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魔界王国物語

 ( 小説投稿城 )
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ヴラドゥレア @warabimoti ★Android=xdCufVxL3h

【序章】

万物の王であり果てしなき魔王は、
全てを創り、眠りけり

白き龍は『光』を、黒き龍は『影』を司りけり

光の者いる限り、世は影で満たされぬ
影の者いる限り、世は光で満たされぬ

光の者、独り寂しく、自らを恨みけり
影の者、独り苦悩し、自らを恨みけり

両者、冠に魔力を託し、旧き闇に敗れたり

メモ2017/10/07 09:25 : 闇月 @warabimoti★Android-xdCufVxL3h

 ※このお話は、私の妄想が爆発し、呪われた右腕の封印を解いた末路です。ありきたりなダークファンタジーです。

さらに、多くの宗教の伝承が混ざっているカオスな事態。

気軽にいいねを押してもらえるとうれしいです。

2017 8.8 アクセス数がまさかの700超え!ありがとうございます!

変な奴ですがコメントお願い致します。


ちなみに名前のみで出たガルーダはエルドロイドの愛獣です。主人と共に逃げていました。


【目次】(不定期更新します)


第一部 炎の章 >>1-25


第二部 氷の章 >>26-43


第三部 光の章 >>44-78


第四部 風の章 >>79-83

切替: メイン記事(86) サブ記事 (13) ページ: 1 2


 
 
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闇月 @warabimoti ★Android=xdCufVxL3h

ヴリザードの声は、宮殿の壁に反響して冷たく響いた。自分には、平和とは何かわからない。
それは、デスストームもアルドも同じ。
このままでは、魔界を救うどころか宝玉も手に入らない。
誰もが諦めかけた時、王女が言った。
「人と魔族が一緒に暮らせる、争いのない世界」
「……」
ヴリザードは黙っている。王女は続けた。
「身分も、種族も関係ない世界」
「…王族で、国も仲間も守れなかった汝の言うことか」
その言葉は、王女の心に氷柱のように刺さった。
ヴラドゥレアによって奪われた、大切なもの達。
母のラシア。愛鳥のファロン。たくさんの友達。
守れなかった。救えなかった。
けど…
「確かに私は、国も仲間も、ダイア守れなかった。
けど、これから助けることはできる」
王女はヴリザードの澄んだ瞳を見つめた。
「…これから、助ける?その様な事が可能なのか?
フェニックスの言葉は真実なのか?」
「フェニックス?」
アルドが訝しげに尋ねる。フェニックスが宝玉をくれたことを知っているのだろうか。
「エルドロイドがいなくなって暫く…そう、この間だ。
フェニックスが、人間の子供達に宝玉を渡したと我に打ち明けた。祖国を救えるかもしれないと」

5ヶ月前 No.37

闇月 @warabimoti ★Android=xdCufVxL3h

それを聞いて、王女はハッとした。
「もしかして、あなたはフェニックスと同じ、メルディオ王国の…?」
フェニックスは炎の城で言っていた。
『僕らの国、メルディオ王国も石にされた』と。
ヴリザードは頷いた。
「フェニックスから聞いたのか。伝説の子よ。
流石、その冠を託されるだけの事はある」
「この冠を知っているの?」
王女は驚いた。母が石になる直前、自分に預けた冠。
オランシア王家に伝わるものだと、母から聞いた。

5ヶ月前 No.38

闇月 @warabimoti ★Android=xdCufVxL3h

「バフォメットが予言した。汝等の事を
『旧き闇に敗れた二体の龍は、冠を受け継ぐ伝説の子らによって力を取り戻す』…と」
デスストームは顔を上げた。
「それは本当ですか…?龍が力を取り戻すと?」
(デスストームさん?)
デスストームの声は、必死だった。
そうであってほしい、そうであるように。

(この冠は、何かとてもすごい力を持ってるんだ。
でも私は、冠の本当の力を知らない…)

5ヶ月前 No.39

闇月 @warabimoti ★Android=xdCufVxL3h

オランシア王家の者は代々、この冠を守ってきた。
だが皆、その本当の力を知ってはいなかった。
(それは私も同じ。けど、これがあれば魔界を救える。…バフォメットさんは、何か知っているのかな?)
王女はバフォメットに話を聞きたいと思った。
その為には、ヴリザードに彼女の居場所を聞かなければならない。
「…ミアラ、どうする?」
アルドが小声で囁いた。
「…私に任せてもらえるかな。ヴリザードにお願いしてみる」
アルドは驚いたようにこちらを見たが、何も言わなかった。

王女は覚悟を決めると、ヴリザードに向かって歩き出した。

5ヶ月前 No.40

闇月 @warabimoti ★Android=xdCufVxL3h

【第21章 少女は笑った 優しく無垢に】

 「ヴリザード、お願いがあるの」
「…ああ、宝玉か」
ヴリザードは翼をひらひらと動かした。辺りに粉雪が飛び散った。
「私達の仲間になって、一緒に来て。」
その言葉にヴリザードは耳を疑った。
この娘はなんと言った?我に、仲間になれと?
「宝玉が欲しくないのか?」
「もちろん欲しいけど、私はあなたやエルドロイド達と、この世界を守りたい」
「……」
ヴリザードは首を傾げた。
(この人間達は、我を必要としているのか?)
遠い過去の思い出が、微かに甦る。
心の奥に封じたはずの思い出が。

ーーーーーー
『…我は悪魔、それに魔王だぞ。人間が近付くべきではない』

『え〜今さらですよそんなの。私は悪魔を嫌ってはいません』
そう言って、少女は笑う。

『…我の体は氷と雪そのもの。近くに入れば凍えてしまうし、汝は我の手を取ることも出来なかろう』

『そんなことありませんよ?とても涼しいです』
無垢に。花が咲くように。

『…他の仲間がいるだろう。奴等のもとへ行け』

『はーい、わかりました。でも、これだけは言っておきますよ』
少女は悪戯っぽく微笑んだ。

『…何だ。』

『手の冷たいひとは、心のあったかいひとなんです』
少女は…最後まで笑っていた。


5ヶ月前 No.41

闇月 @warabimoti ★Android=xdCufVxL3h

「…最後まで我と共に歩むか、オランシアの末裔よ」
その問いに、王女は笑って答えた。
「もちろん!いっしょに行きましょう、ヴリザード」
王女はヴリザードに手を差しのべた。

 ヴリザードは笑った。今までの冷たい笑みではなく、温かい笑顔で。
「見事だ、ミアラ王女。これほどまでに我を受け入れ、
              ・ ・
手を差しのべた者は魔界にはいなかった。」
雪は止み、陽光が城を照らした。
氷の魔王は、優しく笑った。


4ヶ月前 No.42

闇月 @warabimoti ★Android=xdCufVxL3h

「氷の魔力を汝に授けよう。どうかこのように力が、希望への架け橋となるように」
ヴリザードの宝玉と頬の紋章が光り、王女はかつてない力が自分を包むのを感じた。
(これが、氷の宝玉の力…)
「ありがとう、ヴリザード」
王女が笑うと、アルドとデスストームも続けた。
「どうもありがとう。ヴリザードさん」
「感謝いたします。ヴリザード様」
ヴリザードは頷くと、両翼を大きく広げた。
「さあ、エルドロイドとフェニックスの元に行こうぞ。
我が友よ」

4ヶ月前 No.43

闇月 @warabimoti ★Android=xdCufVxL3h

第三部に入ります。

【第22章 サバトの黒山羊を探して】

 王女達がヴリザードと共に氷の宮殿を出ると、エルドロイドとフェニックスが待っていた。
「嘘だろ…いっつも引きこもってるヴリザードが外に出てきてる…」
「何か言ったか焼き鳥」
ヴリザードがギロリと睨んだ。
「ヴリザード、元気だったか」
エルドロイドがヴリザードに歩み寄る。
彼等が顔を合わせるのは数千年ぶりだった。
「ああ。汝も、色々あったようだな…」
「協力してくれて、本当に心強い。礼を言う」
ヴリザードはいや、と首をふる。
「我は長い間、他の魔王達のいさかいを見て見ぬふりしてきた。正直、関わりたくなかったのだ。
だがそれでは何も変わらぬと、この者達が教えてくれた。」

(…僕の知ってるヴリザードはどこにいってしまったんだ…)
フェニックスは天を仰いだ。

4ヶ月前 No.44

闇月 @warabimoti ★Android=xdCufVxL3h

その日は野宿をすることにして、一行は近くの森に入った。

「ダイア、大丈夫かなぁ」
王女が夕食の野菜を切りながら、心配そうに言った。
今夜はカレーだ。材料はデスストームが、悪魔界から脱出する際に持ち出したものだ。
「…生きてはいるよ」
アルドがルウを割りながら答えた。
「私もそう思います」
デスストームも言った。
「どうしてそう思うの?」
「闇の魔王様は、私達を試しているのですよ。
宝玉を渡すに相応しいか」
「そして、君達の事を探る為に猫君をさらったんだよ。あ、僕辛口ね」
火を起こしながら、フェニックスが言った。
エルドロイドは水汲みに行き、ヴリザードは丸くなって眠っている。さっきフェニックスが「サボるな!」と飛びかかって返り討ちにあっていた。
「そういえば、フェニックスはヴリザードと仲が悪いの?」
王女がふと尋ねると、フェニックスは嫌そうに羽を膨らませた。
「あ〜…まあね。そもそも性質が違うし、ヴリザードって口が悪いから仲間内でも浮いてたかな」
確かにヴリザードはかなり毒舌だ。だがそれはわざとではなく、天性のものだ。…それがある意味やっかいだが…

「そうなんだ。でも二人がいなくなって、悪魔達は怪しく思わないかな?」
アルドが聞く。
「大丈夫大丈夫!実際に政治を行ってたのは六大魔王だから。それに僕は城を留守にするなんてしょっちゅうだし、ヴリザードは部下こそいたけど、ほったらかして引きこもり〜」
…魔王がみんなで世界を治めてるんじゃないんだ。
王女とアルドは思った。
確かに魔王同士が仲よくしているのは想像しにくい。
と、ここで二人は気になる言葉を見付けた。
「…ねえフェニックス。六大魔王って…?」
フェニックスとデスストームは顔を見合わせ、話しちゃおうか?どうしましょう。と相談していた。
するといつの間にやらヴリザードが背後に立っていた。

「話せば良かろう。仲間に隠し事はご法度だぞ?」
(……!)
アルドは、フェニックスが一瞬狼狽えたのに気付いた。
ヴリザードは何気なく言ったつもりだろうが、フェニックスは明らかに動揺している。
(フェニックス…?)


4ヶ月前 No.45

闇月 @warabimoti ★Android=xdCufVxL3h

デスストームが口を開いた。
「以前、エルドロイド様が話された通り、六大魔王は悪魔軍の最高幹部。エルドロイド様が抜けた今、他の5名が軍の指揮及び仕事をしているはずです」
フェニックスも付け足した。
「…だからって、他の5人がエルドロイドの為に仕事してるわけじゃない。むしろヴォイドは、邪魔なエルドロイドがいなくなって歓んでるんじゃないかな」
「…そうか、エルドロイドはヴォイドに、『力こそ全て』という考えを改めるように相談したんだよね」
アルドが思い出したように言った。
けれど他の六大魔王は、ヴォイドの考えに賛成なのだろうか?エルドロイドのように、嫌々ではないだろうか?

4ヶ月前 No.46

闇月 @warabimoti ★Android=xdCufVxL3h

第23章【魔王は友か否か】

 夜、悪魔城の廊下を、二人の兵士が歩いていた。
春に入ったばかりの若い兵士が、先輩の兵士に話しかけた。
「魔王様達って、仲が悪いんですかね?」
先輩兵士は、驚いたように足を止めた。
「何故そう思う?」
「エルドロイド様が逃げたくらいだし、フェニックス様とヴリザード様はケンカばかりだし…」
先輩兵士は、わかってないな、と呆れたように言った。
「確かに魔王様達は、互いに思想が違ったりして、いさかう事もあるだろう。だが実際、大抵の魔王は、とても仲がいいんだ」
若い兵士はびっくりした。ヴラドゥレアなんかはお世辞にも、他の魔王と仲がいいとは思えない。
確かにグラディオンと南の魔王メラディオンは共にいることが多いし、アザトースは基本的に家臣にも変わらず接してくれる。
「嘘だと思うんなら、今度よく見てみな。ここだけの話、正直言ってあの方々は子供っぽいところがあるからな」
(子供っぽい…だと…)

4ヶ月前 No.47

闇月 @warabimoti ★Android=xdCufVxL3h

【第24章 黒山羊バフォメット】

 「そういえば、バフォメットはどこにいるの?」
夕食のカレーを頬張りながら、王女はヴリザードに尋ねた。ヴリザードは福神漬けを食べながら答える。
「バフォメット卿は、エルドロイド様が治めていた世界
『幻夢界』にいるだろう。あそこは争いのない平和な国だ」
「エルドロイドは、あそこの国王なんだよ!」
エルドロイドの頭の上から、ジェニパーがひょっこり現れた。皆は驚いた。
「ジェニパー!どこに行ってたの?」
アルドは飛んできたジェニパーを肩に乗せた。
「僕はね、先に幻夢界に行って偵察隊がいないか確かめてたんだ。いまのところ、ヴァルディスは来てないみたい。今の内に急いだ方がいいよ」

4ヶ月前 No.48

闇月 @warabimoti ★Android=xdCufVxL3h

それを聞いて、アルドが質問した。
「ヴァルディスって誰ですか?」
ジェニパーは羽をぱたぱたさせて答えた。
「偵察隊の隊長にして、悪魔の弁護士だよ。
貴族の娘で、とっても頭がいいんだ」
「へえ…女の子なんだ…」
王女は意外に思った。オランシア王国では、女性が隊長を務めたりすることは少なかった。もちろんいなかったわけではないが、高位の位には男性が就くことが多かったのだ。
「ヴァルディスは優秀な悪魔だ。微かな痕跡も見逃さぬ。一刻も早く、幻夢界に行った方がよいな」
ヴリザードが立ち上がった。
エルドロイドとデスストームも続いた。
エルドロイドが皆に言った。
「幻夢界までは、瞬間移動魔法で行こう。
その方が早いし、気付かれずにすむ」

4ヶ月前 No.49

闇月 @warabimoti ★Android=xdCufVxL3h



ー悪魔城の何処か。魔王すら滅多に足を踏み入れない最深部にて。
ヴォイド.フォールと数人の魔王が、巨大な水晶の前に跪づいていた。
水晶の中には、漆黒の翼と大きな角を持つ、大きな魔物が眠っていた。…いや、魔物ではない。
其こそが、悪魔界と悪魔を創造し、天使に封じられた混沌の邪神・イルテバークなのだ。
毎年6月6日[悪魔の日]には、魔王達は偉大なるイルテバークを偲び、復活を祈る。

魔王達は詠唱した。

『…悪魔を造り給うた大いなる邪神・イルテバークよ。
我等は貴方を讃え、貴方を偲ぶ。
どうかこの先も、我等を見守り、導き給え。
悪魔界を栄えさせ給え。
今一度、その御姿を見せ給え。
我等、魔族の王なりけり。汝、魔王の主なりけり』

4ヶ月前 No.50

闇月 @warabimoti ★Android=xdCufVxL3h



エルドロイドの瞬間移動魔法で、王女達は幻夢界にある王国へと到着した。
「ここが、エルドロイド様の国です」
「うわあ…!」
「すごい…!」
王女とアルドは感動して、辺りを見回した。
その国は、今まで目にしたどの場所よりも広大で美しかった。緑が溢れ、空からは太陽の光が降り注いでいる。

「オランシアより綺麗かも…」
王女の口から漏れた言葉を聞いて、フェニックスが呟いた。
「そりゃあ人間の建国技術には限りが」
「氷付けにして我が城の装飾品にしてやろうか」
いつもの二人は相変わらず争っている。

4ヶ月前 No.51

闇月 @warabimoti ★Android=xdCufVxL3h

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4ヶ月前 No.52

闇月 @warabimoti ★Android=xdCufVxL3h

ーーー
「バフォメット卿でしたら、城下町の広場にいるはずです。どうかお気をつけて」
話を聞いたスターダストは心配そうにしていたが、バフォメットの居場所を教えてくれた。
「ありがとうございます!」
王女達は頭を下げた。スターダストもお辞儀をした。
「僕の方こそ、エルドロイド様を宜しくお願い致します」


「あ、あれじゃない?」
フェニックスが翼で示す先には、悪魔や魔物の子供達が集まっていた。近付いてみると、広場の中心には黒い狼がいた。傍らの岩には黒山羊の頭と下半身、人間の上半身を持つ女悪魔が腰かけている。
ジェラートとバフォメットだ。





4ヶ月前 No.53

闇月 @warabimoti ★Android=xdCufVxL3h

ジェラートは子供たちに、昔話や旧い伝説を聞かせていた。
「…そして七つの罪を背負った悪魔達は、今もこの世の何処かに幽閉されているのです」
「ゆーへいってなあに?」
小さなキメラが聞いた。
「閉じ込める事だよ。七つの罪はとんでもない大罪。
だから悪いことをしないように閉じ込めたんだ。さあ、今日はこれでおしまい」
「うん!明日も話してね!」

子供達が帰ると、ジェラートはエルドロイドの方を向いて頭を下げた。
「これはこれはエルドロイド閣下。ご無事で何よりにございます。魔界の方々もようこそ幻夢界へ。バフォメット卿に御用がおありで?」
「はい、バフォメットさんの予言について…」

王女が言うとバフォメットは岩から下り、王族顔負けの優雅な会釈をした。
「私はサバトの黒山羊バフォメット。私に答えられる事でしたら、何なりと」

4ヶ月前 No.54

闇月 @warabimoti ★Android=xdCufVxL3h

「予言の事なんですけど…この冠を知っているんですか?」
王女が聞くとバフォメットは答えた。
「知っています。それは光と影の龍の力が眠った聖なる冠。その昔、旧き闇に敗れた二体の龍は、冠に力を託し魔石を奪われた。その力を呼び覚ますには、魔王達の所持する宝玉を集める他にありません」
「…他の魔王は、宝玉をくれるでしょうか」
デスストームがポツリと呟く。
バフォメットは朗らかに笑った。
「信じなさい、デスストーム。信ずれば救われんと言うでしょう?」
それからバフォメットは、他の者を振り返ると告げた。
「ここから東西南北に、それぞれ四人の魔王がいることはご存知ですか?まずは彼等に会い、力を借りなさい。大丈夫、悪魔にも情はあるはずですよ」
「はい、ありがとうございます!」
王女はバフォメットの優しい心を感じていた。
見た目は恐ろしくても、バフォメットは母のように温かかった。
「私からも、ありがとうございます」
「ありがと!」
「我も感謝する」
皆は口々に礼を言った。バフォメットは微笑む。
「どういたしまして。お役に立てたならなによりですわ」

王女達が門の方へ行き、エルドロイドが着いていこうとすると、バフォメットが声をかけた。
「ようやくわかったのですね。大切なのは、己を、心を信じる事だと」
「…ああ。わかった」
答えると、エルドロイドは歩き出した。

(エルドロイド閣下、御武運を)

4ヶ月前 No.55

闇月 @warabimoti ★Android=xdCufVxL3h

【第25章 闇の魔王の問いかけ】

 ダークキャッスルに捕らわれて数日経ったが、ダイアは生きていた。闇の魔王はどうやら自分を殺す気はないようだ。
実際、1度も姿を見ていない。
見たのは、まれに様子を見に来るあの忌々しい琥珀と、牢屋の見張りをしている翡翠という龍だ。
ダイアは翡翠と、少し仲良くなった。
「へー、ここに来る前は西の方にいたんだ」
「はい。生まれは北ですけどね」
二人が話していると、琥珀が現れた。
ダイアを運ぶとき広げていた翼は、畳まれている。

4ヶ月前 No.56

闇月 @warabimoti ★Android=xdCufVxL3h

「翡翠、こいつとあまり話すなよ。我々の事を知られては困る」
「はい、すみません」
翡翠は素直に謝った。琥珀は頷き、ダイアに言った。
「これから魔王様がここにいらっしゃる。お前に聞きたい事があるそうだ」
その言葉にダイアは首をかしげた。闇の魔王の事はほとんど知らない。どんな見た目かも。
ただ1つわかるのは、闇の精霊を使役する唯一の存在であるということ。
「聞きたい事って?」
琥珀も首をふる。
「あたしも詳しくは知らない。あたしは魔王様に、この事をお前に伝えるよう言われたんだよ」
「一体何でしょうかね」
翡翠は不思議そうにしているが、恐れている様子はない。彼はいつもどこかのほほんとしている。
「さあ…あ、あたしはちょいと用が出来てね。
北の方に行くついでに悪魔界へ飛んでくるわ」
琥珀が大きな翼を広げると、ダイアはその影にすっぽり収まった。琥珀は雌だが大柄で、羽を広げると八メートル程はある。
「行ってらっしゃい、琥珀さん」
「おう、無駄口叩くなよ」
そう言って琥珀は飛び立っていった。
翡翠はにこにこして見送っている。
「琥珀さんは言葉はきついけど、優しい方なんですよ」
「へえ…」
あの龍がねえ、とダイアは一人ごちる。
確かにいやな感じはしなかったが、自分をさらったのは彼女だ。
誰が黒幕なのか…

3ヶ月前 No.57

闇月 @warabimoti ★Android=xdCufVxL3h

【第26章 聖女】

 彼女は、何かを探していた。
ない。
ない。
いくら探しても、ない。
そこに、ヴラドゥレアがやって来た。
ヴラドゥレアはやれやれと言ったように息を吐く。
「まーだやってる…」
彼女は顔をあげた。
「ないの。さがしもの」
「あっそう」
ヴラドゥレアは適当に返事をした。
「どこにあるの?」

「そうねえ…」
ヴラドゥレアはにやりと笑った。

3ヶ月前 No.58

闇月 @warabimoti ★Android=xdCufVxL3h


「光」。美しい白の光は、何かを探していた。
光は何かの名を呼ぶが、答えが来ることはなかった。

「影」。光の探す者、影は空を見た。
白い光が自分を探している。
答える気はなかった。
私は、私。光のお守りではない。

3ヶ月前 No.59

闇月 @warabimoti ★Android=xdCufVxL3h

【第28章 問答と真偽と】

 「ダイアよ。私の問いに正直に答えよ」
「は、はい」
初めて見る闇の魔王は、ダイアは内心驚いた。
ダイアは、もっと恐ろしい怪物の姿を想像していたが、本当はただの大きな黒猫だった。
闇の魔王は北風のような小さな声で言った。
「お主等は、何故宝玉を集める」
ダイアは戸惑った。予想していた質問とは大きく違ったのだ。きっと『エルドロイドはどこにいる』といった質問をされると思っていた。
だが、早く答えなければならないような雰囲気を感じ、正直に答えた。
「ミアちゃん…ミアラ王女や、フェニックス達の国を救うんです」
闇の魔王は、僅かに驚いたようだ。耳をピクリと動かした。
「…メルディオ王国を?」
「はい。…十の宝玉を集めて、ヴラドゥレアを倒すんです。ヴォイド.フォールも…」
そこまで言って、ダイアはしまったと思った。
(言い過ぎたかな…)
だが闇の魔王はヴォイドの正式な部下ではない。
もしかしたら、この問答も単なる好奇心なのかもしれない。そうであってほしい。
「…倒す?あの女と滅びの王を?」

3ヶ月前 No.60

闇月 @warabimoti ★Android=xdCufVxL3h

闇の魔王はしばらく黙り、思案していたがやがて言った。
「…お主は、全ての宝玉を集めれば、世界が救えると本気で思っているのか?」
「?はい」
急に聞かれてダイアは少し動揺する。その為に、これまで旅をしてきたのだ。それだけが、唯一の希望だったのだから…
「もし、エルドロイドがヴォイド.フォールの手先だとしたらどうするのだ?」
「どうしてですか!?そんなわけありません。エルドロイド達は平和の為にミアちゃんやアルドや、僕と一緒に宝玉を集めてるんですよ!」

3ヶ月前 No.61

闇月 @warabimoti ★Android=xdCufVxL3h

ダイアの答えに、闇の魔王は、はあ、と溜め息をついて何か呟いた。
「…………か」
「え?何て言いましたか?」
しかし闇の魔王は答えなかった。ピンクの瞳でダイアを1度だけ振り返ると、耳に付けた飾りを揺らして牢を後にした。
ダイアは訳がわからずきょとんとする。
「…何だったんだよ、もう…」



「よろしかったのですか?エルドロイドの居場所を聞かなくて」
配下の魔物が聞いた。
「良い。あれでは何を言っても無駄だ。私は無駄な事は御免蒙りたい。それに…」
1度口をつぐみ、闇の魔王は言った。
「三千年の時を経て再び紡がれる『人と魔族の絆』…それを私の手で壊すのは気が進まぬ」
「きっと全ては、三千年前から始まったんですね」



 全ての始まりは三千年前。
時の彼方に忘れ去られ、人々が語らざる真実。
人間の王と天使と72の悪魔、そして…
_ひとりの少女によって紡がれた、本当の゙゙“絆”

3ヶ月前 No.62

闇月 @warabimoti ★Android=xdCufVxL3h

【第29章 子守唄(ララバイ)】

 「さあ、東西南北、何処から行く?」
幻夢界を後にして、王女が言った。
「ここより最も近いのは西の城だな」
ヴリザードが西を指して言う。
フェニックスがゲッという顔をした。
「ああ…あの仔犬。あいつ生意気なんだよなー」
「貴様が言うな焼き鳥」
ヴリザードが一蹴する。
「…泣くよ?」

 「西の魔王ってどんなの?」
王女がデスストームに聞いた。
「西の魔王様は、一見小さな仔犬の姿ですが本来は巨大な犬神。力は強大です」
デスストームの言葉にフェニックスがつけ足した。
「あとすっごいえばるの」
「…王女、夕食のピザの鶏肉が決まったぞ」
それを聞いたヴリザードが真顔で王女に言う。
「あ、ほんと?やったね」
フェニックスが真っ青になった。大慌てでヴリザードに詰め寄る。
「え、それ僕!?普通肉はニワトリでしょ!?」
「黙れ鳥もどき。貴様は冗談がわからんのか」
「大真面目な顔でボケるな!!」
「本当に貴様使うぞ」
「すみませんでした」


3ヶ月前 No.63

闇月 @warabimoti ★Android=xdCufVxL3h

 みんなでわいわい言いながらピザを食べ、そろそろ夜もふけてきた。他のメンバーは寝ていたが、王女はなかなか寝付けず、崖から足をぶらぶらさせていた。
(フェニックスとヴリザードは協力してくれたけど、西の魔王はどうだろう…)
一人考え事をしていると、ヴリザードがやって来た。
「王女、寝れんのか?」
そう言ってヴリザードは、王女の隣に腰掛けた。
「…魔界の星空は美しいな。悪魔界とは大違いだ」
「悪魔界には星がないの?」
王女が尋ねる。
「星どころか、朝も昼もない。永遠に暗い夜。唯一の光は紅い満月のみ」
「…そうなんだ…寂しくない?」
埋まれたときからずっと夜しか知らずに育つなんて、王女には耐え難かった。綺麗な朝焼けも、燃えるような夕陽も知らずに、血のような満月しか見ないで生きていくなんてー。

3ヶ月前 No.64

闇月 @warabimoti ★Android=xdCufVxL3h

「…ヴリザードも眠れないの?」
王女が尋ねるとヴリザードは首をふった。
「いや、氷龍は夜行性だからな」
そういえばヴリザードはこの前のカレー作りの時も寝ていたと王女は思い出した。
「そうなんだ、私は色々考えちゃって寝れなくて…
こんなときには歌でも歌おうかな」
王女は歌った。昔、母が、よく聞かせてくれた子守唄を



眠れ、眠れよ愛しい我が子
母の優しい歌声で
澄んだ瞳を静かに閉じて
どんな夢をみているの?
どんな顔をしているの?
笑っているの
泣いているの
眠る、眠るよ愛しき我が子
母の優しい腕のなかで


3ヶ月前 No.65

闇月 @warabimoti ★Android=xdCufVxL3h

「…子守唄か」
「うん。ママが、よく歌ってくれた」
ヴリザードは珍しく優しい声で言った。
「…一刻も早く旧き闇やヴォイドを倒し、母君や民を救わねばな」
王女はにっこりと笑った。
「うん!ありがとうヴリザード。じゃあ、私そろそろ寝るね。おやすみ」
「ああ」
 王女が行ってしまうと、氷の魔王ヴリザードは呟いた。
「…母とは、いいものだな。星明かりのように優しく心地よい。我も…母が欲しかった」
その声は誰にも聞こえず、夜闇に溶けた。

3ヶ月前 No.66

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【第30章 西の魔王スヴェート】

 「おはよ〜」
「おはよう」
「おはようございます」
皆が朝の挨拶を交わした。今日は西の魔王スヴェートの元へと向かう。
「よーし、朝ごはんを食べたら西の魔王の所へ出発!」
王女が叫んだ。それにアルド達も応える。
「「「お〜!」」」
すっかり仲良くなった子供達とフェニックスに、デスストームとヴリザードは顔を見合わせ、思わず笑い合った。

西方へと歩き続けて辿り着いたスヴェートの城は、どこもかしこも金銀財宝で飾られ、とても豪華だった。
(すごーい…)
王女が辺りを見回していると、黒猫の姿をした魔族がやって来た。
「ようこそ。わたくしは側近のレイルツィアです」
「レイルツィア様、スヴェート様に御会いしたいのですが」
デスストームが言うと、レイルツィアは頷き一言「こちらへ」と言って歩き出した。

2ヶ月前 No.67

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2ヶ月前 No.68

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「スヴェート、話がある」
エルドロイドが真剣な顔で言う。
「…聞いてはやろう」
 話を聞くと、スヴェートは大きな尻尾をぱたぱたさせた。
「…成る程な。だがエルドロイド、それがどれ程危険で無謀な行為なのかわかっておるのか?」
「ええ。現在ほとんどの悪魔、及び魔物はヴォイド側に付いています。彼に逆らえばどうなるか、私達は身に染みて知っています」
レイルツィアも言った。
灼熱の業火で焼かれた者。
その鋭い刃にかかった者。
鈍いに冒された者……
数多くの者が抗い、無情に裁かれてきた。
そして今、その怒りの矛先はエルドロイド達に向けられている。
己を裏切った者と、彼に協力する者に。

2ヶ月前 No.69

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「その様な残酷な世界に終止符を討つ為に、我々は宝玉を集めている。だからスヴェート、そなたの力を貸してほしい。宝玉を、王女に渡してはくれまいか」
エルドロイドの言葉に、スヴェートはうむむ、と考え込んだ。スヴェートの持つ『光の宝玉』は、十個の中で唯一光の魔力を秘めている。彼の名前も、『光』を意味する言葉だ。
(ヴォイドにこの事が知れたら、我も無事ではいられぬ。かと言って、この者達を見捨てるわけにもいくまい。さて、どうしたものか…いや、考えるまでもないな)
スヴェートは顔を上げ、王女達の顔を順々に見た。

2ヶ月前 No.70

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「…よいだろう。その申し出聞き入れた」
王女達がパアッと顔を輝かせる。
「本当に!?ありがとうスヴェートさん!」
王女が喜ぶとスヴェートはふん、と鼻を鳴らした。
「礼など要らぬ。我は我の正しいと思うことをしたまでだ。…もっとも、貴様らが罰されようと自業自得と思え」
それから彼は玉座から飛び降り、トテトテと王女に歩み寄ると3つ目の宝玉・光の宝玉を手渡した。
そしてフェニックスとヴリザードに向けて言った。
「フェニックス。ヴリザード。我が命と軍の命運、貴様らに預けよう。この者達を守ってやれ」
「やっぱ生意気〜…でもわかった!」
「任せておけ。死なせはせぬ」
二人は交互に答えた。
スヴェートは頷くと、玉座に戻り、目を閉じた。

2ヶ月前 No.71

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【第31章 南へ】

 門の所まで来ると、側近のレイルツィアが言った。
「皆様は、これからどこへ?」
一同は顔を見合わせた。
特にこれといった目的地はない。
「…他の三方位の魔王の所…かな?」
アルドの言葉にデスストームも賛同する。
「それが良いでしょう。西の魔王の他にこの魔界にいるのは東、南、北の魔王くらいですから」
「…なら、後は悪魔界に…?」
「…ええ」
王女とアルドは少し怖くなった。
それはつまり、敵の本拠地.悪魔界へ足を踏み入れるという事だ。残る魔王達が必ずしも友好的とは限らないし、エルドロイドやデスストームの身も危ない。
先はまだまだ遠いのだと、改めて思い知らされる。

2ヶ月前 No.72

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すると、そんな彼らを見てレイルツィアが言った。
「何かできる事があれば言ってください。最善を尽くしますがゆえ」
「うん。ありがとうレイルツィアさん」
王女はそう言ったが声には元気がない。
「…そういえば、宝玉を集めているという事は王女様達は、ダークキャッスルに向かうのですか?」
「いつか。私達の大切な友達が、琥珀にさらわれたの」
レイルツィアは驚いたようだった。
「琥珀様に…?それはさぞお辛いでしょう。ご無事だといいですね…もし、どの方角へ行くかお迷いでしたら、南はどうでしょう」
「南?メラディオンの所か…いいかも」
フェニックスが瞳を輝かせると、ヴリザードも言った。

「汝と同意見とは非常に不覚極まりないが、南方が一番良かろう」
「最初の方は聞かなかったことにして、エルドロイド、それでいい?」
エルドロイドが答えた。
「ああ。それでいい」

2ヶ月前 No.73

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王女が手を挙げた。
「あの…南の魔王って?」
ヴリザードが手短に説明する。
「炎と風の魔法に長けた悪魔だ。普段は城を留守にする事が多いがこんな状況だ。恐らく我々以外の魔王は自分の担当区域にいるはず」
ヴリザードの説明が終わると、デスストームが言った。
「ではレイルツィア様。スヴェート様によろしくお伝えください」
「ええ。お気をつけて」

こうして一同は、西の城を出た。

2ヶ月前 No.74

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【第32章 法の守り人】

 少し前、王女達がスヴェートの元へ出発した10分後、悪魔軍の偵察隊は森へ到着した。
彼らを率いるのは、黒髪に薔薇を飾った深紅の瞳の少女。彼女の名は、ヴァルディス.ロズフィエル.バールデール。悪魔界の大貴族バールデール一門の息女にして、あらゆる法を知り尽くした弁護士でもある。
ヴァルディスはその場に屈み、落ちていた枝を拾った。
少し焦げている。
(たとえ焚き火の跡を消そうと、私は誤魔化せない。
彼らは昨日ここで夜を明かし、西へ向かった)
「ヴァルディス様、奴らは如何いたしましょう」
部下の一人が尋ねる。
「…貴方達はこのまま、彼らを追いなさい。私は城へ戻り、ヴラドゥレア様に報告を」
「御意にございます」
部下が返事をした瞬間、ヴァルディスは本来の姿である黒龍へと変わり、大空へ飛び立った。

2ヶ月前 No.75

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ーーーーーーーーーーーー
「報告に上がりました」
人の姿に戻ったヴァルディスは、ヴラドゥレアの背に声をかけた。ヴラドゥレアは振り向いた。
「あらヴァルディス。早かったわねえ。それで、あいつらは見つかった?」
「残念ながら特定は出来ませんでしたが、アルカーナの森にて焚き火の跡を痕跡を見つけました。位置から察するに、西へ向かったものと考えられます」
じっと聞いていたヴラドゥレアは口元を緩ませた。
「へえ?ならあいつらは、宝玉を集めてるわけね?それで国を戻そうとして。だとしたら無駄骨ね。魔王達がそう簡単に渡すわけが…」
ヴラドゥレアが言いかけたが、ヴァルディスがそれを遮った。
「…それが、フェニックス様とヴリザード様は、すでに人間達についたようで」
「何ですって…!?」
ヴラドゥレアの声が明らかに低くなる。それもそのはずだ。仲間が、またも裏切ったのだから。
「確かなの?」
「念の為森の魔物にも聞きましたが、間違いないと…」
「……」
ヴラドゥレアは怒りを抑えきれず、近くの石壁に爪を突き立てた。残った爪痕に、居合わせた部下達は身を縮めた。
ヴラドゥレアの横にいた魔王達も、嫌な場に出くわしてしまった、と心の中で毒づいた。ヴラドゥレアはこうなると怒りが収まるのにしばらくかかるのだ。さらにこれを、ヴォイドが耳にしたら…
(…怪我人が出るかもな)
(怖いこと言わないでよ…)
(仕事が増えるのは嫌ですよ、私は)
(おい軍医)
魔王達はヒソヒソ話し出した。

2ヶ月前 No.76

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少しでもヴラドゥレアの怒りを鎮めた方がいい。
放っておくと誰か石にされかねない。
(とは言っても…)
アザトースが口を開く。
(フェニックスはわからなくもないけどさ、まさかヴリザードまで…)
他の者も頷いた。
(それは、我々としても気になるな)
(何にせよ、その人間を甘く見てはいけませんね)
と、ヴラドゥレアがこちらを鬼の形相で睨んだ。
「コソコソコソコソ話してんじゃないわよこの魔王共が!」
「「「…チッ」」」
「今舌打ちしたわね!?したでしょ!?石にするから前に出なさい!」
魔王一同はえ〜…という顔でヴラドゥレアを見た。
石になるなんてまっぴらごめんだ。

2ヶ月前 No.77

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すると、先程からずっとモニター前で仕事をしていたモーメントが呆れたように口を開いた。
「お前達、ふざけてないで持ち場に戻れ。ヴラドゥレアも一々怒るな」
「…はいはい。で、ヴァルディス。それ以外に何もわからなかったの?」
ヴァルディスは頷き、手元のファイルを開いた。
「はい、他には何も。ですが1つ、気になる話が…」
ヴラドゥレアは耳をピクリと動かした。
「気になる話?」
「ええ。あまり公にはしない方がよろしいかと」
ヴラドゥレアは口元を緩ませた。この弁護士は、何か重要な事を知ったのだ。役に立ちそうな事を。
「わかったわ、ボスと六大魔王をここへ集めましょう。それ以外は出ていきなさい!」
「…え〜、不公平!」
アザトースがブーイングする。
「あんたは六大魔王でしょうが。内容次第では他の奴等にも伝えるわよ」
その言葉に、魔王達は渋々ながら大人しく退いていった。
「お茶にしましょうか、メラディオン」
グラディオンが相方である南の魔王に話しかけた。
「…いや、遠慮しておく。私は自分の城へ戻らねばならない。貴女も、早めに持ち場へ戻った方がいい」
グラディオンは笑って言った。
「全く、連れませんねぇ。そんなに急がなくてもいいでしょうに。まあ、どうぞ?ご自由に。私は少し休みます」
「あんたさっきも休んでたろ軍医」

1ヶ月前 No.78

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遅くなってしまい申し訳ありません!新学期で前にもまして更新が遅くなると思いますが土日に頑張りますので!第四部に入ります。

【第33章 「排除せよ」】

 「それで、何の話だ?ヴァルディス」
急に呼び出されたヴォイドは、少し不機嫌そうだ。
手短に済ませた方がいいと判断したヴァルディスは、深く一礼してから手元に視線を落とした。
「…では、ご報告致します。アルカーナの森に住む魔獣によると、王女やフェニックス様達の他に、銀色の龍が共にいた…と」
『……!!』
静寂が部屋を包み込む。やがて、ヴラドゥレアが低い、小さな声で呟いた。
「…エルドロイドだわ」
アンラがぎょっとしたように叫ぶ。
「まさか!エルドロイドに限って、私達を裏切るなど…」
「だがアンラ。彼奴は出ていく前、ヴォイド.フォール様に何と言った?『力こそ全てという考えも、貴方のやろうとしている事も間違っている』と」
そう言って、ヴィルペアはモーメントを見た。
「どう思う?モーメント」
「…これは余の推測だが、エルドロイドは王女と協力し、宝玉を集め我々の計画を阻止する気では」

1ヶ月前 No.79

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1ヶ月前 No.80

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体を扉へ向けたまま、ヴァルディスは聞き返す。
ヴラドゥレアはけらけらと笑った。
「わかってるくせに。『あいつ』が可愛いあんたに手紙も寄越さず何してるのかって事よ」
ヴァルディスの拳が固く握られる。
(私が一番されたくない話をして、何のつもりだろう。その事で、お父様がどれだけ悲しんでいるか…)
「ヴラドゥレア、止めないか」
「…ふん」
ヴォイドに止められ、ヴラドゥレアはやっと口を閉じた。アザトースが非難を浴びせる。
「ちょっと!何て事言うの!?ヴァルディスの気持ちを…」
それを遮り、ヴァルディスは口を開く。
「大丈夫です。アザトース様。私は待ちます。いつまでも」
そう言ってヴァルディスは部屋を出ていった。
「…ヴラドゥレア、最低」
「何よ…あんたこそどうしてあの娘の肩ばかり持つわけ?」
「だってうちの息子のガープ達が仲良くしてもらって、」
二人の口論を片手で制止して、ヴォイドは声をあげた。
「いさかいは後でやれ。…エルドロイドが我等の元を離れた可能性は十分ある。もし今後貴奴を見付けたのであれば……」
一度口をつぐみ、五人の意識が己に向いたことを感じて彼は命じた。
「排除せよ。情けは要らぬ。」

1ヶ月前 No.81

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【第34章 絶壁】

 その頃、スヴェートの城を出た王女達は、南の魔王メラディオンの城を目指していた。
「ここから南に行くには、大きく右回しないといけませんね」
魔界地図を見ながら、デスストームが伝えた。
西から南にかけては広大な山岳地帯が広がっている。
悪魔だけなら何も問題はないが、今回は王女とアルドがいる。
「そっか…歩いてどのくらい?」
フェニックスが尋ねる。
「徒歩ですと…少なくとも3日は」
「3日か…ダイア、大丈夫かなぁ」
アルドが心配そうに呟いた。
「きっと不安だろうね。敵の城に、独りで捕まるなんて…」
王女も言いながら心配になってきた。ダイアがさらわれてから、もう数日経つ。

22日前 No.82

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それを見ていたヴリザードとエルドロイドは、小声で何かを相談し始めた。小さな話し声だった為、王女達には「…我…」「…に、て…」など断片的にしか聞き取れなかった。
(何を話してるんだろう?)
やがて、二人はこちらを見た。話は決まったようだ。
ヴリザードが口を開く。
「これから南方へ行くとなると、早くとも三、四日はかかる。食料も確保出来るかわからんし、何よりそのダイアという者が無事かも気になる。それで、我とエルドロイドが王女とアルドを乗せ、山岳を越えてはどうか、と」
それを聞いて、王女達は目を輝かせた。そうしてくれれば時間を大幅に節約できる。
「それは明暗ですが、エルドロイド様、よろしいですか?」
デスストームが聞くと、エルドロイドは当然だ、と答えた。

15日前 No.83

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フェニックスが口を出す。
「ねえねえ、僕は誰を乗せるの?」
満面の笑みで言われ、ヴリザードとデスストームは固まった。
…どうする、こいつは誰か乗せる気だ、と。
ヴリザードは冷気さえ調節すれば人間を背に乗せても問題ない。だがフェニックスはそうもいかない。
フェニックスの翼は炎で出来ている為どう考えても無理だ。だが子供のようにキラキラした瞳で見られるとデスストームは断れない。困っていると、
「フェニックス。汝は先頭で軍の者がいないか見張れ。デスストームは後ろを頼む」
ヴリザードは動じずに言った。
「え、あ、はい!」
「うん!りょーかい!」
ホッと胸を撫で下ろしながらデスストームは、改めてヴリザードの機転の速さを実感した。流石はかのヴォイドが認めた魔王だ。

8日前 No.84

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険しい山々を、王女を背に乗せたエルドロイド、アルドを乗せたヴリザードが飛んでいく。先頭と最後尾では他の二人が周囲をくまなく見渡している。
王女は、生まれて初めて見る空の景色に心を奪われた。
「うわあ…!!すごいよエルドロイド!ドラゴンはいいなぁ。空が飛べて」
それを聞いたフェニックスがボソッと
「鳥も飛べるのに…」
と呟いたが誰にも聞こえなかった。

7時間前 No.85

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【第35章 Dr.グラディオンは気まぐれ】

 所変わって悪魔城ヘル・ゲーティア。3階のテラスにて、魔王と数人の貴族がお茶を飲んでいた。
「…そういえば、ヴァルディスの報告というのは何だったのでしょう」
ヴァルディスの父である大貴族ドナイディア・デスモンド・バールデール公爵が口を開く。
「下手なこと言ってあの御方の怒りを買わないといいですねぇ」
優雅に紅茶を啜り、グラディオンが笑った。
「…先生、面白がってません?」
ドナイディアがじとーっと見つめると、グラディオンは大げさに肩をすくめた。
「まさか!可愛いヴァルディスの不幸を望むわけありません。ねえロノウェ」
そう言って声をかけたのは城のメイド長にしてソロモン72柱の序列第27位である悪魔、ロノウェだ。

7時間前 No.86
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