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魔界王国物語

 ( 小説投稿城 )
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ヴラドゥレア @warabimoti ★Android=xdCufVxL3h

【序章】

万物の王であり果てしなき魔王は、
全てを創り、眠りけり

白き龍は『光』を、黒き龍は『影』を司りけり

光の者いる限り、世は影で満たされぬ
影の者いる限り、世は光で満たされぬ

光の者、独り寂しく、自らを恨みけり
影の者、独り苦悩し、自らを恨みけり

両者、冠に魔力を託し、旧き闇に敗れたり

1年前 No.0
メモ2018/12/01 21:22 : 闇月 @warabimoti★Android-xdCufVxL3h

 ※このお話は、私の妄想が爆発し、呪われた右腕の封印を解いた末路です。ありきたりなダークファンタジーです。

さらに、多くの宗教の伝承が混ざっているカオスな事態。

気軽にいいねを押してもらえるとうれしいです。

2017 12.25 アクセス数がまさかの1000超え!ありがとうございます!

変な奴ですがコメントお願い致します。


ちなみに名前のみで出たガルーダはエルドロイドの愛獣です。主人と共に逃げていました。


【目次】(不定期更新します)


第一部 炎の章 >>1-25


第二部 氷の章 >>26-43


第三部 光の章 >>44-78


第四部 風の章 >>79-104


第五部 闇の章 >>105-120

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闇月 @warabimoti ★Android=xdCufVxL3h

「…よいだろう。その申し出聞き入れた」
王女達がパアッと顔を輝かせる。
「本当に!?ありがとうスヴェートさん!」
王女が喜ぶとスヴェートはふん、と鼻を鳴らした。
「礼など要らぬ。我は我の正しいと思うことをしたまでだ。…もっとも、貴様らが罰されようと自業自得と思え」
それから彼は玉座から飛び降り、トテトテと王女に歩み寄ると3つ目の宝玉・光の宝玉を手渡した。
そしてフェニックスとヴリザードに向けて言った。
「フェニックス。ヴリザード。我が命と軍の命運、貴様らに預けよう。この者達を守ってやれ」
「やっぱ生意気〜…でもわかった!」
「任せておけ。死なせはせぬ」
二人は交互に答えた。
スヴェートは頷くと、玉座に戻り、目を閉じた。

1年前 No.71

闇月 @warabimoti ★Android=xdCufVxL3h

【第31章 南へ】

 門の所まで来ると、側近のレイルツィアが言った。
「皆様は、これからどこへ?」
一同は顔を見合わせた。
特にこれといった目的地はない。
「…他の三方位の魔王の所…かな?」
アルドの言葉にデスストームも賛同する。
「それが良いでしょう。西の魔王の他にこの魔界にいるのは東、南、北の魔王くらいですから」
「…なら、後は悪魔界に…?」
「…ええ」
王女とアルドは少し怖くなった。
それはつまり、敵の本拠地.悪魔界へ足を踏み入れるという事だ。残る魔王達が必ずしも友好的とは限らないし、エルドロイドやデスストームの身も危ない。
先はまだまだ遠いのだと、改めて思い知らされる。

1年前 No.72

闇月 @warabimoti ★Android=xdCufVxL3h

すると、そんな彼らを見てレイルツィアが言った。
「何かできる事があれば言ってください。最善を尽くしますがゆえ」
「うん。ありがとうレイルツィアさん」
王女はそう言ったが声には元気がない。
「…そういえば、宝玉を集めているという事は王女様達は、ダークキャッスルに向かうのですか?」
「いつか。私達の大切な友達が、琥珀にさらわれたの」
レイルツィアは驚いたようだった。
「琥珀様に…?それはさぞお辛いでしょう。ご無事だといいですね…もし、どの方角へ行くかお迷いでしたら、南はどうでしょう」
「南?メラディオンの所か…いいかも」
フェニックスが瞳を輝かせると、ヴリザードも言った。

「汝と同意見とは非常に不覚極まりないが、南方が一番良かろう」
「最初の方は聞かなかったことにして、エルドロイド、それでいい?」
エルドロイドが答えた。
「ああ。それでいい」

1年前 No.73

闇月 @warabimoti ★Android=xdCufVxL3h

王女が手を挙げた。
「あの…南の魔王って?」
ヴリザードが手短に説明する。
「炎と風の魔法に長けた悪魔だ。普段は城を留守にする事が多いがこんな状況だ。恐らく我々以外の魔王は自分の担当区域にいるはず」
ヴリザードの説明が終わると、デスストームが言った。
「ではレイルツィア様。スヴェート様によろしくお伝えください」
「ええ。お気をつけて」

こうして一同は、西の城を出た。

1年前 No.74

闇月 @warabimoti ★Android=xdCufVxL3h

【第32章 法の守り人】

 少し前、王女達がスヴェートの元へ出発した10分後、悪魔軍の偵察隊は森へ到着した。
彼らを率いるのは、黒髪に薔薇を飾った深紅の瞳の少女。彼女の名は、ヴァルディス.ロズフィエル.バールデール。悪魔界の大貴族バールデール一門の息女にして、あらゆる法を知り尽くした弁護士でもある。
ヴァルディスはその場に屈み、落ちていた枝を拾った。
少し焦げている。
(たとえ焚き火の跡を消そうと、私は誤魔化せない。
彼らは昨日ここで夜を明かし、西へ向かった)
「ヴァルディス様、奴らは如何いたしましょう」
部下の一人が尋ねる。
「…貴方達はこのまま、彼らを追いなさい。私は城へ戻り、ヴラドゥレア様に報告を」
「御意にございます」
部下が返事をした瞬間、ヴァルディスは本来の姿である黒龍へと変わり、大空へ飛び立った。

1年前 No.75

闇月 @warabimoti ★Android=xdCufVxL3h

ーーーーーーーーーーーー
「報告に上がりました」
人の姿に戻ったヴァルディスは、ヴラドゥレアの背に声をかけた。ヴラドゥレアは振り向いた。
「あらヴァルディス。早かったわねえ。それで、あいつらは見つかった?」
「残念ながら特定は出来ませんでしたが、アルカーナの森にて焚き火の跡を痕跡を見つけました。位置から察するに、西へ向かったものと考えられます」
じっと聞いていたヴラドゥレアは口元を緩ませた。
「へえ?ならあいつらは、宝玉を集めてるわけね?それで国を戻そうとして。だとしたら無駄骨ね。魔王達がそう簡単に渡すわけが…」
ヴラドゥレアが言いかけたが、ヴァルディスがそれを遮った。
「…それが、フェニックス様とヴリザード様は、すでに人間達についたようで」
「何ですって…!?」
ヴラドゥレアの声が明らかに低くなる。それもそのはずだ。仲間が、またも裏切ったのだから。
「確かなの?」
「念の為森の魔物にも聞きましたが、間違いないと…」
「……」
ヴラドゥレアは怒りを抑えきれず、近くの石壁に爪を突き立てた。残った爪痕に、居合わせた部下達は身を縮めた。
ヴラドゥレアの横にいた魔王達も、嫌な場に出くわしてしまった、と心の中で毒づいた。ヴラドゥレアはこうなると怒りが収まるのにしばらくかかるのだ。さらにこれを、ヴォイドが耳にしたら…
(…怪我人が出るかもな)
(怖いこと言わないでよ…)
(仕事が増えるのは嫌ですよ、私は)
(おい軍医)
魔王達はヒソヒソ話し出した。

1年前 No.76

闇月 @warabimoti ★Android=xdCufVxL3h

少しでもヴラドゥレアの怒りを鎮めた方がいい。
放っておくと誰か石にされかねない。
(とは言っても…)
アザトースが口を開く。
(フェニックスはわからなくもないけどさ、まさかヴリザードまで…)
他の者も頷いた。
(それは、我々としても気になるな)
(何にせよ、その人間を甘く見てはいけませんね)
と、ヴラドゥレアがこちらを鬼の形相で睨んだ。
「コソコソコソコソ話してんじゃないわよこの魔王共が!」
「「「…チッ」」」
「今舌打ちしたわね!?したでしょ!?石にするから前に出なさい!」
魔王一同はえ〜…という顔でヴラドゥレアを見た。
石になるなんてまっぴらごめんだ。

1年前 No.77

闇月 @warabimoti ★Android=xdCufVxL3h

すると、先程からずっとモニター前で仕事をしていたモーメントが呆れたように口を開いた。
「お前達、ふざけてないで持ち場に戻れ。ヴラドゥレアも一々怒るな」
「…はいはい。で、ヴァルディス。それ以外に何もわからなかったの?」
ヴァルディスは頷き、手元のファイルを開いた。
「はい、他には何も。ですが1つ、気になる話が…」
ヴラドゥレアは耳をピクリと動かした。
「気になる話?」
「ええ。あまり公にはしない方がよろしいかと」
ヴラドゥレアは口元を緩ませた。この弁護士は、何か重要な事を知ったのだ。役に立ちそうな事を。
「わかったわ、ボスと六大魔王をここへ集めましょう。それ以外は出ていきなさい!」
「…え〜、不公平!」
アザトースがブーイングする。
「あんたは六大魔王でしょうが。内容次第では他の奴等にも伝えるわよ」
その言葉に、魔王達は渋々ながら大人しく退いていった。
「お茶にしましょうか、メラディオン」
グラディオンが相方である南の魔王に話しかけた。
「…いや、遠慮しておく。私は自分の城へ戻らねばならない。貴女も、早めに持ち場へ戻った方がいい」
グラディオンは笑って言った。
「全く、連れませんねぇ。そんなに急がなくてもいいでしょうに。まあ、どうぞ?ご自由に。私は少し休みます」
「あんたさっきも休んでたろ軍医」

1年前 No.78

闇月 @warabimoti ★Android=xdCufVxL3h

遅くなってしまい申し訳ありません!新学期で前にもまして更新が遅くなると思いますが土日に頑張りますので!第四部に入ります。

【第33章 「排除せよ」】

 「それで、何の話だ?ヴァルディス」
急に呼び出されたヴォイドは、少し不機嫌そうだ。
手短に済ませた方がいいと判断したヴァルディスは、深く一礼してから手元に視線を落とした。
「…では、ご報告致します。アルカーナの森に住む魔獣によると、王女やフェニックス様達の他に、銀色の龍が共にいた…と」
『……!!』
静寂が部屋を包み込む。やがて、ヴラドゥレアが低い、小さな声で呟いた。
「…エルドロイドだわ」
アンラがぎょっとしたように叫ぶ。
「まさか!エルドロイドに限って、私達を裏切るなど…」
「だがアンラ。彼奴は出ていく前、ヴォイド.フォール様に何と言った?『力こそ全てという考えも、貴方のやろうとしている事も間違っている』と」
そう言って、ヴィルペアはモーメントを見た。
「どう思う?モーメント」
「…これは余の推測だが、エルドロイドは王女と協力し、宝玉を集め我々の計画を阻止する気では」

1年前 No.79

闇月 @warabimoti ★Android=xdCufVxL3h

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1年前 No.80

闇月 @warabimoti ★Android=xdCufVxL3h

体を扉へ向けたまま、ヴァルディスは聞き返す。
ヴラドゥレアはけらけらと笑った。
「わかってるくせに。『あいつ』が可愛いあんたに手紙も寄越さず何してるのかって事よ」
ヴァルディスの拳が固く握られる。
(私が一番されたくない話をして、何のつもりだろう。その事で、お父様がどれだけ悲しんでいるか…)
「ヴラドゥレア、止めないか」
「…ふん」
ヴォイドに止められ、ヴラドゥレアはやっと口を閉じた。アザトースが非難を浴びせる。
「ちょっと!何て事言うの!?ヴァルディスの気持ちを…」
それを遮り、ヴァルディスは口を開く。
「大丈夫です。アザトース様。私は待ちます。いつまでも」
そう言ってヴァルディスは部屋を出ていった。
「…ヴラドゥレア、最低」
「何よ…あんたこそどうしてあの娘の肩ばかり持つわけ?」
「だってうちの息子のガープ達が仲良くしてもらって、」
二人の口論を片手で制止して、ヴォイドは声をあげた。
「いさかいは後でやれ。…エルドロイドが我等の元を離れた可能性は十分ある。もし今後貴奴を見付けたのであれば……」
一度口をつぐみ、五人の意識が己に向いたことを感じて彼は命じた。
「排除せよ。情けは要らぬ。」

1年前 No.81

闇月 @warabimoti ★Android=xdCufVxL3h

【第34章 絶壁】

 その頃、スヴェートの城を出た王女達は、南の魔王メラディオンの城を目指していた。
「ここから南に行くには、大きく右回しないといけませんね」
魔界地図を見ながら、デスストームが伝えた。
西から南にかけては広大な山岳地帯が広がっている。
悪魔だけなら何も問題はないが、今回は王女とアルドがいる。
「そっか…歩いてどのくらい?」
フェニックスが尋ねる。
「徒歩ですと…少なくとも3日は」
「3日か…ダイア、大丈夫かなぁ」
アルドが心配そうに呟いた。
「きっと不安だろうね。敵の城に、独りで捕まるなんて…」
王女も言いながら心配になってきた。ダイアがさらわれてから、もう数日経つ。

1年前 No.82

闇月 @warabimoti ★Android=xdCufVxL3h

それを見ていたヴリザードとエルドロイドは、小声で何かを相談し始めた。小さな話し声だった為、王女達には「…我…」「…に、て…」など断片的にしか聞き取れなかった。
(何を話してるんだろう?)
やがて、二人はこちらを見た。話は決まったようだ。
ヴリザードが口を開く。
「これから南方へ行くとなると、早くとも三、四日はかかる。食料も確保出来るかわからんし、何よりそのダイアという者が無事かも気になる。それで、我とエルドロイドが王女とアルドを乗せ、山岳を越えてはどうか、と」
それを聞いて、王女達は目を輝かせた。そうしてくれれば時間を大幅に節約できる。
「それは明暗ですが、エルドロイド様、よろしいですか?」
デスストームが聞くと、エルドロイドは当然だ、と答えた。

1年前 No.83

闇月 @warabimoti ★Android=xdCufVxL3h

フェニックスが口を出す。
「ねえねえ、僕は誰を乗せるの?」
満面の笑みで言われ、ヴリザードとデスストームは固まった。
…どうする、こいつは誰か乗せる気だ、と。
ヴリザードは冷気さえ調節すれば人間を背に乗せても問題ない。だがフェニックスはそうもいかない。
フェニックスの翼は炎で出来ている為どう考えても無理だ。だが子供のようにキラキラした瞳で見られるとデスストームは断れない。困っていると、
「フェニックス。汝は先頭で軍の者がいないか見張れ。デスストームは後ろを頼む」
ヴリザードは動じずに言った。
「え、あ、はい!」
「うん!りょーかい!」
ホッと胸を撫で下ろしながらデスストームは、改めてヴリザードの機転の速さを実感した。流石はかのヴォイドが認めた魔王だ。

1年前 No.84

闇月 @warabimoti ★Android=xdCufVxL3h


険しい山々を、王女を背に乗せたエルドロイド、アルドを乗せたヴリザードが飛んでいく。先頭と最後尾では他の二人が周囲をくまなく見渡している。
王女は、生まれて初めて見る空の景色に心を奪われた。
「うわあ…!!すごいよエルドロイド!ドラゴンはいいなぁ。空が飛べて」
それを聞いたフェニックスがボソッと
「鳥も飛べるのに…」
と呟いたが誰にも聞こえなかった。

1年前 No.85

闇月 @warabimoti ★Android=xdCufVxL3h

【第35章 Dr.グラディオンは気まぐれ】

 所変わって悪魔城ヘル・ゲーティア。3階のテラスにて、魔王と数人の貴族がお茶を飲んでいた。
「…そういえば、ヴァルディスの報告というのは何だったのでしょう」
ヴァルディスの父である大貴族ドナイディア・デスモンド・バールデール公爵が口を開く。
「下手なこと言ってあの御方の怒りを買わないといいですねぇ」
優雅に紅茶を啜り、グラディオンが笑った。
「…先生、面白がってません?」
ドナイディアがじとーっと見つめると、グラディオンは大げさに肩をすくめた。
「まさか!可愛いヴァルディスの不幸を望むわけありません。ねえロノウェ」
そう言って声をかけたのは城のメイド長にしてソロモン72柱の序列第27位である悪魔、ロノウェだ。

1年前 No.86

闇月 @warabimoti ★Android=xdCufVxL3h

ロノウェはティーカップに紅茶を注ぎドナイディアに差し出した。
「偉大なる海魔軍隊長にして軍医であるグラディオン・グラジオラス・オルシエル=デモンズロード様の慈しみは、海よりも深いと存じております」
(((え〜……)))
その場にいたドナイディア、同じ公爵のクラウディル、その娘フルフルは嘘だろ…と思った。
めんどくさがりで気分屋で、仕事も隙あらばサボるこの悪魔が??
エルドロイドがいなくなったと聞いた時も、「ああ、そうなんですか」と言ったきりだった。
そんな三人とは対照的に当の本人はにやにやしている。
「おやロノウェ。貴女はよぉくわかっていますねぇ。そうなんですよ、私って二つも役職がありますから〜」
「「「…………」」」
三人は思った。
何も言うまい、と。

1年前 No.87

闇月 @warabimoti ★Android=xdCufVxL3h

お待たせいたしました!
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
その時ロノウェがさりげなく聞いた。
「しかしグラディオン様。お早めに持ち場についた方がよろしいのでは?」
「そうだよ先生!ヴォイド様に怒られちゃうよ?」
フルフルも慌てて言った。
ただ一人の軍医である彼女の事は尊敬しているし、その美しさには感心するのだが、グラディオンは非常に気まぐれで日和見主義者だ。仕事は出来るがめんどくさがりで、主であるヴォイドやイルテバークへの忠誠心も怪しい。得体の知れない悪魔だ。その為多くの者は、グラディオンを敬うと同時に恐れていた。
グラディオンは「はいはい」と気の乗らない返事をして席を立った。
ようやく仕事をする気になったのかとフルフルはホッとした。だが去り際にグラディオンは振り返る。
「ですがねフルフル。いくら怒っても、マイロードに私を追い出すことなど出来ませんよ」
その言葉にフルフルだけでなく、ドナイディアやクラウディルも首をかしげた。地位ならヴォイドが上だ。
気に入らない者を追放するなど容易い事のはず。
そんな三人の心を知ってか知らずか、グラディオンはアデュー♪と歌うように言い、軽やかに身を翻して去っていった。

ロノウェは平然とテーブルをふいていたが、貴族三人はただ、グラディオンの後ろ姿を見つめていた。

1年前 No.88

闇月 @warabimoti ★Android=xdCufVxL3h

最近過疎ぎみですみません。

【第36章 南の魔王メラディオン】

―――『むかしむかし、ある人間の兄妹は、幸せの青い鳥を探しに行きました。思い出の国の青い鳥は、国を出ると黒に変わりました。
夜の国の青い鳥は、光に当たると死んでしまいました。
森にもしあわせの国にも、未来の国にも、青い鳥はいませんでした。けれど家に帰ると、青い鳥はそこにいたのです』
 メーテルリンク 原作 童話『青い鳥』より

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「…さて、メラディオン。一体このお話が、何を意味するのかわかる?」
「…わかりません。家にいるなら、はじめから探す意味がないと思いますが」
「甘いなあ。実は、青い鳥というのは二人が飼っていた青バトの事だった。しかし彼等はそれに気付かなかった」
「…つまり…?」
「幸せはね、すぐそこにあるんだよ」

1年前 No.89

闇月 @warabimoti ★Android=xdCufVxL3h



(…幸せ、か。私は未だ、青い鳥を見つけられないようだな)
南の魔王城で玉座に座りながら、メラディオンは昔、ある人物が聞かせてくれた話を思い出していた。
(私だけではない。誰も…悪魔には、青い鳥など現れないのか?)
メラディオンは子供の頃からヴォイドの下で、魔王となる為の厳しい教育を受けてきた。スヴェートやフェニックス達も一緒だ。そんな戦いに明け暮れた人生で、幸せなど掴めはしなかった。相方のグラディオンから見れば自分達は『つまらない人生』らしいが仕方がない。
悪魔として生まれたなら、その使命を全うする。
“あの御方”の為に生き、戦い、そして…いつかは滅びる。
(…全ては滅びの魔王ヴォイド.フォール様の為に。私の成すべき事はそれだけだ)

1年前 No.90

闇月 @warabimoti ★Android=xdCufVxL3h


エルドロイドとヴリザードのお陰で、王女達は早く目的地に着くことが出来た。
南の魔王城は、絶壁の上に建てられた石造りの城で、曲がりくねった特徴的なシルエットをしていた。
「いかにも昔話に出てきそうなお城だね…」
王女がポツリと呟く。その通り、目の前の城はまるで勇者と魔王の決戦するステージだった。
「ああ。人間の語る『勇者と魔王の戦い』は、この南の魔王城で繰り広げられたらしい」
ヴリザードが言うとフェニックスも言った。
「たった一日で魔界を火の海に変えた、なんて話もあるよ」
アルドが目を見張る。
「ホント?でも、誰も見たことないの?」
その問いにエルドロイドが応じる。
「メラディオンはあまり人前で魔法を使わない。それどころか他人と関わりを持つことも嫌う」
「それに…メラディオン様は子供が大の苦手だと…」
王女とアルドは顔を見合わせた。
「大丈夫…かなぁ」
「礼儀正しくすれば…多分」
いくら魔族といえども初対面の相手をいきなり襲う事はしないはず。そう信じることにして、二人は皆に声をかけた。
「…行こう!」

1年前 No.91

闇月 @warabimoti ★Android=xdCufVxL3h

冬休みになったので前よりは速度を上げたいです。

【第37章 大蛇の炎(ほむら)】

 ━幸せかと聞かれたら、私は「NO」と答える。
幸せになりたいかと聞かれたら、私は……
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城内はスヴェートの城と比べると暗く、松明の火が不気味に揺れていた。通路にはスライムからキメラ、ミノタウロスまで沢山のモンスターがいたが、誰もが物陰に隠れ、そっとこちらを見ていた。

「…見ろ、エルドロイド様だ…」
「メラディオン様は、ヴォイド陛下に忠実。一体どうなるんだ…?」

モンスター達が囁き合っていると、灰色の体をした魔物が杖で床をコンコンと叩いた。
「皆落ち着きなさい。魔王様がどんなご決断を下されようと、私達はそれに従うまでです」
その魔物…側近のグレアは、王女達の方へと顔を向けた。

11ヶ月前 No.92

闇月 @warabimoti ★Android=xdCufVxL3h

「私共は、貴方達を今ここで切ろうとは考えていません。しかし、魔王様が貴方達を敵と見なせば…」
グレアは杖の先でエルドロイドやフェニックス…悪魔を指し示した。
「南の魔王メラディオン様、および悪魔軍への反逆として、皆様を捕らえます」
その目には、自分の王を守らんという強い思いがあった。
「…わかった。まずはメラディオンと話がしたい。会わせてもらえるか」
その意志を汲み取ったのか、エルドロイドも了解した。
つまり、ここで旅の命運が分かれる。
宝玉を手に入れ、ダイアを救えるか。
魔界も、ダイアも失うか。
(…どうかメラディオンさんが、私達の願いをわかってくれますように)

11ヶ月前 No.93

闇月 @warabimoti ★Android=xdCufVxL3h

明けましておめでとうございます。魔界王国物語を今年も宜しくお願いします。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
 グレアに連れられ、魔王の間に入った王女達は玉座の前に跪くよう言われた。
「メラディオン様の前で無礼は禁物です。それから…大変申し上げにくいのですが、フェニックス様は外でお待ち頂けますか。メラディオン様はフェニックス様を苦手としておられます」
フェニックスは少しショックを受けたようだが、「わかった〜…」と大人しく出ていった。
きっと他の魔王にこういう扱いを受けるのは珍しくないのだろう。フェニックスはとても魔王とは思えないほど明るく子供っぽい。
(でもヴリザードとはケンカばっかりだよね…)
ーーその時、玉座の横に炎があがり、中から黒いローブで顔を隠した悪魔が現れた。彼はゆっくりと歩き、玉座に腰掛けた。
グレアが高らかに告げる。
「こちらにおられます御方が、南の魔王メラディオン・サウス・フレイム=デモンズロード様にあらせられます。皆様、お控え下さい」
王女とアルドは慌てて一礼した。デスストームも深々と頭を下げる。

11ヶ月前 No.94

闇月 @warabimoti ★Android=xdCufVxL3h

エルドロイドが進み出た。
「久しぶりだな。メラディオン。変わりなかったか?」
「…特には。我が同胞が逃げ出した事くらいだ。」
その皮肉をエルドロイドは黙って聞いていたが、やがて答えた。
「そうか。以前のそなたは、皮肉など言わなかったと記憶しているが。」
二人の会話は、一見するとただの口論に聞こえるが、周りの者を畏怖させる圧倒感があった。
(…この二人がまともに会話しているのを見るのは我も初めてだ)
ヴリザードですら、この先どんな話し合いになるか見当もつかない。
メラディオンはフッと息を漏らし、
「…こんな世界だ。素直でばかりはいられない。謝ろう…用件を申してみよ」
と促した。
「それなら王女から話せば良い」
と、エルドロイドは王女を見た。

11ヶ月前 No.95

闇月 @warabimoti ★Android=xdCufVxL3h

2週間以上更新が止まってすみません。お待たせしました。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「えっ!?わ、私で大丈夫!?」
突然話をふられた王女は、当然びっくりしたがメラディオンは微かに口角を上げ、牙を覗かせた。
「…オランシアの王女か。いいだろう。憶さずに申せ。」
王女は恐る恐る前に進み出た。
後ろではアルドが『がんばれ』と口パクし、デスストームも頷いた。王女は頷き返し、口を開いた。
「あなたの宝玉を、私達に譲ってほしいんです!!」
頭を下げられたメラディオンは、フードの奥の金色の瞳を細めた。
(何を言い出すかと思えば……)
このような人間の子供が宝玉の力を知っているとは思えない。そう思いメラディオンは思案する。宝玉の事を知っているのは今では一部の悪魔と天使、それにあの種族だけのはず。エルドロイドが教えるとも思えない。
だが、そんな事なら答えは決まっている。

10ヶ月前 No.96

闇月 @warabimoti ★Android=xdCufVxL3h

いつも使っているYahooが消えログイン出来なくなる事件が起き投稿が遅れました。復活してよかった。
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メラディオンは自らを炎で囲み、緑色の大蛇へと姿を変えた。
「それは無理な相談だ。宝玉を渡す事は“あの御方”への謀反を意味する。それに…この宝玉はお前達自身にも災いをもたらすからな…」
「災い?…どういう事ですか?」
大蛇は鎌首をもたげ、二又の舌を動かした。
「……まだ幼かった頃、私は魔界の山々の支配と、この宝玉の守護を任されていた」
静かに語りだしたメラディオンに、王女は少し驚いた。
(小さな頃から悪魔軍に仕えていたなんて…)
ヴォイドに情はないのだろうか。
幼い子供でさえ、無邪気に遊ぶことが許されないのだろうか。
「…人間達は私を悪魔ではなく山の主と思いこんでいた為、宝玉を奉る社には願いを捧げる人間が多く訪れた。しかし、人々の邪な心を受けすぎた宝玉はある時暴走し、魔界の山を灼いた」
それを聞いたデスストームは納得した。時が経つにつれ話に尾ひれが加わり、『メラディオンは昔、魔界中を火の海に変えた』などという伝説になったのだ。
(…確かに危険かもしれません)

9ヶ月前 No.97

闇月 @warabimoti ★Android=xdCufVxL3h

いいね16!ありがとうございます!
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もし今でも邪なる力が残っていれば、聖なる冠と反発し、大変な事態を招きかねない。
(諦めるしかないのでしょうか…?)
ヴリザードもデスストームと同じことを思ったのか王女に「どうする」と聞いている。エルドロイドは無言でアルドと顔を見合わせた。
「…ミアラを信じよう」とアルド。
「…信じる…か」エルドロイドが呟いた。
メラディオンが言う。
「解っただろう。この玉は最早宝ではない。人の世の醜さ、その象徴だ」
「…との事です。皆様、お気の毒ですがお引き取りくださ…」
「待って!!」
グレアが言いかけた言葉を王女が止めた。
「私の…私達の望みは、この世界を救う事!!邪な思いなんてないもの!!」
「何…?」
仲間たちも次々に言った。
「ミアラの言う通りです!自分の欲の為じゃない、大切なものの為の願いなら…」
「ミアラ様に、貴方の見てきたような醜さは一切ありません」
(アルド…デスストームさん…)


メラディオンは解らなかった。

何故そこまで信じ合えるのか。種族も違うのに。

『他者を信じるな。我にのみ忠義を尽くせ』

何故希望を捨てないのか。この腐った世界で。

『悪魔…神に仇なす化け物め…』

『所詮この世界は、綺麗事ばかりだね、メラディオン。希望なんてはじめから持たない方がいい』

何故絶望しないのか。大切なものを奪われて。

『私を憎んでいい。私を忘れてもいい。お前は悪くない。悪いのは私。罪深いのはこの世界』

解らない。理解できない。

「…メラディオン。私は心を持たないが、お前は信じてみてもいいのではないか。この人間達を」
「…………」


9ヶ月前 No.98

闇月 @warabimoti ★Android=xdCufVxL3h

━━━その時!
メラディオンの玉座に飾ってあった宝玉が目映く光を放ち、部屋の中を爽やかな風が吹き抜けた。
全員、何事かと辺りを見回す。グレアが叫んだ。
「魔王様!宝玉が…宝玉の色が!!」
メラディオンがハッと玉座を振り返ると、くすんだ青だった宝玉が美しい空色に変わっていた。
いや、戻ったのだ。
「馬鹿な…信じられぬ…」
メラディオンが呆然と呟く。
まさか、本当に戻ったというのか?何万年もの間、何をしても戻らなかった風の宝玉が。あの王女達の想いで。想いだけで。先程のエルドロイドの言葉を思い出す。
『信じてみてもいいのではないか』

(…私は……)

メラディオンは心を決め、王女とアルドの近くへやって来た。ローブを着た魔族の姿に戻っている。
「お前達の想いの力が、その宝玉を再び清きものにした」
そして、王女にその風の宝玉を手渡した。
「受け取れ」
「!いいんですか!?」
戸惑う王女にメラディオンは答える。
「私にその宝玉を護ることは出来ぬ。お前達が持つべきものだ」
「…ありがとうございます!でも…ヴォイドに…」
人間に宝玉を渡すことは、王であるヴォイドへの反逆行為。エルドロイド同様命を狙われるのではないか。
「…ヴォイド.フォール様には、この命を拾い魔王の位を与えて頂いた御恩がある。だが…お前達が来たことを私は報告しない。忠誠を誓った身ゆえこれ以上の協力は出来ない」
「それで十分だ。礼を言う。…王女、これより闇の魔王の元へ向かいダイアを救出するぞ」
その言葉に全員が驚く。デスストームが尋ねる。
「で、では、北と東はどうされますか?」
「北の魔王インペリアルと東の魔王アグレダ…彼等は比較的人間への敵意が少ない。だが闇の魔王はいつ何をしでかすか解らん。先にダイアを助けよう」

9ヶ月前 No.99

闇月 @warabimoti ★Android=xdCufVxL3h

「確かに…早くダイアを助けたいもんね」
アルドも賛成する。
「私も…ダイアに会いたいよ」
言いながら、王女はダイアの事を思い出していた。
いつもにこにこして、皆を励ましてくれたダイア。
(今度は私達が、ダイアを助ける!)
「我に意見はない。好きにすれば良い」
ヴリザードも『そうしよう』と言ってくれているらしい。彼の素直じゃない言葉の意味が何となくわかってきた。

 その様子を眺めながらメラディオンは不思議に思った。
(人間と悪魔が仲良くしている…こんな光景、何千年ぶりか…)
…私も、あそこに入れたら。
ふとよぎった考えをメラディオンは振り払う。
(私は何を考えている?)
ヴォイドは人間を心の底から嫌っていた。すぐに闇に染まる脆弱な種族の癖に、神に護られている。
自分達の理解できないモノを拒み、恐れ、憎む。
(だが、この人間達は違うのか?)

9ヶ月前 No.100

闇月 @warabimoti ★Android=xdCufVxL3h

と、その二人がこちらにやって来て、メラディオンに笑いかけた。
「メラディオンさん、宝玉をくれてありがとうございます」
「私達はエルドロイド達と魔界を救い、誰も苦しまない幸せな世界をつくります」
メラディオンは目を見開き、絞り出すように「…そうか」と言った。
「それじゃあ、またいつか」
挨拶して、王女達は出て行った。残されたメラディオンとグレアは互いに言葉を交わす。
「…幸せな世界、と言っていましたね」
「そこに、私達の…悪魔の居場所はあるだろうか?」

8ヶ月前 No.101

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【第38章 「可愛い小鳥」】

 フェニックスは城の前に座って、王女達を待っていた。正直、メラディオンと会わずに済んでホッとしていた。会えばきっと「裏切者」と罵られる。ヴリザードは元々拠点を離れていたが、フェニックスはメラディオンと同じ軍に属している。
お前は何故『そこ』にいる。
お前は“あの御方”に逆らうのか、と。
(僕は、最低だ。ミアラやエルドロイドに協力しておきながら、悪魔軍と手を切れないだなんて…)

でも、僕が一番怖いのは…

『━何を迷う事がある?余の“可愛い小鳥”よ』
「!!その声…!」
不意に懐かしい声が聞こえ、顔を上げるとそこには漆黒の鎧に身を包んだ悪魔がいた。
「モー…メント…」
そう。目の前にいるのは六大魔王の序列第5位、モーメントだ。勿論実体ではなくホログラムだが。

【ちなみに今日三月十七日はモーメントの誕生日です!!六大魔王の中で一番若いですよ!】

8ヶ月前 No.102

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モーメントは口を開く。
『汝の役目はただひとつ。“あの御方”の為に生きることだ。忘れたか?』
フェニックスは慌てて首を振る。モーメントを哀しませてはいけない。モーメントを失望させてはいけない。
「そ、そんなわけないよ!!ただ、仲良くしてもらってるのに少し悪いかな…なんて…」
モーメントは深い紫の瞳でフェニックスを見つめ、首を傾げるようにして言った。
『…仲良く?悪魔と人間は仲良くなど出来ぬ。悪魔が人間と持つ関わりは契約と利用。持つべき感情は憎しみと蔑み。それ以外は不要だ』
「わ、わかってるよ!大丈夫、安心して!モーメントをガッカリさせる様なことはしないよ!」
そう言えばモーメントは紫の瞳を妖しく光らせた。
『それで良いのだ。フェニックス。人間共に心を許すな。エルドロイドに同情するな。汝はただ“あの御方”の指示に従え』
「…うん!もちろん!」
返事をするとホログラムは乱れ、やがて消えた…。

8ヶ月前 No.103

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 フェニックスとの通話を終えると、モーメントは背後にいたうみねこに声をかけた。
「…盗み聞きとは悪趣味だな。…グラディオン」
すると、うみねこが嘴を開いた。
[あら、バレてましたか]
モーメントが近付くと、うみねこは彼の鎧の肩当てに留まった。
「気付かぬとでも思ったか?わざわざ使い魔を送り込んでまで盗聴など」
うみねこは笑ったような鳴き声をあげた。
[これは失礼。貴方がどのようにしてフェニックスを丸め込むのか、少し興味がありましてねェ]
「丸め込む?違うな。それをしているのは人間共の方だ。余は奴が…フェニックスが帰るべき巣を忘れぬよう忠告したに過ぎん」
モーメントの言葉に、うみねこは面白そうに羽を震わせた。フェニックスがいずれエルドロイドの考えに共感するであろうことは皆予想していた。だからこそそれを阻止するのがモーメントの役目。
「…不死鳥は永久に、この鳥籠から逃れられない。故に心配はない」
[貴方によぉくなついた可愛い愛鳥が、その手から飛び立つことはないとでも?]
うみねこの問いにモーメントは「その通りだ」と答えた。
[その割りには、マイロードのエルドロイド排除令は伝えなかったので?]
モーメントの紫の瞳がうみねこの漆黒の目に映る。彼は何でもない事のように答えた。
「汝が何故知っているのか気になるところだが…フェニックスに言ったところであやつには何も出来まい。さあ、そろそろ行け。グラディオン」
うみねこは高らかに鳴くと、紅い月の輝く空へと飛び去った。

8ヶ月前 No.104

闇月 @warabimoti ★Android=xdCufVxL3h

明日入学式です。ますます過疎るかもですが頑張っていきます。
第五部に入ります!
【第39章 黒のキョウダイ】

 ヴォイドへの報告を終え、屋敷へと帰ったヴァルディスを出迎えたのは家臣の黒龍、シュヴァルツだ。
「お帰りなさいませ、お嬢様。ご主人様は戻られていませんが、お客様がおみえです」
「お客様?わかった、私が対応するわ」


客人は、思いもよらない人物だった。
「おう、ヴァルディス。久しぶり、大きくなったねぇ」

「琥珀様…!!」
闇の魔王の僕、琥珀だった。
「何故ここへ?」
「いやね、ちょっとあんたに聞きたいことがあったのさ。すぐに帰るよ」
ヴァルディスは首を傾げた。父であるドナイディア公爵に用があったのではなく、自分に会いに来るなんて。
「それは…どのような?」
「あんた…ヴォイドがやろうとしてる事どう思う?天界への復讐には賛成?」
いきなり王の事を聞かれ、ヴァルディスはぽかんとする。
「勿論陛下の事は尊敬しています。…でも…復讐については…」
琥珀は驚いたようにこちらを見た。
「どうして?あんたは誰よりも、天界を憎んでいいはずだよ。あんたの兄貴の仇を討ちたくはないのかい?」
『兄』という言葉にヴァルディスは肩を動かした。兄ベリアルは天界に囚われている。天の聖光を、奪おうとしたから。

8ヶ月前 No.105

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遅くなりすみません!今日から田舎に行きますのでまたしばらく空くと思います。
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(でも私は…天使を憎いとは思えない。罪を犯したのは紛れもなくお兄様だもの…)
黙っているヴァルディスの心を察したのか、琥珀は「もういいよ」と穏やかに言い、翼を広げた。
「もうお帰りに?」
「ああ。うちの主人を待たせてるからね。邪魔したね。」
「いえ。またいつでも…」


シュヴァルツが「見送ります」と言って出てくると、琥珀は素早く振り向いた。
「おいシュー。あんたんとこのお嬢は少し甘過ぎないかい?」
「おや、アンバー姉様。何故です?」
シュヴァルツが敬語だが砕けた口調で尋ねる。琥珀は軽くシュヴァルツを睨んだ。
「だーかーらその名前で呼ぶなっつうの…まあ、あんな子に育てたドナイディア公爵も相当だね。甘い甘い。」
「お優しいと言ってください。所で姉様。何故あんな質問を?」

7ヶ月前 No.106

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体育祭がようやく終わった。槍も降らなかったし地球も滅亡しなかった。(某歌より)遅れてすみません!
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
琥珀は弟の顔をじっと見た。
「あたしが思うに、ヴォイド陛下の目的はただ天界に復讐するだけじゃない。もっと別の事を考えてるね」
「別の事?一体何だと言うのです?」
「まあ、それが分かりゃ苦労しないさ。ヴォイド陛下はあたし達の裏の裏のそのまた裏をかいてくるだろうね…ああ、そういえば…」
琥珀はふと話題を変えた。
「他の兄弟姉妹は元気かい?ここ数百年会ってないけど」
琥珀とシュヴァルツは、五人兄弟姉妹の長女と次男だった。
「ええ、<蒼玉>サフィアル兄様はエルドロイド様が御不在の間幻夢国を任されたと。<紫玉>ラピス姉様はお変わりなく過ごしておられます。<紅玉>ルビアールは相変わらず方々を転々としているそうで」
「へえ、サフィアルの兄貴が?エルドロイドよりも優秀、なんてことになっちまうかもねェ?」
琥珀の言葉にシュヴァルツも「そうですね」と笑った。
「じゃあ、元気でやりなよ。まさかあんたがひとの下に使えるなんてねぇ」
「王宮で暮らすよりも、この方が性に合っていますから。姉様こそ、あの闇の魔王殿の側近になられたと聞いたときは驚きました。お体にお気をつけて」
そう言葉を交わし、姉弟は別れた。

6ヶ月前 No.107

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お待たせしました…期末テスト終わりました!!

【第40章 闇の魔王の元へ】

 「…というわけでねフェニックス。東と北より先に、闇の魔王の所に行こうと思うの」
南の魔王城から出てきた王女からそう告げられ、フェニックスは内心驚く。効率的には東か北の魔王の所へ行ってからの方が良いが…。
「案内してもらえるかな?」
アルドの声で我に帰り、フェニックスはこくこく頷く。
「…もちろん!!任せて!!」
明るく言ったが、心は暗かった。
(ダークキャッスルにダイアが囚われてるって、モーメントに報告した方がいいのかな…でも、そしたらヴォイド様が何をするか…)
先程のモーメントの言葉が甦る。
『汝はただ、”あの御方“の指示に従え』
モーメントは六大魔王。六大魔王の言葉はすなわちヴォイドの言葉も同然。逆らえない。
だが…これでは王女達を騙している事になる。
(…僕は…どうすれば…)

5ヶ月前 No.108

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お待たせしました。夏休みになれば少しはペースアップしたいです。
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重い心のまま、王女達に説明する。
「闇の魔王の城がある異空間に入るには、異界の闔(とびら)<アルタス・ゲート>を通る必要がある。ゲートへの道は、スヴェートの宝玉が導いてくれるよ」
フェニックスの言う通り、スヴェートからもらった光の宝玉が放つ光が、遥か彼方へと線のように伸びている。
「本当だ…」
「では急ぎ出発しよう。一刻も早くダイアを救出せねば」
エルドロイドが言うと、全員が真剣な面持ちで頷いた。
フェニックスは頷きながら、心がチクリと痛むのを感じた。こんな感情は初めてだった。だから、名前も知らなかった。それは…罪悪感だった。
 そんな彼を、ヴリザードは訝しげに見やった。
(…フェニックスは何を悩んでいる?仲間だった者達への反抗が恐ろしいのか?)

4ヶ月前 No.109

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【第41章 滅びの魔王は嗤う】

 魔王は嗤う。
 人の抱く愚かな夢を。
 魔王は愉しむ。
 人の抱く不確かな希望を。


「良かったのか。宝玉を渡したものを罰さないで」
その問いに、ヴォイドは飲んでいた赤ワインをテーブルに置き、声の主を見た。
「あァ……殺ろうと思えば何時でも始末できる。フェニックスについては、モーメントに任せているのでな。」
言いながらヴォイドは、黒き邪神へとグラスをもうひとつ差し出した。
「貴様も飲むか?ヴィルペアルヴァンクトゥシアラ。魔法界から取り寄せた上物だ」
「いや。生憎だが我は酒は飲まん。我等邪神にとって酒など、何の悦楽にもならぬからな…」
ヴィルペアはそう断った。
「まあ、汝にとっては部下の一人二人、ただの手駒に過ぎんのだろう」
ヴォイドは仮面の奥でくぐもった笑い声をあげる。
「クク、やはり共にチェスをするならば貴様やグラディオンに限る。退屈しないからな」
自分の駒がこの手を動かすままに生き、戦い、死にゆく様は確かに面白い。だが、それだけでは足りぬ。
我は共にゲームを観賞する同志が欲しい。
「……貴様にだけは、我とて勝てぬだろうな」
「そうか。我とて汝には勝てぬ」
ヴォイドは笑った。愉しくてたまらないと言うように。

4ヶ月前 No.110

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さあ、踊るがいい。我が眷属達。
月はあんなにも紅く美しい。

さあ、好きなだけ抗え。人間共。
その絶望こそ我が力。

「いずれ時は満ちる。さすれば、彼奴らは真の絶望と恐怖を味わうのだ」
グラスを紅い月にかざしながら、ヴォイドは呟いた。
ヴィルペアは表情ひとつ変えない。彼はきっと、世界がどうなろうとどうでもいいのだ。
自分が創ったモノなど存在しない。
護るべきものも慈しむものもない。
だが、この『劇』に興味はあった。

人の子がどの様な抗いを見せるか。
天使と悪魔の戦争の果ては。
人間と悪魔の間に絆はあるのか。
……エルドロイドは、どういった末路を辿るのか。
(……さて、どうなることか……)

4ヶ月前 No.111

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【……2か月ぶりって……ごめんなさい!!リアルが、リアルが忙しくて!!今後もスローペースですが続けます!!】

【第42章 宝玉の示す先】

 「━━い!!おい!!起きろ」
「ダイア君、起きて」
いつの間にかうとうとしていたダイアは琥珀に乱暴に揺り起こされた。琥珀はいつの間にか戻ってきている。
「…ったくよぉ…お前、よく魔王の城で居眠りできるな。呑気すぎるだろ」
琥珀が呆れたように言って、ダイアを見下ろした。
「まあまあ琥珀さん、いくら囚われの身でも眠くなるのは当然ですよ」
翡翠が宥めるが琥珀は馬鹿にしたように
「あァ、そうか、お子様はよおくおねんねしねェといけないんだよな!あァははは!!」と笑った。
これにはダイアもカチンときた。
「お前が僕を拐ったせいで、ここ数日寝れなかったんだ!!」
「へえー?そりゃ悪かったねえ??クククッ」
全く悪びれる様子のない琥珀に溜め息をつき、翡翠は咳払いをして言った。
「ダイア君、起きて早々悪いですが、今から移動してもらうのでこの檻に入って下さい」
「移動……?」
翡翠の示す先には、ローラーが付いた移動式の檻があった。
「闇の魔王様が御呼びです」

1ヶ月前 No.112

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「ねえエルドロイド、魔王達の事、もっと教えてほしいな」
宝玉から伸びる光を辿り進む道すがら、王女はエルドロイドに声をかけた。ただ黙って歩くより、会話していた方がいい。
「…どうしてだ?」
エルドロイドが尋ねる。
「例え敵対していても、相手の事を少しでも知ってた方が話しやすいでしょ?」
そう答えた王女にエルドロイドは、やはり王族だ、と思った。
(民の心を知らずして王は務まらん。それと同じか……)
「…わかった。どんな事を知りたいのだ?」
「えっとね……。悪魔軍の最高幹部って、六大魔王なんだよね。六大魔王は、他の魔王より立場が上なの?」
「そうだ。ただし、地獄を治める“七つの大罪”は、私達と同格に扱われている。そして我々、六大魔王の中にも序列がある。」
「序列?」
「簡潔に言えば、強さや賢さ、魔力…総合的な実力の優劣で決まっている順位のようなものだ」
六大魔王の序列は以下の通りだ。
一位は、ヴィルペアルヴァンクトゥシアラ。
二位は、アザトース。
三位は、ヴラドゥレア。
四位は、アンラ.マンユ。
五位は、モーメント。
そして六位は、エルドロイド。
「…えっ!?エルドロイドが六位!?ものすごく強いし、頭もいいのに……」
王女が目を丸くする。エルドロイドが六位なんて、心底驚いた。

1ヶ月前 No.113

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「もっと戦場で成果を挙げていれば、五位くらいにはなれたかもしれないが、私は戦においては役立たずだったのでな。わざと戦わぬようにしていれば、ヴォイドに気に入られる事もない」
あくまで最低限の敵しか倒さず、ろくな戦果も挙げない。そうやってヴォイドから邪魔だと思われることで、地位の昇格を避けてきた。それはヴォイドに忠誠を誓うモーメントからすれば許し難い事だったらしく、彼は事あるごとにエルドロイドを避難した。
他の六大魔王…特にヴラドゥレアは何度も「戦え」と言ってきた。「このままではお前は追い出される」と。
実際こうなってしまったのだから、彼女の進言は『魔王』としては正しかったのだろう。
「…でも、エルドロイドはそうやってまで地位を上げようとするひとじゃないもんね。それでも良かったんじゃないかな」
王女の言葉に、エルドロイドは少し沈黙し、答えた。
「……そう言われたのは初めてだ」


 話しているうちに随分進んだようで、少し先に<アルタス・ゲート>が見えてきた。

1ヶ月前 No.114

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【期末テストがようやく終わった。多分点数的にも終わった\(^o^)/】


「これが、異界の門……」
その門は一見、ただの古びたアーチの様だった。エルドロイドの様な大型の龍でも頭を屈めずにくぐれるくらい高さがあるが、それが広野にポツンと建てられているのは何とも不可思議な光景だ。実際、ただ『通るだけ』では何も起こらない。
「この門を開く鍵は、ごく少数の者のみが知る呪文なんだ」
フェニックスはそう言って、門の前に立った。
深く息を吐き、小さな声で呟く。
「……『古の門よ、我が声を聞け。我は異界の門の開き手。真の解放者。今、72柱が序列第37位たるフェニックスが命ず……開け』!」
フェニックスの詠唱が終わると同時、門の柱と柱の間…通り道の部分に空間の歪みが生じ、目映い光がフェニックスと、後ろにいた王女達を包み込んだーー。


 「…さあ。着いたよ」
フェニックスの声に目を開けると、其処は光もなく音もない、不思議な空間だった。
「……ここに、ダイアと、闇の魔王が……?」
「何もないね……。」
アルドのいう通り、<異界>には何もなかった。しかしこの空間のどこかにダークキャッスルがあり、ダイアが囚われているのだ。
(ダイアはきっと、無事だよね。ダイアを助けて、宝玉を渡してくれるように闇の魔王に頼む…よし)
深呼吸し、王女は気持ちを引き締めた。
「……では行こうか。王女」
「…うん!」
エルドロイドの言葉に返事をし、王女は足を踏み出した。
(ダイア……待ってて!!)

26日前 No.115

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【第43章 「ずっと、逃げている」】

 ダイアは移動式の檻に入れられ、闇の魔王の元に連れて行かれた。
「魔王様、連れてきました」
琥珀の言葉に頷き、闇の魔王は耳飾りを揺らしてこちらへやって来た。
「御苦労だった。…直に人間達が来るだろう。お前は配置に付け」
「はっ」
短く答え、琥珀は退室した。
残されたダイアはそわそわして、闇の魔王の私室を見回した。妖しげな小物や難しそうな本がきちんと整理して並べられている。その本の中に、ダイアは気になるものを見つけた。くすんだ赤色の古びた本。
(他の本は綺麗なのに、これだけボロボロ……)
興味をそそられ、ダイアは思わず尋ねてみた。
「あ、あの、……その本は?」
「……あぁ。これか」
闇の魔王はその本をチラ、と見た。
「これは、世に存在する古今東西、ありとあらゆる呪術についての本だ。そなたの使う精霊魔法とは真逆だな」
(!どうして僕が、精霊魔法を使えるって知ってるんだ?……ううん、それより、)
「……どうして、そんな本を?」
魔王ならば持っていても可笑しくはないだろう。しかしダイアは何となく、闇の魔王は呪術など使わないだろうと感じていた。理由などわからないが、強いて言えば闇の魔王の魔力の波動は、邪悪なものではなかったのだ。
「……もう随分昔、とある者の元から盗み出して来た。」

26日前 No.116

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ダイアは驚いて聞き返した。
「ぬ、盗み出して……!?誰から……そもそも何でそんな本を……」
「誤解するでないぞ、私が誰かを呪いたかった訳ではない。寧ろその逆だ」
闇の魔王は本の表紙を前足で撫で、埃を払う。そして、独り言のように呟いた。
「……あれから、私はこの異界にいる。ずっと、逃げている。此処を一歩でも出れば、彼奴はすぐに私を捕まえに来るだろう」
(……逃げている……?誰から、逃げているんだ?)
ヴォイド……ではないだろう。ヴォイドは闇の魔王の居場所を知っている。
ダイアが考えるのを余所に、闇の魔王はその本を棚に直しながら言った。
「私はこの数千年、呪術について研究している。中でも興味をそそられたのが、【デイクセリアの暗黒呪術】だ」
「!別名、『虚無の呪い』……」
聞いたことがある。不老不死の肉体を得る代わりに、感情を失う呪い。エルドロイドがかけられていた。
「その通り。哀れなものだ。不滅の肉体を得ても心を失うとは……」
ダイアを拐わせたのは、デイクセリアの暗黒呪術の実例を見て、その本質を見極める為。感情を失いながら、何故エルドロイドはヴォイドに抗ったのか。
それが解ればダイアはすぐに解放しよう。
宝玉もくれてやろう。
私は知りたい。『呪い』とは何か。




19日前 No.117

闇月 @warabimoti ★Android=xdCufVxL3h

【第44章 Dark castle】


 悪魔達は、強力な魔力の気を感知し、互いの位置をある程度知ることが出来る。王女達はエルドロイドの感覚を頼りに進み、遂にダークキャッスルへと辿り着いた。
エルドロイドがいなかったら完璧に迷っていただろう。
ダークキャッスルは、最上階から入り口まで黒いレンガが敷き詰められ、一番高い屋根には旗が立てられている。黒い四枚の羽根が十字型に並んだ紋章。
「……ここに、ダイアが囚われている」
「絶対に、闇の魔王様を怒らせることのないようにしましょう。でなければダイア様が危ない」
と、エルドロイドとデスストーム。
「…だそうだ。貴様は特に気を付けろ、フェニックス」
いつものようにヴリザードが憎まれ口を叩くがフェニックスは「……うん」と返事しただけだった。普段ならヴリザードに言い返すのだが…。
(……やはり変だ。フェニックスが我の言葉に言い返さぬとは……)
「ヴリザード?どうかした?」
王女が声をかけると、ヴリザードは耳打ちした。
「……どうも、フェニックスの様子が変だ。我の覚えている限りだと、メラディオンの城を出た辺りから」
「え?そうかな?変わらないように見えるけど……でも、口喧嘩にならなかったのは珍しいね」
 「ヴリザード!ミアラ!行くよ!!」
アルドに呼ばれ、二人は後を追いかけた。
 ヴリザードが、フェニックスと関係が深いと聞いて思い出すのは、『彼』の姿。

(……モーメント……。いや、我の思い違いならばいいが)

18日前 No.118

闇月 @warabimoti ★Android=xdCufVxL3h

【今回はあまり展開は進みませんが、エルドロイドと琥珀の因縁が明らかに。「へえー」くらいの感じで読んでやって下さい。】

城内は不気味な程静かで、魔物の姿は見当たらない。
どこにトラップがあるかも分からないので慎重に進んでいこうと思ったその時、エルドロイドが声を上げた。
「止まれ!」
「えっ…!?」
王女が驚いて足を止めた瞬間、頭上から鉄で出来た槍が降ってきて足元ギリギリの所に突き刺さった。
「あ、危なかった……」アルドが息を吐く。
「ほんと…あと一歩進んでたら串刺しだったよ…。ありがとう、エルドロイド」
礼を言われ、エルドロイドは両目を見開いた。
『ありがとう』など言われたことはない。
自分でも、言ったことがなかった。
「私はただ、止まるように言っただけだ。それなのに礼を言うのか?」
そう聞くと王女とアルドは、逆に驚いたようだった。
「え?助けてもらったんだもの、普通のことだと思うけど」
「…人間は不思議だな」
エルドロイドがそう漏らした時、

「ああああ、エルドロイド!!まさかお前まで人間と仲よしこよしになっちまうとはねぇ!」
ねっとりとした声が響いた。
「この声と邪気…琥珀か」
「姿を表せ!」
ヴリザードが吼えると、シャンデリアの上から巨大な黒龍が飛び降りてきた。
「そんなに怖い顔すんなよヴリザード!人間嫌いで有名なあんたが、一体どうしちまったのさ?」
「貴様に話す義理はない」
ヴリザードは琥珀を睨みつけるが、琥珀はニヤニヤと笑っている。
「まぁいいけどよ…エルドロイド、お前が幻夢界の王として役に立たなくなった所で、誰も困らない。お前がいない間に、きっとお前よりも優秀な者が選ばれてるさ。例えばそう…うちの兄貴とかねぇ」
「…<蒼玉>、サフィアルか……」エルドロイドが呟く。
ヴリザードが琥珀に言い返す。
「確かに<蒼玉>は優秀だ。他の兄弟達もな。だが貴様は、とても同じ血筋を持つとは思えんな」
「クク、好きに言うが良いさ。誰が何と言おうと、あたしは父上の血を引いてる。王家の血を一滴も持たないエルドロイドとは違う」
琥珀は馬鹿にしたように言った。
王女とアルドには話が見えない。デスストームは黙っている。
「……何の話を…?」
「…琥珀の言う通り、私は幻夢界の王でありながら、王家の血を引いていない。王家であるのは、私の妃の方だ。王になったのは、悪魔界と幻夢界の結び付きを強めるための政略結婚だが」
「だからあたしは、お前が憎いんだよ、エルドロイド。何で正統な王家の血を受け継ぐ兄貴でも弟でもなく、お前が王になったのか」
琥珀が不気味な笑みを浮かべたまま言った。
「……ってことは、琥珀も王家の血を?」
アルドが呟くと、デスストームが小声で教えてくれた。
「……はい。琥珀…いえ、アンバー様は、幻夢界の第3代目国王であったネイヴィークロウ様と、その妃ラヴーシュカ様の長女にあらせられます」

12日前 No.119

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11日前 No.120
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