらそこまでだ、といった後に続けて口を開く。
「二年前の事件!部下が申し訳なかった!」

そのあとに続いた言葉は、全身全霊の謝罪だった。千里は人前だという事も忘れて頭をすごい勢いで下げた。その行動に少なくとも伊織は目を見開く
「もし、伊織から詩織さんの話を聞いてなかったら、……また過ちを犯すところだった……。本当に申し訳ないです」
「……馬鹿じゃねぇの!?僕がそんなので嫌うわけないでしょ、助けてくれてありがとうね」

千里はその言葉を聞いて一度顔を上げた後瞳を少しうるませてから、再び「すいませんでした!」そう言いながら頭を下げる。

30日前 No.21

千里 @matunogirl☆JygYpuYd4vU ★HBceeKwFWA_yFt

22話

伊織は再び千里の謝る姿に少し吹き出してしまう。そんな時だった。今まで黙っていたとある人が伊織の名前を口を読んだ後に、頭を勝ち割るのかという勢いで零の頭を地面にたたきつけた後に、自分も負けじと頭を下げて土下座をしたのは。
「伊織」
「はい、どうかしたんですか?冬木先輩」
「……うちの組のものがすんませんした!」
「……ハァ?なんで冬木先輩が謝る必要が……?」
「詩織さん殺したのも、こいつなんだ……。こいつ、零っつーんだけど……俺の家のもので、俺の組のものなんだ……。俺の監督不行き届きのせいで……」

伊織は如一の謝罪をみるなり訳が分からない、とでも言いたげに口を開いた。その問いかけに答えるように如一は再び口を開く。彼女の瞳には怒りや、謝罪の色を含んでいる複雑な色を讃えた瞳が伊織のことを視界にとらえる。
「ですが、如一様……、こいつは如一様を愚弄して……」
「うるせぇ!お前も少しは反省しろよ!いつこいつが俺のことを愚弄したってんだよ!それにいつ俺がお前に“伊織を殺せ”って言ったか?!俺がお前に頼んだことは連絡を入れたら迎えに来て欲しい……、それだけじゃなかったか?」

そう言いながら冷たい瞳を零へとむける。不意に何かに気がついたかのように口元を三日月のように歪める。千里はその顔に背筋が冷える思いでいっぱいだった。その後の提案にも千里は背筋が冷えるような思いだったが。
「なぁ、伊織。こいつのこと、好きにしていいぞ。あいにくそこには警察のお偉いさんがいるしな。殺人の一つや二つ、もみ消してくれるよ。やってくれるよなぁ?地雷さんよ」
「別にいいぜ。俺はこの場を見ていなかった、もしくは襲われそうになった所を返り討ちに遭ったのではないかっていくらでも浮かぶんでね。もちろん、お嬢様、そのときは手伝って貰いますよ。さて、どうする?伊織」

いきなり話を振られた千里は内心驚きつつも余裕そうな笑みで“別にいい”と許可を下ろす。もちろん犯罪のもみ消しは簡単ではない。色々面倒くさいのだ。それでも千里は許可を下ろした。零は懇願するような瞳で如一に縋っていたが鬱陶しそうにその手を振り払う。伊織はにっこりと意味ありげな笑みを浮かべてから口を開く。
「殺しはしないでおいてあげます」
「伊織ちゃん、やっさしー」
如一が茶化すように口笛を一つ吹いた後にそう口にするとその後に続けて伊織の取った行動は、思い切り力の込めた回し蹴り、だった。その回し蹴りは見事に腰に命中する。伊織はその後に今まで見せたことのないぐらい恐ろしい笑顔を見せながらこう、口を開く
「だって痛みは長く続いた方がいいじゃないですか。あぁ。早々、たぶん腎臓の一つ、機能しなくなりましたよ。助けたいなら移植するしかないんじゃないですか?そこは冬木先輩達に任せます」

伊織はクスクスと笑いながらそう言うと、如一は面白そうに口元を歪める。
「はっ……良かったじゃん零君。やっさしー伊織のおかげでこの場で殺されなくて。俺だったら間違いなく殺しちゃってた。ほら伊織様にありがとうございますっっていわないとだよな?どうするー?亜留斗ぉ、こいつ、お前の仲間なんだろー?助けてやろう、とかないの?」
「ないね。そもそもの話し、彼の医療費に金を回すぐらいなら、そのお金は橘家に慰謝料として支払った方が賢明だと僕は思うんだがね」
「それもそうだな」

亜留斗と如一の会話に零は顔を青ざめさせる。
「そ、それだけは勘弁してください……!如一様……!!」

その叫びを無視をして、今まで空気だった和斗がいつのまにか呼んでいたパトカーに容赦なく投げ入れる。

こうして連続バラバラ殺人事件は解決をしたのだった。

「零のこと、本当に悪かった。改めて謝罪を入れさせて貰う。その、識君にも謝罪を一樹にも謝らせるし、組のもん引き連れて謝りにこっちからも行く。それから親父さんにも」
「別にそこまでして貰わなくてもいいんですけどね。冬木先輩がしたいならして下さい」

申し訳なさそうに如一がそう言うと伊織は少しあきれつつも、、先輩の勝手にしろ、の言葉に「最初からそのつもりだっつーの」と言いながら如一はさっさと歩き始める。
恐らく、向かった場所は自分の弟もいる識の所だ。普段やっていることは適当でも自分の組のものが間違いを犯したときの如一の責任感は計り知れないものだった。
「とりあえず、俺はこいつを刑務所に送ってくる。それから、射水さん、それから識君にちゃんと謝罪をさせて欲しい」
「ああ、もう……、千里も冬木先輩も面倒くさいですよ。勝手にして下さい」

伊織はそう言いながら「和斗君、行きましょう」と声をかける。
「いや、俺の用事というのは……」
「伊織の護衛だったんだよ」
「そうだったんですか?道理で竹刀持っていると思いましたよ……。それにちょっと様子がおかしかったですもんね」
「むむ……」

千里が横やりを入れるように口を挟むとどうやらどこかおかしいと思われていたようで、少しばれていたらしい。こりゃあこいつに役者はむかねぇなとか考えながらパトカーに乗り込み、零を刑務所まで送り届けながら、とある人にメールを飛ばした。“無事に、事件は解決した”やたら簡素な内容だったが来れでも十分だろう。そう思いながら。

29日前 No.22

千里 @matunogirl☆JygYpuYd4vU ★HBceeKwFWA_yFt

23話

その後、千里もあのときの事件の担当者と、識に対応したと思われる職員を引きつれて識の元に行き、謝罪を入れた。最初は識も驚いていた。話が分かると厳しい目つきを千里達にむけていたが、後に少し盛大なため息と共に「もういいよ。……伊織姉ちゃんを助けてくれて、ありがとう」とお礼を述べる。
如一も如一で橘家と識の元に謝りに行ったらしい。もちろん千里も射水さんと伊織にも改めて謝罪をした。射水は千里が千歳の後を継いだのだ、と言うことを告げると、目元を優しげに細め、「そうか、あの小さくてお母さんの千歳さんにひっついていた地雷さんが……。月日がたつのは早いね」
そう言いながら笑った。
「本当はこうしてもっと早くから言うべきだと思っていたんですが、伊織から詩織さんのことを聞いて。これ解決するまでは話せない、と思いました。改めて謝らせていただきます。うちの組織のものが無礼を働きすいませんでした」
千里は静かにそう言いながら頭を下げた。射水は困ったように「顔を上げて」と言っていた。それでも千里は中々顔を上げられずにただただ頭を下げ続けることしかできなかった。

あの事件が解決して久し振りの平和な金曜日を迎えた。周りはわずかに騒がしくなるが、千里はその賑わいを無視して蒼と共に校舎へと向かう。
「千里!相談があるんだけど……。もう伊織にも断られていて、後はもう千里に頼るしかねぇんだよー!」

教室に入るなり翔太に懇願するかのように涙ながらに訴えてくる。千里は内心面倒くさそうなことになりそうだなぁ、なんて考えながら「……お、おう」と答える。翔太はその返事を聞くとぱぁと顔を輝かせる。
「じゃ、あんまり人に聞かれたくねぇ話だし、2人で屋上行かね……」
そう言いながら頭をこてりとかしげる。てめぇは女か、と言いたくなるのをこらえて千里は「しゃーねーなあ」と言ってから荷物を席に置いてから翔太の元へ駆け寄る。

「じゃ、千里行こうぜ。あ!蒼は来るな!ぜってぇからかってくるし!」

そう言いながら翔太は千里の肩を押しながら教室を出て行く。千里は肩を押されながら後ろを振り返ると、なんとも言い難い複雑な表情をした蒼が立っていたのだった。
「ねぇ、翔太。僕は本当に君が嫌いだよ。何でか分かる日は来るのかなぁ……」

連れ去られていく千里の背中を見送りながらいらだった様子で髪を掻き上げると、一つ多きなため息を吐くのだった。
視点を戻して、その頃千里と翔太は。
「……で?わざわざ蒼が来るのを拒んでまで連れてきたんだから、それなりの相談なんだろうな?」

千里は相談内容はなんとなく分かっていたがあえて自分の口から言わせようなどと言うかなり鬼畜な事を考えているのだがそんなことは当然思わさない口調と態度でやり過ごす。そんな風に問いかけると、翔太はしばらくもじもじとした後にぼそりと呟くように口を開いた。
「あ、明日秋良と出かけるから千里にも付き合って欲しいなって……」
「……イヤイヤ……翔太。普通に言っていいか?……あのさぁ……何で俺も行かないとなの?君のデートだよね?そもそも俺一人じゃカップルの邪魔してるのと同じだよお邪魔虫じゃん」
「かっ……そ、そんなんじゃねぇよ!……それから千里一人じゃなくて、後もう一人男子が来る予定だよ」
「はぁ?誰だよ。人によっては断るぞ」
千里の素早い突っ込みに一度顔を真っ赤に染め上げてから否定の言葉を叫んでから、むすりと頬を膨らませながらもう一人いることを告げる。千里は誰だ、と聞くと翔太は少し悩んだそぶりを見せてから、口を開く。
「んー……そこは伊織に任せてるからなぁ……。まぁとうじつのおたのし言っていうやつだよ」
「うん、ヤダ」
なんとなく翔太の態度にいらっときたのでにっこりと笑って断りを入れるとあからさまに翔太は涙目になるとうるうるとした瞳で千里のことを見つめる。“うわ、うぜぇ”内心ではそう思いつつも立ち上がり、「じゃあ俺教室戻るね」というと翔太は腰のあたりにまとわりつくと、「おねがいです助けて下さい千里さま!」と叫び続ける。いい加減に人の視線が辛くなってきた千里は若干投げやりに了承をすると、大げさに喜び始める。子供かよ、と思いつつも千里は苦笑をこぼした後にそれに歯止めをかけるのだった

26日前 No.23

千里 @matunogirl☆JygYpuYd4vU ★Android=W1VemU3zJF

23.5話

「父さんも母さんも何で────。」
“認めてくれないんだ”その言葉は空を切り、紡がれることはなく次に紡がれた言葉は自虐じみた謝罪の言葉、だった。

「あぁ、ごめんって。俺が悪かったよ。聞いた俺が馬鹿みたいだ。底脳でごめんなさい。生きててごめんなさい。出来損ないでごめんなさい。女に生まれてごめんなさい」

“失敗作、女はいらない、お前は出来損ないだ”そう言われながら男として育てられた少女は女として生きていくことはおろか、愛し方、愛され方を学ぶことをあきらめ、愛すること、愛されることを辞めて生きていくことを決めました。

「まま……パパ……!いやだ……」

あぁ、赤い赤い真っ赤な血は人を殺す。たくさんたくさん血が出るとその人は助からない。お金がなければお医者さんは助けてくれない。だから────赤い赤い真っ赤な血は怖い。

「あー……。うん、俺ねそれ無理。怖い、できない……。俺には……できない……から……。ごめん、ごめんなさい。ほんとうに……ごめんなさい……ゆるして……」

幼い頃に医者に見捨てられて事故で両親を亡くした少女は、感情を殺し、医者を軽蔑し、どうせ無駄だと全てをあきらめて生きていこうと決めるようになりました。そんな少女は自分の怖いこと、嫌いなこと、無理だと判断したことからは逃げる術だけを覚えただけで立ち向かう勇気を学ぶことは諦めました。

「俺が、狂ってるとか言うけど……!じゃあ何が正しいんだよ!俺には、伊織ちゃんしか居なかった!伊織ちゃんしかくれなかった!伊織ちゃんがくれたものが俺の全てだった……っ!伊織ちゃんさえいればそれで良かった!伊織ちゃんがくれたもの、全部全部返したいだけ……。それだけなんだよ!」

伊織ちゃんがくれたもの、それだけが全てで、ただ────伊織ちゃんが大好きなだけなのに。
「伊織ちゃん。好き好き好き好き好き好き……!大好き大好き大好き大好き大好き!ねぇ伊織ちゃん。愛してるよ……?」

両親にも兄にもちゃんと愛を与えてもらえなかった少年はとある少女と出会い、少女が与えてくれた愛に触れてしまったことで、愛を少女に返そうと思いつきました。しかし正しい愛の与え方を知らない少年は過剰なまでに愛を少女に与えようとしました。少年は、正しい愛の受け取り方、正しい愛の与え方を知ること、学ぶことそれら全てを破棄しました。

「────なぁ、雅。どうしてお前は僕を……」
一人置いて、先にいなくなってしまったんだ。その言葉は口の中で小さく紡がれるが、声には出なかった。口にすることを体が拒んでいたのだった。

「お前がいなければ、こんなつまらない世界に生きている価値を見いだせると思うかい……?」

共にこれからも生きていたかった最愛の人を失ってしまった少女は生きる意味を求め、生きていくことを放棄すると共に目の前に立ちふさがった大きな壁を乗り越えようとする力を出すことを諦めました。

26日前 No.24

千里 @matunogirl☆JygYpuYd4vU ★Android=W1VemU3zJF

24話

次の日の土曜日。千里は昨日の夜送られた集合場所へと約束の時間の10分前に行くとそこにはすでに楔と翔太の姿が見えた。

「あれ?翔太が早いなんて珍しいな。辞めろよ、土砂降り雨とか」
「そうだよね!誰も傘とか持ってきてねぇし、こいつが遅刻じゃないとかあり得ないから……土砂降り雨になるんじゃねぇかなって」
「二人ともひどくね?!」
「いや……折りたたみ傘自分の分だけなら持ってきてるけど……」

千里は翔太がいることに驚きの声を上げると楔も大きく賛同しながらうんうん、と頷いていた。その後の傘なんか持ってこない、と言う言葉にはつかさず千里が持っている告げると楔は驚いていたかのようにまじまじと見つめてくる。
「……。マジで?」
「マジだよ……ほら」

そう言いながら千里は鞄から折りたたみ傘を取り出すと楔の前で数度揺らした後に再び鞄にしまい込む。楔は「マジかよ」とでも言いたげにまじまじと見つめる。そんな会をが終わると図ったかのように秋良が向こう側から手を大きく振りながら現れる。
「……翔太君が早いなんて……。大雨降るんじゃない?傘折りたたみなら持ってきてるけど、辞めてよ」
「なんで皆してそんな酷いこと言うの!?俺だってたまには遅れないよ!」
翔太は若干拗ねながらそう叫ぶと秋良は「冗談だよー」とふわりと笑いながらそう言うと、翔太は一気に顔を朱色に染め上げた後に
「も、もう良いよ!行くぞ!」
とほとんど投げるかのようにそう叫ぶと先にずんずんと進んでしまう。千里は秋良と顔を見合わせてふっと笑いながら歩き始める。楔はやや後方を歩きながらスマホを眺めていた。

「ねー、翔太―俺らどこ行くのー?」
「あれ?お前メール最後まで読んだ?俺、最後に行く場所描いたと思うんだけど」
「あれ?」

千里がどこ行くのか、と訪ねると翔太と秋良のほんの少しあきれた様な表情をしながらふ振り返っていたし、楔に至ってはマジか、と言う目をしていた。千里は一度言葉を詰まらせるともごもごと言い訳をするように口を開く。
「……ほら、今日は皆と遊びたかったから、学校から出された課題とか他にもやらないと行けない事やってる最中にメールきたから、最後まで見る暇なかったんですー」

そう言うと秋良は頬を緩ませると頭をなでながら「すなおじゃないなぁ」なんて良いながら嬉しそうに笑っていた。
「遊園地だよねぇ翔太」

そんな風に話しているとふと後ろから楔に声をかけられる。行き先はどうやら風園地のようだった。
「んじゃあいこうかー」
「おー」

千里がそれを聞くと満足そうに笑ってからいこうか、と声をかけるのだった

24日前 No.25

千里 @matunogirl☆JygYpuYd4vU ★HBceeKwFWA_yFt

25話

「おぉ!ひっさびさに遊園地着たなぁ!小2の誕生日以来だぁ!」
千里がそう感嘆の声を上げると、秋良と楔は不思議そうに首をかしげる。千里は一度悩んだそぶりを見せながら「あー、口を滑らしたなぁ」と一言言った後に簡単に説明をするために口を開く。
「小3から学校のイベントとか行事参加してないから、娯楽施設来るのも久しぶりなんだよね」

そう笑いながら説明するとなんとも微妙な空気になる
「なんだよー!俺のサボり癖なんて今更だろ―?気にすんなって!ほら、楽しもうぜ!」
なんともいえない雰囲気になり千里はわざとテンションを上げながら口を開くと歩き始める。
「じゃあ、翔太。四人で行くの?二手に分かれるの?俺はどっちでも良いけど」

千里がそう訪ねたときだった。楔が一瞬にやりと笑うと千里の肩を押すと歩き始め、のんびりとした口調で口を開く
「僕たちはぁ、僕たちで行動するから、翔太と秋良ちゃんは、二人でゆっくりしてなよぉ」
「えっ!?ちょっ、楔?!」

翔太はその言葉を聞いてあからさまに体を硬直させる。千里は肩を押されながら見えたのは心配げに翔太のことを見つめる秋良とその行為にさらに顔を赤らめてあからさまな翔太の姿だったが。

しばらく歩いて行くとふと後ろから「ここまで来れば大丈夫かなぁ」という声が聞こえる。肩を押す力も弱まり肩からも手が離れた。

「ありがとうね、地雷。あのヘタレの事だから、午後は一緒になると思うけど、一日……それも休日まで……それも伊織ちゃんの前でもないのにあのキャラ初カレンダよね。伊織ちゃんからの頼みで断れなかったけど」

ひとまずカフェに入ると、人が少ない席に腰を下ろす。するとすぐに楔が口を開いた。その言葉を聞いて好きりと胸が痛む。まただ、楔が伊織の話しをするたびに千里の胸は痛んだ。その思いを吹き飛ばすように千里はムスりとしながら紅茶を一口飲むとやれやれとでも言いたげに口を開く。
「べっつにーあんたの為じゃない。俺が疲れたし喉が乾いたからカフェにきただけですー」そういいながら千里は再び紅茶に口をつける。そう言うと楔はあからさまに黙り込んだ後に何かに気がついたかのように口を開く。
「そういえば、お前って行きたいとこってあんの?」
「うーん……特にねぇなぁ」
「ふうん……じゃあ、俺が行きたいところに付き合ってよ」
「別に良いよー」

このときの適当にした返事は後に後悔する羽目になるのだがそんなことはまだ気がついていない。それに気がつくまで時間は掛からない。

21日前 No.26

千里 @matunogirl☆JygYpuYd4vU ★HBceeKwFWA_yFt

27話

「一段落したら適当に遊園地回ろっか。ブラブラーと自由に回ろうか」

楔の言葉に千里は何も言わずに頷いた後に残りの紅茶を飲み干すとふぅ、と息を吐き出す。
「楔行きたいところは?」
行きたいところも特になかった千里は楔の行きたいところは黙ってついていこうと思っていたので入場の時に貰ったパンフレットに目を通しながら不意に訪ねるように口を開いた。楔はコーヒーを飲みながら、「そうだなぁ」と言いながら顔を上げる。楔は自分の鞄からパンフレットを取り出すとしばらく眺めた後に少し悩んだ口調で口を開いた。
「まぁジェットコースター外せないだろー……。後はお化け屋敷かなやっぱりその二つは外せねぇだろ」
「ジェットコースタはやっぱり定番だよねー。お……お化け屋敷……ね。ウンイインジャナイカナー」
「……なんでお化け屋敷の時だけ片言?」
「ヤダナァーヨスガチャンソンナコトナイヨ」
「うわきも」
「うん知ってる」

楔のお化け屋敷、という言葉には千里は少し視線を彷徨わせた後に口を開く。楔はまじまじと千里のことを見つめる。千里はあからさまに片言な上に目を逸らすと楔は確信が付いた。

楔の予想としては千里は“ホラーが苦手だ”という事だ。もちろんその予想は大当たりで、千里はかなりホラーが苦手だ。しかし予想と反しているとすれば楔が思っている以上に千里はホラーがだめだ、という事だろう。

千里の片言の言葉に感想を言うと千里も冷静に言葉を返す。楔はその返答には「わかってるならやるなよ」と少し呆れながら話を進めていく。

しばらくしてからのこと話が一段落付いたことをきっかけに楔は徐に口を開くと、そのままお会計の髪と財布を持って立ち上がる。千里は慌てて立ち上がり楔の後を追う。

「まぁ……。とりあえず適当に回ろうか」
「え?あぁ……うん」

千里が楔に追いつく頃はもうすでに楔は会計を終わらせていて、「遅い」と言いたげにお店の出入口に立っていた。千里も慌てて会計を済ませようとすると、「もうお支払い済みですよ」と言われる。千里はまさかとおみながら楔のほうをちらりと見やると誇らしげに胸を張りながら、
「早くこい」
と口パクをする。────本当にこいつはたちが悪い。気が付いていない。なんでこんなにスマートにこういうことができるんだろう。その行動一つで俺がどんだけ自惚れるのか、どんだけ心をかき乱されるのか。
千里はそんな風に考えながら、チラリと楔のことを見る。楔は訳が分からないっといた感じに首をかしげながら、
「おいていくぞ、地雷」
そう声を出すと、千里もあわてて会計を後にすると、カバンから財布を取り出しながら、駆け寄る。
楔はいまだに千里が財布を持っていることに怪訝そうに首をかしげながら、千里が追い付くまで見守る。千里が一歩後ろに立つと、千里は口を開いた。
「なに勝手におごってんだよ、いくらだった?」
「あー?別に支払い別にするの面倒だったから。いーよ、俺の秘密黙ってくれてる例として受け取っておけば?」
「割に合わない気がするんだけどなぁ……」

楔は投げるようにそう言ってからそそくさと歩き始める。千里はその背中を見ながら小さくつぶやく。
「悔しいなぁ……」

と、蚊が泣くようなほど小さくつぶやくと、千里もそのあとに楔の後を再び追いかけながら、楔への思いを改めて深く自覚するのだった

16日前 No.27

千里 @matunogirl☆JygYpuYd4vU ★X2zrn8dq8e_yFt

28話

カフェを出てから、しばらく適当にアトラクションを楽しむ。そろそろお昼も間近というところで千里の足がとあるアトラクションの前で止まった。そう、お化け屋敷が楔の目線の先にあったからだ。ぎりぎり視界の端に移るぐらいの後ろにいた千里の姿が見えなくなった楔は立ち止まると、体ごと振り返ると口を開く。
「何だよ、地雷。……いきなり立ち止まるなよ、行くぞ」
「……やっぱり行くの?…やめない?絶対後悔するよ」
「……何で?まさかこんなのが怖いの?だっっさ……」
「っ……!んな分けないじゃん。お……お化けなんて怖くねえし!」

千里はそう言いながら楔から目線をそらす。もちろん怖くないなんて言うのは嘘だし千里も、気がつかれてると言うのも察してるし、楔も千里がお化けが怖くないなんて言うことはもちろんのこと、気がついている。だからこそこうしてからかってあそんでいるのだが、甲もわかりやすいのはさすがにどうなのだろう、と思う。仮にも人を守る警察官なのだから、もう少し演技力をつけたらどうなんだ、と思うが他人のことなのであまりとやかく言えないのだが。
楔は千里の言葉を聞いて、内心は面白がりながら、表面では何も考えてない風を装いながら口を開く。もちろん後ろに回って肩を押しながら。
「じゃあ良いじゃん。ほら、行くぞ」
「そ、それとこれは話は別だろ?!俺は逝きたくないです。いやですしにたくないです嘘ですほんとうはお化け屋敷怖いですお化け屋敷とかむりです吐く」
「素直でよろしい」

お化け屋敷が目前に迫ると流石に観念したのか、千里は息継ぎもなく、口を開くと、楔は若干引きながらも、「よろしい」と言うと、肩を押す力が弱まるのが分かる。千里は数歩先に歩いてから後ろを振り向く。子の様子だと、どうやら最初から分かっていたらしい。千里はまじまじと楔のことを見つめた後に恥ずかしそうに頬をポリポりと顔をそらしながら口を開く。

「……楔にはなんか俺の弱点とか秘密知られてばっかだなぁ」
「気のせいだよ」
「そうかな」
「そうだよ」

千里の言葉に楔は若干驚きつつも気のせいだ、と言うと納得していない様子の千里は不服げに声を上げる。楔はそれを聞くと笑い出してしまいそうになるのだがそれをこらえて声を出すと、納得はしてなさげな千里の顔が目に入る。でも考えようによっては楔は千里の隠し事はそれなりに知っている方だろう。それを口にしない理由は特にないのだが、なんとなくなだけだが。

12時間前 No.28
ページ: 1

 
 
<< TOPページ 掲示板TOP 記事データ お知らせメール ▲ページ上 >>
★必ず ローカルルールメビウスリングのルール をご覧ください。
 ▼スタンプ▲スタンプ
※スタンプはいちどに 3個 まで使えます  ×閉じる
注…感想・コメントはこの記事ではなく、サブ記事に書き込んでください。(小説カテゴリでは必須です)