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魔界王国物語

 ( 小説投稿城 )
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ヴラドゥレア @warabimoti ★Android=xdCufVxL3h

【序章】

万物の王であり果てしなき魔王は、
全てを創り、眠りけり

白き龍は『光』を、黒き龍は『影』を司りけり

光の者いる限り、世は影で満たされぬ
影の者いる限り、世は光で満たされぬ

光の者、独り寂しく、自らを恨みけり
影の者、独り苦悩し、自らを恨みけり

両者、冠に魔力を託し、旧き闇に敗れたり

メモ2017/06/27 21:32 : 闇月 @warabimoti★Android-xdCufVxL3h

 ※このお話は、私の妄想が爆発し、呪われた右腕の封印を解いた末路です。ありきたりなダークファンタジーです。

さらに、多くの宗教の伝承が混ざっているカオスな事態。

気軽にいいねを押してもらえるとうれしいです。


それでも、コメントお願い致します。


ちなみに名前のみで出たガルーダはエルドロイドの愛獣です。主人と共に逃げていました。


【目次】(不定期更新します)


第一部 炎の章 >>1-25


第二部 氷の章 >>26-43


第三部 光の章 >>44-60

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ヴラドゥレア @warabimoti ★Android=xdCufVxL3h

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5ヶ月前 No.11

ヴラドゥレア @warabimoti ★Android=xdCufVxL3h

エルドロイドは続ける。
「六大魔王を始めとする上層部は云わば最も闇と憎悪に満ち溢れた場所だ。少しでもしくじれば堕とされる」
「そんなのって...酷くないですか?」
ダイアが言う。確かに、強さが全てという悪魔の世界はとても過酷だ。だからといって、少しの失敗も許されないとは...厳しすぎる。
「私も同じ事を思った。そういう制度を止めるように
ヴォイド.フォールに進言したが...怒りを買ってしまった。逃げ出す他になかった。」
「そうだったんですか...」
「他に同じ考えの魔王はいなかったの?」
と、王女が聞く。
「...いた、かもしれない。同じ六大魔王のアザトースや、海魔軍隊長にして軍医のグラディオン...他にも、何人かは」
アザトースは悪魔にしては温厚で、無益な殺生を嫌っていた。世界を創った神ともいわれている。
グラディオンはとことん日和見主義者で、いつも面倒事が起きるとさっさと姿を眩ますような悪魔だ。
「だが、彼等に力添えを乞うわけにもいかない。危険が及ぶかも知れないからな...」
エルドロイドは語り終えると、溜め息をついて、朱く染まり始めた空を見上げた。
(...ヴラドゥレアは今どこに...)

5ヶ月前 No.12

ヴラドゥレア @warabimoti ★Android=xdCufVxL3h

【第10章 「帰ってくればいいのに」】

 「あ〜あ、王女ちゃん逃がしちゃった。急に姿消すんだもの仕方ないわね。よし、あたしナイスポジティブ」
悪魔軍の本拠地に帰りながら、ヴラドゥレアはブツブツ言っていた。
「エルドロイドは見つからないし冠は取り損ねるし...
どうすりゃいいのかしらあたしは...」
このまま魔王が集まる大広間へ行って『すみませ〜ん!
冠取り損ねてエルドロイドも見つかりませんでしたテヘペロ★☆』とか言おうものなら確実に殺される。
一寸先は闇...人間の先人はよく言ったものだ。


「...失礼しまーす...」
出来るだけ静かにばかでかい扉を開けたヴラドゥレアは
すぐさま他の魔王達の凍てつくような視線を浴びることになった。
(ヤバイわコレ...)
「...ヴラドゥレア。冠はどうした?」
そう言ったのはヴォイドだ。
「...それが、オランシアを石にしたは良いんですが、
王女に逃げられまして、冠は手に入らず...」
「エルドロイドは?」
「(何偉そうにしとんじゃ年下)オランシア近辺を捜索しましたが見つかりませんでした。」
「.........」
心の中で毒を吐きながらヴラドゥレアは報告した。
回りの魔王達から失笑が漏れたのが聞こえた。確かに聞こえた。
「2つとも逃したのか?」
「...何か文句あんの?ヴィルペア」
六大魔王の一人、ヴィルペアルヴァンクトゥシアラは、
首を傾けた。
「いや?我は単純に、逃したのかと聞いている」
「そうよ逃がしちゃったわよ!あと1歩の所で王女は急に姿眩ますしエルドロイドは匂いすら感じないし!」
(あ、ぶちまけた)
「...ヴラドゥレア。お前は六大魔王の一人ゆえ、失うのは惜しい。かといって幾度の失敗も許す訳にはいかない。次こそ、あの裏切り者を見つけ出せ」
「...かしこまりました。ヴォイド.フォール様」


「いやーヴラドゥレア、やっちゃいましたねぇ」
会議も終わり、魔王達はゾロゾロ退場していく。
そんな中でヴラドゥレアの隣にやって来たのは、海の魔王にして軍医のグラディオンだ。
本当は龍だが、普段は紫の髪をリボンでお嬢様結びにした女性の姿をしている。
「何よグラディオン...あんたなら出来たの?」
ヴラドゥレアが半ば八つ当たりに問うと、グラディオンは深い黄緑色の瞳を細めた。
「私?さあどうでしょう。まあ、私の場合喉をカラッカラに渇かせて、水を飲みにやって来た所をグサッと...」
「殺っちゃってどうする」



5ヶ月前 No.13

ヴラドゥレア @warabimoti ★Android=xdCufVxL3h

「...でも、どうしてエルドロイドは逃げ続けるのかしら?」
逃げれば逃げるほど罪は重くなる。
早く出てきて罪を償えば、赦されるかもしれない。
「...帰ってくればいいのに」
ヴラドゥレアが呟くと、グラディオンは三叉の矛トリアイナをクルクル回しながら答えた。
「...折角鳥籠から出られたのに、わざわざ籠に戻る鳥がいますか?自分にとって苦痛しかない場所に、自ら帰る者がいますか?」
「...それは、」
「私には考えられませんね。あの子は平和を望んでました。魔王なのに」
「それでも、何も言わずに逃げ出すなんて魔王に相応しくないわ」
「まあ、ヴォイド.フォール様の命をこなさない限りは何も出来ませんし、貴女の首も危ういですね。」
「怖いこと言わないでよ...」
真顔で怖いことを淡々と言ってのけるグラディオンに、ヴラドゥレアは溜め息をついた。
この魔王には誰も敵わない。
「ですが、」
不意に真面目な声を出したグラディオン。ヴラドゥレアは顔をあげた。
「...悔いのないように生きなさい。全て失ってから『あの頃に戻りたい』と叫んでも、もう遅いから」

「......あたしには、失うものなんてないわよ」
自分の首以外はね、と笑い、ヴラドゥレアは飛び立った。

そう。失うものなんてない。裏切り者を見つけ出し、粛清するのだ。それが自分に課せられた命令だ。



5ヶ月前 No.14

ヴラドゥレア @warabimoti ★Android=xdCufVxL3h

【第11章 さらわれたダイア】

 日もだいぶ傾き、空が昏くなってきた。
「いくつか空き部屋があるので、良ければ使ってください」
デスストームが言った。
それで三人は各々好きな部屋で休むことにした。

...彼等を見つめる何者かに、誰も気付かなかった。

ー夜も更け、皆が寝静まった頃、突如ダイアの悲鳴が響いた。
「ダイア!?」
王女達が駆け付けると部屋の窓は開け放たれ、ベッドはもぬけの殻だった。
アルドが声をあげた。
「ど、どうして?ダイアは...?」
するとデスストームが、ベッドを指差した。
そこには、黒い鱗がひとつ、月の光を浴びて輝いていた。
「...琥珀か」
エルドロイドが呟く。
「ええ...彼女に違いありません」
デスストームも頷く。
「琥珀...?」
王女とアルドは訳がわからない。
デスストームが説明した。
「闇の魔王様の側近の暗黒魔導龍です。賢くて、邪悪なんです」
「暗黒魔導龍...?本でしか見たことないあの、伝説の龍?」
「ええ。今では暗黒魔導龍はほとんど遺っていません。かつては栄えたようですが...」
「琥珀はその生き残り。数少ないいにしえの龍だ。
黒い龍は多くいるが、これは並みの龍の覇気ではない」
エルドロイドが続ける。

「...ダイアを探さなきゃ!」
「危険すぎる。琥珀...ひいては闇の魔王は、悪魔軍に属さぬ魔王軍。何をしでかすかわからぬ」
「でもダイアは大切な友達なの!」
「ミアラ、私も探す!」
王女とアルドは頷き合った。
「エルドロイドはここで待っていて。私達は外を探すわ」
「待て!こんな夜更けに子供が...」
だが、二人は既に扉を開け駆け出していた。
「お待ちください!」
デスストームが止めるために飛び立った。

エルドロイドは独り残り、呆然と呟いた。
「...大切な...友達...トモ...ダチ...?」

(友達...そうだ、私は...ヴラドゥレアと、友達だった。不老不死の呪いを受けたあの時から、彼女と私は共に生きてきた)

不老不死の呪い...デイクセリアの暗黒呪術だ。


4ヶ月前 No.15

ヴラドゥレア @warabimoti ★Android=xdCufVxL3h

「王女様!アルド様!」
デスストームが追い付くと、二人は振り返った。
「デスストームさん!」
「落ち着き下さい、二人とも。今はダイア様を助けるために何をすべきか考えましょう」
「でも...」
二人が口ごもると、デスストームは金色の瞳で王女達を見つめた。
「大丈夫。私達も協力します。それに、闇の魔王様はむやみに命を奪うような方ではありません。
エルドロイド様も心配しておられます」

4ヶ月前 No.16

ヴラドゥレア @warabimoti ★Android=xdCufVxL3h

「うん。わかった。ごめんなさい、取り乱して」
王女が呟く。
「無理もありません。ダイア様は、大切なトモダチなのでしょう?」
デスストームが微笑む。
「私達悪魔は、誰かを大切に思う事は滅多にありません。それが繁栄の理由でもあり、邪悪の理由でもあるのです」
「でも、デスストームさんやエルドロイドは、優しいですよね」
アルドが言うと、デスストームは金色の目を瞬いた。
「そうですか...?」
「「うん!!」」
二人は声を揃えて答えた。


「さあ、必ずダイアを助けよう!」

3ヶ月前 No.17

ヴラドゥレア @warabimoti ★Android=xdCufVxL3h

【第12章 琥珀の驚異】

 三人が戻ると、エルドロイドはほっとしたように溜め息をついた。
「...無事だったか」
「うん。ごめんね、エルドロイド」
「...それほど、ダイアが大切なのか?」
「当たり前だよ!友達だもん!」
「トモダチ...」
エルドロイドは呟くと、首にかけてある翠の玉を見つめた。

3ヶ月前 No.18

ヴラドゥレア @warabimoti ★Android=xdCufVxL3h

すみません忙しくて...これからはペースをあげたいと思います!
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「それは?」
王女が聞くと、エルドロイドはゆっくりと答えた。
「...これは、昔、ヴラドゥレアにもらった魔石の欠片だ」
「ませき?」
「魔石とは、我々悪魔の命そのもの。この石が砕けぬ限り、悪魔は死なない。そして、真の友と認めた者にだけ、その欠片を分け与えるのだ」
「え...」
王女達は言葉を失った。ヴラドゥレアが、エルドロイドにそれを渡したという事は...
「ヴラドゥレアは、エルドロイドを友達と認めたって事?」
そう聞くとエルドロイドは、微かに頷いた。
「...過去の話だ。」
「......」

そう語るエルドロイドの瞳には、何の感情もこもっていないように、王女には見えた。

3ヶ月前 No.19

削除済み @warabimoti ★Android=xdCufVxL3h

【記事主より削除】 ( 2017/03/27 21:15 )

3ヶ月前 No.20

ヴラドゥレア @warabimoti ★Android=xdCufVxL3h

上記の記事は間違ったので消しました。
再度投稿します。

∽ 何故人は、喜ぶのでしょう
  何故人は、怒るのでしょう
  何故人は、哀しむのでしょう
  何故人は、楽しむのでしょう

  何の為に、苦しむのでしょう
  何の為に、悩むのでしょう

  ...其れは、心が在るがゆえ
  その為に苦しみ悩むのなら、心など要らないでしょう

  思い煩う事もなく、憎み嫉む事もない
  貴方がそれを拒むなら、私はせめてもの贈り物をあげましょう
  老いず死なぬ躯を、貴方に与えましょう

  怒りも哀しみもない世界で、永遠に生き続けましょう

  人はそれを、孤独と呼ぶのでしょう
  人はそれを、呪いと呼ぶのでしょう

  私はそれを、幸せと呼びましょう
  私はそれを、楽園と呼びましょう ∽

3ヶ月前 No.21

ヴラドゥレア @warabimoti ★Android=xdCufVxL3h

「ですが、何故ダイアが?」
デスストームが呟く。
エルドロイドは少し考え、口にした。
「...恐らく、彼奴も気付いたのだ。伝説が、実現し始めている事に。闇の魔王は、とても賢い悪魔。それに、他の悪魔の中には、王女達の事を知らない者も多い。」
デスストームは成る程、というように頷いた。
「確かに、そうかもしれません。もし知っていても、興味を示さない魔王もいるでしょうし」
すると、アルドが口を挟んだ。
「じゃあ、琥珀は...それに闇の魔王はどこにいるの?」
「闇の城、ダークキャッスル。この魔界の奥深く...凶暴な魔物達が巣くう場所。」
「そこまではどう行くの?」
「正直に言うと、私達にもよく分からない...。
言った通り、闇の魔王はヴォイド.フォールの正式な部下ではない。ヴォイドはともかく我々は、殆ど会うこともなかった」
「そんな...」
王女達は途方にくれた。
それでは、ダイアを助けられない。

と、家の外で、何やらバサッ、という鳥の羽ばたきのような音が聞こえた。

2ヶ月前 No.22

ヴラドゥレア @warabimoti ★Android=xdCufVxL3h



 冷たい風が頬に当たって、ダイアはハッと目を覚ました。まず目に入ったのは、底が見えないほど深い峡谷。
辺りの温度がやけに低いことから、ここがかなり上空なのだとわかる。
...上空?
次の瞬間、ダイアは自分がどんな目にあったのか思い出した。
自分は、さらわれたのだ。
ふと下を向くと、真っ黒に光る鱗に覆われた腕が見え、ダイアはぎょっとした。自分を抱えて飛んでいるのは、
黒い龍、つまり琥珀だ。

「おや、お目覚めかい。坊や」
いやにねっとりとした猫なで声で、琥珀は笑った。
「...僕をどこにつれていくつもり?」
ダイアはなるべく落ち着いた声で問いかけた。
恐怖を悟られないようにしなければ。相手が戦けば戦くほど喜ぶのだ。暗黒魔導龍というのは。
「そう睨むもんじゃないよ。別にとって食おうってわけじゃないんだから。お前はこれから、闇の魔王の城へ連れていかれる。そして、闇の魔王の質疑に答えるんだ」
琥珀は淡々と答えた。
「質問?」
ダイアは首を傾げた。闇の魔王が、自分に何の用があるんだろう。
「何を聞くかは知らない。あたしの役目は、お前を城まで連れていくこと。」
そう言って琥珀は、翼を大きく上下させた。
スピードが速くなり、ダイアは目を開けていられないほどの強風に見舞われた。
「さあ、もうすぐだ。落ちるんじゃないよ!」

2ヶ月前 No.23

ヴラドゥレア @warabimoti ★Android=xdCufVxL3h

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2ヶ月前 No.24

闇月 @warabimoti ★Android=xdCufVxL3h

ハンドルネーム変えました。

【第14章 氷の宮殿へ】

「あの、フェニックス様、一体何処へいかれているのですか?」
デスストームが、先頭を行くフェニックスに声をかけた。
魔界と悪魔界を繋ぐ異空間。その狭間に、ダークキャッスルは存在するという。
だが現在一行は、魔界の北方に向かっていた。
「わかってるよ。闇の魔王に挑むのは、僕らだけじゃ不安だ。だから、他の魔王に協力してもらった方がいい」
「他の、魔王...」
アルドが繰り返す。確かに他の魔王がいれば、勝率は上がる。だが...
「でもフェニックス、他の魔王が私達をヴォイドの所に連れていこうとしたらどうするの?」
他の魔王がヴォイド.フォールの部下ならば、その可能性も十分にある。
だがフェニックスは言った。
「大丈夫!もしそうなったら戦うし、きっとみんな、こんなのおかしいって思ってるはずだよ。
まずは、氷の宝玉を持つ氷の魔王・ヴリザードに会いに行こう」
「ヴリザード様に!?あの方は人間があまり好きではないのでは...?」
デスストームが驚き、エルドロイドも頷く。
「ヴリザードがそう簡単に我々に宝玉を渡すとは思いがたい」
「だからこそだよ。人間に対する憎しみは、人間が解かなきゃ意味がないんだよ」
フェニックスの言葉に、王女アルドは顔を見合わせた。
(人間が解かなきゃ意味がない...)
「...行こう。アルド」
「うん!ミアラ!」

デスストームとエルドロイドはしばし呆然としていたが、やがて溜め息ながらに了承した。

かくして、一行は氷の宮殿を目指したー。



2ヶ月前 No.25

闇月 @warabimoti ★Android=xdCufVxL3h

第二部に入ります

【第15章 捜索】

 ーその頃、悪魔界では、ヴォイド.フォールと六大魔王が偵察隊の報告を待っていた。
六大魔王。それは、ヴォイド.フォールが選んだ最強の悪魔達である。エルドロイドの他には、
旧き闇・ヴラドゥレア
万物の王・アザトース
終焉の邪神・ヴィルペアルヴァンクトゥシアラ
邪悪の王・アンラ・マンユ
暗黒の支配者・モーメント
...この五人が、現在の悪魔軍の指揮官である。
だが滅多に揃うことはないため、互いに雑談したり談笑したりしている。

「...それにしても、あの時ヴラドゥレアがあやつをとらえておれば、こんな面倒な事にはならなかったものを」
小さな声で、ヴィルペアが呟いた。
が、ヴラドゥレアにはしっかり聞こえていた。
「何ですって!?もう一回いってみなさいよ!」
ヴラドゥレアが突っかかるのを、アンラが諫めた。
「私達が争ってどうするのだ、ヴラドゥレア?」
「チッ...わかったわよ。ボスの前で、見苦しい真似は出来ないしね」
先程から黙って、バルコニーから下界を見下ろしているヴォイドをチラリと見て、ヴラドゥレアが言った。
ここ最近、ヴォイドの機嫌は悪くなる一方だ。
少しでもへまをすればくびが危ない。色んな意味で。
と、ヴォイドがこちらへやって来た。
五人はお喋りを止め、姿勢を正した。
「...手がかりはまだ掴めぬのか?」
ヴォイドの問いに、モニターの前で作業をしていたモーメントが答える。
「はっ。現在ヴァルディスが偵察隊を率いて捜索中です」
「ヴァルディス...貴族バールデール一門の息女か。
確か、弁護士であったな」
「ええ。知力、洞察力共に優れている彼女ならば、きっと朗報を持ち帰るでしょう」

「それは...楽しみだな」
ヴォイドは鋭利な牙を覗かせ、にやりと笑った。





2ヶ月前 No.26

闇月 @warabimoti ★Android=xdCufVxL3h

【第16章 独りぼっちの魔王】

 氷の宮殿の前で、人間と悪魔のグループが集まっていた。
「じゃあ、私とアルド、デスストームさんで中に入るね。フェニックスとエルドロイドはここで待ってて」
王女が言った。
「オッケー!」
「…わかった」
フェニックスとエルドロイドは頷いた。

宮殿に入ると、一気に体が冷えるのを感じた。
それもそのはずで、この宮殿は全て氷で出来ているのだ。
「さ、寒いね…」
「凍りそう…」
「ですがお二人とも、見てくださいこの彫刻!」
デスストームの言う通り、宮殿内は繊細な彫刻が施され、キラキラと煌めいていた。
「これ、氷の魔王がしたのかな」
思わず声に出して、アルドが聞いた。
「恐らくは。先程から全く魔物を見かけません。門番もいませんでした。魔王ともあれば、かなりの僕がいるはずですが…」
デスストームが不思議そうに呟いた。

「独りぼっちの魔王、か」
王女が小さな声で言った。

2ヶ月前 No.27

闇月 @warabimoti ★Android=xdCufVxL3h

【第17章 氷の玉座に刻まれた紋章】

 王女達は、永遠に続くかと思われる長い長い螺旋階段を上りきり、最上階、魔王の間へと辿り着いた。
広々とした部屋にぽつんと置かれた玉座には、誰も座っていなかった。
「これが玉座か…ん?」
王女は、玉座の裏に古い文字が刻まれている事に気付いた。その横には、水色の冠の紋章がある。
「ねえ、みんな、これ何?」
「何ですか?…こ、これは…!」
デスストームは青ざめた。
「…『我が永久の宮(みや)に立ち入りし者、声なき骸と成りぬべき』…」
「それって…?」
アルドが首を傾げる。声なき骸、とは?
デスストームは震える声で答えた。
「…氷の魔王の宮殿に入った者は、声すら出せない骸骨となるだろう。つまり、死ぬという意味です…」
王女とアルドは耳を疑った。
「「えっ…!?」」

すると、部屋の温度が急激に下がり、扉が音もなく開いた。

2ヶ月前 No.28

闇月 @warabimoti ★Android=xdCufVxL3h

【第18章 秘密】

 その頃、扉の前では。
フェニックスとエルドロイドは、二人で王女達を待っていた。
別に話すこともないので、互いに一言も口を開かず、
何となく気まずい空気が流れる。
そういえば、とフェニックスは思い出す。
悪魔軍にいた頃は、エルドロイドと話す事なんて滅多になかった。自分はもっぱらモーメントにくっついていたな、とつい最近の事なのに懐かしく思う。
モーメントは、“あの御方”…ヴォイド.フォールの野望を叶えるには、自分の破壊と再生の力がきっと役に立つと言ってくれた。それがとても嬉しかった。
(このまま僕がエルドロイドに味方したら、モーメントやヴラドゥレアは怒るかな)

と、ふいにエルドロイドが声をかけてきた。
「フェニックスは、悪魔軍のやろうとしている事についてどう思う?」
「天使を倒して、神を封じようとしてること?」
ヴォイド.フォールは、邪神を封じた天使や神々を深く憎み、同じことをしようとしていた。
「そう。私は、彼は間違っていると思う。…といっても、私に心などないのだが」
半ば自嘲気味に、エルドロイドは漏らした。
「…僕は、仲間が傷付くのも嫌だけど、ミアラ達が悲しむのも見たくないな」
「…優しいのだな。お前は」
「……」
フェニックスは、エルドロイドの目を真っ直ぐに見れなかった。
デイクセリアの呪いを解くのを、もう諦めている彼に対して、いたたまれない気持ちになったのと、もう1つ。
フェニックスには、この場の誰にも話していない事があった。

2ヶ月前 No.29

闇月 @warabimoti ★Android=xdCufVxL3h

【第19章 氷の魔王ヴリザード】

 その美しさに、王女とアルドは思わず見とれた。
藍色の鱗に、エメラルド色の一本角。金と銀の翼に、紫の瞳。意外かもしれないが、紫の眼の悪魔は珍しい。
魔王の中ではヴリザードの他、モーメントくらいしかいないのだ。
悪魔界の月は基本的に紅。不吉の象徴とされるのは蒼い月。紅と蒼。二つの色が混ざった紫は、神秘の色とされ、この瞳の者は畏れられ、敬われてきたのだった。



2ヶ月前 No.30

闇月 @warabimoti ★Android=xdCufVxL3h

やがて、しびれを切らしたようにヴリザードが言った。
「…いつまで我を見ている」
「あ、ごめんなさい…あなたが、氷の魔王ヴリザードさん?」
ヴリザードはじろりと王女とアルドを見、デスストームの姿を認めると目を見開いた。
「…デスストーム、何故エルドロイドと共に逃げたはずの汝がここにいる。この人間達は何者だ」
微かに険しさを滲ませた声だった。
デスストームは金色の瞳で彼を見つめ、臆さずに答えた。
「彼女達は、オランシア王国の王女ミアラ様と、ご友人のアルド。現在我が主エルドロイド様、フェニックス様と共に、この魔界を救うために旅しております」
「オランシア王国…先日ヴラドゥレアが石にした所か。
生き残りがいたとはな。…魔界を救う?どうやってだ?
“あの御方”に逆らえばどうなるか、解らぬのか」
そう言ってヴリザードは、信じられないと言いたげに首を振った。
「…デスストームさん、あの御方って…」
アルドが声を潜めて尋ねる。
「ヴォイド.フォールの事です。その名を呼ぶことすら、皆は恐れているのですよ」
その圧倒的な力は、全ての天使が束になっても敵わないと言われているのだ。



2ヶ月前 No.31

闇月 @warabimoti ★Android=xdCufVxL3h

「…それで、汝らは何の用があって此処へ来た?
我が永久の宮に立ち入るとは、死すらも恐れぬのであろうな、汝らは」
死。その不気味な言葉が、氷の壁に谺する。
デスストームは臆さずに答えた。
「オランシア王国…そして、この魔界を救うために、私達は旅しております。貴方の持つ、氷の宝玉を王女様にに渡してほしいのです」
「……」
ヴリザードは目を細め、ふう、と息を吐いた。
人間と裏切り者の為に命を危険に晒す程、自分はお人好しではないし、エルドロイドともそれほど親しかったわけではない。
「…我が協力する意義が見当たらない」
「それは、……」
デスストームが言葉につまる。
 そんな中、王女が言った。
「ねえ、ヴリザードの鱗って綺麗だね」
((!?))
アルドとデスストームはぎょっとする。
こんなときに何を言っているんだろう?

2ヶ月前 No.32

闇月 @warabimoti ★Android=xdCufVxL3h

「…綺麗?この我が美しいと申すか。愚かな」
ヴリザードは冷たく切り捨てた。
「愚かって事はないでしょう」
アルドがムッとして言った。だがヴリザードは取り合わない。
「美しいことに何の意味がある?
見た目が美しくとも中身は解らぬ。
見た目が醜くとも中身は解らぬ。我が知人は、美しさを追い求めているが…我にはさっぱり解らぬな」
ヴリザードの言葉に、デスストームはいつも美しくあることに命をかけているあの魔王を思い出した。
(グラディオン様の事ですか…)

そう言われても王女は平気そうにしている。
「そうかな?綺麗な事は素敵だと思うな、私は」
「まあ良い。それより、エルドロイドは何処にいる?
“あの御方”が探している。ヴラドゥレアも」
その質問に、三人は身を固くした。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「へくしっ!!」
グラディオンは鼻を擦りながら言った。
「…風邪ですかね。昨日の患者に風邪引きがいたのでしょうか。」
「大丈夫ですか?」
部下が尋ねる。
「う〜ん……ハッ!!もしや誰かが私の美しさを噂してるとか!そうですねそうでしょうとも!!フ、フフフフフ」
「………」
急に語りだした主を、部下はポカンと見つめた。

2ヶ月前 No.33

闇月 @warabimoti ★Android=xdCufVxL3h

【第20章 凍てつく心の持ち主は】

 「エルドロイドは何処にいる?」
その問いに答えるべきか、王女は迷った。
今のところ、ヴリザードが味方かどうかわからない。
ヴォイド.フォール側の魔王である可能性もある。
自分達がが捕らえられれば魔界は終わりだ。
「…私達の仲間になってくれるなら、教えてあげる」
王女が慎重に答えると、ヴリザードはくぐもった笑いを漏らした。
「ふ、確かにその通り…だが」
ヴリザードは右腕を振った。
すると、部屋に雪が降り始めた。
「我はそれほど甘くはないぞ」




1ヶ月前 No.34

闇月 @warabimoti ★Android=xdCufVxL3h

ヴリザードがそう言うと、ますます雪が強くなった。
お互いの姿も見えないほどに。
「みなさん、無事ですか!?」
デスストームが叫んだ。
「うん!」
「何とか…」
二人が応える。
ヴリザードが金銀の翼を広げると、吹雪はおさまった。
「我はもう、人間なぞ信じはせぬ。エルドロイドとて同じこと」
「嘘!エルドロイドは私達の仲間よ!」
思わずアルドが叫ぶ。
「いつから人はこれ程愚かになった?悪魔は、人間を信じない。同族にさえも、滅多に心を開かぬのだから」
「どうしてわかるの!?エルドロイドもデスストームさんも、私達の仲間だもの!」
今度は王女が声をあげる。
エルドロイドもフェニックスも、デスストームも。
そしてジェニパーだって、大切な仲間だ。
悪魔だろうと人間だろうと、きっと仲良くなれる…王女はそう信じていた。

ヴリザードは天井を見上げて、小さな声で呟いた。
「『仲間』…か。ヴォイド.フォールはきっと、我等の事を仲間とは思っておらんだろうな」
「え…?どうして?仲間でしょう?」
信じられず、王女が聞き返す。


1ヶ月前 No.35

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「そんなの形だけだ。魔王には、情というものがない。我々は同じ軍の同志だが、互いに相手を利用しあっているだけだ」
ヴリザードは朗々と答える。
相手の地位や肩書きだけでその者を値踏みする者達。
部下を手駒としか思っていないヴォイド.フォール。
好きで共にいるわけではない。ただ、目的、利害が一致しているだけ。
そんな堅苦しい世界に疲れたヴリザードは、この宮殿で独り生きようと決めた。
「ヴリザード…」
王女は俯いた。悪魔の世界は、エルドロイドの話より残酷だ。
ヴリザードは言った。
「ここには苦しみはない。悩みもない。気を使う事もなければ、思い煩う事もない。だが…」

「これは、平和と言えるのか?平和とは何だ?
真の平和とは?」

1ヶ月前 No.36

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ヴリザードの声は、宮殿の壁に反響して冷たく響いた。自分には、平和とは何かわからない。
それは、デスストームもアルドも同じ。
このままでは、魔界を救うどころか宝玉も手に入らない。
誰もが諦めかけた時、王女が言った。
「人と魔族が一緒に暮らせる、争いのない世界」
「……」
ヴリザードは黙っている。王女は続けた。
「身分も、種族も関係ない世界」
「…王族で、国も仲間も守れなかった汝の言うことか」
その言葉は、王女の心に氷柱のように刺さった。
ヴラドゥレアによって奪われた、大切なもの達。
母のラシア。愛鳥のファロン。たくさんの友達。
守れなかった。救えなかった。
けど…
「確かに私は、国も仲間も、ダイア守れなかった。
けど、これから助けることはできる」
王女はヴリザードの澄んだ瞳を見つめた。
「…これから、助ける?その様な事が可能なのか?
フェニックスの言葉は真実なのか?」
「フェニックス?」
アルドが訝しげに尋ねる。フェニックスが宝玉をくれたことを知っているのだろうか。
「エルドロイドがいなくなって暫く…そう、この間だ。
フェニックスが、人間の子供達に宝玉を渡したと我に打ち明けた。祖国を救えるかもしれないと」

1ヶ月前 No.37

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それを聞いて、王女はハッとした。
「もしかして、あなたはフェニックスと同じ、メルディオ王国の…?」
フェニックスは炎の城で言っていた。
『僕らの国、メルディオ王国も石にされた』と。
ヴリザードは頷いた。
「フェニックスから聞いたのか。伝説の子よ。
流石、その冠を託されるだけの事はある」
「この冠を知っているの?」
王女は驚いた。母が石になる直前、自分に預けた冠。
オランシア王家に伝わるものだと、母から聞いた。

1ヶ月前 No.38

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「バフォメットが予言した。汝等の事を
『旧き闇に敗れた二体の龍は、冠を受け継ぐ伝説の子らによって力を取り戻す』…と」
デスストームは顔を上げた。
「それは本当ですか…?龍が力を取り戻すと?」
(デスストームさん?)
デスストームの声は、必死だった。
そうであってほしい、そうであるように。

(この冠は、何かとてもすごい力を持ってるんだ。
でも私は、冠の本当の力を知らない…)

1ヶ月前 No.39

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オランシア王家の者は代々、この冠を守ってきた。
だが皆、その本当の力を知ってはいなかった。
(それは私も同じ。けど、これがあれば魔界を救える。…バフォメットさんは、何か知っているのかな?)
王女はバフォメットに話を聞きたいと思った。
その為には、ヴリザードに彼女の居場所を聞かなければならない。
「…ミアラ、どうする?」
アルドが小声で囁いた。
「…私に任せてもらえるかな。ヴリザードにお願いしてみる」
アルドは驚いたようにこちらを見たが、何も言わなかった。

王女は覚悟を決めると、ヴリザードに向かって歩き出した。

1ヶ月前 No.40

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【第21章 少女は笑った 優しく無垢に】

 「ヴリザード、お願いがあるの」
「…ああ、宝玉か」
ヴリザードは翼をひらひらと動かした。辺りに粉雪が飛び散った。
「私達の仲間になって、一緒に来て。」
その言葉にヴリザードは耳を疑った。
この娘はなんと言った?我に、仲間になれと?
「宝玉が欲しくないのか?」
「もちろん欲しいけど、私はあなたやエルドロイド達と、この世界を守りたい」
「……」
ヴリザードは首を傾げた。
(この人間達は、我を必要としているのか?)
遠い過去の思い出が、微かに甦る。
心の奥に封じたはずの思い出が。

ーーーーーー
『…我は悪魔、それに魔王だぞ。人間が近付くべきではない』

『え〜今さらですよそんなの。私は悪魔を嫌ってはいません』
そう言って、少女は笑う。

『…我の体は氷と雪そのもの。近くに入れば凍えてしまうし、汝は我の手を取ることも出来なかろう』

『そんなことありませんよ?とても涼しいです』
無垢に。花が咲くように。

『…他の仲間がいるだろう。奴等のもとへ行け』

『はーい、わかりました。でも、これだけは言っておきますよ』
少女は悪戯っぽく微笑んだ。

『…何だ。』

『手の冷たいひとは、心のあったかいひとなんです』
少女は…最後まで笑っていた。


1ヶ月前 No.41

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「…最後まで我と共に歩むか、オランシアの末裔よ」
その問いに、王女は笑って答えた。
「もちろん!いっしょに行きましょう、ヴリザード」
王女はヴリザードに手を差しのべた。

 ヴリザードは笑った。今までの冷たい笑みではなく、温かい笑顔で。
「見事だ、ミアラ王女。これほどまでに我を受け入れ、
              ・ ・
手を差しのべた者は魔界にはいなかった。」
雪は止み、陽光が城を照らした。
氷の魔王は、優しく笑った。


1ヶ月前 No.42

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「氷の魔力を汝に授けよう。どうかこのように力が、希望への架け橋となるように」
ヴリザードの宝玉と頬の紋章が光り、王女はかつてない力が自分を包むのを感じた。
(これが、氷の宝玉の力…)
「ありがとう、ヴリザード」
王女が笑うと、アルドとデスストームも続けた。
「どうもありがとう。ヴリザードさん」
「感謝いたします。ヴリザード様」
ヴリザードは頷くと、両翼を大きく広げた。
「さあ、エルドロイドとフェニックスの元に行こうぞ。
我が友よ」

1ヶ月前 No.43

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第三部に入ります。

【第22章 サバトの黒山羊を探して】

 王女達がヴリザードと共に氷の宮殿を出ると、エルドロイドとフェニックスが待っていた。
「嘘だろ…いっつも引きこもってるヴリザードが外に出てきてる…」
「何か言ったか焼き鳥」
ヴリザードがギロリと睨んだ。
「ヴリザード、元気だったか」
エルドロイドがヴリザードに歩み寄る。
彼等が顔を合わせるのは数千年ぶりだった。
「ああ。汝も、色々あったようだな…」
「協力してくれて、本当に心強い。礼を言う」
ヴリザードはいや、と首をふる。
「我は長い間、他の魔王達のいさかいを見て見ぬふりしてきた。正直、関わりたくなかったのだ。
だがそれでは何も変わらぬと、この者達が教えてくれた。」

(…僕の知ってるヴリザードはどこにいってしまったんだ…)
フェニックスは天を仰いだ。

30日前 No.44

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その日は野宿をすることにして、一行は近くの森に入った。

「ダイア、大丈夫かなぁ」
王女が夕食の野菜を切りながら、心配そうに言った。
今夜はカレーだ。材料はデスストームが、悪魔界から脱出する際に持ち出したものだ。
「…生きてはいるよ」
アルドがルウを割りながら答えた。
「私もそう思います」
デスストームも言った。
「どうしてそう思うの?」
「闇の魔王様は、私達を試しているのですよ。
宝玉を渡すに相応しいか」
「そして、君達の事を探る為に猫君をさらったんだよ。あ、僕辛口ね」
火を起こしながら、フェニックスが言った。
エルドロイドは水汲みに行き、ヴリザードは丸くなって眠っている。さっきフェニックスが「サボるな!」と飛びかかって返り討ちにあっていた。
「そういえば、フェニックスはヴリザードと仲が悪いの?」
王女がふと尋ねると、フェニックスは嫌そうに羽を膨らませた。
「あ〜…まあね。そもそも性質が違うし、ヴリザードって口が悪いから仲間内でも浮いてたかな」
確かにヴリザードはかなり毒舌だ。だがそれはわざとではなく、天性のものだ。…それがある意味やっかいだが…

「そうなんだ。でも二人がいなくなって、悪魔達は怪しく思わないかな?」
アルドが聞く。
「大丈夫大丈夫!実際に政治を行ってたのは六大魔王だから。それに僕は城を留守にするなんてしょっちゅうだし、ヴリザードは部下こそいたけど、ほったらかして引きこもり〜」
…魔王がみんなで世界を治めてるんじゃないんだ。
王女とアルドは思った。
確かに魔王同士が仲よくしているのは想像しにくい。
と、ここで二人は気になる言葉を見付けた。
「…ねえフェニックス。六大魔王って…?」
フェニックスとデスストームは顔を見合わせ、話しちゃおうか?どうしましょう。と相談していた。
するといつの間にやらヴリザードが背後に立っていた。

「話せば良かろう。仲間に隠し事はご法度だぞ?」
(……!)
アルドは、フェニックスが一瞬狼狽えたのに気付いた。
ヴリザードは何気なく言ったつもりだろうが、フェニックスは明らかに動揺している。
(フェニックス…?)


28日前 No.45

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デスストームが口を開いた。
「以前、エルドロイド様が話された通り、六大魔王は悪魔軍の最高幹部。エルドロイド様が抜けた今、他の5名が軍の指揮及び仕事をしているはずです」
フェニックスも付け足した。
「…だからって、他の5人がエルドロイドの為に仕事してるわけじゃない。むしろヴォイドは、邪魔なエルドロイドがいなくなって歓んでるんじゃないかな」
「…そうか、エルドロイドはヴォイドに、『力こそ全て』という考えを改めるように相談したんだよね」
アルドが思い出したように言った。
けれど他の六大魔王は、ヴォイドの考えに賛成なのだろうか?エルドロイドのように、嫌々ではないだろうか?

26日前 No.46

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第23章【魔王は友か否か】

 夜、悪魔城の廊下を、二人の兵士が歩いていた。
春に入ったばかりの若い兵士が、先輩の兵士に話しかけた。
「魔王様達って、仲が悪いんですかね?」
先輩兵士は、驚いたように足を止めた。
「何故そう思う?」
「エルドロイド様が逃げたくらいだし、フェニックス様とヴリザード様はケンカばかりだし…」
先輩兵士は、わかってないな、と呆れたように言った。
「確かに魔王様達は、互いに思想が違ったりして、いさかう事もあるだろう。だが実際、大抵の魔王は、とても仲がいいんだ」
若い兵士はびっくりした。ヴラドゥレアなんかはお世辞にも、他の魔王と仲がいいとは思えない。
確かにグラディオンと南の魔王メラディオンは共にいることが多いし、アザトースは基本的に家臣にも変わらず接してくれる。
「嘘だと思うんなら、今度よく見てみな。ここだけの話、正直言ってあの方々は子供っぽいところがあるからな」
(子供っぽい…だと…)

23日前 No.47

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【第24章 黒山羊バフォメット】

 「そういえば、バフォメットはどこにいるの?」
夕食のカレーを頬張りながら、王女はヴリザードに尋ねた。ヴリザードは福神漬けを食べながら答える。
「バフォメット卿は、エルドロイド様が治めていた世界
『幻夢界』にいるだろう。あそこは争いのない平和な国だ」
「エルドロイドは、あそこの国王なんだよ!」
エルドロイドの頭の上から、ジェニパーがひょっこり現れた。皆は驚いた。
「ジェニパー!どこに行ってたの?」
アルドは飛んできたジェニパーを肩に乗せた。
「僕はね、先に幻夢界に行って偵察隊がいないか確かめてたんだ。いまのところ、ヴァルディスは来てないみたい。今の内に急いだ方がいいよ」

22日前 No.48

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それを聞いて、アルドが質問した。
「ヴァルディスって誰ですか?」
ジェニパーは羽をぱたぱたさせて答えた。
「偵察隊の隊長にして、悪魔の弁護士だよ。
貴族の娘で、とっても頭がいいんだ」
「へえ…女の子なんだ…」
王女は意外に思った。オランシア王国では、女性が隊長を務めたりすることは少なかった。もちろんいなかったわけではないが、高位の位には男性が就くことが多かったのだ。
「ヴァルディスは優秀な悪魔だ。微かな痕跡も見逃さぬ。一刻も早く、幻夢界に行った方がよいな」
ヴリザードが立ち上がった。
エルドロイドとデスストームも続いた。
エルドロイドが皆に言った。
「幻夢界までは、瞬間移動魔法で行こう。
その方が早いし、気付かれずにすむ」

21日前 No.49

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ー悪魔城の何処か。魔王すら滅多に足を踏み入れない最深部にて。
ヴォイド.フォールと数人の魔王が、巨大な水晶の前に跪づいていた。
水晶の中には、漆黒の翼と大きな角を持つ、大きな魔物が眠っていた。…いや、魔物ではない。
其こそが、悪魔界と悪魔を創造し、天使に封じられた混沌の邪神・イルテバークなのだ。
毎年6月6日[悪魔の日]には、魔王達は偉大なるイルテバークを偲び、復活を祈る。

魔王達は詠唱した。

『…悪魔を造り給うた大いなる邪神・イルテバークよ。
我等は貴方を讃え、貴方を偲ぶ。
どうかこの先も、我等を見守り、導き給え。
悪魔界を栄えさせ給え。
今一度、その御姿を見せ給え。
我等、魔族の王なりけり。汝、魔王の主なりけり』

21日前 No.50

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エルドロイドの瞬間移動魔法で、王女達は幻夢界にある王国へと到着した。
「ここが、エルドロイド様の国です」
「うわあ…!」
「すごい…!」
王女とアルドは感動して、辺りを見回した。
その国は、今まで目にしたどの場所よりも広大で美しかった。緑が溢れ、空からは太陽の光が降り注いでいる。

「オランシアより綺麗かも…」
王女の口から漏れた言葉を聞いて、フェニックスが呟いた。
「そりゃあ人間の建国技術には限りが」
「氷付けにして我が城の装飾品にしてやろうか」
いつもの二人は相変わらず争っている。

17日前 No.51

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17日前 No.52

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ーーー
「バフォメット卿でしたら、城下町の広場にいるはずです。どうかお気をつけて」
話を聞いたスターダストは心配そうにしていたが、バフォメットの居場所を教えてくれた。
「ありがとうございます!」
王女達は頭を下げた。スターダストもお辞儀をした。
「僕の方こそ、エルドロイド様を宜しくお願い致します」


「あ、あれじゃない?」
フェニックスが翼で示す先には、悪魔や魔物の子供達が集まっていた。近付いてみると、広場の中心には黒い狼がいた。傍らの岩には黒山羊の頭と下半身、人間の上半身を持つ女悪魔が腰かけている。
ジェラートとバフォメットだ。





16日前 No.53

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ジェラートは子供たちに、昔話や旧い伝説を聞かせていた。
「…そして七つの罪を背負った悪魔達は、今もこの世の何処かに幽閉されているのです」
「ゆーへいってなあに?」
小さなキメラが聞いた。
「閉じ込める事だよ。七つの罪はとんでもない大罪。
だから悪いことをしないように閉じ込めたんだ。さあ、今日はこれでおしまい」
「うん!明日も話してね!」

子供達が帰ると、ジェラートはエルドロイドの方を向いて頭を下げた。
「これはこれはエルドロイド閣下。ご無事で何よりにございます。魔界の方々もようこそ幻夢界へ。バフォメット卿に御用がおありで?」
「はい、バフォメットさんの予言について…」

王女が言うとバフォメットは岩から下り、王族顔負けの優雅な会釈をした。
「私はサバトの黒山羊バフォメット。私に答えられる事でしたら、何なりと」

12日前 No.54

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「予言の事なんですけど…この冠を知っているんですか?」
王女が聞くとバフォメットは答えた。
「知っています。それは光と影の龍の力が眠った聖なる冠。その昔、旧き闇に敗れた二体の龍は、冠に力を託し魔石を奪われた。その力を呼び覚ますには、魔王達の所持する宝玉を集める他にありません」
「…他の魔王は、宝玉をくれるでしょうか」
デスストームがポツリと呟く。
バフォメットは朗らかに笑った。
「信じなさい、デスストーム。信ずれば救われんと言うでしょう?」
それからバフォメットは、他の者を振り返ると告げた。
「ここから東西南北に、それぞれ四人の魔王がいることはご存知ですか?まずは彼等に会い、力を借りなさい。大丈夫、悪魔にも情はあるはずですよ」
「はい、ありがとうございます!」
王女はバフォメットの優しい心を感じていた。
見た目は恐ろしくても、バフォメットは母のように温かかった。
「私からも、ありがとうございます」
「ありがと!」
「我も感謝する」
皆は口々に礼を言った。バフォメットは微笑む。
「どういたしまして。お役に立てたならなによりですわ」

王女達が門の方へ行き、エルドロイドが着いていこうとすると、バフォメットが声をかけた。
「ようやくわかったのですね。大切なのは、己を、心を信じる事だと」
「…ああ。わかった」
答えると、エルドロイドは歩き出した。

(エルドロイド閣下、御武運を)

9日前 No.55

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【第25章 闇の魔王の問いかけ】

 ダークキャッスルに捕らわれて数日経ったが、ダイアは生きていた。闇の魔王はどうやら自分を殺す気はないようだ。
実際、1度も姿を見ていない。
見たのは、まれに様子を見に来るあの忌々しい琥珀と、牢屋の見張りをしている翡翠という龍だ。
ダイアは翡翠と、少し仲良くなった。
「へー、ここに来る前は西の方にいたんだ」
「はい。生まれは北ですけどね」
二人が話していると、琥珀が現れた。
ダイアを運ぶとき広げていた翼は、畳まれている。

7日前 No.56

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「翡翠、こいつとあまり話すなよ。我々の事を知られては困る」
「はい、すみません」
翡翠は素直に謝った。琥珀は頷き、ダイアに言った。
「これから魔王様がここにいらっしゃる。お前に聞きたい事があるそうだ」
その言葉にダイアは首をかしげた。闇の魔王の事はほとんど知らない。どんな見た目かも。
ただ1つわかるのは、闇の精霊を使役する唯一の存在であるということ。
「聞きたい事って?」
琥珀も首をふる。
「あたしも詳しくは知らない。あたしは魔王様に、この事をお前に伝えるよう言われたんだよ」
「一体何でしょうかね」
翡翠は不思議そうにしているが、恐れている様子はない。彼はいつもどこかのほほんとしている。
「さあ…あ、あたしはちょいと用が出来てね。
北の方に行くついでに悪魔界へ飛んでくるわ」
琥珀が大きな翼を広げると、ダイアはその影にすっぽり収まった。琥珀は雌だが大柄で、羽を広げると八メートル程はある。
「行ってらっしゃい、琥珀さん」
「おう、無駄口叩くなよ」
そう言って琥珀は飛び立っていった。
翡翠はにこにこして見送っている。
「琥珀さんは言葉はきついけど、優しい方なんですよ」
「へえ…」
あの龍がねえ、とダイアは一人ごちる。
確かにいやな感じはしなかったが、自分をさらったのは彼女だ。
誰が黒幕なのか…

4日前 No.57

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【第26章 聖女】

 彼女は、何かを探していた。
ない。
ない。
いくら探しても、ない。
そこに、ヴラドゥレアがやって来た。
ヴラドゥレアはやれやれと言ったように息を吐く。
「まーだやってる…」
彼女は顔をあげた。
「ないの。さがしもの」
「あっそう」
ヴラドゥレアは適当に返事をした。
「どこにあるの?」

「そうねえ…」
ヴラドゥレアはにやりと笑った。

3日前 No.58

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「光」。美しい白の光は、何かを探していた。
光は何かの名を呼ぶが、答えが来ることはなかった。

「影」。光の探す者、影は空を見た。
白い光が自分を探している。
答える気はなかった。
私は、私。光のお守りではない。

2日前 No.59

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【第28章 問答と真偽と】

 「ダイアよ。私の問いに正直に答えよ」
「は、はい」
初めて見る闇の魔王は、ダイアは内心驚いた。
ダイアは、もっと恐ろしい怪物の姿を想像していたが、本当はただの大きな黒猫だった。
闇の魔王は北風のような小さな声で言った。
「お主等は、何故宝玉を集める」
ダイアは戸惑った。予想していた質問とは大きく違ったのだ。きっと『エルドロイドはどこにいる』といった質問をされると思っていた。
だが、早く答えなければならないような雰囲気を感じ、正直に答えた。
「ミアちゃん…ミアラ王女や、フェニックス達の国を救うんです」
闇の魔王は、僅かに驚いたようだ。耳をピクリと動かした。
「…メルディオ王国を?」
「はい。…十の宝玉を集めて、ヴラドゥレアを倒すんです。ヴォイド.フォールも…」
そこまで言って、ダイアはしまったと思った。
(言い過ぎたかな…)
だが闇の魔王はヴォイドの正式な部下ではない。
もしかしたら、この問答も単なる好奇心なのかもしれない。そうであってほしい。
「…倒す?あの女と滅びの王を?」

4時間前 No.60
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