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魔界王国物語

 ( 小説投稿城 )
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ヴラドゥレア @warabimoti ★Android=xdCufVxL3h

【序章】

万物の王であり果てしなき魔王は、
全てを創り、眠りけり

白き龍は『光』を、黒き龍は『影』を司りけり

光の者いる限り、世は影で満たされぬ
影の者いる限り、世は光で満たされぬ

光の者、独り寂しく、自らを恨みけり
影の者、独り苦悩し、自らを恨みけり

両者、冠に魔力を託し、旧き闇に敗れたり

2年前 No.0
メモ2019/01/06 09:51 : 闇月 @warabimoti★Android-xdCufVxL3h

 ※このお話は、私の妄想が爆発し、呪われた右腕の封印を解いた末路です。ありきたりなダークファンタジーです。

さらに、多くの宗教の伝承が混ざっているカオスな事態。

気軽にいいねを押してもらえるとうれしいです。

2017 12.25 アクセス数がまさかの1000超え!ありがとうございます!

変な奴ですがコメントお願い致します。


ちなみに名前のみで出たガルーダはエルドロイドの愛獣です。主人と共に逃げていました。


【目次】(不定期更新します)


第一部 炎の章 >>1-25


第二部 氷の章 >>26-43


第三部 光の章 >>44-78


第四部 風の章 >>79-104


第五部 闇の章 >>105-124


第六部 海の章

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闇月 @warabimoti ★Android=xdCufVxL3h

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1年前 No.80

闇月 @warabimoti ★Android=xdCufVxL3h

体を扉へ向けたまま、ヴァルディスは聞き返す。
ヴラドゥレアはけらけらと笑った。
「わかってるくせに。『あいつ』が可愛いあんたに手紙も寄越さず何してるのかって事よ」
ヴァルディスの拳が固く握られる。
(私が一番されたくない話をして、何のつもりだろう。その事で、お父様がどれだけ悲しんでいるか…)
「ヴラドゥレア、止めないか」
「…ふん」
ヴォイドに止められ、ヴラドゥレアはやっと口を閉じた。アザトースが非難を浴びせる。
「ちょっと!何て事言うの!?ヴァルディスの気持ちを…」
それを遮り、ヴァルディスは口を開く。
「大丈夫です。アザトース様。私は待ちます。いつまでも」
そう言ってヴァルディスは部屋を出ていった。
「…ヴラドゥレア、最低」
「何よ…あんたこそどうしてあの娘の肩ばかり持つわけ?」
「だってうちの息子のガープ達が仲良くしてもらって、」
二人の口論を片手で制止して、ヴォイドは声をあげた。
「いさかいは後でやれ。…エルドロイドが我等の元を離れた可能性は十分ある。もし今後貴奴を見付けたのであれば……」
一度口をつぐみ、五人の意識が己に向いたことを感じて彼は命じた。
「排除せよ。情けは要らぬ。」

1年前 No.81

闇月 @warabimoti ★Android=xdCufVxL3h

【第34章 絶壁】

 その頃、スヴェートの城を出た王女達は、南の魔王メラディオンの城を目指していた。
「ここから南に行くには、大きく右回しないといけませんね」
魔界地図を見ながら、デスストームが伝えた。
西から南にかけては広大な山岳地帯が広がっている。
悪魔だけなら何も問題はないが、今回は王女とアルドがいる。
「そっか…歩いてどのくらい?」
フェニックスが尋ねる。
「徒歩ですと…少なくとも3日は」
「3日か…ダイア、大丈夫かなぁ」
アルドが心配そうに呟いた。
「きっと不安だろうね。敵の城に、独りで捕まるなんて…」
王女も言いながら心配になってきた。ダイアがさらわれてから、もう数日経つ。

1年前 No.82

闇月 @warabimoti ★Android=xdCufVxL3h

それを見ていたヴリザードとエルドロイドは、小声で何かを相談し始めた。小さな話し声だった為、王女達には「…我…」「…に、て…」など断片的にしか聞き取れなかった。
(何を話してるんだろう?)
やがて、二人はこちらを見た。話は決まったようだ。
ヴリザードが口を開く。
「これから南方へ行くとなると、早くとも三、四日はかかる。食料も確保出来るかわからんし、何よりそのダイアという者が無事かも気になる。それで、我とエルドロイドが王女とアルドを乗せ、山岳を越えてはどうか、と」
それを聞いて、王女達は目を輝かせた。そうしてくれれば時間を大幅に節約できる。
「それは明暗ですが、エルドロイド様、よろしいですか?」
デスストームが聞くと、エルドロイドは当然だ、と答えた。

1年前 No.83

闇月 @warabimoti ★Android=xdCufVxL3h

フェニックスが口を出す。
「ねえねえ、僕は誰を乗せるの?」
満面の笑みで言われ、ヴリザードとデスストームは固まった。
…どうする、こいつは誰か乗せる気だ、と。
ヴリザードは冷気さえ調節すれば人間を背に乗せても問題ない。だがフェニックスはそうもいかない。
フェニックスの翼は炎で出来ている為どう考えても無理だ。だが子供のようにキラキラした瞳で見られるとデスストームは断れない。困っていると、
「フェニックス。汝は先頭で軍の者がいないか見張れ。デスストームは後ろを頼む」
ヴリザードは動じずに言った。
「え、あ、はい!」
「うん!りょーかい!」
ホッと胸を撫で下ろしながらデスストームは、改めてヴリザードの機転の速さを実感した。流石はかのヴォイドが認めた魔王だ。

1年前 No.84

闇月 @warabimoti ★Android=xdCufVxL3h


険しい山々を、王女を背に乗せたエルドロイド、アルドを乗せたヴリザードが飛んでいく。先頭と最後尾では他の二人が周囲をくまなく見渡している。
王女は、生まれて初めて見る空の景色に心を奪われた。
「うわあ…!!すごいよエルドロイド!ドラゴンはいいなぁ。空が飛べて」
それを聞いたフェニックスがボソッと
「鳥も飛べるのに…」
と呟いたが誰にも聞こえなかった。

1年前 No.85

闇月 @warabimoti ★Android=xdCufVxL3h

【第35章 Dr.グラディオンは気まぐれ】

 所変わって悪魔城ヘル・ゲーティア。3階のテラスにて、魔王と数人の貴族がお茶を飲んでいた。
「…そういえば、ヴァルディスの報告というのは何だったのでしょう」
ヴァルディスの父である大貴族ドナイディア・デスモンド・バールデール公爵が口を開く。
「下手なこと言ってあの御方の怒りを買わないといいですねぇ」
優雅に紅茶を啜り、グラディオンが笑った。
「…先生、面白がってません?」
ドナイディアがじとーっと見つめると、グラディオンは大げさに肩をすくめた。
「まさか!可愛いヴァルディスの不幸を望むわけありません。ねえロノウェ」
そう言って声をかけたのは城のメイド長にしてソロモン72柱の序列第27位である悪魔、ロノウェだ。

1年前 No.86

闇月 @warabimoti ★Android=xdCufVxL3h

ロノウェはティーカップに紅茶を注ぎドナイディアに差し出した。
「偉大なる海魔軍隊長にして軍医であるグラディオン・グラジオラス・オルシエル=デモンズロード様の慈しみは、海よりも深いと存じております」
(((え〜……)))
その場にいたドナイディア、同じ公爵のクラウディル、その娘フルフルは嘘だろ…と思った。
めんどくさがりで気分屋で、仕事も隙あらばサボるこの悪魔が??
エルドロイドがいなくなったと聞いた時も、「ああ、そうなんですか」と言ったきりだった。
そんな三人とは対照的に当の本人はにやにやしている。
「おやロノウェ。貴女はよぉくわかっていますねぇ。そうなんですよ、私って二つも役職がありますから〜」
「「「…………」」」
三人は思った。
何も言うまい、と。

1年前 No.87

闇月 @warabimoti ★Android=xdCufVxL3h

お待たせいたしました!
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
その時ロノウェがさりげなく聞いた。
「しかしグラディオン様。お早めに持ち場についた方がよろしいのでは?」
「そうだよ先生!ヴォイド様に怒られちゃうよ?」
フルフルも慌てて言った。
ただ一人の軍医である彼女の事は尊敬しているし、その美しさには感心するのだが、グラディオンは非常に気まぐれで日和見主義者だ。仕事は出来るがめんどくさがりで、主であるヴォイドやイルテバークへの忠誠心も怪しい。得体の知れない悪魔だ。その為多くの者は、グラディオンを敬うと同時に恐れていた。
グラディオンは「はいはい」と気の乗らない返事をして席を立った。
ようやく仕事をする気になったのかとフルフルはホッとした。だが去り際にグラディオンは振り返る。
「ですがねフルフル。いくら怒っても、マイロードに私を追い出すことなど出来ませんよ」
その言葉にフルフルだけでなく、ドナイディアやクラウディルも首をかしげた。地位ならヴォイドが上だ。
気に入らない者を追放するなど容易い事のはず。
そんな三人の心を知ってか知らずか、グラディオンはアデュー♪と歌うように言い、軽やかに身を翻して去っていった。

ロノウェは平然とテーブルをふいていたが、貴族三人はただ、グラディオンの後ろ姿を見つめていた。

1年前 No.88

闇月 @warabimoti ★Android=xdCufVxL3h

最近過疎ぎみですみません。

【第36章 南の魔王メラディオン】

―――『むかしむかし、ある人間の兄妹は、幸せの青い鳥を探しに行きました。思い出の国の青い鳥は、国を出ると黒に変わりました。
夜の国の青い鳥は、光に当たると死んでしまいました。
森にもしあわせの国にも、未来の国にも、青い鳥はいませんでした。けれど家に帰ると、青い鳥はそこにいたのです』
 メーテルリンク 原作 童話『青い鳥』より

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「…さて、メラディオン。一体このお話が、何を意味するのかわかる?」
「…わかりません。家にいるなら、はじめから探す意味がないと思いますが」
「甘いなあ。実は、青い鳥というのは二人が飼っていた青バトの事だった。しかし彼等はそれに気付かなかった」
「…つまり…?」
「幸せはね、すぐそこにあるんだよ」

1年前 No.89

闇月 @warabimoti ★Android=xdCufVxL3h



(…幸せ、か。私は未だ、青い鳥を見つけられないようだな)
南の魔王城で玉座に座りながら、メラディオンは昔、ある人物が聞かせてくれた話を思い出していた。
(私だけではない。誰も…悪魔には、青い鳥など現れないのか?)
メラディオンは子供の頃からヴォイドの下で、魔王となる為の厳しい教育を受けてきた。スヴェートやフェニックス達も一緒だ。そんな戦いに明け暮れた人生で、幸せなど掴めはしなかった。相方のグラディオンから見れば自分達は『つまらない人生』らしいが仕方がない。
悪魔として生まれたなら、その使命を全うする。
“あの御方”の為に生き、戦い、そして…いつかは滅びる。
(…全ては滅びの魔王ヴォイド.フォール様の為に。私の成すべき事はそれだけだ)

1年前 No.90

闇月 @warabimoti ★Android=xdCufVxL3h


エルドロイドとヴリザードのお陰で、王女達は早く目的地に着くことが出来た。
南の魔王城は、絶壁の上に建てられた石造りの城で、曲がりくねった特徴的なシルエットをしていた。
「いかにも昔話に出てきそうなお城だね…」
王女がポツリと呟く。その通り、目の前の城はまるで勇者と魔王の決戦するステージだった。
「ああ。人間の語る『勇者と魔王の戦い』は、この南の魔王城で繰り広げられたらしい」
ヴリザードが言うとフェニックスも言った。
「たった一日で魔界を火の海に変えた、なんて話もあるよ」
アルドが目を見張る。
「ホント?でも、誰も見たことないの?」
その問いにエルドロイドが応じる。
「メラディオンはあまり人前で魔法を使わない。それどころか他人と関わりを持つことも嫌う」
「それに…メラディオン様は子供が大の苦手だと…」
王女とアルドは顔を見合わせた。
「大丈夫…かなぁ」
「礼儀正しくすれば…多分」
いくら魔族といえども初対面の相手をいきなり襲う事はしないはず。そう信じることにして、二人は皆に声をかけた。
「…行こう!」

1年前 No.91

闇月 @warabimoti ★Android=xdCufVxL3h

冬休みになったので前よりは速度を上げたいです。

【第37章 大蛇の炎(ほむら)】

 ━幸せかと聞かれたら、私は「NO」と答える。
幸せになりたいかと聞かれたら、私は……
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
城内はスヴェートの城と比べると暗く、松明の火が不気味に揺れていた。通路にはスライムからキメラ、ミノタウロスまで沢山のモンスターがいたが、誰もが物陰に隠れ、そっとこちらを見ていた。

「…見ろ、エルドロイド様だ…」
「メラディオン様は、ヴォイド陛下に忠実。一体どうなるんだ…?」

モンスター達が囁き合っていると、灰色の体をした魔物が杖で床をコンコンと叩いた。
「皆落ち着きなさい。魔王様がどんなご決断を下されようと、私達はそれに従うまでです」
その魔物…側近のグレアは、王女達の方へと顔を向けた。

1年前 No.92

闇月 @warabimoti ★Android=xdCufVxL3h

「私共は、貴方達を今ここで切ろうとは考えていません。しかし、魔王様が貴方達を敵と見なせば…」
グレアは杖の先でエルドロイドやフェニックス…悪魔を指し示した。
「南の魔王メラディオン様、および悪魔軍への反逆として、皆様を捕らえます」
その目には、自分の王を守らんという強い思いがあった。
「…わかった。まずはメラディオンと話がしたい。会わせてもらえるか」
その意志を汲み取ったのか、エルドロイドも了解した。
つまり、ここで旅の命運が分かれる。
宝玉を手に入れ、ダイアを救えるか。
魔界も、ダイアも失うか。
(…どうかメラディオンさんが、私達の願いをわかってくれますように)

1年前 No.93

闇月 @warabimoti ★Android=xdCufVxL3h

明けましておめでとうございます。魔界王国物語を今年も宜しくお願いします。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
 グレアに連れられ、魔王の間に入った王女達は玉座の前に跪くよう言われた。
「メラディオン様の前で無礼は禁物です。それから…大変申し上げにくいのですが、フェニックス様は外でお待ち頂けますか。メラディオン様はフェニックス様を苦手としておられます」
フェニックスは少しショックを受けたようだが、「わかった〜…」と大人しく出ていった。
きっと他の魔王にこういう扱いを受けるのは珍しくないのだろう。フェニックスはとても魔王とは思えないほど明るく子供っぽい。
(でもヴリザードとはケンカばっかりだよね…)
ーーその時、玉座の横に炎があがり、中から黒いローブで顔を隠した悪魔が現れた。彼はゆっくりと歩き、玉座に腰掛けた。
グレアが高らかに告げる。
「こちらにおられます御方が、南の魔王メラディオン・サウス・フレイム=デモンズロード様にあらせられます。皆様、お控え下さい」
王女とアルドは慌てて一礼した。デスストームも深々と頭を下げる。

1年前 No.94

闇月 @warabimoti ★Android=xdCufVxL3h

エルドロイドが進み出た。
「久しぶりだな。メラディオン。変わりなかったか?」
「…特には。我が同胞が逃げ出した事くらいだ。」
その皮肉をエルドロイドは黙って聞いていたが、やがて答えた。
「そうか。以前のそなたは、皮肉など言わなかったと記憶しているが。」
二人の会話は、一見するとただの口論に聞こえるが、周りの者を畏怖させる圧倒感があった。
(…この二人がまともに会話しているのを見るのは我も初めてだ)
ヴリザードですら、この先どんな話し合いになるか見当もつかない。
メラディオンはフッと息を漏らし、
「…こんな世界だ。素直でばかりはいられない。謝ろう…用件を申してみよ」
と促した。
「それなら王女から話せば良い」
と、エルドロイドは王女を見た。

1年前 No.95

闇月 @warabimoti ★Android=xdCufVxL3h

2週間以上更新が止まってすみません。お待たせしました。
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「えっ!?わ、私で大丈夫!?」
突然話をふられた王女は、当然びっくりしたがメラディオンは微かに口角を上げ、牙を覗かせた。
「…オランシアの王女か。いいだろう。憶さずに申せ。」
王女は恐る恐る前に進み出た。
後ろではアルドが『がんばれ』と口パクし、デスストームも頷いた。王女は頷き返し、口を開いた。
「あなたの宝玉を、私達に譲ってほしいんです!!」
頭を下げられたメラディオンは、フードの奥の金色の瞳を細めた。
(何を言い出すかと思えば……)
このような人間の子供が宝玉の力を知っているとは思えない。そう思いメラディオンは思案する。宝玉の事を知っているのは今では一部の悪魔と天使、それにあの種族だけのはず。エルドロイドが教えるとも思えない。
だが、そんな事なら答えは決まっている。

1年前 No.96

闇月 @warabimoti ★Android=xdCufVxL3h

いつも使っているYahooが消えログイン出来なくなる事件が起き投稿が遅れました。復活してよかった。
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メラディオンは自らを炎で囲み、緑色の大蛇へと姿を変えた。
「それは無理な相談だ。宝玉を渡す事は“あの御方”への謀反を意味する。それに…この宝玉はお前達自身にも災いをもたらすからな…」
「災い?…どういう事ですか?」
大蛇は鎌首をもたげ、二又の舌を動かした。
「……まだ幼かった頃、私は魔界の山々の支配と、この宝玉の守護を任されていた」
静かに語りだしたメラディオンに、王女は少し驚いた。
(小さな頃から悪魔軍に仕えていたなんて…)
ヴォイドに情はないのだろうか。
幼い子供でさえ、無邪気に遊ぶことが許されないのだろうか。
「…人間達は私を悪魔ではなく山の主と思いこんでいた為、宝玉を奉る社には願いを捧げる人間が多く訪れた。しかし、人々の邪な心を受けすぎた宝玉はある時暴走し、魔界の山を灼いた」
それを聞いたデスストームは納得した。時が経つにつれ話に尾ひれが加わり、『メラディオンは昔、魔界中を火の海に変えた』などという伝説になったのだ。
(…確かに危険かもしれません)

1年前 No.97

闇月 @warabimoti ★Android=xdCufVxL3h

いいね16!ありがとうございます!
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もし今でも邪なる力が残っていれば、聖なる冠と反発し、大変な事態を招きかねない。
(諦めるしかないのでしょうか…?)
ヴリザードもデスストームと同じことを思ったのか王女に「どうする」と聞いている。エルドロイドは無言でアルドと顔を見合わせた。
「…ミアラを信じよう」とアルド。
「…信じる…か」エルドロイドが呟いた。
メラディオンが言う。
「解っただろう。この玉は最早宝ではない。人の世の醜さ、その象徴だ」
「…との事です。皆様、お気の毒ですがお引き取りくださ…」
「待って!!」
グレアが言いかけた言葉を王女が止めた。
「私の…私達の望みは、この世界を救う事!!邪な思いなんてないもの!!」
「何…?」
仲間たちも次々に言った。
「ミアラの言う通りです!自分の欲の為じゃない、大切なものの為の願いなら…」
「ミアラ様に、貴方の見てきたような醜さは一切ありません」
(アルド…デスストームさん…)


メラディオンは解らなかった。

何故そこまで信じ合えるのか。種族も違うのに。

『他者を信じるな。我にのみ忠義を尽くせ』

何故希望を捨てないのか。この腐った世界で。

『悪魔…神に仇なす化け物め…』

『所詮この世界は、綺麗事ばかりだね、メラディオン。希望なんてはじめから持たない方がいい』

何故絶望しないのか。大切なものを奪われて。

『私を憎んでいい。私を忘れてもいい。お前は悪くない。悪いのは私。罪深いのはこの世界』

解らない。理解できない。

「…メラディオン。私は心を持たないが、お前は信じてみてもいいのではないか。この人間達を」
「…………」


11ヶ月前 No.98

闇月 @warabimoti ★Android=xdCufVxL3h

━━━その時!
メラディオンの玉座に飾ってあった宝玉が目映く光を放ち、部屋の中を爽やかな風が吹き抜けた。
全員、何事かと辺りを見回す。グレアが叫んだ。
「魔王様!宝玉が…宝玉の色が!!」
メラディオンがハッと玉座を振り返ると、くすんだ青だった宝玉が美しい空色に変わっていた。
いや、戻ったのだ。
「馬鹿な…信じられぬ…」
メラディオンが呆然と呟く。
まさか、本当に戻ったというのか?何万年もの間、何をしても戻らなかった風の宝玉が。あの王女達の想いで。想いだけで。先程のエルドロイドの言葉を思い出す。
『信じてみてもいいのではないか』

(…私は……)

メラディオンは心を決め、王女とアルドの近くへやって来た。ローブを着た魔族の姿に戻っている。
「お前達の想いの力が、その宝玉を再び清きものにした」
そして、王女にその風の宝玉を手渡した。
「受け取れ」
「!いいんですか!?」
戸惑う王女にメラディオンは答える。
「私にその宝玉を護ることは出来ぬ。お前達が持つべきものだ」
「…ありがとうございます!でも…ヴォイドに…」
人間に宝玉を渡すことは、王であるヴォイドへの反逆行為。エルドロイド同様命を狙われるのではないか。
「…ヴォイド.フォール様には、この命を拾い魔王の位を与えて頂いた御恩がある。だが…お前達が来たことを私は報告しない。忠誠を誓った身ゆえこれ以上の協力は出来ない」
「それで十分だ。礼を言う。…王女、これより闇の魔王の元へ向かいダイアを救出するぞ」
その言葉に全員が驚く。デスストームが尋ねる。
「で、では、北と東はどうされますか?」
「北の魔王インペリアルと東の魔王アグレダ…彼等は比較的人間への敵意が少ない。だが闇の魔王はいつ何をしでかすか解らん。先にダイアを助けよう」

11ヶ月前 No.99

闇月 @warabimoti ★Android=xdCufVxL3h

「確かに…早くダイアを助けたいもんね」
アルドも賛成する。
「私も…ダイアに会いたいよ」
言いながら、王女はダイアの事を思い出していた。
いつもにこにこして、皆を励ましてくれたダイア。
(今度は私達が、ダイアを助ける!)
「我に意見はない。好きにすれば良い」
ヴリザードも『そうしよう』と言ってくれているらしい。彼の素直じゃない言葉の意味が何となくわかってきた。

 その様子を眺めながらメラディオンは不思議に思った。
(人間と悪魔が仲良くしている…こんな光景、何千年ぶりか…)
…私も、あそこに入れたら。
ふとよぎった考えをメラディオンは振り払う。
(私は何を考えている?)
ヴォイドは人間を心の底から嫌っていた。すぐに闇に染まる脆弱な種族の癖に、神に護られている。
自分達の理解できないモノを拒み、恐れ、憎む。
(だが、この人間達は違うのか?)

11ヶ月前 No.100

闇月 @warabimoti ★Android=xdCufVxL3h

と、その二人がこちらにやって来て、メラディオンに笑いかけた。
「メラディオンさん、宝玉をくれてありがとうございます」
「私達はエルドロイド達と魔界を救い、誰も苦しまない幸せな世界をつくります」
メラディオンは目を見開き、絞り出すように「…そうか」と言った。
「それじゃあ、またいつか」
挨拶して、王女達は出て行った。残されたメラディオンとグレアは互いに言葉を交わす。
「…幸せな世界、と言っていましたね」
「そこに、私達の…悪魔の居場所はあるだろうか?」

11ヶ月前 No.101

闇月 @warabimoti ★Android=xdCufVxL3h

【第38章 「可愛い小鳥」】

 フェニックスは城の前に座って、王女達を待っていた。正直、メラディオンと会わずに済んでホッとしていた。会えばきっと「裏切者」と罵られる。ヴリザードは元々拠点を離れていたが、フェニックスはメラディオンと同じ軍に属している。
お前は何故『そこ』にいる。
お前は“あの御方”に逆らうのか、と。
(僕は、最低だ。ミアラやエルドロイドに協力しておきながら、悪魔軍と手を切れないだなんて…)

でも、僕が一番怖いのは…

『━何を迷う事がある?余の“可愛い小鳥”よ』
「!!その声…!」
不意に懐かしい声が聞こえ、顔を上げるとそこには漆黒の鎧に身を包んだ悪魔がいた。
「モー…メント…」
そう。目の前にいるのは六大魔王の序列第5位、モーメントだ。勿論実体ではなくホログラムだが。

【ちなみに今日三月十七日はモーメントの誕生日です!!六大魔王の中で一番若いですよ!】

11ヶ月前 No.102

闇月 @warabimoti ★Android=xdCufVxL3h

モーメントは口を開く。
『汝の役目はただひとつ。“あの御方”の為に生きることだ。忘れたか?』
フェニックスは慌てて首を振る。モーメントを哀しませてはいけない。モーメントを失望させてはいけない。
「そ、そんなわけないよ!!ただ、仲良くしてもらってるのに少し悪いかな…なんて…」
モーメントは深い紫の瞳でフェニックスを見つめ、首を傾げるようにして言った。
『…仲良く?悪魔と人間は仲良くなど出来ぬ。悪魔が人間と持つ関わりは契約と利用。持つべき感情は憎しみと蔑み。それ以外は不要だ』
「わ、わかってるよ!大丈夫、安心して!モーメントをガッカリさせる様なことはしないよ!」
そう言えばモーメントは紫の瞳を妖しく光らせた。
『それで良いのだ。フェニックス。人間共に心を許すな。エルドロイドに同情するな。汝はただ“あの御方”の指示に従え』
「…うん!もちろん!」
返事をするとホログラムは乱れ、やがて消えた…。

10ヶ月前 No.103

闇月 @warabimoti ★Android=xdCufVxL3h


 フェニックスとの通話を終えると、モーメントは背後にいたうみねこに声をかけた。
「…盗み聞きとは悪趣味だな。…グラディオン」
すると、うみねこが嘴を開いた。
[あら、バレてましたか]
モーメントが近付くと、うみねこは彼の鎧の肩当てに留まった。
「気付かぬとでも思ったか?わざわざ使い魔を送り込んでまで盗聴など」
うみねこは笑ったような鳴き声をあげた。
[これは失礼。貴方がどのようにしてフェニックスを丸め込むのか、少し興味がありましてねェ]
「丸め込む?違うな。それをしているのは人間共の方だ。余は奴が…フェニックスが帰るべき巣を忘れぬよう忠告したに過ぎん」
モーメントの言葉に、うみねこは面白そうに羽を震わせた。フェニックスがいずれエルドロイドの考えに共感するであろうことは皆予想していた。だからこそそれを阻止するのがモーメントの役目。
「…不死鳥は永久に、この鳥籠から逃れられない。故に心配はない」
[貴方によぉくなついた可愛い愛鳥が、その手から飛び立つことはないとでも?]
うみねこの問いにモーメントは「その通りだ」と答えた。
[その割りには、マイロードのエルドロイド排除令は伝えなかったので?]
モーメントの紫の瞳がうみねこの漆黒の目に映る。彼は何でもない事のように答えた。
「汝が何故知っているのか気になるところだが…フェニックスに言ったところであやつには何も出来まい。さあ、そろそろ行け。グラディオン」
うみねこは高らかに鳴くと、紅い月の輝く空へと飛び去った。

10ヶ月前 No.104

闇月 @warabimoti ★Android=xdCufVxL3h

明日入学式です。ますます過疎るかもですが頑張っていきます。
第五部に入ります!
【第39章 黒のキョウダイ】

 ヴォイドへの報告を終え、屋敷へと帰ったヴァルディスを出迎えたのは家臣の黒龍、シュヴァルツだ。
「お帰りなさいませ、お嬢様。ご主人様は戻られていませんが、お客様がおみえです」
「お客様?わかった、私が対応するわ」


客人は、思いもよらない人物だった。
「おう、ヴァルディス。久しぶり、大きくなったねぇ」

「琥珀様…!!」
闇の魔王の僕、琥珀だった。
「何故ここへ?」
「いやね、ちょっとあんたに聞きたいことがあったのさ。すぐに帰るよ」
ヴァルディスは首を傾げた。父であるドナイディア公爵に用があったのではなく、自分に会いに来るなんて。
「それは…どのような?」
「あんた…ヴォイドがやろうとしてる事どう思う?天界への復讐には賛成?」
いきなり王の事を聞かれ、ヴァルディスはぽかんとする。
「勿論陛下の事は尊敬しています。…でも…復讐については…」
琥珀は驚いたようにこちらを見た。
「どうして?あんたは誰よりも、天界を憎んでいいはずだよ。あんたの兄貴の仇を討ちたくはないのかい?」
『兄』という言葉にヴァルディスは肩を動かした。兄ベリアルは天界に囚われている。天の聖光を、奪おうとしたから。

10ヶ月前 No.105

闇月 @warabimoti ★Android=xdCufVxL3h

遅くなりすみません!今日から田舎に行きますのでまたしばらく空くと思います。
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(でも私は…天使を憎いとは思えない。罪を犯したのは紛れもなくお兄様だもの…)
黙っているヴァルディスの心を察したのか、琥珀は「もういいよ」と穏やかに言い、翼を広げた。
「もうお帰りに?」
「ああ。うちの主人を待たせてるからね。邪魔したね。」
「いえ。またいつでも…」


シュヴァルツが「見送ります」と言って出てくると、琥珀は素早く振り向いた。
「おいシュー。あんたんとこのお嬢は少し甘過ぎないかい?」
「おや、アンバー姉様。何故です?」
シュヴァルツが敬語だが砕けた口調で尋ねる。琥珀は軽くシュヴァルツを睨んだ。
「だーかーらその名前で呼ぶなっつうの…まあ、あんな子に育てたドナイディア公爵も相当だね。甘い甘い。」
「お優しいと言ってください。所で姉様。何故あんな質問を?」

9ヶ月前 No.106

闇月 @warabimoti ★Android=xdCufVxL3h

体育祭がようやく終わった。槍も降らなかったし地球も滅亡しなかった。(某歌より)遅れてすみません!
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琥珀は弟の顔をじっと見た。
「あたしが思うに、ヴォイド陛下の目的はただ天界に復讐するだけじゃない。もっと別の事を考えてるね」
「別の事?一体何だと言うのです?」
「まあ、それが分かりゃ苦労しないさ。ヴォイド陛下はあたし達の裏の裏のそのまた裏をかいてくるだろうね…ああ、そういえば…」
琥珀はふと話題を変えた。
「他の兄弟姉妹は元気かい?ここ数百年会ってないけど」
琥珀とシュヴァルツは、五人兄弟姉妹の長女と次男だった。
「ええ、<蒼玉>サフィアル兄様はエルドロイド様が御不在の間幻夢国を任されたと。<紫玉>ラピス姉様はお変わりなく過ごしておられます。<紅玉>ルビアールは相変わらず方々を転々としているそうで」
「へえ、サフィアルの兄貴が?エルドロイドよりも優秀、なんてことになっちまうかもねェ?」
琥珀の言葉にシュヴァルツも「そうですね」と笑った。
「じゃあ、元気でやりなよ。まさかあんたがひとの下に使えるなんてねぇ」
「王宮で暮らすよりも、この方が性に合っていますから。姉様こそ、あの闇の魔王殿の側近になられたと聞いたときは驚きました。お体にお気をつけて」
そう言葉を交わし、姉弟は別れた。

8ヶ月前 No.107

闇月 @warabimoti ★Android=xdCufVxL3h

お待たせしました…期末テスト終わりました!!

【第40章 闇の魔王の元へ】

 「…というわけでねフェニックス。東と北より先に、闇の魔王の所に行こうと思うの」
南の魔王城から出てきた王女からそう告げられ、フェニックスは内心驚く。効率的には東か北の魔王の所へ行ってからの方が良いが…。
「案内してもらえるかな?」
アルドの声で我に帰り、フェニックスはこくこく頷く。
「…もちろん!!任せて!!」
明るく言ったが、心は暗かった。
(ダークキャッスルにダイアが囚われてるって、モーメントに報告した方がいいのかな…でも、そしたらヴォイド様が何をするか…)
先程のモーメントの言葉が甦る。
『汝はただ、”あの御方“の指示に従え』
モーメントは六大魔王。六大魔王の言葉はすなわちヴォイドの言葉も同然。逆らえない。
だが…これでは王女達を騙している事になる。
(…僕は…どうすれば…)

7ヶ月前 No.108

闇月 @warabimoti ★Android=xdCufVxL3h

お待たせしました。夏休みになれば少しはペースアップしたいです。
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重い心のまま、王女達に説明する。
「闇の魔王の城がある異空間に入るには、異界の闔(とびら)<アルタス・ゲート>を通る必要がある。ゲートへの道は、スヴェートの宝玉が導いてくれるよ」
フェニックスの言う通り、スヴェートからもらった光の宝玉が放つ光が、遥か彼方へと線のように伸びている。
「本当だ…」
「では急ぎ出発しよう。一刻も早くダイアを救出せねば」
エルドロイドが言うと、全員が真剣な面持ちで頷いた。
フェニックスは頷きながら、心がチクリと痛むのを感じた。こんな感情は初めてだった。だから、名前も知らなかった。それは…罪悪感だった。
 そんな彼を、ヴリザードは訝しげに見やった。
(…フェニックスは何を悩んでいる?仲間だった者達への反抗が恐ろしいのか?)

7ヶ月前 No.109

闇月 @warabimoti ★Android=xdCufVxL3h

【第41章 滅びの魔王は嗤う】

 魔王は嗤う。
 人の抱く愚かな夢を。
 魔王は愉しむ。
 人の抱く不確かな希望を。


「良かったのか。宝玉を渡したものを罰さないで」
その問いに、ヴォイドは飲んでいた赤ワインをテーブルに置き、声の主を見た。
「あァ……殺ろうと思えば何時でも始末できる。フェニックスについては、モーメントに任せているのでな。」
言いながらヴォイドは、黒き邪神へとグラスをもうひとつ差し出した。
「貴様も飲むか?ヴィルペアルヴァンクトゥシアラ。魔法界から取り寄せた上物だ」
「いや。生憎だが我は酒は飲まん。我等邪神にとって酒など、何の悦楽にもならぬからな…」
ヴィルペアはそう断った。
「まあ、汝にとっては部下の一人二人、ただの手駒に過ぎんのだろう」
ヴォイドは仮面の奥でくぐもった笑い声をあげる。
「クク、やはり共にチェスをするならば貴様やグラディオンに限る。退屈しないからな」
自分の駒がこの手を動かすままに生き、戦い、死にゆく様は確かに面白い。だが、それだけでは足りぬ。
我は共にゲームを観賞する同志が欲しい。
「……貴様にだけは、我とて勝てぬだろうな」
「そうか。我とて汝には勝てぬ」
ヴォイドは笑った。愉しくてたまらないと言うように。

6ヶ月前 No.110

闇月 @warabimoti ★Android=xdCufVxL3h

さあ、踊るがいい。我が眷属達。
月はあんなにも紅く美しい。

さあ、好きなだけ抗え。人間共。
その絶望こそ我が力。

「いずれ時は満ちる。さすれば、彼奴らは真の絶望と恐怖を味わうのだ」
グラスを紅い月にかざしながら、ヴォイドは呟いた。
ヴィルペアは表情ひとつ変えない。彼はきっと、世界がどうなろうとどうでもいいのだ。
自分が創ったモノなど存在しない。
護るべきものも慈しむものもない。
だが、この『劇』に興味はあった。

人の子がどの様な抗いを見せるか。
天使と悪魔の戦争の果ては。
人間と悪魔の間に絆はあるのか。
……エルドロイドは、どういった末路を辿るのか。
(……さて、どうなることか……)

6ヶ月前 No.111

闇月 @warabimoti ★Android=xdCufVxL3h

【……2か月ぶりって……ごめんなさい!!リアルが、リアルが忙しくて!!今後もスローペースですが続けます!!】

【第42章 宝玉の示す先】

 「━━い!!おい!!起きろ」
「ダイア君、起きて」
いつの間にかうとうとしていたダイアは琥珀に乱暴に揺り起こされた。琥珀はいつの間にか戻ってきている。
「…ったくよぉ…お前、よく魔王の城で居眠りできるな。呑気すぎるだろ」
琥珀が呆れたように言って、ダイアを見下ろした。
「まあまあ琥珀さん、いくら囚われの身でも眠くなるのは当然ですよ」
翡翠が宥めるが琥珀は馬鹿にしたように
「あァ、そうか、お子様はよおくおねんねしねェといけないんだよな!あァははは!!」と笑った。
これにはダイアもカチンときた。
「お前が僕を拐ったせいで、ここ数日寝れなかったんだ!!」
「へえー?そりゃ悪かったねえ??クククッ」
全く悪びれる様子のない琥珀に溜め息をつき、翡翠は咳払いをして言った。
「ダイア君、起きて早々悪いですが、今から移動してもらうのでこの檻に入って下さい」
「移動……?」
翡翠の示す先には、ローラーが付いた移動式の檻があった。
「闇の魔王様が御呼びです」

3ヶ月前 No.112

闇月 @warabimoti ★Android=xdCufVxL3h


「ねえエルドロイド、魔王達の事、もっと教えてほしいな」
宝玉から伸びる光を辿り進む道すがら、王女はエルドロイドに声をかけた。ただ黙って歩くより、会話していた方がいい。
「…どうしてだ?」
エルドロイドが尋ねる。
「例え敵対していても、相手の事を少しでも知ってた方が話しやすいでしょ?」
そう答えた王女にエルドロイドは、やはり王族だ、と思った。
(民の心を知らずして王は務まらん。それと同じか……)
「…わかった。どんな事を知りたいのだ?」
「えっとね……。悪魔軍の最高幹部って、六大魔王なんだよね。六大魔王は、他の魔王より立場が上なの?」
「そうだ。ただし、地獄を治める“七つの大罪”は、私達と同格に扱われている。そして我々、六大魔王の中にも序列がある。」
「序列?」
「簡潔に言えば、強さや賢さ、魔力…総合的な実力の優劣で決まっている順位のようなものだ」
六大魔王の序列は以下の通りだ。
一位は、ヴィルペアルヴァンクトゥシアラ。
二位は、アザトース。
三位は、ヴラドゥレア。
四位は、アンラ.マンユ。
五位は、モーメント。
そして六位は、エルドロイド。
「…えっ!?エルドロイドが六位!?ものすごく強いし、頭もいいのに……」
王女が目を丸くする。エルドロイドが六位なんて、心底驚いた。

3ヶ月前 No.113

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「もっと戦場で成果を挙げていれば、五位くらいにはなれたかもしれないが、私は戦においては役立たずだったのでな。わざと戦わぬようにしていれば、ヴォイドに気に入られる事もない」
あくまで最低限の敵しか倒さず、ろくな戦果も挙げない。そうやってヴォイドから邪魔だと思われることで、地位の昇格を避けてきた。それはヴォイドに忠誠を誓うモーメントからすれば許し難い事だったらしく、彼は事あるごとにエルドロイドを避難した。
他の六大魔王…特にヴラドゥレアは何度も「戦え」と言ってきた。「このままではお前は追い出される」と。
実際こうなってしまったのだから、彼女の進言は『魔王』としては正しかったのだろう。
「…でも、エルドロイドはそうやってまで地位を上げようとするひとじゃないもんね。それでも良かったんじゃないかな」
王女の言葉に、エルドロイドは少し沈黙し、答えた。
「……そう言われたのは初めてだ」


 話しているうちに随分進んだようで、少し先に<アルタス・ゲート>が見えてきた。

3ヶ月前 No.114

闇月 @warabimoti ★Android=xdCufVxL3h

【期末テストがようやく終わった。多分点数的にも終わった\(^o^)/】


「これが、異界の門……」
その門は一見、ただの古びたアーチの様だった。エルドロイドの様な大型の龍でも頭を屈めずにくぐれるくらい高さがあるが、それが広野にポツンと建てられているのは何とも不可思議な光景だ。実際、ただ『通るだけ』では何も起こらない。
「この門を開く鍵は、ごく少数の者のみが知る呪文なんだ」
フェニックスはそう言って、門の前に立った。
深く息を吐き、小さな声で呟く。
「……『古の門よ、我が声を聞け。我は異界の門の開き手。真の解放者。今、72柱が序列第37位たるフェニックスが命ず……開け』!」
フェニックスの詠唱が終わると同時、門の柱と柱の間…通り道の部分に空間の歪みが生じ、目映い光がフェニックスと、後ろにいた王女達を包み込んだーー。


 「…さあ。着いたよ」
フェニックスの声に目を開けると、其処は光もなく音もない、不思議な空間だった。
「……ここに、ダイアと、闇の魔王が……?」
「何もないね……。」
アルドのいう通り、<異界>には何もなかった。しかしこの空間のどこかにダークキャッスルがあり、ダイアが囚われているのだ。
(ダイアはきっと、無事だよね。ダイアを助けて、宝玉を渡してくれるように闇の魔王に頼む…よし)
深呼吸し、王女は気持ちを引き締めた。
「……では行こうか。王女」
「…うん!」
エルドロイドの言葉に返事をし、王女は足を踏み出した。
(ダイア……待ってて!!)

2ヶ月前 No.115

闇月 @warabimoti ★Android=xdCufVxL3h

【第43章 「ずっと、逃げている」】

 ダイアは移動式の檻に入れられ、闇の魔王の元に連れて行かれた。
「魔王様、連れてきました」
琥珀の言葉に頷き、闇の魔王は耳飾りを揺らしてこちらへやって来た。
「御苦労だった。…直に人間達が来るだろう。お前は配置に付け」
「はっ」
短く答え、琥珀は退室した。
残されたダイアはそわそわして、闇の魔王の私室を見回した。妖しげな小物や難しそうな本がきちんと整理して並べられている。その本の中に、ダイアは気になるものを見つけた。くすんだ赤色の古びた本。
(他の本は綺麗なのに、これだけボロボロ……)
興味をそそられ、ダイアは思わず尋ねてみた。
「あ、あの、……その本は?」
「……あぁ。これか」
闇の魔王はその本をチラ、と見た。
「これは、世に存在する古今東西、ありとあらゆる呪術についての本だ。そなたの使う精霊魔法とは真逆だな」
(!どうして僕が、精霊魔法を使えるって知ってるんだ?……ううん、それより、)
「……どうして、そんな本を?」
魔王ならば持っていても可笑しくはないだろう。しかしダイアは何となく、闇の魔王は呪術など使わないだろうと感じていた。理由などわからないが、強いて言えば闇の魔王の魔力の波動は、邪悪なものではなかったのだ。
「……もう随分昔、とある者の元から盗み出して来た。」

2ヶ月前 No.116

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ダイアは驚いて聞き返した。
「ぬ、盗み出して……!?誰から……そもそも何でそんな本を……」
「誤解するでないぞ、私が誰かを呪いたかった訳ではない。寧ろその逆だ」
闇の魔王は本の表紙を前足で撫で、埃を払う。そして、独り言のように呟いた。
「……あれから、私はこの異界にいる。ずっと、逃げている。此処を一歩でも出れば、彼奴はすぐに私を捕まえに来るだろう」
(……逃げている……?誰から、逃げているんだ?)
ヴォイド……ではないだろう。ヴォイドは闇の魔王の居場所を知っている。
ダイアが考えるのを余所に、闇の魔王はその本を棚に直しながら言った。
「私はこの数千年、呪術について研究している。中でも興味をそそられたのが、【デイクセリアの暗黒呪術】だ」
「!別名、『虚無の呪い』……」
聞いたことがある。不老不死の肉体を得る代わりに、感情を失う呪い。エルドロイドがかけられていた。
「その通り。哀れなものだ。不滅の肉体を得ても心を失うとは……」
ダイアを拐わせたのは、デイクセリアの暗黒呪術の実例を見て、その本質を見極める為。感情を失いながら、何故エルドロイドはヴォイドに抗ったのか。
それが解ればダイアはすぐに解放しよう。
宝玉もくれてやろう。
私は知りたい。『呪い』とは何か。




2ヶ月前 No.117

闇月 @warabimoti ★Android=xdCufVxL3h

【第44章 Dark castle】


 悪魔達は、強力な魔力の気を感知し、互いの位置をある程度知ることが出来る。王女達はエルドロイドの感覚を頼りに進み、遂にダークキャッスルへと辿り着いた。
エルドロイドがいなかったら完璧に迷っていただろう。
ダークキャッスルは、最上階から入り口まで黒いレンガが敷き詰められ、一番高い屋根には旗が立てられている。黒い四枚の羽根が十字型に並んだ紋章。
「……ここに、ダイアが囚われている」
「絶対に、闇の魔王様を怒らせることのないようにしましょう。でなければダイア様が危ない」
と、エルドロイドとデスストーム。
「…だそうだ。貴様は特に気を付けろ、フェニックス」
いつものようにヴリザードが憎まれ口を叩くがフェニックスは「……うん」と返事しただけだった。普段ならヴリザードに言い返すのだが…。
(……やはり変だ。フェニックスが我の言葉に言い返さぬとは……)
「ヴリザード?どうかした?」
王女が声をかけると、ヴリザードは耳打ちした。
「……どうも、フェニックスの様子が変だ。我の覚えている限りだと、メラディオンの城を出た辺りから」
「え?そうかな?変わらないように見えるけど……でも、口喧嘩にならなかったのは珍しいね」
 「ヴリザード!ミアラ!行くよ!!」
アルドに呼ばれ、二人は後を追いかけた。
 ヴリザードが、フェニックスと関係が深いと聞いて思い出すのは、『彼』の姿。

(……モーメント……。いや、我の思い違いならばいいが)

2ヶ月前 No.118

闇月 @warabimoti ★Android=xdCufVxL3h

【今回はあまり展開は進みませんが、エルドロイドと琥珀の因縁が明らかに。「へえー」くらいの感じで読んでやって下さい。】

城内は不気味な程静かで、魔物の姿は見当たらない。
どこにトラップがあるかも分からないので慎重に進んでいこうと思ったその時、エルドロイドが声を上げた。
「止まれ!」
「えっ…!?」
王女が驚いて足を止めた瞬間、頭上から鉄で出来た槍が降ってきて足元ギリギリの所に突き刺さった。
「あ、危なかった……」アルドが息を吐く。
「ほんと…あと一歩進んでたら串刺しだったよ…。ありがとう、エルドロイド」
礼を言われ、エルドロイドは両目を見開いた。
『ありがとう』など言われたことはない。
自分でも、言ったことがなかった。
「私はただ、止まるように言っただけだ。それなのに礼を言うのか?」
そう聞くと王女とアルドは、逆に驚いたようだった。
「え?助けてもらったんだもの、普通のことだと思うけど」
「…人間は不思議だな」
エルドロイドがそう漏らした時、

「ああああ、エルドロイド!!まさかお前まで人間と仲よしこよしになっちまうとはねぇ!」
ねっとりとした声が響いた。
「この声と邪気…琥珀か」
「姿を表せ!」
ヴリザードが吼えると、シャンデリアの上から巨大な黒龍が飛び降りてきた。
「そんなに怖い顔すんなよヴリザード!人間嫌いで有名なあんたが、一体どうしちまったのさ?」
「貴様に話す義理はない」
ヴリザードは琥珀を睨みつけるが、琥珀はニヤニヤと笑っている。
「まぁいいけどよ…エルドロイド、お前が幻夢界の王として役に立たなくなった所で、誰も困らない。お前がいない間に、きっとお前よりも優秀な者が選ばれてるさ。例えばそう…うちの兄貴とかねぇ」
「…<蒼玉>、サフィアルか……」エルドロイドが呟く。
ヴリザードが琥珀に言い返す。
「確かに<蒼玉>は優秀だ。他の兄弟達もな。だが貴様は、とても同じ血筋を持つとは思えんな」
「クク、好きに言うが良いさ。誰が何と言おうと、あたしは父上の血を引いてる。王家の血を一滴も持たないエルドロイドとは違う」
琥珀は馬鹿にしたように言った。
王女とアルドには話が見えない。デスストームは黙っている。
「……何の話を…?」
「…琥珀の言う通り、私は幻夢界の王でありながら、王家の血を引いていない。王家であるのは、私の妃の方だ。王になったのは、悪魔界と幻夢界の結び付きを強めるための政略結婚だが」
「だからあたしは、お前が憎いんだよ、エルドロイド。何で正統な王家の血を受け継ぐ兄貴でも弟でもなく、お前が王になったのか」
琥珀が不気味な笑みを浮かべたまま言った。
「……ってことは、琥珀も王家の血を?」
アルドが呟くと、デスストームが小声で教えてくれた。
「……はい。琥珀…いえ、アンバー様は、幻夢界の第3代目国王であったネイヴィークロウ様と、その妃ラヴーシュカ様の長女にあらせられます」

2ヶ月前 No.119

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【記事主より削除】 ( 2018/12/01 21:21 )

2ヶ月前 No.120

闇月 @warabimoti ★Android=xdCufVxL3h

【クリスマスも過ぎましたがなんとか再開!】

アンバーと呼ばれ、琥珀は不機嫌そうにデスストームを睨んだ。
「その名前で呼ぶんじゃねェよ、デスストーム。…あたしは、ずっとこの機会を待ってた。幻夢国の王家の者としても、闇の魔王の側近としても。お前と存分に闘えるこの機会をね!!」
そう言うが早いか、琥珀は飛び上がり、エルドロイドに踊りかかった。エルドロイドを素早く受け身を取り、二体のドラゴンはもつれあう。
「琥珀……お前が私を恨む理由は、兄弟が王になれなかった事への怒りか?」
「あァ?何もあたしは、お前が王になった事自体が気に食わないんじゃない。お前の方が兄貴よりも王として優れてるっていうなら、大人しく認めるさ。だが、お前は王に相応しくない。そりゃそうだ、お前には心がないんだから!!」
馬鹿にしたような響きを帯びた声で、琥珀は言う。
エルドロイドは答えが見付からず、黙っている。
「心がなけりゃ、民の心はおろか部下の心すら分からない。そんな奴に、どうして国を治められる?お前がこれまで王でいられたのは、お前が六大魔王だったからだ!!お前に逆らえば、それは悪魔界との同盟を無視する事になる。悪魔軍の総帥であるヴォイド陛下を敵に回すなんて馬鹿な真似、誰がするものか!!」
その言葉に、王女は思わず口を挟んでいた。
「違うよ!!私は見た……デスストームさんも、エルドロイドの部下の皆も、エルドロイドの事を慕ってた!幻夢界だって、すごく綺麗な国だった!」
「小娘がでしゃばるな!!……そもそもお前達オランシアの生き残りがエルドロイドと出会わなければ、フェニックスやヴリザード達が裏切ることもなかった…お前らは『また』人間と悪魔の絆が生まれるとでも思ってるのか!?」
(……『また』?)
その言葉に気を取られた王女は、琥珀がエルドロイドを突き飛ばしてこちらへ向かってくるのに気付くのが遅れた。
「ミアラ!!逃げて!!」
「っ!?」
ハッとして顔を上げると、琥珀の顔が目の前に迫っていた。

1ヶ月前 No.121

闇月 @warabimoti ★Android=xdCufVxL3h

「……何をする気だ」
体を起こしたエルドロイドが険しい声を出す。
琥珀は鋭い爪を振り上げて王女に向けた。
「……この小娘はオランシアの王女なんだろ?こいつの冠とお前の身柄をヴォイド陛下に引き渡せば、万事解決するじゃないか。わざわざ宝玉を集めて回るなんて馬鹿な事をしなくて済む。いずれにせよ、あのダイアとかいうチビ猫を助ける為にはあたしを倒すしかないよ?」
「だ、駄目!!この冠は絶対に渡さない!!」
王女が答えたことに苛立ったのか、琥珀は唸り、一息に爪を振り下ろした。逃げようにも恐怖で体が動かず、王女はギュッと目を閉じた。

だが、痛みはやってこない。
恐る恐る目を開けると、目の前に両腕を広げて立つアルドがいた。アルドの顔からほんの数ミリの所で、琥珀の爪が止まっている。
「ア、アルド…!!」
「アルド様!!」
フェニックスとデスストームが叫んだ。
エルドロイドは起き上がった姿勢のまま唖然とし、ヴリザードは黙って成り行きを見守っている。
琥珀がゆっくりと腕を下ろし、掠れた声で聞いた。
「……何で……何で庇おうとした?お前がこの娘を庇って何になる?あたしがあと数秒遅く止まらなきゃお前は死んでたんだぞ!?何故庇おうとした!?」
アルドは静かに、だが、はっきりと答えた。
「大切な友達だから」
と。
琥珀の目が大きく見開かれる。
「…トモダチ?それだけ?たったそれだけか?」
アルドは頷いた。王女がアルドに抱きつく。
「アルド……本当にありがとう……!!私にとっても、アルドは大切な友達だよ…!!」
「友達を守るのは当たり前でしょ?」
 二人の様子を見ていた琥珀が、突如笑い出した。
「……ふ、あぁはははは!!!!」
一同は驚いて琥珀を見る。琥珀はついさっきまでの殺気が嘘のように笑い続けている。
「ハハハハハハ!!…あァ、傑作だね。面白い。…いいだろう、お前達は、主に会う資格があるみたいだ」
その言葉に一同は耳を疑った。琥珀の主、それはつまり…闇の魔王。
「け、けど、どうして……」
「言っただろ、面白いからだって。今ここでエルドロイド共々お前らを始末するより、もう少し眺めた方が楽しそうだ。気が変わらない内にとっとと行きな」
つくづく、暗黒魔導龍というのは得体が知れない。
王女は警戒しつつ、エルドロイドに聞く。
「…どうする?エルドロイド」
「……嘘は吐いていないようだ。進むべきだろう」
エルドロイドは立ち上がり、琥珀を一瞥すると歩き始める。ヴリザードが続いた。フェニックスとデスストームは顔を見合わせ、王女達に頷いてみせると彼等に続く。
「…行こう、ミアラ」
「そうだね。今は何よりも、ダイアを助けなきゃ!」

王女達が階段を上って行くのを見届けると、琥珀は闇の魔王にテレパシーで連絡した。
『魔王様、エルドロイドと王女達が、そちらに向かいました』

1ヶ月前 No.122

闇月 @warabimoti ★Android=xdCufVxL3h

【明けましておめでとうございます。今年も魔界王国物語を宜しくお願いします。】

【第45章 闇の魔王】

 巨大な魔物の像に挟まれるようにして造られた扉を開ける。そこに待ち構えていたのは、体の各部に金の飾りを着けた大柄な黒猫。恐らく、闇の魔王だろう。
予想していた姿とは違い、王女は思わず彼をまじまじと見つめた。
(あれが…?もっと大きくて怖いのかと思ってたけど)
闇の魔王は通常の猫よりも長い尾を揺らしながら言った。
「テレパシーを通じ、琥珀から話は聞いた。そなたらは、友と、世界を救う為にここまで来た。そこに一切の無駄はない。我が宝玉を渡すに相応しい」
それを聞いた王女が身を乗り出す。
「じゃ、じゃあダイアは!?ダイアは助けてもらえるんですか!?」
闇の魔王はゆっくりと頷き、「翡翠」と配下を呼んだ。
名を呼ばれ、青緑の鱗をしたドラゴンが扉を開けて現れた。彼が押している移動式の檻の中には…
「…!ダイア!!」
「無事だったのね!!」
王女、アルドの声にダイアが目を輝かせ、鉄格子に顔を押し付けた。
「ミアラ!!アルド!!」

1ヶ月前 No.123

闇月 @warabimoti ★Android=xdCufVxL3h

ダイアの姿を見て、デスストームもホッと息を吐く。
見たところ、怪我も衰弱もしていない。
ヴリザードはダイアと会うのは初めてなので、興味をそそられたのか、再会を喜ぶ王女達の元へ近付いた。
翡翠に檻を開けてもらい外に出たダイアは、見たことのない巨大なドラゴンにびっくりして、口をポカンと開けた。
「こ…このひとは?」
「あっ、初対面だもんね。彼は氷の魔王ヴリザード。宝玉を渡してくれて、旅に同行してくれたの」
アルドが答えるとフェニックスも言った。
「ここに来るまで、三つの宝玉をもらったんだよ!」
ダイアは目を丸くした。
「三つも!?すごいね!!…それと、よろしくね、ヴリザード!!」
ダイアが手を差し出すと、ヴリザードは大きな爪の先でそっとダイアの手に触れた。
「我の方こそよろしく頼む」
 その光景を見ながら闇の魔王は、エルドロイドだけに聞こえる小さな声で、静かに言った。
「…あれが、『絆』というものか」
「闇の魔王。いくら彼等を試す為とはいえ、ダイアを拐うなど少々やり過ぎではないか」
険しい声でエルドロイドが言うと、闇の魔王は首を傾げてみせた。
「やり過ぎ?そう『思った』のか?そなたが?心などないそなたが?」
「…『思った』のではない。『考えた』のだ。感情はなくとも思考は残っている」
「本当にそうか?闇に対抗しうるのは光。そう、絆の力。同時に、呪いに対抗しうるのは祝福。そなたを祝福する者が現れれば、デイクセリアの呪いは解けるかもしれぬぞ…?」
エルドロイドは目を細め、闇の魔王を見た。
「……私を祝福する者など、どこにもいない」
「『これまでは』な。少なくとも私には、以前会った時と比べそなたが変わったように見える。あの人間達の影響かは知らないがな」
バフォメットの言葉が頭をよぎる。
『ようやく分かったのですね。大切なのは己を、心を信じることだと』
あの時肯定はしたものの、実際はまだ、『信じる』とは何なのか、よく分からない。
闇の魔王は何もない異界の空を、空とすら呼び難い空を見上げて呟いた。
「……そなたがヴォイドを裏切ったのも、己の考えを信じていたからではないのか。私はそうだ。自分の感じた疑問は間違いではないと信じた。だから逃げたのだ」
「……お前は、『何』から逃げた」
「…………」
闇の魔王は答えず、王女達の元へ向かうと、宝玉を渡した。『闇の宝玉』…使い方一つで持ち主をも飲み込む恐ろしい宝玉だ。
(……得体の知れない奴だ。何せ、本当の名前すら分からないのだから)
「闇の魔王」。それは彼の肩書きであり、名前ではない。だが誰も、彼の名前を知らなかった。

1ヶ月前 No.124

闇月 @warabimoti ★Android=xdCufVxL3h

第六部に入ります!明日から学校……おおう……(泣)

【第46章 六大魔王】

 (フェニックスの様子については、まだ問題ないな…)
彼奴は魔王には相応しくない程のお人好しだからどうなるかと少し気になっていたが、今となっては余計な心配だったとモーメントは思う。エルドロイドは兎も角フェニックスが悪魔軍を、自分を裏切れるはずがない。
そんな事を考えながら六大魔王専用の談話室に入ると、中は普段の倍以上に騒がしかった。
「どうする?エルドロイドを殺せなんて、ヴォイド陛下は本気で言ってるのかな?仲間なんだよ?」
アザトースが言うと、ヴラドゥレアが彼を怒鳴り付ける。
「『元』仲間よ!あんたねぇ、それでも六大魔王の序列二位なの?アイツはあたし達を裏切ったのよ!!」
「じゃあヴラドゥレアはエルドロイドが死んでもいいの!?」
「馬鹿じゃない?アイツは不死なのよ!ボスのいう『排除』っていうのは、捕まえて地下牢にでもぶちこめって事よ!社会的に存在を『抹殺』しろってね!!」
二人の言い争いを横目で見て、モーメントは溜め息を吐く。こんなに煩いなんて、それでも最高幹部か、こいつらは。
モーメントに気付いた六大魔王序列四位のアンラが、小声で説明した。
「煩いと思うだろうがそっとしておけ。先程の命令を受けてからこの調子だ」
「どうにかならんのか。余は煩いのが嫌いだ。頭が痛くなる」
アンラは二人を見て、困ったように首を振る。
「…止められるなら止めている。何を言っても聞かんのだ」

1ヶ月前 No.125

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それよりも、とアンラは深紅の瞳をモーメントに向ける。
「モーメント…貴殿はどうなのだ?貴殿は『仲間』を排除出来るのか?」
「聞かれるまでもない。それが“あの御方”のご意思なのだから、余はそれに従うだけだ。裏切者など仲間とも思わない」
モーメントは即答し、アンラに「汝はどうだ」と聞き返した。逆に聞かれ、アンラは目をしばたたいたが、はっきりと答えた。
「私とて同様だ。私達は『仲間』以前に“あの御方”の僕。嘗て共に戦ったといえど、情けはかけられない」
「その通りだ。余も汝も、ただヴォイド陛下に忠実に命をこなせばいい。他の魔王共が使い物にならずとも、余は、やる」
そう言ってモーメントはマントを翻し、談話室の奥にある自室へ戻っていく。それを見送り、アンラは溜め息を吐いた。
「………同情はしよう。エルドロイド」

1ヶ月前 No.126

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自室へ戻ったモーメントは、扉を閉めるやいなや壁にその鋭い爪を突き立てた。紫の瞳を光らせ、低い声で吐き捨てる。
「…エルドロイドめ…“あの御方”の僕でありながら、人間如きと馴れ合いおって…!!」
突き立てた爪を、更に深く食い込ませる。
許さぬ。赦さぬ。ユルサヌーー!!

「…ッ!!」
指先に痛みが走り、モーメントは我に返った。
力を入れすぎたようで、血が滲んでいる。
(………)
自分の指を何も考えずに見つめた後、モーメントは呟いた。
「……ああ、治療しなければ……。怪我をしたままでは任務に支障が出る…」

そもそも何故今、自分は怪我をした?
エルドロイドが憎かったからだ。
何故、こんなにもエルドロイドが憎い?
主であるヴォイド陛下に逆らったからだ。
……では、反逆者を始末すれば……陛下は、もっと自分を認めてくれるのではないか。

「…………エルドロイド…せいぜい余が陛下に忠を尽くす為の踏み台になるがいい」
そう呟き、モーメントは指先を治療する為に海の魔王にして軍医であるグラディオンの元へ向かった。

【……ヤンデレっていいよね←】

27日前 No.127

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【第47章 海を目指せ】

 ようやくダイアと再会できた王女達はダークキャッスルを後にし、異界から魔界へと戻って来た。
「ふぅーっ、ずっと空も地面も見れなかったから新鮮だなぁ」
数日振りに魔界へ帰ってこれたダイアは大きく伸びをする。ダークキャッスルからは何の景色も見えず、精神的にも参っていたのだ。
「ダイアが無事で本当によかったよ。何も酷いことされなかった?」
「うん、僕のことはほとんどほったらかしだったよ。一回だけ闇の魔王が色々質問しに来たけど」
「質問しに?」
「何で宝玉を集めるのか…とか」
やはり闇の魔王も、伝説を実現させようとして宝玉を集める者が現れたことに気付いていたのだろう。
「……さて、次は何処へ行くのだ、エルドロイド」
ヴリザードがエルドロイドを見る。
「東か、それとも北か。…或いはもう一ヶ所か」
「…そうだな…そろそろ悪魔軍の方も、我々の情報は把握しているだろう。先の事を考えると、敵になる危険性が高い者の所から先に回っていった方が良いだろう」
「えっと…どうして?」
王女が尋ねる。
「情報が漏れれば、その分魔王達の警戒も厳重になる。そうなれば宝玉を集めるのは困難になってくる。我々の正確な位置や目的を掴まれる前に、魔界にいる残り三人の魔王の中で一番危険な…海の魔王の元へ行く」

20日前 No.128

闇月 @warabimoti ★Android=xdCufVxL3h

「危険な…って、どういう意味で?人間を憎んでるとか?」
アルドが聞くと、エルドロイドは首を振った。
「…いや、そうではない。海の魔王グラディオンは、正確には、『海魔軍総隊長』であり軍医という地位にいるのだが、強力な悪魔な上に敵になるか味方になるか、全く予想がつかない人物なのだ」
グラディオンは魔王でありながら気紛れで奔放で、人間を憎んでいるわけでも好んでいるわけでもない。加えてヴォイドに対してまともな忠誠心があるのかすら分からないような人物だった。
「しかし実力は桁違い。全世界の海と水を支配し、ありとあらゆる海魔…水属性の悪魔や魔物を従えている。六大魔王にも劣らない魔力の持ち主だ」
ヴリザードも付け足した。二人がそこまで言うとは、余程恐ろしいのだろうか。海の魔王グラディオンとは。
「そんなひとがもし敵になったら…」
「……怖いね……」
王女とアルドは思わずゾクリとした。その様子を見てフェニックスが言う。
「んー…、確かに気紛れでナルシストで何考えてるかわかんないけど、話の通じないひとじゃないよ。行ってみていいんじゃない?」
「……ナルシスト?」
ダイアが小声で繰り返した。ますますどんなひとなのか分からない。
「……そうだな。いずれにせよ宝玉は集めなければ。では急いで、海へと向かうぞ」
エルドロイドが指示を出し、王女達は頷いた。
ふと王女が気になったことを口にする。
「…そういえば、南の魔王の…メラディオンさんと名前が似てるけど」
「あぁ、メラディオンは基本、グラディオンと共に行動しているからな。詳しい関係は知らないが、魔王となるべく教育された者の名前はヴォイドが与えるから、ヴォイドは元々この二人をパートナーにするつもりだったのだろう。分かりやすいように名前を付けたのではないだろうか」
「そうなんだ……」

13日前 No.129
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